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インタビュー

経営者が語る ─安定経営のワケ─

精神科訪問看護に特化して運営しているN・フィールドは、設立から17年で47都道府県に212拠点を展開しています。急成長の理由や、今なぜ精神科訪問看護なのかを、創業時から現在までの変遷をたどりながら取締役の郷田泰宏さんに語っていただきました。(以下敬称略

お話
郷田 泰宏
株式会社N・フィールド 取締役


患者さんの社会復帰を手助けする一助に

[郷田]
N・フィールドは2003年、看護師3人で、大阪で開業したのが始まりです。最初から精神科の訪問看護を目指していたわけではなく、たまたま精神科病院出身の看護師が創業者だったことから、これを強みとして出発しました。

精神科医療は長期入院の患者さんも多く、社会復帰、地域移行が進まないことが長年、問題視されていました。今でこそ、精神科の患者さんも「病院から地域へ」という流れができつつあり、地域的にも受け入られるようになりつつありますが、開業当時は、まだ長期入院が一般的でした。

社会資源をふまえた支援があれば退院できる人はいるのに――そんな問題意識を看護師たちが共有し、当社が精神科の訪問看護に特化したサービスを提供するようになったのは自然なことでした。

当初は、精神科訪問看護がどういうものか、教科書があるわけでもなく、皆手探りで手法を確立しようと必死でした。そのため、想い入れの強い多くのスタッフが疲弊し、一時は退職者が続いた時期がありました。その後、看護師の働きやすさや、やりがいを発揮できる環境を整備することに注力し、現在では離職率も大きく低減でき、事業展開に応じて多くの看護師採用を増やすことができる段階にあります。

精神科に対する社会の理解が大きく変化

現在、精神科の患者さんの社会復帰・地域移行の流れは強まっています。一方で、退院した利用者を在宅で支える訪問看護師は、今も不足しています。その理由の一つが、「精神科訪問看護は危険・難しい」イメージがあることです。

患者さんが、果物ナイフやガラス食器など危険物とみなされる生活用品を持ち込めない病院は、ある意味で「守られている安全な空間」です。一方、在宅では包丁やはさみなど、当たり前の生活道具であっても、使いかたによっては危険なものがいろいろあります。そうした生活の場で患者さんと看護師が向き合う精神科訪問看護は、安全ではないように感じられ、一人で訪問することに不安を感じる看護師が多いのかもしれません。

しかし実は、訪問時にこうした危険な事態はほとんど起こりません。むしろ在宅のほうが危険は少ないというのが、経験上の見立てです。

その理由の一つとして、入院形態から患者が余儀なく受けてしまうストレスが、生活空間である在宅では存在しないことが挙げられます。

精神科は、他の診療科と違い、医療保護や措置など、本人の同意を得ない入院形態があります。強制的に入院となり、行動を制限されることを納得できていない患者さんもいます。しかし、訪問看護は、自宅で暮らしている利用者さんの同意を得たうえで訪問します。そういう意味で、暴力など危険な事態が起こるリスクは一般的に低いと思われます。

全国に拠点をもち安定経営を続ける理由

こうした実態は、現在では看護師基礎教育課程でも伝えられ、精神科訪問看護へのイメージは、少しずつですが変わりつつあります。

多くの患者さんが在宅へ戻ってくる――しかし地域で患者さんを支える社会資源としての訪問看護ステーションは不足している――N・フィールドはそこに特化し、事業展開してきました。おかげさまで、全国に数多くの拠点を持ち、いわば社会的インフラとして事業展開するに至っています。その一環として、現在では訪問看護だけではなく、住む場所を提供する住宅支援の事業も展開しています。

拠点展開に応じた人材確保は今も課題です。N・フィールドでは、働きたいと希望される人へ、入社前に体験訪問を積極的に行っています。入社後のイメージギャップをできるだけ少なくし、早期離職を予防する取り組みです。

それに加えて、当社の勤務体制がワーク・ライフ・バランスの面で評価されている側面もあると思います。夜間勤務のある病院とは異なり、当社は基本的には9時から18時までの日勤帯の勤務です。訪問看護事業所の多くが採用している24時間のオンコール体制も、当社では採用していません。自分の時間を大切にする働きかたを目指す看護師や、子育て中で日中しか時間に余裕がない看護師からも、そうした働きやすさが受け入れられている面があると思います。

こうした、看護師の負荷をなるべく少なくする経営努力が、人材確保のうえで一つのアドバンテージになっているのかもしれません。

記事編集:株式会社メディカ出版

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