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分かりやすい! ALSの最新治療~痛くない筋肉注射の方法~
分かりやすい! ALSの最新治療~痛くない筋肉注射の方法~
コラム
2025年7月29日
2025年7月29日

分かりやすい! ALSの最新治療~痛くない筋肉注射の方法~

ALSを発症して10年、現役医師・梶浦先生によるコラム連載、第2弾。今回は、ALSの最新治療法について解説します。エダラボンの内服薬や高用量のメコバラミンなど患者のQOLを高める治療の最前線をお伝えします。 ALSの疫学と原因について 日本におけるALSの患者数は1万人弱で、10万人あたり7〜11人程度の有病率とされています。男女比は1.3〜1.5:1で、やや男性に多い傾向にあります。 ALS患者の約90%は孤発性(家族歴がない)ですが、残りの約10%は家族内で発症することが知られており、家族性ALSとも呼ばれています。家族性ALSの原因となる遺伝子変異はこれまで30種類以上見つかっており、日本ではSOD1という遺伝子に変異があるパターンが最も多く、遺伝子変異の中の約20%(ALS全体の約2%)を占めます1)。 好発年齢は50〜70歳くらいですが、まれに若い年代で発症することもあります。私のように30代以下で発症するケースは全体のわずか約10%です。前回のコラム(>>分かりやすい!  ALSの診断方法〜二転三転した私の病名〜)で書きましたが、若年発症例は珍しいからこそ、さまざまな疾患の可能性が考えられ、結果として診断が遅れることもあるのです。 発症のメカニズムも徐々に分かってきています。運動ニューロンの中にTDP-43という異常タンパク質が蓄積し、それが細胞死を引き起こすと考えられています2)。「なぜTDP-43が蓄積するのか」「どうすればそれを除去できるのか」といった疑問が解明されれば、根本的な治療につながるのですが、その実現にはまだ時間がかかりそうです。そのため現在は、運動ニューロンの保護を目的とした対症療法が主な治療法となっています。 ALSの平均余命 一般的に、人工呼吸器を使用しないALS患者の平均余命はおよそ2〜5年とされています。その一方で、胃瘻による栄養管理を行いながら、人工呼吸器を装着する場合、生存期間の中央値は20年ともいわれています。(>>ALSの平均寿命が2〜5年なんて嘘だ!) しかしながら、この過酷な病気とともに生きていく人は少なく、気管切開を行い人工呼吸器を導入する人は、全体の20〜30%程度に過ぎません。 ALS治療の大きな柱:「栄養療法」と「薬物療法」 栄養療法について ALS患者は、病初期から著しく体重減少を起こすことがあります。体重減少の原因には以下のとおりさまざまなものがあります。 ALS特有の病初期~中期にかけての異常な代謝亢進(人工呼吸器を装着するまで) 病気の進行に伴う全身の筋肉量の減少 嚥下機能の低下に伴う食事摂取量の減少 呼吸機能の低下に伴う努力性呼吸*によるエネルギー消費量の増加  *努力性呼吸:自然に呼吸ができないため、一所懸命に呼吸をすること。   「ALSを発症した当初から体重を落とした群」と「体重を落とさなかった群」を比較した研究によると、後者の群のほうが人工呼吸器の装着までに要した期間が長く、QOLが低下する速度もゆるやかであったと報告されています3),4)。このことから、食事と合わせた高カロリー療法が進行を遅らせる効果があるとされています。 一方、発症後期(人工呼吸器装着後)は代謝量の減少に伴い、必要なカロリーも減少します。そのため徐々に摂取カロリーも減らす必要があります。ちなみに、今の私の摂取カロリーは1日900kcalです。 薬物療法について 日本では長年、「リルゾール」と「エダラボン」の2剤が治療薬として認可されていました。詳しくは「ALSの治療法について〜栄養療法がとても大切!〜」をご参照ください。ここからは「enjoy!ALS」第1弾の連載を終了してからの2年間で新しく変わった治療について解説していきます。 【ALS最新治療】エダラボンの内服薬が登場! 1つ目は、エダラボンが点滴から内服に変わったことです。これはALS患者にとって非常にうれしい進展でした。2週間ごとに点滴を留置するわずらわしさから解放されたことで、QOLが大きく向上しました。 【ALS最新治療】第3の治療薬、高用量メコバラミンが承認! 2つ目は、高用量のメコバラミンが、2024年9月に世界に先駆けて日本で初めて承認されたことです。 メコバラミンは、高用量ビタミンB12の筋肉注射製剤です。ビタミンB12は昔から神経保護作用があることが知られており、500μgの錠剤が末梢神経障害の治療薬として広く医療現場で使用されてきました。1990年代より、厚生労働省の研究班による臨床研究において、従来の承認用量の50~100倍量にあたる高用量メコバラミンが、ALSに対して臨床効果を示す可能性が示唆されました。これを受け、2006年から数百人規模の患者を対象とした臨床試験を経て、病初期のALS患者において進行スピードがゆるやかになったことが確認されたため、今回ついに承認されることになりました。 なぜ内服ではなく「筋肉注射」なのか? では、なぜリルゾールやエダラボンのように内服製剤にならず、筋肉注射という痛みを伴う投与方法になったのでしょうか。 ビタミンB12はさまざまな食品に含まれる水溶性ビタミンです。口から入ってきたビタミンB12は、胃から分泌された「内因子」というタンパク質と結合し、小腸の末端である回腸から吸収され、血中に運ばれます。 図1に示したとおり、従来の用量である500μg程度の量であれば、ビタミンB12は内因子と結合することができます。しかし、高用量メコバラミンはその100倍にあたる50mgものビタミンB12が含有されているため、経口投与ではほとんどが内因子と結合せず、便として排泄されてしまいます。こうした理由から、内服よりも比較的緩徐に血中に運ばれる筋肉注射による投与方法が選ばれたのです。図1 なぜ高用量メコバラミンは筋肉注射なのか 高用量のビタミンB12は内服では吸収しきれません。そのため筋肉注射が必要なのです。   高用量メコバラミンは週2回のペースで筋肉注射を継続していく治療です。なるべく痛みを軽減できるように、投与していきましょう。 筋肉注射では、痛みを感じるポイントが3つあります。 1.注射針が皮膚に刺さるときの痛み 2.薬液が筋肉内を押し広げながら注入されるときの痛み 3.薬液と人体のpH(酸・塩基成分の割合)や浸透圧の違いによる痛み これらの痛みを軽減するための工夫をご紹介します(図2)。 極力細い針を使用する 注射針は数字によって太さが分かれており、数字が大きいほど細い針になります。一般的に採血や点滴などで使用する針は22Gや23Gの太さですが、私は27Gというかなり細い針を使用しています。 それでも痛い場合は、針を刺す部分の皮膚を保冷剤などで冷やして感覚を鈍らせてから注射するとよいかと思います。 なるべくゆっくり注入する なるべくゆっくりと薬液を注入していくことで痛みを和らげられます。 高用量メコバラミンはそもそも痛みが出にくい 薬液の成分によりますが、高用量メコバラミンは薬液のpHや浸透圧が人体に近いため、比較的痛みは少ないです。 図2 筋肉注射の痛みを和らげる工夫 高用量メコバラミンはpH・浸透圧の差が小さいため、薬液自体の刺激が少ない。これらのポイントを意識していただけるだけで、痛みに対する不安がだいぶ和らぐと思います。ぜひ参考にしてみてください。 【ALS最新治療】トフェルセンの登場! 遺伝子治療への第一歩 3つ目は、2024年12月に、疫学のところで述べたSOD1という遺伝的原因を標的とする治療薬「トフェルセン」が日本でも承認されたことです。ちなみに、米国では2023年に迅速承認されています。 SOD1に変異をもつALS患者では、有害なタンパク質が運動ニューロンの変性を発現させ、進行性の筋力の低下や機能の喪失を招きます5)。トフェルセンは根治的治療薬ではないものの、ALSの進行スピードを遅らせる効果が認められています。遺伝子にアプローチする初めての薬剤であることから、今後のALS治療に大きな期待がもてます。わずか2年の間に、ALSの治療はこんなにも進歩しています。これらの事実は、ALS患者の皆さんにとって大きな希望になることでしょう!   コラム執筆者:医師 梶浦 智嗣「さくらクリニック」皮膚科医。「Dermado(デルマド)」(マルホ株式会社)にて「ALSを発症した皮膚科医師の、患者さんの診かた」を連載。また、「ヒポクラ」にて全科横断コンサルトドクターとしても活躍。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)Nakamura R,Sone J,Atsuta N,et al:Next-generation sequencing of 28 ALS-related genes in a Japanese ALS cohort.Neurobiol Aging 2016;39(219):e1-8.2)葛原茂樹:ALS研究の最近の進歩:ALSとTDP-43.臨神経 2008;48(9):625-633.3)Shimizu T,Nakayama Y,Matsuda C,et al:Prognostic significance of body weight variation after diagnosis in ALS:a single-centre prospective cohort study.J Neurol 2019;266(6):1412-1420.4)Nakayama Y,Shimizu T,Matsuda C,et al:Body weight variation predicts disease progression after invasive ventilation in amyotrophic lateral sclerosis.Sci Rep 2019;9(1):12262.5)Akçimen F,Lopez ER,Landers JE,et al:Amyotrophic lateral sclerosis: translating genetic discoveries into therapies.Nat Rev Genet 2023;24(9):642-658. 【参考文献】○筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン作成委員会編,日本神経学会監修:筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023.南江堂,東京,2023.

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年7月22日
2025年7月22日

大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第3話【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都) 木戸 恵子さんの大賞エピソード「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」をもとにした漫画の第3話(最終話)をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】  「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」前回までのあらすじ4人のお子さんがいるえみさんは、末期の肺がんを患っている。子どもたちと最後の思い出をつくるために、主治医の許可も得て宮崎から東京に飛行機で移動していたが、容体が急変して緊急入院。移動には高いリスクを伴うが、えみさんや夫は「宮崎へ帰りたい」と切望しており、病院は訪問看護師の木戸さんに相談した。その後、えみさんは木戸さんが運営するホームホスピスで、体力をつけるために3日ほど休養。いよいよ、在宅医のW先生やドライバーさんたちとともに、車で宮崎へ向かう。<主な登場人物>>>第1話はこちら大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第1話【つたえたい訪問看護の話】>>第2話はこちら大賞エピソード漫画化!「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第2話【つたえたい訪問看護の話】 「お母さん~看護の襷をつなぐということ~」第3話(最終話)   漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)投稿者: 木戸 恵子(きど けいこ)さん株式会社ウッディ 訪問看護ステーションはーと(東京都)大賞をいただき、とても光栄で、嬉しく思います。私は訪問看護師になって27年になります。確実な医療ケアや医療処置が求められる緊張の現場ですが、まずは患者さんやご家族のお話を伺い、患者さんの心の風景を垣間見られるように、という意識を持って接しています。えみさん(仮名)も、お話を傾聴し、心の風景を共有することから関わりました。課題や心配はありましたが、ご本人・家族と医療者すべての思いを繋ぐために覚悟を決め、その場の雰囲気を瞬間的に察知しながらアセスメントに努めました。私は、常日頃から出会った関係性や連携を大切にしています。例えば、研修で学びを共にした仲間とは情報交換や視察をし合ったり、仕事仲間とはカンファレンスを繰り返したりと、絆づくりをしています。えみさんの事例においても、相談した仲間たちすべてが自分事のように対応してくれました。普段の連携力や繋がりを生かせたことは、今後のやりがいにもなります。私が出会ったとき、えみさんの体力は限界アラームが鳴り始めていましたが、たくさんの方の心に響く、熱くて強い命の炎を持っておられた方でした。改めて振り返ると、えみさんの原動力が私たちをさらに強く繋げてくださったのだと思い、感動しています。貴重な体験をさせていただきました。最後に、えみさんのご冥福を祈るとともに、ご家族様や関わってくださった仲間たちに感謝申し上げます。ありがとうございました。 >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

特集
2025年7月22日
2025年7月22日

バスキュラーアクセスのトラブル対応、日常管理のポイントも【事例あり】

透析患者さんにとって、生命維持に直結するバスキュラーアクセス※の日常管理は、在宅での療養生活を支える訪問看護においても避けては通れない重要な課題です。今回は訪問時に遭遇しやすい、バスキュラーアクセスのトラブル対応と日常管理のポイントについて、ありがちな事例を3つ挙げながら解説します。 ※内シャント(AVF)、人工血管(AVG)、長期留置カテーテルを含む 事例1:透析カテーテルが抜去しかけている 患者さんのドレッシング交換を行おうとしたところ、透析用の長期留置カテーテルが通常の固定位置から大きくずれており、抜去しかけている状態であることに気がついた。 【初期対応】まずは全身とカテーテル周囲を観察 患者さんの全身状態(バイタルサイン、意識状態、訴えの有無など)を慎重に観察しながら、カテーテル周囲の状態を確認することが重要です。自己判断での処置は避け、主治医または透析クリニックへ速やかに報告・相談し、受診や処置の必要性について指示を仰ぎます。 【禁忌】カテーテルの押し込みはNG! カテーテルを自ら押し込むことは原則として禁忌です。長期留置カテーテルは、血管(多くは上大静脈)に直接挿入されています。押し込む行為は感染リスクを著しく高めるだけでなく、先端が血管壁を損傷する可能性があり、カテーテルの位置が逸脱して機能不全を起こす危険性があります。 【対処法】落ち着いて仮固定し、連携を カテーテルには触れず、清潔操作で滅菌ガーゼを仮固定(過度な圧迫は避ける)します。 感染徴候(発赤・熱感・膿・発熱など)を観察後、主治医または透析施設へ速やかに連絡し、状況を詳細に報告します。 事例2:シャント音やスリルが消失している 訪問時、シャントの観察を実施したところ、シャント音が聞こえず、スリルが触知できなかった。 【初期対応】まずはシャント側の上肢を観察 シャント音やスリルの消失は、シャントの閉塞や血栓形成による血流遮断の可能性が疑われます。シャント側の上肢の皮膚温、色調、浮腫の有無を観察し、再度、聴診と触診を実施します。シャント中枢側(吻合より遠い部位)でシャント音が聴取できなくても、吻合部付近で聴取できる場合があるため、範囲を絞らず広めに確認しましょう。 【対処法】シャント閉塞疑いの場合は速やかに連絡 再度確認してもシャント音が聞こえず、スリルが触知できない場合は、シャントの閉塞が疑われます。その場合は、速やかに透析施設または主治医へ連絡します。 シャントが閉塞している場合、透析が実施できません。手術が必要となるため、手術の日程や透析日の調整など迅速な対応が求められます。 事例3:シャント周囲の皮膚に発赤や熱感を認める シャント周囲の皮膚に明らかな発赤と熱感を認めた。患者さん本人は「少し赤いけど痛みはない」と話していたが、感染徴候がみられる状態であった。 【初期対応】まずは感染徴候を観察 シャント周囲の発赤と熱感は、感染の初期徴候である可能性を示す重要なサインです。早期対応を怠ると、最悪の場合、全身性の敗血症につながることもあります。発赤・熱感以外の感染徴候(腫脹・疼痛・浸出液・皮膚潰瘍など)も観察し、全身状態(発熱・悪寒・倦怠感など)を確認します。 【禁忌】温め、もみほぐしはNG! 温罨法(おんあんぽう)やもみほぐしは炎症を悪化させ、感染を広げる危険性があります。感染徴候を認めた際は、注意が必要です。 【対処法】全身症状がある場合は主治医に連絡 発熱・悪寒・倦怠感などがあれば全身感染(シャント感染・敗血症)を疑い、速やかに透析施設または主治医に連絡し、受診・処置の指示を仰ぎます。 手術の可能性を視野に入れた搬送手段の確保を検討し、受診の指示があった場合、速やかに家族や訪問診療医らと搬送について調整します。特に発熱や強い痛みがある場合は緊急搬送が必要となる場合があります。 バスキュラーアクセスの日常管理のポイント 長期留置カテーテルとシャントについて、それぞれの日常管理のポイントを示します。 長期留置カテーテル 日常管理では、以下の項目を観察します。 観察項目内容挿入部の状態発赤・腫脹・浸出液・熱感などの感染徴候の有無を観察固定状態テープやドレッシングの固定状態(しっかり固定されているか)を確認カテーテル位置ズレや抜けかけの有無を確認全身状態発熱・悪寒・倦怠感など、感染徴候の有無を確認出血・漏れ挿入部からの出血や透析後の漏れの有無を確認疼痛・掻痒痛みやかゆみの有無およびその程度・部位を確認 清潔保持とケア 原則として透析施設でドレッシング材の交換を行いますが、訪問看護師が行う場合もあります。その際は、清潔操作を徹底しましょう。 入浴、シャワー時はカテーテル部を防水処置で保護します。濡れていると感染の原因となります。 患者・家族指導 日常生活でカテーテルを引っ張らないように注意すること、着替えの際はカテーテル部を押さえるなどの配慮が必要であることを伝えます。 発熱や出血など、異常時の連絡体制を共有しておきます。 少しのズレでもカテーテルの位置が「いつもと違う」と感じたら、医療機関との早期連携を心がけるように伝えます。 シャントの日常管理のポイント シャントは「命をつなぐライフライン」です。日々のセルフチェックが、トラブルの早期発見・重症化予防につながります。患者さん本人にも以下のチェック項目を共有し、「いつもと違う」は異常のサインであり、小さな変化も放置せず、訪問看護師に連絡するよう伝えます。連絡を受けた訪問看護師は、遠慮せずに透析施設へ連絡しましょう。 【観察項目】・シャント音、スリル(振動感)があるか・シャント部に発赤、腫脹、熱感がないか・シャント肢にしびれや冷感がないか・出血や内出血、痂皮(かひ)などがないか 生活の中での注意点患者さんに以下のことに注意するよう指導します。 シャント肢を圧迫しない(重い荷物を持たない、腕枕や腕時計、きつい袖を避ける) 採血・血圧測定・注射はシャント肢を避ける シャント肢を清潔に保つ 転倒や打撲を避ける(特に高齢者は要注意) * * * バスキュラーアクセスの管理は、透析療法を支える基盤であり、訪問看護の中でも特に専門性と慎重さが求められる領域です。日々の観察や患者さんへの声かけにより、訪問看護師の違和感に気づける力こそが、重篤なトラブルを防ぐことにつながります。今回ご紹介した事例や管理に関する解説が、現場でのケアに少しでもお役に立てば幸いです。  執筆:熊澤 ひとみ医療法人偕行会 透析医療事業部 副事業部長透析看護認定看護師【職歴】昭和63(1988)年 名古屋共立病院 入職平成11(1999)年 偕行会 セントラルクリニック 異動平成17(2005)年 透析医療事業部 副事業部長令和3(2021)年 医療法人偕行会 法人本部 理事【所属学会】日本腎不全看護学会 監事日本臨床腎臓病看護学会日本透析医学会編集:株式会社照林社

エンバーミング(遺体衛生保全)とは? 歴史や目的・意義を解説
エンバーミング(遺体衛生保全)とは? 歴史や目的・意義を解説
特集
2025年7月15日
2025年7月15日

エンバーミング(遺体衛生保全)とは? 歴史や目的・意義を解説

エンバーミング(遺体衛生保全)は、故人の姿を生前の安らかな状態に近づけるために、防腐処置や消毒、修復などを施す技術です。ご遺族が心の準備を整え、悲しみと向き合うために重要な手段でもあります。本記事では、日本におけるエンバーミングの先駆者であり、グリーフサポートの普及にも尽力されている橋爪謙一郎氏に、エンバーミングの歴史とその深い意義について詳しく教えていただきます。 知っておきたい、死後の身体変化が与える影響 ヒトが亡くなった後、その身体は適切な処置をしなければ、時間の経過、病気や治療、身体が置かれている環境などの影響を受けて変化し続けます。変化を最小限にして、その人らしい姿を保てるかどうかは、家族のグリーフに影響を与える要素となることから、身体の状態に合わせた適切な処置が求められます。 看護師の皆さんは、故人の尊厳を守るために、ていねいにエンゼルケアを行っていることと思います。また、遺されたご家族が、故人のつらそうな表情を目の当たりにすることで、罪悪感や苦しい感情を持たないように配慮されていると思います。エンバーミングについて理解をしていただくために、まずは亡くなった後の身体の変化、「死体現象」についてお話しすることから始めたいと思います。 ヒトが亡くなった後の変化:死体現象とは 皆さんは「死体現象」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? この現象は、早期と晩期に分けられます。 晩期死体現象には腐敗や自家融解が含まれているため、この現象を止めるためにドライアイスや保冷庫などを用いて処置することで対応します。しかし、早期死体現象に対しては、必要な対処がされていないことが多くあります。 早期死体現象には、以下が含まれます。 ・血液の変化・死斑の発現・死後硬直・死体温の変化・乾燥・角膜の乾燥と混濁など 腐敗の進行は抑えられたとしても、それよりも早い時期に始まっている変化は、残念ながらそのまま進むことがあります。そうなると、看護師の方々がエンゼルケアをしっかり行ったとしても、時間の経過とともに変化が起こってしまうのです。 もう少し分かりやすく具体的にお伝えしましょう。血管中に残った血液は、重力に従って上から下へと移動していきます。身体が仰向けに寝かされている状態であれば、背中側の部位に血液による変色が強く現れ、それと同時に、顔や腹部の表皮で乾燥が進みます。 心停止とともに血流が止まり、体内からの水分補給が途絶えている上に、重力の働きによって、顔の表皮の乾燥がさらに進んでいきます。そのため、きれいに施された化粧であっても、崩れたように見えることがあるのです。特に粘膜部分は乾燥しやすく、唇やまぶたに大きな変化がみられます。本来は保湿が必要ですが、それが行われないと、乾燥が進み、口元やまぶたが開いてきてしまいます。 エンバーミングの歴史と日本での普及 エンバーミングは、日本語で「遺体衛生保全」と訳されます。歴史をたどると、古代エジプト時代のミイラづくりが起源とされています。時代が進むにつれてヨーロッパに伝わり、医学の進歩のために解剖用の遺体を保存する目的でさらに発展しました。その後、アメリカにも伝わり、1900年代には教育制度やライセンス制度が確立され、医学の進歩とともに薬品の開発や技術革新が進み、現代に至ります。 日本では、1988年に埼玉県で一般の方向けに初めてエンバーミングが提供されました1)。その後、全国に広がり、2025年現在では32の都道府県で、91の施設においてエンバーミング処置が提供されています(日本遺体衛生保全協会調べによる)。 このようにエンバーミングは、長い歴史と技術の積み重ねを経て、現代においても重要な役割を果たすようになりました。 エンバーミングの目的と意義 エンバーミングには「防腐」「消毒」「修復・化粧」という3つの目的があるといわれています。 防腐:体内のタンパク質が腐敗・自家融解することをホルムアルデヒドやアルコールなどの薬品を注入浸透させることによって抑制する。消毒:薬品を注入し浸透させ、あるいは表皮に塗布することによりウイルスや細菌を不活性化する。修復・化粧:病気療養中および死後変化によって変化したお姿を生前の安らかだった頃の姿、表情に近づける。 しかし、これだけを聞いても、実際に利用する方にとってどのようなメリットがあるのか分かりにくい部分があると思います。エンバーミングをすると、ご遺族にとってどのような意義や価値があるのかについて解説していきます。 時間の制約から解放される エンバーミングをすることによって、慌てて葬儀をする必要がなくなります。ご遺体の変化が進むことを考えて、できるだけ早く葬儀を行った結果、「気持ちの整理もつかないままお別れをしなければならなかった」と後悔するご家族は少なくありません。また、変化を抑えるために、専用の保冷庫に預けることをすすめられ、故人と会えないまま葬儀当日を迎えることもあります。そうしたケースでは、「亡くなった」という実感がないまま「気がついたら葬儀が終わっていた」と感じる方もいらっしゃいます。 一方で、エンバーミングを施したことによって、体調を崩されたご家族の回復を待ち、家族全員が揃ってから葬儀を行うことができたケースもあります。このように、最後のお別れを一緒に過ごしたい人たちのスケジュールを尊重した上で、葬儀の日程を決めることが可能になるのです。 過度に冷やす必要がなくなる 葬祭業の立場からすれば、ドライアイスや保冷庫などを使用してご遺体の温度を下げ、腐敗の進行を遅らせることは当たり前の対応です。しかし、その身体の冷たさにショックを受けるご家族は多く、「こんなに冷たくなって……」というお声をよく聞きます。 エンバーミングを施した場合は、ほとんどのケースでドライアイスを使用する必要がなくなります。エンバーミングを施した故人に触れたご家族から、「冷たくないんですね。以前に葬儀をした時は、身体に霜がつくほど冷やされてしまって、本当にかわいそうに思いました」とお話しいただいたことがあります。実は違和感を持っていても「仕方ない」と感じるご家族が多いのだと思います。 もちろん、我々エンバーマーが処置をする前に日数が経過し、腐敗が進行してしまった場合には、エンバーミングを行っただけでは変化を止めることができないケースもあります。そのため、死亡後はできるだけ早めに処置することが望ましいのです。 その人らしさを取り戻す エンバーミングを施すことによって、病気や治療などの影響でやつれてしまっているお顔やお姿を安らかだった頃に近づけることが可能です。生前にどのような病気を患い、どのような治療を受けていたのかといった情報を、エンバーマーが詳細に渡って把握できれば、ご遺体の状態を改善することができるようになります。 ご遺族からの依頼の多くは、「できる限り元気だった頃の姿や表情を取り戻してほしい」というものです。エンバーミングによって防腐され、安定した状態であれば、傷の修復や含み綿などでは改善が難しい「痩せた部位」の修復も可能になります。 また、ドライアイスや保冷庫による処置では、必要な追加処置を行わなければ、乾燥が進み、口やまぶたが開いたり、変色が進んだりすることがあります。エンバーミングを施すことによって、体内から保湿されるため、過度の乾燥を抑えることができます。 さらに、表皮からも保湿することで、肌が整った状態で化粧を行うことが可能になり、その人らしさを取り戻すことにもつながります。使用する薬品に含まれる色素が組織に浸透することで、血色の悪かった部分にも自然な色味が戻るため、厚く化粧をする必要がなくなるケースもあります。 * * * このように、エンバーミングは、ご遺族が「死」を緩やかに受け入れ、大切な人と向き合いながら最後のお別れの時間を過ごすために、役立つ手段の一つだといえるのです。  執筆:橋爪 謙一郎株式会社ジーエスアイ 代表取締役一般社団法人グリーフサポート研究所 代表理事米国で葬祭科学とエンバーミング、グリーフサポートを学び、帰国後(有)ジーエスアイと(一社)研究所を設立。現在は東大大学院で脳科学的視点からグリーフの研究を行う。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)日本遺体衛生保全協会:エンバーミングとは- 医療従事者の立場から.https://www.embalming.jp/embalming/medic/2025/6/20閲覧

無理なくみんなで備える。日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【後編】
無理なくみんなで備える。日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【後編】
インタビュー
2025年7月8日
2025年7月8日

無理なくみんなで備える。日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【後編】

地震・大雨・台風等、各地で災害が起きているなか、医療現場における防災対策の重要性はますます増しています。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会でBCP作成支援活動を行ってきた戸崎さんと碓田さんに、今後のBCP作成支援活動や災害対策に対する考え方などを伺います。 >>前編はこちら手探りで始めたBCP作成支援 日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【前編】  日本訪問看護認定看護師協議会訪問看護認定看護師のネットワーク構築と、訪問看護全体の質向上を目指して2009年に誕生。訪問看護・在宅ケアのスペシャリストである認定看護師が集い、情報交換をしつつ自己研鑽を積み、地域包括ケアシステムの推進に貢献できるように活動している。参考:日本訪問看護認定看護師協議会 立ち上げ経緯&想い【特別インタビュー】戸崎 亜紀子さん星総合病院法人在宅事業部長/在宅ケア認定看護師/日本訪問看護認定看護師協議会 理事。総合病院で急性期看護を経験した後、育児・介護のため一時退職。クリニック勤務を経て星総合病院に入職し、精神科病棟を経験した後、訪問看護ステーションへ。訪問看護ステーション管理者、在宅事業部事務局長、法人看護部長を経て、現職。東日本大震災(2011)や令和元年東日本台風(台風19号)(2019)では、被災者・支援者の両方を経験。碓田 弓さん訪問看護認定看護師。総合病院にて外科病棟、緩和ケア病棟、透析室を経験した後、病院系列の訪問看護ステーションに異動し、12年勤務。介護施設併設の訪問看護ステーションの立ち上げおよび管理者を経験したのち、2023年9月よりみんなのかかりつけ訪問看護ステーション四日市に入職。 ※本文中敬称略 地域に広がっていくBCP 2024年度BCP作成支援 セミナーの様子 ―前編ではこれまでのBCP作成支援活動について伺ってきましたが、今後の活動について教えてください。 戸崎: 活動内容は未定ですが、アンケートの反応も良かったので、可能であればニーズに応じて実施していきたいと思っています。いろいろな方向性が考えられますが、碓田さんは今後どういった活動が重要だと思いますか? 碓田: 個人的には、連携型BCP・地域BCP策定モデル事業が推進されているので、これをどう地域に広げていくか、というところが重要になってくるのではないかと思っています。 戸崎: 確かに、それは大切ですね。私は今後、事業所によってBCPへの温度差が広がっていくのではないかと考えています。BCPに関しては、「委託会社を利用してとにかく作成を間に合わせた」というケースもある一方で、「もっと連携を強めて地域に広げていきたい」という取り組みをしているケースもあります。 すでにBCPに関連する無料の研修やツールもかなり増えてきましたが、それでも「どうすればよいかわからない」「参加できていない」という方がいらっしゃる現状があります。基本のところからわからないと言っている方々を底上げした方がいいのか、それとも先を見据えているステーションに対してもっと先に行けるように支援していけばいいのか……。慎重に検討したいところです。 碓田: そうですね。私の体感としては「とにかく間に合わせた」事業所が大半なのではないかなと思っています。シミュレーションについても、「やってはいるけど、これでいいのかどうか分からない」という声をよく聞きます。 だからこそ、自分たちのステーションだけでやろうとするのではなく、「地域のステーションみんなでやろう」となれば、「自分はこれができてないな」とか「あの事業所はここまでやってるのか。真似してみよう」といった気づきや底上げに繋がるのではないかと考えています。 無理なく、できることから始める ―ありがとうございます。近年、南海トラフ地震に対する警戒も強まっていますが、災害に対する心構えを教えてください。 戸崎: はい。不安を抱えていらっしゃる方が多いと思います。私自身の経験として、2011年の東日本大震災の2年前に「宮城県沖地震の再発率が80%」という話があったことを思い出します。当時、「本当に来るんだろうか」という半信半疑の空気感がありましたが、「何か防災訓練をしておこう」という比較的気軽な気持ちで、事業所のスタッフと阪神淡路大震災の被災の記録や、日本海沖地震の新潟のステーションの手記などを読み合わせしました。「大変だったんだね」と感想を言い合い、「やっぱり対応マニュアルを少し見直しておこうか」という話になりました。 本当に肩の力を抜きながらやった訓練でしたが、振り返ってみれば、このときの話し合いや見直しが、東日本大震災での対応に活かされたと感じる部分がいくつもあるのです。災害について「みんなで話し合っておく」ことは本当に大事だと思います。 2023年度の研修(「どうする!うちのBCP」)に参加してくださった管理者さんも、「研修を機にみんなで話し合う場を持ってみたら、確かに質の向上につながると思った。みんながまとまったようにも感じた」とお話ししてくださいました。BCPを作るだけではなく、みんなで取り組むことが減災につながる。災害は起きてしまうから完全には防げませんが、「減災」には必ずつながります。 BCP作成支援活動をしていて、管理者や担当者が誰か一人で作っているケースが多いと感じたのですが、それではなかなか進まないんです。「ああでもない」「こうでもない」とみんなで議論する時間がとても大事だと思います。 ハードルを上げず、一人で抱え込まないことが大事 碓田: そうですね。BCPも一人で作っていると不安になり、手が止まってしまうと思います。事業所内外を問わず、まわりの人と相談しながら進めることが大事ですね。 戸崎: はい。つい忘れがちなのですが、BCPは「業務継続計画」なので、主語は利用者さんではなく「自分たち」。「私たちが」業務を継続できるための計画であり、「職員が何らかの事情で来られなくなっちゃったときにどうしましょう?」という計画も含まれるわけですよね。例えば、感染症が地域で流行り、子どもがいるスタッフが軒並みダウンする……といったこともあるかもしれません。想像以上に身近なんです。 「人が少なくなったときに、どの業務を優先し、どの業務を後回しにするか」を考えるのがBCPの基本ですから、事業所でスタッフと一緒に「どうする?」って考えたほうがいいでしょう。一度やってみると、きっと有意義だと感じるのではないかと思います。 碓田: 地域BCPに関しても、地域の人たちで一度でも実際に集まって話し合っておく、ということがとても大事になりそうですね。私も自分の地域でやっていきたいと思います。 戸崎: それも大切ですね。郡山でも最近、事業所の垣根を超えて、行政も入った机上訓練を初めて実施しています。地域の全員が参加できなくても、机上訓練だったとしても、1回実施するだけでも、やるとやらないとでは大きく異なります。机上訓練であれば、そこまでハードルは高くありませんしね。 碓田: あまりハードルを上げないことが大事ですね。立派な計画書を作ろう、完璧に訓練しようと思うと、何から手をつけていいのかわからなくなってしまいます。まずは災害について気軽に話せる場をつくるところから始めたいですね。そこから、「じゃあ〇〇が必要だ」などと繋げていける。そういったことの積み重ねでブラッシュアップしていけるのではないかと思います。 戸崎: そうですね。あとは、災害は、本当にどこでいつ、何が起きるかわかりません。2025年に入ってからだけでも、大規模な地震や山火事、道路の陥没やそれに付随するインフラ停止など、さまざまな災害がありました。「こんなことが起こるなんて」と驚くような災害も起こってしまいました。 不安になると思いますが、災害は「想定できるもの」と「想定できないもの」に分かれることを意識するといいかと思います。例えば台風は事前に気象予報で来ると知ることができますし、地震や停電などに関しては、事前にシミュレーションして対応方法を決めておき、マニュアルを作っておけば対応しやすくなるでしょう。 すべて想定することはできなくても、少しでも考えておけば、応用できることがきっとあります。「どうせわからないから」とやらないのではなく、やっぱり少しでも準備しておくことが大切なんです。自分事になっていないスタッフがいても、気軽に事業所内で話し合うだけでも、気負ってしまってやらないよりずっといいんです。ぜひ、そのことを意識していただきたいです。 ―ありがとうございました。 取材・編集・執筆:NsPace編集部

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年7月2日
2025年7月2日

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」後編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した大橋 奈美さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」をもとにした漫画をお届けします。  「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前回までのあらすじ在宅でのお看取りがまだあまり一般的ではなかったころ、どうすれば「その人らしく生きる」ことを支えられるか考えていた大橋さん。そんなときにふと頭に浮かんだのは、病棟看護師時代に受けた訪問看護ステーション所長からのフィードバックだった。病院に向けて、手紙のように温かみのあるフィードバックをしようと考えた大橋さんは……。>>前編はこちら受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】 「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」後編   漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 大橋 奈美(おおはし なみ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府)この度は、審査員特別賞をいただき、本当にありがとうございました。審査員の先生方やNsPaceの皆さまに感謝申し上げます。エピソード投稿をきっかけに、普段していることを言語化し、振り返るきっかけをいただいたと同時に、改めて看看連携の大事さを思い起こしました。これから先、どのような利用者さんとの出会いが待っているかわかりませんが、今後も一人ひとりの人生に寄り添いながら、その方のエピソードを大事にしながら、望みを最後まで伺い、最善を尽くす訪問看護・在宅医療を目指していきたいと思います。 [no_toc]

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年7月1日
2025年7月1日

受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した大橋 奈美さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちら・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」前編 >>後編はこちら受賞エピソード漫画化!「ハッピーライフ通信を活用してから意味のある看看連携ができた」後編【つたえたい訪問看護の話】   漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 大橋 奈美(おおはし なみ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府) [no_toc]

手探りで始めたBCP作成支援 日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【前編】
手探りで始めたBCP作成支援 日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【前編】
インタビュー
2025年7月1日
2025年7月1日

手探りで始めたBCP作成支援 日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【前編】

地震・大雨・台風等、各地で災害が起きているなか、医療現場における防災対策の重要性はますます増しています。より質の高い備えに寄与できるよう、災害対応に取り組む事例をご紹介します。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会のBCP作成支援活動について、当協議会の戸崎さん、碓田さんにお話を伺いました。前編では、BCP作成支援活動を始めたきっかけや内容について教えていただきました。  日本訪問看護認定看護師協議会訪問看護認定看護師のネットワーク構築と、訪問看護全体の質向上を目指して2009年に誕生。訪問看護・在宅ケアのスペシャリストである認定看護師が集い、情報交換をしつつ自己研鑽を積み、地域包括ケアシステムの推進に貢献できるように活動している。参考:日本訪問看護認定看護師協議会 立ち上げ経緯&想い【特別インタビュー】戸崎 亜紀子さん星総合病院法人在宅事業部長/在宅ケア認定看護師/日本訪問看護認定看護師協議会 理事。総合病院で急性期看護を経験した後、育児・介護のため一時退職。クリニック勤務を経て星総合病院に入職し、精神科病棟を経験した後、訪問看護ステーションへ。訪問看護ステーション管理者、在宅事業部事務局長、法人看護部長を経て、現職。東日本大震災(2011)や令和元年東日本台風(台風19号)(2019)では、被災者・支援者の両方を経験。碓田 弓さん訪問看護認定看護師。総合病院にて外科病棟、緩和ケア病棟、透析室を経験した後、病院系列の訪問看護ステーションに異動し、12年勤務。介護施設併設の訪問看護ステーションの立ち上げおよび管理者を経験したのち、2023年9月よりみんなのかかりつけ訪問看護ステーション四日市に入職。 ※本文中敬称略 BCP作成支援活動を始めたきっかけ ―日本訪問看護認定看護師協議会(以下「協議会」)では、2023年度からBCP作成支援活動をされています。まずは、こちらの活動を始めたきっかけや想いについて教えてください。 戸崎: はい。協議会では、かねてより地域貢献活動事業を行ってきましたが、2023年度の活動を理事会で決めていく際、義務化が迫っているBCP策定に関連する事業を行ってはどうか?という提案をしたことがきっかけです。 私は福島県郡山市に住んでおり、東日本大震災や令和元年東日本台風の際は、自分自身が、そして地域が被災しています。また、災害時に地域の人たちをどうやって支援していくか、試行錯誤しながら対応してきました。新型コロナウイルスの感染拡大時も、住民や職員が罹患することもありながら、保健師のチームを行政に応援派遣するなどの取り組みを行っています。振り返ってみると、地域のつながりの中で、支援する側とされる側の両方を体験してきたように思います。 訪問看護師の皆さんも、地域に根差しているお仕事だからこそ、被災者であり支援者の立場になる可能性があります。私は、自分が大きな災害を経験しているからこそ、少しでも災害発生時に備えることの重要性を皆さんに伝えたいと考えているんです。参考:地域住民の心身の健康のために【訪問看護認定看護師 活動記/東北ブロック】実は、当時BCP作成支援の研修を運営する自信はなかったのですが、協議会の理事たちから「経験者が想いを直接伝えたほうがいい」という後押しをもらい、思い切ってチャレンジしてみることにしました。そして、活動メンバーを募ったところ、碓田さんを含めて6名の方が手を挙げてくださったんです。 ―ありがとうございます。碓田さんは、なぜ活動メンバーに入ろうと思ったのでしょうか。 碓田: コロナ禍での経験が大きく影響しています。新型コロナウイルス感染症が拡大していた当時、私は介護施設に併設する訪問看護ステーション(以下「ステーション」)の立ち上げをしていたのですが、施設内でクラスターが発生してしまったんです。情報が錯綜し、みんな得体の知れないウイルスへの恐怖感を抱えていました。 医師に診察を頼んでも断られる状況でしたし、介護施設のスタッフのなかには比較的高齢な方がいて、「自分たちの命の問題に関わるから、もう働けません」というお話がありました。働くスタッフが極端に減り、どうやって事業を継続すればいいのか、途方に暮れる経験をしたんです。 だからこそ、「BCP作成は絶対に必要だ」という強い想いを持っています。しかし、当時はBCPをどう作成すればよいのか、私もよくわかっていませんでした。「自分自身も学びながら支援したい」という思いがあって、運営委員に立候補したんです。 何度も集まり方向性を検討 ―どういった支援を提供すればいいのか、正解がなかなか見えないなかでのチャレンジだったと思いますが、実際に活動をスタートさせるまでの経緯を教えてください。 戸崎: はい。運営メンバーの中には、災害対応にまつわる講師の経験もある稲葉典子さん(西宮協立訪問看護センター/兵庫)や、杉山清美さん(大野医院/愛知)がいらしたので、お二人に色々と教えてもらいながら検討していきました。稲葉さんは在宅医療のBCP策定に関わる研究(厚生労働科学特別研究事業)の訪問看護BCP分科会メンバーでしたし、杉山さんは「まちの減災ナース」(日本災害看護学会)の認定を受けていますから、大変心強かったです。 ただ、それでも方向性を含めてゼロから作っていったので時間がかかり……。開始までに合計7回ほど打ち合わせをしました(笑)。 碓田: そうでしたね(笑)。でも、これを機に「まちの減災ナース」の活動なども知ることができましたし、個人的にはとても勉強になりました。当初は現地に出向いてBCP作成支援をしていくことも検討していましたが、なかなか時間も取れないだろうということで、オンラインでやることにしましたよね。 戸崎: そうですね。中身についてもかなり悩みましたが、BCP作成にお困りの事業所に対して、ある程度の形になるところまで寄り添っていくことにしました。初めての試みということもあり、定員は3事業所に絞りました。  当時の募集案内より抜粋 ―研修当日、どのように進行したのかについても教えてください。 戸崎: 合計3回のプログラムで、1回目は1時間。BCPに関する解説(座学)と、みなさんのBCP作成進捗状況に応じて、次回までの宿題を決めていく、という流れです。基本的には、厚生労働省が提供しているBCP策定の手引き(オールハザード型BCP)を埋めていく、という作業ですが、「どう埋めればいいかわからない」と悩んでいる方もいたので、ヒアリングしながらアドバイスしていきました。 2回目は、随時講義を挟みながら、3時間ほどかけて個別にしっかりとBCPに関する質疑応答をしました。「ここがうまく埋められない」などの悩み事を伺いながら、一つひとつアドバイスしていくという流れです。 最後となる3回目は、研修実施支援として、洪水が起こった際のシミュレーションを体験いただきました。3回目だけは、ご参加いただいた事業所のスタッフの方々も参加可としています。なお、個別にお話を伺う際はオンラインビデオツールでグループを分割し、1事業所につき2人ぐらい担当がついてBCP作成のサポートを行っていきました。順次、講師もグループを巡回するという形式です。  当時の募集案内より抜粋 ―シミュレーションの設定として「洪水」を選んだのはなぜでしょうか。 碓田: 災害時にトイレの使用ができなくなることや、避難所に移動できなくなる、といった状況を一度想定しておいたほうがいいだろうという意見が委員内で出たためです。洪水の場合、そういった困りごとが発生する可能性が高いそうです。 翌年度はオンラインのセミナー形式へシフト ―ありがとうございます。その後、2024年度のBCP作成支援では、オンラインで単発のセミナーを開催されています。これについては、どういった経緯で内容を決定されたのでしょうか。 戸崎: はい。支援のニーズは引き続きあったものの、皆さん2024年度からの義務化に合わせて一旦BCPの作成自体はされているはずなので、「研修・訓練・見直し」部分を中心に講義を展開することにしました。 碓田: 2023年度の対象を絞った支援も密度が濃く有意義だったと思いますが、2024年度はより多くの方々に聞いていただき、最終的に地域BCPにもつなげていけるような研修を目指そうというお話にもなりましたね。 戸崎: はい。そのため、訪問看護師だけではなく、ケアマネジャー、理学療法士、作業療法士、事務職など、さまざまな職種の方々に門戸を開きました。参加しやすい日程で参加してもらえるよう、同内容を2回行うことにし、合計86名の方々に参加いただくことができました。  当時の募集案内 アンケートも好評で、「BCPは災害マニュアルではないことがわかった」「事業所で研修担当になったが、何をすればいいかイメージがついた」といったお声もいただきました。 ―知りたいことをコンパクトにまとめたセミナーを展開されたのですね。ありがとうございます。後編では、今後の活動についてや、災害対策に対する考え方を伺います。 >>後編はこちら無理なくみんなで備える。日本訪問看護認定看護師協議会の災害対策【後編】 取材・編集・執筆:NsPace編集部

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年6月25日
2025年6月25日

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」後編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した田端 支普さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「看護師にご褒美をくれたA氏」をもとにした漫画の後編をお届けします。※漫画タイトルは「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」です。※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。  「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」前回までのあらすじ利用者のあゆみさんは、腎臓がん末期で一人暮らし。入院していましたが、ご本人の「家に帰りたい」という要望が強いことから、訪問看護が入ることになりました。当時訪問看護師になったばかりだった田端さんは、「タバコを吸いたい」という希望に最初は少し戸惑いましたが、安全に配慮しながらご本人のしたい暮らしをサポートしていくことにしました。そして、訪問看護に入って数日経った頃、あゆみさんからオンコールが……?>>前編はこちら受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」前編【つたえたい訪問看護の話】 「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」後編 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 田端 支普(たばた しほ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府)受賞のお知らせをいただいたときは驚きました。ハートフリーやすらぎからは複数名受賞させていただき、みんなが普段頑張ってきたことが報われたようで、本当にうれしいです!表彰式でもさまざまな訪問看護師さんに出会い、全国に熱い思いを持つ訪問看護師さんがいるんだな、と刺激を受けました。 今回のエピソードは十数年前のもので、これを機に久しぶりにあゆみさん(仮名)にお会いして、プレゼントをいただいたような気持ちにもなりました。皆さんにもあゆみさんの人生の一部を知っていただくことができ、嬉しく思っています。 訪問看護は、制度も含めて変化が激しく、大変なこともあります。でも、「やっぱり訪問看護が好き」という想いを持つ訪問看護師さんは多いと思います。みんなでより良い訪問看護をつくり、楽しく看護をし、訪問看護に関わる人みんなが笑顔になればいいなと思っています。本当にありがとうございました。 [no_toc]

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年6月24日
2025年6月24日

受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」前編【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第3回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、審査員特別賞を受賞した田端 支普さん(訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ/大阪府)の投稿エピソード「看護師にご褒美をくれたA氏」をもとにした漫画をお届けします。※漫画タイトルは「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」 >>全受賞エピソードはこちら・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞【2025】・つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞【2025】 ※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。 「看護師にご褒美をくれたあゆみさん」前編 >>後編はこちら受賞エピソード漫画化!「看護師にご褒美をくれたA氏」後編【つたえたい訪問看護の話】 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。投稿者: 田端 支普(たばた しほ)さん訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ(大阪府) [no_toc]

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