学校だけがゴールではない─不登校支援と訪問看護師のケアマネジメント

不登校支援において、訪問看護師はどのような役割を担えるのでしょうか。家庭と学校・福祉をつなぐ多機関連携の実践と、訪問看護師が果たすケアマネジメント機能についてお伝えします。
不登校支援における訪問看護師の立場
ショートケーキ訪問看護ステーションは、東京都豊島区、板橋区、北区を中心に、発達障害や不登校など、生きづらさを抱える子どもと家族を対象とした児童精神科訪問看護を提供しています。
私たちは家庭という生活の場で子どもや家族と関わりながら、医療だけでなく教育や福祉とも積極的に連携し、その子らしく成長できる環境づくりを支援しています。学校訪問や支援者会議への参加、関係機関との情報共有も日常的な実践の1つです。
近年、不登校児童生徒数は増加し続けています。その背景には発達障害や精神的な不調、家庭環境の課題、友人関係の悩みなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。そのため、不登校支援は学校だけで完結するものではなく、家庭、医療、福祉、地域資源など、多くの関係者が連携しながら支援を行うことが求められています。
児童精神科領域の訪問看護に携わる中で、私は「子どもを支援する」というよりも、「子どもを取り巻く環境全体を支援する」という感覚を持つことが少なくありません。特に不登校支援においては、多機関連携をどのように進めるかが支援の質を大きく左右すると感じています。
今回は、ショートケーキ訪問看護ステーションでの実践を通して感じている多機関連携と訪問看護師のケアマネジメントについてお伝えしたいと思います。

学校と家庭をつなぐ情報共有
当ステーションでは、保護者の同意を得たうえで学校へ情報提供書を送付しています。担任やスクールソーシャルワーカー、特別支援教育コーディネーターなどと、定期的な情報共有やカンファレンスも行っています。
訪問看護師は家庭という生活の場に入るため、子どもや保護者から日常の様子を直接聞くことができます。
例えば、
「昨夜、両親とのトラブルがあり気持ちが不安定になっている」
「友達とけんかをしたが仲直りはできた。しかし本人はまだ不安を抱えている」
「睡眠が乱れており朝から活動することが難しい」
といった情報は、家庭で関わる訪問看護師だからこそ把握できる内容です。
一方で学校には、
「今日は朝から表情が硬かった」
「授業中に集中が続かなかった」
「休み時間は一人で過ごしていた」
など、家庭では見えない子どもの姿があります。
どちらも子どもの状態を理解するために重要な情報ですが、それぞれが独立して存在しているだけでは十分な支援にはつながりません。訪問看護師が学校と家庭の間に入り、双方の情報を整理しながら共有することで、支援者全体の目線を合わせることができます。
実際に行った支援者会議では、担任の先生から次のような言葉がありました。
「学校は楽しいところだよって本人に知ってもらいたいんです。来てくれたらたくさん楽しませたいと思っています。でも、そのための手立てが分からなかったんです」
家庭では本人の不安や悩みを聞くことができても、その情報が学校へ十分に伝わっていないことがあります。一方で学校側も、子どもを支えたいという思いを持ちながら、どのように関わればよいか悩んでいることがあります。
家庭での様子や本人の思いを共有したことで、学校側からは「子どもへのアプローチの選択肢が増えたことが嬉しい」という声が聞かれました。
この経験を通して、多機関連携の目的は支援者を増やすことではなく、子どもを理解する視点を増やすことなのだと改めて感じました。
子どもの居場所を増やすという視点
不登校支援では、「学校へ行けるようになること」が目標として語られることがあります。しかし、私たちが目指しているのは単純な登校ではありません。大切なのは、子どもが安心して過ごせる場所を増やしていくことです。
自宅だけでなく、
- 学校
- 保健室
- 別室登校
- 教育支援センター
- 放課後等デイサービス
- フリースクール
- 習い事や地域活動
など、本人が安心して過ごせる居場所を確保しながら、その子のペースに合わせた学習や社会参加の機会を整えていくことが重要です。
実際に、学校への登校は難しくても、放課後等デイサービスへ通うことが外出のきっかけになる子どもがいます。また、フリースクールが新たな学びの場となり、自信を取り戻していく子どももいます。
私たちは「学校へ戻すこと」をゴールにするのではなく、その子が安心して過ごせる場所を1つでも増やし、その子らしい社会とのつながり方を一緒に探していくことを大切にしています。

訪問看護師が担うケアマネジメント
成人領域では、介護支援専門員が支援全体を調整する役割を担っています。
一方、児童領域では事情が異なります。
障害福祉サービスを利用している場合には、計画相談支援事業所の相談支援専門員がケアマネジメントを担います。しかし、不登校の子どもの中には放課後等デイサービスや移動支援などの障害福祉サービスを利用しておらず、相談支援専門員が関与していないケースも少なくありません。
その場合、学校との調整、医療との連携、福祉サービスの導入検討、地域資源とのつながりづくりなど、多くの役割を保護者が担うことになります。
しかし、不登校が長期化すると、保護者自身も疲弊し、十分に調整役を担うことが難しくなることがあります。
そのような場面で訪問看護師は、子どもや保護者の思いを整理し、学校や医療機関、児童相談所、福祉機関へつなぎ、必要に応じて支援者会議を開催します。
また、放課後等デイサービスやフリースクール、教育支援センターなどの地域資源を紹介し、子どもや家族と一緒に新たな選択肢を検討することもあります。
制度上、訪問看護師はケアマネジャーではありません。しかし実践の中では、以下のコーディネーターとしての役割を担っています。
- 支援者同士をつなぐ
- 情報を整理する
- 支援の方向性をそろえる
私は、このケアマネジメント機能こそが、児童精神科領域における訪問看護師の大きな特徴の1つであると感じています。
訪問看護師が担う橋渡しの可能性
不登校支援は、1つの機関だけで完結するものではありません。
家庭、学校、医療、福祉、そして地域の多様な居場所がつながることで、初めて継続的で安定した支援が実現します。
訪問看護師は家庭に最も近い専門職の一人として、子どもと家族の思いを受け止めながら、多機関をつなぐ橋渡し役を担うことができます。
学校に行けることだけがゴールではありません。
子どもが安心して過ごせる場所を1つでも増やし、その子らしいペースで成長していける環境を整えること。そのために今後も、多機関連携とケアマネジメントを大切にした実践を続けていきたいと思います。
| 執筆:齋藤 透 ケアプロ株式会社ショートケーキ訪問看護ステーション リーダー 日本赤十字看護大学大学院 地域看護学領域 専門看護師コース修了 ![]() 児童精神・発達支援・不登校支援を中心に活動。 「学校に行かせること」だけをゴールにせず、家庭という生活の場から、親子関係や安心感、人とのつながりを支えることを大切にしている。 ゲームや好きな話題を通した関係形成、親子間の感情整理、学校連携などを得意としている。 |
編集:NsPace 編集部
【参考】
〇文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」
https://www.mext.go.jp/content/20260305-mxt_jidou02-100002753_3.pdf
2026/6/25閲覧
