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[4]訪問看護における優先業務・重要業務について考えてみよう

この連載では「訪問看護BCP研究会」の発起人のお一人、日本赤十字看護大学の石田千絵先生に訪問看護事業所ならではのBCPについて解説していただきます。今回は、BCP策定において悩むことの多い、優先業務・重要業務の選定について具体的に教えていただきます。

【ここがポイント】
・優先業務・重要業務は、手順を踏んで検討することで選定が可能です。
・その手順とは、平常業務をリストアップし、業務トリアージ(被災時の「継続」「縮小」「中断」)を行います。そして、業務トリアージで「継続」となった業務を優先業務・重要業務と考えます。

第4回は「優先業務・重要業務の選定」を中心に学んでいきたいと思います。全国訪問看護事業協会が作成した「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」の「1.総論」にある「優先業務の選定」の部分です。

ひな形の例では、「優先業務は、訪問看護ステーションの存続に関わる最も重要性・緊急性の高い事業のことで、訪問看護ステーションの場合は、訪問看護業務になる。訪問看護業務の再開の判断基準の検討、訪問看護利用者の中で優先する順位の検討、目標復旧時間を検討しておく」1)と記されています。

このひな形の例は、2021年度末に、私が所属しているBCP研究会メンバーが作成したものですが、現在はもっと具体的、かつわかりやすく示せるようになりました。当時は、訪問看護事業所の業務を「訪問看護業務」とだけ記載していましたが、そのほかにも重要な業務があります。現在は、ワークシートを使って、平常業務や業務の内容、リソースの把握、対応を検討することで、すべての業務から継続すべき業務(優先業務・重要業務)を選定する方法をBCP研究会では提案できるようになりました。では、その方法を以下でご紹介いたします。

優先業務・重要業務の選定の手順

①平常業務をリストアップする

まず、表1のワークシートを用いて平常業務をリストアップしましょう。このワークシートにはBCP研究会メンバーのケアプロ株式会社の例を示していますので、参考になさるとよいと思います。

具体的には「訪問看護業務」「記録業務」「請求業務」「スタッフ管理業務」「労務関連業務」「会議・委員会等業務」「物品管理業務」「地域活動業務」「経理管理業務」「その他」とあります。業務名や種類は自由に変更させてよいので、自施設の平常業務を『見える化』します。

②業務内容を記載する

次に、それぞれの業務の具体的な内容を記します。例えば、「訪問看護業務」であれば、医療ニーズの高い療養者への訪問看護や内服管理を目的とした利用者への訪問看護といった具合です。よくわからない場合は、平時に行っている具体的な業務を表に当てはめてみてください。必要時、後で見直しましょう。

③業務トリアージを行う

そして、ハザードリスクの高い災害などを想定し、発災後にこれらの業務を継続するか(継続)、縮小して継続するか(縮小)、中断するか(中断)という業務の振り分け(業務トリアージ)をします。その際、「72時間以内」「72時間~1ヵ月以内」「1ヵ月以降」の時間軸で検討し、表に「継続」「縮小」「中断」の文字を記載してください。

トリアージとはフランス語で「振り分ける」という意味です。BCP研究会では、業務の振り分けを「業務トリアージ」と呼んでいます。業務トリアージでは、発災後の大変な状況でも継続し続けないとならない業務か、縮小しながらも継続しなければならない業務なのか、一旦中断をしてもよい業務なのかを振り分けます。

発災後に振り分けることは困難ですし、事前に振り分けておくと、安心して優先業務・重要業務を後回しにせずに対応することができるようになります。また、縮小した業務や中断した業務について、3日、1週間、10日間、1ヵ月、2ヵ月といった時間軸のどこで再スタートするかなど、決めていく必要があります。これらは、「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」の「2.平常時」「3.緊急~復旧における事業継続にむけた対応」に係る内容になってきますので、この連載の第5回以降で説明をしていきたいと思います。

④優先業務・重要業務の選定

③で「継続」と選定した業務を、「優先業務・重要業務」と考えます。

表1 優先業務・重要業務の選定(ワークシート)


復旧目標の考え方

この連載の第2回で復旧目標を1ヵ月単位で考えることを推奨していますと説明したように、大規模な自然災害を想定していても、被災状況を完全に想定することは困難です。また、リソースの中でも「カネ」や「ヒト」に関する問題が1ヵ月単位で変化することがわかっていることから、今回用いている表でも、1ヵ月を目途に作成しています。みなさんの復旧目標の考え方によって、時間軸を変えてもよいと思います。

前回から実践的な内容となってきましたので、自施設に照らし合わせて作成をしながら読み進めてはいかがでしょうか? この連載が終了するころには、BCP策定を一度終えることができるだけでなく、研修や見直し(BCM)についても検討できるようになっているかもしれません。

執筆 石田 千絵
日本赤十字看護大学看護学部地域看護学 教授
 
●プロフィール
1989年聖路加看護大学(現 聖路加国際大学)卒業後、聖路加国際病院他で勤務。1995年阪神淡路大震災および地下鉄サリン事件を契機に、地域×災害に関わる教育や研究を始めた。災害の備えは「平時に自分らしく生き、かつ、社会的によい関係性を保つこと」がモットー。看護学博士。
 
「訪問看護BCP研究会」とは、2016年にケアプロ株式会社、日本赤十字看護大学、東京大学他の仲間による訪問看護×BCPに特化した研究会。毎月1~2回程度で研究や研修などを行っている。

▼訪問看護BCP研究会のホームページはこちら
 ※記録様式のダウンロードも可能です。
 
記事編集:株式会社照林社

【引用文献】
1)全国訪問看護事業協会.「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」,2020,p.12.

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