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亜急性硬化性全脳炎

難病を知る

亜急性硬化性全脳炎は、麻疹に感染後、長い潜伏期間を経て発症する難病です。幼児~学童期に発症する予後不良の病ですが、麻疹ワクチンの接種が進み、患者数は減少しています。

病態

亜急性硬化性全脳炎(あきゅうせいこうかせいぜんのうえん:SSPE)は、変異した麻疹ウイルスによる遅発性の感染症です。麻疹にかかってから、数年から十数年の潜伏期間を経て発症します。

麻疹にかかり治癒した後、脳内に持続感染した麻疹ウイルスの変異株(SSPEウイルスとも呼ばれる)が脳炎を引き起こします。発症後は、数か月から数年で神経症状が進行していき、予後は不良です。

好発年齢は5~14歳です。2歳未満の子どもや免疫機能が低下している人が、麻疹ウイルスに感染した場合に、発症するリスクが高いとされています。(※1)なお、SSPEが人にうつることはありません。遺伝性もありません。

疫学

現在、国内の患者数は150人程度と推測されています。国内のデータでは麻疹罹患者約8,000人に1人の発症だったとの調査がありますが、近年はもっと多いという報告もあります。(※1)
SSPEの受給者証所持者数は、2019年末時点で73人、年代別にみると20~30歳代が中心です。(※2)
ワクチンの接種率の向上に伴って麻疹の罹患が減り、今後は新規の発症はかなり少ないと見込まれます。

症状・予後

発症後の経過は比較的定型的で、4期に分類されています(Jabbourの分類)。ただし、経過は必ずしも一様ではなく、急激に症状が進む劇症型や、10年以上の経過をとる緩徐進行型、少数ながら歩行可能な状態に改善する例もあります。
病期が進むにつれ、経口摂取困難や自律神経障害、胃食道逆流、呼吸障害などの合併症が現れるため、重症度に応じた対応が求められます。

Ⅰ期

比較的軽度の精神面・行動面の変化がⅠ期に分類されます。
具体的には、成績低下や記銘力の低下、落ち着きがなくなる、ささいなことで不機嫌になる(易刺激性)、挑戦的な行動をとるなどの性格の変化、周囲に無関心になるなどの症状があり、緩やかに進行します。
けいれん発作や、立てない・歩けないなど、運動面の変化がみられることもあります。

Ⅱ期

けいれん発作や運動機能低下、不随意運動などが出てきます。周期的なミオクローヌス(体の一部がピクッと動く)が、頭部から始まり体幹や四肢にまで起こるようになるのが特徴的です。
筋緊張亢進、全身のけいれんや失立、振戦などの不随意運動も出現します。

Ⅲ期

不随意運動や筋緊張亢進が増し、運動機能低下がさらに進み、座位をとることも困難になります。臥床状態で、後弓反張(手足が伸び体が弓なりに反る)が多くなります。
自律神経の異常も進行します。顔面紅潮や蒼白、チアノーゼを伴う異常な発汗や、不規則な発熱など自律神経症状が出現します。
加えて、摂食・嚥下が困難になってくるため、経管栄養法の導入も検討されます。
意識障害が進み、徐々に昏睡に至ります。

Ⅳ期

ミオクローヌスや筋緊張亢進は目立たなくなり、眼球が不規則に動く、病的な笑い・泣きなどの反応、音への驚愕反応などがみられます。覚醒時には目をあけますが、昏睡状態にあり自発的に言葉を発しません(無言症)。
筋強直や呼吸異常のために、人工呼吸管理が必要になります。

治療法

根治的な治療法はまだありませんが、免疫賦活薬と抗ウイルス薬の併用療法が用いられます。またほかに、研究段階の治療も試みられています。
治療に加えて、病期や重症度に応じて対症療法が必要になります。

リハビリのポイント

  • 関節可動域や運動機能を評価し、必要に応じて筋緊張を緩和させる理学療法を行う
  • 歩行や座位保持などが難しくなっていくため、残存機能を生かした動作、福祉用具などの活用を提案する

看護の観察ポイント

  • 症状の変化を経時的に観察する
  • 現在~近く予測される症状に応じて、医師やケアマネジャーと連携し、タイムリーに必要な介助につなげる
  • 誤嚥や食事後の胃食道逆流などに留意し、食事中~後の状態を確認する
  • 排尿・排便状況を確認する
  • 息苦しさなど呼吸症状を確認する
  • 家族の状況(介護疲労の有無など)を確認する

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監修:あおぞら診療所院長 川越正平
【略歴】
東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。

記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】
※1 プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班『亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis:SSPE)診療ガイドライン2020』
http://prion.umin.jp/guideline/pdf/guideline_SSPE2020.pdf
※2 厚生労働省『難病・小児慢性特定疾病 令和元年度衛生行政報告例』2021-03-01
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450027&tstat=000001031469&cycle=8&tclass1=000001148807&tclass2=000001148808&tclass3=000001148810&stat_infid=000032045204&tclass4val=0
・難病情報センター『病気の解説(一般利用者向け)亜急性硬化性全脳炎(SSPE)(指定難病24)』
https://www.nanbyou.or.jp/entry/42

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