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進行性核上性麻痺(PSP)

パーキンソン病とよく似た症状がみられる難病です。高齢になってからの発症が大半です。さまざまな亜型があることが近年わかってきました。

病態

進行性核上性麻痺(PSP)は、脳の大脳基底核や脳幹、小脳などさまざまな場所の神経細胞が減少する疾患です。神経細胞などへの異常タウタンパクの蓄積が、神経症状を起こす原因と考えられています。根本の発症原因はわかっていません。
初期に、歩行障害や動作緩慢など、パーキンソン病と似た症状がみられます。

疫学

中年期以降、主に50歳代以降に発症します。有病率は人口10万人あたり10~20人程度と推測されています(※1)。20年前よりも有病率は高くなっており、新たな臨床病型が明らかになってきたこと、高齢者の増加、周知が進んだことなどが背景として考えられています。
性別による発症の男女差については報告によって異なり、一定の見解は得られていません。最近の平均発症年齢は70歳代と高齢化しています。大多数は遺伝性ではありません。

病型

近年、PSPのなかにも、さまざまな病型があることがわかってきました。そのため、典型例(RS)と他の病型(亜型)が区別されるようになりました。

●リチャードソン症候群(RS)
最も典型的で頻度が高い病型。姿勢保持障害や転倒などの運動症状と、非運動症状の認知機能障害が主にみられる。早期から転倒が多いことが特徴。

●パーキンソン病型PSP(PSP-P)
RS型の次に多い。初期は、振戦・無動などパーキンソン病と似た症状が長くみられ、転倒や認知機能障害の出現が遅い。運動症状が抗パーキンソン病薬で緩和される。

●純粋無動症型PSP(PSP-PAGF)
無動の症状、すくみ足が先行する。進行は遅い。

そのほか、失行・失語が主症状の病型や、認知機能の症状のみが出る病型など、いくつかの病型があることが明らかになっています。

症状

易転倒、眼球運動障害、認知機能障害など、さまざまな症状が現れます。以下はRS型の症状を中心に説明します。

●運動症状
初期に現れることが多いのが、易転倒、すくみ足、姿勢保持障害です。
病状の進行とともに、体幹や頸部がこわばり、頸部後屈がみられます。
眼球運動が障害され、特に下方を見ることが困難になります。眼球運動障害は発症2~3年後に出現することが多く、最初は上下の方向の障害で、進行すると左右方向の動きも障害されます。

●非運動症状
認知機能の障害は、多くは発症から1~2年後に出現します。
初期から、目の前にある物に手を伸ばしてつかむ動作が特徴的です。転倒・転落につながるため、環境整備に注意を払う必要があります。危険に対する判断力や注意力が低下し、状況判断ができずに行動してしまうこともあります。

構音障害などさまざまな言語障害のほか、嚥下障害もみられ、中期以降は誤嚥性肺炎にも注意が必要です。

治療法

根本的な治療法はまだなく、対症療法とリハビリテーションを併用します。動作緩慢や筋肉の緊張など運動症状に抗パーキンソン病薬が使用されますが、効果は限定的・一時的です。

リハビリのポイント

●発症初期から長期的にかかわり、障害に応じたリハビリを実施していく
●頸部や体幹のストレッチ、筋力の維持、バランスをとる訓練
●嚥下訓練
●言語訓練
●目の前にあるものをつかむといった行動特性をふまえ、転倒予防のため室内環境を整備する
●嚥下障害が進行すると経管栄養法の導入も検討される。本人の判断力低下で意思確認が困難になる前に、本人の意向やQOLなどについて話をしておく

看護の観察ポイント

●症状の変化、その程度
●転倒の頻度、けがの有無
●療養環境に転倒リスクとなるものがないこと
●家具の角への緩衝材、保護帽などの対策本人の目に見えるところに気を引くものが置かれていないこと
●余裕を持ってトイレに誘導する
●視野に入っていない範囲の把握・対応はできているか
●嚥下障害の有無
●食事量
●本人と家族・本人と支援者とのコミュニケーション
●ベッドにいる時間が長い場合、褥瘡など皮膚の変化の有無
●座位などで過ごす時間をとれているか
●家族の介護力
●本人 ・家族が不安やストレスを抱えていないか

など

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監修:あおぞら診療所院長 川越正平

【略歴】
東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。

記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】
※1 進行性核上性麻痺(PSP)診療ガイドライン2020作成委員会編(2020)『進行性核上性麻痺(PSP)診療ガイドライン2020』,神経治療学,37(3), pp.435-93.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/37/3/37_435/_pdf/-char/ja

・難病情報センター『進行性核上性麻痺(指定難病5) 病気の解説(一般利用者向け)』
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4114

・平成28年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「神経変性疾患に関する調査研究」班(2017)『進行性核上性麻痺(PSP ) ケアマニュアルVer.4』
http://pspcbdjapan.org/index.htm/want_to_learn/download/

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