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第7回 日本在宅医療連合学会大会の舞台裏と2040年に向けての展望【学会レポート】
第7回 日本在宅医療連合学会大会の舞台裏と2040年に向けての展望【学会レポート】
特集
2025年9月16日
2025年9月16日

第7回 日本在宅医療連合学会大会の舞台裏と2040年に向けての展望【学会レポート】

第7回日本在宅医療連合学会大会は、2025年6月14日(土)・15日(日)に出島メッセ長崎にて開催されました。テーマは、「在宅医療の未来を語ろう。~2025年問題に向き合い、2040年に備える~ 長崎から全国へ」です。本記事では、石垣 泰則氏(日本在宅医療連合学会 前代表理事)のインタビューと、学会大会のプログラムのレポートをお届けします。 ※本記事は、2025年6月時点の情報をもとに制作しています。 石垣 泰則氏インタビュー 2025年6月に開催された第7回日本在宅医療連合学会大会では、医師、看護師、リハビリ職、介護士、ケアマネジャー、管理栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカー(MSW)など、数多くの職種の方々が参加していました。行政や企業などとも連携した多様な各地域の事例が共有され、ハラスメントにまつわる問題やICT利活用をはじめ、対応を急ぐべきテーマについても活発な議論が行われていました。 ここでは、前代表理事(~2025年6月12日)である石垣 泰則氏に、学会大会の舞台裏や、訪問看護の皆さまに知っていただきたいポイントなどを伺いました。 石垣 泰則氏日本在宅医療連合学会 理事(前 代表理事)/医療法人社団悠輝会 コーラルクリニック 院長 ―在宅医療連合学会大会のプログラム選定や準備はどのようにされているのでしょうか。 多職種連携や災害対応、教育・人材育成などは重要性が高いため、毎年継続的にプログラムに組み込むようにしています。一方、大会長が独自に選定するテーマもあり、今年は「2025年問題・2040年問題」がそれにあたります。運営は大会長や運営委員会に一任されていますが、過去の大会長も委員として参加し、経験・ノウハウを共有しています。会場の確保なども含めて、準備期間は通常4~5年です。 在宅医療連合学会は、医師が中心だった「日本在宅医学会」と、病院医師と在宅多職種が中心だった「日本在宅医療学会」がその名のとおり連合してできた学会で、学会大会にも幅広い職種の方々にご参加いただいています。運営委員会にも若手からベテランまで、在宅医療の分野で活躍する多職種の方々が集まっており、皆さんに有意義な時間を過ごしてもらうべく、丁寧にテーマを検討してくださっています。 ―今回の大会ではサブテーマの中に「長崎から全国へ」という言葉が入っていますが、訪問看護師の方々に特に知ってほしい取り組みなどはありますか? 長崎は在宅医療先進地域で、「長崎在宅Dr.ネット」や「あじさいネット」といった多職種連携のしくみが整っています。病院と診療所、医師同士の連携もしっかりしており、訪問看護師にとっても、非常に働きやすい環境といえるでしょう。こうした長崎の事例を多くの方々に知っていただき、各地域で連携を進める際のヒントにしていただきたいです。 ―訪問看護師さんたちへのメッセージをお願いします。 訪問看護は在宅医療の大きな推進力です。ぜひ、皆さんも日本在宅医療連合学会に参加いただき、声を大にしてアピールしてください。2026年は、札幌市(北海道)で第8回大会が開催されます。大会長の大友 宣先生がユニークな企画を数多く計画しており、SNSでも随時情報を発信していく予定ですので、ぜひご覧になってください。オンデマンド配信もありますが、ぜひ現地に集ってface-to-faceで話し合い、学び合いましょう。 また、日本在宅医療連合学会では、今年度に在宅医療における特定研修終了看護師の活用ガイドの作成を委託されています。我々も、訪問看護師の皆さんが一層活躍できるよう、尽力していきます。 第7回日本在宅医療連合学会大会 ピックアップ紹介 シンポジウム「医療依存度の高い患者様、これで安心して引き受けられます」 座長 中田 隆文氏(マリオス小林内科クリニック)座長 中山 優季氏(公益財団法人東京都医学総合研究所難病ケア看護ユニット) 在宅医療において、医療的ケア児や神経難病患者等、医療依存度の高い患者さんへの対応が求められるケースが増えており、特に在宅呼吸管理・ケアは呼吸器疾患以外の対象者の増加や機器の多様化が進み、受け入れに悩む場面が多いでしょう。本シンポジウムでは、患者さんの「やりたいこと」「したい暮らし」を実現するための支援のヒントが数多く提供されました。 どこにいても気道クリアランス法が実施でき、安全に呼吸ケアが行える環境づくりや、神経難病患者さん自身が主体的に生活を継続していくための支援のポイント、多機能型療養通所介護における支援の現状、栄養指導や舌トレーニングによる生活改善事例等が共有されました。 また、特に小児をサポートする制度・サービスは少ない現状があります。例えば、多機能型の療養通所介護を運営するにあたっては、「療養通所介護」「生活介護」「児童発達支援」「放課後等デイ」という4つの手続き・処理が必要になっているとのこと。こうした現場の実情を踏まえ、制度のアップデートの必要についても活発にディスカッションされました。 シンポジウム「長崎市の地域包括ケアシステムと多職種連携 20年の総括と検証」 座長 藤井 卓氏(藤井外科医院) 長崎在宅Dr.ネット 代表の藤井 卓氏 在宅医療先進地域である長崎の取り組みについて、これまでの約20年の歴史を振り返り検証するシンポジウム。長崎では、地域包括ケアシステムの構築に向けて、以下のような新しい取り組みを次々と行ってきました。 長崎の取り組み(一部)・長崎在宅Dr.ネット導入・あじさいネット導入長崎県内の総合病院の診療情報を、他の医療機関で活用できるしくみ・P-ネット(長崎薬剤師在宅医療研究会)導入訪問薬剤管理指導等にグループとして対応するしくみ。在宅診療所等からP-ネットの窓口に依頼すると、薬局・薬剤師が割り振られる・OPTIM(緩和ケア普及のための地域プロジェクト)への参加 これらの取り組みを推進してきた医療者たちは、在宅医療自体がまだ一般的ではなかった頃から、まるで学校の部活動のように日々仕事後に集まり、「みんなと一緒ならできる」「失敗したらまた考えればいい」という思いを持って議論を重ねてきたとのこと。 「困っている人がいるならなんとかしたい」「医療者側の都合で病院から自宅に戻れない人を出したくない」と、一人ひとりの患者さん・利用者さんに真摯に熱く向き合ってきた事例も複数紹介されました。シンポジウム内では、多職種が集まって勉強会をしている様子や飲食している姿なども写真で投影され、施設や職種の垣根を越えて、顔の見える関係性を維持しつづけてきたことがうかがえました。 シンポジウム「この町で暮らし、最期まで、自分らしく活き、逝くことは、叶えられてますか?」 ~先駆者たちが語る、目指したいこと~ 座長 白髭 豊氏(白髭内科医院)座長 安中 正和氏(安中外科・脳神経外科医院) 過去に毎年シンポジウムが開催されていた「30年後の医療の姿を考える会」(会長 秋山 正子氏)。この会にゆかりのある方々からこれまでの取り組みの紹介が共有されるとともに、2040年に向けての展望がディスカッションされました。 随時事例を交えながら、秋山 正子氏の暮らしの保健室やお看取り支援の取り組み、市原 美穗氏のホームホスピスの運営や全国ホームホスピス協会の取り組み、宇都宮 宏子氏の在宅ケア移行支援の取り組みなどが共有されました。また、座長の安中氏からは、ZEVIOUS研究(在宅医療のアウトカムと質を「見える化」するための研究)の背景にもある在宅医療現場の質に対する課題感なども提示されました。 「最期まで自分らしく生きる」ことを支えるために、利用者・患者さんご本人に寄り添い、その人の人生や思いを聴くことの重要性。そして、在宅医療を提供する施設が増えて選択肢が多様になっているからこそ、ご本人の望む暮らしをサポートするためには地域のネットワークを構築して、ひとつのチームとして利用者・患者さんを支えていくことが必要であるというメッセージが語られました。 シンポジウム「あなたの地域が被災した時、助けに行きます ~助けて欲しい診療所あつまれ~」 座長 市橋 亮一氏(医療法人かがやき 総合在宅医療クリニック 名駅)座長 佐々木 淳氏(医療法人社団悠翔会) 座長・HoMAT発起人の一人である市橋氏 本シンポジウムでは、災害時における医療福祉支援の新たな形としての「間接支援」や「広域BCP(事業継続計画)」のあり方について、能登半島地震での実体験などをもとに議論が行われました。 座長の市橋氏や佐々木氏は、被災地の災害関連死を阻止するための支援をするDC-CATの活動などと並行して、「外部支援者が日常業務を肩代わり」する間接支援の体制づくりを推進しています。市橋氏いわく「これまでの災害支援は、短期間の自発的支援が中心。業務の重複や混乱が発生しやすかった」とのこと。 「HoMAT」:https://homat.net/ HoMATは広域でのネットワーク連携により、災害時に被災の影響を受けていない地域が支援できる体制づくりを目指している。HoMAT派遣医療者は、災害対応に出向く医療者の地元の通常支援を代診する。上記ウェブサイトから登録可能 間接支援の取り組みは、2024年の能登半島地震の際にすでに実践されています。被災地に出向いた医療従事者の地元での診療を代行する体制は、災害特有の業務に集中できるため、持続可能で再現性が高く、有効であることが確認されています。 一方で、診療体制・デバイス・電子カルテ等が異なることによる戸惑いや支援者の体力的負担やストレス管理の難しさ、受援側の内部調整が必要だという課題も浮き彫りになったとのこと。実際に能登半島地震の支援に行った医師や、支援に行った医師の地元の診療を代わりに行った医師から、「受援力」の大切さや、平時からの関係性構築・双方向的人材交流の重要性等が共有されました。 交流集会「全国の看多機メンバー・興味のある方、みんな集まれ!」 座長 山崎 佳子氏(千葉県看多機連絡協議会) 左)千葉県看多機連絡協議会 会長 福田 裕子氏  右)山崎 佳子氏 本交流会では、千葉県における看多機(看護小規模多機能型居宅介護)の現状やメリット・デメリット、「千葉県看多機連絡協議会」設立の経緯、取り組み内容等が共有されるとともに、参加者がグループに分かれて、看多機における実践例や困りごと、悩みごと、疑問点等を語り合う場がもたれました。 看多機は、主治医との連携のもと、医療処置も含めた多様なサービス(訪問看護、訪問介護、通い、泊まり)を24時間365日提供する点が特徴的。医療依存度が高い方、体調が不安定な障害を抱えている方などが、住み慣れた自宅で生活しながらケアを受けることができる介護保険サービスです。看多機がスタートしたのは2012年のことですが、いまだ看多機が設立されていない市町村も多く、普及に向けて課題があります。 会場には、看多機経営者や看多機運営に興味がある人たち等が集まっており、「運営・経営がうまくいっている看多機の特徴は?」「〇〇のような患者さんは受け入れ可能なのか」「包括料金のため『使いたい放題』にならないか」「介護職にどこまで業務を任せられるのか」といった話題で活発にディスカッションされていました。 関連記事:・ちば看多機研究会「看多機を広めよう・つなげよう・深めよう」イベントレポートhttps://www.ns-pace.com/article/category/feature/multi-functional-care-event おなかの保健室 運営:よかケアネット(長崎くらしに寄り添うネットワーク) 長崎の「よかケアネット」(代表:下屋敷 元子氏)は、人生の終末期にある方やその人を支える方たちのサポートを行うボランティア団体。高齢者の方のお話を聞いて本にまとめる「聞き書きボランティア」や排泄ケアの啓発活動(POOマスター長崎)などをしています。 本学会大会の一角には、よかケアネットを中心に「おなかの保健室」を開室しており、気軽に立ち寄り、お腹のことを相談できる場所がありました。便育ハンドブック「KAIUN BENIKU HANDBOOK」(うんこ文化センター おまかせうんチッチ発行)などをもとに排泄に関する啓蒙活動を行っているほか、男性の尿漏れを防ぐための最新機器や健康的な排泄を促すサプリメントの情報なども得ることができました。 編集部メンバーも、「おまかせうんチッチ」代表でPOOマスター養成カリキュラムを考案した榊原 千秋氏による排泄ケアを贅沢にも体験。セルフケアについてのアドバイスもいただいた。 * * * 在宅医療連合学会大会では、在宅医療にまつわるさまざまなテーマで活発な議論が行われ、各地域・各分野の先進的な取り組みが紹介されていました。現場の知見や多職種連携の工夫に触れる機会となり、在宅医療の未来を考える上で多くの示唆が得られる貴重な場です。第8回大会(北海道札幌市)にも注目していきましょう。 取材・編集・執筆:NsPace編集部

受賞エピソード漫画化!「いつものアップルパイ」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「いつものアップルパイ」前編【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年9月10日
2025年9月10日

受賞エピソード漫画化!「いつものアップルパイ」後編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、ホープ賞を受賞した梶本 聡美さん(訪問看護ステーションかすたねっと/大阪府)の投稿エピソード「いつものアップルパイ」をもとにした漫画をお届けします。  「いつものアップルパイ」前回までのあらすじ作業療法士の梶本さんが、在宅リハビリの仕事を始めて早々に担当した佐藤さん。片麻痺や失語症があり、旦那さんは一生懸命介護に向き合っていました。しかし、ご本人は「希望を持ってもどうせ叶わない」と思っているようで、どうサポートしていけばよいか事業所内で相談。管理者の米島さんも訪問時の「いままでできたことができなくなっている」という佐藤さんの言葉を振り返ります。そして、佐藤さんがもともと料理が得意で、アップルパイづくりにも自信を持っていたことが突破口になるのではと考え…。>>前編はこちら受賞エピソード漫画化!「いつものアップルパイ」前編【つたえたい訪問看護の話】 「いつものアップルパイ」後編   漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者:梶本 聡美(かじもと さとみ)さん訪問看護ステーションかすたねっと(大阪府)この度はホープ賞に選んでいただき、ありがとうございました。訪問看護を始めてまだ日も浅く、迷ったり悩んだりする日々ではありますが、職員の皆さんはいつも私の話に耳を傾け、一緒に悩み、考えてくれます。また、漫画では私を主人公として描いていただきましたが、今回のアップルパイづくりも、スタッフ一丸となってみんなで対応していました。皆さんに改めて感謝の気持ちを伝えたいです。今回のエピソードの関わりは私にとってとても貴重な経験となりました。その後、Tさん(漫画内「佐藤さん」(仮名))はお亡くなりになりましたが、葬儀の際にご主人がアップルパイを作った時の写真を飾ってくださいました。ご夫婦にとって楽しいひと時を過ごすお手伝いが少しでもできたのかなと感じています。訪問看護やリハビリは医療処置や運動だけでなく、こうした関わりを大切に行っているということを漫画化を通して知っていただく機会になれば嬉しいです。 [no_toc]

受賞エピソード漫画化!「いつものアップルパイ」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「いつものアップルパイ」前編【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年9月9日
2025年9月9日

受賞エピソード漫画化!「いつものアップルパイ」前編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、ホープ賞を受賞した梶本 聡美さん(訪問看護ステーションかすたねっと/大阪府)の投稿エピソード「いつものアップルパイ」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちら・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 「いつものアップルパイ」前編 >>後編はこちら受賞エピソード漫画化!「いつものアップルパイ」後編【つたえたい訪問看護の話】   漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者:梶本 聡美(かじもと さとみ)さん訪問看護ステーションかすたねっと(大阪府) [no_toc]

受賞エピソード漫画化!「意思疎通、出来ます。」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「意思疎通、出来ます。」前編【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年8月27日
2025年8月27日

受賞エピソード漫画化!「意思疎通、出来ます。」後編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した服部 景子さん(愛全会 訪問看護ステーションとよひら・ちゅうおう/北海道)の投稿エピソード「意思疎通、出来ます。」をもとにした漫画をお届けします。  「意思疎通、出来ます。」前回までのあらすじサマリーの「意思疎通不可」にチェックが付いていた利用者のトシ子さん。訪問看護師の服部さんは、トシ子さんと介護を担う娘さんをできるだけサポートしたいと思いながらも、バイタル測定もさせてもらえない状況でした。ベテランの所長さんが訪問しても同様の結果だったことから、「トシ子さんには何か訴えたいことがあるのでは」と考え、改めて担当としてトシ子さんのサポートに向き合う決意を固めました。>>前編はこちら受賞エピソード漫画化!「意思疎通、出来ます。」前編【つたえたい訪問看護の話】 「意思疎通、出来ます。」後編 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)投稿者:服部 景子(はっとり けいこ)さん愛全会 訪問看護ステーションとよひら・ちゅうおう(北海道)3年連続で表彰いただき、誠にありがとうございます。授賞式に参加するたびに感じるのは、「全国には、こんなにも熱い想いで訪問看護に取り組んでいる仲間がたくさんいる」ということです。皆さんのエピソードを読み、お話を伺い、笑い、涙し、感動し、共感しながら、たくさんのエネルギーをいただいています。今回エピソードが漫画化されたことを、トシ子さんはもちろん、娘さん、ケアマネジャーさん、上司、同僚、家族がとても喜んでくれており、私自身も幸せな気持ちでいっぱいです。このような機会をくださったトシ子さんと娘さんに、心から感謝申し上げます。また、NsPaceの皆様の活動には、いつも深く感謝しています。これからも訪問看護師の輪がますます広がっていくことを、心より願っています。

受賞エピソード漫画化!「意思疎通、出来ます。」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「意思疎通、出来ます。」前編【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年8月26日
2025年8月26日

受賞エピソード漫画化!「意思疎通、出来ます。」前編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した服部 景子さん(愛全会 訪問看護ステーションとよひら・ちゅうおう/北海道)の投稿エピソード「意思疎通、出来ます。」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちら・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 「意思疎通、出来ます。」前編 >>後編はこちら受賞エピソード漫画化!「意思疎通、出来ます。」後編【つたえたい訪問看護の話】   漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)投稿者:服部 景子(はっとり けいこ)さん愛全会 訪問看護ステーションとよひら・ちゅうおう(北海道)

家族まるごと看るサービスも  「東大看護GNRC目白台プロジェクト」の新たな取り組み
家族まるごと看るサービスも  「東大看護GNRC目白台プロジェクト」の新たな取り組み
特集
2025年8月19日
2025年8月19日

家族まるごと看るサービスも  「東大看護GNRC目白台プロジェクト」の新たな取り組み

東京大学医学部附属病院 分院の跡地(東京都文京区目白台)にヘルスケア複合建物が誕生し、2025年7月にグランドオープンを迎えました。ここには、東京大学大学院 医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター(以下「東大GNRC」)のオープンラボや、新たな取り組みに挑戦する看護ステーションも入っています。新たな看護の拠点で行われる取り組みや研究内容に迫ります。 文京区目白台に誕生したヘルスケア複合建物 東京大学医学部附属病院 分院の跡地に誕生したヘルスケア複合建物「Tonowa Garden(トノワ ガーデン)目白台」。「SUSTAINABLE COMMUNITY CAMPUS~地域をむすぶ、世界に広がる、未来へつながる。」というコンセプトで、人同士の多様なつながりが生まれることを目指しています。 建物内には、ヘルスケア関連の施設が多数あります。サービス付き高齢者向け住宅、介護付有料老人ホーム、リハビリ特化型デイサービス、クリニック、調剤薬局、学童保育施設のほか、「東大看護ステーション目白台」、「東大GNRCオープンラボ」という新たな看護の拠点も入っています。 「東大看護ステーション目白台」とは? 東大看護ステーション目白台は、東大GNRCの教員らが立ち上げた「一般社団法人東大看護学実装普及研究所」が運営する看護ステーション。研究者であり臨床経験も積んでいるメンバーが、東大GNRCと連携しながら質の高い看護サービスを提供します。介護保険・医療保険制度による訪問看護はもちろんのこと、新しい保険外看護サービスも提供。世帯単位での月額制看護サービス「GNRCつながるケア」を展開しています。 「家族まるごと支える」新たなチャレンジ 提供:一般社団法人東大看護学実装普及研究所 「GNRCつながるケア」は、個人ではなく世帯単位で看護を提供する点が特徴的です。定期面談、メール・電話での相談、別居のご家族へのレポート送付などに対応しています(※)。介護保険・健康保険による訪問看護の対象にならない方や病院の受診に至っていない方など、これまで医療との接点がなかったご家族にも看護師による健康相談サービスを届けられる新しい取り組みです。 ※プランにより、対象人数や面談頻度、提供サービスなどは異なります。 「東大GNRCオープンラボ」とは? 東大GNRCオープンラボは、東京大学医学系研究科附属の研究機関で、東大看護系教員、大学院生、学部生などによって運営されています。 「誰もが自分と自分のまわりの人たちを大事にできる『幸せ社会』を目指す拠点」として、文京区民が気軽に立ち寄れる暮らしの保健室の機能を持つほか、さまざまな研究・取り組みが行われる予定です。多目的スペースのため、自由度高く活用できます。 直近では、2025年6月~12月に文京区からの委託事業として『共に学ぶ「ケア」講座』を実施しており、学生から高齢者まで幅広い層の方から定員を超える多数の申し込みがあったとのこと。地域住民の関心・ニーズの高さがうかがえます。 東大GNRCセンター長 山本 則子教授。東大医学部衛生看護学科を1963年に卒業した遠藤和枝さんが東大GNRCに寄贈された絵画「酸素を放出する微細藻類」と。 完成見学会も盛況 2025年5月末に行われた東大GNRCオープンラボの完成見学会では、研究分野ごとにコーナーが設けられ、研究内容や開発した商品、取り組みなどを説明。訪れた方々は熱心に聞き入っていました。 2025年5月末に行われた完成見学会での様子 例えば、地域看護学・公衆衛生看護学分野のコーナーでは、「乳児の股関節脱臼の遅診断・見落としゼロ」プロジェクトが紹介されていました。乳児股関節脱臼は、徒手検査では一部見落とされる可能性があり、発見が遅れると高齢期の変形性股関節症に至るリスクもあります。こうしたリスクを減らすために、各自治体が行っている新生児訪問指導時に保健師等による超音波検査を行うことを提案しており、一部地域で試行したことによる成果も出ています。 イベント時には、人形を用いた超音波検査の体験も そのほかにも複数の体験コーナーが設けられ、医療や健康に関心を持ってもらえるような工夫が凝らされており、活発な交流も生まれていました。 イノベーティブな発想で「新しい看護」にチャレンジ 最後に、東大GNRCオープンラボ・東大看護ステーション目白台を運営している皆さまのコメントをご紹介します。 東大GNRCセンター長 山本則子教授 看護が人間の生活にとって重要で欠かせないものであるという点は今後も変わりませんが、ニーズに応じて看護の形、やり方は変わっていきます。だからこそ私たちは、イノベーティブな発想を持ち、勇気をもって新しい取り組みにチャレンジしていくべきだと思っています。 東大GNRCオープンラボ・東大看護ステーション目白台では、多様な方々の力を合わせながら、新たな看護を生み出す研究・開発を進めていきます。 東大看護ステーション目白台 管理者 北村智美さん 「GNRCつながるケア」は保険外サービスであり、ご自宅に限らず入院先や施設での面談、通院への立ち合いなどさまざまな可能性があると思います。利用者のニーズに合わせて、柔軟な形で看護を提供していけたらと思います。 将来的にはここから得た研究知見を発表し、他地域でも提供可能な方法を検討していきたいと考えております。 東大GNRCオープンラボ 広報担当 仲上豪二朗教授 東大GNRCオープンラボは、地域の方々とともに研究を推進できる先進的な場です。 東大病院の分院が閉院した2001年以降、この建物が完成するまでに多数の検討・調整がなされてきました。東大研究者たちの強い想いや努力の積み重ね、そして東大に愛着を持ってくださっている地域の方々からの後押しなどがあったからこそ、東大GNRCオープンラボが誕生できた経緯があります。 先人たちからのバトンをしっかり受け取り、少しでも早く社会に役立つ研究を推進すべく、覚悟と信念をもって取り組んでいきます。 * * * 新たな看護の研究拠点が誕生し、世帯単位での看護サービスや市民参加型の研究活動など、先進的な取り組みが展開されています。ぜひ今後の展開に注目していきましょう。 執筆・取材・編集:NsPace編集部 ■訪問看護の紙芝居データ 公開中! お子様に訪問看護を説明したいときにも使える!未就学児向けの紙芝居「かぞくのみかた ほうもんかんごしさん」のデータを公開中!「お役立ちツール」からダウンロードできます。 >>お役立ちツール

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年7月22日
2025年7月22日

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第3話【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都) 木戸 恵子さんの大賞エピソード「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」をもとにした漫画の第3話(最終話)をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】  「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」前回までのあらすじ4人のお子さんがいるえみさんは、末期の肺がんを患っている。子どもたちと最後の思い出をつくるために、主治医の許可も得て宮崎から東京に飛行機で移動していたが、容体が急変して緊急入院。移動には高いリスクを伴うが、えみさんや夫は「宮崎へ帰りたい」と切望しており、病院は訪問看護師の木戸さんに相談した。その後、えみさんは木戸さんが運営するホームホスピスで、体力をつけるために3日ほど休養。いよいよ、在宅医のW先生やドライバーさんたちとともに、車で宮崎へ向かう。<主な登場人物>>>第1話はこちら大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第1話【つたえたい訪問看護の話】>>第2話はこちら大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第2話【つたえたい訪問看護の話】 「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第3話(最終話)   漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)投稿者: 木戸 恵子(きど けいこ)さん株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都)大賞をいただき、とても光栄で、嬉しく思います。私は訪問看護師になって27年になります。確実な医療ケアや医療処置が求められる緊張の現場ですが、まずは患者さんやご家族のお話を伺い、患者さんの心の風景を垣間見られるように、という意識を持って接しています。えみさん(仮名)も、お話を傾聴し、心の風景を共有することから関わりました。課題や心配はありましたが、ご本人・家族と医療者すべての思いを繋ぐために覚悟を決め、その場の雰囲気を瞬間的に察知しながらアセスメントに努めました。私は、常日頃から出会った関係性や連携を大切にしています。例えば、研修で学びを共にした仲間とは情報交換や視察をし合ったり、仕事仲間とはカンファレンスを繰り返したりと、絆づくりをしています。えみさんの事例においても、相談した仲間たちすべてが自分事のように対応してくれました。普段の連携力や繋がりを生かせたことは、今後のやりがいにもなります。私が出会ったとき、えみさんの体力は限界アラームが鳴り始めていましたが、たくさんの方の心に響く、熱くて強い命の炎を持っておられた方でした。改めて振り返ると、えみさんの原動力が私たちをさらに強く繋げてくださったのだと思い、感動しています。貴重な体験をさせていただきました。最後に、えみさんのご冥福を祈るとともに、ご家族様や関わってくださった仲間たちに感謝申し上げます。ありがとうございました。 >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

無理なくみんなで備える。日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【後編】
無理なくみんなで備える。日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【後編】
インタビュー
2025年7月8日
2025年7月8日

無理なくみんなで備える。日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【後編】

地震・大雨・台風等、各地で災害が起きているなか、医療現場における防災対策の重要性はますます増しています。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会でBCP作成支援活動を行ってきた戸崎さんと碓田さんに、今後のBCP作成支援活動や災害対策に対する考え方などを伺います。 >>前編はこちら手探りで始めたBCP作成支援 日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【前編】  日本訪問看護認定看護師協議会訪問看護認定看護師のネットワーク構築と、訪問看護全体の質向上を目指して2009年に誕生。訪問看護・在宅ケアのスペシャリストである認定看護師が集い、情報交換をしつつ自己研鑽を積み、地域包括ケアシステムの推進に貢献できるように活動している。参考:日本訪問看護認定看護師協議会 立ち上げ経緯&想い【特別インタビュー】戸崎 亜紀子さん星総合病院法人在宅事業部長/在宅ケア認定看護師/日本訪問看護認定看護師協議会 理事。総合病院で急性期看護を経験した後、育児・介護のため一時退職。クリニック勤務を経て星総合病院に入職し、精神科病棟を経験した後、訪問看護ステーションへ。訪問看護ステーション管理者、在宅事業部事務局長、法人看護部長を経て、現職。東日本大震災(2011)や令和元年東日本台風(台風19号)(2019)では、被災者・支援者の両方を経験。碓田 弓さん訪問看護認定看護師。総合病院にて外科病棟、緩和ケア病棟、透析室を経験した後、病院系列の訪問看護ステーションに異動し、12年勤務。介護施設併設の訪問看護ステーションの立ち上げおよび管理者を経験したのち、2023年9月よりみんなのかかりつけ訪問看護ステーション四日市に入職。 ※本文中敬称略 地域に広がっていくBCP 2024年度BCP作成支援 セミナーの様子 ―前編ではこれまでのBCP作成支援活動について伺ってきましたが、今後の活動について教えてください。 戸崎: 活動内容は未定ですが、アンケートの反応も良かったので、可能であればニーズに応じて実施していきたいと思っています。いろいろな方向性が考えられますが、碓田さんは今後どういった活動が重要だと思いますか? 碓田: 個人的には、連携型BCP・地域BCP策定モデル事業が推進されているので、これをどう地域に広げていくか、というところが重要になってくるのではないかと思っています。 戸崎: 確かに、それは大切ですね。私は今後、事業所によってBCPへの温度差が広がっていくのではないかと考えています。BCPに関しては、「委託会社を利用してとにかく作成を間に合わせた」というケースもある一方で、「もっと連携を強めて地域に広げていきたい」という取り組みをしているケースもあります。 すでにBCPに関連する無料の研修やツールもかなり増えてきましたが、それでも「どうすればよいかわからない」「参加できていない」という方がいらっしゃる現状があります。基本のところからわからないと言っている方々を底上げした方がいいのか、それとも先を見据えているステーションに対してもっと先に行けるように支援していけばいいのか……。慎重に検討したいところです。 碓田: そうですね。私の体感としては「とにかく間に合わせた」事業所が大半なのではないかなと思っています。シミュレーションについても、「やってはいるけど、これでいいのかどうか分からない」という声をよく聞きます。 だからこそ、自分たちのステーションだけでやろうとするのではなく、「地域のステーションみんなでやろう」となれば、「自分はこれができてないな」とか「あの事業所はここまでやってるのか。真似してみよう」といった気づきや底上げに繋がるのではないかと考えています。 無理なく、できることから始める ―ありがとうございます。近年、南海トラフ地震に対する警戒も強まっていますが、災害に対する心構えを教えてください。 戸崎: はい。不安を抱えていらっしゃる方が多いと思います。私自身の経験として、2011年の東日本大震災の2年前に「宮城県沖地震の再発率が80%」という話があったことを思い出します。当時、「本当に来るんだろうか」という半信半疑の空気感がありましたが、「何か防災訓練をしておこう」という比較的気軽な気持ちで、事業所のスタッフと阪神淡路大震災の被災の記録や、日本海沖地震の新潟のステーションの手記などを読み合わせしました。「大変だったんだね」と感想を言い合い、「やっぱり対応マニュアルを少し見直しておこうか」という話になりました。 本当に肩の力を抜きながらやった訓練でしたが、振り返ってみれば、このときの話し合いや見直しが、東日本大震災での対応に活かされたと感じる部分がいくつもあるのです。災害について「みんなで話し合っておく」ことは本当に大事だと思います。 2023年度の研修(「どうする!うちのBCP」)に参加してくださった管理者さんも、「研修を機にみんなで話し合う場を持ってみたら、確かに質の向上につながると思った。みんながまとまったようにも感じた」とお話ししてくださいました。BCPを作るだけではなく、みんなで取り組むことが減災につながる。災害は起きてしまうから完全には防げませんが、「減災」には必ずつながります。 BCP作成支援活動をしていて、管理者や担当者が誰か一人で作っているケースが多いと感じたのですが、それではなかなか進まないんです。「ああでもない」「こうでもない」とみんなで議論する時間がとても大事だと思います。 ハードルを上げず、一人で抱え込まないことが大事 碓田: そうですね。BCPも一人で作っていると不安になり、手が止まってしまうと思います。事業所内外を問わず、まわりの人と相談しながら進めることが大事ですね。 戸崎: はい。つい忘れがちなのですが、BCPは「業務継続計画」なので、主語は利用者さんではなく「自分たち」。「私たちが」業務を継続できるための計画であり、「職員が何らかの事情で来られなくなっちゃったときにどうしましょう?」という計画も含まれるわけですよね。例えば、感染症が地域で流行り、子どもがいるスタッフが軒並みダウンする……といったこともあるかもしれません。想像以上に身近なんです。 「人が少なくなったときに、どの業務を優先し、どの業務を後回しにするか」を考えるのがBCPの基本ですから、事業所でスタッフと一緒に「どうする?」って考えたほうがいいでしょう。一度やってみると、きっと有意義だと感じるのではないかと思います。 碓田: 地域BCPに関しても、地域の人たちで一度でも実際に集まって話し合っておく、ということがとても大事になりそうですね。私も自分の地域でやっていきたいと思います。 戸崎: それも大切ですね。郡山でも最近、事業所の垣根を超えて、行政も入った机上訓練を初めて実施しています。地域の全員が参加できなくても、机上訓練だったとしても、1回実施するだけでも、やるとやらないとでは大きく異なります。机上訓練であれば、そこまでハードルは高くありませんしね。 碓田: あまりハードルを上げないことが大事ですね。立派な計画書を作ろう、完璧に訓練しようと思うと、何から手をつけていいのかわからなくなってしまいます。まずは災害について気軽に話せる場をつくるところから始めたいですね。そこから、「じゃあ〇〇が必要だ」などと繋げていける。そういったことの積み重ねでブラッシュアップしていけるのではないかと思います。 戸崎: そうですね。あとは、災害は、本当にどこでいつ、何が起きるかわかりません。2025年に入ってからだけでも、大規模な地震や山火事、道路の陥没やそれに付随するインフラ停止など、さまざまな災害がありました。「こんなことが起こるなんて」と驚くような災害も起こってしまいました。 不安になると思いますが、災害は「想定できるもの」と「想定できないもの」に分かれることを意識するといいかと思います。例えば台風は事前に気象予報で来ると知ることができますし、地震や停電などに関しては、事前にシミュレーションして対応方法を決めておき、マニュアルを作っておけば対応しやすくなるでしょう。 すべて想定することはできなくても、少しでも考えておけば、応用できることがきっとあります。「どうせわからないから」とやらないのではなく、やっぱり少しでも準備しておくことが大切なんです。自分事になっていないスタッフがいても、気軽に事業所内で話し合うだけでも、気負ってしまってやらないよりずっといいんです。ぜひ、そのことを意識していただきたいです。 ―ありがとうございました。 取材・編集・執筆:NsPace編集部

手探りで始めたBCP作成支援 日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【前編】
手探りで始めたBCP作成支援 日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【前編】
インタビュー
2025年7月1日
2025年7月1日

手探りで始めたBCP作成支援 日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【前編】

地震・大雨・台風等、各地で災害が起きているなか、医療現場における防災対策の重要性はますます増しています。より質の高い備えに寄与できるよう、災害対応に取り組む事例をご紹介します。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会のBCP作成支援活動について、当協議会の戸崎さん、碓田さんにお話を伺いました。前編では、BCP作成支援活動を始めたきっかけや内容について教えていただきました。  日本訪問看護認定看護師協議会訪問看護認定看護師のネットワーク構築と、訪問看護全体の質向上を目指して2009年に誕生。訪問看護・在宅ケアのスペシャリストである認定看護師が集い、情報交換をしつつ自己研鑽を積み、地域包括ケアシステムの推進に貢献できるように活動している。参考:日本訪問看護認定看護師協議会 立ち上げ経緯&想い【特別インタビュー】戸崎 亜紀子さん星総合病院法人在宅事業部長/在宅ケア認定看護師/日本訪問看護認定看護師協議会 理事。総合病院で急性期看護を経験した後、育児・介護のため一時退職。クリニック勤務を経て星総合病院に入職し、精神科病棟を経験した後、訪問看護ステーションへ。訪問看護ステーション管理者、在宅事業部事務局長、法人看護部長を経て、現職。東日本大震災(2011)や令和元年東日本台風(台風19号)(2019)では、被災者・支援者の両方を経験。碓田 弓さん訪問看護認定看護師。総合病院にて外科病棟、緩和ケア病棟、透析室を経験した後、病院系列の訪問看護ステーションに異動し、12年勤務。介護施設併設の訪問看護ステーションの立ち上げおよび管理者を経験したのち、2023年9月よりみんなのかかりつけ訪問看護ステーション四日市に入職。 ※本文中敬称略 BCP作成支援活動を始めたきっかけ ―日本訪問看護認定看護師協議会(以下「協議会」)では、2023年度からBCP作成支援活動をされています。まずは、こちらの活動を始めたきっかけや想いについて教えてください。 戸崎: はい。協議会では、かねてより地域貢献活動事業を行ってきましたが、2023年度の活動を理事会で決めていく際、義務化が迫っているBCP策定に関連する事業を行ってはどうか?という提案をしたことがきっかけです。 私は福島県郡山市に住んでおり、東日本大震災や令和元年東日本台風の際は、自分自身が、そして地域が被災しています。また、災害時に地域の人たちをどうやって支援していくか、試行錯誤しながら対応してきました。新型コロナウイルスの感染拡大時も、住民や職員が罹患することもありながら、保健師のチームを行政に応援派遣するなどの取り組みを行っています。振り返ってみると、地域のつながりの中で、支援する側とされる側の両方を体験してきたように思います。 訪問看護師の皆さんも、地域に根差しているお仕事だからこそ、被災者であり支援者の立場になる可能性があります。私は、自分が大きな災害を経験しているからこそ、少しでも災害発生時に備えることの重要性を皆さんに伝えたいと考えているんです。参考:地域住民の心身の健康のために【訪問看護認定看護師 活動記/東北ブロック】実は、当時BCP作成支援の研修を運営する自信はなかったのですが、協議会の理事たちから「経験者が想いを直接伝えたほうがいい」という後押しをもらい、思い切ってチャレンジしてみることにしました。そして、活動メンバーを募ったところ、碓田さんを含めて6名の方が手を挙げてくださったんです。 ―ありがとうございます。碓田さんは、なぜ活動メンバーに入ろうと思ったのでしょうか。 碓田: コロナ禍での経験が大きく影響しています。新型コロナウイルス感染症が拡大していた当時、私は介護施設に併設する訪問看護ステーション(以下「ステーション」)の立ち上げをしていたのですが、施設内でクラスターが発生してしまったんです。情報が錯綜し、みんな得体の知れないウイルスへの恐怖感を抱えていました。 医師に診察を頼んでも断られる状況でしたし、介護施設のスタッフのなかには比較的高齢な方がいて、「自分たちの命の問題に関わるから、もう働けません」というお話がありました。働くスタッフが極端に減り、どうやって事業を継続すればいいのか、途方に暮れる経験をしたんです。 だからこそ、「BCP作成は絶対に必要だ」という強い想いを持っています。しかし、当時はBCPをどう作成すればよいのか、私もよくわかっていませんでした。「自分自身も学びながら支援したい」という思いがあって、運営委員に立候補したんです。 何度も集まり方向性を検討 ―どういった支援を提供すればいいのか、正解がなかなか見えないなかでのチャレンジだったと思いますが、実際に活動をスタートさせるまでの経緯を教えてください。 戸崎: はい。運営メンバーの中には、災害対応にまつわる講師の経験もある稲葉典子さん(西宮協立訪問看護センター/兵庫)や、杉山清美さん(大野医院/愛知)がいらしたので、お二人に色々と教えてもらいながら検討していきました。稲葉さんは在宅医療のBCP策定に関わる研究(厚生労働科学特別研究事業)の訪問看護BCP分科会メンバーでしたし、杉山さんは「まちの減災ナース」(日本災害看護学会)の認定を受けていますから、大変心強かったです。 ただ、それでも方向性を含めてゼロから作っていったので時間がかかり……。開始までに合計7回ほど打ち合わせをしました(笑)。 碓田: そうでしたね(笑)。でも、これを機に「まちの減災ナース」の活動なども知ることができましたし、個人的にはとても勉強になりました。当初は現地に出向いてBCP作成支援をしていくことも検討していましたが、なかなか時間も取れないだろうということで、オンラインでやることにしましたよね。 戸崎: そうですね。中身についてもかなり悩みましたが、BCP作成にお困りの事業所に対して、ある程度の形になるところまで寄り添っていくことにしました。初めての試みということもあり、定員は3事業所に絞りました。  当時の募集案内より抜粋 ―研修当日、どのように進行したのかについても教えてください。 戸崎: 合計3回のプログラムで、1回目は1時間。BCPに関する解説(座学)と、みなさんのBCP作成進捗状況に応じて、次回までの宿題を決めていく、という流れです。基本的には、厚生労働省が提供しているBCP策定の手引き(オールハザード型BCP)を埋めていく、という作業ですが、「どう埋めればいいかわからない」と悩んでいる方もいたので、ヒアリングしながらアドバイスしていきました。 2回目は、随時講義を挟みながら、3時間ほどかけて個別にしっかりとBCPに関する質疑応答をしました。「ここがうまく埋められない」などの悩み事を伺いながら、一つひとつアドバイスしていくという流れです。 最後となる3回目は、研修実施支援として、洪水が起こった際のシミュレーションを体験いただきました。3回目だけは、ご参加いただいた事業所のスタッフの方々も参加可としています。なお、個別にお話を伺う際はオンラインビデオツールでグループを分割し、1事業所につき2人ぐらい担当がついてBCP作成のサポートを行っていきました。順次、講師もグループを巡回するという形式です。  当時の募集案内より抜粋 ―シミュレーションの設定として「洪水」を選んだのはなぜでしょうか。 碓田: 災害時にトイレの使用ができなくなることや、避難所に移動できなくなる、といった状況を一度想定しておいたほうがいいだろうという意見が委員内で出たためです。洪水の場合、そういった困りごとが発生する可能性が高いそうです。 翌年度はオンラインのセミナー形式へシフト ―ありがとうございます。その後、2024年度のBCP作成支援では、オンラインで単発のセミナーを開催されています。これについては、どういった経緯で内容を決定されたのでしょうか。 戸崎: はい。支援のニーズは引き続きあったものの、皆さん2024年度からの義務化に合わせて一旦BCPの作成自体はされているはずなので、「研修・訓練・見直し」部分を中心に講義を展開することにしました。 碓田: 2023年度の対象を絞った支援も密度が濃く有意義だったと思いますが、2024年度はより多くの方々に聞いていただき、最終的に地域BCPにもつなげていけるような研修を目指そうというお話にもなりましたね。 戸崎: はい。そのため、訪問看護師だけではなく、ケアマネジャー、理学療法士、作業療法士、事務職など、さまざまな職種の方々に門戸を開きました。参加しやすい日程で参加してもらえるよう、同内容を2回行うことにし、合計86名の方々に参加いただくことができました。  当時の募集案内 アンケートも好評で、「BCPは災害マニュアルではないことがわかった」「事業所で研修担当になったが、何をすればいいかイメージがついた」といったお声もいただきました。 ―知りたいことをコンパクトにまとめたセミナーを展開されたのですね。ありがとうございます。後編では、今後の活動についてや、災害対策に対する考え方を伺います。 >>後編はこちら無理なくみんなで備える。日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【後編】 取材・編集・執筆:NsPace編集部

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年6月17日
2025年6月17日

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第2話【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都) 木戸 恵子さんの大賞エピソード「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」をもとにした漫画の第2話をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」前回までのあらすじ4人のお子さんがいるえみさんは、末期の肺がんを患っている。子どもたちと最後の思い出をつくるために、主治医の許可も得て宮崎から東京に飛行機で移動していたところ、容体が急変してしまい、緊急入院することになった。えみさんや夫は「子どもたちのいる宮崎に帰りたい」と言っており、J病院の医師・看護師たちはリスクが大きいため悩んだが、訪問看護師の木戸さんに相談することにした。<主な登場人物>>>第1話はこちら大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第1話【つたえたい訪問看護の話】 「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第2話 >>第3話(最終話)はこちら大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第3話【つたえたい訪問看護の話】 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)投稿者: 木戸 恵子(きど けいこ)さん株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都) >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

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