訪問看護ステーションの開設に必要な事業計画とは?

訪問看護ステーションの運営は、ケアを提供するだけでは成り立ちません。スタッフの育成や地域との連携、安定した運営体制の構築など――。日々の業務の中で、管理者が考えるべきことは多岐にわたります。
そのような状況で、現場の質を保ちながら訪問看護事業を継続していくためには、目の前の業務だけを見ていては不十分です。「誰にどんなサービスを提供していくか」という長期的な視点が欠かせません。
そこで重要になるのが、ステーションを立ち上げる前に立案する「事業計画」です。
目次
訪問看護で事業計画を立てる理由
訪問看護ステーションを開業する際、まず着手すべき事業計画。
とはいえ、 「そもそも事業計画って何?」 「現場経験しかないけど、自分にできるかな?」という不安を感じている方は少なくないでしょう。 看護の分野は、経営や営業などの文脈では語られることが少なく、「ケアの質が高ければ成り立つ」というイメージを持たれやすいのも事実です。
しかし実際には、「どうやって事業として継続させていくか」を考えなければ、安定した運営は難しくなります。
そこで今回は、訪問看護ステーション立ち上げにおける事業計画とは何か、そしてなぜ必要なのかについて、わかりやすく解説していきます。
事業計画は事業を成立させるための「設計図」

事業計画とは、一言でいうと「事業をどうやって成り立たせるかを整理したもの」です。
訪問看護に置き換えると、例えば次のような問いに答えていくことになります。
- どんな利用者にケアを提供するのか
- ステーションの強みは何か
- どのエリアで開業するのか
- どうやって地域の方々に選んでもらうのか
これらを整理せずに開業してしまうと、なんとなく運営している状態になりかねません。気がついたときには利用者が集まらず、経営が不安定になるリスクも出てきます。
逆に言えば、事業計画をしっかり立てておくことで、ステーションの運営理念が明確になり、経営判断の軸にもなっていくでしょう。
訪問看護の利用者は、自然に増えるわけではない
訪問看護は本来、必要な人に届けるものです。
一般的な商売のように、広告や営業で売り込むようなものではありません。
そのため、「いいケアをしていれば自然と利用者が増えるのでは?」と思われることもあります。
しかし実際には、地域の中で複数の訪問看護ステーションが存在しており、その中から選ばれる必要があります。
つまり、「自分たちのステーションだからこそ発揮できる価値」を考えることが重要です。
ここで必要になるのが、まず地域のニーズを知り、他のステーションの特徴を調べること。そしてこれらを踏まえ、どんな価値を発揮するステーションにしていくかを考えることです。
地域ごとの具体的なニーズを把握する

選ばれるステーションにしていくためには、地域のニーズを具体的に知っておく必要があります。
エリアによって、訪問看護を利用したい方のニーズは大きく異なります。
- 独居の高齢者が多い
- 小児医療のニーズが高い
- すでに多くのステーションがある
などの情報を把握していないと、「ニーズが少ない分野を選んで開業してしまう」「他のステーションが多すぎて選ばれない」といった状況にもなりかねません。
逆に、地域のニーズと自分たちの強みが一致すれば、無理に利用者を増やそうとしなくても選ばれやすいステーションになるでしょう。
そのため事業計画では、「どこで・誰に・何を提供するのか」をセットで考えることが重要です。
地域の中で選ばれる理由を把握する
数あるステーションの中から選ばれるためには、自分たちだからこそ発揮できる価値を考える必要があります。近隣のステーションの特徴を踏まえ、独自の「強み」を見出し、育てていきましょう。
例えば、
- 難病の利用者へのケア体制がある
- 精神科看護に詳しい人材を確保できている
- 小児分野の看護・医療体制が整っている
などの高い専門性があれば、これらを強みとして、他のステーションとは異なる価値を発揮できます。
このように「どんなサービスを、誰に、どのように提供するか」を、「自分たちだからこそ発揮できる価値」とセットで考えることが、選ばれる事業所づくりにつながるのです。
計画を実現可能にする3ステップ
事業計画は、ただ考えるだけでは机上の空論になってしまいます。実行できる形に落とし込むためには、次の3ステップで進めるとよいでしょう。
ステップ1.やるべきことを洗い出す
手続き・採用・営業準備など、必要なタスクを整理することで、抜け漏れを防げます。
ステップ2.タスクを分類分けする
大小さまざまなタスクを、大まかなジャンルごとに振り分けていきます。
ステップ3.期限から逆算してスケジュールを組む
いつまでに開設するのか、そのために何をいつまでにやるのかを決めるフェーズです。月や週単位で何をやるかまで落とし込むことで、計画が現実的になります。
また、計画通りに進まないことも考慮し、予備日を設けるようにしましょう。
まとめ:事業計画は、経営で迷わないための地図になる
事業計画は「どうやってこの事業を続けていくのか」を、言葉に落とし込んだものです。
日々さまざまな判断を求められる訪問看護管理者にとって、方向性を示す地図があることで、経営の安定性は大きく変わっていくでしょう。
もし今あなたが立ち上げを考えているのであれば、
「自分は、どんな訪問看護ステーションをつくりたいのか?」
「誰に、どんな価値を届けたいのか?」
といった問いを言葉にすることが、事業計画の第一歩です。
次回のコラムでは、収益構造や人員体制などの視点で事業計画をどう立てるべきか、具体的に解説していきます。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう。
| 執筆・編集者:米沢 まさこ(看護師ライター) 監修:小瀬 文彰(看護師・保健師・経営学修士) 株式会社UPDATE代表取締役 ![]() 2013年慶應義塾大学看護医療学部卒。 ケアプロ訪問看護ステーション東京にて、新卒訪問看護師としてキャリアをスタート。訪問看護の現場・マネジメント経験の後、薬局・訪問看護を運営するスタートアップ企業にて最高執行責任者として40拠点・年商65億規模の経営に携わり、上場企業へのグループインを実現。 現在は株式会社UPDATEの代表として、訪問看護のマネジメントコーチ(経営・組織づくり支援)や組織マネジメント講座を通し、「想いある医療者に、マネジメントの力を」届ける事業を展開中。 その他、業界団体の研修会登壇や調査研究支援(シンクタンク事業)も実施中。 |
