コラム

訪問看護師 兼 ヘルパー 最強説!

ALSを発症して6年、40歳の現役医師である梶浦さんによるコラム連載です。訪問看護師と一言でいっても、その働きかたはいろいろあるのです。

皆さんはなぜ、訪問看護を選びましたか?

前回までALSにfocusを当てていましたが、今回は訪問看護師にfocusを当ててお話をしたいと思います。

このコラムを読んでくれている訪問看護師の皆さんは、なぜ訪問看護師の道を選んだのでしょうか。

多くの方は、病棟勤務を経て訪問看護の道に進むと思いますが、

病棟勤務に疲れたから? 家庭ができて夜勤が難しくなったから?

確かに病棟勤務の看護師さんは、日勤と夜勤をこなさいといけないので、体力的にもとても大変です。また、人間関係など看護業務以外の問題で病棟を離れる方もいるでしょう。

患者さんの退院後まで考える余裕がなかった

余談ですが、私は大学病院で働いていたころ、皮膚科病棟の病棟チーフをしていた時期があります。病棟に入院している20~30人の患者さん全員の主治医をしていました。

毎日何人もの患者さんが退院し、入院します。そのたびに病歴を把握して治療方針を決めて、何とか良くして退院させることだけを毎日考えていました。月6~8回の当直と、毎日オンコールで24時間何かあったら病院から呼ばれる生活が続きました。充実していましたが、かなり疲れており、正直、退院した後の患者さんの生活まで考える余裕がありませんでした。

ただ、自分が病気になってみて初めて気がつきましたが、私のように、入院期間は病気のほんの一瞬であり、在宅加療がメインである患者さんも多くいます。そういう患者さんの生活を長期的に支えてくれる訪問看護師さんは本当に、大切で、ありがたい存在です

『病人を診よ』を実現できる訪問看護

大学病院や、急性期患者さんを診る市中病院では、目まぐるしく患者さんが入れ替わります。医師も看護師も「病気」を良くすることを入院期間のエンドポイントと考え、なかなか一人の患者さんとゆっくりと向き合うのが難しいことがあります。

病気を診るのではなく、病人を診よ」。ナイチンゲールの看護理念に基づく言葉ですが、私は、これが医療の本質だと思います。

今思うと、大学病院で働いていたころの私は、病気を診ることに精いっぱいで、この言葉を実現できていなかったと思います。しかし、これを実現できることが、まさに訪問医療・訪問看護の醍醐味ではないでしょうか。

たとえば私のようなALS患者にしても、症状は皆違うし、病気との向き合いかたや、どのように生きたいかも皆違います。ひとりひとりの患者さんとしっかりと向き合って、患者さんの意思を尊重し、寄り添いながらじっくり看護したいと考え、訪問看護師の道を選んだ人もいるでしょう。

訪問看護師になってみて、皆さんの現実はどうでしょうか?

じっくり看護ができて充実していると思えている人もいるだろうし、実際は限られた時間であれもやって、これもやってと、忙しく過ごして、急いで次の訪問先に向かって、じっくり看護ができていないと思っている人も少なからずいるのではないでしょうか。

そこで、「訪問看護師兼ヘルパー最強!」説

訪問看護師兼ヘルパーさんとのwin-winな関係

今、私のところに、訪問看護師兼ヘルパーさんとして働いてくれている人がいます。その人は、看護師として来てくれて、看護時間が終わったら、そのまま重度訪問介護の枠を使ってヘルパーさんとして入ってくれます。

私にとっては結果的に看護師さんに長時間入ってもらえることになるので、非常に心強い。熱が出たり、急に体調を崩したりしても、その場でバイタルチェックをして、必要であれば主治医にすぐに連絡してくれます。通常のヘルパーさんであれば、まず訪問看護師さんに連絡して、看護師さんの判断を待ってから主治医に連絡する流れになるので、その一手間を省けるのはとても大きいのです。

そして何よりも、長時間一緒にいるので、お互いの信頼関係が作りやすい!

その看護師さんも、一か所で長時間働けるので、移動や時間に追われるストレスがなく、ゆっくり看護・介護ができ、働きやすいと言ってくれています。まさにWin-Winな関係

このように、看護と介護を組み合わせたハイブリッドな事業所もあり、一言で「訪問看護師」といってもいろいろな働きかたがあるなぁと感じたので、取り上げてみました。

コラム執筆者:医師 梶浦智嗣

記事編集:株式会社メディカ出版

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