コミュニケーションに関する記事

元気をもらえるエピソード【つたえたい訪問看護の話】
元気をもらえるエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2023年12月19日
2023年12月19日

元気をもらえるエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護の現場では、疾患・障害等がある中でも懸命に前向きに生きる利用者さんがたくさんいます。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、利用者さんの前向きな姿勢に力を分けてもらえるエピソードを5つご紹介します。 「今日はどこに行こうかな」 滅びの呪文は引きこもりがちだった過去の自分に向けた言葉だったのかもしれません。未来に歩み出した利用者さんの力強い姿が目に浮かぶエピソードです。 彼は今日も街へ繰り出す。下半身麻痺のため日中はずっと車椅子。母親も病気のため介護してくれる家族は居らず、独りで生活を送っている。40代と若い彼は自身の病気を嘆き何度も自分で人生を終えようとした事もある。そんな彼に関わりだしてもう5年以上が経った。デイに行っても周りは高齢者だらけで話も合わない。職員とは忙しくゆっくり話す時間もない。最初は人見知りかあまり進んで話してくれる事は無かったが、徐々に打ち解け何でも話してくれるようになった。ある日彼からジブリ展に行ってみたいとの相談があった。今まで引き篭もりがちだった彼からそのような言葉が聞けて私は驚いた。受診とデイ以外の外出は久し振りだと彼は楽しそうにしていた。帰り際、物販で購入したのは、バルスと書かれたTシャツだった。それ以降、彼は外出を躊躇わなくなった。破壊の呪文が書かれたTシャツを纏い、過去の自分を破壊するかの様に未来に向かって車椅子を漕いで行く。 2023年1月投稿 「お風呂と花見と自宅がいいよ!」 最後までやりたいことを諦めず追いかけ達成しきった利用者さんに、拍手を送りたくなるエピソードです。 末期前立腺がんの男性の訪問看護に入ることになった。某自動車メーカーの支部長さんで、「何してくれるの?」くらいアウェイな空気でスタートする。シャワー介助から介入し始めて、徐々に関係ができた時に「何かやってみたいことはありますか?」と尋ねると、しばらくして「花見に行きたい」。この時余生は2-3月と言われており、(難しいかもしれないけど、応援したいと思って)一緒に計画立てて、本人の努力もありお孫さんとの花見を実現。痛みや倦怠感のある中、乗り切った彼は「また行きたい、次は元同僚と」とコメントし、こちらも達成。その後、最後は病院でと言っていたのに「実は家で過ごしたい」と本音を打ち明け、家族会議を提案。奥さんも反対していたけど、折り合いつけてくれて、結果6月に永眠される。やりたいことを追いかけた結果、予後予測を乗り越えて自己実現されました。 2023年2月投稿 「酸素をしたマジシャン」 好きなことを追いかける目や身体には力が宿る…。目標や希望は人の原動力になることがわかるエピソードです。 重症COPDで在宅酸素療法をしている方のお宅を初めて訪問したときのことです。酸素流量が増え、トイレに動くのもままならなくなりつつありました。ベッドに腰かけ、会話で大きく息をつきながら生真面目に受け答えする高齢の男性でした。ふと部屋の隅に目を向けると、そこにはまぶしい白いスーツとハット姿で華やかにリボンの束を投げているご本人の写真が。よく見ると鼻には酸素カニュラが付いています。在宅酸素の患者さんの集まりでマジックショーを披露したときの写真でした。退職してから始めたマジックをお孫さんにも教えているとか。その話になると疲れたような表情から目が活き活きとして饒舌になり、ハンカチマジックを披露してくれました。ご本人は手つきに納得がいかない様子。訪問看護と訪問リハビリで少しずつ体力を取り戻そうとずっと頑張っていました。その人の生活の場に伺う訪問看護の現場では、人柄や生き様、周りの人たちとの関係が、情報としてというよりも感覚として捉えられます。今でも、近くを通るたびに自分のことをそっちのけでサービス精神が旺盛なマジシャンの姿を思い出します。 2023年2月投稿 「おばあちゃんの知恵袋」 前向きな発想の転換はまさに「知恵袋」。先人たちの知恵はいつも私たちを救ってくれます。 とある女性の利用者さん宅への訪問時、私の異変に気付いたのか、「今日はどうしたん?暗い顔して」と言われ、「実はこの後怒りっぽいおじいさんのところに訪問するんです。その日の気分で顔を見るなり怒鳴りつけられることも…」という話になったところ、「じゃあ、あんた一回気をもむたびに10円、20円と心の中で数えたらええやん。今日はいっぱい儲けておいで。」と言われました。なんとかしてその利用者さんを怒らせないように、自身の対応に何か間違いはないか…など色々考えていた私の心はすっかり晴れ、二人で大笑い。でもさすがにお金の事を考えるのはちょっと気が引けると伝えると、「じゃあ、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と心で唱えたらどう?」「でもその時、声を出したり、手を合わせたりしたらあかんで」と言うからまた二人で大笑い。今でも、難しい利用者に出会うと、私は心の中で呟いています。「今日も何事もありませんように。南無阿弥…」 2023年2月投稿 「初回訪問看護」 疾患に負けまいと未来に向け希望を抱く利用者さんと、それを支えようとする訪問看護師の前向きな姿勢にエールを送りたくなるエピソードです。 今日が退院後初回訪問看護。病棟からは躁状態になると易怒性が高く、家族トラブル、浪費、内服中断傾向と聞いている。躁状態の典型のような男性、わたしの苦手とするタイプ。病状悪化での暴力暴言のリスクも大きい。怖い、気が重い、玄関の扉も重い。部屋に入るとシェフとして働いていた時の写真がたくさん飾ってある。どれも大きな口を開けて、外国人のシェフと肩を組んで笑っている。今の本人は疲れた表情で大きなテーブルにぽつんと座り、「入院前から薬を飲み忘れてたくさん余っている」と大きな体を小さくまるめて申し訳なさそうにしている。庭には元気なころに植えられたであろうハーブたちがしょんぼりしていて、今の本人とかぶる。一般就労をまたしたいという希望を叶えるために、体力をつけて内服の飲み忘れを減らして、と考えることはたくさん。けれど、写真の彼のようにキラキラ笑って過ごせる日が来るようにと願い、いつの間にか重い心が軽くなっていた。 2023年2月投稿 利用者さんの生き様に触れる 利用者さんの前向きな姿勢や生き様は、関わる訪問看護師だけでなく読者にまで元気や力を与えてくれる、そんなエピソードばかりでした。訪問看護は医療者から一方向的にケアを提供するのではなく、双方的な関係性であることを改めて感じますね。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子  第2回「みんなの訪問看護アワード」エピソードの募集は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。>>イベント詳細はこちらから第2回「みんなの訪問看護アワード つたえたい訪問看護の話」 特設ページ

適応障害、不安、うつ状態への対応【精神症状の緩和ケア】
適応障害、不安、うつ状態への対応【精神症状の緩和ケア】
特集
2023年12月19日
2023年12月19日

適応障害、不安、うつ状態への対応【精神症状の緩和ケア】

このシリーズでは主にがん患者さんの事例を中心に、患者さんが訴える精神症状の問題にどう向き合えばよいかを考えていきます。今回のテーマは「適応障害、不安、うつ状態」です。 不安とは漠然とした不確実な恐れの気持ちが継続する状態。適応障害とは*「がん」という現実に直面したための精神的苦痛が非常に強く、日常生活に支障をきたしている状態。うつ状態とは*適応障害よりもさらに精神的な苦痛がひどく、身の置きどころがない、何も手に付かないような落ち込みが2週間以上続き、日常生活を送るのが難しい状態。*国立がん研究センター がん情報サービス「がんと心」を参考に作成https://ganjoho.jp/public/support/mental_care/mc01.html(2023/9/15 閲覧) がん患者さんにみられる精神症状 がん患者さんは診断や治療を受ける過程でさまざまなストレスを抱え、その結果、不安や抑うつ、不眠といった精神症状をきたすことが知られています。こういった症状が日常生活に大きな支障をきたす場合には適応障害やうつ病などが疑われます。 特に適応障害は、高頻度に認められる精神症状であり、せん妄とうつ病がそれに続きます1)。なお、不安や抑うつなどの症状はがん患者さんだけでなく、心不全や呼吸不全のような非がん疾患の患者さんにも生じるといわれています2)3)。 病的な状態ではないにしろ、多くのストレスを抱える患者さんにかかわる際、精神的な問題がないかアセスメントし、支援を行うことが訪問看護師に求められています。Aさんの事例を通して患者さんの症状にどうかかわるかを考えたいと思います。 事例:Aさん(80代、男性、独居) 大腸がんで手術を受け、一時的にストーマを造設。ストーマ管理の目的で訪問看護を週2回利用しています。手術後に肝転移が見られたため、現在は化学療法を実施中も口内炎の痛みや倦怠感がひどく、今まで通っていたデイケアにも通えなくなってしまいました。家で過ごす時間が長くなり、気分がすぐれない日も多いようです。今回は化学療法について不安があるとの訴えがあったため、化学療法に詳しい看護師が訪問することになりました。 Aさんは、いつもと違う看護師に少し緊張した様子でしたが、徐々に慣れていき、以下のようなことを話してくれました。 口内炎ができてしまい食事のたびにしみてつらいことそれに伴い食事がおいしくないこと 化学療法を受けると身体がだるくなり、やる気も起こらず、気がつくと寝ているだけの生活になっていること 心配事を解決し不安を解消 Aさんの訴えを聞いた訪問看護師は、まずはAさんの心配事の解消が必要と考えました。化学療法による副作用や症状の出現時期、対応方法を具体的に説明し、Aさんの不安を軽減できるように働きかけました。ところが、Aさんは説明を聞いた後も表情が硬く、「心配事は解決できそうです」と話されるものの、とても解決したとは思えない様子です。 全人的苦痛(トータルペイン)の視点でケア Aさんの不安そうな様子に変化がないことから、訪問看護師は身体的なつらさだけではなく、精神的、社会的、スピリチュアルな面から包括的にアセスメントすることにしました。 一般的に、がん患者さんが直面するつらさ(苦痛)は身体的な面だけでなく、精神的、社会的、スピリチュアルと多面に及ぶとされています。これを全人的苦痛(トータルペイン)と呼びます(図1)。緩和ケアでは患者さんに生じるさまざまな苦痛に対応するために、全人的なアプローチが必要です。 Aさんはがんの診断を受けてまだ間がありません。Aさんご本人の苦痛の強さや、世話をしているご家族の心配や負担の大きさ、日常生活に支障をきたしている程度を判断。問題があると感じた場合、精神・心理的問題にすぐに対処します。そのため、Aさんの状況を適応障害、不安、うつ状態の視点から一つずつ確認することにしました。 図1 全人的苦痛(トータルペイン)の理解 淀川キリスト教病院ホスピス編.「緩和ケアマニュアル 第5版」.最新医学社,大阪,2007,p.39より引用 適応障害 適応障害は、比較的明確なストレスを原因として3ヵ月以内に発症し、日常生活に支障をきたしている状態をいいます。適応障害への対応は支持的・共感的に話を聞くことと、ストレスを作り出している問題を把握し、その中から解決可能なものを選択し、介入することです。 Aさんは、がんの診断、ストーマ造設、化学療法、そして化学療法による副作用などで多くのストレスを抱えていることが想像されます。まずは、Aさんにストーマの受け入れ状況を確認してみることにしました。 するとAさんは「いつもと違う状況で突然漏れると不安だが、看護師さんに相談できるし、交換自体は自分でできるから不安はない。服を着ていると案外ストーマがあることも分からないしね。同世代の友人が便秘だ、下痢だと困っているのを聞くと自分のほうが楽かなとも思うよ」と話されました。 不安そうな様子はあるものの、大きな環境の変化であるストーマ造設については肯定的にとらえることができているようです。化学療法に関しても前向きに取り組みたいと考えているそうです。日常生活への支障や本人の苦痛が強くなった起点が明らかな場合、専門医の診察を医師に相談しますが、それには当てはまらないと判断しました。 不安 次に、不安についてアセスメントしました。不安は図2に示すように、気分、思考、行動、身体の症状として現れます。Aさんにこの4つの面について具体的な症状を確認したところ、不眠や食欲減退の訴えはありましたが、気分面や思考面、行動面の自覚症状はないようです。Aさんの日常の行動や心理的に大きな障害は認められず、専門的な介入が今すぐ必要な状態ではないと考えました。 図2 不安の症状 藤澤大介 「不安」.森田達也,木澤義之監修、西 智弘,森 雅紀,山口 崇編集,『緩和ケアレジデントマニュアル 第2版』,医学書院,東京,2022,p.323.より引用 うつ状態 うつ状態については、「落ち込みのチェックリスト」(図3)といったスケールを用い、現在の自分の心の状態を振り返ってもらうとよいでしょう。Aさんに「今、悲しい気持ちや気分の落ち込みなどを感じますか」と問うと、「気分の落ち込みがあきれるほどひどい」との答えが。どのくらいその様子が続いているのか、以前に同じような経験をしたことがあるのかを重ねて問いかけてみました。 するとAさんから次のような話が聞かれました。 「実は、若い時にうつ病を発症し、長い間病院に入院していたことがある。子どもたちにも話せていない。あの時と今の自分の状態が似ているなと思っても、それで病院に行きたいとか、誰かに相談したいとか、とても言い出せなかった。このような状態で治療を続けていると、何のために生きているのか分からなくなる。でも、いろいろしてくれる家族や先生(医師)に悪くて」 図3 落ち込みのチェックリスト(米国精神医学会のDSM-IV診断基準に準拠) 【チェックリストの使い方】まずは、1.2.の質問についてお答えください。 1.2.ともに「ない」という方重い落ち込みではないようです。1ヵ月に1度くらい、上記の項目をチェックしてみることをおすすめします。1.2.の両方、あるいはどちらか1つが「ある」という方3.~9.の質問に答えてください。3.~9.の質問で、「はい」と答えた数を数えてみてください。1.2.の数も合わせた合計が5つ以上で、かつ2週間以上続いている方は適応障害やうつ病の可能性があり、専門家による心のケアが必要と考えられます。まずは担当医や看護師、ソーシャルワーカーへ相談することをおすすめします。精神科、精神神経科、心療内科、精神腫瘍科の医師、心理士による心のケアが役に立ちます。 国立がん研究センターがん情報サービス「がんと上手につき合うための工夫」https://ganjoho.jp/public/support/mental_care/mc03.html(2023/9/15閲覧) 医師への相談をAさんに提案 Aさんが話し終えた後、訪問看護師は今の自分の気持ちを言葉にして伝えてくれたことがとても大切であるとAさんに伝えました。その上で、Aさんが信頼している担当の医師にも今の話を率直に伝えてみてはどうかと提案。また、治療を受けている病院でも、不安やうつ状態のような精神症状について、希望すればきちんと診てもらえることを説明しました。 Aさんから疲れやすさと気力の減退が特につらいとの訴えがあったので、そのことも医師に伝えるように提案し、その後はアドバイスをせず、Aさんの気持ちを傾聴するよう心掛けました。 看護師が帰るとき、Aさんは「自分の中で抱えていたものを話せて気分が少し楽になった。今度、治療のときに先生に話してみようと思う」と話されました。表情も少し和らいだようにみえました。その後、受診している病院で医師に自分の精神面について相談し、現在は精神科のカウンセリングを受け、少しずつ快方に向かっているそうです。 * * * 多くのストレスにさらされるがん患者さんでは、最初の訴えが身体的なものであっても、その背後にはほかに影響する要因が隠れていることがあります。その可能性を常に念頭におきながら会話をし、傾聴し、支持的にかかわることが重要です。 症状を引き起こしている問題が解決可能な問題であれば、小さな問題から解決し、患者さんにかかるストレスを減らしていきましょう。問題の解決が難しい場合は気持ちや感情に焦点を当てた介入を行っていくことが必要です。ぜひ訪問する利用者さんの様子をよく観察し、「いつもと違う」と感じたら気持ちをたずねてみてください。 執筆:熊谷 靖代野村訪問看護ステーションがん看護専門看護師 ●プロフィール聖路加国際病院勤務後、千葉大学大学院博士前期課程修了。国立がん研究センター中央病院などでの勤務を経て、2016年より現職。2007年にがん看護専門看護師の資格を取得。 編集:株式会社照林社 【引用文献】1)Akechi T, et al. Psychiatric disorders in cancer patients: descriptive analysis of 1721 psychiatric referrals at two Japanese cancer center hospitals. Jpn J Clin Oncol 2001; 31(5): 188-194.2)北野大輔.心不全に対する緩和医療.日大医誌 2020; 79(4): 235-239 3)津田 徹.非がん性呼吸器疾患の緩和ケアとアドバンス・ケア・プランニング.日内会誌 2018; 107(6): 1049-1055.

高カルシウム血症への対応【がん身体症状の緩和ケア】
高カルシウム血症への対応【がん身体症状の緩和ケア】
特集
2023年12月12日
2023年12月12日

高カルシウム血症への対応【がん身体症状の緩和ケア】

高カルシウム血症は、がん患者さんに比較的多く見られる代謝障害の1つ。急速に全身状態が悪化し、致死的な経過をたどることもあり注意が必要です。治療の基本は、脱水の補正とカルシウムの排泄、骨吸収の抑制です。今回は高カルシウム血症への対応について解説します。 急に出現し進行した口渇、意識障害の症状 訪問看護師のあなたは新しい患者さんを担当することになりました。 吉澤さんという53歳の男性で、腎臓がん、多発肺転移の方です。奥様と中学生の娘さんと3人で暮らしています。 吉澤さんは会社を立ち上げ、社長として部下を引っ張っていましたが、病に倒れました。突然右腰痛が出現したのです。がんによる腎破裂でした。緊急入院し手術(右腎切除)を行いましたが、がんはすでに血管に沿って上大静脈まで広がっていました。すべてを切除することはできなかったのです。 その後、吉澤さんは自宅に戻り抗がん剤治療を続けていましたが、2週間ほど前から急に「喉が渇く」と言い、水をがぶ飲みするようになりました。その翌日には訳の分からない話をし始めたため、ただ事ではないと思った奥様が救急車を呼び、がん治療中の大学病院に搬送されました。診断は高カルシウム血症とのことでした。 ただちに入院となり、点滴と飲み薬による薬物療法が開始されましたが、吉澤さんはやがて昏睡状態に陥ります。腎臓の働きもひどくなっており、主治医から「最悪のこともあるかもしれない」と言われたのだそうです。 「もし、長くはがんばれないのであれば、自宅で最期を看取りたい」と奥様が希望し、病院の退院支援看護師は、ケアマネジャーと連絡をとり、訪問看護ステーション、在宅医に退院時カンファレンスの依頼をしました。今日はそのカンファレンスのため、あなたは吉澤さんが入院している大学病院に来たのです。在宅で担当することになった中村医師、ケアマネジャーも一緒です。 がんに伴う高カルシウム血症とは カンファレンスの冒頭で、病院の主治医から吉澤さんの現在の状態について説明がありました。 病院主治医: 吉澤さんは腎臓がんに由来する高カルシウム血症のため、当院に10日前に入院されました。ビスホスホネート製剤のゾレドロン酸を投与したのですが、意識状態は改善しません。呼びかけにわずかに反応するのみです。幸い、腎機能は多少低下していますが血清クレアチニン値が2.0mg/dLと横ばいです。しかし補正血清カルシウム値は13.4mg/dLと高値です。予後は厳しいと言わざるを得ません。残された時間が短いと奥様に説明したところ、奥様は夫を自宅に帰したいと希望されました。そこで皆さまに在宅でのケアをお願いするためにお集まりいただきました。 中村医師: 先生、ご説明ありがとうございます。がんに伴う高カルシウム血症には骨転移によるものと、腫瘍から分泌されるPTHrPによるものがありますが、吉澤さんの高カルシウム血症の原因は何でしょう。 病院主治医: PTHrPが高値でしたので、PTHrP分泌によるものと考えております。 あなた: 先生、不勉強で恐縮ですがPTHrPとは何でしょう? 病院主治医: そうですね。分かりやすくお話しします。まず、PTHは副甲状腺ホルモンの略称ですね。がんの一部にはPTHとよく似たタンパク質を分泌するものがあり、これをPTH related protein、すなわち副甲状腺ホルモン関連タンパクと呼び、PTHrPと表記しています。PTHrPが出現するのは進行がんの場合が多く、肺がん、乳がん、膵臓がんなどで比較的多く見られます。PTHrPが分泌されると、PTHと同じように血液中のカルシウム濃度を上昇させてしまうのです。すると数日単位で口渇や多飲・多尿、悪心嘔吐などの症状が生じ、さらに進行すると意識が混濁します(表1)。腎臓の尿濃縮機能が傷害されるため多尿となり、強い脱水を伴う腎機能の低下が見られることもあります。 吉澤さんは意識が混濁し、昏睡状態になっていると思われます。治療薬のおかげで多少カルシウム値は低下しましたが、先ほどもお伝えしたとおりまだ高値が続いており、これから悪化する可能性が高いと見ています。 表1 高カルシウム血症の主な症状 あなた: 丁寧に説明していただきありがとうございます。 中村医師: 多発骨転移でも高カルシウム血症が起こることがありますよ。骨が溶けていくので当然と言えば当然ですが、骨に転移する多発骨髄腫では高カルシウム血症はしばしば起こります。治療が大きく異なることはないのですが、急に症状が進むのががんに伴う高カルシウム血症の特徴でしょうね。 アルブミン値で補正したカルシウム値で評価 あなた: もう1つ、基礎的なことで恐縮ですが、補正血清カルシウム値とはどういうことですか。 中村医師: 血液中ではカルシウムの約50%がアルブミンと結合しています。このため低アルブミン血症のときには血清カルシウム値が実際の値より低くなってしまい、治療の介入が遅れることがあるのです。 そのため 補正カルシウム値(mg/dL)=血清カルシウム値(mg/dL)+(4-血清アルブミン値(g/dL)) という式で補正し、評価します。 病院主治医の先生は補正したカルシウム値を教えてくれたのですよ。それから血清カルシウム値を管理する場合、血清リン値も重要です。カルシウムが増えるとリンが減るので、低リン血症にも注意が必要ですね。 あなた: 先生、ありがとうございます。 中村医師: それでは患者さんはほぼ昏睡の状態で自宅に帰り、私たちは看取りを行うということでよろしいでしょうか。奥様や娘さんは納得されていますか? 病院主治医: 奥様は複雑な感情だと思います。もう少しがんばってほしい気持ちとこれ以上苦しませたくない気持ちが相反しているように思います。 中村医師: 当然のお気持ちでしょう。高カルシウム血症に対する治療として在宅でステロイドを使用してみるのはいかがですか。 病院主治医: 確かにビスホスホネート製剤が開発される前は、がん性高カルシウム血症はステロイドで治療していました。やってみてもよいかもしれません。ほかにはデノスマブを週に1回投与する治療もありますが、がんに伴う高カルシウム血症には保険適応がありません。在宅で行うのは難しいかもしれませんね。 中村医師: 奥様とお話ししてみて、同意が得られればステロイドと点滴を行って経過を見てみましょう。高カルシウム血症が改善され意識状態がよくなれば、脱水も改善され経口摂取もできるかもしれません。 治療によって家族と話せるまでに意識が回復 こうして吉澤さんは自宅で治療を行いながら療養することになりました。すると、2日目には目を開けるようになり、3日目にはしゃべり出しました。水も少しずつむせずに飲めるようになり、7日目には普段どおりのコミュニケーションが取れるようになりました。 あなたは、褥瘡ケア、点滴(皮下輸液、生理食塩液1000mL/日)の管理、ステロイド(プレドニゾロン40mg)の使用、異常の早期発見を心がけながら連日訪問看護に入っていました。日に日に症状が改善する吉澤さんを見ていると、あなたもうれしくなって、奥様と喜びを共有していました。中村医師も毎日訪問し状態を確認しています。 あなた: 中村先生、吉澤さんすごいですね。こんなに元気になって。 中村医師: 素晴らしいですね。私の予想以上です。昨日の採血でも血清カルシウム値は9.8mg/mLと正常値になっていました。腎機能もほぼ正常になっていますよ。 奥様: 先生、ありがとうございます。また夫と会うことができました。今までは夫ではないような気がしていて・・・。 吉澤さん: そうだったんだ。私はこのところのことをほとんど憶えていないんだ。そんなにみんなに心配をかけていたんだね。先生、看護師さんありがとうございます。 中村医師: 吉澤さん、今日は病状を説明する約束になっていましたね。あなたは、身体の中にあるがんが血液中のカルシウムを増やしてしまう状態となって病院に搬送されました。強い薬を使って治療しても血清カルシウム値が下がりきらず、昏睡状態で自宅に帰って来られたのです。吉澤さんは病院よりも自宅の方が好きだろうと…、奥様の強い希望でした。 吉澤さん: 昨日妻から聞きました。私のことを看取るつもりでいたと・・・。今は生き返ったような気持ちです。 中村医師: ここから少し吉澤さんにとってつらい話もあるかもしれませんが、お聞きになりたいですか? 吉澤さん: 覚悟はしています。聞かせてください。 中村医師: わかりました。 吉澤さん: 私の病気、進んでいるのですね。 中村医師: 高カルシウム血症になったということは、吉澤さんのがんがかなり進んだ状態になっているということでもあります。また、現在の薬は飲み薬で継続しますが、身体の中にはカルシウムを増やしてしまうタンパク質が依然出てきています。今回のよい状態がいつまで続くか、私にもはっきりと予測することができません。 吉澤さん: だいたいでもよいので、どのくらいの時間があるか、先生の見込みを教えてください。 中村医師: おそらく、週単位で病状が変わって行くでしょう。調子が悪くなるまで1ヵ月から2ヵ月程度ではないかと思います。あくまで私の予想ですが・・・。 吉澤さん: ・・・分かりました。会社の整理や子どもとの時間、妻との時間を大切にしたいと思います。 奥様は顔を覆い、声を潜めて泣いていました。あなたは奥様の背をさすります。 吉澤さん: 泣かないでくれよ。君が泣くと私までつらくなってしまうから・・・。 あなた: 奥様は今日まで必死にがんばってきたんですもの。よくがんばりましたね。泣いていいんです。泣いてください。 中村医師: 吉澤さん、奥様、つらい話をしてしまい申し訳ありませんでした。 奥様: 先生には感謝しかありません。どこまでがんばれるか、この人と一緒に歩いて行きます。会社は私が継がせていただこうと考えています。 あなた: 奥様は強い。がんばりますね。吉澤さんも安心できますね。 吉澤さん: はい。彼女に預けられたら、本当に私も安心です。でも迷惑にならなければいいのですが・・・。 奥様: これは私が決めたこと。迷惑ではないのよ。 中村医師: これからの時間、有効に使ってください。 穏やかな看取りを経て それから約1ヵ月間、吉澤さんは家族との時間を大切にしながら、一生懸命闘病されました 最期は再び高カルシウム血症となり、中村医師がビスホスホネート製剤とステロイドを投与しても改善しませんでした。その代わり吉澤さんは眠って過ごされました。腎不全があり、浮腫も出現してきたことから中村医師は点滴も中止しました。終末期に点滴を行うと浮腫、気道分泌物、腹水、胸水が増悪するためです。奥様も点滴の中止について理解されていました。点滴を終了した2日後、吉澤さんは静かに旅立ちました。 旅立ちの後、エンゼルケアを行うため、あなたが吉澤さんのご自宅を訪問すると奥様は微笑んで迎えてくれました。 奥様: すごく苦しんで大変なことになるかと思ったけれども、こんなに穏やかに逝くなんて・・・。なんか拍子抜けしちゃった。 あなた: 無理ありませんよ。本当によくがんばられましたね。私が説明したように奥様がマッサージをしてくださったので、吉澤さんのむくみもこんなによくなっているじゃないですか。お嬢さんもがんばりましたね。奥様をこんなにも支えてくださって。素晴らしいご家族でしたね。 奥様: ・・・。 あなた: それじゃあ、お体をきれいにして好きだった服を着せて差し上げましょう。 奥様: ありがとうございます。先生とあなたには本当に感謝しています。 あなた: こちらこそありがとうございます。でも、私たちのことはいいんですよ。さぁ、洗面器にお湯を汲んで、着せたいお洋服を選びましょう。 執筆:鈴木 央鈴木内科医院 院長 ●プロフィール1987年 昭和大学医学部卒業1999年 鈴木内科医院 副院長2015年 鈴木内科医院 院長 鈴木内科医院前院長 鈴木荘一が日本に紹介したホスピス・ケアの概念を引き継ぎ在宅ケアを行っている。 編集:株式会社照林社 【参考】〇田中良哉,岡田洋右.「副甲状腺ホルモン関連蛋白産生腫瘍」日内会誌 2007;96(4):669-674.〇福原 傑.「高カルシウム血症と腫瘍崩壊症候群」日腎会誌 2017;59(5):598-605.

嬉しかった瞬間エピソード
嬉しかった瞬間エピソード
特集
2023年11月28日
2023年11月28日

嬉しかった瞬間エピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護の現場では、訪問先の利用者さんやご家族と接するなかでさまざまなエピソードやドラマが生まれています。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、利用者さんやご家族から感謝や信頼を得ることができ、「嬉しい!」と感じたエピソードを5つご紹介します。 「その人の本当が見えた時」 利用者さんと距離を縮めることができた時の喜びは大きいものですよね。利用者さんからの信頼は何よりも大切な宝にもなることがわかるエピソードです。 訪問看護を始めて3ヵ月の時の利用者様の話。初めての担当者会議では、その方は厳格な方であった。自宅療養で看護師が来ることは理解され介入となったが、初回介入時は30分間相手にしてもらえず。その方の奥様は毎回、私達スタッフが帰るのを見送って下さる。「主人がいつも酷いことを言ってすいません。」と毎回頭を下げられる。私は訪問が終わると、どうしたら分かってもらえるのか涙がでて、先輩方に相談の日々であった。何が原因なのか考えた時に、まずは自分の関わり方を振り返った。そう思ったのも、自分自身で身に覚えがあるからだった。3ヵ月が経ったある日の訪問日から、表情が柔らかくなったのが分かった。体調のこと以外にも、プライベートな事まで話され、時には私の事にまで質問をされることも。そこで「やっと訪問看護師として認めてもらえた!」とすごく嬉しかったのを覚えている。そこで私は、病棟看護師と訪問看護師のケアが違う事に気づかされた。この利用者様のおかげで看護師としてだけではなく、人として成長できた。今ではご家族とともにお手紙もいただき、私は感謝でいっぱいだ。 2023年1月投稿 「実感を取り戻す看護」 利用者さんの心身を安らげることができた嬉しさと、看護の意味を改めて感じさせられるエピソードです。 複数の既往が増悪し、入院していた方が自宅退院を果たした。体調が悪くなってから入浴はできなかった様だが、元々は三度の飯より入浴を好まれる方で無類の長風呂好きだったそうだ。本人はかなり消耗しており、ソファに腰掛けているだけでも眉間には皺が寄り、肌は冷たく青ざめている。衣服からのぞく痩せ細った腕と紫斑が入院生活の壮絶さを物語る。大好きな入浴をさせてあげたかったが、本人にとってあまりにも負担が大きいため足湯を提案した。久々の暖かいお湯に足をくぐらせると「ああ」と声が漏れた。眉間からは皺が消え、常に全身に取り巻いていた強張りが自然とほぐれていくようだった。声は掠れた声で「いいですね」と静かに笑ってくれた。足湯を終えると血の巡りが戻り、青ざめた肌は薄いピンク色になった。熱と潤いを閉じ込めるように保湿クリームを塗り衣類を整える。「本当にありがとう」小さな声ではあったが、ぼくにしっかりと届いた。 2023年1月投稿 「家族の一員の様なお付き合い」 利用者さんやご家族からこうしたお誘いをいただけると、「人としても信頼されている」と嬉しく感じるとともに励みになるエピソードです。 訪問看護を行う中で、軽症な方から重症な方、在宅での看取りも考えなければならない方など、さまざまな方にお会いします。訪問の介入を長く行っていると、お客様やご家族様から「一緒に旅行に行きたいですね」、「食事に行けたらいいですね」と言っていただけることがあります。こういう風に、私たちと一緒に過ごしたいと思っていただけていることに、とても嬉しく思います。 2023年2月投稿 「本人・家族の希望を叶える~『あきらめない』チームの行動力~」 多職種で支援する在宅医療の強みを活かし、連携して利用者さんの希望を叶えることができた事例です。 余命数ヵ月の癌終末期にあるA氏が「ドライブしたい」と発した言葉から外出支援が行なえた事例です。A氏の家族は夫と高校生、中学生の子供2人でした。訪問看護師は今を逃すと外出支援ができなくなると考え、主治医に外出許可を得ました。しかし自宅は集合住宅の2階にあり、移動が困難な状況。ケアマネジャーに相談し福祉用具業者と階段スロープを設置し車いす移動を試みましたが急坂になってしまい断念。そこで訪問リハビリと相談し、介護用担架が提案され移動のシミュレーションを実施しました。外出当日は家族が担架での移動をし、スタッフは介助に回りました。2時間の外出にて桜を見たり、ドライブすることができました。「最高の先生とスタッフさんです」とベッドに戻った際には思わず全員で拍手をして喜びあいました。「A氏の希望を叶えたい。家族と良い時間を過ごしてほしい」というスタッフ間の共通した思いと行動力が実現に至ったと感じています。 2023年2月投稿 「多職種とともに」 病識がなかなか持てない利用者さんへ根気よく向き合い続けることで、多職種での支援にもつながりうまくいった事例です。 精神障害をもつ40代男性。病名に納得がいかず、病院を転々とし治療継続には繋がらなかった。就労意欲はあるが、数週間で辞めることを繰り返していた。精神科訪問看護導入後、定期的な治療含め生活面について一緒に確認、承認していったことで、1年程就労継続できたこともあった。しかし、強い責任感や不安、対人面でのストレス、金銭管理の乱れなどが影響し、就職しては辞めることを繰り返していた。仕事をしたい気持ちは強く、自分は精神障害者じゃないという思いがあったが、看護師が勧めた障害者職業センターへの相談を受け入れることとなった。センター職員とは情報共有を重ね、ジョブコーチによる仕事量・人間関係などの職場調整が入ったことで、「辞めたい」「新しい仕事を探しました」と言いながらも辞める前に相談してくれるようになってきている。違う職種の人たちと一緒に支援することで、自分の考えも人脈も幅が広がったと思う。 2023年2月投稿 利用者さんの望むケアを提供する喜び 利用者さんの生活空間に入っていく訪問看護では、多職種と協力しながら、利用者さんやご家族と信頼関係を築くことが大切です。しかし、信頼を得ることや利用者さんが望む支援を実現するのは簡単なことではありません。 「どうすれば信頼してもらえるのか?」「どうすればよりよい支援を実現できるのか?」 難しいからこそ、それらを達成できたときに喜びを分かち合えるのも訪問看護の醍醐味なのかもしれません。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子 

訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
コラム
2023年11月21日
2023年11月21日

介護職員養成&通学支援【訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 東海北陸ブロック、松下 容子さんの活動記です。介護職員向けの喀痰吸引等研修や、三重県で2023年度より導入されている医療的ケア児の通学支援の取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:松下 容子看護学校を卒業後、総合病院に勤務し、2000年から訪問看護に従事。2011年 訪問看護認定看護師資格取得2012年 四日市社会保険病院 訪問看護ステーション管理者(現:四日市羽津医療センター)2021年~現在 みんなのかかりつけ訪問看護ステーション四日市 管理者 全国で1番の会員数を誇る東海北陸ブロック 私は、日本訪問看護認定看護師協議会の理事に就任して4年目になります。担当業務は総務で、主に総会・同時開催研修会と交流集会の計画、開催等に関わっています。研修会の講師や内容については、会員の皆様からのアンケート調査に基づき、皆様のご希望を反映できるよう、心がけています。 例えば、2023年6月の総会後の同時開催研修会は以下のような内容で実施しました。 第1講「認定更新申請の情報提供」5年目の訪問看護の認定更新を済まされた会員からの情報提供第2講「法律制度を活用したコミュニケーション向上術」看護師であり、社労士事務所代表の方によるご講演 次に、私が所属している東海北陸ブロックの活動状況を紹介します。当ブロックは静岡、愛知、岐阜、三重、福井、富山、石川の7県から構成され、会員数は101名となりました(2023年10月時点)。協議会全体での会議とは別に、ブロック内で年に2回の研修会と交流会、年に数回の役員会を開催しています。役員は、ブロック長をはじめ各地区代表の10名で構成されており、研修会をはじめとした企画・運営を取り仕切っています。9月末には、今年度最初の研修会として、「在宅ケアにおける倫理」をテーマに開催しました。 喀痰吸引等研修講師として10年目 個別で行っている講師活動についてもご紹介します。私はこれまでの10年間、毎年喀痰吸引等研修の講師を務めています。喀痰吸引等研修とは、「たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)」と「経管栄養(胃ろう、経鼻経管栄養)」を行える介護職員等を養成するための研修です。また、この介護職員を現地で指導するための指導者研修(看護師)もあり、いずれも研修内容は講義と演習で構成されています。そのほか、これまでに介護職員数名の実地研修の指導者としても関わらせていただきました。 喀痰吸引等研修会演習風景 今後もこの活動を通して介護職員の喀痰吸引等に関する手技の維持・拡大と喀痰吸引等提供の質確保に努め、介護職員を含めた多職種による協働体制の構築に尽力していきたいと思います。 県初、医ケア児の通学支援開始 医療的ケア児への支援活動についてもご紹介します。四日市市には特別支援学校があり、多くの医療的ケア(人工呼吸器や喀痰吸引、胃ろう管理等)を必要とする児童が通学をしています。しかし、ほとんどの児童はスクールバスへの乗車が困難な状況です。スクールバスに乗れない児童は家族送迎を余儀なくされ、家族の負担は非常に大きいものとなっています。例えば、母親による往復の送迎に1時間程度かかる場合、母親の仕事の時間が削られているケースはもちろん、就業を諦めざるを得ないケースもたびたび見かけられます。 三重県では、そんな家族の負担を軽減すべく、2023年度に「三重県医療的ケア児通学支援事業」が試行され、現在、当ステーションでは週に2回、朝の通学支援に協力させていただいています。業務内容は、指定された福祉タクシーに同乗し、運転手さんと協力して安全に児童を特別支援学校まで送り届けることです。道中、車内での児童の状態観察と喀痰吸引の必要があれば実施し、学校到着後に担任教員に母親からの伝達事項や車内での状態を引き継ぐという流れになっています。 まだ開始したばかりの事業であり、実際、受け入れのできる訪問看護ステーションも、まだまだ少ないのが現状です。障害があっても健常な児童と変わらず、平等に学習機会が確保され、必要な支援のもと、児童の成長、発達と家族へのサポートがますます促進されるよう、今後も微力ながら関わっていきたいと考えています。そして、誰もが豊かに暮らせる地域に発展することを心から願っています。 * * * この記事をお読みいただいている訪問看護師の皆様にも、ぜひ安心・安全の提供と、自分らしい生活・ありたい姿の実現を見据えながら、療養者様やご家族に寄り添っていただけたら幸いです。 ※本記事は、2023年10月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

【医師に聞く】地域医療と訪問看護2
【医師に聞く】地域医療と訪問看護2
インタビュー
2023年11月14日
2023年11月14日

【医師に聞く】地域医療と訪問看護~接遇の大切さと100点満点を目指さない理由~

20年以上にわたり神奈川県横浜市金沢区とかかわりを持ち、当地に田川内科医院を開業した田川暁大先生。地理的・医療的環境が異なるさまざまな地域でキャリアを積み、糖尿病、ぜんそく・COPDなどの分野で患者さんの在宅療養に心を傾けています。そんな田川先生に、地域医療や訪問看護への想いを語っていただきました。 田川内科医院 院長田川 暁大(たがわ あきひろ)先生1998年山形大学医学部卒業、2004年横浜市立大学大学院医学研究科博士課程修了。2016年より現職。医師としてのキャリアを神奈川県内各地のさまざまな医療機関で積み、呼吸器内科・糖尿病内科を中心に診療するクリニックを横浜市金沢区に開業。専門性を生かし、患者さんやご家族と一緒に考えながら実行可能で継続できる治療を推進している。コロナ禍においては自院でのワクチン接種や発熱患者の受け入れにも積極的にかかわる。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医、日本糖尿病協会糖尿病認定医。 患者さん一人ひとりへの接遇を大事に —まずは、地域の患者さんとかかわる喜びや、心がけていることについて教えてください。 開業したのは2016年ですが、横浜市金沢区内の複数の病院で20年来医療に従事してきました。そのため、何年も前に別の病院で診察した患者さんが来院なさるケースがあります。新型コロナワクチン接種で当院を受診した方に、「実は20年前に別の病院で診ていただきました。あのときはありがとうございました」と言われたり、「ここはあのときの田川先生のクリニックなんじゃないかなと思って建物の前を通っていたんです」といった話もうかがったり。患者さんにそんなふうに言っていただけるのは嬉しいですね。 そもそも病院自体が「行きたい場所」ではなく、嫌な医師なら来院しませんから。「何かあればまたこの病院にかかりたい」と思っていただけるような適切な対応・接遇、何より信頼を得ることが大事だと、スタッフとも常々話しています。 田川内科医院の外観(左)と受付の様子(右) どの地域でも最新の標準治療を提供するために —地域医療について課題を感じることはありますか? 私のいる金沢区は非常に医療環境に恵まれており、呼吸器も糖尿病も、当院のように専門医が在籍しているクリニックが複数あります。加えて区内には横浜市立大学附属病院や横浜南共済病院、県立循環器呼吸器病センターといった基幹病院もあり、各診療科に専門医が複数いる環境です。 一方、高齢化や過疎化が懸念される地域ほど専門医が少ない傾向にあると感じています。そういった地域では各分野の知識が更新されづらくなり、標準治療の提供も難しくなってしまう可能性があります。 今後、より地域医療に求められるだろうと感じているのが、各科の医療水準の均衡化と考えます。専門医が少ない地域・いない地域でも最新の標準治療が提供できるように、非専門の先生と協力していく必要があります。もちろん、我々専門医の研鑚や積極的な発信が必要なのは言うまでもありません。 —訪問看護師に関しても同様のことが言えるでしょうか。 そうですね。みなさん本当に真摯に患者さんと向き合っておられますが、例えば糖尿病に関して「血糖値に応じてインスリンを何単位」といった、「かつては当たり前だったが今は違う」知識に基づいてお話されている訪問看護師さんもいらっしゃることは事実です。もちろん、「今は違うんですよ」とご説明をしますが、比較的情報が入ってきやすい大きな病院と異なり、お一人で訪問することが多い訪問看護ステーションでは、どうしても情報更新が難しいケースがあるのかなと感じます。 標準治療の提供のために、訪問看護師さんにも積極的に学んでいただければと思いますし、我々も必要に応じて情報提供を続けていきたいと思っています。 敬意をもって患者さんに接する大切さ —患者さんとの接し方や医師への連携について、アドバイスいただけないでしょうか。 忙しいとき、多くの医療者は自分が伝えたいことを一方的に話してしまいがちです。しかし本当に重視すべきは「患者さんに正しく意図が伝わる」こと。そのために私は丁寧な言葉を選ぶよう心掛けています。丁寧に話すだけで、早口ではなくなりますから。 また、医師・看護師に限らず医療従事者のなかには、患者さんに対して高圧的だったり、逆に子どもをあやすように接したりする人がいます。私はどちらも違うのではないかと思っています。おすすめしたいのは、敬意をもって患者さんに接すること。そうすると患者さんのちょっとした違いに気付いたり、貴重な情報を患者さんから引き出せたりするものです。 とくにご高齢の方は皆さん我慢強く、体調の変化をあまり訴えない傾向があります。しかしそこに病気のサインが隠れている可能性もあり、「おやっ」と感じることがあればぜひ医師と連携してほしいですね。 100点満点の生活改善は目指さない —先生は呼吸器と糖尿病がご専門で、生活習慣が症状に影響する疾患の患者さんを多く診ていらっしゃいます。安定した在宅療養を継続するために重要と考えていることを教えてください。 「100点満点を目指さない」ことでしょうか。85点くらいで十分ですね。年齢を重ねるほど、できないことが増えてくるので、ご本人・ご家族と医療者とで「落としどころ」をすり合わせて共有することが重要です。 具体例を挙げると、たとえば「医師に制限・禁止されている食べ物を食べてしまった」と患者さんに打ち明けられたとします。それが絶対にNGなものでなければ、どこまでなら減らせるか患者さん自身と相談します。このとき、私はまず患者さんの発言を受け入れるようにしています。そして患者さん自身が決めた目標を達成できるようがんばってもらい、結果が出たら一緒に達成を喜ぶんです。 そこで、「じゃあ次はもう少し制限しましょう」…とは言わず、「これを継続しましょう」と伝えます。「本当にそれでいいの?」と思うかもしれませんが、結果が出ると患者さんは楽しくなり、ご自分から量を制限するようになります。そうなったらしめたもので、患者さんの行動変容につながっていくんです。 訪問看護師さんが気軽に患者さんの情報を共有していただけたら、もっとアドバイスができると思いますし、どこが「これだけは守ってほしい点=85点」なのかを一緒に検討することもできるでしょう。患者さんと長く接している訪問看護師さんからの情報は医師にとって貴重な気づきになります。これからも、一緒に地域医療を支えていきましょう。 ※本記事は、2023年9月の取材時点の情報をもとに構成しています。 取材・執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

訪問看護のやりがいエピソード
訪問看護のやりがいエピソード
特集
2023年11月14日
2023年11月14日

訪問看護のやりがいエピソード【つたえたい訪問看護の話】

仕事は生活するお金を稼ぐために必要な手段のひとつですが、人生のうちの多くの時間を占めます。充実感・自己肯定感を得るためにも、仕事のやりがいは大切です。今回は、「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、やりがいをテーマとしたエピソードを5つご紹介します。 「訪問看護を、私の一生の仕事に、後押ししてくれたO氏」 この人のために何ができるか?看護師を職業として選んだ理由や看護師としての初心を思い返すエピソードです。 「外の景色見てもらおうよ」「外に出て風を感じてもらおう」私たち、訪問看護を始めてまもないナース3人は、ALSで数年間寝たきり、人工呼吸器つけた70代のO氏を、外に連れ出す計画を立てました。呼吸維持のため、アンビューバッグ。万が一のため、足踏み式吸引機。移動の為のストレッチャーを、準備して、近くの神社へ。紅葉の綺麗な時期でした。数年ぶりに外に出たO氏は、後日パソコンの指先の操作で、「楽しかった」「気持ちよかった」と感想を述べてくれました。別日には、公園にも出かけました。またクリスマスには、3人で持ち寄った楽器でミニコンサートを、ベッドサイドで開催しました。もう亡くなってしまいましたが、その時撮った写真は、今でも私を初心に帰してくれます。これは、私の20年以上も前の大切な思い出です。今では、スタッフも10人以上の大きなステーションに成長しました。あの時の原動力は、今と違って時間にもゆとりがあったからうまれたのかも知れません。しかしながら、若いスタッフにあの情熱は確実に受け継がれていると感じています。嬉しいことに、この街にも、訪問看護が着実に根付いてきたようです。 2023年2月投稿 「『最期まで面倒見る』って言われたけれど…」 利用者さんの選んだ最期の過ごし方とその日常に、訪問看護として関われる喜びを感じるエピソードです。 100歳を超える女性が退院。主介護者は息子さん。脳梗塞での入院で、病院からは療養型をすすめられ「うちで最期まで面倒みますよ」と言われたが、息子さんは自宅退院を希望。経口摂取も難しく、年齢的にもいつ何があってもおかしくないといわれたものの、そろそろ3ヵ月が過ぎる。表情が穏やかになり、訪問入浴で笑顔もみられ、訪問リハで拘縮も緩和してくる。息子さんは看護師からのケアの指導に「我流だったけど、プロはやっぱり違う」と大満足。「お母さん、お家はいいねぇ。退院できて、年も越せて本当に良かったねぇ」と優しく語り掛ける息子さん。母は言葉では返事できないが、温かい笑顔で返す、そんな日々に訪問看護とリハで関わっている。 2023年2月投稿 「日常を支えること」 人の生は有限であり、何気ない日々の尊さと時間の大切さを実感させられるとともに、その生を支援できる訪問看護のやりがいを感じるエピソードです。 「誕生日おめでとう」「ありがとう」か細い声ではあるが、Aさんが笑みを浮かべ、そう返した。年の瀬に末期がんを宣告され、ひと月半が経つ。徐々に口数が減り表情が乏しくなり行く状況で、少し先の目標を掲げながら伴走を続けてきた。クリスマスを迎える。新年を迎える。そして、誕生日のお祝いをする。それは決して特別ではない当たり前の日常。私たちはそんな日々を積み重ねながら人生を歩んでいるのだと思う。しかし、高齢になり病気を患うと、それまで当たり前だった日常はそうではなくなってしまう。私が考える看護師の役割とは、その人にとって当たり前の日常を送れるよう手を差し伸べること。感情を表出したり、季節を感じたり。Aさんと接して、よりその大切さを感じた。今日もAさんの看護に向かう。いつものように挨拶を交わすとAさんの顔に笑みが浮かんだ。その傍らで誕生日プレゼントのガーベラが、色鮮やかに咲いていた。 2023年2月投稿 「生きる意欲を失いかけた方へ伴走する看護」 自分らしくできないならもう自分ではない…。病気は時に人の尊厳や生きる意欲をかき消してしまうこともあります。ただそうなってからも、病気に打ち勝つ努力をされた利用者さんやご家族と、それを支援し伴走し続けた投稿者さんには感動を覚えます。 妻のM様と二人暮らしの90歳代のE様。入浴前後には「行ってきます、行ってらっしゃい」「ただいま、おかえり」と声を掛け合ったりお二人のやり取りを見ているとお互いを大切にしていることがうかがえる素敵なご夫婦。E様は元国語教師、M様は父が大手デパートの役員で裕福な家庭のお嬢様。E様は末期膀胱がんで膀胱タンポナーデを繰り返し、膀胱留置カテーテルが挿入された。重度大動脈弁狭窄症による失神発作も頻回に認め介護を受けることが多くなり「死にたい」という発言も聞かれるようになった。訪問看護ではE様の意思決定に伴走し、E様はM様と自宅で暮らす選択をした。1日3回訪問をしてまずは身体的側面を整え、お二人の文化・社会的側面を意識した関わりを続けた結果、病状も以前より安定し入浴も再開。趣味の読書や晩酌もできるようになりE様らしさを取り戻した。現在もお二人は自宅で暮らし訪問看護はその暮らしに伴走している。 2023年2月投稿 「『看護はアート』と考えられた訪問看護」 訪問看護という仕事は、たくさんの色を重ね合わせて作り上げていくものなのかもしれません。そんな仕事へのやりがいや自己の成長を感じたエピソードです。 学生のころ、「看護はアート」とナイチンゲールが述べたと習った。病院で働いていたころはそう思えなかった。しかし訪問看護師として働き始め、その人らしさを守れるように、生活を多角的に看る看護を考え始めて、「看護はアート」であると理解できるようになった。認知症の独居の患者には、内服を確実にできる工夫を考えるほか、生活状況・火の元の管理や、訪問販売で不要な契約をしていないか等ケアマネと家族と連携して考えた。看取りのがん患者には医療提供はもちろん、ルート類でつまずかない室内配置を考えたり、本人や家族それぞれの思いを吐露できるよう介入したり、看取りの後悔をご家族が軽減できるようエンゼルケアを一緒に行ったり、自分なりに工夫した。訪問看護は患者と家族をつなぎ、介護・福祉を通して地域にも貢献できる仕事だ。ナイチンゲールの述べたことを理解するのに看護師になって何年もかかったが、訪問看護師になって成長できたと思う。 2023年1月投稿 なぜ訪問看護に携わるのか? 「なぜ今の仕事を選んだのですか?」「仕事のやりがいは?」 聞かれてはっきりと答えることができる人は実はそう多くないのかも知れません。今回それぞれのエピソードでやりがいや充実感も感じ取れますが、それは投稿者さんにとっての答えでしかありません。ではあなたが訪問看護をする理由は何ですか?エピソードを通じ、一度自分の中で振り返る機会になれば幸いです。 編集: 合同会社ヘルメースイラスト: 藤井 昌子

呼吸困難への対応 後編【がん身体症状の緩和ケア】
呼吸困難への対応 後編【がん身体症状の緩和ケア】
特集
2023年11月7日
2023年11月7日

呼吸困難への対応 後編【がん身体症状の緩和ケア】

末期の肺がんを患う鈴木さん。自宅での療養を開始したものの、同居する娘さんから距離を置かれているように感じ、さみしさや自分を責める気持ちに苦しんでいます。それが呼吸困難の症状にも影響しているようです。訪問看護師として何ができるのか、今回も最善の策を考えていきます。 >>前編はこちら呼吸困難への対応 前編【がん身体症状の緩和ケア】 精神的なつらさが関係することも 訪問看護師のあなたの働きかけで、娘さんに主治医から病状説明してもらうことになりました。これから娘さんをどのようにサポートできるかも含め、話し合いを行います。 主治医: 本日はお忙しい中、時間をつくっていただきありがとうございます。主治医です。本日はお母様の病状についてお話しさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。 娘さん: お願いします。 主治医: お母様は肺がんで療養され、これ以上抗がん剤が効かないと判断されました。緩和ケア病棟に行く選択肢もありましたが、お母様の希望でご自宅に戻ることになりました。 主治医がさらに続けます。 主治医: お母様の両方の肺にはたくさんの転移がみられます。また、右肺には胸水と呼ばれる水もたまっているので、呼吸が苦しくなりやすい状態です。このため、お母様には鼻から酸素を吸っていただいています。こうしていただくことで、現在のところは十分な酸素を供給できています。 娘さん: でも父からときどき息苦しさの訴えがあると聞いています。それはなぜでしょうか? 主治医: 今は十分な深呼吸をしても、以前のようには酸素を体内に取り込めません。その少しの苦しさが増大してしまうと苦しくなってしまうのかもしれません。息が苦しいと感じることは「すぐに命がなくなってしまうかもしれない」という恐怖にもつながります。中にはパニックになってしまう方や過呼吸になってしまう方もいます。精神的なつらさが呼吸の苦しさにつながる方は多いです。 娘さん: 母もそのような精神的なつらさを抱えているということですね。 あなた: お母様にとって家は生きる場所です。それをご家族の皆さんに、そして娘さんに認めてもらえることで、安心してご自宅で生き抜くことができるのではないでしょうか。 娘さん: …わかりました。忙しさを理由に母を避けていたのかもしれません。きっと母を失うことを認めたくなかったのかもしれません。うまくできるかどうかわかりませんが、今日母と話してみます。ここにいてもいいんだよって…。 あなた: うまく話せなくてもよいのではないですか。娘さんの気持ちが伝われば…。きっと伝わりますよ。 娘さん: そうですね。いろいろと話してみます。 酸素療法中に配療すること 娘さんがご自宅に帰られた後、あなたはよい機会なので、今後の対応について主治医に聞いてみることにしました。 あなた: 先生ありがとうございました。また途中で出しゃばってすみません。 主治医: いえいえ、大丈夫ですよ。 あなた: ところで、今後、鈴木さんが呼吸困難を訴えた場合はどう対応すればよいでしょうか。 主治医: まず環境の整備ですね。気流や不快な匂いへの対処、一人にしないことなどでしょう。それでも息苦しさが改善しない場合、モルヒネ10mg/日を内服することにしましょう。さらに呼吸が苦しいときには酸素を3L/分まで増量するようにしてください。 CO2ナルコーシスのリスクを理解しておく あなた: 鈴木さんはそれほどひどい呼吸不全を起こしているわけではないですよね。酸素を増やすことに意味があるのでしょうか。CO2ナルコーシスの心配もあるのではないですか? 主治医: よく勉強されていますね。鈴木さんの場合、換気量がさほど減っているわけではないので、二酸化炭素が体内に著明にたまってしまう状態であるCO2ナルコーシスは起こしづらいと考えています。それでもCO2ナルコーシスを起こさないように、状態観察は必要ですね。もしCO2ナルコーシスを疑ったときには遠慮なく呼んでください。できるだけ早く往診します。 あなた: わかりました。ありがとうございます。先生、CO2ナルコーシスを起こすということは、呼吸不全が進行していることかと思います。その場合は看取りも近いと考えてよいのでしょうか。 主治医: そうなる可能性もあります。CO2ナルコーシスで意識が低下し、回復が困難と考える場合は看取りに備えた対応をするかもしれません。一方で回復可能と考える場合は、胸腔穿刺を行って胸水を排液し換気量を増やす、または高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula oxygen:HFNC)という加温・加湿された高流量の酸素を投与する方法もありますね。そのときの状況次第だと思います。 呼吸不全にはⅠ型とⅡ型がある あなた: 呼吸が苦しいとの訴えがあったとき、呼吸不全があるかどうかは、酸素飽和度や呼吸数などで判断してよいのでしょうか。 主治医: 呼吸不全は、動脈血中の酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下のことです。酸素飽和度が90%未満の状態と考えればよいでしょう。それに加えて、動脈血中の二酸化炭素分圧(PaCO2)が45mmHg以下の場合(Ⅰ型呼吸不全)と、46mmHg以上の場合(Ⅱ型呼吸不全)に分けられます。CO2ナルコーシスは二酸化炭素がたまることで起こるので、Ⅱ型に相当します。 あなた: 二酸化炭素分圧を調べるには動脈血を採血して、血液ガス分析を行うしかないですよね。 主治医: そうですね。ただ、調べる機械を持っていない診療所も多いので、調べられるうちにどこかで一度調べておくとよいかもしれません。Ⅱ型ならCO2ナルコーシスに十分注意する必要があるというわけです。入院中の血液ガス分析結果では鈴木さんはⅠ型に相当しますので、ややナルコーシスになるリスクは少ないですが、意識レベルが低下していると感じたら連絡をお願いしますね。 あなた: わかりました。 呼吸困難が緩和され穏やかな最期に 娘さんが鈴木さんとお話しされてから、鈴木さんは不思議なほど呼吸困難を訴えることが少なくなりました。呼吸の状態(酸素飽和度)は徐々に悪くなっていきましたが、息苦しさを訴えることはありませんでした。娘さんは2週間ほど介護休暇をとり、ご主人よりもベッドサイドにいる時間が増えたそうです。さらにそこから2週間、鈴木さんは穏やかに過ごしておられましたが、ある日、状態が大きく変化しました。 朝から鈴木さんが強い息苦しさを訴えているとの連絡が入り、あなたは急いで鈴木さんのご自宅に駆けつけました。 鈴木さんは呼吸が浅く、呼吸数も頻回です。酸素飽和度78%、脈拍120回/分、呼吸数25回/分、血圧90/62mmHg。呼びかけると少しうなずきますが、意識レベルも低下しているようです。 あなたは酸素を3L/分に増量し、主治医に連絡しました。到着した主治医はまずモルヒネ10mgを皮下注射しました。その後、0.05mL/時(0.5mg/時)で持続皮下注射を開始しました。開始10分ほどで呼吸数は18回/分まで減ってきました。 あなたは鈴木さんに呼びかけます。 あなた: 鈴木さん、苦しくないですか? 鈴木さん: 少し楽になったわ…。 しかし、鈴木さんのお顔は真っ青です。 主治医: 酸素を増量しても、酸素飽和度が78%から上がらないですね。血圧も70mmHg台まで下がってきました。強い呼吸不全の状態です。このままの状態では長くは頑張れないので、ご家族にしっかりお別れをしてもらいましょう。 あなた: わかりました。 主治医は、呼吸の苦しさは可能な限り緩和していること、肺に酸素が入らない状態のため、長くは頑張れないことをご主人と娘さんに伝えました。あなた は鈴木さんの足をさすりながら、ご主人と娘さんに鈴木さんに付き添い話しかけてもらうようにしました。聴力は最後まで保たれることが多いためです。 2時間ほどそのままの状態で付き添ったところ、下顎呼吸が始まりました。ご主人と娘さんに最後の呼吸が始まっており、苦痛はすでにないことを伝え、手を握って話しかけるようにお願いしました。やがて呼吸が停止し、いったん診療所に戻っていた主治医に連絡し、死亡確認をしてもらいました。あなたはエンゼルケアを行い、鈴木さんにお別れを告げました。 エンゼルケアを終えた鈴木さんの表情は少し微笑んでいるように見えました。 執筆:鈴木 央鈴木内科医院 院長●プロフィール1987年 昭和大学医学部卒業1999年 鈴木内科医院 副院長2015年 鈴木内科医院 院長 鈴木内科医院前院長 鈴木荘一が日本に紹介したホスピス・ケアの概念を引き継ぎ在宅ケアを行っている。 編集:株式会社照林社 【参考】〇日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会編.『進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版)』金原出版,東京,2023.

呼吸困難への対応 前編【がん身体症状の緩和ケア】
呼吸困難への対応 前編【がん身体症状の緩和ケア】
特集
2023年10月31日
2023年10月31日

呼吸困難への対応 前編【がん身体症状の緩和ケア】

呼吸困難とは呼吸時の不快な感覚のことをいいます。ご本人が「息苦しい」と感じる主観的な症状であるため、呼吸不全の病態と一致しないことも少なくありません。今回は末期の肺がんを患う鈴木さんのケースを通して、呼吸困難への対応を見ていきましょう。 在宅療養を始めたばかりの鈴木さん 鈴木さんは62歳の肺がん末期の利用者さんです。専業主婦として過ごしてこられましたが、2年前に肺がんが判明。抗がん剤治療を行っていましたが、効果がなくなり、自宅で過ごすことを選択されました。鈴木さんは両肺に多発転移、右胸に胸水貯留があるという状態です。 訪問看護師であるあなたと初めて会ったとき、鈴木さんは笑顔でした。1L/分で酸素が流れている経鼻酸素カニューレを手放せない状態ではありましたが、特に痛みもなく、息苦しさもないとのこと。酸素飽和度95%と呼吸状態もある程度保たれていました。 鈴木さんはご主人と娘さんの三人暮らしで、家事はすべてご主人がやってくれています。居間に置かれた介護用ベッドで療養されており、ときどきさみしそうな表情を浮かべることがあり、あなたはそれが少し気になっていました。 呼吸困難の訴えがあり夜間に訪問 退院翌日の夜10時、あなたが持っていたステーションの緊急用携帯電話が鳴りました。鈴木さんのご主人からです。 ご主人: 妻が1時間ほど前から息が苦しいと言っています。酸素の量を3L/分まで上げてもいいと言われていたので、酸素を増やして、背中をさすっていたのですがよくなりません。このまま息が止まってしまうのではないかと不安になり、電話をしました。 あなたはすぐに訪問する旨を伝えて、自転車で鈴木さんのご自宅に向かいました。訪問に向かう間、あなたはいろいろなことを考えていました。酸素飽和度が極端に低下していたら…、酸素を増やしても苦しいのだから主治医にすぐ連絡するべきなのだろうか…、そんなときに自分は何ができるのだろうか…。薄曇りの初夏の夜のことでした。 訪問してみると、居間のベッドで鈴木さんが座り込んでいました。起座呼吸の言葉が頭をよぎります。かなり状態がよくないのではないかと思い、鈴木さんに声をかけて、症状を聞きながら酸素飽和度と血圧を測定しました。鈴木さんの息はかなりハアハアしています。 鈴木さん: 胸の奥が何か締め付けられるような感じで、空気がうまく入っていかないの。このままだともっと苦しくなるような気がして…。 鈴木さんの酸素飽和度は98%(酸素投与量 3L/分)、血圧120/68mmHg、脈拍98回/分、呼吸数22回/分と大きな異常はありません。 リラックスを促し症状を緩和 まずあなたは、窓を開けて居間に風を呼び込むことにしました。窓を開けると幸いさわやかな風が吹き込んできました。次にベッドを45度程度にギャッジアップしました。クッションを集め、つらくない姿勢をとりました。右を下にしたほうが、少し楽になるようでした。 鈴木さんのように胸水が片側にたまっている患者さんの場合、側臥位をとると楽になったり、呼吸状態がよくなったりします。どちらの向きにするかは、胸水や酸素の状態によって違ってきますので、患者さんご本人の反応やSpO2などをみて調整するとよいでしょう。よくいわれているのは胸水がたまっているほうを上にすることですが、胸水の量が多いと健側の肺が胸水によって圧排され、かえって呼吸困難が強まることもあるので注意が必要です。 ベッドの脇には友人からの退院祝いである百合の花が置かれていました。匂いがきついと感じたあなたは、その花を隣室に移し、匂いがこもらないようにしました。 10分ほど背中をさすっていると「だいぶ楽になってきたわ」と鈴木さんが話されました。呼吸数も13回/分ほどまで改善している様子です。さらに30分ほど背中をさすり、当面状態が悪化する可能性は少ないことをご主人と鈴木さんに説明し、鈴木さんのお宅を後にしました。 薬物療法ではモルヒネや抗不安薬を使用 翌日、申し送りでそのことをスタッフに説明すると、ベテラン訪問看護師の西水さんから声をかけられました。 西水さん: よく対応したわね。私でもあなたと同じように対応したと思うわよ。特にあなたが窓を開けて空気の流れをつくったことはすごくいい工夫だと思ったわ。海外では携帯用のファンを持たせるように患者に指示して、苦しくなったら口元にファンで風を送り込むように指示している先生もいるそうよ。 あなた: そうなんですか。百合の花の匂いが少しきついなと思ったので風を送るようにしたのですが…。何とか楽になってくれてよかったです。でも、夜中にまた呼ばれたらどうしようとあまり寝られませんでした。 西水さん: そうね、先生たちはこんなときのため頓服の薬を出してくれているから、それを服用させるのも一つの手よね。たいてい抗不安薬であることが多いわ。でも緩和ケアの先生たちはモルヒネやヒドロモルフォンの速放性製剤を出してくれることが多いのよ。 あなた: 患者さんにとって呼吸が苦しいというのは、不安というか、恐怖だと思います。なので、抗不安薬が処方されるのは分かるのですが、医療用麻薬が処方されるはなぜですか? 西水さん: 医療用麻薬のうちモルヒネとヒドロモルフォンは呼吸困難を改善させる効果があるとされているの。その機序ははっきりと分かっていない部分もあるのだけど、呼吸中枢に働いて呼吸数を減らすといわれているわ。呼吸数が減るとずいぶん楽になるのよ。 あなた: そうなんですね。勉強になりました。ところで、西水さん、実は鈴木さんのことで気になることがあるのです。初回訪問の時、鈴木さんが少しさみしそうな表情をされているように思ったんです。鈴木さんの娘さんが同居されているのですが、昨日、今日とお会いしなかったことも少し気がかりで…。 西水さん: あなたがそう思うなら、お二人に聞いてみるのはどうかしら。 あなた: わかりました、聞いてみます。 どこかさみしそうだった本当の理由 翌日の定期訪問では、鈴木さんは息苦しさも改善して穏やかに過ごされていました。体のチェックでも胸水はさほど増えていないと思われ、酸素の投与量を医師の指示で1L/分に減らしても、酸素飽和度は95%と大きな問題はなさそうです。 ご主人もいらっしゃったので、あなたは思い切って鈴木さんご夫婦に切り出しました。 あなた: 素敵なご夫婦ですね。これだけご主人がかいがいしくお世話をされるご夫婦はそう多くはありませんよ。 鈴木さん: ありがとう。でもそんなによくはないのよ。 あなた: 確か娘さんもご一緒でしたよね。あまりお見かけしないなと思って…。 鈴木さん: 娘は…。 そう言いかけて、鈴木さんは途中でだまってしまいました。 あなた: 話したくないことでしたら、無理にお答えいただかなくても結構ですよ。 鈴木さん: そんなことはないの。でも、少し娘のことを考えると申し訳なくて…。 あなた: よかったら聞かせていただけませんか。 鈴木さん: 娘は会社でプロジェクトのリーダーを任されているのよ。毎日遅くまで仕事して、疲れ果てて帰ってくるの。この1年ほどは食事もほとんど一緒にとっていないわ。そんな生活だから、私が退院するとき、娘はそのまま緩和ケア病棟に入るように強くすすめてきたの。家に帰ってこられても、自分には私を世話できないって。それは無理のないことだとも思ったわ。でも、私はどうしても家に帰りたかった。味気ない病院の天井を見ているのはもう限界だとも思ったの。幸い主人が帰ってもいいよと言ってくれたので、こうして帰ることができたのだけど。娘は気分が悪いらしく、帰ってもほとんど会ってくれないの。夜遅く帰った後に夫が声をかけても「疲れたから寝る」と言って、ほとんど口も聞いていないのよ。娘にとって私は迷惑なのかもしれないわね。きっと主人にとっても迷惑なのよね。この前のようなことがまたあれば、緩和ケア病棟に入ったほうがいいかもしれないわね。 あなた: そうだったんですか。でも、鈴木さんは家で過ごしたいんですよね。 鈴木さん: できればだけど…。 娘さんに手紙を書いてみることに あなたはその日はそのままステーションに帰りました。ステーションに帰ると管理者の望月さんと先輩の西水さんに相談しました。また、主治医の先生にも報告し、まずは訪問看護のほうから娘さんにアプローチすることにしました。 あなたはまず娘さんに手紙を書いてみることにしました。書き出しは悩みましたが、鈴木さんが娘さんに引け目を感じていること、不安やさみしい気持ちがあるように見えること、つらい症状は精神的な要因から生じている可能性があることを記載しました。そして、最後にステーションに電話をもらえるようにお願いをしてみました。 手紙を渡した翌日の午後、娘さんから電話がありました。 娘さん: お手紙、ありがとうございました。母のこと気遣っていただき、感謝しています。正直なところ仕事も忙しく、母が自宅に戻ってきたことで私に何ができるのか、すごくモヤモヤしていたのです。私は緩和ケア病棟に行くように強くすすめたのですが、今の両親を見ていると、自宅に戻るのも悪くないかなって思うようになって…。でも、あれだけ自宅に戻ることを反対した手前、母の前に行きづらくて。ほとんど話すことも見つからないのです。上司は事情を知っていて、私にしばらく介護休暇を取るようにすすめてくれるのですが、この仕事を放り出すわけにも行かず、悩んでいました。 あなた: そうだったんですね。娘さんもつらい思いをされていたのですね。もしよかったら、忙しいとは思うのですが、一度、主治医から鈴木さんの病状について説明を受けていただくお時間をつくっていただけないでしょうか。私たちも同席し、娘さんをどのように応援できるのか相談させていただければと思うのです。 娘さん: ありがとうございます。分かりました、時間をつくってみます。 あなたは、主治医と管理者に娘さんと話した内容を伝え、彼女と相談する時間をつくってもらうようお願いしました。そしてご主人にはきちんとこのことを伝えておくようにしました。 >>後編はこちら呼吸困難への対応 後編【がん身体症状の緩和ケア】 執筆:鈴木 央鈴木内科医院 院長●プロフィール1987年 昭和大学医学部卒業1999年 鈴木内科医院 副院長2015年 鈴木内科医院 院長 鈴木内科医院前院長 鈴木荘一が日本に紹介したホスピス・ケアの概念を引き継ぎ在宅ケアを行っている。 編集:株式会社照林社 【参考】〇日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会編.『進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版)』金原出版,東京,2023.

受賞作品漫画「ちょっと早めの金婚式」
受賞作品漫画「ちょっと早めの金婚式」
特集
2023年10月18日
2023年10月18日

受賞作品漫画「ちょっと早めの金婚式<後編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、村田 実稔さん(ウィル訪問看護ステーション江東サテライト/東京都)の入賞エピソード「ちょっと早めの金婚式」をもとにした漫画の後編をお届けします。 ※記事内に記載している所属先は、2023年3月の受賞当時のものです。 「ちょっと早めの金婚式」前回までのあらすじ 訪問看護師 新人の村田さんは、所長の櫛野さんとともに尿管癌末期の利用者 山本さんの訪問を担当しています。余命宣告をされていますが、ご家族の意向で山本さんご本人には伝えていません。「妻に迷惑をかけたくない」と歩行リハビリをがんばる山本さんでしたが、病状は進行していき、あと少しの時間しか残されていませんでした。 〇訪問看護師 新人 村田さん〇所長 櫛野さん >>前編はこちら受賞作品漫画「ちょっと早めの金婚式<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 ちょっと早めの金婚式<後編> 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター兼グラフィックデザイナー。デザイン会社を経て独立。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『R25.jp』等、多数の雑誌・Web媒体にてイラスト・漫画制作を手掛ける。 エピソード投稿:村田 実稔(むらた みのる)ウィル訪問看護ステーション江東サテライト(東京都)山本さん(仮名)は、私が初めて担当させていただいた末期がんの利用者さんです。このエピソードは私にとってとても印象深かったため、投稿させていただきました。素敵なお話なので、投稿時点から受賞するのではないかな、とも期待していました(笑)。最終的には金婚式を行い、ご本人も奥様も喜んでくださって、後悔が残らず本当によかったと思っています。ありがとうございました。 [no_toc]

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