特集

在宅訪問管理栄養士が支える地域の栄養

新宿区一帯で在宅ケアを提供している事業所の有志が集まった「新宿食支援研究会」。「最後まで口から食べる」をかなえるために、日々、多職種での支援を実践しています。本研究会から、各職種の活動の様子をリレー形式で紹介します。第3回は、管理栄養士の稲山未来さんから、在宅訪問管理栄養士の活動を紹介します。

単独で在宅訪問する管理栄養士の仕事

皆さんは在宅の患者さん・利用者さんの栄養課題に気づいたとき、また食や栄養について相談を受けたとき、どのように対応していますか?

訪問看護事業所における食事・栄養支援状況の調査1)によると、回答が得られた事業所のうち、「利用者から食事・栄養相談を受けたことがある」と答えた事業所は100%、その相談に「その場で即答できる」としたのは約30%、即答できない場合の対処法としては、「同僚看護師に相談」「インターネットで検索」が上位を占め、「管理栄養士に相談」と返答した事業所はわずか18%でした。

管理栄養士としては少し寂しい結果ですが、この結果は、管理栄養士が訪問看護事業所と連携することで、いっそう利用者さんに貢献できることを示唆しているように感じます。

訪問看護師のみなさんには、「訪問管理栄養士に相談する、そして依頼をつなぐ」という方法があることを、ぜひ覚えておいていただければ嬉しいです。

在宅訪問栄養食事指導

在宅訪問栄養食事指導とは、在宅に訪問し、利用者の栄養食事指導を行うサービスのことです。利用者の状況によって、医療保険または介護保険(介護保険では居宅療養管理指導)で支援を行うことができます。

対象となるのは、栄養学的な課題をかかえている人です。糖尿病や腎臓病などの慢性疾患に対して管理が必要な人、低栄養状態、摂食嚥下障害の人が挙げられます。

どのように介入が始まるか

在宅訪問栄養食事指導の介入依頼は、居宅介護事業所のケアマネジャーからの場合が多いですが、訪問看護師から依頼されることもあります。私は歯科医院に勤務しているので、所属先の歯科医師から依頼を受けることもあります。

管理栄養士が行う栄養指導については、療養上の管理を行う主治医から指示を受けるルールです。ですから、依頼があれば、まずは主治医に栄養介入の必要性があるかを確認し、指示栄養量や病歴などの情報を得てから介入がスタートします。

具体的にどんな介入をしているの?

多く受ける依頼は、体重減少傾向の高齢者に対して栄養強化をしてほしいという内容です。補助食品の選定、また家族やヘルパーへの買物・調理指導、献立の提案など、その人の課題や生活環境に合わせた支援を行います。

また、歯科医師からは、摂食嚥下障害がある人への嚥下調整食指導の依頼が多いです。嚥下調整食の指導では、調理を担当される人に、適切な嚥下調整食の調理ポイントをお伝えします。

これら以外にも、糖尿病や腎臓病、脂質異常症など、対象となる疾患は多岐にわたります。共通していえることは、いつまでも食を楽しむための環境調整を行っているという点です。

家族への嚥下調整食指導の様子(左側のテーブル手前に利用者さんが在席中)
嚥下機能確認のため嚥下音の確認

管理栄養士介入のメリットって何?

管理栄養士の介入によるいちばんのメリットは、利用者の栄養状態が改善することによるQOL向上です。実際に多くの事例で栄養状態が改善し、体重が増加するなどの効果が出ています。

また、それだけではなく、関連職種にとっても良い効果があります。

前述したように訪問看護師からは食事・栄養相談を受ける機会が多いですが、訪問時間は限られていますよね。特に在宅高齢者においては栄養課題がさまざま、解決を妨げる障害もさまざまで、対応には想定以上に時間がかかってしまうものです。食や栄養の課題には管理栄養士の手を借りることで、看護師は看護ケアに専念できるのではないでしょうか。

たとえば嚥下調整食の指導などに関しては、管理栄養士であれば、家族やヘルパーの調理時に同席して、調理実演を行うことができるので、より効率的かつ的確に指導を行うことが可能です。

訪問看護師との連携例

あるとき私は、歯科医師から、進行性難病で摂食嚥下障害を持つ人への介入を依頼されました。

その人は、摂食嚥下障害のため、経鼻経管栄養で栄養補給を行っていましたが、歯科医師の介入で摂食嚥下機能が改善してきていました。歯科医師から、一日1回の経口摂取を始めましょうと指示が出たことにより、まずは昼食の提供が始まりました。

ヘルパーが作り置きした料理を、訪問看護師が見守るもとで、本人が自己摂取します。経口摂取開始当初は刻み食を召し上がっていましたが、やがて咀嚼機能が改善し、ペースの配慮さえすれば常食を摂取できるようになりました。

ここで課題になってくるのは、どのくらいの量を食べてよいのかということです。経口摂取は昼食のみの一日1食のため、経鼻経管栄養も継続中です。

管理栄養士は主治医と連携をとり、低栄養傾向であるその方に対しては、徐々に体重増加を目指せるような目標エネルギー量を設定し、栄養剤で不足する分を経口から摂取する方針となりました。経口での摂取エネルギー量は一食あたり400~500kcalを目安に、それ以上食べられるようになったら、経管栄養剤を減量するという対応です。

その方針を、本人やご家族、訪問看護師にも伝えます。管理栄養士は、食事時間に訪問看護師とともに同席し、ご自身のふだんの食器を使って、400~500kcalの食事がどの程度の量なのかをお伝えしました。いつも同じ食器に同じくらいの量を盛り付けることで、目標エネルギー量に均一化できます。

看護師との連携により、経口摂取による目標エネルギー量を安定して充足できたため、ご利用者様の体重は徐々に増加し、栄養状態も改善に向かいました。

ある日の昼食

新宿食支援研究会から学ぶ多職種連携

多職種連携において大切なことは、チームメンバーの仕事と役割を知ることだと考えています。

新宿食支援研究会には、食支援にかかわる人が、一般・専門職問わず多く在籍しています。同一職種が集まり専門性を高めあうスタディグループもあれば、多職種でお互いの事例相談を行うグループもあります。

意見交換により他の職種が抱える課題を知ることは、自分の専門性を生かすポイントを見つけるきっかけにもなります。そして自分自身にとっては、困ったときに誰に何を相談すべきなのかが明確になるので、より円滑なチーム連携につながります。

どのように管理栄養士と連携するのか

在宅訪問管理栄養士は地域によってはまだまだ少なく、「連携をしようと思ってもどこにいるのかわらない」という声を頂くことがあります。そんな場合は、活動地域の都道府県栄養士会に問い合わせてみてください。都道府県栄養士会は訪問管理栄養士の情報を多く持っているので、訪問可能な管理栄養士を探すことができます。

訪問看護師と管理栄養士の連携はまだまだ少ないですが、よりよい連携が増えることを期待したいですね!

第4回へ続く

執筆
稲山未来(管理栄養士)
ふれあい歯科ごとう所属・新宿食支援研究会
 
記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】
1)東本恭幸ほか.在宅医療における食事・栄養支援の現状と課題:訪問看護事業所への質問用紙調査から. 『日本在宅医療連合学会誌』1(1),2019,22-30.

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