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【管理栄養士のアドバイスvol.4】低栄養のスクリーニングと予防

この連載では、在宅訪問栄養指導の経験豊富な管理栄養士の稲山さんから、在宅患者さんに接する機会が多い訪問看護師だからこそできる、観察・アドバイスの視点をお伝えします。第4回は、低栄養を早期に見つける・低栄養にさせないためのポイントを紹介します。

はじめに

皆さんご存じのように、高齢期の低栄養はその後の生活機能低下や障害、合併症の増加、生活の質悪化を伴い生命予後短縮につながります。

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査の概要」1)によると、65歳以上の低栄養傾向の者(BMI≦20㎏/m2)は男性で12.4%、女性で20.7%であり、要介護高齢者においては20~40%が低栄養であるともいわれています。

低栄養から生活機能低下につながる前に、リスクを早期に発見し、栄養状態の改善に取り組むことが重要です。

低栄養のスクリーニング

はじめに、ふだん皆さんがかかわっている患者さんに、低栄養のリスクがないかを確認してみましょう。

低栄養のスクリーニングは、低栄養のリスク者(低栄養かもしれない人)を見つける段階で、管理栄養士でなくてもできますのでぜひ覚えておきましょう。

スクリーニングツールとしては、MNA®-SFが在宅でも手軽に使え、多く活用されています。MNA®-SFは、65歳以上の高齢者向きで、体重減少、食事摂取量、歩行能力、急性疾患の影響、認知症やうつの有無、やせ(BMI)をそれぞれ点数化し、点数に応じて低栄養リスクを評価します。低栄養、もしくは低栄養のリスクのおそれありと評価が付いた方は、特に栄養状態改善の取り組みが必要です。

ここではまず、低栄養を予防する食事術についてお伝えします。

バランスよく栄養をとるために……

手ばかり栄養法

これは、一日にどのくらいの食事を摂取すればよいかを、とても簡単に伝えるツールです。

まずは、食品を「赤」「黄」「緑」のグループに分けます。

赤色は、筋肉のもとになる、たんぱく質が多い食品です。黄色は、エネルギーの素となる、炭水化物や脂質が多く含まれる食品。緑色は、体のバランスを整える、ビタミンやミネラルの多い野菜や海藻類です。

この三色それぞれを、どのくらいの量食べるとバランスが良いのかを、手の大きさを基準にお伝えします。

赤色のグループは、一食あたり片手にのる程度。たとえば、魚の切り身ならひと切れ程度を、1食で摂取しましょう。

黄色のグループは1食あたり、ご飯茶碗1杯程度です。

そして緑色のグループは生の状態で1食あたり手のひら2枚分程度です。

これが理想的な食事の量です。この伝えかたなら、とても簡単でわかりやすいので、高齢者への指導にも使えますね。

10食品群チェック

ご自身で調理をされている人であれば、こちらの指導ツールも有効です。以下の10食品群のうち、毎日最低でも4種類以上、できれば7種類以上を食べることを目指しましょう!

10食品群の覚えかたは、「さあにぎやか(に)いただく」です。注1

10食品チェック表をお渡しするだけでも、いろんな種類の食品を意識して摂取してくれますので、気になる方にはぜひお渡ししてみましょう。

手軽にいろいろな食品を摂取する工夫

「いろいろ食べなきゃいけないのはわかるけど、一人暮らしだから野菜を買っても余ってしまう」「わざわざ、いろんなおかずを作るのは大変」という人に、おすすめのワンポイントテクニックです。

野菜類

野菜はたくさん買っても余らせてしまう、切るのが面倒……などのお悩みには、冷凍野菜や乾燥野菜がおすすめです。

最近は、コンビニやスーパーの冷凍コーナーに、さまざまな種類の冷凍野菜が売られています。冷凍なので保存がききますし、すでにカットしてあるので調理の手間が省けます。

スーパーの乾物コーナーを覗くと、みそ汁に入れる具材ミックスが売られていることもあります。青菜やネギ、ワカメなどがミックスで入っているので、みそ汁だけでなくスープにも使えますよ。

「魚の調理は手間がかかる」という人には、缶詰がおすすめです。

長期保存もできますし、すでに加熱調理されており、味付けされている商品もあるので、ちょっとアレンジすれば主菜に早変わりします。ネギをのせて焼くだけでも十分主菜になります。野菜の煮物に加えれば、一品で野菜と魚の両方をとることができます。

高齢期には、活動量の低下や味覚の変化などで、気づかないうちに食事量が減っていることがあります。自覚していない人も多いので、かかわる専門職が気づくことが大事です。そして、なるべく簡単に、バランスよく栄養がとれるように、ちょっとした工夫をぜひお伝えしましょう。

次回はさらに低栄養を掘り下げて、少量しか食事をとれない人の、栄養補給や補助食品の選びかたについてお伝えしていきます。

当記事に掲載している「10食品チェック表」「手ばかり栄養法」をまとめた利用者さん向け資料を【お役立ちツール】に掲載しておりますのでご参照ください。

第5回へ続く

注1 「さあにぎやかにいただく」は、東京都健康長寿医療センター研究所が開発した食品摂取多様性スコアを構成する10 の食品群の頭文字をとったもので、ロコモチャレンジ!推進協議会が考案した合言葉です。

執筆
稲山未来
Kery栄養パーク 代表
管理栄養士、認定在宅訪問管理栄養士、介護支援専門員、認知症ケア専門士、健康咀嚼指導士
新宿食支援研究会認定栄養ケアステーション管理者、東京都栄養士会新宿支部役員

在宅訪問管理栄養士として訪問栄養指導を行う傍ら、フレイル予防講座や栄養講座など地域の高齢者に向けた栄養普及活動も行っている。
 
記事編集:株式会社メディカ出版

【引用】
1)厚生労働省.『令和元年国民健康・栄養調査結果の概要』2020.
【参考】
〇若林秀隆編.『フレイル高齢者これからどう診る?』.Gノート.7(6,増刊号),2020,227p.

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