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安心感をどう作るか⑦ 人が辞めない事業所の雰囲気づくり

安心感をどう作るか⑦ 人が辞めない事業所の雰囲気づくり

最初の発生から2年が過ぎても、いまだ終息の見えない新型コロナ。感染防止対策だけではなく、目には見えないスタッフの不安やメンタルヘルスへの対応もステーションの管理者には要求されます。ベテラン管理者のみなさんに、今必要とされるスタッフマネジメントについて語っていただきます。今回は、医療法人ハートフリーやすらぎの大橋奈美さんです。

お話
大橋奈美
医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者(訪問看護認定看護師)

職員を最優先に

私たちの医療法人には、24時間支援診療所、訪問看護ステーション(機能強化型Ⅰ)、居宅介護支援事業所、ナーシングデイがあります。そのなかで、私は、職員の安心と幸せを最優先にした姿勢を貫いています。極端な言いかたを許してもらえば、「利用者さんよりも職員を大切にする」という姿勢です。

大切にされている職員だからこそ、利用者さんやご家族を大切にすることができます。

退職率は低いが、若い職員も多い

常勤看護師は、現在21名です。コロナ禍での看護師の退職の増加が話題になりましたが、辞める人が少ないのが私たちのステーションの特徴です。一方で、看護師の平均年齢は30代前半と比較的若いのも特徴です。毎年新人の応募者が殺到し、採用試験は3次まで行っています。

なぜ、職員が辞めずに新人の応募も多いのか、思い当たる理由を九つ挙げていきます。

①事業所内で雑談が多い

当ステーションで飛び交う話は、仕事の話よりも雑談のほうが多いかもしれません。ほかのステーションの管理者さんと話をすると、雑談が少ないところほど、辞める人が多い傾向がある感じがします。たとえば、トイレで一緒になった職員にはこんな声を掛けます。

「その髪、あの女優さんみたいで、かわいいなあ」
「言いすぎでしょう?」
「ははは、褒めすぎたわ」

そんな雑談の積み重ねが、「悩み相談」をしやすい柔らかな雰囲気を生み出します。

②利用者宅でも柔らかな雰囲気を継続

冗談が飛び交う柔らかな雰囲気は、訪問の際、利用者さんにも伝わります。たとえば、新人と先輩が一緒に訪問したとします。

「わしもなあ、どの道その道、あの世に行く道や。この子にわしの血管に打たしてやって、この子が点滴を上手になるのがわしの役割や」

利用者さんも新人を育ててくれるのです。

③「ありがとう」と何度も言う

職員に対し、感謝の気持ちを一日に100回以上伝えていると思います。ステーションが運営できるのは、職員の働きがあるからです。その感謝の気持ちを「あいうえお」の言葉で表します。すなわち、「ありがとう、いいね、うれしかったわ、ええやん、おおきに」です。

④褒めるだけの職員面接

年に2回、人事考課の面接があります。そこでは、その職員がやって来たことを具体的に褒め、注意に類することは一切言いません。

注意に関しては、当ステーションの管理職や先輩たちが、現場でそのつど行います。

「褒める」ことは、「認める」ことでもあります。管理職を私が認めれば、管理職は自然に部下を認めます。

⑤自分で目標を考えてもらう

人事考課の面接で私が心がけていることは、自分で目標を立ててもらうことです。

「自分の弱みは何だと思う?」
「ターミナルケアで、家族にいろいろ言われると、何もできなくなることです」
「どないしたらええのやろ?」
「何かをしようとするよりも先に、家族の話にもっと耳を傾けるように努力します」

自分の考えた目標だからこそ責任を持てるのだと思います。次のような言い方に比べてモチベーションがあがるのは確実です。

「あんたってなあ、ターミナルケアで、家族に高圧的に言われたら、何もできへんよなあ」

⑥好き嫌いを認める

利用者さんだって、合う看護師と合わない看護師がいるように、看護師だって、相性の悪い利用者さんがいます。私は、それを認めています。苦手や弱みを克服するよりも、得意や強みを伸ばすほうが、のびのびと働けます。

⑦毅然とした姿勢を示す瞬間も

職員に感謝する一方で、毅然と姿勢を示す瞬間もあります。「ニコニコ笑顔」が当ステーションの文化であり、苦虫をつぶしたような顔をしている職員には、「どんなことが家であったのか知らんけど、そんな表情ゆるさへん」などと、すぐに注意を飛ばします。

⑧一人では何もできないと自覚する

本音で語り合え、思いを共有できる仲間を一人確保するところからステーションづくりを始めました。その後、何があっても揺るがない仲間が、三人、四人と増えていきました。

⑨できる方法を考える

できない言い訳よりも、できる方法を考えるよう徹底しています。たとえば、新型コロナに感染した利用者さん宅に「訪問したい」という職員がいました。こちらが、「行くな」と止めても、「助けたい」と職員は言います。これ以上止めたら、モチベーションが下がります。そこで私は、次のように言いました。

「よっしゃ、わかった、行きたいんやな。じゃあ、安全に訪問できる方法を考えようや」

利用者さんを助けたいと申し出る職員たちを、私は誇りに思っています。そんな職員を守り、大切にするのが私たち管理者の役目です。

第9回に続く

記事編集:株式会社メディカ出版

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