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後縦靱帯骨化症

後縦靭帯骨化症は、椎体を覆う後縦靭帯が骨化してしまうことで、脊柱管が狭窄し、神経が圧迫される難病です。

病態

後縦靭帯とは、脊椎の後面を覆う靭帯です。頸椎・胸椎・腰椎・仙骨・尾骨とつながる脊椎は、椎骨がつながったものですが、椎骨をつなげて安定させているのが靭帯です。
椎骨を覆う靭帯は前縦靭帯と後縦靭帯があり、前縦靭帯は椎骨の前面を、後縦靭帯は椎骨の後面を縦走しています。

後縦靱帯骨化症は、その後縦靱帯が骨化して、硬く、肥大してしまう難病です。骨化のために、脊柱管狭窄をきたし、脊髄が圧迫され、神経症状が出ます。

脊椎は、頸椎、胸椎、腰椎に分けられますが、後縦靱帯骨化症は特に頸椎で多く生じます(頸椎後縦靱帯骨化症)。

原因として、遺伝的素因やホルモンの異常、カルシウム代謝異常、糖尿病、肥満傾向、全身的な骨化素因、骨化部位における局所ストレスなど、さまざまな要因が考えられていますが、はっきりしていません。
家族内での発症例が多く、兄弟間では約30%の確率で靱帯骨化症がみられるとの報告もあり、遺伝との関連が指摘されています。ただ、血縁者に必ず遺伝するわけではなく、さまざまな要因のかかわりが推測されています。

疫学

中年以降の発症が多く、男女比は2対1と男性の頻度が高くなっています。また、糖尿病や肥満があると、後縦靱帯骨化症の発生頻度が高いことがわかっています。

日本人においては、後縦靱帯骨化症の発生頻度が、欧米や他のアジア諸国に比べて高いことが示されています。ただし、X線検査で骨化がみられても、その全員に症状が出るわけではありません。

2019年度末時点の後縦靭帯骨化症での受給者証所持者数は、約3.2万人です。40~50歳代で増えはじめ、75歳以上が約1.3万人と多数を占めます。

症状・予後

頸椎の後縦靱帯骨化症では、初期症状は、多くは上下肢のしびれ・痛みです。進行に伴って、しびれ・痛みの範囲が広がります。症状は、四肢の感覚障害、歩行障害、巧緻運動障害へ進行します。重症になると、起立・歩行障害のほか、膀胱直腸障害(排尿・排便障害)が生じることもあります。

胸椎の後縦靱帯骨化症では、下肢の脱力・しびれが初発症状です。主に体幹~下半身に生じます。重症になると、頸椎後縦靱帯骨化症と同様の症状になります。

腰椎後縦靱帯骨化症は、歩行時の下肢痛みやしびれ、脱力などです。

これらの症状は必ず悪化していくとは限らず、半数以上の人では数年経過しても症状は変化しません。一方、進行性の場合は、手術が必要になることもあります。

なお、室内での転倒など、軽微な外傷をきっかけにした発症や、急な増悪がみられることがあります。

治療・管理

保存治療

圧迫されている神経の保護を目的として、患部を安静保持する装具固定が行われます。

対症療法として、しびれ・痛みに対して、神経障害性疼痛治療薬(抗けいれん薬、抗うつ薬、ステロイドなど)が使用されることがあります。

手術治療

症状が重度または進行性の場合は、脊柱管を広げて圧迫を除く目的で、手術治療が選択されます。

リハビリテーションのポイント

首や手足のストレッチなどの運動療法は、血行改善や痛みやしびれ感の軽減、筋力の維持などによいとされます。しかし、筋肉・関節を痛める危険性もあるため、専門医の指示のもと実施することが求められます。
カイロプラクティックやマッサージなど民間療法の有効性は確立されておらず、合併症の報告もみられており、推奨されていません。

看護の観察ポイント

手足のしびれ感の悪化や手足の動きのぎこちなさ、排尿状態の変化などが生じた場合、悪化の可能性があるので、早めに専門医の受診を促します。また、転倒などでも脊髄症状が悪化し、重度の麻痺が起こるリスクがあるため、日常生活での注意点を伝えます。室内や庭先など慣れた場所ほど、健康な人でも油断から転倒するリスクが高まるので、この病気を発症した人はいっそう慎重に行動することが求められます。

●頭や首に衝撃を与える首の運動や、転倒・転落は悪化の原因となることを、患者に説明し日常生活指導を行う
●転倒しないように室内環境を整備する
●自転車やバイクなど転倒リスクのある移動手段を利用しない
●装具の日常使用に関しては医師や理学療法士への相談を促す
●頸椎後縦靱帯骨化症では、首を後ろに反らせる姿勢は避けるよう指導する
など


監修
あおぞら診療所院長 川越正平

【略歴】
東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。
 
記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】
〇日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/脊柱靱帯骨化症診療ガイドライン策定委員会編.『脊柱靱帯骨化症診療ガイドライン』東京,南江堂,2019,104p.
〇難病情報センター.『診断・治療指針(医療従事者向け)』『後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)』https://www.nanbyou.or.jp/entry/257
〇難病情報センター.『病気の解説(一般利用者向け)』『後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)』https://www.nanbyou.or.jp/entry/98
〇厚生労働省.『難病・小児慢性特定疾病』令和元年度衛生行政報告例.2021-03-01. 

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