認定看護師に関する記事

失禁関連皮膚炎(IAD)のアセスメントと予防
失禁関連皮膚炎(IAD)のアセスメントと予防
特集 会員限定
2023年10月24日
2023年10月24日

スキンケアのポイントは?失禁関連皮膚炎(IAD)のアセスメントと予防

本記事は、医療関係者のスキルアップを目的として医療行為に関する詳細な記述や症例写真等を掲載しているため、NsPace会員様(医療関係者)限定で公開しています。また、損傷を伴う皮膚画像を含みますので、あらかじめご了承ください。 おむつで覆われている皮膚は、高温多湿な環境にあり、排泄物の付着により浸軟しやすく感染リスクも高くなります。特に脆弱な皮膚の高齢者や乳幼児には注意が必要です。療養者は、局所にスキントラブルを生じた場合、排泄物の付着による不快感や掻痒感、疼痛などの苦痛を伴います。同時に、頻回な局所の観察や治療が必要になると、療養者にはさらに精神的な苦痛を強いることになりQOLにも影響を及ぼすといえるでしょう。 療養者の自尊心や羞恥心に配慮した排泄ケア・看護を行うとともに、失禁関連皮膚炎(IAD:incontinence associated dermatitis 以下「IAD」)を理解した上で、予防的なスキンケアを実践し継続することが求められます。今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、失禁関連皮膚炎(IAD)の予防的スキンケアを中心に解説いただきます。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 IADのアセスメント IADは、おむつに覆われた皮膚(角質層)が湿気により浸軟して、バリア機能が破綻した状態になっているところに、排泄に含まれる消化酵素や細菌が、皮膚(真皮)組織の内部に入ることで生じる皮膚組織の障害です。 排泄物が付着する部位は、排泄物の性状や量、おむつの材質や当て方などにより、場合によっては大腿部にもみられます。個々の排泄状況やケア状況を確認することが必要となり、注意深く観察することが大切です。 アセスメントのポイント 【皮膚をみる】 部位(どこに)、時期(いつから)、程度(どのように) 発症の経緯 皮膚の状態(たるみ・浸軟・紅斑・びらん・潰瘍) 掻痒感の有無 痛みの有無・程度 局所ケアの方法 使用している外用薬 IAD-setを用いた評価 【全身状態をみる】 年齢、性別、基礎疾患 失禁の状態、排泄物の性状・量 ドライスキンの有無 浮腫の有無 糖尿病(血糖コントロール不良) 放射線治療の既往・継続中(骨盤内照射) 薬剤の使用(下剤、止痢剤、免疫抑制剤、抗がん剤、ステロイド剤、抗菌剤) 膀胱直腸瘻、直腸膣瘻 バイタルサイン 関節拘縮の有無、関節可動域 食事摂取量、水分摂取量 栄養摂取経路(方法)、経腸栄養投与速度・量 栄養状態 尿・便以外の刺激物の接触(帯下、下血) 【生活環境をみる】 失禁が生活に及ぼす影響 日常生活動作(ADL)・好みの体位・1日の多くを過ごす姿勢 頭側挙上の有無・時間、座位の有無・時間 おむつの使用(交換頻度、使用しているおむつの種類・枚数、おむつ交換時のスキンケ ア方法) 寝具の種類 介護者の介護力・介護方法 経済状況 【人・ライフスタイル・価値観をみる】 清潔習慣、入浴の頻度・入浴時の湯温度・入浴時間 スキンケアの方法(洗浄剤・保湿剤の種類、具体的なケア方法、頻度) ケアの拒否・困難さ 家庭にあるスキンケア用品 本人の思い・希望 家族の思い・希望 アセスメントには、おむつに覆われた皮膚の状態と療養環境を観察することが大切です。 尿失禁や便失禁の原因、行われている治療やケアのアセスメントも欠かせません。下痢のアセスメントには、栄養管理の情報も必要になります。特に下痢には、経腸栄養剤の種類や投与方法、投与時間の確認などが大切になりますが、下剤の使いすぎということも少なくありません。また、下剤の使用量やタイミングによって便秘と下痢を繰り返し、スキントラブルが改善しないということもあります。 介護する家族によっては、臀部を消毒用アルコールで清拭をしている方、おむつ交換ごとに石鹸を用いた洗浄を行なっている方などさまざまです。個々の生活習慣や価値観によって、さらにはそれぞれの家庭ごとに排泄に関するケアが異なります。排泄に影響を及ぼすさまざまな要因を、広い視点でみることが必要です。 IADのアセスメントには、「IAD重症度評価スケール:IAD-set」があります。IAD-setは、日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術教育委員会によって開発されたIADのアセスメントができるツールです。IAD-setは、排泄物が皮膚に付着する状況にある場合に使用します。評価は、【Ⅰ皮膚の状態】と【Ⅱ付着する排泄物のタイプ】の2つを行います。評点が大きいほど重症と判断し、点数が減少することで改善と判断することができます。 IAD重症度評価スケール:IAD-set IADの予防的スキンケア IADの標準的なスキンケアは「清拭・洗浄・保湿」です。加えて、排泄物が皮膚に付着することを予防するために、保護のスキンケアを行うことも大切です。 便失禁のスキンケア ■清拭排泄を確認したら、その都度清拭を行いましょう。市販のおしりふきやトイレットペーパーに皮膚清拭剤などを使用すると、拭き取りの際の滑りがよく、皮膚への機械的刺激の軽減が期待できます。また、清拭の際は、皮膚を強く擦らないことが大切です。使用するタオルは、皮膚への機械的刺激が少ない、柔らかくふんわりしたものを選びましょう。 ■洗浄のスキンケア洗浄剤を用いて1日1回、皮膚に付着した排泄物や汚れを洗い流します。排泄物が付着していると洗浄剤を用いた洗浄を行いたくなるものです。しかし、皮膚洗浄剤を用いた頻回な洗浄は、皮膚への化学的刺激が大きくなります。そのため、排便回数が多い場合でも洗浄剤の使用は1日1回としましょう。弱酸性洗浄剤を選択し皮膚への化学的刺激を最小限にとどめます。 ■保湿のスキンケア1日1回以上、保湿剤を塗布しましょう。洗浄により皮脂は洗い流されるため、入浴や洗浄後に、保湿剤を塗布するということを習慣化できると良いです。保湿剤は、排泄物が付着している部位や、排泄物が付着する可能性があるすべての部位に塗布しましょう。 ■保護のスキンケア排泄物が皮膚へ付着することを予防するために白色ワセリンやジメチコン(シリコーンオイル)などが配合されている撥水性皮膚保護剤(撥水性皮膚保護クリームや保護オイル)を塗布します。 撥水性皮膚保護剤は、製品の皮膚保護力により使用する頻度や撥水の程度が異なります。保湿成分含有の製品もあります。使用する製品の特徴を理解した上で、皮膚の状態やケア環境にも考慮し、使う人にあった製品を選びましょう。 尿失禁のスキンケア 便失禁のスキンケアと同様の清拭・洗浄・保湿を行い、おむつなどを用いて尿の収集を行います。 ■おむつ選びについて便失禁・尿失禁のある療養者のおむつ選びは、日常生活自立度、身体のサイズ、失禁のタイミングや回数・量などを考慮して選択します。排泄物を吸収したパッドやおむつは、皮膚pHに影響を与えるため、排泄後は速やかに交換を行いましょう。尿取りパッドを選択する際は、逆戻りがない、通気性の良い高性能、吸収体の面積が小さく尿の接触面積を縮小できるものがおすすめです。なお、男性には、男性用の尿取りパッドがあります。 ■療養生活への配慮水様便に対応する軟便専用のパッドがあります。軟便専用パッドは、尿取りパッドに比べ便の収集率が高く、水様便の流れ出しが軽減できます。便の収集率や吸収に優れているとはいえ、軟便専用のパッドを、長時間使用し続けることは避けましょう。便の付着を完全に防ぐ製品ではありませんので、水様便が排泄されたら、速やかにパッド交換を行うという意識を持つことが大切です。製品によって、吸収量やパッド内部の構造が異なりますので、便の性状や量、皮膚の状態に合った製品を選びましょう。 夜間、頻回な尿取りパッドの交換により、療養者や介護者の安眠が妨げられる場合や、尿取りパッドでは対応が困難な場合、男性にコンドーム型収尿器を紹介することもあります。コンドーム型収尿器は、装着に技術を要する場合もありますので、皮膚・排泄ケア認定看護師の技術支援が得られる方法を検討することも必要です。便の性状に経腸栄養剤が影響している可能性がある場合は、かかりつけ医や管理栄養士に相談をして、経腸栄養剤の種類や投与方法について検討しましょう。緩下剤を使用している場合は、かかりつけ医に相談をして便性状の調整を検討することも大切です。 在宅WOCナースがおすすめするIADのケア びらん・潰瘍部:スキンケアのポイント 洗浄のスキンケアの際、洗浄に痛みを伴う場合は、温めた生理食塩水を使用すると疼痛が軽減できます。びらんを生じている場合、局所にストーマ用品の粉状皮膚保護剤を散布した後、びらん部に粉が密着した上に皮膚被膜剤を塗布します。 粉状皮膚保護材を使用 失禁の頻度や機械的刺激によって粉状皮膚保護剤が剥がれてしまう場合は、皮膚・排泄ケア認定看護師などへ相談し、粉状皮膚保護剤と亜鉛華単軟膏を混ぜたものを塗布することを検討しましょう。亜鉛華単軟膏に粉状皮膚保護剤を合わせることで緩衝作用に優れ、皮膚の保護においても効果を発揮します。 亜鉛華軟膏を使用 なお、この方法は、カンジダ症の疑いがある場合は、症状を悪化させる可能性があるので注意が必要です。 ハイドロコロイドドレッシング材やストーマ用の板状皮膚保護剤を使用する場合は、適当な大きさにカットしモザイク状に局所へ貼付します。排泄物で汚染した部分や溶解・膨潤した部分など、一部のみを交換することができます。さらに、モザイク状に貼付した隙間には粉状皮膚保護剤を充填することにより、露出した皮膚を保護することができます。 ポリエステル繊維綿によるケア ポリエステル繊維綿で、肛門周囲から会陰部にかけての皮膚と、おむつの間の隙間を埋める製品もあります。水様便が臀部皮膚に拡散せずパッド内へ吸収されることにより、皮膚への付着を軽減できます。ポリエステル繊維綿はパッドと一緒に、排便ごとに交換します。 装着型肛門様装具や単品系ストーマ装具によるケア 水様便が持続する場合(非感染性の下痢)、装着型肛門様装具や単品系ストーマ装具などで便を回収することもできます。ただし、装具の装着には技術が必要で、療養者は装着中の違和感を伴うことも。装具の購入費用もかかります。療養者・家族と相談の上で使用を検討しましょう。また、装具装着の際は、皮膚・排泄ケア認定看護師の技術支援が得られる方法を検討することも必要です。 医師との連携 皮膚科医によりIADと診断された潰瘍の治療方法については、皮膚科医が指示する外用薬を使用しましょう。皮膚カンジダ症をはじめとした感染徴候が確認されたら、かかりつけ医もしくは皮膚科医へ相談し、感染の有無の確認をすることが大切です。感染が確定したら、医師の指示のもと治療を行います。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.〇一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会編. 『IADベストプラクティス IAD-setに基づくIADの予防と管理』照林社,2015.

在宅の褥瘡・スキンケア/スキン-テア編
在宅の褥瘡・スキンケア/スキン-テア編
特集 会員限定
2023年10月10日
2023年10月10日

高齢者に多いスキン-テア 予防ケアのポイント&第一発見時の対応を解説

本記事は、医療関係者のスキルアップを目的として医療行為に関する詳細な記述や症例写真等を掲載しているため、NsPace会員様(医療関係者)限定で公開しています。また、損傷を伴う皮膚画像を含みますので、あらかじめご了承ください。 スキン-テアは、主に高齢者に発生する皮膚損傷で、摩擦やずれによって皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷です。スキン-テアは、医療的ケアや療養生活の中で生じる摩擦やずれによって発生し、強い痛みを伴い、治りにくく再発しやすいという特徴もあります。毎日介護する家族にとって、スキン-テアの痛みに苦しむ家族の姿を見ることや、その介護は痛々しく悲しいものです。 在宅で要介護状態にある高齢者は、療養生活のケアを家族や他者に委ねることが多くなります。そのため、ケアに当たる時間が多い家族や介護ヘルパーは、皮膚の観察をする頻度が最も高く、第一発見者になる可能性も。今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、スキン-テアについて、発症を予防するケアのポイントや発生時の対応方法を解説いただきます。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 「スキン-テア」を起こしやすい皮膚や状況は?:アセスメント スキン-テアが発生する場面 摩擦とずれによって皮膚が損傷することで、スキン-テアが発生します。例えば、以下のようなケースがあります。 ベッド柵に上肢をぶつけて皮膚が裂けた 更衣時に衣類が擦れて皮膚が裂けた リハビリ時に身体を支持していたら皮膚が裂けた 上体を引き上げようとしたら皮膚が裂けた 車椅子のレバーに手をぶつけて皮膚が裂けた 医療用テープを剥がすときに皮膚が剥がれた 車椅子のブレーキレバーに打撲して損傷 車椅子のブレーキレバーに打撲して損傷 更衣時に衣類が擦れて損傷 上肢を強く掴んだ時に損傷 アセスメントのポイント スキン-テア保有者は、75歳以上の後期高齢者、日常生活自立度ランクC2に多く、両上肢に多くみられるという特徴があります。薄く(菲薄)脆い(脆弱)皮膚、特に以下の皮膚状態にある人は要注意です。 ■スキン-テアの既往がある現在スキン-テアを有している人や既往のある人は、スキン-テアの発症リスクが高いため、予防的なケアが重要になります。過去にスキン-テアの既往があるかどうか、現在スキン-テアを有しているか、本人や家族に確認しましょう。皮膚の観察は、スキン-テアが治癒した後に認める特徴的な瘢痕があるかを確認します。 特徴的な瘢痕とは、白い線状や白い星状の瘢痕です。このような症状を認めた場合、過去にスキン-テアを発症したことになります。 スキン-テアの既往:白い線状の瘢痕 スキン-テアの既往:白い星状の瘢痕 ■乾燥しているドライスキンは、皮膚の柔軟性が低下し硬く脆くなり、水分量が減少した状態です。皮膚のバリア機能が低下しています。 ■浮腫がある浮腫(※)は、ドライスキンが生じやすくなります。※詳しくは「在宅の褥瘡・スキンケア 脆弱な皮膚 編」参照 ■紫斑がある(老人性紫斑)加齢による血管の脆弱性(老化)が原因で、軽微な外力でも皮下に出血を起こし、紫斑を生じます。抗凝固剤服用中の療養者によくみられます。 紫斑 ■ティッシュペーパー様の皮膚皮膚がティッシュペーパーのように白くかさかさしていて、とても薄い状態です。高齢者で長期間ステロイド薬を内服している療養者に多くみられます。 ■高齢である皮膚は加齢により脆弱化し、わずかな摩擦やずれでもスキン-テアが生じやすくなります。療養者が「年齢75歳以上か」という視点は大切なアセスメントポイントとなります。 ■外力発生要因を確認する:患者行動・管理状況外力発生要因のリスクアセスメントは、療養者本人の行動によって摩擦やずれが生じる「患者行動」と、ケアによって摩擦やずれが生じる「管理状況」をみます。 患者行動には、痙攣・不随意運動、不穏行動、物にぶつかるなどがあります。管理状況には、体位変換や移動介助、入浴・清拭などの清潔ケア介助、更衣の介助、医療用テープの貼付、器具(抑制帯、医療用リストバンドなどの使用)、リハビリテーションの実施などがあります。介護の場面、居室の環境、ケアの介助など、毎日の生活の場面で生じる摩擦やずれによってスキン-テアは発生しますので、スキン-テア発生リスクの観点を持ち、療養者の療養状況を確認することが必要です。 ■ガイドラインに基づいた評価とケアを行うスキン-テアは予防が大切ですが、発生したスキン-テアは、早期に治癒できるように適切な評価とケアを行うことが重要です。スキン-テア発生部の創の観察は、STAR(Skin Tear Audit Research)分類システムを用いて行います。 一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会の『ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理』内に掲載されている、「STARスキンテア分類システムガイドライン」で推奨されるケアをおすすめします。 スキンケアのポイント スキン-テアの発生と再発の予防的ケアは、毎日の細やかな観察、栄養管理、外力保護ケア、スキンケア、医療・介護メンバーや療養者・家族の教育が重要です。 栄養管理のポイント スキン-テアとドライスキンは関連していると考えられています。栄養管理によってドライスキンが改善できればスキン-テアの予防につながります。 栄養状態は、食事摂取量の減少、摂食嚥下状態、脱水症状など、本人の身体状況や生活の中でも把握できるポイントがあります。特に高齢者は脱水になりやすいため、毎日の尿量(オムツ交換回数など)や皮膚や舌の乾燥、手指の爪甲を圧迫した際の再充血の遅延、せん妄状態などの観察が重要です。 皮膚の乾燥に効果的な栄養素としてコラーゲンペプチドがあります。コラーゲンペプチドは、経表皮水分蒸散量を減少させ、角層水分量の減少を抑制する効果が示されています。褥瘡治癒の促進にも有効であるといわれていることから、スキン-テアでも効果が期待されている栄養素の一つです。 外力保護のポイント スキン-テアの発生部位は、上肢が最も多く次に下肢となっており、四肢がベッド柵などの物にぶつかることで多く発症しています。スキン-テアを予防するには、皮膚を外力から保護する対策、療養生活環境を整えること、外力から皮膚を保護するケア、安全な医療用品を使用することが大切です。 ■ベッド周囲の環境療養者に、認知機能の低下、痙攣や不随意運動、不穏行動などがある場合、ベッド柵への接触やベッド柵の隙間から手足を出す行為などによって、スキン-テアを生じる可能性があります。ベッド柵をあらかじめカバーで覆い、直接皮膚がベッド柵に接触することを予防し、ベッドの床上にはティッシュケースなどの物を置かないようにしましょう。ベッド上下のボード、ベッド周囲の家具など、身体が接触する可能性のある角の部分にカバーや緩衝材を着けるなどの配慮も必要です。 ■車椅子への移動時の環境スキン-テアを発症する場面に、車椅子への移乗があります。車椅子に移る前に、四肢の露出がないことを確認しましょう。あらかじめ上肢にはアームカバーや手袋、下肢には靴下、レッグウォーマーを着用し皮膚を守ることが大切です。アームカバーやレッグウォーマー、日焼け防止長手袋などは手軽で便利に使用できます。車椅子のブレーキやアームサポート、フットレストなどは、肘や上肢、手背、下肢などが接触しやすい部分でもありますので、素材の柔らかいもので覆い皮膚への接触を軽減しましょう。 ■体位変換や移乗の介助スキン-テアは、体位変換や移乗動作をはじめとする介護の場面など、日常生活の支援で行われるケアに関連して発生します。特に介護する人が高齢者で、体力的な問題がある場合、力任せに引っ張る・引きずるなど、強い力を加える介助はスキン-テアの発生率を高めます。 介助方法のポイント体位変換や移乗動作などの介助は、原則的に2名で行うことが望ましいです。しかし在宅では、マンパワーの不足もあり常時2名で介助を行うことが難しい状況もあります。そのような時は、体位変換補助具の使用をおすすめします。スライディングシート、スライディングボード、スライディンググローブ、介護用リフトなどの使用は、摩擦やずれの低減に繋がり、療養者も介護する人も安全で安楽に行うことができます。在宅では、スライディングシートの代わりに、レジャーシート、ビニールシートなど表面が滑りやすい素材のシートを活用する場合もあります。介助動作のポイント体位変換時や更衣時、上下肢の挙上や支える際に上肢や下肢を掴むと、一ヵ所に力が集中し、圧迫と摩擦、ずれによってスキン-テアが発生します。四肢の挙上には、必ず下から両手で優しく支えるように保持して、掴み上げることや強く握ることは避けましょう。体位変換は、背部や肩、腰部など大きな面積を支えるように行います。体位変換やポジショニングに使用するクッション、着用している寝衣、寝具、おむつを引っ張る行為は、皮膚に摩擦やずれを生じますので控えましょう。 ■皮膚保護のポイントスキン-テアの予防には、皮膚の露出を避けることが大切です。寝衣や衣類は、皮膚が蒸れて浸軟をしないように、吸湿性が高く肌触りが柔らかいもの、すべりの良い素材が好ましいです。また、伸縮性があり、ゆとりのあるものを選択しましょう。きつく伸縮性の少ない衣類は、更衣時にスキン-テアを生じる可能性が高くなります。関節拘縮のある療養者には、やや大きめで伸縮性のある、皮膚が擦れない寝衣を選択すると良いです。 関節拘縮が強い療養者の場合、あらかじめ上肢をアームカバーなどで保護した上で、更衣を行います。スキン-テアのリスクが高い人、既往のある人は、日常的に長袖、長ズボンの寝衣を着用する、靴下は膝下まで覆えるものにするなどの留意が必要です。 予防的なスキンケアのポイント 入浴の際、皮膚は覆うものがなく、濡れて摩擦抵抗は高く、湯温や発汗などで浸軟しやすい状態にもなります。入浴介助は、十分注意をしながら行いましょう。 ■保湿のスキンケア使用する保湿剤は、低刺激性でローションタイプの伸びの良いものがおすすめです。硬く伸びにくい保湿剤の使用は、皮膚に摩擦やずれを生じ、スキン-テアを生じさせる可能性があります。1日2回以上行えると予防効果が高まります。 保湿剤を塗布する際、強く擦りながら行うと、皮膚に摩擦とずれが生じ新たな皮膚損傷を起こす可能性があります。保湿剤の塗布は、ディスポ手袋をした手に保湿剤を馴染ませ、毛の流れにそって押さえるように行います。乾燥が強い場合は、保湿ケアの後、油脂成分のクリームを重ねて塗布することで保湿のケア効果を高めることもできます。皮膚の乾燥状態に応じて、保湿のケアの回数を増やすなどの検討を行います。1日2回以上の保湿のスキンケアが困難な場合には、入浴や清拭時の温湯に保湿成分配合入浴剤を使用するなど、確実に継続できる方法を考えます。 発症後のスキンケア:第一発見者の初期対応 スキン-テアを最初に発見した人は、速やかな初期対応が求められますが、在宅では限られた衛生材料の中でケアを行わなければなりません。その家庭にある衛生材料でできる安全なケア方法を検討しましょう。 第一発見者が家族や介護ヘルパー 出血がある場合は、ガーゼ、ハンカチ、紙おむつやパッドなど、清潔な当てもので保護をして、早急に訪問看護ステーションやかかりつけ医に連絡をします。 第一発見者が訪問看護師など医療従事者 出血がある場合は、ガーゼなどを当て止血します。洗浄後、できる限り皮弁を元の位置に戻し、ガーゼに白色ワセリンなどの油脂性基剤の軟膏を塗布して創面に当てます。ガーゼのみを当てると皮弁がガーゼに固着し二次的損傷を招きます。当てものが創面に固着しないように保護をして、包帯、筒状包帯、ガーゼなど自宅にあるものを使用して固定します。訪問者が、非固着性創傷パッドやシリコーン系ドレッシング材を持っている場合は、優先的に使用します。 両腋窩を支持し上体を引き上げた時に損傷 洗浄後、皮弁を戻しシリコーンゲル粘着性親水性ポリウレタンフォームドレッシングでケア 受傷27日後に治癒を確認 皮弁を元の位置に戻す場合の留意点 スキン-テアは、皮膚が真皮レベルで剥離したものです。そのままでは皮膚が再生しないと治癒に至りません。皮膚は、皮弁を戻すことにより速やかに治癒することができます。しかし、皮弁を戻す際には疼痛を伴います。事前にきちんと説明した上で実施するようにしましょう。 皮弁は、湿らせた綿棒、手袋をした指、または無鉤鑷子を使用してゆっくり戻します。皮弁を元の位置に戻すことが難しい場合、生理食塩水で湿らせたガーゼを5〜10分貼付して再度試みます。皮弁を破損しないように、慌てず丁寧に行いましょう。 日頃から備えておきたい衛生材料 スキン-テアのハイリスク状態にある療養者には、ガーゼ、白色ワセリン、非固着性ガーゼ類、包帯類などを備えておくと応急手当てに役立ちます。また、第一発見者となる可能性の高い介護者や介護ヘルパーには、初期対応のケアの方法や医療者への緊急連絡先などを伝えておくことも大切です。スキン-テアの予防とケアには、医療職、看護職だけでなく、高齢者を支援する地域全体で高齢者の皮膚を護る意識と知識が大切です。 医師や多職種との連携 医療的なケアが必要な場合は、かかりつけ医や皮膚科専門医、皮膚・排泄ケア認定看護師に相談しましょう。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.〇一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会編. 『ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理』照林社,2015.

認定看護師活動記 南関東
認定看護師活動記 南関東
コラム
2023年10月10日
2023年10月10日

「看護を語る」ことを大切に【訪問看護認定看護師 活動記/南関東ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 南関東ブロック、伊藤 みほ子さんの活動記です。南関東ブロックの活動内容や訪問看護総合支援センターの開設、「在宅看取り語りの場」の取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:伊藤 みほ子介護支援専門員/訪問看護認定看護師/認定看護管理者。看護学校卒業後、赤十字病院にて病棟、外来、訪問看護ステーションで勤務。現在は長野県看護協会 常務理事 地域支援部 訪問看護総合支援センター担当。 「看取りを考える会」を年4回開催 私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会 南関東ブロックは、神奈川、山梨、長野の3県の訪問看護認定看護師協議会 会員による活動を行っています。 協議会の活動が始まった10年前は、ブロック長を中心とした年1回の交流会(研修会)を開催していました。現在は活動の幅が広がり、ブロック長、各県代表とブロック理事によるブロック会議で交流会や研修会などを企画し、開催しています。南関東ブロックの会員数は30名弱と少人数ですが、オンラインの会議や交流会により、情報共有が有意義にできています。 例えば、2022年度に全ブロックで開催した「在宅看取りを実践できる訪問看護師の育成事業」は、ブロック会員の協力により有意義な研修となりました。この事業に参加した南関東ブロックの会員から、「ブロックの活動として在宅看取りについて検討する場を継続していきたい」という意見があり、2023年度は「看取りを考える会」を年4回開催する計画となりました。 それぞれ多忙なため、ブロック活動の参加者が少人数になることもありますが、しっかり継続できています。訪問看護認定看護師同士が「看護を語る場」として、実践を語り、互いに学べる場は貴重であり、各々がその意義を感じているためと考えています。 訪問看護提供体制の強化とさらなる推進 私が長野県看護協会の常任理事として行っている活動についてもご紹介します。特に注力しているのは、長野県全域の訪問看護提供体制の強化と推進で、2023年4月には「訪問看護総合支援センター(以下「支援センター」)」を看護協会の中に開設しました。2021年に日本看護協会の支援センター試行事業に参加して以降、今回の開設に向けて準備をしてきました。支援センターには、私を含めた訪問看護認定看護師2名を配置し、訪問看護の課題に取り組んでいます。 支援センターの役割は、「経営支援」、「人材確保」、「訪問看護の質向上」の3つです。具体的には、以下のようなことを行っています。 【1】訪問看護支援事業(長野県受託事業) 訪問看護事業所運営基盤整備:コンサルテーション訪問看護制度等の電話相談事業所訪問による看護技術等のシミュレーションによる演習や講義等訪問看護事業所の新規開設支援潜在看護師、プラチナナース等の就業および転職支援新卒訪問看護師採用に向けた取り組み訪問看護に関する調査・実態把握教育・研修の企画、実施 【2】地域住民への訪問看護周知と活用推進としての在宅看取りに関する取り組み 【3】長野県訪問看護ステーション連絡協議会との連携(事務局) 支援センター開設以降、新規訪問看護事業所開設の相談や制度についてなど、問い合わせが増えています。認定教育課程で学んだ知識を活かして対応できることにやりがいを感じています。 また、「在宅看取り」については、日本訪問看護財団の助成を受け、県内の訪問看護認定看護師たちと研究に取り組んでいます。日本訪問看護認定看護師協議会のネットワークがこうした活動の連携に活かされており、研修の講師として活躍いただける場も提供できています。 訪問看護師による「在宅看取り語りの場」 前述した支援センターの事業のうち、「【2】在宅看取りの取り組み」として、訪問看護師による「在宅看取り語りの場」という活動も行っています。 訪問看護師に在宅看取りの様子を語ってもらい、地域の一般参加者の方々にも今の思い(介護していること、今までに経験した家族の看取りのことなど)を語っていただくことで、自分の思いに気づき、表出することができます。また、地域の方々に在宅医療や看護について知っていただくきっかけにもなります。 私は以前から、訪問看護の終末期ケアの実践から学べることは大変多いと考えていました。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を進めていく上でも、終末期や在宅看取りに関する具体的なイメージを持っていただくことは大切です。 訪問看護師の「技」といっていいスキルのうち一つにコミュニケーション能力があり、認定看護師に限らず、多くの訪問看護師が終末期ケア、在宅看取りを実践しながらコミュニケーション能力を磨いていると思います。そうした強みや経験を活かして、在宅で最期まで暮らせることの幸せを地域の方々に伝える取り組みができれば、と考えています。 「在宅看取り語りの場」の様子 * * * 私は、今までも「看護を語る」ことを実践し、意義を感じてきました。これからも、「看護を語る」ことから学ぶ機会をつくっていきたいと考えています。 ※本記事は、2023年9月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

脆弱な皮膚編
脆弱な皮膚編
特集 会員限定
2023年9月26日
2023年9月26日

脆弱な皮膚(ドライスキン・浸軟・浮腫)のスキンケア 予防&日常の留意点

本記事は、医療関係者のスキルアップを目的として症例写真等を掲載しているため、NsPace会員様(医療関係者)限定で公開しています。 スキントラブルを予防するには、脆弱な皮膚の特徴を理解することと、毎日の皮膚の観察、予防的スキンケアの継続が重要です。今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、高齢者に見られる脆弱な皮膚の症候「ドライスキン」「浸軟」「浮腫」にまつわるスキンケアの基本を解説いただきます。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 脆弱な皮膚:ドライスキン、浸軟、浮腫 皮膚には加齢とともに変化していく老化現象があります。それに加え、低栄養や貧血、疾患による皮膚症状、治療の影響、免疫・代謝機能や自然治癒力の低下により、皮膚の生理機能はさらに低下するのです。高齢者の皮膚はスキントラブルを起こしやすく、一度スキントラブルを生じると悪化しやすく治りにくい特徴があります。疾患を持ちながら在宅で療養する高齢者、特に要介護状態にある方の皮膚はとても脆弱な(脆くて弱い)状態にあります。 高齢者の皮膚 ドライスキン 高齢者の皮膚は、角層の柔軟性が低下して硬く脆くなり、角層の水分量が減少し、健康な皮膚が持つバリア機能が障害された状態。さらに角質細胞間脂質、皮脂、発汗の減少により角質の水分量が減少し、表面が乾燥します。 また、表皮細胞の新陳代謝(ターンオーバー)が低下するため角層が厚くなります。そのため、真皮の水分が角質表面に十分達することができず乾燥するのです。角層の水分含有量は、正常では約20〜30%とされていますが、ドライスキンの状態では10%以下にまで減少します。 ドライスキン ■ドライスキンの症状角層の水分が減少すると、皮膚はカサカサして、細かい鱗屑が付着した乾皮症状態になります。体動による皮膚の伸展により、皮膚表面には亀裂を形成することも。ドライスキンは、特に冬の季節、腰背部や下腿に多くみられ加齢とともに増加します。 皮膚の乾燥が長期間続くと、痒みの神経が表皮内に進入してくるため、わずかな刺激でも痒みに敏感になります。掻破により、皮膚や末梢神経が損傷し、さらに掻破行為を高めるという悪循環に陥るのです。 浸軟 健康な皮膚は、バリア機能が発揮されるため、体内に侵入しようとする細菌や化学物質などは、簡単に入ることはできません。しかし皮膚は、長時間の入浴などによって一定の水分保持能力を超えると、水分が吸収されることにより膨潤し、見た目には白くなります。 浸軟 ■浸軟の症状浸軟は、皮膚が水に浸漬することで角層の水分が増加し、一過性に体積が増え「ふやける」ことで生じる変化です。失禁状態で、常に排泄物が皮膚に付着している、おむつをしていて内部が高温多湿な環境にある、発汗量の多い、といった人は、皮膚が湿潤しやすい状況にあります。皮膚は湿潤の状態が持続すると、皮膚のバリア機能が低下し浸軟を生じます。浸軟した皮膚の摩擦力は5倍になるといわれ、容易にスキントラブルを発症します。さらに皮膚の浸軟は、失禁関連皮膚炎(IAD)や褥瘡発生の要因となるのです。 浮腫 成人の体重の約60%は液体成分です。そのうち約40%は細胞内にあり、約20%は細胞外にあります。細胞外の液体成分を細胞外液と言い、約5%は血管内に、約15%は組織間液として細胞間に貯留しています。この組織間液がさまざまな要因によって増加すると、浮腫を生じます。浮腫のある皮膚は、容易に損傷を受けやすく多くのスキントラブルをはじめ褥瘡の原因にもなるのです。 ■浮腫の症状浮腫のある皮膚や粘膜は、循環障害により栄養や酸素供給、皮膚温度も低下します。また、皮膚は菲薄化して、弾力性の乏しい状態に。さらに、皮脂の分泌低下や水分保持機能が低下をするためドライスキンを生じます。そのため、外部からの刺激に弱くなり損傷を起こしやすいばかりでなく、損傷した皮膚は、組織液が多く治癒が遅延し、さらに免疫力の低下から感染しやすい状態にあります。 浮腫 脆弱な皮膚:予防的スキンケア 脆弱な皮膚は、ドライスキン、浸軟、浮腫を引き金に、失禁関連皮膚炎(IAD)やスキン-テア、褥瘡などを発症するリスクが高くなります。 スキントラブルや創傷へと移行しないように、毎日の予防的スキンケアを継続することが大切です。 洗浄のスキンケア 洗浄の方法は、療養者個々の状態に合わせて入浴・シャワー浴・部分浴・清拭などを行い清潔を保持します。洗浄の際は、同時に全身の皮膚を観察し異常の早期発見に努めましょう。 皮膚の洗浄は、38~40℃の熱すぎない温湯を用い、皮膚のバリア機能の低下や乾燥を防ぎます。 洗浄剤は、刺激性の強い石けんの使用を避け、低刺激な弱酸性洗浄剤を選びましょう。さらに脆弱な皮膚には、セラミド含有皮膚保護成分配合の洗浄剤を選択します。 失禁のある療養者の場合、洗浄剤を用いた頻回な陰部洗浄は、皮脂を過剰に取り除くことになる上、皮膚を擦るという機会的な刺激が加わることで皮膚の表面を損傷し、バリア機能がさらに低下してしまいます。バリア機能が低下した皮膚に排泄物の刺激が加わると、スキントラブルを起こす可能性がさらに高くなります。洗浄剤を使用した洗浄は、1日1回に留めましょう。毎日の洗浄のスキンケアに、ミコナゾール硝酸塩配合石けんを用いると真菌感染症の予防に期待ができます。 保湿のスキンケア 脆弱な皮膚の療養者は、軽微な摩擦やずれで表皮剥離を生じる場合があります。保湿剤を塗布する際は、皮膚の皮溝に沿って、強く擦りすぎないように、皮膚を優しく押さえるように塗り込みましょう。保湿剤は、ベタつきが少なく伸びのよいクリームやローションを使用すると皮膚への刺激を軽減できます。 浮腫のある皮膚の場合、ローションタイプのものが皮膚なじみや伸びが良いため、使用しやすいように思えますが、水分含有量が多いことから水分の蒸発に伴う皮膚の乾燥を招く場合もあります。低刺激のクリームタイプの保湿剤や、乳液タイプのローションがおすすめです。保湿成分入りの入浴剤を併用すると、より保湿効果が期待できます。保湿のスキンケアを行うことで、皮膚は滑らかになり摩擦などの外部からの刺激を受けにくくなるでしょう。 保湿剤は、一度にたくさん塗布せず、少量を両手に薄くのばし、擦らず優しく塗布します。乾燥が強い場合は、重ね塗りをしましょう。 保護のスキンケア 失禁などでおむつを使用している場合、おむつ交換時や陰部洗浄後に、撥水性保護クリームや保護オイルを使用することで、排泄物の水分や刺激から皮膚を守ることができます。洗浄のスキンケアを行った後、水分を優しく押さえ拭きしてから、擦らずに優しく撥水性保護クリームを塗布します。排泄物による汚染が予測される部位には、あらかじめ撥水性保護クリームやオイルなどを用いて、排泄物の付着から皮膚を保護します。 皮膚が脆弱で摩擦による皮膚の損傷の恐れがある場合、スプレータイプの皮膚被膜剤などを使用します。保護のスキンケアのタイミングは、陰部洗浄後やおむつ交換で排泄物を拭き取った時に塗布をすると効果的です。 脆弱な皮膚:日常生活の留意点 スキンケア 洗浄時、皮膚への化学的・物理的刺激を避けるため、入浴時に使用する石けんは、香料の強いものやアルカリ性のものを避けましょう。ナイロンタオルやブラシの使用は、角層を損傷し角質水分や皮脂を喪失しますので使用はなるべく控えましょう。 清拭を行う場合も皮膚の摩擦を最小限に行いましょう。全胸部、背部、腰部、上肢、下肢など、広範囲を温タオルで覆い、皮膚を柔らかくしてから清拭を行うことで、皮膚を強く擦らなくても汚れが落ちます。温タオルは、本人が気持ち良いと感じる温度で、熱傷に留意しながら行いましょう。皮膚の乾燥にドライヤーを使用することは、熱傷やドライスキンの原因になりますので避けましょう。 医療用テープの使用 浮腫のある皮膚への医療用テープの使用は、テープを剥離する時に、表皮剥離を生じる可能性が高くなります。また、粘着剤による化学的刺激もスキントラブルの要因になります。医療用テープの使用はできる限り避け、包帯や筒状包帯、アームカバーなどを用いた固定をおすすめします。 脆弱な皮膚に、医療用テープでの固定が必要な場合は、あらかじめ皮膚被膜材を使用することで、皮膚を刺激から守ることができます。低刺激なテープを選択し、貼付面積を少なく使用する、毎日テープの位置を変えることで、皮膚への負担を軽減します。テープの貼り替え時、剥離には刺激を伴いますので、剥離剤を使用してゆっくり丁寧に行いましょう。皮膚被膜材や剥離剤を使用する際は、使用する部位の皮膚にトラブルがないことを確認した上で用いましょう。また、使用中にスキントラブルを生じた場合は、速やかに使用を中止します。その後、基本的なスキンケアを行い、症状が悪化する場合は、皮膚科医へ相談しましょう 食事 食事は、栄養バランスや消化吸収の良い食生活を心がけ、アルコール・香辛料・味の濃い食品・熱い食品などの刺激物は控えます。こまめな水分摂取にも留意しましょう。 環境の調整 冬の季節は、外気の乾燥や暖房による湿度の低下により、ドライスキンが悪化する可能性があります。室温は、冬の季節20〜22度、夏の季節25〜27度。湿度は、ドライスキンの予防においては50%前後がおおよその目安といえます。暖房器具を使用する場合、設置位置は、身体に直接温風が当たらない場所に配置しましょう。肌着や寝衣の重ね着、寝具の掛けすぎなどにも留意し、室温、湿度にあった寝床環境を調整しましょう。 衣類 着用する肌着は、化学繊維や身体に密着する下着が物理的刺激になる場合もあります。木綿や絹製の物を着用すると皮膚への刺激が少なくなります。汗を吸収する柔らかいものがおすすめです。また、下着の縫い目やタグ類も刺激になりえます。下着を裏返して着用することや、タグ類はあらかじめカットしておくなどの心配りも必要です。 着用する肌着や寝衣のしわやゴムも、皮膚の圧迫や摩擦などの要因になります。体位変換やポジショニングの際は、しわを除去し、衣類の素材は伸縮性のある素材を選択するなどの配慮も必要です。また靴下のゴムは、皮膚を圧迫し損傷を起こす場合があります。ゴムの弱い製品や締め付けの少ない靴下を使用しましょう。 マイクロクライメット(温度と湿度)の管理 ベッド上に防水シーツなどを使用している場合、吸水性のない製品は蒸れや発汗の原因になります。さらに、背部にバスタオルを敷いていると、温度が上昇して皮膚の湿潤の原因になりますので、吸湿性のあるシーツを使用することをおすすめします。 体圧分散寝具を使用している場合、身体はマットレスに沈み込むと熱がこもり、汗をかきやすくなります。特に、自力で寝返りができない、可動性や活動性が低下している方には、マイクロクライメット管理のできる体圧分散マットレスもあります。 皮膚の損傷を予防する 脆弱な皮膚は外力に弱く、容易に皮膚損傷を起こします。外的な刺激から皮膚を守る、という意識を持つことが重要です。療養者本人が、自ら皮膚を損傷しないように、日頃から爪の手入れを行います。ケアを行う人も爪は短く切り、ケア中に皮膚を損傷しないように気を付けましょう。 脆弱な皮膚は、軽微な外力や摩擦、ずれによりスキン-テアを起こしやすい状態にあります。ベッド柵にカバーを掛ける、ベッド周囲にティッシュケースを置かないなど、ベッド周りの環境整備が大切です。皮膚損傷を予防するため、皮膚の露出を最小限にする工夫も必要です。 かかりつけ医・皮膚科専門医との連携 スキントラブルを生じた場合、日常的なスキンケアで改善しない皮膚症状や皮膚病変に関しては、速やかにかかりつけ医や皮膚科専門医に相談できる体制を整えましょう。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。編集: NsPace編集部 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.

認定看護師活動記 北海道
認定看護師活動記 北海道
コラム
2023年9月19日
2023年9月19日

病院や看護学校での啓蒙活動【訪問看護認定看護師 活動記/北海道ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師・在宅ケア認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 北海道ブロックに所属する、田川 章江さんの活動記です。病院や看護学校での講演活動もされている田川さんに、北海道ブロックの活動内容や、退院指導・生活指導にまつわる看看連携、看護学生に訪問看護の魅力を伝える活動などをご紹介いただきます。 執筆:田川 章江訪問看護認定看護師/日本訪問看護認定看護師協議会 理事(2021年~地域貢献活動担当理事)。看護学校卒業後、総合病院で勤務。現在は、社会医療法人 孝仁会 訪問看護ステーションはまなす(北海道釧路市)でスタッフとして勤務。「現場の職人」でいたいという想いが強く、スタッフ歴を更新中 広ーい北海道でアットホームに活動中です まずは、私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会の「北海道ブロック」についてご紹介しましょう。北海道ブロックは、札幌、函館、帯広、釧路、紋別、稚内にメンバーがいます。面積は広いのですが人数は少なめで、8名で活動中です(2023年8月現在)。私は頼りない北海道ブロック理事なのですが、皆様のお力を借りながら、コンサルテーション担当として研修会の企画を行っています。 新型コロナウイルスの感染拡大前は、主に私たち協議会のメンバーが北海道の各地で地域の看護師向けに研修会を開催していました。特にテーマとして多かったのは、訪問時の緊急事態が起こった際の対応についてです。その後、コロナ禍でオンライン化が進んだこともあり、最近はZoomを利用してメンバー間でハラスメントの事例検討会を行ったり、外部の講師の方をお呼びして研修会を開催したりと、活動の幅を広げています。和気あいあいとした雰囲気で、話し出すと止まらず、あっという間に時間が過ぎることも多々あります。 広大な北海道では移動にも時間がかかり、なかなか対面で集まる調整難易度が高いのですが、オンライン化が進んだことによって、参加しやすくなりました。ただ、各地域で集まって、勉強会後においしいものを食べることもメンバーの楽しみの一つ。完全にオンライン化するのではなく、対面での研修会の企画も継続していきたいと考えています。 病院での講義~訪問看護からみた退院指導 私の個別の活動についても、一部ご紹介したいと思います。先日は、釧路市内の病院で開催された糖尿病に関する検討会で、看護師向けの講義をさせていただきました。 私が所属している訪問看護ステーションの利用者さんで、その病院に通院している方の話を絡めながら、 実際の生活の場で、どのように服薬やインスリン注射をしているか薬物療法を継続することの難しさ在宅での食事について などをお話しさせていただきました。 病棟看護師が患者さんに「服薬や生活指導について理解してもらった」と思っていても、退院後の在宅の場では継続が難しいことは多々あります。経済的な問題や介護力の問題で、わかっていてもできないこともあります。在宅での現状を踏まえ、病院での退院指導や生活指導を検討していただきたいことを伝えました。 訪問看護師の立場から、病院からは見えない「生活の場の利用者さん」の姿を伝えることは、非常に有意義だと思っています。また、情報を伝えるだけにとどまらず、地域の病棟看護師と訪問看護師との「顔の見える関係」づくりにもつながっていきます。 未来の看護師さんに訪問看護の魅力を伝える 看護学校で、戴帽式を済ませた学生さんへ講義する機会をいただいたこともあります。看護学生さんたちにとっては、訪問看護は仕事内容がイメージしづらいので、積極的に訪問看護の魅力を伝えていくことが大切だと思っています。 当日は、訪問看護の事例を含めた訪問看護師についての説明や、私が訪問看護師として働く中で大切にしていることなどをお話ししました。 当時の講演内容をもとに著者作成 学生さんたちからは、「自宅での看取りをイメージできた」「着実にやっていくことが大切と分かった」といった感想をいただきました。この看護学校の生徒さんたちは、私が所属する「訪問看護ステーションはまなす」に実習に来ていただいています。「いつか訪問看護師として働いてみたい」と思っていただけるように、実習の場も含めて、今後も訪問看護の魅力を伝えていきたいと思います。 * * * 在宅でも病棟でも、看護師として働く中で色々なストレスがかかり、疲弊しがちな方は多いと思います。今後も私が認定看護師としてお伝えできることをしっかり伝え、一緒によりよい案や対応を考えていきたいと思います。 ※本記事は、2023年8月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

スキンケア編
スキンケア編
特集
2023年9月12日
2023年9月12日

スキンケアで褥瘡予防 洗浄・保湿・保護のポイント

スキンケアは、皮膚の生理機能を正常に保ち、その機能を十分発揮するための看護です。健やかな皮膚を維持するためには「皮膚を清潔に保つこと」「皮膚に潤いを与えること」「皮膚を守ること」を正しく理解し、ケアを継続することが大切。正しいスキンケアの継続は、失禁関連皮膚炎(IAD)、褥瘡などのスキントラブルの予防につながります。 今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、在宅看護に役立つスキンケアのポイントを解説いただきます。日々実践しているスキンケアをもう一度振り返り、正しいスキンケアを継続していくための「洗浄のスキンケア」「保湿のスキンケア」「保護のスキンケア」の基本をご紹介します。「保湿」と「保護」は混同しやすいので、これらの違いについてもしっかり確認しましょう。 洗浄 ~やさしい気持ちで洗いましょう~ 皮膚に付着する「よごれ」 皮膚に付着する主な汚れは、垢、汗、排泄物などです。皮膚に塗布した外用剤や保湿剤などが時間の経過とともに変化したものや、それらに付着した埃、ちり、微生物なども汚れの原因になります。垢には、古くなった皮脂や雑菌などが付着しています。皮脂や汗は、時間の経過とともにベタつきや臭いの原因に。さらに、長時間皮膚に付着した排泄物は、刺激性物質として皮膚に影響を及ぼし、失禁関連皮膚炎(IAD)などの要因になります。皮膚に付着した汚れは、適宜洗浄により除去することが皮膚を健やかに保つことにつながるでしょう。また、洗浄による爽快感は、気分転換やストレスの緩和にもつながります。 洗浄のスキンケア 汚れの成分は、皮脂と混合した油性の汚れが多いため、洗い流そうとしても水が弾き返されてしまい、水だけでは汚れを落としきれない場合もあります。そのため、洗浄剤を使用します。洗浄のスキンケアを行う際は、皮膚局所や全身状態、汚れが付着する原因や特徴、生活環境をアセスメントした上で、汚れの程度や部位、皮膚の状態に見合った洗浄剤を選択することが大切です。 洗浄剤は「皮膚の状態と汚れの程度」によって使い分ける 健康な皮膚表面のpHは4~6の弱酸性です。健康な皮膚は、洗浄時石けん(pH9〜11)の使用によって皮膚pHが一時的にアルカリ性に傾きますが、2〜3時間で回復します。これを皮膚の緩衝作用といいます。ただし、高齢者の皮膚は、皮脂量の減少などによる生理的特徴からアルカリ性に傾いているため、洗浄後の皮膚が弱酸性に戻りにくくなります。またアトピー性皮膚炎、ドライスキン、化学療法や放射線療法によって生じる皮膚症状など、脆弱な皮膚をもつ療養者においても同じことがいえるでしょう。 私は日頃、高齢者や脆弱な皮膚の療養者には、弱酸性洗浄剤の使用をおすすめしています。皮膚バリア機能の保持を考慮すると、弱酸性洗浄剤の使用は、皮膚への刺激が少なく皮膚に優しいという理由からです。一方、汚れの落ち方という点では、アルカリ性洗浄剤が洗浄力効果を発揮します。 洗浄剤には、含まれる添加物や界面活性剤などによってスキントラブルが起こる場合もあります。全身の皮膚をよく観察し、汚れの程度や皮膚の状態によって、洗浄剤を適宜使い分けることも必要です。 洗浄のスキンケアの実践 洗浄の際は、全身の皮膚を観察して異常の早期発見に努めましょう。皮膚同士が密着している部位などは、汚れが貯留しやすくなりますので留意して洗浄します。 (1)温湯の調整皮膚の洗浄に使用する微温湯は、38~40℃の熱すぎない温湯を用い、皮膚のバリア機能の低下や乾燥を防ぎます。 (2)洗浄時のポイント■泡で洗浄するきめが細かく密度のあるふわふわした弾力のある泡で洗浄すると、泡がクッションの役割を発揮して皮膚への刺激が低下します。泡の量が少ない場合、皮膚への刺激が強くなります。特に、脆弱な皮膚は、軽微な摩擦や刺激でも皮膚の損傷やスキントラブルを生じます。皮膚を強く擦らず、たっぷりの泡を転がすように優しく洗浄しましょう。 汚れが固着している場合は、あらかじめ温かいタオルなどを当てておき、汚れを軟化させてから洗浄剤を用いて洗浄すると除去しやすくなるでしょう。 入浴時、ナイロンタオルやブラシなどを用いた洗浄は、角層を損傷し角質水分や皮脂を喪失しますので、手や柔らかいタオルの使用をおすすめします。 ■洗浄剤を皮膚に残さないように洗い流す 洗浄剤成分が皮膚に残るとスキントラブルの原因になりますので、十分な微温湯で洗い流します。微温湯で洗い流すことが難しい場合は、洗い流しが不要で拭き取るタイプの洗浄剤(泡状やクリーム状皮膚洗浄剤、液状洗浄剤)などもあります。 ■皮膚の水分を拭き取る洗浄後は、清潔なタオルで優しく押さえ水分を取り除きます。この際も、皮膚へ機械的な刺激を与えないように、強く擦ることを避け丁寧に押さえ拭きをします。皮膚の乾燥にドライヤーを使用することは、熱傷やドライスキンの原因になりますので避けましょう。 皮膚の状態を評価する 特に汚れや汗が留まりやすい部分は、耳介、耳介後部、頚部、腋窩部、乳房下部、臍部、陰部、足趾間などの脂漏部・間擦部・発汗部です。洗浄や水分の拭き取りの不十分さがあると、皮膚の湿潤、さらには浸軟を生じる可能性が高くなりますので、汚れを溜めない洗浄と細やかな皮膚の観察が大切です。 保湿 ~心をこめて塗布しましょう~ スキンケアにおいて保湿とは、角層が水分を保持する働きを助け、低湿度な環境においても角層の水分量の低下を防ぐこと、といえます。 先に述べた洗浄剤を用いた洗浄のスキンケアは、汚れのみに限らず、皮膚の保湿に必要な成分も洗い流してしまいます。保湿のスキンケアを行うことにより、角層の水分保持、乾燥の予防、さらには皮膚の柔軟性や弾力性を維持することができます。 保湿のスキンケアは、冬の季節や、加齢や生活環境の影響、疾患や治療などによる皮膚の乾燥を感じる場合のみに行うのではなく、すべての年齢層の人々が、年間を通して継続することが大切です。それにより、皮膚は健やかな状態を維持できるようになります。さらにケアの継続は、かゆみの緩和やスキントラブルの予防につながります。保湿剤は、療養者個々の皮膚の状態をアセスメントした上で安全性の高い製品を選び、適切なタイミング、方法、回数、使用量で塗布することが大切です。 保湿のスキンケアの実践 (1)塗布のタイミング保湿剤を塗布するタイミングは、可能であれば入浴後15分以内が有効であるといわれています。しかし在宅では、マンパワーの不足などにより教科書通りのタイミングで保湿剤を塗布することは難しい状況もあります。大切なことは、入浴や清拭後、時間が経っても忘れずに保湿のスキンケアを行うことです。 (2)塗布の方法保湿剤を手掌にとり、手掌全体を使って皮膚に塗布すると、広範囲に均一に伸ばすことができます。皮膚の皮溝に沿って横の方向に、強く擦りすぎないように塗布します。特に高齢者や脆弱な皮膚の療養者は、軽微な摩擦やずれで表皮剥離を生じる場合があります。保湿剤の水分を封じ込めるように皮膚をやさしく押さえ、塗り込むように塗布します。皮膚の乾燥や掻痒感が出現しやすい下腿部、大腿部、側腹部、腰部などは保湿剤を丁寧に塗り込みましょう。 保湿剤のタイプ保湿剤にはさまざまな種類があります。タイプにより、べたつきや伸びの良さなどの使用感が異なります。べたつきの多い順に、軟膏>クリーム>ローションとなります。保湿剤は、ベタつきが少なく伸びのよいクリームやローションを使用すると皮膚への刺激を軽減できます。本人の好みやケアを行う家族などが使いやすいものに考慮し、皮膚の状態や季節に応じて使い分けることが大切です。 (3)塗布の回数塗布する回数が1日2回以上だと保湿効果が高くなるといわれています。特にスキン-テアの既往がある療養者は、1日2回の保湿のスキンケアを習慣化し、継続できるようにしましょう。 ただし、在宅では高齢な介護者が一人で保湿のスキンケアを行う場合もあります。高齢な介護者にとって、入浴直後や清拭後に療養者の全身に保湿剤を塗布することは大変な労力を要し、介護への疲労感や負担感を招く可能性があります。そのような場合は、温湯に浸ることで全身の皮膚表面に潤いを与え、皮膚の乾燥を防ぐことができる、保湿効果のある入浴剤を取り入れた保湿のスキンケアもおすすめです。また、在宅の予防的な保湿のスキンケアでは、たとえ1日1回であっても毎日継続して行うことが大切です。重要なことは、間隔が空いたとしても保湿を忘れず、「その家で継続できる保湿のスキンケアを習慣化する」ことです。 (4)適切な使用量保湿剤の塗布量は、皮膚がしっとり潤いつやつや光る程度が適量です。塗布後、皮膚にティッシュペーパーを当てると、ゆっくりはがれ落ちる程度が目安となります。ティッシュパーパーが保湿剤で湿り張り付いて落ちてこない場合は、塗布量が多すぎるといえるでしょう。一方、ローションやゲルタイプの保湿剤は、伸びがよいので塗布量が減少する可能性がある上、少量の使用であってもティッシュパーパーが張り付きやすくなります。皮膚の潤いやなめらかさを確認しながら、2度塗りなどで適量を塗布しましょう。 保護 ~丁寧に保護しましょう~ スキンケアにおいて保護とは、何かを皮膚に塗布(被覆)して皮膚を健やかに保つこと、といえます。皮膚は、身体の最外層でバリア機能を発揮することにより、外部の刺激から身体を守っているため、常に外部からの化学的・機械的・物理的刺激にさらされている状態です。保護のスキンケアは、皮膚の水分喪失を防ぎ、皮膚の潤いを保持し、さまざまな外部の刺激から皮膚を守る効果があります。健康な皮膚を維持するためには、毎日の保湿のスキンケアと併用して保護のスキンケアを行うことで、スキントラブルを予防することができます。 保護のスキンケアの実践 保護のスキンケアの目的は、(1)日常的に皮膚を守る、(2)排泄物から皮膚を守る、(3)外力から皮膚を守る、ことです。目的によって使用する用品やケア方法が異なります。用いるスキンケア用品には、皮膚に被膜を形成する「皮膚被膜剤」、皮膚保護クリームや撥水クリームといわれる「撥水性保護クリーム」や「保護オイル」などがあります。これらの用品を使用することで、皮膚を保護する効果を高めます。 皮膚被膜材は、使用する部位の皮膚にトラブルがないことを確認した上で用いましょう。また、使用中にスキントラブルを生じた場合は、速やかに使用を中止します。その後、基本的なスキンケアを実践し症状を観察します。症状が改善しない、もしくは悪化する場合は皮膚科専門医へ相談しましょう。 (1)日常的に皮膚を守る  日常的な保護のスキンケアの実践は、皮膚の乾燥、掻痒、浸軟の予防、さらにスキン-テア、褥瘡などの発生リスクを低減することにつながります。毎日の洗浄・保湿のスキンケアに加え、撥水性保護クリームを用いたケアを継続しましょう。 (2)排泄物から皮膚を守る  失禁などでおむつを使用している場合、おむつに覆われた皮膚は浸軟や失禁関連皮膚炎(IAD)などのスキントラブルを生じる可能性が高くなります。また、スキントラブルから褥瘡発生につながることもあります。毎日のスキンケア方法、排泄物の性状や量、おむつ交換の頻度、使用しているおむつの通気性などをアセスメントした上で、褥瘡発生部位である仙骨部、尾骨部、坐骨結節部などはもちろん、おむつに覆われている皮膚全体を含めた予防的スキンケアが大切です。おむつ交換時や陰部洗浄後に、撥水性保護クリームや保護オイルを使用することで、排泄物の水分や刺激から皮膚を守ることができます。 (3)外力から皮膚を守る 在宅療養者は、日常生活の中でさまざまな姿勢や体位をとり、移動や姿勢保持の際には、皮膚に圧迫や摩擦、ずれという外力が加わります。特に、基礎疾患や老化によって活動性・可動性の低下や低栄養のある療養者は、筋力が低下し、骨が突出した部位に外力が加わることで褥瘡を発症する可能性が高くなります。骨突出部にはあらかじめ皮膚保護材などを使用して、外力から皮膚を保護することが必要です。 また、医療用テープを使用している場合、脆弱な皮膚ではテープの剥離時などにスキントラブルを生じることがあります。医療用テープを貼付する皮膚に、あらかじめ皮膚皮膜材を使用したり、剥離剤を使用してテープを剥がしたりすることにより、皮膚への刺激を低減することができます。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。編集:NsPace編集部 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.

認定看護師活動記 近畿
認定看護師活動記 近畿
コラム
2023年8月22日
2023年8月22日

地域と病院をつなげる取り組み【訪問看護認定看護師 活動記/近畿ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 近畿ブロック、雨森 千恵美さんの活動記です。近畿ブロックの活動内容や、フィードバックカンファレンスの導入をはじめとした看看連携の取り組み、地域で訪問看護の存在感を高める取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:雨森 千恵美訪問看護ステーション ゆげ(滋賀県) 管理者。看護学校卒業後、医科大学付属病院に勤務、代謝・内分泌内科病棟での臨床経験を活かし、糖尿病療養指導士の資格を取得する。結婚出産後は、夜勤のない職場に復帰するため訪問看護ステーションに再就職。在宅看護の魅力にとりつかれ2012年に独立。訪問看護を深く学ぶため訪問看護認定看護師の資格を取得した。2018、2019年には協議会の近畿ブロック長に就任。「近畿ブロックの規約」の作成を行い、その後も「在宅看取りの育成研修事業」を企画。実行力や統率力を評価されている。 現在は、訪問看護のパイオニアとして後任の指導と、地域と病院がつながるしくみ作り(フィードバックカンファレンスの定着)や認定看護師の活躍の場作り、災害時支援チームの一員としての活躍の場をますます広げている。 会員相互の交流を図りネットワークを構築 まずは、私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会の、近畿ブロックの活動についてご紹介します。 近畿ブロックでは、毎年訪問看護認定看護師としての日頃の実践報告を6府県の代表者が発表する日を設けています。認定看護師として自身の活動を振り返り、今後に活かす貴重な機会です。また、実践報告と同時に「経営について」や「災害といのち」などの関心の高いテーマの基調講演を行っており、学びつつ交流もできる、非常に充実した1日になるため、会員の満足度も高くなっています。これらの活動に参加していると、訪問看護認定看護師として同じ志を持った熱い仲間と交流することができるため、企画すること自体が非常に楽しいです。 フィードバックカンファレンスで看看連携 私が行っている、地域での活動についてもお伝えします。私が住んでいる滋賀県では、全世代型地域包括ケアシステムの充実のために、圏域別に地域看護ネット会議を開催しています。過去には、地域課題として「退院後の振り返りができていない」ことが取り上げられ、まずは「病院と在宅との看看連携強化が必要」との意見も出ました。 そこで私は、訪問看護認定看護師実践報告会で聴いた「フィードバックカンファレンス」の手法が、看護職同士がつながるしくみとして効果的ではないかと提案しました。フィードバックカンファレンスとは、フィードバックが必要だと感じたケースについて、病院側・地域側のどちらからでも依頼できる、というしくみです。例えば病院側が訪問看護ステーションにフィードバックカンファレンスを依頼することにより、退院時の支援や調整が適切であったか、振り返ることができます。 2019年から始め、今年で5年目。コロナ禍で一時はオンライン形式の開催に変更し、調整が難航する時期もありましたが、2023年7月時点までで16例の実績をつくることができました。 実際に開催してみると、フィードバックカンファレンスは、相互理解や信頼関係の構築に役立つのはもちろんのこと、認定看護師の指導を受ける機会になる、看護師以外の専門職とつながる機会になる、そして本人・家族の思いを共有できる場になる、といったメリットがあることがわかりました。今後は、よりフィードバックカンファレンスが全国に普及するよう願っています。 地域での訪問看護の存在価値を高める そのほかにも、地域の中で訪問看護の存在価値を高めるための活動を行っています。 病院看護では医療職同士のつながりのみとなってしまうケースも多くありますが、地域ではさまざまな専門職が協働しています。医療と介護と看護が一体となって、療養者の日常生活の支援から看取りまで実践していきます。多職種との連絡・調整・協働は、訪問看護の最も得意とする分野であり、必要不可欠。人的ネットワークを広げて信頼関係を構築しておくことは、困難なケースでの交渉・円滑な支援につながるでしょう。 最近は、高齢一人暮らしの利用者が増えています。癌ターミナルや認知症になっても、最期まで家で過ごすためにどうしたら良いか。地域の特性を活かして行政と一体となり、地域住民も巻き込んでいく必要があります。本人・家族はもちろん、支援者のすべてが穏やかでいられる方法を模索するのも、やりがいがあって楽しいものです。 また、医療的ケア児をとおして学校関係者とつながったり、育児相談事業を行って、地域の母親たちとつながったりする活動も行っています。新たなつながりを構築することにもやりがいを感じています。新型コロナウイルス感染症によって自宅療養者が急増したときは、保健所の負担を少しでも減らしたいと、電話による健康観察や自宅訪問事業も受託しました。多いときは1ヵ月で2,000件を超える対応を行いました。今後も、さまざまな場面で訪問看護の力を発揮し、地域での存在価値を高めていきたいと考えています。 * * * 訪問看護の魅力は何でしょうか?道中は四季を感じながら利用者宅に向かうと「待ってました」の笑顔に迎えられ、時には想像以上の力を発揮され隠されたパワーに驚かされます。日常生活を一緒に過ごし、喜びと悲しみを共有し、人として成長させていただきます。訪問看護をはじめて25年。在宅医療をこよなく愛し、日々やりがいを持って看護を行っています。訪問看護を目指す方が増え、一緒に訪問看護の素晴らしさを共有できる日を待ち望んでいます。 ※本記事は、2023年7月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

認定看護師活動記
認定看護師活動記
コラム
2023年7月25日
2023年7月25日

看多機(かんたき)を通じて広げる「輪」 【訪問看護認定看護師 活動記/北関東ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師・在宅ケア認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 北関東ブロックに所属する、山崎 佳子さんの活動記をご紹介します。 看護小規模多機能型居宅介護事業所(看多機)の管理者としても活躍する山崎さんに、北関東ブロックの活動や、看多機の管理者としての活動などをご紹介いただきます。 執筆:山崎 佳子在宅ケア認定看護師株式会社やさしい手 看多機かえりえ南佐津間 管理者福岡県出身。看護学校卒業後、総合病院・医療器メーカー・CRC等に従事。2005年より訪問看護に携わる2007年 介護支援専門員資格取得2017年 訪問看護認定看護師教育課程修了2018年9月 「看多機かえりえ河原塚」管理者となる2020年度~2021年度 松戸市小多機看多機連絡協議会会長、松戸市介護保険運営協議会委員2022年 特定行為研修 在宅ケアパッケージ修了2023年5月 新規オープンの「看多機かえりえ南佐津間」管理者となる 訪問看護認定看護師 北関東ブロックの活動 まずは、私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会の「北関東ブロック」についてご紹介します。北関東ブロックは、千葉・群馬・栃木・新潟・茨城の5県の会員で構成しており、会員数は2023年7月時点で40名弱。半数以上は千葉の会員、群馬・新潟・栃木は5名前後、茨城は1名のみです。2022年度の活動としては、前期に事例検討会、後期に地域向け研修会を実施しました。 人数構成上、どうしても例年、活動が千葉県中心になってしまうので、年1回行っている地域向け研修会を、各県の持ち回りで行うことにしています。2022年は、5名の群馬県の会員を中心に、他県の実行委員を加えた10名で研修会の企画を進めていきました。会費をいただいての研修なので、失礼があってはならないと色々なことを想定して準備を進め、Zoomでの会議のほか、LINEを使って話し合いをもち、時には夜遅くまで意見交換をすることもありました。その結果11月の研修会は46名の参加をいただき、スムーズに開催をすることができました。 実際には、北関東ブロック内で一度も対面でお会いしていないメンバーもたくさんいますが、ブロック全体で力を合わせて開催できたと感じました。2023年度もこの取り組みを継続しており、新潟県のメンバーが中心になって新しい実行委員も加わり研修の準備を進めているところです。 看多機の管理者として多職種連携に取り組む では、ブロック活動以外に、私が普段どのような活動をしているかについてもご紹介します。私は、約5年前に社内異動で訪問看護ステーションの管理者から看護小規模多機能型居宅介護事業所(看多機かえりえ河原塚)の管理者になりました。当時、「看多機」という名称は知っていましたが、実際にどんなことをやっているのかはまったくといっていいほど理解していない状態。私は、この異動をきっかけに多職種連携に正面から取り組むことになったのです。 看護職と介護職の違い 赴任して、まず私に立ちはだかった壁は、「看護師と同じように伝えても、介護職には伝わらない」ということです。しかし、ある時、介護職の一人が「介護は、『寄り添いなさい』『受け入れなさい』って教育されるのですよ」と言ったのです。その言葉を聞き、看護職は問題解決思考になりやすく、いつも利用者さんが抱える問題点を探しているように思い、その違いにはっとしました。なるほど…。視点が違うのだから、理解や思いにも違いが生じるのは当たり前だ、と改めて気づいたのです。 互いに伝えることが大切 そして、介護職が看護師に遠慮して、自分たちの思いや考えを言いそびれている場面をよく見かけたので、介護職がそれらを言語化し、発信できるようになることが必要と感じました。介護職は生活援助を通して看護師より利用者さんのそばにいる時間が長いので、ありのままの利用者像を知っていることが多いと感じます。「看護師には言えないんだけど…」というような、利用者さんの本音を聞く機会もあるようです。介護職が持っている情報はとても大切で重要なものだということを自覚して、とにかく自信を持ってその情報を発信してほしい、と伝え続けています。 また、一番身近な介護職が利用者さんの変化に気づくことができれば、病状の変化にもいち早く対応できると思います。それを実現するためには、疾病の知識、観察点、予後予測などを看護師がしっかり学んで理解し、常日頃から介護職に丁寧に伝達していくことが、必要と考えます。介護職にわかってもらえるためにはどうしたらよいか…。看護師には、特に伝える力を養ってほしいと考えています。 看多機では、看護師と介護職が同じ空間で同じ利用者さんを、それぞれの専門性をもってみることができます。互いの情報を持ち寄れば、より快適な療養生活を送るには何が必要か、見えてきます。それをもとに重度の方にも安心して過ごしていただけるための支援を考え、実践していけるのではないかと感じています。 今後も、定期的に利用者さんについて話し合う機会を持ち、お互いの専門性を認め合い、意見を遠慮なく言い合える雰囲気づくりを心掛けていきたいと考えています。 松戸市の小多機・看多機連絡協議会の活動 地域での活動についてもご紹介しましょう。私が赴任した看多機かえりえ河原塚は、千葉県の松戸市というところにあります。松戸市の人口は50万人弱ですが、そこに小多機・看多機が9つずつあり、計18事業所が「小多機・看多機連絡協議会」に参加しています。 主に小多機・看多機の普及活動や、市、医師会、介護連(他の介護事業所が集まった協議会)などとの連携、自己研鑽のための研修などの活動をおこなっています。私は看多機の管理者になって2年目に、前会長の退職をきっかけに協議会の会長に就任することになりました。会長として介護保険運営協議会、基幹の地域ケア会議、医師会在宅ケア委員会等へ参加して、地域の医療や介護の事業のしくみを学べたのはとても有意義な経験でした。定例会は2ヵ月に1度開催して、さまざまな意見を話し合います。そこで出た意見を行政(松戸市)に伝え、ルール変更や統一の対応をしていただいたこともありました。 こうした活動を通じて、同業者との横のつながりは、仕事をしていく上での大きな心の支えになることも実感しました。「競合他社」ではありますが、管理者の悩みは一緒であることが多いもの。話をしていると互いに気持ちをわかりあえることが心地よく、「明日も頑張ろう」という力が湧いてくるのを感じました。 2023年7月 千葉県看多機協議会を立ち上げ その後、私は松戸市の隣の鎌ヶ谷市の看多機(看多機かえりえ南佐津間)への異動が決まったため、2年で会長を辞任しました。 鎌ヶ谷市では1件目の看多機なので、今まで協議会の仲間や市とコミュニケーションをとりながら過ごしてきた私は心細さを感じ、同じ県内で看多機を立ち上げておいでの福田裕子先生(株式会社まちナース まちのナースステーション八千代統括所長)にお願いして、2023年の7月に千葉県看多機協議会の立ち上げをすることになりました。 看多機かえりえ南佐津間 立ち上げ準備のために千葉県内の看多機を調べ、連絡を取ってみて気づいたのは、自治体に看多機が1ヵ所しかないところもまだまだ多いということ。そして、管理者の皆様が、「同業者と話をしたい」と思っているということです。 千葉県看多機協議会は、横の繋がりを強化することで、それぞれの事業所が安心していきいきと運営できるよう活動していきたいという思いで設立されます。看多機はできてまだ10年。本当にこれでよかったのか、もっと良い使い方はないのか、現場では毎日試行錯誤しながら実践に取り組んでいます。協議会の活動を通して、地域の頼れる社会資源として成長していきたいと考えています。 * * * 私は、在宅に携わった看護師がみんな、「この仕事をしてよかった」と思ってもらいたいと考えて、日本訪問看護認定看護師協議会の活動に参加してきました。今後は対象を広げ、在宅に関わるすべての職種に「よかった」と思ってもらうことを目指して、活動していきたいと思っています。 ※本記事は、2023年7月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

日本訪問看護認定看護師
日本訪問看護認定看護師
インタビュー
2023年7月4日
2023年7月4日

日本訪問看護認定看護師協議会 立ち上げ経緯&想い【特別インタビュー】

「訪問看護認定看護師/在宅ケア認定看護師」は、日本看護協会が行う認定審査に合格し、訪問看護において高いレベルの技術力や知識を持つと認定されたスペシャリストのこと。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会の取り組みについて、代表の大橋奈美さんと、監事の野崎加世子さんにお話しいただきます。 <参考> 新認定看護師制度への移行について2020年度から新認定看護師制度が誕生し、訪問看護認定看護師は「在宅ケア認定看護師」に名称変更。また、これまでは別途行っていた特定行為研修(※)が認定看護師制度に取り込まれることになりました。旧認定看護師制度は2026年度で教育終了予定です(認定審査は2029年度までで終了)。 ※看護師が医師による手順書により特定行為(診療の補助)を行う場合に特に必要とされる研修。在宅ケア認定看護師を目指す場合、在宅・慢性期領域の特定行為(呼吸器、ろう孔管理、創傷管理、栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連)を学ぶ。 ○プロフィール大橋 奈美(おおはし なみ)さん/協議会代表理事看護学校卒業後、総合病院等に勤務。2004年ハートフリーやすらぎ訪問看護ステーションに入職し、現在は常務理事。訪問看護のユニフォームを着て病棟に行けば病棟看護師に声をかけられ、近所を歩けば地元の方とフランクに会話するなど、地域に密着している現役の訪問看護師でもある。現監事の野崎さん(当時代表)の訪問看護師としての姿勢に感銘を受け、協議会へ。 野崎 加世子(のざき かよこ)さん/初代 協議会代表理事&現 監事看護学校卒業後、総合病院に勤務。岐阜県看護協会訪問看護ステーションの立ち上げから関わり、2023年3月末に定年退職。ステーション連絡協議会の会長職を10年以上歴任。岐阜県内で初めてナーシングデイを開設する、高山市内唯一の医療福祉アドバイザーに就任するなどパイオニア的な存在。現在「これからの在宅医療看護介護を考える会」の代表として活躍中。豊富な経験を基に訪問看護の魅力を伝えており、講演依頼が絶えない。 ※文中敬称略 協議会の活動内容&立ち上げ経緯 ―そもそも日本訪問看護認定看護師協議会は、どんなことをしている団体なのでしょうか。 大橋: 日本訪問看護認定看護師協議会(以下、「協議会」)は、訪問看護認定看護師のネットワーク構築と、訪問看護全体の質向上を目指して2009年に誕生しました。「施設から在宅へ」という大きな流れがあるなかで、訪問看護・在宅ケアのスペシャリストである認定看護師は、重要な役割を担っています。認定看護師同士で情報交換をしつつ自己研鑽を積み、地域包括ケアシステムの推進に貢献できるように日々活動しています。 ■日本訪問看護認定看護師協議会 活動 日本訪問看護認定看護師協議会ホームページ(https://jvncna.net/block_act/)より 当初は100名からのスタートでしたが、地道にネットワークを全国に広げていき、現在では362名の仲間がいます。認定看護師同士の研修会・勉強会はもちろん、協議会の外に向けても積極的に情報発信していますね。 例えば、2024年度の医療保険・介護保険の同時診療報酬改定に向けた要望書の作成や、訪問看護ステーションの運営・多機能化に関するコンサルテーション活動等を行っています。また「訪問看護に新たなツールを導入できないか」という試みを行ってくださる団体・法人等からのお声がけに対しても積極的に協力しています。 ―どのような組織単位で活動しているのでしょうか。 大橋: まず、年2回の総会をはじめとした協議会全体としての活動があります。また、地域特性もありますので、全国を大きく9ブロックに分けて地域単位の活動もしているんです。ブロックごとに交流や研修会の開催、地域貢献活動の企画&運営等も行っています。 ■日本訪問看護認定看護師協議会の9ブロック 日本訪問看護認定看護師協議会ホームページ(https://jvncna.net/block_act/)より ―ありがとうございます。2009年に協議会を設立されたとのことですが、初代 代表の野崎さんに、当時の経緯を教えていただきたいです。 野崎: はい。私は日本訪問看護財団の訪問看護認定看護師 教育課程(※)の2期生でした。当時はまだ開講したばかりだったので仲間も少なく、病院の看護師からは「訪問看護認定看護師って具体的に何をするの?」と聞かれてしまうほど知名度も低かったんです。認定看護師の役割である実践・相談・指導をどう進めるべきか、悩みました。 ※日本訪問看護財団の認定看護師教育課程(訪問看護)は2021年度より閉講。 そこで教育課程時代の恩師に相談したところ、団体(協議会)を作ることをすすめていただき、「あなたが代表ね!」と言われたんです(笑)。そういったきっかけで協議会を設立し、活動をさらに充実させるために2014年に一般社団法人化。今は大橋さんに代表をバトンタッチしたという経緯です。会員も当時の3倍以上になり、ずいぶん仲間が増えましたね! ―設立するにあたり、認定看護師さんたちや関係各所の方にはどのように声掛けをしていったのでしょうか。 野崎: すべての認定看護師の教育課程拠点に順次説明をしにいき、「在宅療養者が望むように過ごすには、質の高い看護を追求する仲間が必要です」という想いを伝えました。また、総決起大会を開き、「私たち訪問看護認定看護師はこれからも地域のために、看護のために活動します!」という宣言もしました。 設立後も、訪問看護認定看護師がいない自治体には、直に出向いてその意義をご説明する…といった地道な活動もしましたね。 ―反対意見やご苦労はありませんでしたか? 野崎: そうですね。協議会設立に限らず、新しいことをしようとすると、大抵反対のご意見はあるものです。「協議会はいらないのでは?個人で活動すればよいのでは?」というお声もいただきました。でも、「私たちの目指すところは地域ネットワークの構築であり、訪問看護の充実なんだ」という想いは、皆さん一緒なんです。しっかり対話していくことでご理解いただけて、無事に設立できました。 ―野崎さんの真摯にご説明をされる姿勢、前向きに周囲を巻き込んでいくパワフルさはなかなか真似できないものだと思います。大橋さんも、野崎さんの講演会を聞きにいかれたことがきっかけで協議会に入られたそうですが、そのときのことを教えてください。 大橋: そうなんです! 当時、別の訪問看護認定看護師さんの講演にも行っていたのですが、そこでは訪問看護に関するネガティブなことがたくさん語られていました。その上で最後に「やりがいがあるから皆さん来てください」っておっしゃるのですが、正直「こんなことを聞いて誰が訪問看護をやるんだろうか」と思っていました…。 これではいつまで経っても訪問看護師も認定看護師も増えない、と思っていた時に、野崎さんの講演を聞いたんです。野崎さんのお話のなかにはネガティブな言葉が一切なく、お話にも心から共感しました。私は「これぞ理想の認定看護師だ!」と、すっかり心を奪われたんです。もっとお話が聞きたくて、知り合って間もないのに「仲間たちと一緒に岐阜まで行っていいですか?」と連絡したことも。大歓迎してくださり、下呂温泉にも連れて行ってもらいました(笑)。 野崎: そんなこともありましたね(笑)。 大橋: だから私の講演も、99%は成功体験を語るようにしています。野崎さんのすごさは、協議会設立時もそうですが、それ以外でも積極的に行政や病院、関係者にアプローチして交渉し、新たな体制を作りあげていくことです。「体制がないなら作る」というポジティブな発想は、私のロールモデルになっています。 野崎: ありがとうございます。協議会の私たちが暗い顔をしていたら「訪問看護師になりたい」「協議会に入りたい」と思えませんから、これからも笑顔かつポジティブでいたいですね。 全国の仲間たちと訪問看護の質向上に貢献 ―協議会設立から約15年、法人化から約10年経ちました。協議会の活動を通して、訪問看護認定看護師の認知度や活動内容は変化しましたか? 野崎: はい、確実に変わっていますね。まず、困難事例があった際は、認定看護師が所属している事業所に依頼が来るようになりました。また、多職種が集う会議に参加した際、認定看護師が中心となってまとめている姿を見たこともあり、地域包括ケアの中心的な立ち位置になっていっていることを実感します。 大橋: 冒頭でも少し触れましたが、「訪問看護に関する協力要請は協議会に」という流れも定着しつつありますよ。例えば最近は大学との協働案件が多く、ポケットエコーやVRの研究に協力しています。コロナ禍には、日本訪問看護財団から感染防護具を各県に配布したいというご依頼をいただいたのですが、協議会のネットワークを活用して迅速かつ公平に対応できました。日本財団から遺贈基金をいただいて「在宅看取りを実践できる訪問看護師の育成事業」を実施できたことも、大きな功績です。 野崎: 認定看護師の知識と経験、そして使命感をもってやり遂げられたことは、協議会としても誇れることですね。 大橋: 全国に信頼できる仲間がいるからこそ、こうした大きな事業や取り組みができます。誠実な仲間たちに感謝です。 ―改めて、訪問看護認定看護師の存在意義や求められる姿勢について教えてください。 大橋: 我々には、大変な場面でも逃げずに利用者さんの側に居続ける姿勢が求められると思います。しっかりとアセスメントをして、諦めずにとことん考えていくことが認定看護師の存在意義ではないでしょうか。 野崎: 利用者と向き合う強さが必要なので、ズルい人にはできないですし、真摯に向き合うことが大事だと思います。訪問看護は、熱いハートと冷静な頭脳を持たないとできませんが、そこが魅力でもありますね。 大橋: 全部引き受ける覚悟も必要ですよね。覚悟があるから、よく勉強もする。病棟と違って対象者は全世代であり、疾患もさまざまです。本当にみんなよく勉強していると思います。野崎さんや私も、最近特定行為の研修を修了しましたしね! また、全国の訪問看護師さんたちの相談に乗るのも、私たちの重要な役目です。私が相談に乗る時は、なるべく可視化してお伝えするようにしています。「ストンと腑に落ちました」と言っていただけると、気づきを促す実践・指導ができた、と思えます。認定看護師は社会資源のひとつなので、ぜひ活用いただきたいです。 野崎: 本当にそうですね。全国に訪問看護認定看護師がいるので、壁にぶつかった時はぜひ気軽に相談してもらいたいです。 新たな仲間たちとともにさらにパワーアップ ―今後の協議会は、どのように発展していきたいと思いますか? 野崎: 認定看護師が継続して学べる環境の整備と、国の政策に活かせる活動をしていきたいですね。最近では企業から相談事業の依頼を受けることもあるので、情報交換をしながら活躍の場を広げたいと思っています。 大橋: 訪問看護ステーションに就職する際、「認定看護師がいる事業所なので選びました」という方も多いようです。認定看護師の役割を人材育成にも広げ、互いに育み合いながら裾野を広げていけるといいですね。 また、若手にとってもベテランにとっても、利害関係のない認定看護師に悩みごとや相談ごとを吐露できる環境があることは大切だと思います。今後はどんどん特定行為ができる「在宅ケア認定看護師」も増えてきます。名称は変わっても目指す部分は同じなので、これまで創り上げてきた基盤を大事にしつつ、新たな仲間を増やしてネットワークを強化したいと思っています。 ※本記事は、2023年4月の取材時点の情報をもとに構成しています。 取材・執筆:山辺 智子 日本訪問看護財団 研究員/看護師・保健師研究を通して訪問看護認定看護師の能力と行動に魅了され、活動を応援している一人編集:NsPace編集部

訪問看護の褥瘡ケア
訪問看護の褥瘡ケア
特集 会員限定
2023年5月16日
2023年5月16日

写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 事例に学ぶ創部の見方/セミナーレポート後編

2023年2月10日に開催されたNsPace(ナースペース)のオンラインセミナー「写真事例で解説!訪問看護の褥瘡ケア」。在宅創傷スキンケアステーションの代表で、皮膚・排泄ケア認定看護師でもある岡部美保さんを講師としてお迎えし、褥瘡の評価やケアのポイントについて、実際の事例を交えながら教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、褥瘡評価スケール「DESIGN-R2020」(※1)を使って実際の褥瘡を評価する、ケーススタディの様子をご紹介します。 >>前編はこちら写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 褥瘡の評価/セミナーレポート前編 【講師】岡部 美保さん皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表赤十字病院や複数の訪問看護ステーションにて勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマに関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 「DESIGN-R2020」で褥瘡評価 「DESIGN-R2020」での評価方法について学んできたところで、ここからは実際の褥瘡の写真を見ながら、「DESIGN-R2020」を用いて評価してみましょう。 事例1:壊死組織で創底が見えない場合 こちらは、1ケース目の褥瘡です。「DESIGN-R2020」での評価は「DU-e3s8i1G6N6p0:24点」となります。 <基本情報>・褥瘡のサイズは6cm×5.8cmで、ポケットはありません。・褥瘡のケアとしては、1日1回ガーゼの交換を行っています。・ガーゼの約半分が汚染される程度の滲出液が見られます。 褥瘡を見てみると、創部は色が黒くなっており、創周囲の皮膚は赤くなっているので、「DTI(深部損傷褥瘡)ではないか?」と思われるかもしれません。しかし、この褥瘡は壊死組織(黒色部分)が全面を覆っていて、創底が見えない。つまり、壊死組織によって深さの評価ができない褥瘡です。また、創面が壊死組織で覆われていることから、肉芽も上がっていません。 創周囲の皮膚は、先にも触れたとおり赤くなり、炎症を起こしています。現段階では炎症で済んでいますが、今後感染に移行してしまう可能性も十分にあります。こういう場合は、創周囲の皮膚にポケットができていないか、膿が溜まっていないかを必ず確認しましょう。 また、速やかに壊死組織を除去することが重要なポイントです。このケースでは、スルファジアジン銀クリームを使って、壊死組織の自己融解を進めています。そのため、壊死組織の外縁から中心に柔らかい組織に変化していっていることがわかるかと思います。 事例2:DTI(深部損傷褥瘡)疑いの場合 続いて2ケース目の褥瘡。「DESIGN-R2020」での評価は「DDTI-e1S15i1g0n0p0:17点」となります。 <基本情報>・サイズは18.5cm× 10cmで、ポケットはありません。・褥瘡ケアは、1日に1回行われています。・滲出液は少なく、ガーゼにわずかに付着する程度です。 こちらはDTI疑いの褥瘡です。「DESIGN-R2020」では、深さの表記は「DDTI」とします。 DTI疑いの場合の評価のポイントのひとつが、肉芽組織(Granulation)の項目。DTIのときの肉芽組織は、0点(g0と表記)で評価するという決まりです。みなさんが訪問看護の現場でDTIの褥瘡の評価に当たる際、「このあたりはいい肉芽が育っているかもしれない」と感じられることもあるかもしれませんが、「肉芽はまったくできていない」と判定しましょう。 事例3:複数の深刻な褥瘡がある場合 3ケース目は、仙骨部と右坐骨結節部、左坐骨結節部の3ヵ所に褥瘡がある方です。「DESIGN-R2020」での評価は、順番に「D4-E6s9I3cG6n0P6:30点(※2)」「D4-E6s6I3cG6n0P6:27点」「D3-E6s6I3cG6n0P12:33点」となります。 ※2 Dは従来通り合計点数には含まれません。また臨界的定着疑い(「訪問看護の褥瘡ケア 褥瘡の評価 /前編」参照)は3cと記載し点数は3点とします。 <基本情報>・仙骨部にはぬめりがあり、淡黄色の滲出液が多く分泌されています。・右坐骨結節部にはぬめりがあり、淡黄緑色の滲出液が多く分泌されています。・左坐骨結節部にはぬめりがあり、淡黄色〜淡黄緑色の滲出液が多く分泌されています。・栄養状態が低下しており、脱水も確認できます。・頭側挙上をしており、食事にも時間がかかるため、長時間にわたって座位姿勢をとっています。・自力での体位変換はできません。 今回のケースでは、以下のような評価ができるでしょう。 1. 肉芽の状態創面は赤くなっているように見えますが、浮腫性の不良肉芽で覆われています。すべての褥瘡において「良性肉芽が育っていない」と評価します。 2. 肉芽の剥離、段差の有無仙骨部の褥瘡には、肉芽の剥離と段差が見られます。これには、頭側挙上をしていること、座位姿勢をとっている時間が長いことが関係していると考えられるでしょう。ギャッジアップをした際、ずれと圧迫が加わって肉芽が剥がれてしまっています。 さらに、左右の坐骨結節部にも肉芽の剥離がありますね。長時間の座位姿勢をとっているために圧迫され、さらに慢性的な体位のずれも加わって、肉芽が剥離しています。とくに左坐骨結節部は、左側への体幹の傾きを生じているためより強い外力が加わることにより、肉芽は深くまで剥離しています。 3. 滲出液の量3カ所ともぬめりが見られ、多量の滲出液があります。黄緑色の滲出液が出ている部位も確認できました(緑膿菌感染の疑い)。さらに、3ヵ所とも創周囲の皮膚は浸軟しています。これはつまり、臨界的定着疑いの褥瘡であると考えられるでしょう。 4. 巻き込み(エピロール)の有無臨界的定着の疑いがある上に、座位姿勢の時間が長かったり、自身で体位変換ができなかったりして、局所には慢性的に圧迫やずれが加わります。さらに、マイクロクライメット管理も不十分であることから表皮の巻き込みという現象が起こります。これは褥瘡治癒を遅延させるリスクの高い状態といえます。 5. ポケットの有無褥瘡にはポケットも確認できます。体位変換をするときに左右にずれることから、ポケットも左右に広がっています。さらに、ギャッジアップをすることで縦方向にもずれが加わりますから、上部にもポケットが残っています。 複数の褥瘡がある場合も、評価の方法は変わりません。一つひとつの創面を指で触ってぬめりや感触(創周囲がぶよぶよしていないか、膿がたまっていないかなど)を確かめたり、段差や肉芽の剥離がないかをチェックしたり、生活の中で生じている外力(圧迫、摩擦やずれ)がないかを検討したりして、各褥瘡に何が起こっているかを評価してください。 * 褥瘡ケアでは、なにより重要なのは「予防」。一方、すでにできてしまっている褥瘡に対しては「DESIGN-R2020」を使って褥瘡評価を行うことが大切です。創面と創周囲の皮膚に何が起こっているのか、その要因は何なのかについて、局所ケアの状況や生活などから多面的に見極める必要があります。 そして、ご本人や家族と一緒に実践できるケアを考えることが大事です。褥瘡の状態や利用者さんのライフスタイルをふまえ、継続できる最善のケア方法を考えましょう。 ※1 DESIGN-Rは、一般社団法人日本褥瘡学会の登録商標です。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

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