コラム

管理者に必要な「自己効力感」とは

この連載は、訪問看護ステーションで活躍するみなさまに役立つコミュニケーションのテーマを中心にお届けします。第4回は、「自分ならうまくできる」と思える、自己効力感のお話です。

うまくできる!と思える力

チーム運営をするときに、誰もが「明るく前向きなチームにしたい」と思います。しかし、実際にやってみると「うちのメンバーはネガティブな人が多くて、前向きなコミュニケーションがとりにくい」と思うことがあるかもしれません。そんなときはコミュニケーションの方法だけではなく、メンバーの「自己効力感」にも目を向けてみましょう。

自己効力感とは「自分がどんな状況に置かれても適切な行動がうまくできる予測、および確信」のことをいいます。社会的学習理論アプローチとして、カナダの心理学者アルバート・バンデューラが唱えたものです。

自己効力感が高い人

どんな逆境においても最後の最後まであきらめず勝利を狙うスポーツの世界では、ときどきそんな姿を見ることができます。

ピンチに強い人、チャンスに強い人、どちらも自己効力感の高い人です。自分は絶対にこのピンチを乗り越えられる、このチャンスをモノにできる! そんな人が率いるチームは、最後まであきらめなくなります。だから奇跡の大逆転が起こったりするのです。

自己効力感が低い人

一方、自己効力感が低い人はどうなるか。ものごとにうまく対処できる自信がないため失敗をイメージしてしまい、そのとおりになってしまう。

チャンスが来ても「どうせうまくいくはずがない」と勝手に失敗をイメージする。ピンチがくると「ほら、やっぱりここでやられてしまう」と、これまた失敗や負けをイメージしてしまう。

自己効力感は持って生まれたもの?

みなさんはいかがでしょうか。どちらの面もあるのではないでしょうか。

先天的に自己効力感を高く持っている人もいます。根拠のない自信のある人もいます。こういう人がいちばん強い。何があっても「たぶん大丈夫」って人。本人もよくわからないけど「うまくいく感じがする」って人。

これは、ある種のメタ認知能力かもしれません。たとえば運動能力の高い人は、初めてチャレンジする種目でもそこそこ良い結果を出したりします。そんな人が、仕事でもいきなり結果を出したりします。それこそ天性ですね。

しかし、そうではない人もいます。でも安心してください。自己効力感は育てられるのです。

自己効力感を育てるには

自己効力感を高められない理由は大きく二つです。

一つは「自分の過去」です。いつまでも過去の失敗を忘れられない。また失敗するのではないかと恐れる。人間の体は不思議なもので、頭でイメージすると体もそのとおりに動くようにできているのだそうです。

子どものころ自転車に乗りはじめたときに、「コケる」と思ったら本当にコケたことはありませんか。スキーであっちのほうに行ってはいけないと思ったら、なぜかそっちへ行ってしまった経験はありませんか。それです。

もう一つは「他人との比較」。どうしても他人と比べてしまう自分がいます。自分がうまくいっているときでも「きっと他人はもっとうまくいくだろう」とか「私なんてあの人に比べたら」と勝手に考えて自滅してしまうなんてことがありませんか。

そんなときに思い出してほしい、心理学者エリック・バーンが言った有名な言葉があります。

「過去と他人は変えられない。変えられるのは未来と自分だけ」

きっとどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。

ではどうやって未来と自分を変えていけばよいのか。先ほど「人はイメージをすると体もそれに反応して動く」と言いました。それをプラスに活用するのです。成功をイメージすれば、体も成功するように動いていきます。

「それができれば苦労はない!」と思うかもしれません。次回は、その方法をもう少し深掘りしていきます。

松井貴彦・まついたかひこ ライフキャリアコンサルタント

NPO法人いきいきライフ協会理事、一般社団法人看護職キャリア開発協会所属。
1962年生まれ。同志社大学文学部心理学専攻卒(現心理学部)卒。出版社にて求人広告制作(コピーライター、ディレクター)、就職情報誌編集者、編集マネジャー。その後、医療・看護系出版社、関連会社の代表取締役など歴任。
国家資格キャリアコンサルタント、GCDF-Japanキャリアカウンセラー(米国CCE, Inc.認定のキャリアカウンセラー資格)。自分史アドバイザー。YouTubeは「松井貴彦まっチャンネル」で検索。
 
記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】
〇Albert Bandura.本明寛ほか翻訳.『激動社会の中の自己効力』東京,金子書房,1997,368p.
〇安部朋子.『ギスギスした人間関係をまーるくする心理学:エリック・バーンのTA』大阪,西日本出版社,2008,228p.

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