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マイコプラズマ肺炎の症状や対策・ワクチンについて
マイコプラズマ肺炎の症状や対策・ワクチンについて
特集
2024年4月23日
2024年4月23日

中国のマイコプラズマ肺炎感染拡大の影響は? 症状や対策・ワクチンについて

2023年の11~12月頃にかけて、中国でマイコプラズマ肺炎が拡大しているとの報道がありました。しかし、日本への影響や対策方法、ワクチンなどについての情報は十分に提供されていません。中国のマイコプラズマ肺炎の感染拡大の状況や日本への影響、症状や対策、ワクチンなどについて、現時点でわかっている情報を整理して解説します。 ※本記事は2024年3月時点の情報をもとに作成しています。 中国でマイコプラズマ肺炎が流行 マイコプラズマ肺炎は、咳や発熱、倦怠感などの症状が現れる感染症です。 中国では、マイコプラズマ肺炎やRSウイルス感染症、インフルエンザなどの各感染症が小児を中心に流行し、感染者数が増加しました。これは寒い季節の到来に加え、新型コロナウイルス感染症における感染対策が解除された影響と考えられており、2023年11月時点では、新しい感染症や異常な臨床所見はなく、予想外の事態ではないと報告されています。 中国からは多くの観光客が来日するため、日本での感染拡大も懸念されていますが、2024年3月時点では大きな影響は起きていません。ただし、状況は日々変化するため、マイコプラズマ肺炎の感染状況については随時確認が必要です。 マイコプラズマ肺炎の原因 原因菌は? マイコプラズマ肺炎の原因菌は、マイコプラズマ・ニューモニアという細菌です。全年齢で感染する可能性があるものの、その中心となるのは幼児期から20歳程度までです。また、季節性があるとされ、秋から冬にかけて増加します。 マイコプラズマ肺炎は特に小児に多いとされていますが、肺炎に至らず気管支炎症状で済むこともあります。肺炎になったとしても、比較的症状が軽いという報告もありますが、一部の人は重症化する可能性があるため注意が必要です。また、終生免疫を獲得できないため、過去にかかった場合でも再び感染する可能性があります。 感染経路は? 感染者の咳やくしゃみに含まれる細菌による飛沫感染、患者が細菌の付着した手でものに触れて、それに触れた人が手を口や鼻に触れることによる接触感染があります。 マイコプラズマ肺炎の症状 マイコプラズマ肺炎は、2~3週間と長い潜伏期間を経て発症するため、気づかないうちに多くの人にうつしてしまうことから「歩く肺炎」とも呼ばれています。初期症状は発熱や倦怠感、頭痛などで、症状が現れてから3~5日後に乾いた咳(乾性咳嗽)がみられるのが特徴です。咳は次第に強くなり、解熱してからも3~4週間程度続くことがあります。脳炎や無菌性髄膜炎、中耳炎などを合併する可能性があります。 マイコプラズマ肺炎の治療法 マイコプラズマ肺炎には抗菌薬が有効とされており、マクロライド系が第一選択薬です。また、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌薬も有効とされていますが、小児や妊婦への投与は原則禁忌となっています。マイコプラズマはほかの細菌とは異なり細胞壁を持たないため、一般的に使用されるペニシリン系やセフェム系などの細胞壁合成を阻害する抗菌薬は効果がありません。また、発熱や頭痛などを軽減するために解熱鎮痛剤を使用したり、咳嗽や喘鳴を伴う場合は去痰薬や鎮咳薬が処方されたりします。 マイコプラズマ肺炎の診断では胸部X線検査やCT検査を使用するほか、原因菌に感染すると体内でマイコプラズマ抗体が作られるため、血液検査が診断に役立ちます。そのほか、喉の奥の粘液を用いて原因菌の有無を調べる迅速検査も可能です。所要時間は10~30分程度と短いため、気になる症状がある場合は相談してみてもよいでしょう。 マイコプラズマ肺炎のワクチン・予防法 マイコプラズマ肺炎を予防するワクチンは現状存在しません。飛沫感染や接触感染によってうつるため、手洗い・うがい、マスク着用などの予防が基本です。外から帰ってきたときは手洗い・うがいをして、なるべく早く細菌を排除しましょう。また、潜伏期間が長いため、たとえ目立った症状がなかったとしてもすでに感染している可能性があります。 咳やくしゃみをする際はマスクやティッシュで口や鼻を覆い、周囲に飛沫が広がらないようにすることも重要です。また、使用したティッシュはすぐに捨てて、手を洗いましょう。細菌がついた手で周囲のものに触れると、接触感染につながる可能性があります。 マイコプラズマ肺炎に限らず、感染症は保育施設や学校、職場などの集団施設内や家庭内で広がりやすいため、集団感染に注意が必要です。 * * * マイコプラズマ肺炎は小児や若い人の肺炎の原因のひとつですが、有効な抗菌薬が一般的な細菌性肺炎とは異なるため、改めて特徴を理解しておくことが大切です。中国での感染拡大の影響は今のところ大きくはありませんが、常に感染リスクはあるものと考えて、基本的な感染症対策を徹底しましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士。「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇NIID国立感染症研究所「中国で小児を中心に増加が報じられている呼吸器感染症について」https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-lab/2521-cepr/12382-china-respirtatory.html2024/3/5閲覧〇東京都感染症情報センター「マイコプラズマ肺炎 Mycoplasma pneumonia」https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/mycoplasma/2024/3/5閲覧

2024年度診療報酬改定 ポイント解説/24時間対応体制加算&訪問看護処遇改善
2024年度診療報酬改定 ポイント解説/24時間対応体制加算&訪問看護処遇改善
特集
2024年4月16日
2024年4月16日

2024年度診療報酬改定 ポイント解説/24時間対応体制加算&訪問看護処遇改善

今回から、診療・介護・障害福祉サービスの各報酬にかかる、個別の改定ポイントを取り上げます。前回の「全体像 ポイント解説」でも述べた課題への対応に向け、訪問看護ではどのような改定が行われたのでしょうか。まずは診療報酬での改定から取り上げます。 >>トリプル改定 全体像 ポイント解説についてはこちら 2024年度トリプル改定(診療・介護・障害福祉報酬改定)の全体像 ポイント解説 医療・介護・障害福祉の各分野が直面する(1)高齢化に伴うニーズの多様化、(2)賃金水準向上と人手不足、(3)現場業務の効率化を図るためのDXという3つの課題。この課題に総合的に対応したのが、訪問看護管理療養費における「24時間対応体制加算」の見直しです。同加算を再編して評価を手厚くし、さらに「看護業務の負担軽減の取組」を評価した高単位の区分を設けました。 「24時間対応体制加算」は報酬を引き上げ2区分に 本改定では、24時間対応体制への評価は以下のように2区分に見直されました。 イは「24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組を行っている場合」、ロは「それ以外の場合」です。イの業務負担軽減の取り組みは以下の6項目です。そのうち、a・bのいずれかを含む2項目以上を満たしている必要があります。 看護業務の負担軽減の取り組み(届出基準通知)a.夜間対応した翌日の勤務間隔が確保されているb.夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)までc.夜間対応後の暦日の休日が確保されているd.夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫がなされているe.ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減がなされているf.電話等による連絡・相談を担当する者への支援体制が確保されている 連絡・相談対応のための担当者配置に特例 24時間対応では、利用者・家族からの相談対応や連絡の体制確保に向けた担当者の配置が必要です。ここでも、事業所の保健師や看護師(以下、看護師等)の「業務負担の軽減」から、サービス提供体制が確保されていれば、看護師等以外の職員を担当としても差し支えない特例が設けられました。 ただし、以下の6つの条件をすべて満たすことが必要です。 ●看護師等以外の担当者が利用者・家族からの連絡・相談に対応する際のマニュアルが整備されていること●緊急の訪問看護の必要性の判断を、保健師や看護師が速やかに行える連絡体制および緊急の訪問看護が可能な体制が整備されていること●事業所の管理者は、看護師等以外の担当者の勤務体制および勤務状況を明らかにすること●看護師等以外の担当者は、電話等により連絡・相談を受けた際に保健師や看護師へ報告すること。報告を受けた保健師や看護師は、その報告内容等を訪問看護記録書に記録すること●上記4項目について、利用者・家族に説明し、同意を得ること●事業者は、看護師等以外の担当者に関して地方厚生(支)局長に届け出ること(様式あり) 訪問看護の処遇改善に「訪問看護ベースアップ評価料」 24時間対応体制などを機能させる上で、先のような「特例」もさることながら、やはり保健師・看護師の確保が欠かせません。そのためには処遇改善が何より重要です。 訪問看護の処遇改善において、カギとなるのは毎月決まって支払われる賃金を引き上げること、つまりベースアップです。これについては改定前から「看護職員処遇改善評価料」が設けられていましたが、訪問看護の職員は対象とはなっていませんでした。 そこで、訪問看護職員にも手厚いベースアップが図れるような加算「訪問看護ベースアップ評価料」が設けられたのです。 ベースとなる加算Ⅰに上乗せとなる加算Ⅱ 訪問看護ベースアップ評価料は、2段階で構成されます。基本はⅠで、給与総額の1.2%増が目指されます。ただし、小規模ゆえにⅠだけでは1.2%増が達成できない場合に、Ⅱが上乗せされます。 処遇改善の対象は、訪問看護に従事する職員(リハビリ職や看護補助者含む)で、事務作業専属の職員は含まれません。ただし、看護補助者が訪問看護に従事する職員の補助として事務作業を行うケースは対象となります。また、訪問看護に従事する職員の賃金が2023年度との比較で一定以上引き上げられた場合には、事務作業専属の職員の賃金改善にあてることができます。 職員の賃金改善にかかる計画作成などが要件 Ⅰ・Ⅱに共通する算定要件は以下のとおりです。 算定要件(Ⅰ・Ⅱともに共通の要件を抜粋)1.2024年度・2025年度の職員の賃金改善にかかる計画を作成していること2.2024年度・2025年度に、対象職員の賃金(役員報酬を除く)の改善(定期昇給を除く)を実施すること。ただし、2024年度分を翌年の賃金改善のために繰越す場合は、この限りではない3.2については、基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げにより改善を図ることを原則とすること4.1の計画にもとづく賃金の改善状況を、定期的に地方厚生局長に報告すること Ⅱについては、Ⅰにおいて算定される金額の見込み額が、対象者の給与総額の1.2%未満であることが必要です。介護保険での訪問看護も行っている場合は、対象者の給与総額について「医療保険の利用者の割合」を乗じた上で計算しなければなりません。 区分Ⅱはさらに18区分に細分化 具体的な金額は、以下のようになります。 Ⅱは1~18、つまり18区分あります。これは算定回数の見込みから、以下の計算式で導き出した数字により区分されます。 ※「対象職員の給与総額」は、直近12ヵ月での1月あたりの平均数値※加算Ⅱの算定回数の見込みは、訪問看護管理療養費(月の初日の訪問の場合)の算定回数を用いて計算する。直近3ヵ月での1月あたりの平均の数値を用いる 上記で導き出した「X」について、適用例は以下のようになります。 ここまでの計算が手間という場合は、厚生労働省が「訪問看護ベースアップ評価料計算支援ツール」を示しているので活用してください。 ▼ベースアップ評価料計算支援ツール(訪問看護) https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fcontent%2F12400000%2F001219494.xlsx&wdOrigin=BROWSELINK 人員不足の時代に向けた管理者「兼務」の緩和 処遇改善が進んでも、労働力人口そのものの減少下では、人員確保のハードルは上がり続けます。特に複数の事業所を設ける法人では、それぞれに管理者を配置することが難しくなることもあります。 そこで、訪問看護の管理者要件が一部緩和されました。管理者は「専従・常勤」であることが原則ですが、訪問看護ステーションの管理業務に支障がない場合に、同じ敷地や隣接の敷地内に限らず、ほかの事業所・施設の管理者や従事者を兼務できるようになりました。 なお、改定後の緩和条件として「管理業務に支障がない状態」が明確化されています。それは、ほかの事業所・施設で兼務する時間帯でも、 管理者を務める事業所において利用者へのサービス提供の場面等で生じる事象を適時適切に把握できること職員・業務への「一元的な管理および指揮命令」に支障が生じないこと です。 次回は、医療DXに関する見直しなどを取り上げます。>>次回の記事はこちら2024年度診療報酬改定のポイント解説/医療DX、既存加算の適正化 ※本記事は、2024年4月3日時点の情報をもとに記載しています。 執筆:田中 元介護福祉ジャーナリスト 編集:株式会社照林社 【参考】〇厚生労働省(2023).「令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001224801.pdf2024/4/3閲覧〇厚生労働省(2024).「令和6年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療、訪問看護)」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf 2024/4/3閲覧

HOT(在宅酸素療法)で使用されるインターフェイスや装置について
HOT(在宅酸素療法)で使用されるインターフェイスや装置について
特集
2024年4月16日
2024年4月16日

HOT(在宅酸素療法)で使用されるインターフェイスや装置について詳しく知ろう

今回はHOT(在宅酸素療法)で使用されるインターフェイスや酸素供給装置の特徴を解説します。インターフェイスによって設定できる酸素流量や酸素供給装置の種類、メリット・デメリットもまとめました。患者さんが安心・快適に酸素療法を継続できるように、適切な機種選定の参考にしてください。 在宅酸素療法(HOT)とは Home oxygen therapyの略で酸素療法を在宅で行うことを指します。その定義は「諸種の原因による高度慢性呼吸不全例、肺高血圧症の患者、慢性心不全の患者のうち、安定した病態にある退院患者および手術待機の患者、または重度の群発頭痛の患者について、在宅で患者自らが酸素吸入を実施するものをいう。」とされています1)。 ここではHOTが適応される疾患と状態、HOTで使用するインターフェイスや酸素を供給する装置について解説していきます。 HOTの適応疾患と状態 HOTの適応疾患および状態は以下のとおりとされています2)。 高度慢性呼吸不全例のうち、在宅酸素療法導入時に動脈血酸素分圧55mmHg以下の者、および動脈血酸素分圧60mmHg以下で睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症を来す者であって、医師が在宅酸素療法を必要であると認めたもの。慢性心不全患者のうち、医師の診断により、NYHA※III度以上であると認められ、睡眠時のチェーンストークス呼吸がみられ、無呼吸低呼吸指数(1時間当たりの無呼吸数および低呼吸数をいう。)が20以上であることが睡眠ポリグラフィー上確認されている症例。関連学会の診断基準により群発頭痛と診断されている患者のうち、群発期間中の患者であって、1日平均1回以上の頭痛発作を認めるもの。 ※編集部注:NYHA心機能分類についてはこちらもご覧ください。・NYHA心機能分類(NsPace用語集) HOTで使用される主なインターフェイス(表1) 酸素療法のインターフェイスには低流量システムと高流量システムがあります。在宅酸素療法で使用されるのは主に低流量システムです。ここでは低流量システムのインターフェイスを取り上げ、特徴を紹介します。 低流量システムのインターフェイスには、鼻カニュラ、簡易酸素マスク、開放型酸素マスクなどがあります(表1)。 表1 低流量システムの主なインターフェイスと酸素流量範囲と吸入酸素濃度 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 酸素療法マニュアル作成委員会、日本呼吸器学会 肺生理専門委員会編.『酸素療法マニュアル(酸素療法ガイドライン 改訂版)』,メディカルレビュー社,東京,2021:144および日本ルフト株式会社の製品カタログを参考に作成 鼻カニュラタイプ 1 鼻カニュラ鼻カニュラは経鼻的に酸素を供給するインターフェイスです。構造的には非常にシンプルで、チューブから1対のプロング(酸素の供給部)が出ており、これを鼻に装着して使用します。酸素流量は最大でも6L/分までで、それ以上の酸素供給が必要な場合、酸素マスクに変更する必要があります。構造自体が非常にシンプルであり軽量かつ安価な点もメリットの1つです。 図1 鼻カニュラの構造 画像提供:アトムメディカル株式会社 2 リザーバー付き鼻カニュラリザーバー付鼻カニュラは呼気時にリザーバー内に酸素を貯留し、吸気時に流れてくる酸素にあわせてリザーバー内の酸素を吸入することで通常よりも高濃度酸素の供給が可能です。 通常の鼻カニュラと比較すると少ない流量で酸素濃度を維持できるため、酸素の節約、高流量による陽圧感の軽減といった効果が得られます。特に酸素の節約効果は低流量であるほど効果が高く、リザーバー付鼻カニュラであれば0.5L/分投与すれば鼻カニュラの2L/分相当の酸素吸入濃度が得られ、最大で75%の節約が期待できます(図3)。酸素消費量を削減できるため酸素供給量に限りのある在宅ではとても有用です。 リザーバーのタイプは鼻カニュラに装着されたノーマルタイプと吊り下げるペンダントタイプの2種類が販売されています。酸素節約効果に差はないため好みで選んでもらって構いません。 図2 リザーバー付き鼻カニュラ 画像提供:日本ルフト株式会社 図3 標準カニュラとリザーバー付き鼻カニュラの吸入酸素濃度の目安 日本ルフト株式会社の製品カタログを参考に作成 酸素マスクタイプ 1 簡易酸素マスク(図4)酸素マスクは最もシンプルな構造のマスクで、鼻と口を覆うサイズの酸素マスクを装着して使用します。鼻カニュラと比較して、より高流量の酸素を供給することが可能ですが、鼻と口を覆う構造のため飲食中は使用できず、また声もこもるため喋りづらいという難点もあります。 図4 簡易酸素マスクの構造 画像提供:アトムメディカル株式会社 2 リザーバー付き酸素マスク(図5)リザーバー付き酸素マスクは、酸素マスク下部に取り付けられたリザーバーバッグと呼ばれる袋に酸素をリザーブ(蓄積)しておき、吸気時にリザーバー内の酸素を吸入することで高濃度酸素を吸入できるタイプの酸素マスクです。マスクの通気孔に一方弁を取り付けることで、さらに外気の流入を防ぎ、より高濃度の酸素が吸入できます。高濃度酸素を吸入しつつマスク内の二酸化炭素の蓄積を防ぐために6L/分以上の酸素流量を必要とします。 図5 リザーバー付き酸素マスク 画像提供:アトムメディカル株式会社 3 開放型酸素マスク(図6)開放型酸素マスクは特殊な形状の酸素吹出口(ディフューザー)から鼻と口の両方に酸素を投与することで1L/分程度の酸素流量であっても正しく装着することで酸素濃度を維持することができます。簡易酸素マスクのようにマスク内に酸素を充満させる必要がないためマスクが開放されています。結果として次に示すようにさまざまなメリットがあります。 開放部から呼気が抜けやすく、二酸化炭素の再呼吸を防いでくれる1L/分から10L/分以上まで1つのデバイスで対応が使用可能マスクの隙間からストローで飲水も可能声が通りやすくコミュニケーションが取りやすい酸素投与しながらの吸引や口腔ケアが可能圧迫感が少ないためQOLが向上 など 図6 開放型酸素マスクの構造 画像提供:アトムメディカル株式会社 延長チューブ 設置型(据え置き型とも呼ぶ)酸素濃縮装置は移動に向かないため、自宅で部屋を移動やトイレ、入浴などを行うために延長チューブを装着して使用します。 酸素供給装置 酸素供給装置には、酸素濃縮装置、液体酸素システム、携帯型酸素ボンベなどがあります。 酸素濃縮装置 1 酸素の濃縮方法酸素の濃縮方法には、膜型と吸着型があります。<膜型>酸素の透過性が高い膜に大気を通すことで酸素濃度を上昇させます。ただし、この膜は窒素も通過するため上昇する酸素濃度は40%程度までと、吸着型と比較して低濃度酸素しかつくることができません。そのため、あまり使用されていません。<吸着型>大気中から窒素を吸着除去することで酸素を濃縮し、およそ90%相当の高濃度酸素をつくり出します。吸着した窒素は別途排気することで繰り返し使用することができます。 2 装置タイプ装置タイプには設置型(据え置き型とも呼ぶ)と携帯型があります。<設置型(図7)>在宅用として使用する設置型はやや大型のものが多く、移動にはあまり向きませんが、高流量での酸素供給が可能です。宅内を移動する場合は延長チューブを用いて対応します。 図7 設置型の酸素濃縮装置 画像提供:フクダ電子株式会社 <携帯型>非常に軽量で、かつバッテリー内蔵で室内外での移動に用いることができます。ただし設置型と比較して供給可能な酸素量は低流量となります。使用する酸素流量が低い症例であれば、外出のたびに酸素ボンベに切り替えを行わずに済むというメリットもあります。外出中も予備のバッテリーと簡単に交換できるだけでなく、通常の電源やDC電源(車のシガーソケットなど)を使った充電も可能です。 図8 携帯型酸素濃縮装置 画像提供:帝人ファーマ株式会社 液体酸素システム(図9) 専用の容器内に低温液体化した酸素を保管します。使用する際には液体酸素を気化して吸入します。液体酸素は気体になると容量がおよそ790倍に膨張するため、非常にたくさんの酸素を保存可能です。酸素濃度も常に安定した100%酸素を使用でき、さらに電源が不要であるため、停電時にも安心して使用することができます。しかし、容器内の液体酸素は使用した場合はもちろんのこと、使用しなくても一部の酸素は蒸発により徐々に減少するため定期的に充填する必要があります。 図9 液体酸素システム 画像提供:ケアメディカルジャパン株式会社右:親器(設置用)、左:子器(携帯用) 液体酸素を親器に貯蔵し、外出の際に患者自身が親器から子器に液体酸素を充填しポータブルとして使用する 携帯型酸素ボンベ(図10) 小型の高圧ボンベに酸素を保存しています。ボンベ内の酸素はそれほど多くないため、自宅内での使用というよりもあくまで移動中での使用がメイン。酸素流量調整器を用いることで酸素の使用量を減らせ、節約もできます。また、酸素濃縮装置に接続しておくことで停電時のバックアップとして使用することも可能です。 図10 携帯型酸素ボンベ 画像提供:フクダ電子株式会社 呼吸同調装置(図11) 酸素供給装置を使用中に自発呼吸が発生したときにだけ酸素を流すことで、酸素消費量を減らすことが可能です。そのため多くの酸素供給装置の酸素流量表現は「◯L/分相当」と表示されています。酸素濃縮装置や液体酸素システムに搭載されていることが多く、携帯型酸素ボンベの場合にはレギュレーター(圧調整器)に呼吸同調装置が付属している商品があります。 図11 呼吸同調装置 画像提供:帝人ファーマ株式会社 * * * 次回は、HOTの進め方と患者さんやご家族への指導について解説します。 >>次回記事はこちら訪問看護師が知っておきたいHOT(在宅酸素療法)導入の進め方と患者・家族指導 執筆:石橋 一馬神戸市立医療センター中央市民病院臨床工学技術部監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 呼吸ケアセンター 副センター長編集:株式会社照林社 【引用文献】1)厚生労働省:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)(令和4年3月4日保医発0304第1号).p2492)同上

溶連菌感染症の原因・症状・対処法
溶連菌感染症の原因・症状・対処法
特集
2024年4月16日
2024年4月16日

溶連菌感染症の原因・症状・対処法。大人の感染や気づかず放置した場合は?

溶連菌感染症は、子どもがかかるイメージが強いかもしれませんが、大人もかかる可能性があります。また、溶連菌といえば、ニュースやドキュメンタリー番組でしばしば聞く「人食いバクテリア」が気になる方も多いのではないでしょうか。この記事では、溶連菌感染症の症状や原因から大人の感染、治療法、ワクチンなどについて解説します。 溶連菌感染症とは 溶連菌(溶血性連鎖球菌)感染症とは、主にA群溶血性レンサ球菌の感染によって引き起こされる感染症です。菌が侵入した部位や組織に応じてさまざまな症状が現れます。「人食いバクテリア」と呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症への進展も懸念されるため、放置せずに医療機関を受診することが大切です。 溶連菌感染症の症状 溶連菌感染症は、2~5日の潜伏期間を経て発熱や全身倦怠感、咽頭痛、軟口蓋の小点状出血、いちご舌、嘔吐などの症状が現れます。また、溶連菌の発赤毒素という酵素によって、咽頭痛と発熱、皮膚症状として皮疹が現れる場合があります。この状態はかつて「猩紅熱(しょうこうねつ)」と呼ばれていました。なお、皮膚症状をきたす溶連菌感染症は夏に、咽頭に症状が現れるものは冬に流行する傾向があります。 溶連菌感染症の原因 溶連菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌が飛沫感染か接触感染することでかかります。家庭だけではなく、学校や会社などで集団感染が起きる場合もあります。 溶連菌感染症にかかりやすい年齢は?大人もかかる? 溶連菌感染症は年齢を問わず罹患する可能性がありますが、学童期の子どもに多くみられます。また、3歳以下や大人は感染しても典型的な症状が現れず、軽症で済む傾向があります。 溶連菌感染症の治療法 溶連菌感染症の治療には、ペニシリン系抗生物質の内服薬を使用します。ただし、薬剤に対するアレルギーがある場合は、第1世代のセフェム系抗生物質やマクロライド系抗生物質のエリスロマイシンの使用も可能です。最低でも10日は内服を続ける必要があります。それでも細菌を除去できていないと思われる場合には、追加で別の抗生物質を使用します。 なお、溶連菌感染症は学校保健安全法で「第三種学校伝染病」に指定されており、治療開始から 24 時間が経過し、全身状態が良ければ登校・登園が可能です。会社についても同様の扱いで出社できます。ただし、溶連菌感染症は重症化のリスクもあるため無理は禁物です。 溶連菌感染症に有効なワクチンはない 溶連菌感染症の予防や症状の軽減に有効なワクチンは、製造されていません(2024年2月現在)。そのため、感染予防と発症時の適切な対処がより重要といえます。また、溶連菌に感染しても終生免疫ができるわけではないため、生涯で複数回かかる可能性があります。周りに溶連菌感染症の人がいる場合は、うつる可能性を踏まえて対応することが大切です。 溶連菌感染症を放置するとどうなる? 溶連菌感染症は、抗生物質による治療を行わなくても自然に治癒する場合があります。しかし、重症化する可能性があるため、症状が現れたら放置せずに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。溶連菌感染症の重症化に関して、警戒すべきは「人食いバクテリア」とも呼ばれる「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」です。 人食いバクテリアとは 人食いバクテリア(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)の場合、皮膚や粘膜から通常は無菌の肺や筋肉、脂肪組織や血液に溶血性レンサ球菌が侵入し、発症します。手足の壊死や多臓器不全、肺炎などにより死亡することもある疾患です。発熱や食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、全身倦怠感、低血圧、筋肉痛などから始まり、循環器や呼吸器などさまざまな臓器の機能が低下します。 通常、発症から24時間以内に多臓器不全が起きるという、急速に病状が進展する疾患です。国立感染症研究所によると1)、A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症数は2023年に340例(死亡97例)です。そのうち、20歳未満は約4%、20~49歳が約24%、50~69歳が35%、70歳以上が約37%で、大人のほうがかかりやすい疾患といえます。少しでも症状が現れた場合はすぐに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。 * * * 溶連菌感染症は、発熱や咽頭痛、皮膚症状などを伴う感染症です。猩紅熱や人食いバクテリアへと進展するかどうかは発症時にはわかりません。訪問先で利用者さんやその家族に溶連菌感染症を疑う症状がみられた際は、医療機関を受診するよう促しましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長  医学博士。「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【引用】1)国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の50歳未満を中心とした報告数の増加について(2023年12月17日現在)」https://www.niid.go.jp/niid/ja/group-a-streptococcus-m/group-a-streptococcus-iasrs/12461-528p01.html2024/2/6閲覧 【参考】〇NIID国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/340-group-a-streptococcus-intro.html2024/2/6閲覧〇国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の50歳未満を中心とした報告数の増加について(2023年12月17日現在)」https://www.niid.go.jp/niid/ja/group-a-streptococcus-m/group-a-streptococcus-iasrs/12461-528p01.html2024/2/6閲覧〇厚生労働省「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-06.html2024/2/6閲覧

2024年度トリプル改定(診療・介護・障害福祉報酬改定)ポイント解説
2024年度トリプル改定(診療・介護・障害福祉報酬改定)ポイント解説
特集
2024年4月9日
2024年4月9日

2024年度トリプル改定(診療・介護・障害福祉報酬改定)の全体像 ポイント解説

2024年度のトリプル改定に向け、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬の3分野の具体的項目が出揃いました。今回から、訪問看護が特に押さえておきたい3分野の改定内容を解説します。改定項目も多い中、まずは全体像を把握し、頭の中を整理しましょう。 医療・介護・障害福祉の各分野は、さまざまな課題に直面しています。その課題は大きくは3つに分けられます。 課題1 高齢化に伴うニーズの多様化 1つめは、高齢化に伴う中長期的な課題です。いわゆる団塊世代が全員75歳以上を迎える2025年が間近に迫り、医療・介護の複合ニーズも急速に高まります。この傾向は、2025年以降さらに顕著になるでしょう。障害福祉の分野も、障害当事者の高齢化でやはり医療・介護の複合ニーズが高まります。 そうした中では、医療・介護・障害福祉の切れ目のない連携とともに、例えば訪問看護では、容態急変時等の緊急対応や在宅での看取りなど、多様な場面での備えを強化しなければなりません。 課題2 賃金水準向上と人手不足 2つめは、「課題1」に対応するためにも解決しなければならない直近の課題。具体的には、近年の急速な物価高騰を受け、全産業での賃金水準も上がっていることです。 こうした状況下では、医療・介護・障害福祉分野も手をこまねいてはいられません。物価高騰によって事業運営が厳しくなれば、そこで働く看護師をはじめとした従事者の賃金も上がりにくくなります。そうなれば、他産業との競合で従事者不足が加速する恐れもあります。 これを解決するには、3分野における現場の支え手の処遇改善とともに、働きやすい職場環境の構築が必要です。 課題3 現場業務の効率化を図るためのDX 3つめの課題は、事業運営や職場環境の改善を視野に入れた場合に不可欠な業務の効率化です。この場合の業務効率化とは、現場従事者の業務負担を減らしつつ、患者・利用者へのサービスの質の維持・向上を実現することを指します。 この業務効率化に向けて求められているのが、医療・介護分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)、いわゆるデジタル改革です。例えば、デジタル化された医療・介護情報の利活用やICTを使った多職種連携などが挙げられます。これらは、「課題1」「課題2」を同時に解決していくカギとなります。 3つの課題はそれぞれに関連しあっている 多様なニーズへの対応強化を図りつつ、事業運営や従事者の処遇改善を進める。そのために「業務効率化」を検討していく。という具合に、3つの課題への対処を同時に進めていくことが、2024年度トリプル改定全般を通じた主要テーマです。 1つの加算内でも「3つの課題」への対応が 訪問看護を例に挙げましょう。訪問看護では、利用者ニーズに応じた24時間対応体制の確保が大きな課題です。これを診療報酬上で評価したものに「24時間対応体制加算」があります。 この加算について今改定で単位数が引き上げられました。これにより、課題1への対処を強化しています。と同時に、24時間対応にかかる看護師の業務負担の軽減への対策を講じた場合に、さらに単位の引き上げを実施。これで、課題2にも対処したことになります。 加えて、その業務負担軽減策では、ICT、AI、IoT等の活用も要件に定められました。これは3つめの課題への対処にあたります。1つの加算の見直しでも、3つの課題への同時対処を目指したことが分かります。 課題対応に向け、報酬はどこまで引き上げられた? 3つの課題解決を同時に進めていくには、当然ながらその原資を確保するために、一定の報酬引き上げが必要です。今改定では、3分野ともにプラスの改定率となりました(薬価を除く)。 まず、診療報酬の改定率は+0.88%。この中には、看護職員、病院薬剤師、その他の医療関係職種(勤務医や勤務歯科医師などを除く)について、2024・2025年度に賃金のベースアップを図るための特例的な対応としての+0.61%も含まれます。 介護報酬の改定率は+1.59%と、診療報酬を上回りました。このうち、介護職員の処遇改善分は+0.98%で、これは6月に施行される新処遇改善加算の加算率の引き上げ分です。 さらに、障害福祉サービスの報酬改定率は+1.12%。こちらの改定率アップも診療報酬を上回っています。 プラス改定が患者・利用者にもたらす影響 このように、3分野ともプラス改定となったことで、事業運営には一定の追い風となります。しかも現場従事者の処遇改善に特に力を入れたことで、人員不足への対処も図られています。 一方、プラス改定となることで、国民の社会保険料や患者・利用者の一時負担も増加する懸念があります。その負担増の納得を得るには、設定された報酬がニーズへの対応やその手間に見合っているかを精査し、「適正化」を図る必要があります。 ニーズ対応やその手間を精査した適正化も 例えば、訪問看護では「緊急時のニーズ対応」について、診療報酬で「緊急訪問看護加算」が算定されます。これが頻回となる場合、本当に緊急時の訪問なのかが問われます。そこで、月あたり15日目以降の単位が引き下げとなりました。 また、診療報酬上の訪問看護療養費について、同一建物居住者の割合に応じて単位を引き下げた区分が設けられました。これは、同じ算定対象でかかる手間に応じた適正化を図ったわけです。 こうした大きな改定の括りを頭に入れることで、今改定で国が何を求めているかを理解しやすくなります。その上で、次回から3分野にわたる改定項目を個別に見ていくことにしましょう。 ※本記事は、2024年3月26日時点の情報をもとに記載しています。 執筆:田中 元介護福祉ジャーナリスト 編集:株式会社照林社 【参考】〇厚生労働省(2023).「診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001180683.pdf2024/3/26閲覧〇厚生労働省(2024).「個別改定項目について」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001220377.pdf2024/3/26閲覧〇厚生労働省(2024).「令和6年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療、訪問看護)」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf2024/3/26閲覧〇厚生労働省(2024).「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001213182.pdf2024/3/26閲覧

4コマ漫画「小児の卒業」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
4コマ漫画「小児の卒業」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
特集
2024年4月9日
2024年4月9日

漫画「これだけは」ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

「当たり前」の生活を支える 訪問看護では、例えば「子どものお弁当を作りたい」など、利用者さんにとっての当たり前の生活や想いを支えることも大切だにゃ ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

6月病とは?5月病との違いや早くから始めたい予防法
6月病とは?5月病との違いや早くから始めたい予防法
特集
2024年4月9日
2024年4月9日

やる気が出ない6月病とは?5月病との違いや早くから始めたい予防法

季節に関わる心身の不調といえば、環境の変化や気象などの影響で気分が落ち込む5月病が一般的に知られています。実は、6月にも5月病と同じような症状が現れる場合があります。これを6月病といい、あまり知られていないことから、症状が現れた際に不安に感じる人は少なくありません。本記事では、6月病の症状や原因、5月病との違い、予防法などについて解説します。6月に自分自身や周りの訪問看護スタッフ、利用者さんに心身の不調がみられた際には、6月病である可能性を考えてみると良いでしょう。 6月病とは 6月病とは、環境の変化に適応できないことによってストレスや疲労が溜まり、結果的に心身に不調をきたす状態のことです。5月病は、新社会人や新入生に見られることが多いもので、症状と原因は基本的に6月病と同じです。しかし、6月病は5月病よりも悪化しやすく、うつ病に移行してしまう恐れもあるため、早期に対処する必要があります。 6月病と5月病の違い 6月病と5月病は、いずれも適応障害の1つといわれています。適応障害とは、環境や出来事に適応することに対してつらく感じ、ストレスや疲労が溜まって気分の落ち込みや疲労感などが現れる状態のことです。 5月病は、5月頃に突如として現れ、6月に入るころにはおさまるのが一般的です。一方、6月病は改善と悪化を繰り返しながら慢性的な経過をたどる傾向があります。 症状は、頭痛やめまい、吐き気、不眠、イライラ、不安感、注意力の低下、抑うつなどです。梅雨は気圧の変化による気象病の症状も同時に出やすいため、5月病よりつらく感じる方もいます。 6月病のセルフチェック方法 以下に挙げる項目について、該当する症状が多くなればなるほど、6月病の可能性が高まります。 【身体の症状】 朝起きるのがつらいなかなか寝つけない疲れが取れない食欲がないめまいや頭痛がある肩こりがある下痢や便秘などでお腹の調子が悪い 【心の症状】 イライラする原因のわからない不安がある趣味を楽しめなくなった注意力や判断力が低下した感情の起伏が激しい飲酒や喫煙を我慢できないすぐに謝ることが増えた人と会う予定を直前でキャンセルしてしまう 上記に当てはまる項目が多かったとしても、別の何らかの病気によって症状が現れている可能性もあるため、自己判断せずに医師に相談しましょう。 6月病の予防方法 6月病は、心身をケアすることで予防できる可能性が高まります。次のような生活を習慣づけましょう。 十分に睡眠を取る 十分な睡眠はストレスや疲労を軽減するため、6月病になるリスクを抑えることができます。睡眠の質を高めるためには、就寝の2時間ほど前に入浴する、寝る1時間前からスマホの使用を避ける、寝る前に軽いストレッチをするなどの対策が効果的です。 ストレスが過剰になると睡眠の質が低下して寝つけなくなる可能性があるため、普段から十分な睡眠を取って、ストレスと疲労を溜めないようにしましょう。 適度に運動する 適度な運動は、気分をリフレッシュさせ、ストレスを軽減するのに役立ちます。ウォーキングやジョギング、ヨガなどの軽い運動を毎日続けましょう。 また、運動することで血液の循環が良くなり、脳への酸素供給が増えます。これにより、集中力や注意力の改善、ストレスの軽減などが期待できます。無理な運動はかえってストレスや疲労の原因となるため、自分に合った運動を長く続けることが大切です。 ストレスをこまめに発散させる 仕事や家事、育児などをしているかどうかにかかわらず、ストレスは少しずつ溜まっていきます。そのため、ストレスが溜まっている自覚がなかったとしても、趣味や心を許せる人とのコミュニケーションなどでストレスを発散させましょう。 人との会話を楽しむだけでもストレスを軽減できますが、不安を抱えている場合は、それを打ち明けることでストレスを発散できるでしょう。人に悩み事を打ち明けることによるストレス発散効果は長く続きます。人に打ち明けたり原因に対処したりして、人生における悩みを少しでも軽減することがストレスコントロールのコツです。 また、マインドフルネスや瞑想、深呼吸などでも、ストレスを軽減できます。体の状態や体力、心の余裕などを踏まえて、そのときに適した方法を試してみてください。 6月病になったときの対処法 6月病の対処法は予防法と共通しています。しかし、すぐに状態を改善させるのは難しいかもしれません。6月病を治そうと頑張ることでストレスが溜まり、状況を悪化させてしまう可能性もあるため、自分のペースで回復に向けて取り組むことが大切です。まずは医師に相談し、適切なアドバイスや治療を受けましょう。 * * * 6月病は5月病と同じく、環境や出来事に適応できないことで疲労やストレスが溜まり、心身に不調をきたすものです。自分自身や周りの訪問看護スタッフ、利用者さんが6月に不調となった場合は、6月病の可能性を考えてみましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。

第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート
第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート
特集
2024年4月2日
2024年4月2日

第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月9日開催】

春の足音を感じる2024年3月9日(土)、銀座 伊東屋 「HandShake Lounge」(東京都中央区)で「第2回 みんなの訪問看護アワード」の表彰式を開催しました。訪問看護に携わる皆さまの日々の努力を世の中に認知してもらうことを目的に2023年度から始まった本イベント。表彰式では、全国各地からお越しいただいた受賞者の方々や審査員の先生方、協賛企業の皆さまとともに、表彰、特別トークセッション、懇親会などで盛り上がりました。表彰式当日の様子や、参加者の皆さまの感想をまとめたレポートをお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 受賞者の皆さまへのトロフィー・記念品授与 まずは受賞者の皆さまへの表彰が執り行われました。入賞12名、協賛企業賞5名、審査員特別賞3名、ホープ賞1名、大賞1名の順にお一方ずつ審査員の先生方からトロフィーと記念品が授与されました。 贈呈されたトロフィー 入賞エピソード「笑顔の看取り」の投稿者の服部景子さん 栄えある大賞には、岡川修士さん(大阪府)が投稿されたエピソード「役割を求めて」が選ばれました。 大賞エピソード「役割を求めて」投稿者の岡川修士さん(左)と、特別審査員の高橋洋子さん(右) 岡川さんの受賞コメントを一部ご紹介します。「まずは、『パーキンソン病と闘う患者さんの励みになるなら』と、本名とご自身の病名をエピソードに使ってもいいと承諾してくださった同僚の加東さんにお礼を伝えたいです。私が所属する訪問看護ステーションは6人と小規模で、まだ開設して2年も経っていません。日々一緒に奮闘する仲間たちに受賞を報告すると、みんな私以上に喜んでくれました。当社は『ものがたりケア』をモットーにしています。私たちがケアに当たる利用者さんには、それぞれ今に至るまでの『ものがたり』があり、過去からつながる人生の一部なのだと念頭に置きながら、丁寧に接することを大切にしています。そんな私たちのケアがひとつのエピソードとして受賞したので、弊社代表もとても喜んでくれました。大賞をいただけて素直にうれしい気持ちでいっぱいです。ありがとうございました」 岡川さんの「役割について」を大賞作品に選出した理由について、特別審査員の高橋洋子さんからのコメントもご紹介します。「パーキンソン病で今までできたことができなくなるという悲嘆の中、利用者さんは自分の存在や役割について悩まれます。そんな利用者さんに対して何かしたいという岡川さんの真摯な姿勢が文章から伝わってきました。利用者さんができる役割を思いつき、それを後押しする社長さんや訪問看護ステーションの風土にも感銘を受けました。体が自由に動かなくなっても自分らしく生きたいと思われる利用者さんを、訪問看護のスタッフが支えていく。それが我々の目指すべき姿であることを教えてくださったエピソードだと思い、選出させていただきました」 「役割を求めて」の漫画を制作いただく広田奈都美さん(右) 会場では、制作中の漫画の下書きも披露されました。大賞の「役割を求めて」の漫画化をしていただく看護師・漫画家の広田奈都美さんからのコメントも一部ご紹介します。「このエピソードを読んだとき、何か哲学を教わっているような感覚になりました。漫画を描くにあたって岡川さんからお話を伺った際、『ものがたり』というキーワードが出てきて『なるほど』と共感しました。この利用者さんのものがたりすべてを描くことはできませんが、ものがたりの中の『一瞬』を精一杯、描かせていただきたいと思います」 エピソード・訪問看護に関するトークセッション 表彰後は、特別審査員の長嶺由衣子さんと受賞者3名(小野寺志乃さん/宮城県、新田光里さん/東京都、白﨑翔平さん/大阪府)による特別トークセッションが行われました。エピソードを投稿したきっかけや訪問看護の世界に身を置いた経緯、訪問看護の魅力を世の中に伝えるアイデアなど、幅広いテーマでのディスカッションが繰り広げられました。登壇者のお話にうなずき、時には驚きながら耳を傾けている受賞者や関係者のみなさんの姿が印象的でした。 例えば作業療法士の白﨑さんは、引きこもりがちな利用者さんの「外出する目的」をつくるため、ご本人が「お花好き」という点に着目。雑木林をひまわり畑にし、「お花の世話をする」という目的をつくり出そうとしたことが、今回の投稿エピソードにつながったと紹介。利用者さんの状態や気持ちに寄り添いながら、「自分たちに何ができるか」と真摯に考え、日々チャレンジし、奮闘されている様子が3人のお話から伝わってきたトークセッションでした。 すぐに打ち解けて話が尽きなかった懇親会 式典が終了した後は、軽食や飲み物を楽しみながら審査員の先生方、受賞者のみなさん、協賛企業のみなさんとの懇親会を開催。リラックスした雰囲気の中、同じ職種だからこそ話せる日々の悩みを相談する姿も。初対面の方々がほとんどの中、すぐに打ち解けて、記念撮影を楽しまれている姿も多く見られました。笑いが絶えずいつまでも話が尽きない中、みなさんお別れが名残惜しそうでした。 審査員の先生方・受賞者の皆さまのご感想 最後に、「みんなの訪問看護アワード」や表彰式について、特別審査員の先生や受賞者の皆さまに伺った感想をご紹介します。 高砂 裕子さん(一般社団法人全国訪問看護事業協会 副会長)こうしたイベントを開催することで、訪問看護の現場で頑張っているみなさんの声を世の中に届ける機会になるだけでなく、これから訪問看護師として働く方々にも、現場のイメージができて役立つ内容だと思います。全国各地から集まって意見交換をし、元気になってそれぞれの地域に戻る、という仕組みをつくっていただいたことはとても素晴らしいことだと思います。このイベントが今後も継続できるように、運営企業や協賛企業の皆さまのご支援をいただければ幸いです。 高橋 洋子さん(公益財団法日本訪問看護財団 事業部課長)審査員としてみなさんのエピソードを読ませていただき、利用者さん一人ひとりに素晴らしい人生ドラマがあり、そうした人たちを支えている訪問看護師は本当に素敵な仕事だと感じました。普段は一人で利用者さんのお宅をまわり、孤独でハードな仕事だと思います。でもこうしたイベントがあれば、ほかの訪問看護師さんの話を聞いて共感し、悩んでいるのは自分だけではなく全国に同じように頑張っている仲間がいるんだと思えます。現場に戻って働くための心の糧になるでしょう。そうした意味でも、素晴らしいイベントだと感じました。 山本 則子さん(東京大学大学院医学系研究科 教授)トークセッションが大変興味深く、投稿エピソードの背景にはどのようなお考えがあったのか、本来であれば全員のお話を掘り下げて伺いたいと感じたくらいです。なかなか表に出てこない訪問看護のエピソードが、「みんなの訪問看護アワード」によって日の目を見ることができるのは、とても意味のあることだと思います。利用者さんの背景も価値観も異なるので、十人十色のエピソードがあり、それが在宅ケアの特徴なのだと改めて感じました。 長嶺 由衣子さん(東京医科歯科大学国際健康推進医学 非常勤講師)このイベントは訪問看護の世界で働く人々のネットワークを生むことはもちろん、訪問看護に携わるみなさんの感性を育てる場でもあると改めて思いました。エピソードを書くという場があることで、自身の仕事を振り返り、感じ、気づく機会になります。ぜひこのイベントを継続していただきたいです。今回はリハビリ職が利用者さんのやりがいにアプローチをして受賞したケースも複数あり、訪問看護が地域ではたす機能の可能性について思考する会になりました。ぜひ多職種が連携して訪問看護を盛り上げていただきたいと思います。 大石 佳能子さん(医療法人社団プラタナス/株式会社メディヴァ 代表取締役)訪問看護という忙しい仕事の中で、日々の経験を振り返って文章にすることはなかなかないと思います。こうしたきっかけがあれば言語化して振り返る機会となり、「自分はこんなことを大切にしていたんだ」という気づきを得られるはずです。報告書には書かれていない利用者さんやご家族、そして訪問看護師の心の軌跡のようなエピソードを所属先の仲間に共有すれば、普段から何を大切にして働いているのかといった価値観をみんなが知る機会となり、その訪問看護ステーションの強みになっていくのではないかと思います。 大日向 莉子さん(協賛企業賞受賞者/東京都/写真左)妹に誘われたのがきっかけで今回応募するに至りました。まさか姉妹で受賞できるとは思わず、本当に光栄です。私のエピソードはみなさんのように特別な、素敵なイベントを切り取ったものではなく、お看取りを経験する人なら誰もが抱えるジレンマなのではないかなと思っています。今回賞をいただいたことで、私の抱えるジレンマや感情が肯定されたように感じ、それが一番嬉しかったです。今回みなさんの素晴らしい看護のお話を聞き、多くの学びがありましたしもっと知りたいと思いました。このような場がこれからも増えますように。大日向 麻子さん(入賞者/東京都/写真右)受賞して会場に訪れ、みなさんのお話を伺えたことが何よりもうれしかったです。トークセッションでは、利用者さんやご家族が納得して看護やケアの方法を選択し、前に進めるかどうかを尊重する考え方もあると知り、感銘を受けました。また、私は看護の限界を決める必要はなく、アイデア次第で可能性が広がっていくと思っています。エピソードが入賞したことでそうした訪問看護の魅力を伝えられる機会を与えていただきました。ありがとうございます。 小林 奈美さん(協賛企業賞受賞者/広島県)「みんなの訪問看護アワード」の存在は、SNSで交流をしていた第1回の受賞者の方に教えていただいたんです。その方から「来年もあるから、一緒に受賞して銀座で会いましょう!」と言ってもらい、エピソードを投稿しました。その言葉通り、今日初めて対面でお会いすることができて、とてもうれしかったです。漫画家の広田奈都美先生にもお会いでき、広島から参加した甲斐がありました。 「第2回 みんなの訪問看護アワード」表彰式にご参加いただいた皆さまの集合写真 表彰式にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。大賞作品の漫画は、2023年4月下旬にNsPace上で公開予定です。審査員特別賞・ホープ賞の漫画化や、表彰式のトークセッションのレポート記事の制作も予定しています。ぜひご覧ください。 取材・執筆:高島三幸編集:NsPace編集部

交通事故【訪問看護 緊急時の対応法】
交通事故【訪問看護 緊急時の対応法】
特集
2024年4月2日
2024年4月2日

訪問看護の移動中に交通事故が発生したら【緊急時の対応法】

訪問先で思わぬ出来事に遭遇したとき、訪問看護師としてどう動けばよいのでしょうか。このシリーズではさまざまな緊急時に対し、具体的な臨床知をもとに何を確認・判断して、誰にどの手順で連絡・調整すればよいか分かりやすく解説します。今回のテーマは訪問看護の移動中に交通事故が発生した場合の対応法です。 交通事故は事業所運営のリスクの1つ 訪問看護業務は利用者さんのご自宅に訪問して看護を提供します。そのための移動手段として一般的には普通自動車や自転車、普通自動二輪車を使用することが多いでしょう。移動を頻繁に行う訪問看護において、交通事故は平常時から安全管理体制を整えておくべき問題です。 交通事故は被害者になることもあれば加害者になることもあり、どちらにおいても事業所の運営におけるリスクの1つといえます。今回は自動車運転中に交通事故の加害者になった場合、被害者になった場合についてそれぞれの対応法を解説します。 加害者になったらどう対応? 移動中に交通事故を起こしてしまったら、負傷者の救護、道路上の危険防止措置、警察への連絡を行います。警察への連絡は対物であっても対人であっても必要です。これらは事故発生時に加害者が行うべき措置として法律で定められた義務です。 【参考】道路交通法第72条第1項交通事故があったときは、(中略)直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。(中略)この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、(中略)警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。 負傷者を救護する ただちに運転を停止し、死傷者の有無や負傷の程度、物損の有無、損壊の程度などを確認します。負傷者がいるなら負傷者の救護が最優先です。負傷者の状態に応じて、近くの医療機関に受診してもらうか、救急車を要請します。救急車が到着するまでの間、可能な限りの応急処置を実施します。 もし、負傷者が「受診するほどではない」と話しても、後遺症がその後発生した場合のことも考え受診してもらうようにします。 道路上の危険を取り除く 事故車両をそのままにせず、ほかの通行車両や歩行者に二次被害が生じないよう安全な場所へ移動させます。停止表示板(三角表示板)を設置する、発煙筒を使用するなど道路上における危険防止の措置を講じます。 警察に連絡する 負傷者の救護と道路上の安全を確保したら、警察に連絡をします。どんなに小さな事故であっても連絡し、事故に係る状況(場所や負傷の程度、損壊の程度など)について説明します。なお、自動車保険を利用する場合、「交通事故証明書」が必要です。交通事故証明書は警察への届出がないと発行してもらえません。この点からも警察への連絡は必須です。 事業所への報告と状況の確認も行う ほかにも大切な手順があります。負傷者だけでなく自分も受傷していないか確認し、その結果と現在の状況を事業所に報告します。事故処理には相応の時間がかかりますので、次の訪問があれば、訪問時間に間に合わないため事業所に対応を依頼します。 事故対応で判断に迷うときは、事業所に連絡し管理者に相談してください。また、決してその場で示談にはしないのも重要な注意点です。相手には氏名、住所、連絡先、保険会社などの情報を確認しておきます。相手の負傷状況が軽度か重度かにかかわらず、誠意をもって対応してください。 事故の大小に限らず、事故を起こしてしまった事実により、それなりに動揺してしまうと思います。車両の破損がなく、運転して事業所に戻るのであれば十分に注意して移動します。 移動手段が自転車や普通自動二輪車であっても事故が起こったときの対応は同様です。 さまざまな事態に備える ここまでで示した対応は一般的な例に過ぎず、交通事故の状況はさまざまです。 例えば、加害者であっても自分で連絡の対応ができない状況も起こり得ます。自分に意識があれば「事業所に連絡して状況を伝えてください」と依頼できますが、それさえもできないケースが考えられます。そのような場合に備え、私の訪問看護ステーションでは、訪問バッグの中や車内の見やすい位置に訪問看護師であること、事業所名、氏名、連絡先を記入したカードを準備しています(図1)。 また、相手に負傷状況を確認しようとしても「大丈夫です」と答え、連絡先を聞いても何も言わずに急いで立ち去ってしまうケースがあります。このようなときでも、警察には一つの事故として必ず届出をしておきましょう。警察に連絡しないで現場を離れてしまうと、後になって救護義務違反として罰則を受ける可能性もあるため、安易な判断は禁物です。 図1 連絡先カード 事故の当事者が連絡対応できない場合に備え、このような連絡先カードを作成し、訪問バッグの中や車内の見やすい位置に準備している。 被害者になったらどう対応? 交通事故の被害者になったときは、加害者になったときと同様に必ず警察に連絡します。また、加害者の氏名、住所、連絡先の確認と医師の診察を必ず受けるようにします。 事故が生じた直後、「利用者宅への訪問に遅れてしまう」という気持ちの焦りが生じます。自分の身体には外傷もないから大したことがないと判断し、利用者さんに迷惑をかけないようにと訪問を優先してしまうかもしれません。 しかし、そのときは問題がないように感じても、数日後に痛みやしびれなどの症状が出る可能性もあります。交通事故では自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)をよく使いますが、業務中であれば労災保険を使うこともあります。保険の問題も関係しますので、利用者さんに迷惑をかけたくない気持ちは理解できますが、そのときの感情だけで行動しないようにしましょう。 事業所として取り組みたいリスク管理 交通事故は誰にでも起こり得ます。訪問看護における移動中の交通事故に関しては、事業所として次に示すようなリスク管理をしておきます。 運転者の心構えをチェックリストにする事故に遭遇したときの連絡体制を定めておく交通事故発生時の対応方法をマニュアル化しておく定期的に事業所内で移動中の事故対応に関する研修会を開催する安全なルートの共有や訪問間隔の確保など、スタッフが安心して移動できるようにサポートする移動中に故障しないように定期的に業務用車両の管理を行う事故に備えて自動車保険に加入する こうした取り組みを行い、実際に事故に遭遇しても焦らず対応できるようにしておきます。事業所は交通事故を未然に防ぐ対策と事故が起きたときの対策を講じなければなりません。 * * * 訪問看護師が加害者となった場合、当事者だけで対応させるのではなく、事業所の管理者ができるだけ早く相手に連絡をします。誠意をもって謝罪にうかがうなど、速やかな対応が必要です。また、事故に遭遇した訪問看護師は落ち込んでいることが予測されます。管理者は訪問看護師のフォローにも配慮してください。事業所として、訪問看護師が安全に移動でき、訪問看護を提供できる環境を作っていきたいものです。 >>関連記事 第7回 防災対策、交通事故、個人情報保護、医療事故編/[その2]スタッフが交通事故を起こしたら? これだけ押さえて冷静に対応! 執筆:阿部 智子訪問看護ステーションけせら統括所長 ●プロフィール約12年の臨床経験後、育児に専念する期間を経て、訪問看護の道に入る。自宅を訪問し、利用者との個別ケアを通して看護師としての力量の評価を得られ、利用者一人ひとりの生きざまを感じることができる訪問看護に魅力を感じる。2000年に「訪問看護ステーションけせら」を設立し、看護と介護を一体的に運営し、医療と生活の両面から在宅を支えられる実践を行ってきた。最期まで地域で暮らしたいという思いも支えられるようにホームホスピスの運営と、24時間対応できる定期巡回随時訪問介護看護事業にも携わる。 編集:株式会社照林社

実践的浮腫ケア セミナーレポート【現地開催】
実践的浮腫ケア セミナーレポート【現地開催】
特集 会員限定
2024年4月2日
2024年4月2日

【現地開催】明日から使える実践的浮腫ケア セミナーレポート(1/27開催)

2024年1月27日(土)に、越屋メディカルケア株式会社東京営業所(東京都新宿区)にてオフラインセミナー「明日から使える実践的浮腫ケア」が開催されました。ご登壇いただいたのは、ICAA認定リンパ浮腫専門医療従事者の岩橋 知美さん。総勢20名の訪問看護師さんに向けて、浮腫の基本から実践的なケア方法に至るまで、実技演習を交えながら講義いただきました。約4時間に渡るセミナーの様子を写真とともにダイジェストでお伝えします。 【講師】岩橋 知美さんICAA認定リンパ浮腫専門医療従事者、メディカル アロマセラピスト、メンタル心理士、リンパ浮腫外来顧問(聖マリア病院)1988年に看護師資格を取得後、病院にて勤務。2005年にメディカルアロマを学び「アロマセラピスト・アロマ講師」の資格を取得。産婦人科などでアロマケアに携わる。その後、2009年にICAA設立。2014年聖マリア病院形成外科でアロマ、リンパ浮腫ケア外来開設。厚生労働省委託事業「リンパ腫専門医療者の育成」主任講師としても活躍。 まずは座学で浮腫の基本を総ざらい 在宅療養者にとって辛い症状のひとつである浮腫。座学では、浮腫が起きるメカニズムや原因、在宅療養者に多く見られる浮腫の特長といった基礎知識の復習からスタートしました。浮腫はADLだけでなく、QOLの低下を招く原因にもなることが伝えられ、参加者は真剣な眼差しで熱心に耳を傾けていました。 また、浮腫悪化のリスクやアセスメントで注目すべき点なども伝えられ、参加者は改めて在宅看護における浮腫ケアへの理解を深めた様子でした。 >>関連記事NsPaceセミナーレポート「浮腫のアセスメントとケア」シリーズ一覧はこちらhttps://www.ns-pace.com/series/edema-assessment-and-care/ 数々の圧迫用品に参加者は興味津々 浮腫の基本を復習した後は、具体的なアプローチ方法についても講義。浮腫ケアは、複合的治療が前提だとした上で、圧迫療法やスキンケアが重要といったポイントが伝えられました。 各テーブルに多種多様なチューブ包帯(筒状包帯)やインジケーター付き弾性包帯などの見本が配られると、参加者は肌触りや伸縮性を確かめたり、腕に装着したりと学びを深めていました。 圧迫用品やパッティング材に見て触れる参加者の方々 中でも盛り上がりを見せたのは、市販の化粧パフで作成されたパッティング材。チューブ包帯の食い込み対策や皮膚硬化部の保護のために使用しますが、簡単に作成できることから驚きの声が上がっていました。 ドレナージや浮腫ケアの手技を実演 座学終了後はいよいよ実技講習がスタート。圧迫用品の使用方法をはじめ、ドレナージや浮腫ケアの流れなどが実演されました。 まず行われたのが上肢・下肢へのチューブ包帯の使用方法の実演です。浮腫ケアは、チューブ包帯で圧力の「勾配」を作ることが重要だと解説され、勾配の作り方や注意点などが紹介されました。 包帯の巻き返しが起きやすい箇所も丁寧に解説 中でも大きな盛り上がりを見せたのは、顔への圧迫療法。化粧パフで作成したパッティング材とイビキ用マスクを組み合わせた方法で、参加者からは驚きの声が上がりました。 続いて、ドレナージややや圧力のある浮腫アプローチ手技も実演されました。浮腫ケアには、圧力が少しある方がより効果的だとし、下肢・上肢の順で浮腫アプローチの手技を解説。半円を描きながらリンパドレナージをしていく方法や、ふくらはぎを下からすくい上げるように施術し、巡りを促す方法など、さまざまな手技を実演。どの参加者も講義に熱中し、患者さんを想う真剣な気持ちが会場全体を包み込んでいました。 参加者の皆さんは時に大きく頷きながら講義に集中 実演の終盤では、平編みのチューブ包帯やインジケーター付き弾性包帯の使用法も紹介。圧迫状態での運動が効果的だとし、足首の曲げ伸ばしや、股関節の回旋運動などの方法が伝えられました。 参加者も浮腫ケアを実践し、大盛り上がり 実演を踏まえ、参加者も3~4名ずつに分かれて浮腫ケアの実践へ。岩橋さんが各ベッドをまわり、力のかけ方や手の動かし方をレクチャー。特にドレナージと浮腫ケアアプローチの力加減の違いをレクチャーすると、その大きな違いに驚く声があちこちで上がりました。 参加者からは「浮腫ケア施術ひとつをとっても奥が深い」「ドレナージは、思ったよりも軽い力で驚いた」「すごく気持ちいいし、日々の患者さんのケアに役立てたい」といった声が続々。 実技演習は明るく楽しい雰囲気で大盛り上がり はじめは見様見真似だった参加者も次第にコツをつかみ、岩橋さんから「上手!その調子!」と声をかけられるシーンも多数。実際の訪問看護を想定し、「この手技なら10分くらいはできるかも」とシミュレーションをはじめる参加者もいらっしゃいました。 圧迫用品も参加者同士で装着し合い、圧力の勾配の作り方などを確認。中でもインジケーター付き弾性包帯の巻き方に苦戦する参加者が多く見られましたが、伸縮をかけずに足にそわせるように巻くとうまく巻けることを教わると、みるみる上達。楽しくも着実に学びを深める様子がうかがえました。 圧迫用品の使用方法も丁寧にレクチャー 時間終了後も質問が飛び交い、大盛況のうちに座学・実技演習を終えました。 「明日から実践したい」と喜びの声が多数 セミナー終了後は、集合写真を撮り、懇親会も開催。参加者はすっかり打ち解け合い、お互いの実務や訪問看護への想いを語り、モチベーションを高め合っていました。 感想などを共有し合いながら懇親会を楽しむ皆さん セミナーの感想をうかがうと、「明日からでもすぐに実践したい」や「気軽に質問できる雰囲気が良かった。手技も楽しく学ぶことができた」などの声が寄せられました。 ■参加者の感想(抜粋) 「先月から訪問看護のお仕事を任されたばかりなんですが、浮腫に悩む患者さんもいて、少しでもお役に立ちたいという一心で参加しました。ドレナージや浮腫ケアの手技を直接先生に教わり、とても勉強になりました。訪問看護は時間との勝負ですが、その中でもすぐに実践できることが見つかって良かったです」 「対面開催のセミナーがあることを知り、群馬から駆け付けました。浮腫に悩む患者さんを多く受け持っていますが、寝たきりの方は多くなく、リハビリが必要な方が中心です。今回、圧迫して運動した方が良いことを学んだので、リハビリ専門の職員とも連携し、さらに患者さんの役に立つことができればと思います」 講師を務めた岩橋さんも、大きな手ごたえを感じたご様子。 「波打つように頷く皆さんの反応を受け、患者さんへの真剣な想いや日頃の努力がひしひしと伝わってきました。質問も数多くいただき、具体的な解決策や手技をお伝えできてとても良かったです。訪問看護はどうしても時間が限られますが、その中でもできるケアやポイントをお伝えでき、有意義な時間となりました」 懇親会終了後は、どの参加者も笑顔で会場を後にし、大好評のうちにセミナーの幕を閉じました。NsPaceでは今後も訪問看護師さんのためのセミナーを企画していく予定です。ぜひ今後のセミナー情報にご注目ください。 取材・執筆・編集:高橋佳代子

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