訪問看護のこれから

特集 会員限定
2021年12月21日
2021年12月21日

【セミナーレポート】『看護の質』の評価、地域包括ケアへの対応/訪問看護のこれから<後編>

2021年9月30日(木)、NsPace(ナースペース)主催で行った「訪問看護のこれから」についてのパネルディスカッションの様子を2回に分けてお伝えします。※全90分間のパネルディスカッションのなかから一部ピックアップしてお届けします。 【パネラー(3名)】●落合実さん「ウィル訪問看護ステーション」の運営を行うウィル株式会社 取締役。2019年からは「ウィル訪問看護ステーション福岡」管理者・緩和ケア認定看護師を兼任。 ●新屋将之さん精神科病棟にて9年間勤務。現在は、精神科訪問看護「コモレビナーシングステーション」の業務委託やダンサーとして働いている。 ●関口優樹さん新卒で「ウィル訪問看護ステーション」へ就職し2年間勤務。現在は訪問看護分野での執筆活動を行っている。 【パネルディスカッションテーマ】1 24時間365日体制の整備や規模拡大について2 訪問看護の機能拡大とは?3 『看護の質』の評価について4 地域包括ケアへの対応について 3 『看護の質』の評価について 落合:「『看護の質』の評価ってどうやってしているの?」みんなが悩んでいることですよね。そしてこれは、誰が評価するのかによって大きく変わりますね。医師にとっての良い看護と、患者さんにとっての良い看護と、訪問看護ステーションの管理者が考える良い看護は一部異なることがあります。 新屋:僕のステーション(精神科訪問看護ステーション)では患者さん自身の言葉でどういう風に自立して行きたいか目標を決めてもらって、僕たちがそのサポートをしています。その目標に対してどれくらい達成できたかというのも自分で評価してもらうので、『看護の質』の評価とはちょっと違うかもしれない。 落合:僕は管理者なので「管理者による『看護の質の評価』」という視点からお話すると、「患者さんの満足度=いい看護」というのは違うと思っています。なぜかっていうと、医学的に正しいか正しくないかにかかわらず、患者さんの希望通りに看護すれば患者さんの満足度は上がるから。なので「看護の質の良し悪し=看護目標が達成されるかどうか」だと思っています。 新屋:そもそも『看護の質』ってなんなのかっていうのもある。 落合:病院看護に比べて必要な配慮が多角的だから難しいですよね。たとえば緩和ケアで考えてみても「痛みが減る=いい緩和ケア」なのかっていうと、その痛みを取るプロセスで家族を不安にさせたら、それは『訪問看護師としての看護の質』は高くないのかもしれないとも思う。 関口:患者さんひとりひとり、ご家族それぞれで求めることって違いますよね。 落合:そうそう。だから、「ウィル訪問看護ステーション」では、看護師みんながひとつのフォーマットで看護記録をつけるようにしていて、その情報をもとに定量的にケアの成果を評価する専用のシステムを導入しています。『看護の質の評価』は、なんらかのスケールにのせないと判断が難しいものだと思いますね。 4 地域包括ケアへの対応について 落合:地域包括ケアへの対応について「訪問看護の役割ってどんなこと?」という議題ですね。僕自身の経験としては、行政の計画相談の方にご挨拶に行ったときに「訪問看護の使い方がわからないんだよね」とか「訪問看護がどれだけ何をしてくれるかわからないんだよね」とか、言われることが多いなという印象があります。 新屋:僕も保健師さんに同じこと言われた経験ありますよ。 落合:もちろん、かちっと役割分担を決めることのメリットもあると思うけど、もっとゆるい関係でも良いんじゃないかなと思いますね。あとは、地域によっても訪問看護の役割に違いがある可能性もあるんじゃないのかな。 関口:ヘルパーステーションが少ない地域だと、看護師が担う役割は幅広くなりそうですよね。 落合:一方で、ここのところ訪問看護サービスの開設ブームもありますよね。もう国内の人口増加は止まってしまったから、新しい介護施設を作るよりも将来を見越して訪問系サービスを増やそうという動きになっている。 関口:訪問系サービスめちゃくちゃ増えましたよね。 落合:サービスを行う事業者が増えれば、それに比例してサービスの多様化が起こるのは当然だよね。対応範囲が大きくなると「それは本当に訪問看護師の仕事なのか?」とかおっしゃる方がたまにいるんですけど、僕としては「必要だったらやる」スタンスです。地域によって役割は変わると思う。ケアマネージャーのような仕事もすることもあれば、看護師にしかできない仕事に集中することもある。 新屋:看護師がやらなくてもいいけど看護師がやってもいい、という線引きの難しい仕事も多いですからね。 落合:そうですよね。ただ、行政の地域包括ケア担当の方から「医療的ケアがないと訪問看護が使えない」という説明を受けたこともあります。その結果、地域包括ケアと言いつつ、ケアが必要な人にケアが届かないことも起こってしまっている。なんとかして解決していかないといけない問題ですね。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

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2021年12月14日
2021年12月14日

【セミナーレポート】24時間365日体制の整備、訪問看護の機能拡大/訪問看護のこれから<前編>

2021年9月30日(木)、NsPace(ナースペース)主催で行った「訪問看護のこれから」についてのパネルディスカッションの様子を2回に分けてお伝えします。 ※全90分間のパネルディスカッションのなかから一部ピックアップしてお届けします。 【パネラー(3名)】●落合実さん「ウィル訪問看護ステーション」を運営するウィル株式会社 取締役。2019年からは「ウィル訪問看護ステーション福岡」管理者・緩和ケア認定看護師を兼任。 ●新屋将之 さん精神科病棟にて9年間勤務。現在は、精神科訪問看護「コモレビナーシングステーション」の業務委託やダンサーとして働いている。 ●関口優樹さん看護師として新卒で「ウィル訪問看護ステーション」へ就職し2年間勤務。現在は訪問看護分野での執筆活動を行っている。 【パネルディスカッションテーマ】1 24時間365日体制の整備や規模拡大について2 訪問看護の機能拡大とは?3 『看護の質』の評価について4 地域包括ケアへの対応について 1 24時間365日体制の整備や規模拡大について 落合:まずは「24時間365日体制の整備や、訪問看護ステーションの規模拡大を推進するうえでの問題は?」というテーマから始めたいと思います。お二人はご経験をふまえて、いかがですか? 新屋:僕が勤務していた訪問看護ステーションでは、「夜の対応が必要なときはどう対応するか」について、事前にスタッフと利用者との間で話し合っていたので、頻繁な電話は多くはなかったと思います。 関口:小規模の訪問看護ステーションでは、24時間365日体制をとるといっても実質、管理者さんだけがオンコール携帯をもっているところも多いって聞きます。まず人の確保が難しいのかなと思います。 落合:人の確保は多くの訪問看護ステーションが抱える課題ですね。24時間の対応体制加算は、多くの事業所が算定しているんだろうと思います。ただ、実質24時間365日体制で運営しているのかっていうと、実態は違うところも多いんじゃないかなと思うんですけど、どうなんでしょう。どうしたら無理なくやれるんでしょうね? 関口:訪問看護師として仕事をしていたときオンコール担当をしたことがあるんですけど、コール携帯を持ってる日は常にドキドキしてました。オンコールが来ても起きられないんじゃないかと思うと心配で眠れなくて(笑)。だから毎日持っている人はすごいと思うし、心理的なストレスも大きいだろうなと。 落合:最近よく感じるのは、体力よりも心の方が大事だなという点ですね。僕が運営してる「ウィル訪問看護ステーション福岡」では週に1回はオンコール担当が回ってくるシフトなんですけど、ときには夜間に2回呼ばれることもあります。前提として防げるオンコールであれば防ぐべきだと思っているんですが、防ぎようがないこともたまにあって。もう体力的にしんどいことはわかっていつつ、「自分がオンコール対応をしているから、利用者さんは今自宅で過ごせている」と思えるかどうかというのが大事だと思っています。ひいては、ステーション内でそういう組織風土を作れるかというのがとても大きい。 新屋:大変な仕事ほど、看護師自身が、意味のあることをしていると思えるかどうかというのは大事ですよね。 落合:一方で、僕たちが提供する看護の質が上がれば、実はオンコール対応で呼ばれないのかもしれないという思いもあります。オンコール対応が必要な患者さんを看れたことは尊いことだね、でも質も高めていかないといけないねと、メンバーとはよく話しますね。 新屋:もし、そういう風に思えない文化や雰囲気ができてしまいそうになったら? 落合:忙しくてということであれば、患者さんの人数を少し減らすことも検討するかもしれないですね。患者さんのケアは大事ですが、訪問看護師が気持ちよく患者さんを看れることも大事なので。また、24時間365日体制での訪問看護に対応できるだけの人の確保や心身の準備を整えようとしつつも、難しいのであれば、稼働実態としては24時間365日体制ではない運営方法を模索することも大切なんじゃないかと考えています。 2 訪問看護の機能拡大とは? 落合:「機能強化型看護」「小規模多機能」ってこれから増えるんですかね? 「看護小規模多機能型居宅介護(以降かんたき)」すごくステキでいいイメージはあるけど、どうなんでしょう。 関口:以前「かんたき」をやってる施設の取材をしたことがあります。利用者さんからすれば、なにもかも任せられるから安心だろうなと思いましたね。ただ、なにもかも施設内でやるから、仮に利用者さんとケアマネさんの相性が悪いとかなった場合は、選択肢がちょっと狭まるのではとも感じました。 落合:囲い込みが起こるんじゃないか、それは利用者利益なのか、という問題ですね。僕は「機能強化型看護」は、これから増えると思っているし、増えないといけないと思っています。小規模な事業所が多いですが、機能強化型くらいに規模化すると利用者利益を提供しやすく、またスタッフも働きやすくなる環境がより整うと感じています。 新屋:落合さんのところも機能拡大していく方針なんですか? 落合:規模は拡大したいなと思いますが、多機能化するとマネジメントロスしそうという危惧もあります。僕だけですかね? 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

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