精神科領域の医療費助成制度(精神通院医療) 訪問看護師が知っておきたい基礎知識

最近では、高齢者に限らず、精神科領域に特化した訪問看護ステーションが増えてきています。訪問看護ステーションを運営するなかで、精神科訪問看護の訪問可否についての問い合わせも多くなってきているのではないでしょうか。今回は、精神科訪問看護の制度と自立支援医療制度の精神通院医療について解説します。
※本記事は、2025年5月時点の情報をもとに構成しています。
精神科訪問看護とは
精神科訪問看護とは、精神疾患のある方に対して、医師の指示のもと自宅や施設を訪問し、精神症状の安定や身体症状の予防、服薬管理や生活支援などを通じて再発予防と生活の維持を図るサービスです。地域における精神医療の一環として提供されます。
精神科訪問看護を行うための要件
精神科訪問看護を行うと「精神科訪問看護基本療養費」を算定できます。この算定には厚生局への届出が必要であり、届出には、以下のいずれかに該当する保健師、看護師、准看護師または作業療法士が在籍していることが要件となります1)。
(1) 精神科を標榜する保険医療機関において、精神病棟又は精神科外来に勤務した経験を1年以上有する者
(2) 精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を1年以上有する者
(3) 精神保健福祉センター又は保健所等における精神保健に関する業務の経験を1年以上有する者
(4) 国、都道府県又は医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する知識・技術の習得を目的とした20時間以上を要し、修了証が交付される研修を修了している者
多くの場合、(4)の研修を修了した上で届出を行い、訪問看護を実施しているのではないでしょうか。
なお、精神科訪問看護は、精神科の医師が発行する「精神科訪問看護指示書」と「精神科訪問看護計画書」にもとづいて実施します。
精神通院医療(公費番号:52)における医療費助成
精神科訪問看護における医療費助成は、自立支援医療制度における「精神通院医療」に規定されています。対象は、精神疾患のため通院による継続的な医療が必要な方で、医療費の自己負担分の一部が公費で負担されます。
この制度で注意すべき点は精神通院医療の範囲です。「病院または診療所に入院しないで行われる医療」、すなわち通院医療で、「精神障害および当該精神障害に起因して生じた病態」が対象となっていることです。
医療費助成のしくみは図1を参照してください。高額療養費を控除した後、所得区分に応じた自己負担上限額までが自治体負担により助成されます。
図1 精神通院医療の医療費助成のしくみ

自己負担上限額は、表1に示したとおり、所得区分に応じた上限額か、1割を支払います。所得区分は、生活保護世帯から市町村民税課税世帯(所得割235,000円以上)までの6段階と、自己負担0円から自立支援医療対象外までに分かれています。また、「重度かつ継続」の該当の有無により、負担額が分かれます。
表1 精神通院医療の自己負担上限月額

なお、「重度かつ継続」の対象者は、以下のとおりです2)。
次のいずれかに該当する方:
●医療保険の「多数回該当」の方(直近の12ヵ月以内に、国民健康保険などの公的医療保険の「高額療養費」の支給を3回以上受けた方)
●1~5の精神疾患の方(カッコ内はICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)による分類)
1 症状性を含む器質性精神障害(F0)
(例)高次脳機能障害、認知症 など
2 精神作用物質使用による精神および行動の障害(F1)
(例)アルコール依存症、薬物依存症 など
3 統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害(F2)
4 気分障害(F3)
(例)うつ病、躁うつ病 など
5 てんかん(G40)
●3年以上精神医療を経験している医師から「情動および行動の障害」または「不安および不穏状態」を示すことから入院によらない計画的かつ集中的な精神医療(状態の維持、悪化予防のための医療を含む)が続けて必要であると判断された方
受給者証と自己負担上限額管理票の取り扱い
精神通院医療の認定を受けると、患者さんには「受給者証」と「自己負担上限額管理票」が交付されます。受給者証は指定医療機関で使用できます。訪問看護ステーションが対象となるには、自立支援医療の「指定自立支援医療機関」としての届け出が必要です。
自己負担上限額管理票の運用については、訪問看護ではレセプト処理後に金額が確定するため、管理が複雑になる場合があります。
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自立支援医療の精神通院医療は、更生医療や育成医療とは所得区分の扱いが異なるため、分かりにくい部分があるかもしれません。制度の概要を理解した上で、利用者さんの受給者証を確認し、レセプト返戻が発生しないよう適切に管理することが大切です。
| 執筆:木村 憲洋 高崎健康福祉大学健康福祉学部医療情報学科 教授 武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部機械工学科卒業、国立医療・病院管理研究所研究科(現・国立保健医療科学院)修了。民間病院を経て、現職。 著書に『<イラスト図解>病院のしくみ』(日本実業出版社)などがある 編集:株式会社照林社 |
【引用文献】
1)厚生労働省:訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第7号 令和6年3月5日).
2)厚生労働省:自立支援医療(精神通院医療)について.
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000146932.pdf
2025/5/28閲覧
【参考文献】
○厚生労働省:自立支援医療(精神通院医療)の概要.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html
2025/5/28閲覧