インタビュー

表皮水疱症の食事&栄養管理【特別トークセッション 第3回】

表皮水疱症の食事&栄養管理【特別トークセッション 第3回】

全身の創傷から栄養が漏れ出てしまう表皮水疱症において、「食事と栄養管理」は重要なテーマです。本連載では、自家培養表皮移植による再生医療を行う蒲郡市民病院の医師、皮膚・排泄ケア認定看護師、高校2年生の当事者・山崎璃斗さんとお母様をお迎えしたトークセッションの模様を全4回でお届けします。第3回は、栄養障害を補うための医学的アプローチやご家庭での試行錯誤について語り合います。

久保 良二,藤田 順子,山崎 璃斗,山崎 奈美
久保 良二(くぼ りょうじ)先生
蒲郡市民病院 皮膚科 部長。日本専門医機構認定皮膚科専門医。専門領域は乾癬、白斑、褥瘡。名古屋市立大学医学部臨床准教授、蒲郡市民病院特定認定再生医療等委員会委員。

藤田 順子(ふじた じゅんこ)さん
蒲郡市民病院 看護部/皮膚・排泄ケア特定認定看護師。山崎璃斗さんの同院での初めての手術をきっかけに介入を開始。
 
山崎 璃斗(やまざき りと)さん
栄養障害型表皮水疱症の当事者。現在はS高等学校(通信制)の2年生。
幼少期より皮膚や粘膜の脆弱性に伴う広範な創傷や、関節の拘縮(屈曲変形)などの症状を抱えながら療養を継続。2020年より蒲郡市民病院にて自家培養表皮による再生医療を複数回受けている。

山崎 奈美(やまざき なみ)さん
璃斗さんの母 / 看護師・DebRA Japan(表皮水疱症友の会)所属。璃斗さんの誕生直後から日々の洗浄・ガーゼ処置・栄養管理を担ってきた。最新の知見を集めながら、在宅ケアを実践。救命救急受付の仕事に就いている。

取材協力
蒲郡市民病院
株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC)

※本文中一部敬称略
※本記事は、2026年6月4日時点の情報をもとに構成しています。

傷から栄養が漏れ出てしまう

――久保先生、「栄養障害型表皮水疱症」において、栄養管理が重視される医学的な理由について教えてください。

久保: 璃斗くんの場合、病名に「栄養障害型」とついている通り、栄養を口から入れたとしても、全身の傷から栄養が外に漏れ出ていっちゃうんですよね。再生医療を始める前は本当に皮膚の状態が深刻で、低栄養、低アルブミン血症、強い貧血症状に加えて、身長・体重も標準偏差から離れていたことが課題でした。

――入院時は、病院側からはどのような食生活のサポートや栄養指導が行われているのでしょうか。

藤田:入院される時は、当院の栄養士が面談をして、メニューを細かく調整しています。食べられないものがある時は、お母様が外から買ってきてくれた持ち込みの食事で調整してもらうこともありました。

――ご家庭では、どういった工夫をされていますか?

山崎(母): 水分も皮膚から抜けていってしまうので、便秘にもなりやすく、内科の先生にも相談しながら試行錯誤してきました。この子の場合は、食物繊維があまり効果的ではなく、水分を多めにとることを心がけています。タンパクや鉄、亜鉛を補うために飲む栄養剤も処方されていますが、大変なようです…。

璃斗: おいしくはないです(笑)。がんばって飲んでいます…。

傷から栄養が漏れ出てしまう

食事による口腔内の傷

――食事による口腔内の傷にも注意が必要だと思いますが、最近はどういった工夫をされているのでしょうか。

藤田: 基本的には、表皮水疱症の方はお菓子も口の中でスッと溶けるチョコレートやマシュマロなど飲み込むのに負担がないものを用意されることが多いと思います。ただ、最近の璃斗くんはご本人が自由に食べたいようですね(笑)。

山崎(母): そうなんです。小さいころはとても気を付けて対応していました。おせんべいを食べたらかけらがささってしまうことがありますし、海苔巻きを食べさせたら海苔が唇に張り付いて、皮膚も剥がれてしまったという経験もありますし…。おやつはアイスクリームが多かったですね。でも、今は自分で飴をガリっと噛んで食べています。当然血が出ていますし痛いはずですが…。

璃斗: 今は食べたいという気持ちのほうが強いんです(笑)。

食事による口腔内の傷

見落とされがちな「歯科治療」の壁

――栄養・口腔ケアの領域で、他に困っていることはありますか?

山崎(母): 実は、どこまで口の中の皮膚がめくれるかわからないために、歯科で基本的に治療をしてくれないんです。これまでの経験上は「口腔内のチェックとフッ素を塗るのみ」が基本でした。

DebRA Japan(表皮水疱症友の会)を通じて他の患者様やご家族との接点もありますが、表皮水疱症で歯科治療ができずに悩んでいる方は多いんです。

久保: そうだったのですね。表皮水疱症の患者様が歯科治療でそれほど困っているというのは、初めて知りました。大きな病院の歯科・口腔外科と皮膚科が連携を取らないといけない領域だと思います。医療者側も気を留めておかなければいけない重要なポイントですね。

――多職種連携がいかに重要であるかも浮き彫りになりました。ありがとうございます。

最終回となる第4回では、再生医療について伺います。

取材・執筆・編集: NsPace編集部

【参考】
〇難病情報センター「表皮水疱症(指定難病36)」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/5338
2026年7月30日閲覧

× 会員登録する(無料) ログインはこちら