コラム

訪問看護師向け在宅看取り教育プログラムPENUT 研修風景&受講者の声/日本訪問看護財団 

訪問看護師向け在宅看取り教育プログラム(受講者の声)

在宅での看取りに関わる訪問看護師には、実践を支える専門的な知識や技術に加え、療養者やご家族との関わり方、多職種との連携など、幅広い力が求められます。そうした力を体系的に学べるのが、日本訪問看護財団による訪問看護師向け在宅看取り教育プログラム「PENUT(ピーナット)」です。本記事では、訪問看護ステーションで行われたPENUT演習の様子や受講者の声を紹介するとともに、研究成果から見えてきた受講後の実践の変化についても解説します。

PENUTの研修風景

PENUTは、オンデマンド講義とライブ演習で構成されるプログラムです(詳細は前回の記事をご参照ください)。ライブ演習は、150名規模のオンライン研修から、数名で行う集合研修まで、目的に応じて多様な形式で実施されています。今回は、2026年1月にあすか山訪問看護ステーションで開催されたPENUT演習の様子をご紹介します。 

ディスカッション風景

開催場所:あすか山訪問看護ステーション(東京都北区) 
開催日時:2026年1月17日(土) 9:30~15:00 

東京都、埼玉県、千葉県の訪問看護ステーションより訪問看護師5名が参加しました。午前は「訪問看護計画の立案」、午後は「コミュニケーション技術の習得(ロールプレイ)」をテーマに演習が行われ、活発な意見交換が行われました。 

研修後のアンケートでは、参加者全員が「在宅看取りができそう!在宅看取りをやってみよう!」という気持ちが「とても高まった」と回答しました。その理由としては、「在宅看取りや訪問看護における大切な考え方を学び、本質的な意見交換ができた」、「みなさんが悩む部分や関わり方の工夫を知れてよかった」などの声が寄せられました。少人数・対面だからこそ生まれる深い学びと、実践に直結する気づきが多く得られた様子がうかがえました。 

PENUT受講者の声 

PENUT受講者の声を紹介します。 

大倉 みのりさん
(株式会社つむぐ風 つむぐ訪問看護ステーション/2022年度PENUT修了) 


―PENUTを受講してから、看取りケアを実践されていますか。 
ステーション全体では、年間20~30件のお看取りをしています。私自身は、PENUTを受講した当時は先輩の同行訪問でターミナルケアに携わる程度でしたが、この3年間で10件ほどのお看取りを担当させていただきました。 

―特に印象に残っているお看取りはありますか。 
とても仲のよいご家族が協力しながらお看取りされた、非がんの利用者さんが印象に残っています。ご家族は、お小水の量が少なくなってきたり、むくみが増えたりといった体の変化についていけず、不安を抱えている様子でした。そこでスタッフ間で連携し、終末期の身体の変化をまとめたパンフレットを用いて一つひとつ説明したところ、ご家族は安心され、最期まで自宅でケアを続けることができました。PENUTで学んだ「死にゆく過程の身体的変化」の知識が役立った場面でした。 

―ほかにもPENUTの講義や演習で、実践にいかせていると感じることはありますか。 
PENUTを受講した当時、利用者さんから「こんなに辛い症状が続くんだったら、もう死にたいわ」と言われた際に、どう受け止めてよいか分からず、言葉に詰まってしまう自分がいました。「在宅看取りに必要なコミュニケーション技術」の講義では、自分の中に生じる「心の壁(ブロッキング)」を自覚し、それを意識的に脇に置いて、相手に寄り添って気持ちを聴くことの大切さを学びました。今でも、利用者さんからマイナスな言葉が出たらどうしようと身構えてしまうことはありますが、自分の気持ちは一度脇に置き、まずは利用者さんの思いをありのままに受け止めることを意識して関わっています。 

―PENUTの受講を検討している方へ、メッセージをお願いします。 
お看取りに対して不安を感じている方には、ぜひPENUTを受講していただけたらと思います。「こういうとき、どうしたらいいんだろう」と感じていたことが、PENUTではしっかり学べたという実感があり、受講してよかったと思っています。終末期には、機能が徐々に低下していくことでさまざまな症状が現れますが、そのしくみは何となく頭で理解していたものの、うまく言語化できていませんでした。PENUTで学んだことで、身体の変化をご本人やご家族に説明できるようになり、それが自分の自信にもつながりました。 

研究成果からみるPENUT受講者の変化 

次に、PENUTの有効性を検証した研究成果をご紹介します。 

PENUTは終末期ケアに対する自信を向上させる 

2021年度に実施したモデル事業では、PENUTを先に受講する介入群と、後から受講する対照群にランダムに割り付け、緩和ケアに関する医療者の自信・意欲尺度(訪問看護バージョン)を用いて、PENUTの有効性を検証しました。 

介入群のみがPENUTを受講した時点で、介入群(62名)は対照群(59名)よりも「終末期ケア」および「医師とのコミュニケーション」に対する自信が向上し、「症状緩和」の困難感が減少しました。 

PENUT受講者の実践の変化―「根拠ある説明」と「柔軟なケア」 

同モデル事業参加者へのインタビュー調査では、PENUT受講により知識を習得できたことで、「亡くなるまでの身体的変化がイメージできるようになった」、「症状に対するアセスメントやアプローチ、ケアの幅が広がった」、「暮らしの中で柔軟なケアができることに気づかされた」といった変化が語られました。さらに、「病態変化や予後を予測し先手を打った対応がとれるようになった」、「療養者やご家族に根拠ある説明ができるようになった」など、実践面での成長も明らかとなりました。

研修情報・詳細はこちら 
さらに詳しい情報や研修開催情報については、PENUT専用ウェブサイトをご覧ください。 
https://www.jvnf.or.jp/penut/ 

次回はPENUT指導者の声と今後の展望についてご紹介します。 

執筆:濱谷 雅子(はまたに まさこ)/公益財団法人 日本訪問看護財団 事業部 
博士(看護学)。早稲田大学スポーツ科学部を卒業後、修士課程から看護学の道へ。2020年度より現職。日本訪問看護財団が5年間にわたり実施した「訪問看護師向け在宅看取り教育プログラムの開発」事業では、主研究者として開発に携わる。訪問看護師の優れた実践をインタビュー調査などを通じて理論化し、その成果を広く社会へ発信する研究活動を行っている。 

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