訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム「PENUT-T」特徴&指導者の声/日本訪問看護財団

在宅での看取りを支える訪問看護師の育成には、実践力だけでなく「人を育てる力」が求められています。PENUT連載最終回となる本記事のテーマは、在宅看取りを地域に広げ、次世代を育てる指導者を育成するための実践的プログラム「PENUT-T(ピーナット・ティー)」です。プログラムの特徴や指導者のリアルな声を通して、その魅力と可能性をご紹介します。
訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム(PENUT-T)とは
PENUTの連載第3弾では、訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム(PENUT-T: Program of End-of-life care for home visiting Nurses Training-Trainer)をご紹介します。
PENUT-Tは、在宅看取りを推進するという使命感をもち、所属施設や地域において在宅看取りを実践できる訪問看護師を意欲的に養成できる「指導者」の育成を目的としたプログラムです。2024年度より年1回開催しており、現在は全国で126名の指導者が活動しています(2026年度末時点)。
プログラムは講義と演習で構成され、1日間の集合研修として実施されます(表1)。

PENUT-Tの4つの特徴
1.教育学の専門家による講義
講義「グループワーク研修の実施・評価とファシリテーターの役割・コツ」は、教育学の専門家が担当します。講義では、実践者を対象とした研修で押さえておくべき理論やポイント、ファシリテーターの役割と実践のコツについて学習します。

2.PENUTスーパーバイザーによるファシリテータートレーニング
演習はグループワーク形式で実施され、各グループにはスーパーバイザーが配置されます。スーパーバイザーは、在宅看取りを指導的立場で実践し、社会活動を通じてPENUTの質向上と普及に貢献してきた訪問看護師の方々です。

後列左から:岩本 大希氏、福田 裕子氏、清野 美砂氏、島田 珠美氏、黒澤 薫子氏、豊田 好美氏
3.修了後は「指導者」としてPENUT演習の開催が可能に
PENUT-Tの修了者は、指導者としてPENUTの演習を開催できるようになります。指導者は、開催日時、開催形式(集合/オンライン)、受講料などを自ら設定し、地域や所属施設の在宅看取り実践力向上を目的に研修を企画・実施しています。
4.エビデンスに基づくプログラム
PENUT-TはPENUTと同様に、アンケート調査、インタビュー調査、専門家のレビュー、モデル事業を経て開発された、エビデンスに基づく系統的なプログラムです。PENUT-Tの有効性を検証した研究成果は、日本看護科学学会の学術集会1)および学会誌2)にて公表しています。
1)濱谷 雅子, 平原 優美, 小沼 絵理, 沼田 華子, 野口 麻衣子, 菱田 一恵, 岡本 有子, 竹森 志穂, 新幡智子, 山田 享介, 栗田 佳代子, 山本 則子. 訪問看護師向け在宅看取り教育プログラム(指導者)(PENUT-T)の有効性の検討. 第44回日本看護科学学会学術集会(2024年12月)
2)濱谷 雅子, 平原 優美, 小沼 絵理, 新幡 智子, 沼田 華子, 野口 麻衣子, 菱田 一恵, 山田 享介, 岡本有子, 竹森 志穂, 栗田 佳代子, 山本 則子. 訪問看護師向け在宅看取り指導者養成プログラム(PENUT-T)の有効性の検討. 日本看護科学会誌. in press.
指導者の声
地域で活躍する指導者の声を紹介します。
| 小川 綾乃さん (ソフィアメディ訪問看護ステーション成城 管理者、訪問看護認定看護師/2025年度PENUT-T修了) ―PENUT-Tを受講し、指導者を取得した理由を教えてください。 これまでもELNEC-J(End-of-Life Nursing Education Consortium-Japan)コアカリキュラム指導者として、講義を行ってきましたが、より在宅の場にフィットした内容で学びを届けたいという思いがありました。また、自ステーションが本年度から東京都の教育ステーションに認定されたこともPENUT-T受講のきっかけとなりました。お看取りの経験が少ない地域のステーションに対してPENUTを実施することで、地域全体の在宅看取りケアの底上げに貢献できるのではないかと考え、受講を決めました。 ―PENUT-Tを実際に受講してみていかがでしたか。 鍋田先生の「グループワーク研修の実施・評価とファシリテーターの役割・コツ」は、本当に素晴らしく、思わず引き込まれる講義でした。私はこれまで、研修では本題を話すことが最も重要だと考えており、研修の目標はついさらっと流してしまいがちでした。しかし、まずは目標をしっかり共有することが、受講者の学びを大きく左右するのだと気づかされました。さらに、「受講者としっかり目線を合わせる」など、講義を進めるうえでの受講者との接し方や心構えも学ぶことができました。受講後すぐに講師を務める機会があったのですが、学んだことを早速実践しています。 ―グループワーク(演習)はいかがでしたか。 グループメンバーは初対面の方ばかりだったので、最初はお互いをきちんと評価し合うことが難しく、「コミュニケーションが上手ですね」「笑顔が素敵ですね」といった、当たり障りのないフィードバックに終始していました。そんなとき、スーパーバイザーから「そういうのはいらない。大事なことはきちんと伝えなければ駄目だ」とズバッと指摘していただき、受講者の学びのために指導者としてどうあるべきか、その心構えを教えていただきました。 また、スーパーバイザーは、常に広い視野で状況を捉えていて、いただくアドバイスはどれも有意義でした。大人数の前で手を挙げて質問するのは躊躇してしまう場面もありますが、各グループにスーパーバイザーがついてくださったことで、気軽に質問や相談ができ、理解が深まり、腑に落ちる学びが得られました。ここで身につけたファシリテーションスキルは、面談などさまざまな場面で生きています。 ―PENUTの開催についてはどのようにお考えですか。 自社では、新卒や卒後3年以内の若いスタッフが増えています。お看取りの経験がなく、終末期の身体の変化を知らないスタッフも少なくありません。そのようなスタッフには、PENUTで知識を身につけてもらうことで、利用者や家族に安心していただけるサポートにつながると考えています。 まずは自社スタッフを対象にPENUTを実施し、その後は地域でもぜひ開催してみたいです。一方で、演習開催の前に、講義受講料が必要となる点が1つのネックだと考えています。例えば、会社全体から受講希望者を募り、受講料を会社負担で実施できないかなど、いくつかの方法を検討してはいるのですが、まだ実施には至っていないのが現状です。 ―PENUT-Tの受講を検討している方へメッセージをお願いします。 コミュニケーションの取り方やファシリテーションの方法など、自分自身の学びにつながり、実践でいかせる内容が多くあります。受講に迷っている方は、ぜひ受講していただけたらと思います。 また、一緒に学んだ仲間との横のつながりができるのもPENUT-Tの魅力です。地域でPENUTを開催する際にも、一人で抱え込まず、仲間と協力しながら取り組むことができます。仲間づくりという点でも、とてもおすすめの研修です。 |
| 土屋 清美さん (つむぐ訪問看護ステーション 管理者、訪問看護認定看護師/2023年度 PENUT-T修了) ―PENUT-Tを受講し、指導者を取得した理由を教えてください。 これまでELNEC-Jコアカリキュラム指導者として地域で活動してきました。ELNEC-Jは病院向けの内容も多いのですが、在宅看取りに特化したプログラムが新たにできたと聞き、自分自身の知識を深めたいと思ったことが受講理由のひとつです。自ステーションのケアの質をより高めたいという思いもありました。さらに、訪問看護認定看護師として「地域に向けて何かできることはないか」と考えていたこともあり、指導者の取得を決めました。 ―自ステーションのケアの質の向上という点で、PENUTをどのようにいかされていますか。 PENUTでは、訪問看護計画の立案とコミュニケーションの演習を行います。経験の浅い訪問看護師が作成する訪問看護計画書は、どうしても看護師側の視点に寄ってしまう傾向があります。そのため、「利用者の目線に立つとどのような計画になるだろうか」と一緒に考える時間を大切にしています。また、利用者や家族への声掛けに躊躇してしまうスタッフもいるため、実際の場面を振り返りながら、コミュニケーションの取り方について一緒に考える機会をつくっています。 スタッフにはPENUTの受講を積極的に勧めています。私もスタッフも、PENUTの教材をボロボロになるまで読み込み、日々の実践にいかしています。 ―地域に向けてはいかがでしょうか。 自ステーションが所属する練馬区訪問看護ステーション連絡会の石神井ブロックには、研修会チームがあり、不定期で勉強会を行っています。まずは自ステーションのケアの質を高めていくことを大切にしながら、いずれはPENUT開催の企画を提案できたらと考えています。一方で、開催に至るまでのハードルの高さや日々の忙しさなどには課題も感じています。先日、あすか山訪問看護ステーションがPENUTを開催されたと伺いました。そのような事例も参考にしながら、地域での学びの場づくりにつなげていきたいと思っています。 ―PENUTやPENUT-Tの受講を検討している方へメッセージをお願いします。 PENUTは、在宅という実践の場をしっかりと見据えてつくられたプログラムなので、困ったときに該当ページを開くと、何かしらのヒントが得られると思います。演習では、訪問看護計画書の作成方法やコミュニケーションについてグループで話し合うことで、自分の傾向に気づき、多くの学びを得られる点も魅力です。さらにPENUT-Tを受講して、学んだ知識をスタッフ教育にいかせるようになったと実感しています。 |
連載のおわりに
ここまで3回にわたり、PENUTについてご紹介してきました。
開発に携わった多くの訪問看護師、講師、研究者の思いが形となり、PENUTを受講してくださった訪問看護師の皆さんが、今日も全国で素晴らしいケアを実践されていることは、私たちにとって何にも代えがたい喜びです。
一方で、PENUTをより多くの地域や多様な現場へ届けていくためには、例えば、指導者による演習開催の推進、受講者のフォローアップ体制の強化など、まだまだ取り組むべき課題が残されています。さらに、プログラムを時代の変化や現場のニーズに合わせてブラッシュアップし続けていくことも必要です。
これからも、現場の皆さんとともに歩みながら、より実践に根ざした学びの場を育てていきたいと考えています。
| PENUT受講案内 1. 講義 お申込受付中 受講形式:オンデマンド配信 受講時間:約11時間(テスト含む) 受講可能期間:60日間(この間は繰り返し受講可能) プログラム・対象等詳細: https://www.jvnf.or.jp/penutkensyu/ 2. 演習 【日本訪問看護財団主催】 (1)会場開催 開催日時:2026年11月14日(土)9:30~16:05 申込期間:2026年8月1日(土)~10月28日(水) プログラム・対象等詳細:https://jvnf.manaable.com/login/cd87bf81-a546-4684-be21-d46b52f07f9f/detail (2)Web開催 開催日時:2027年1月30日(土)9:20~16:05 申込期間:2026年10月1日(木)~2027年1月13日(水) プログラム・対象等詳細:https://jvnf.manaable.com/login/230e3b63-f73b-4f42-9799-e2e9e012e5fa/detail 【他団体(PENUT-T修了者)主催】 他団体主催の演習は、トップページのお知らせに掲載しております https://www.jvnf.or.jp/penut/ PENUT-T受講案内 受講形式:集合研修(東京会場) 開催日時:2027年2月20日(土) 申込期間:2026年11月1日(日)~2027年2月3日(水) プログラム・対象等詳細は、日本訪問看護財団公式ホームページにて後日公表いたします |
| 研修情報・詳細はこちら さらに詳しい情報や研修開催情報については、PENUT専用ウェブサイトをご覧ください。 https://www.jvnf.or.jp/penut/ |
| 執筆:濱谷 雅子(はまたに まさこ)/公益財団法人 日本訪問看護財団 事業部 博士(看護学)。早稲田大学スポーツ科学部を卒業後、修士課程から看護学の道へ。2020年度より現職。日本訪問看護財団が5年間にわたり実施した「訪問看護師向け在宅看取り教育プログラムの開発」事業では、主研究者として開発に携わる。訪問看護師の優れた実践をインタビュー調査などを通じて理論化し、その成果を広く社会へ発信する研究活動を行っている。 |