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マインドフルネスとは?効果や方法・医療現場での活用について解説

マインドフルネス

ストレス軽減や感情のコントロールを目的とし、自己認識力を高めるといわれる「マインドフルネス」は、近年ビジネスパーソンに取り入れられるケースが増えてきました。医療現場でも注目されはじめているほか、訪問看護の利用者さんが興味を持たれている可能性もあるため、訪問看護師の方は知っておくとよいでしょう。この記事では、マインドフルネスの効果や方法、医療現場での活用などについて詳しく解説します。

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、「今この瞬間」の感情や状況などを受け入れ、過去や未来にとらわれない姿勢を持つこと、ありのままの自分の思考を観察することです。

例えば、何らかのトラブルが起きたときに、「どうしよう」「叱られるかもしれない」「以前にもこのようなことがあった」など、未来や過去につながる思考になることがあります。そうなれば強いストレスを感じる上に、トラブルへの対処が遅れたりミスを重ねたりするでしょう。マインドフルネスを実践することで、トラブルの深刻化や複雑化を防ぐとともに、精神的なストレスを軽減できる可能性があります。

また、脳の活性化や集中力の向上など、さまざまな効果が期待できるともいわれています。

マインドフルネスが医療に応用されるまでの経緯

マインドフルネスはストレス管理やメンタルヘルスの向上に効果があるとされているため、当初は主に「ストレス緩和」に焦点を当て、看護師や医師が受ける職業上のストレス管理に活用されていました。

また、近年はマインドフルネスが不安や抑うつの症状緩和やがん患者のメンタルヘルスの改善などに役立つ可能性があることを示す論文が報告されるようになり、医療現場でも活用されるようになってきました。

マインドフルネスの医療の現場での活用例

マインドフルネスは、医療の現場で次のように活用されています。

医療従事者のストレスの軽減

医療機関では、医師、看護師、カウンセラー、セラピストなどの医療従事者向けにマインドフルネスのアドバイスが行われることもあります。マインドフルネス瞑想、ストレス管理のアドバイスなどにより、長時間勤務、患者とのエモーショナルな接触(悲しみ、怒り、不安など、激しい感情の動きを伴うコミュニケーション)、大きな責任感に由来するストレスの軽減が期待できます。

睡眠の質向上

ストレスが大きい状況下では睡眠の質が低下し、医療の安全性に悪影響を及ぼす可能性があります。マインドフルネスは不眠症の症状を軽減するのに役立つことがあるため、ストレスで睡眠不足になっている場合は試してみましょう。

患者の病気に伴う精神的不調のケア

患者は病気や治療に伴ってしばしばストレスや不安を感じます。マインドフルネスは、患者がリラックスし、精神的な安定を維持するのに役立ちます。例えば、うつ病による精神的な落ち込み、難治性の疾患に罹患した際の精神的なショックなどのケアが可能です。

マインドフルネス瞑想のやり方

マインドフルネス瞑想は次の流れで行います。

  1. 座った状態で目を閉じます
  2. ゆっくりと息を吸って吐くことに集中します
  3. 途中で雑念が浮かんできたら、それをあるがままに観察します
  4. 呼吸に意識を戻します

これを1日15~25分を毎日行いましょう。雑念に対する観察においては、過去を振り返ったり未来のことを考えたりしてはいけません。今、この瞬間の思いだけを観察します。

マインドフルネスの注意点

アメリカの国立衛生研究所によると、マインドフルネスはリスクが少ないと考えられていますが、一部の人は不安や抑うつなどが生じる可能性があります。6,000例以上を対象とした研究においては、約8%の被験者がネガティブな経験を報告しています(※)。マインドフルネスが自身に合わないと感じたときは速やかに中止しましょう。

厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』「瞑想とマインドフルネスについて知っておくべき8つのこと」より

ほかに知っておきたい心身のリラックス方法

ストレスを軽減するための取り組みは、マインドフルネスだけではありません。ほかにも次のような方法があります。

呼吸法

ストレスを受けているときは普段よりも呼吸が早くなり、酸素を十分に取り込めなくなります。次の呼吸法で呼吸を整えましょう。

  1. 「1・2・3」と数えながら鼻からゆっくりと息を吸い込みます。このとき、おなかも一緒にふくらませましょう
  2. 「4」で息を軽く止めます
  3. 「5・6・7・8・9・10」と数えながら口から息をゆっくりと吐きます。このとき、おなかも一緒にへこませましょう

漸進性筋弛緩法(ぜんしんせいきんしかんほう)

ストレスを感じると無意識に体に力が入ります。漸進性筋弛緩法は、次のように動作することで体の緊張をほぐす方法です。

  1. 顔や手、肩などに力を入れて5秒程度キープします
  2. ストンと力を抜いて10~20秒ほどキープします

力を抜いた瞬間、筋肉が緩んで、温かさを感じれば成功です。

* * *

マインドフルネスを実践することで、そのときに起きたトラブルへの対処が可能になるほか、ストレスを軽減できる可能性もあります。また、疾患に伴う精神的苦痛の緩和にも期待できます。今回、解説した内容をご自身のストレス管理や利用者さんへのアドバイスにぜひ役立ててください。

編集・執筆:加藤 良大
監修:豊田 早苗

医師 豊田 早苗
とよだクリニック院長
鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。

【参考】
〇国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 行動医学研究部「こころの健康を保つために大切なこと
https://www.ncnp.go.jp/nimh/behavior/anxiety/selfcare.pdf
(2023/9/28閲覧)
〇大阪府こころの健康総合センター「三つ折りリーフレット メンタルヘルス 気軽にリラックス」(2015年3月発行)
https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/13282/00000000/relax2015.pdf
(2023/9/28閲覧)
〇Elizabeth A. Hoge, MD1; Eric Bui, MD, PhD2; Mihriye Mete, PhD3; et al(November 9, 2022)「Mindfulness-Based Stress Reduction vs Escitalopram for the Treatment of Adults With Anxiety Disorders: A Randomized Clinical Trial」2023;80(1):13-21. doi:10.1001/jamapsychiatry.2022.3679
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/article-abstract/2798510
2023/10/6閲覧)
〇NCCIH「8 Things to Know About Meditation and Mindfulness」
https://www.nccih.nih.gov/health/tips/8-things-to-know-about-meditation-and-mindfulness
(2023/9/28閲覧)
〇一般社団法人マインドフルネス瞑想協会「マインドフルネスとは?」
https://mindfulness-association.com/mindfulness/
(2023/9/28閲覧)
〇川崎市.川崎市健康福祉局精神保健福祉センター「『からだ』と『こころ』のリラックス」(2021年改訂)
https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000117/117031/singatakoronachirasi(kadadatokokonorelax).pdf
(2023/9/28閲覧)

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