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治りにくい褥瘡ケア~代表例と具体的なケア
治りにくい褥瘡ケア~代表例と具体的なケア
特集 会員限定
2024年3月26日
2024年3月26日

治りにくい褥瘡ケア~代表例と具体的なケア~【セミナーレポート後編】

2023年12月15日(金)に開催したNsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「治りにくい褥瘡のケア~在宅で治癒を目指す方法~」。在宅創傷スキンケアステーションの代表で、皮膚・排泄ケア認定看護師でもある岡部美保さんを講師に迎え、治りにくい褥瘡をケアする際に役立つ知識やノウハウを教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、前編に引き続き治りにくい褥瘡の代表例と、そのケア方法や注意点をご紹介します。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針~【セミナーレポート前編】 【講師】岡部 美保さん皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 複数の褥瘡がある/創部が大きいケース 複数の褥瘡があったり、創部が大きくその周りにポケットができていたりする褥瘡は治りにくい褥瘡の代表例です。 >>関連記事写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 事例に学ぶ創部の見方/セミナーレポート後編複数の褥瘡を有する方の事例について解説しています。 ここで、創部の形に着目してみてください。以下の写真を見ると、創部には丸いものと縦長のものがあることがわかります。 この差には、どのように外力が加わったかが表れています。創部が円形に近い褥瘡は、骨突出部に圧迫が加わったことで生じます。一方、創部が縦長など不整形な褥瘡は、圧迫に加えてずれの影響も受けて生じます。 こうした外力の影響は、ポケットにも表れます。 ポケットには「初期型ポケット」と「遅延型ポケット」の2種類がありますが、このうち遅延型ポケットは、治癒過程で外力が加わることで生じます。 ポケットがある褥瘡のケア これをふまえて、ポケットのケアのポイントを見ていきましょう。 外力の低減、排除ポケットのケアでは、外力を極力排除することが重要です。ポケットを観察すると、どの方向にずれや摩擦が加わっているかがわかるので、それをふまえて外力への対策を検討してください。褥瘡の評価やケアによる損傷を防ぐ吸引カテーテルで創部を洗浄する際は、カテーテルのサイズが細いもの(10Fr以下)を使用し、肉芽損傷を防ぎましょう。同じくポケットの計測も、鑷子を内部に入れると、先端の尖った部分で肉芽を傷めたり、ポケットを深く、広くしたりするリスクがあります。細い綿棒などを使って計測するのが安全です。ポケット内部に充填物を入れすぎないガーゼをはじめとした充填物を使用する場合は、ポケットを拡大しないよう、たくさんの量を強く押し込まないように注意してください。介助による外力に注意する私たちの介助によって創周囲の皮膚に加わる外力も、ポケットを広げる原因に。体位変換や褥瘡のケアをするときに創周囲の皮膚を引っ張ると、ポケット内部の組織を損傷する可能性があります。できるだけずれや摩擦などの外力をかけないよう気をつけましょう。ポケットに使用する外用剤は適切なものを選ぶポケットを形成した褥瘡の場合、カデキソマー・ヨウ素の使用にはご注意ください。カデキソマー・ヨウ素は洗浄が不十分であるとポケット内部にポリマービーズが残存して、感染を起こす可能性があります。使用の際は、ポケット内部の洗浄を確実に行いましょう。 局所に臨界的定着疑いがあるケース 臨界的定着疑いのある褥瘡とは、感染一歩手前の非常に危険な状態です。創面にはぬめりがあり、多量の滲出液により創周囲の皮膚は浸軟。そこに外力が加わることで創周囲の皮膚は肥厚し、さらに表皮の巻き込みなどを生じると治りにくくなっています。 在宅における褥瘡ケアでは、密閉性が高いあてものを使用しているケースがよく見られます。これにより創面、創周囲の温度と湿度が上がって皮膚が浸軟するだけでなく、感染リスクも高まります。また、厚みのあるあてものを使用している場合は創部が圧迫され、肉芽が損傷し、血流が障害されることにより肉芽組織の形成も遅れ、褥瘡の悪化はもちろん治癒も遅延します。 臨界的定着疑いのある褥瘡のケア 臨界的定着の疑いがある場合は、感染に移行させないケアが重要です。 ケア方法としては、まずは口腔ケア用スポンジや医療用スポンジなどで創面のぬめりをとります。その後、抗菌、細菌抑制作用がある外用剤(カデキソマー・ヨウ素やポビドンヨードをはじめとしたヨード製剤など)で創面の環境を整えましょう。 多量な滲出液を吸収できる非固着性のガーゼを使って創部を管理することをおすすめします。非固着性ガーゼは、肉芽損傷の予防にもつながり、安全かつ確実なケアができます。 創辺縁部に問題があるケース 以下の写真の褥瘡のように、創辺縁部に浸軟や肥厚、表皮の巻き込みといった問題がある場合は、さらに治癒の遷延やポケットの拡大を引き起こしやすくなります。 以下の写真は、比較的浅い褥瘡であるにもかかわらず、なかなか治癒しないケースです。創周囲の皮膚が浸軟していることがわかりますよね。 浸軟の原因としては、多量の油脂性軟膏を塗布していることが考えられます。油脂性軟膏は厚塗りすると外用剤と皮膚の間に汗などの水分が溜まりやすくなり、浸軟を起こしやすくなります。 それから、あてものに排泄物が潜り込んだ状態で長い時間密閉されると、皮膚は浸軟を生じます。いわば、尿で湿布をしてしまうような状態になっています。浅い褥瘡であっても治りにくくなっていきます。 上記の図は、褥瘡の深さについて、「NPIAP分類」と「DESIGN-R(※1)2020」を比較し、まとめたものです。 赤線部分が浅い褥瘡と深い褥瘡を分ける境界線です。ただし、浅い褥瘡であっても、適切なケアが行われないと治癒までの期間は長くなります。 >>関連記事写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 褥瘡の評価/セミナーレポート前編NPIAP分類とDESIGN-R2020について解説しています。 創辺縁部に問題がある褥瘡のケア 創辺縁部に問題がある褥瘡のケアでは、浸軟を防ぐ工夫も必要になります。以下の写真は、使用した外用剤に含まれる水分、および滲出液による浸軟が見られる褥瘡です。 壊死組織の自己融解のためにスルファジアジン銀クリームを使用しましたが、同薬剤は乳剤性基剤であることから水分が多く、さらに壊死組織が融解する過程でも滲出液が多くなります。こういうケースで必要なのが、創周囲の皮膚に油性の撥水クリームや白色ワセリンなどを薄く塗っておくこと。水分から創辺縁部の皮膚を守るケアをプラスするとよいでしょう。 創辺縁部に問題がある褥瘡の具体例とケア方法 最後に、写真で具体例をご紹介します。以下の写真は、いずれも滲出液が非常に多く出ているケースになります。 ここで「滲出液が多いから」とガーゼを必要以上に厚くしてしまったり、密閉性の高いパッド類を使用すると、創部の圧迫や創周囲の浸軟を起こします。 以下の写真は、そうして創周囲の皮膚が浸軟した褥瘡です。 創周囲皮膚の浸軟・肥厚・表皮の巻き込みは、褥瘡を治りにくくする大きな要因です。これらを予防するためには、外力・栄養ケアや洗浄・保湿・保護のスキンケアなどを実践しましょう。 * * * 在宅での治りにくい褥瘡に対するケアを考える際には、難治化している要因を多面的に分析し、見極めることが大切です。褥瘡を正しく評価し、利用者さんやご家族と一緒にその家でできる最善のケア方法を見つけていただければと思います。 ※1 DESIGN-Rは、一般社団法人日本褥瘡学会の登録商標です。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

【学会レポート】第13回日本在宅看護学会学術集会
【学会レポート】第13回日本在宅看護学会学術集会
特集
2024年3月26日
2024年3月26日

【学会レポート】第13回日本在宅看護学会学術集会 「在宅看護、すぐそばに在る」

2023年11月18・19日と2日間にわたり、クロス・ウェーブ船橋(千葉県船橋市)にて「第13回日本在宅看護学会学術集会」が対面・オンラインのハイブリットで開催されました。学術集会長は、東京医療保健大学教授・清水準一氏。学術集会テーマは「在宅看護、すぐそばに在る」です。聴講したNsPace(ナースペース)編集部が学会の模様をレポートします。 テーマは在宅看護へのアクセシビリティ 学会冒頭の学術集会長講演の中で清水氏が訴えたのは、在宅看護へのアクセシビリティの重要性。いまだに在宅看護にアクセスできない方は多く、地理情報システム(GIS)活用の有効性や、地理的関係を考慮した需要の分析・把握していく必要性、若い世代が離脱せず、シニア世代がアクティブに働ける環境づくりの重要性などが語られました。 シンポジウム・教育講演報告 数多くの演目がありましたが、シンポジウム(公開討論会)と教育講演について、編集部がピックアップしてレポートします。 『在宅看護専門看護師の誕生、役割の充実から今後の展望を考える』 座長:鹿内あずさ氏、長内さゆり氏 シンポジスト:河原加代子氏、長内さゆり氏、岩本大希氏 高齢者の医療・介護の需要が増大し、在宅看護への社会的ニーズが高まる中、2012年に誕生した在宅看護専門看護師の役割が重要になってきています。在宅看護専門看護師に求められる6つの役割は「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」とのこと。これに加え、地域住民や関連業界から信頼を得るためのPR(Public Relations)や、「最期まで安心して暮らせるまちづくり」への取り組みの必要性にも言及されました。地域共生社会の段階で住民同士が気にかけ合う関係性づくりや、その仕掛けをつくることも期待されており、在宅看護専門看護師は今後の社会において不可欠な存在であると感じました。(編集部I) 『看護師として「遊ぶように働く」ための業務効率化とテクノロジー活用』 座長:吉江悟氏 シンポジスト:藤野泰平氏、宮武晋治氏、大田章子氏 少子高齢化社会において訪問看護のニーズが増加する一方、その担い手が減少していることの解決策を追求すべく、業務効率化、テクノロジー化の必要性について議論されました。効率化が現実となれば、ケアを届けること、磨くことに時間をかけられます。また、アウトソーシングの需要が高まり、外部のリソースやノウハウを活用する動きについても注目。生成AIの活用事例が挙げられ、テクノロジーを活用しながら「遊ぶように働く」ことが、担い手の負担軽減につながる可能性があるのだと学ぶことができました。(編集部I) 『離島・過疎地域におけるICTを利用した遠隔死亡診断と看護』 講師:尾崎章子氏、座長:吉原由美子氏 医療にアクセスしづらい地域における遠隔死亡診断に関する教育講演でした。講演内では、「最期は島の土にかえりたい」と希望する島民は少なくないということ。しかし、本土の病院に移って最期を迎える方が多く、その願いは叶えられにくい現状にあることが共有されました。離島では、円滑に死亡診断書を交付できないことが理由で、火葬できなくなるおそれもあるとのこと。このような状況を踏まえて策定されたのが「ICTを利用した死亡診断書等ガイドライン」。このガイドラインを正しく運用するためには、医師の死亡診断をサポートする看護師が制度について正しく理解することが重要とのことでした。(編集部I) 交流集会報告 続いて、交流集会についてもピックアップしてご紹介します。 『難病療養者の災害の備えについて 防災用品を実際に体験してみよう!』 企画:今福恵子氏 ほか 本集会では、災害への備えに関する調査結果や実践内容の共有、防災用品の体験等が行われました。災害対策用のマニュアル作りや訓練が重要であること。そして、日々利用者のアセスメントを行う看護師は、災害時に状況を推測して適切な対応を行う能力を持つ重要な存在であることが示唆されました。防災グッズの体験については、「意外に力がいる」「大きな音がする」など、試さなければわからない気づきが多くありました。参加者の方々も、自身の事業所の災害対策に活かそうと熱心に体験する様子がみられました。(編集部N) 『BCP―作った?使った?よかった?』 企画:日本在宅看護学会 業務委員会 BCPを策定した日本在宅看護学会 業務委員会の方々より、各事業所のシミュレーションや訓練の実例が発表されました。備蓄の量やそれにかかる経費など、具体的な話に踏み込んで情報共有されました。災害を経験された方からは、「持ち運び可能なマニュアル」が必要というお話も。こうした場で知見が共有されることで、災害時の状況や対応を具体的に想定でき、「自分事」として捉えやすくなる貴重な場だと感じました。(編集部N) 『訪問看護事業所におけるBCP(事業継続計画)とBCM(事業継続マネジメント)』 企画:石田千絵氏 ほか NsPaceの記事([1]そもそもBCPって何だろう?)でご執筆いただいた石田千絵氏をはじめ、訪問看護BCP研究会によるBCP・BCM策定に関するノウハウが発表されました。BCPのみならず、BCMも作る必要があること、具体的なフォーマットや地理情報システムの使い方などにも言及。2024年4月の義務化に向けての実践的な解説がありました。今後特に注目すべき課題であることもあり、参加者の方々は熱心に聞き入っていました。(編集部F) 『新卒訪問看護師を「活かし・育てる」人材育成を考える』 企画:岡田理沙氏 ほか 訪問看護師の人材育成の研究をされている中村順子氏による講演や、参加者との意見交換などが行われました。課題が多いと言われている新卒訪問看護師の人材育成。「教育」を意識するよりも「面白さを分かち合える仲間になる」という気持ちを強く持つことで、結果的によい人材育成に繋がるという示唆がありました。参加者の新卒訪問看護師さんからは、「次は自分が先輩として寄り添いたい」という声も聞かれました。(編集部F) 参加者・受賞者・学術集会長のコメント 学会の参加者、主催者等のコメントもご紹介します。 情報交換会 参加者の声 1日目の終わりに行われた「情報交換会」では、登壇者や聴講していた訪問看護師・企業など、多様な方々によって情報交換が行われました。参加者の中には、訪問看護ステーションの立ち上げを考えている若手看護師も。「登壇者や参加者には若い訪問看護ステーション管理者の方もいて、勇気づけられました。情報交換会も有意義で、2日目にも情報交換会がほしいくらいですね」との感想コメントをいただきました。 学術集会賞 受賞者コメント 閉会式では、一般演題(口演・示説)からの表彰も行われました。「学術集会長賞」を受賞したのは、野口麻衣子(東京医科歯科大学)氏、山花令子氏、砂田純子氏の「専門性の高い看護職による訪問看護師への遠隔相談の試行と実用可能性の検討」でした。野口氏のコメントをご紹介します。 学術集会長賞をいただき、本当に嬉しく思っています。専門性の高い看護職による訪問看護師への遠隔相談、その思考と実用可能性の検討について発表し、その後も耳を傾けてくださった皆さまとお話する機会を持つことができました。遠隔相談の試行時には皮膚・排泄ケア認定看護師さんとがん看護専門看護師さんにご協力いただいたのですが、ニーズが多い精神科・小児科などでの実施や自治体とのコラボレーションについての示唆もいただきました。この領域への「期待」として受け取っています。 学術集会長コメント 最後に、学術集会長・清水準一氏(東京医療保健大学)のコメントをご紹介します。 学会に集まった皆さまは、現場においてさまざまな悩みを抱えているかと思います。今回の学会を通じて、共感することや、新たなアイデアを得ることがあったはず。それこそ学会の原点となるものです。研究と研究を戦わせ、自分のやり方を洗練させていくという流れこそ、ひとつの大きな醍醐味といえるのではないでしょうか。そして、若い方々の新しい発想・取り組みが多いことに感激しました。コロナ禍での停滞を乗り超え、今後大きく発展していくという期待を持ちました。 また、コーディネーターとして秋山正子さんをお招きし、故 村上紀美子さんの追悼ができたことも、研究とは異なる意味合いで印象的でした。ひとつの場所に集まることで、想いを共有できることを実感しました。 * * * 本学会では、多くの方々が集まって積極的に議論を交わし、在宅看護の課題に向き合う場となっていました。最新の実践状況や取り組みも共有し、新たな気づきを得た方も多かったようです。2024年の第14回日本在宅看護学会学術集会のテーマは「可能性がインフィニティ(∞)在宅看護」。次の学会にも注目していきましょう。 取材・編集:NsPace編集部執筆:倉持 鎮子

HOT・NPPV・HFNC・CPAPの特徴を解説。在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法の基礎知識
HOT・NPPV・HFNC・CPAPの特徴を解説。在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法の基礎知識
特集
2024年3月26日
2024年3月26日

NPPV・HFNC・CPAPの特徴を解説。在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法の基礎知識

本シリーズでは、安心して確実な在宅呼吸ケアを行えるようになるために、ケアのポイントはもちろん、機器のしくみや管理方法、トラブル対応にいたるまで、酸素療法や人工呼吸療法のエキスパートがわかりやすく解説。今回は、HOT(在宅酸素療法)と在宅人工呼吸療法について、NPPV(非侵襲的陽圧換気)やTPPV(気管切開下陽圧換気)、HFNC(ハイフローセラピー/高流量鼻カニュラ酸素療法)、CPAP(シーパップ療法/持続陽圧呼吸療法)も含め各療法の特徴を概観していきます。 増えてきた慢性呼吸不全に対する在宅医療 近年では疾患があっても住み慣れた自宅や施設で病院と同じような医療的ケアを受けて過ごしたいという患者さんが増加しています。そのような患者さんの意思や希望を尊重し、できるだけ入院の機会や期間を減らして患者さんやご家族のQOL向上をめざすのが在宅医療です。慢性呼吸不全をきたして在宅医療を利用する患者さんも多く、その原因となる主な呼吸器疾患は次に示すとおりです。 慢性閉塞性肺疾患(COPD):在宅医療を受ける慢性呼吸不全の中でも最も多くみられる疾患の1つ。比較的長期間にわたって徐々に進行することが多い間質性肺炎:労作時にかなりの高流量酸素投与が必要になるケースが多い肺結核後遺症:近年は罹患率や外科的治療の減少などにより少しずつ減少傾向にある肺がん:原発性や転移性の肺がんは在宅療養期間が上記の疾患と比較して短いものの主要な疾患の1つ神経筋疾患:非常に長期間の在宅療養となる これらの疾患患者さんに対して行われている各治療法を概説します。 在宅酸素療法とは 在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)は、主には慢性呼吸不全状態の疾患に対する酸素を吸入する治療として最も頻繁に行われています。対象疾患はCOPD、間質性肺炎、肺結核後遺症、それに肺がんや慢性心不全などの患者さんにも適応があります。図1は2010年の報告にはなりますが、在宅酸素療法を導入している患者さんで最も多い疾患はCOPDで全体の45%を占めていました。 図1 在宅酸素療法の疾患別内訳 日本呼吸器学会肺生理専門委員会,在宅呼吸ケア白書COPD疾患別解析ワーキンググループ編.「在宅呼吸ケア白書 COPD(慢性閉塞性肺疾患)医療担当者アンケート調査」,日本呼吸器学会,2010.をもとに作成 適応基準 適応基準は、安静時の室内空気吸入下で動脈血液ガスの酸素分圧(PaO2)が55Torr以下、または60Torr以下で睡眠時や労作時に著しい低酸素血症をきたす場合です。 使用する酸素供給装置 在宅酸素療法には主に「酸素濃縮器」を使用する方法と「液体酸素」を使用する方法があります。酸素濃縮器は空気から窒素を吸着して約90%以上の酸素濃度に濃縮する装置です。3L/分程度から10L/分ほどの高流量の酸素を流せるものや、通常の設置型と充電して持ち運んで使用できるポータブルタイプなど、さまざまなものが提供されています。 液体酸素は、自宅に液体酸素の入った大きなタンクを設置し、酸素チューブを介してタンクから直接酸素を吸入する方法であり、外出時には小型の容器に液体酸素を移して持ち運ぶことができます。 使用するデバイス 在宅酸素療法で使用されるデバイスで最も一般的なものは鼻カニュラです。これは比較的手軽に負担なく装着できますが、患者さんの一回換気量や呼吸回数の影響を受けやすく、同じ酸素流量でも患者さんの呼吸状態により吸入気の酸素濃度が異なってしまうことに注意が必要です。また6L/分以上の流量では鼻粘膜への刺激が強くなるため、一般的には5L/分までの流量となっています。より高流量の酸素投与が必要な場合にはリザーバー付きカニュラや開放型酸素吸入システムを使用することもあります。 酸素流量の設定 酸素流量の設定は、一般的にはPaO2≧60〜80Torr(SpO2 90〜95%)を目標とします。しかし、COPDや肺結核後遺症などにしばしば認められる慢性II型呼吸不全、つまりCO2貯留傾向にある患者さんに対しては、換気状態を維持してCO2ナルコーシスを避ける必要があります。やや低めの目標設定が必要となるため、酸素流量や吸入デバイスの選択にも注意を要します。 在宅人工呼吸療法とは 在宅人工呼吸療法(home mechanical ventilation:HMV)とは、在宅で人工呼吸器を使用して換気の補助を行う治療法です。HMVにはNPPVとTPPVの2つの方法があります。 在宅NPPVとは NPPVとは「non-invasive positive pressure ventilation」の略で、非侵襲的陽圧換気を意味します。 慢性呼吸不全患者さんのうち、呼吸困難や下腿浮腫などの肺性心の兆候があり、低酸素血症に加えて慢性的なCO2貯留傾向を示す患者さんに対しては、継続的な補助換気(人工呼吸療法)が必要となる場合があります。その中で導入が比較的容易で侵襲度が低いNPPVは第一選択であり、気管内挿管や気管切開をすることなくマスクを介して換気を行うことができます。 マスクは鼻マスクや口鼻マスク(フルフェイスマスク)を使用します。徐々に病状が進行してきた安定期(慢性期)に導入する場合と、II型呼吸不全の増悪によって入院時にNPPVを導入してからそのまま在宅に移行する場合などがあり、導入基準は疾患によって少し異なります。CO2貯留の程度と低酸素血症、増悪の頻度などによって導入が検討されます。実際に導入されている対象疾患はCOPD、肺結核後遺症、神経筋疾患が主なものとなります。 一方で自発呼吸が弱い、もしくはない場合や認知症で協力や理解が得られにくい場合、顔面の外傷、皮膚障害などでうまくマスク装着ができない患者さんに対しては適応外となってしまいます。 在宅TPPVとは TPPVとは「tracheostomy positive pressure ventilation」の略で、気管切開下陽圧換気を意味します。気管を切開し、確実に空気を肺に送り込むことができるので、自発的な呼吸が十分できない場合に導入されます。 以前は病院で気管内挿管による人工呼吸管理を受け、抜管が困難となった症例に対して気管切開を施行し、そのまま在宅に移行していたケースが多くみられました。NPPVが保険適応となってからは大多数の症例が在宅NPPVで対応できるようになってきたため、在宅TPPVの患者さんの数は減少しています。 しかし、筋力低下や球麻痺が進行する神経筋疾患患者はNPPVでは対応することができず、TPPVを施行せざるを得ません。したがって現在では在宅TPPVを施行している患者さんの8割近くは筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)や筋ジストロフィーといった疾患が主体となっています。 NPPVとTPPVの違いについては、表1に簡単にまとめました。 表1 NPPVとTPPVの比較表 *【VAP】ventilator-associated pneumonia:人工呼吸器関連肺炎 在宅ハイフローセラピーとは 在宅ハイフローセラピーとは在宅で行う「高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula oxygen therapy:HFNC)」のことです(図2)。 通常の鼻カニュラであれば6L/分以上の流量で鼻粘膜への刺激が強くなり、FiO2(吸入気酸素濃度)の上昇はあまり期待できません。より高流量の酸素投与を行うためには、ほかのデバイスへの変更を要しますが、マスクは口元まで覆われるため飲食がしにくく、患者さんが閉塞による不快感を訴えることもしばしばです。 一方、ハイフローセラピーは、専用の鼻カニュラを介して加温加湿した高流量の空気と酸素の混合ガスを投与する方法の1つで、さらに高流量の酸素投与が可能になります。メリットは次のとおりです。 口を覆わないことによる快適性PEEP*効果が得られる解剖学的死腔のウォッシュアウト一定の酸素濃度を投与できる十分な加温加湿による気道クリアランスの維持 など 在宅ハイフローセラピーは病院内での使用とはやや異なり、今のところ適応はPaCO2が一定の範囲のCOPD患者さんに限られています。 *【PEEP(Positive End Expiratory Pressure)】気道内圧が低下する呼気の終わりにも一定の陽圧をかけて、呼気時に肺胞や末梢気道がつぶれないようにすること 図2 在宅ハイフローセラピーの装置の例と鼻カニュラの装着イメージ (画像提供:Fisher & Paykel Healthcare 株式会社) (画像提供:レスメド株式会社) CPAPとは CPAPとは「continuous positive airway pressure therapy」の略で、「シーパップ療法」、「持続陽圧呼吸療法」と呼ばれます。 主に閉塞性睡眠時無呼吸に対する代表的な治療法です。鼻マスクもしくはフルフェイスマスクを装着して気道内に陽圧をかけて気道の閉塞を防ぐことにより、睡眠時に生じる無呼吸を抑制して低酸素血症を改善します。日中の眠気をはじめとした自覚症状の改善や合併症の予防・改善、生命予後の改善、交通事故リスクの軽減、心疾患イベントの減少などの効果が認められています。 CPAPはほかの治療法とはやや異なり、比較的若く、ご自身で機器の管理が可能な患者さんに導入されるケースがほとんどです。ただし、導入された患者さんが高齢になった場合、訪問看護で対応する必要性が多くなることが考えられます。 * * * ここまでご紹介してきた呼吸器関連の治療法は、どれも訪問看護で対応する必要性があるものばかりです。各治療法の位置づけは図3のようなイメージです。また、訪問看護に関連する診療報酬(在宅療養指導管理料)を表2にまとめましたので、こちらもご参照ください。 次回以降の連載で、各治療法についてのさらに詳しい解説や患者さんの観察・アセスメント、治療継続のためのポイントなどについての看護師、医師、臨床工学技士といった専門的な立場からお話しする予定です。より理解を深めていただき実際の現場で安心して確実なケアを行っていただけることを願っております。 >>シリーズ一覧はこちら「訪問看護と酸素・人工呼吸療法」https://www.ns-pace.com/series/hot-hmv/ 図3 呼吸器関連の治療法の位置づけ HMVの実施方法にはTPPVとNPPVがある。HFNCはNPPVとHOTの中間的な治療法として位置づけられている。睡眠時無呼吸症候群の治療に使われるCPAPは人工呼吸療法に含まれない。*1【HMV】home mechanical ventilation:在宅人工呼吸療法*2【TPPV】tracheostomized positive pressure ventilation:気管切開下陽圧換気*3【NPPV】noninvasive positive pressure ventilation:非侵襲的陽圧換気*4【HFNC】high flow nasal cannula:高流量鼻カニュラ酸素療法*5【HOT】home oxygen therapy:在宅酸素療法*6【CPAP療法】continuous positive airway pressure therapy:シーパップ療法、持続陽圧呼吸 表2 在宅での呼吸管理に関連する在宅療養指導管理料 監修・執筆:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 呼吸器内科 主任部長呼吸ケアセンター センター長編集:株式会社照林社

食中毒の原因・応急処置・注意点を解説
食中毒の原因・応急処置・注意点を解説
特集
2024年3月26日
2024年3月26日

【食中毒予防】梅雨の時期は要注意!食中毒の原因・応急処置・注意点を解説

細菌やウイルス、有害物質等が付着したものを食べることで、下痢・嘔吐などの症状が出る食中毒。梅雨の時期は高温多湿により食中毒の原因菌が増えやすいため、より一層の注意が必要です。特に小さな子どもや高齢者は免疫力が低いため、食中毒が重症化するリスクが高いとされています。 今回は、梅雨の時期に特に気を付けたい食中毒の原因や応急処置、注意点などについて解説します。訪問看護の現場でも、利用者さんやそのご家族から食中毒について質問されることもあるでしょう。その際に答えられるように、食中毒について基本的な知識を再確認しておくことをおすすめします。 食中毒の原因と分類 食中毒の原因は、ウイルスや細菌、植物をはじめとした自然毒、寄生虫、化学物質などさまざまですが、大半を占めるのが「ウイルス性食中毒」と「細菌性食中毒」です。 ウイルス性食中毒は、ウイルスが付着している食品や人の手を介して感染します。主な原因はノロウイルスです。細菌性食中毒には、サルモネラ菌やカンピロバクターなどが増殖した食品を摂取することによって生じる「感染型」、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などの細菌から産生された毒素を食品とともに摂取することによって生じる「毒素型」に分けられます。 そのほかフグ毒や貝毒、毒キノコ、ジャガイモの芽といった「自然毒食中毒」、農薬やヒスタミン、油脂の酸敗といった「化学性食中毒」、魚介類、生肉、野菜に寄生している虫による「寄生虫」に分類されます。 食生活において、特に注意が必要なのは細菌性食中毒でしょう。自然毒についても、十分な知識なく有毒な山野草を口にすることで食中毒になるケースがあるため気を付けたいところです。 食中毒になりやすい食べ物・飲み物 どのような飲食物でも食中毒になる可能性がありますが、特に次のようなもので多数発生しています。 飲みかけのペットボトル 飲みかけのペットボトルには、人の口腔内や鼻腔、皮膚などに存在する黄色ブドウ球菌が付着しています。短時間で飲みきるのであれば問題ありませんが、時間を置いたり細菌が増えやすい高湿度な環境に放置したりすると、食中毒になるリスクが高まります。これは、食べかけのお弁当やおにぎり、パンなどにもいえることです。また、製造過程で黄色ブドウ球菌が付着し、それを食べた人が食中毒になる場合もあります。 黄色ブドウ球菌が作る毒素は強力で、加熱では除去できません。食中毒になった際の症状は吐き気や腹痛などで、汚染された食品を口にしてから30分~6時間程度で発症します。 鶏肉等の生焼け肉 鶏肉や豚肉、牛肉などの生焼け肉には、サルモネラ菌やカンピロバクターなどが付着しています。牛肉は表面にしか細菌が付着していないため、中まで火が通っていなくても問題ないとされています。しかし、調理工程で細菌が付着するリスクもあるため、食中毒を防ぐという観点からは中まで十分に火を通すことが大切です。 食中毒になった際の主な症状は、食後数時間から数日後に現れる吐き気や腹痛、下痢、発熱などです。 生野菜 生野菜には、腸管出血性大腸菌のO157やO111などが付着している可能性があります。また、十分に加熱されていない肉に細菌が付着しており、生肉に触れた手や包丁、まな板などが生野菜に触れることが原因で食中毒になるケースも少なくありません。細菌は十分な加熱によって死滅するため、うっかり生肉を触った手で生野菜に触れた場合は加熱調理しましょう。 腸管出血性大腸菌による食中毒は、食後12~60時間に激しい下痢や血性下痢(下血)が腹痛とともに現れます。重症化によって亡くなるケースも珍しくないため、より一層の注意が必要です。 魚介類 十分に加熱していない魚介類には、ノロウイルスや腸炎ビブリオ菌、貝毒等による食中毒のリスクがあります。ノロウイルスによる食中毒は冬季に流行すると知られていますが、ウイルス自体は1年を通して存在しており、夏場にも発生しています。なお、貝毒は熱に強く、十分に加熱しても無害にはなりません。貝毒は2~4月、6~8月に発生しやすいため、この時期を中心に国によって貝毒検査が行われています。 ノロウイルスは牡蠣やアサリ、シジミといった二枚貝、腸炎ビブリオ菌は魚介類全般に見られます。いずれも熱に弱いため、十分に加熱することで食中毒を防ぐことができます。ノロウイルス食中毒になった場合は、食後1~2日程度で下痢・吐き気・腹痛・発熱などの症状が現れます。 有毒植物 有毒植物については、厚生労働省が定期的に注意喚起しています。食用と間違えやすい有毒植物には、ニラと似たスイセン、ギョウジャニンニクと間違えやすいバイケイソウ、ジャガイモやタマネギと似たイヌサフラン、サトイモと似たクワズイモなどがあります。 嘔吐や下痢のほか、頭痛やめまい、手足のしびれなど全身に症状が現れます。イヌサフランについては重症の場合は死亡することもあるため、より一層の注意と速やかな対処が必要です。 食中毒の応急処置 食中毒を疑う症状が現れた場合は、脱水症状を防ぐために水分を補給しましょう。また、吐き気や嘔吐がある場合は、食べ物が気道に詰まらないように横向きに寝かせます。下痢止めは、食中毒の原因菌やウイルスの排泄を阻害し、症状を悪化させるおそれがあるため、自己判断で使用してはいけません。また、解熱鎮痛剤も同様です。 激しい嘔吐や呼吸困難、意識がもうろうとする、血便や激しい下痢が続くなどした場合は、医療機関を受診しましょう。 食中毒を防ぐために普段から注意しておくこと 食中毒を防ぐために、利用者さんには以下のような行動を奨励しましょう。 手洗いを徹底する食べかけのものは冷蔵や冷凍はせず、食べきるか廃棄する食材の賞味期限や保存方法を守る劣化や変色が見られる場合は適切に処分する食品を再加熱する際は、十分に加熱する 上記の中でも、食べかけのものを保存するケースに気をつけましょう。特に認知症の方は冷蔵庫にいつから入れていたものかわからないものを口にしてしまうことがあります。「もったいない精神」によって変色しているものを口にする可能性もあるため、注意しておきましょう。 * * * 食中毒は、不衛生な調理方法をした場合だけでなく、保存方法の問題や不十分な再加熱によっても起きる可能性があります。また、誤って有毒植物を口にしてしまうこともあるでしょう。食中毒は身近なトラブルのため、梅雨の時期はより一層の注意が必要です。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇厚生労働省.「食中毒」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html2024/3/21閲覧〇農林水産省.「食中毒の原因と種類」https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/afp1.html2024/2/12閲覧〇日本訪問看護財団.「有毒植物による食中毒防止の徹底について 」https://www.jvnf.or.jp/newinfo/2023/230413rouken-tsuchi.pdf2024/2/12閲覧

治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針 ~
治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針 ~
特集 会員限定
2024年3月19日
2024年3月19日

治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針~【セミナーレポート前編】

2023年12月15日(金)に開催したNsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「治りにくい褥瘡のケア~在宅で治癒を目指す方法~」。在宅創傷スキンケアステーションの代表で、皮膚・排泄ケア認定看護師でもある岡部美保さんを講師に迎え、治りにくい褥瘡をケアする際に役立つ知識やノウハウを教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、低栄養によって治癒が進まない褥瘡に対するアプローチや創傷治癒の基本的指針についてまとめます。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】岡部 美保さん皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 「治りにくい褥瘡」とは 治りにくい褥瘡の代表例としては、以下の5つが挙げられます。 慢性的な低栄養状態複数の褥瘡を有している創部やポケットのサイズが大きい局所に臨界的定着疑いがある創周囲の皮膚(創辺縁)に浸軟や肥厚、表皮の巻き込みなどの問題がある また、上記の褥瘡が生じる原因には以下のようなものがあり、褥瘡があるご本人の問題と、療養生活環境の問題の2つに分類できます。 >>関連記事褥瘡の基礎知識 発生原因・予防的スキンケア・在宅療養生活でのポイント褥瘡の基礎知識についてはこちらをご参照ください。 慢性的な低栄養状態があるケース まずは、「慢性的な低栄養状態」への対応方法を見ていきましょう。例えば、こちらは一人暮らしの高齢者男性の冷蔵庫、および食事の写真です。 冷蔵庫の中には、基本的に調理不要の食べ物が入っており、食事内容を見ると、栄養バランスが偏っていることがわかりますよね。エネルギー摂取量も不足しています。 このように低栄養の状態が続くと、以下の写真のような治りにくい褥瘡ができやすくなります。 栄養状態の評価方法 まずは現在の栄養状態を評価します。以下の簡易栄養状態評価表(MNA-SF)は、在宅で活用しやすい評価スケールでしょう。 ふくらはぎの周囲径と、資料右側のAからF2までの質問への回答があれば、BMI測定が難しくても栄養状態をスクリーニングできます。 褥瘡の治癒に必要な栄養素 以下の資料は、褥瘡の治癒を目指すにあたって必要なエネルギーとたんぱく質量、そして食材に含まれるたんぱく質量をまとめたものです。 褥瘡の治癒を促進するためには、1日あたり約1,600〜1,800kcal(体重45kg)のエネルギー摂取が推奨されています。また、たんぱく質は体重1kgあたり1.25〜1.5gが目標となっており、体重45kgで1,350kcalを摂取する方なら50〜70gになります。食材に含まれるたんぱく質量を参照すると、毎日必要量を確実に摂取することは難しい場合もあると思います。そのため、「目標値にできるだけ近づけられるような支援を目指す」という意識を持って看護や介護ができると良いと思います。 また、アミノ酸やビタミン類、微量元素を摂ることも重要なポイントです。とくに、褥瘡の治癒にはコラーゲンペプチドが非常に有効です。コラーゲンペプチドは、飲料やゼリータイプのものが市販されていますので、経口摂取の状態やお好みに合わせてお選びいただくことができます。 創傷治癒の基本指針 TIMEコンセプト 次に、創傷治癒の基本的な指針についても押さえておきましょう。創傷治癒遅延の要因を取り除き、創面の環境を整えて治癒を促進する「創面環境調整(wound bed preparation:WBP)」という概念として、「TIMEコンセプト」があります。TIME(タイム)とは次のスライドに示した4つの臨床的観察ポイントに合わせ、具体的対策が提示されています。 例えば、「活性のない組織または組織の損傷(Tissue non-viable or deficient)」が見られる場合は、デブリドマンによる壊死組織の除去を行うことで、創面の環境を整えます。「感染または炎症(Infection or inflammation)」が起こっている場合は、全身的な治療を含め、感染創に有効な外用剤などを用いて感染のコントロールを行います。「湿潤のアンバランス(Moisture imbalance)」があるときは、創面が乾燥したり、過剰に湿潤した状態にならないケアが大切です。創部の肉芽形成や上皮化に重要な細胞の増殖・遊走のためには適度な湿潤環境が重要です。「創縁の治癒遅延またはポケット(Edge of wound non advancing or undermined)」がある場合はポケットを縮小させるために正しい評価と治療が大切になります(詳細は後編参照)。 DESIGN-R2020に基づいた褥瘡ケア DESIGN-R(※1)2020も病院や訪問看護の現場で重要な褥瘡評価ツールとして利用されています。DESIGN-R2020はTIMEコンセプトと同じく、壊死組織を取り除き、肉芽形成をし、創の収縮を促すというステップで治癒を目指します。褥瘡が発生した場合、一つひとつの褥瘡をきちんと評価して、その褥瘡状態に合ったケア方法を考えることが大切です。 >>関連記事写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 褥瘡の評価/セミナーレポート前編DESIGN-R2020について詳しく解説しています。 「活性のない組織または組織の損傷」のケア例 ここで、TIMEコンセプトの「T」にあたる「活性のない組織または組織の損傷」の例をもう少し詳しく見てみましょう。 訪問看護の現場で行われるデブリードマンでは、スルファジアジン銀クリームを使用した自己融解的デブリドマンなどがあります。また、ブロメラインの軟膏を使った酵素的デブリドマンを行うケースもあります。水分を含んだ柔らかい壊死組織で覆われた創面などに有効です。肉芽組織が多い創面では、薬剤の持つたんぱく分解酵素の特徴から痛みや灼熱感を生じる場合がありますので、使用の際は注意が必要です。 なお、以下はDESIGN-R2020に基づいた在宅における褥瘡ケアの外用剤をまとめたものです。ケアに迷われた時のご参考になればと思います。 次回は、治りにくい褥瘡に対する具体的なケア方法に焦点を当てて解説します。 >>後編はこちら治りにくい褥瘡ケア/~代表例と具体的なケア~【セミナーレポート後編】 ※1 DESIGN-Rは、一般社団法人日本褥瘡学会の登録商標です。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

ニャースペース【訪問看護あるある】
ニャースペース【訪問看護あるある】
特集
2024年3月19日
2024年3月19日

漫画「話しすぎ注意」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

利用者さんについプライベートの話を… 利用者さんとお話しするのが楽しくて、ついつい自分のプライベートのこともお話ししてしまうにゃ。 「ここだけ」のつもりが、いつの間にか同僚に伝わっていることも…! ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

高齢者の頭の体操10選 脳トレ
高齢者の頭の体操10選 脳トレ
特集
2024年3月19日
2024年3月19日

高齢者の頭の体操10選 脳トレに期待できる効果や方法について解説

頭の体操によって脳をトレーニング(脳トレ)することで、認知機能によい影響を与えられる可能性があります。多くの高齢者施設やデイサービス、訪問介護などで行われており、その効果を実感している高齢者の方も少なくありません。 本記事では、高齢者の頭の体操による脳トレの方法や期待できる効果などについて詳しく解説します。利用者さんに脳トレについて質問されたときに答えられるようにしておくことが大切です。また、訪問看護師から利用者さんに向けて、脳トレをおすすめするのもよいでしょう。 脳トレとは 脳トレとは、頭の体操によって脳を活性化させることです。高齢者は若年者ほどアクティブに活動したり考えたりする機会が少ないため、どうしても脳の働きが低下しがちです。脳トレは、体力が衰えている高齢者も心身に大きな負担をかけずに楽しめます。 高齢者に対する脳トレの効果 脳トレでは、複数の思考や動作を同時に行います。これにより認知機能の向上が期待できるため、認知症予防の一環としても行われています。 老化に伴って低下する記憶や注意力、問題解決能力などが改善されることで、高齢者の活動性や生活の質が向上する可能性があります。 高齢者が在宅でできる脳トレ 高齢者が自宅や施設などでできる脳トレの方法を紹介します。 簡単な計算問題を解く 簡単な計算問題を解くことは、頭の体操になります。紙と鉛筆を使うことで指先も刺激されるため、脳と体の両方のトレーニングが可能です。足し算やかけ算、割り算、九九など、いくつかのバリエーションを取り入れましょう。 なぞなぞを解く なぞなぞを解く際は、言葉の意味を考えたり風景をイメージしたりします。同時に複数のことを行うため、脳トレにつながります。 例えば、「辛くて食べられる椅子は?」というなぞなぞの答えは「カレーライス」です。このように、「椅子」と前文の意味を踏まえて柔軟に考える必要があります。 漢字の書き・読み 漢字の書き・読みでは、記憶を思い出す必要があるため、脳トレの1つとして効果が期待できます。簡単なものから難しいもの、四字熟語などさまざまなパターンの問題を出しましょう。 例えば、「秋刀魚(さんま)」「五月雨(さみだれ)」など、漢字自体は小学生で習うものの、少し難解な熟語を問題にするとよいでしょう。 制限付きしりとり 制限付きしりとりは、食べ物や家具などジャンルに制限をつけて行うしりとりです。制限なしのしりとりと比べて熟考が必要なため、脳をより強く活性化できるでしょう。 最初は「食べ物」のように大きなジャンルにし、慣れてきたら「果物」「野菜」など小さなジャンルで制限すると白熱するかもしれません。 間違い探し 2枚の絵を用意して間違い探しをする脳トレです。1枚の絵を見て記憶し、2枚目の絵との違いを見つける必要があるため、脳の活性化につながります。人によってレベルが異なるため、最初は簡単なものから始めましょう。 連想問題 連想問題は、スタートとゴールの言葉を設定し、連想を続けてゴールを目指すゲームです。例えば、スタートを「りんご」、ゴールを「椅子」として、「りんごといえば赤色」「赤色といえばトマト」のように連想してゴールを目指します。なお、スタートとゴールの言葉がかけ離れすぎてしまうと、なかなかゴールに辿り着かなくなってしまうため、注意しましょう。 高齢者が在宅でできるレクリエーション(脳トレ+運動) 脳トレに運動を加えたレクリエーションもご紹介します。在宅で利用者さんと訪問看護師の2人から実施可能ですが、車いすを利用している利用者さんや視覚・聴覚等に障害がある利用者さんに関しては、必要に応じてサポートしながら行いましょう。 数えながら指を曲げる体操 指を単に曲げるのではなく、数えながら曲げることで頭と体の両方を同時に使う脳トレです。体を大きく動かす必要がないため、体力が低下している方も行いやすいでしょう。 親指から小指まで、「1、2、3」と数えながら曲げていき、終わったらもう一方の手も同じように行います。 後出しじゃんけん 後出しじゃんけんは、相手が出した手に対して、勝つか負けるかの指示どおりの手を出すゲームです。例えば、相手に勝つ指示の場合、チョキを出されたらこちらはグーを出します。また、相手が口でチョキといい、こちらは手か足でグーを出すなど、手足や口を組み合わせるのもおすすめです。 足を使ったじゃんけん 足を使ったじゃんけんは、普段は手で行うじゃんけんを足でするゲームです。グーは両足を揃え、チョキは両足を前後に開き、パーは両足の間隔を大きく開けます。脳トレに加えて足の運動にもなります。 リズム体操 リズム体操は、音楽に合わせて体を動かす体操です。ふりつけは独自に考えてもよいですが、さまざまなリズム体操の動画がインターネット上で公開されているため、参考にするとよいでしょう。 マルチタスクトレーニング マルチタスクトレーニングは、合図によって動作を変更することで心身をトレーニングするゲームです。例えば、右手で鼻、左手で右の手首を持ち、合図とともに左手で鼻、右手で左の手首に持ち替える、といった具合に動作を変更します。 * * * 高齢者の脳トレは、認知機能の向上につながります。体を動かすレクリエーションであれば、身体機能の向上も期待できるでしょう。ただし、車いすを利用している、視覚・聴覚等に障害があるなど、利用者さんの状態を踏まえて脳トレやレクリエーションを選び、必要に応じてサポートすることが大切です。脳トレはどれも簡単にできるので、ぜひ参考にしてみてください。 編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表(入賞)
つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表(入賞)
特集
2024年3月12日
2024年3月12日

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。厳正な審査を経て、受賞作品が決定しました。本記事では、入賞エピソード12件をご紹介します! 大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞はこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞 「最後のお風呂」 投稿者: 小川 綾乃(おがわ あやの) さん ソフィアメディ訪問看護ステーション雪谷(東京都) A君は初対面の私に「背中撫でて、痛いの」と言って小さな背中を向けた。少しでもがんの痛みが和らげばとそっと手を当てる。泣きながら痛みと戦う小さな背中を撫でるだけの3日間。4日目のA君は座ってDVDを見ていた。「一緒に見よう」と笑顔で私を誘うA君は無邪気な5歳の男の子だった。翌朝A君が旅立ったと聞いて駆け付けた。「お風呂に入れてあげたかったな…ずっと入ってなかったから」お母さんがA君の頭を撫でながら呟く。「お風呂入りましょう」と声をかけて準備しご両親にA君をそっとお渡しする。ご両親と入る最後のお風呂。「気持ちいいね…」「ごめんね…」ご両親が涙ながらに声をかける。浴室の外で待つ私も涙が止まらない。お風呂から出て大好きなアンパンマンの洋服を着た穏やかな顔のA君を抱っこしながら「最後に家族みんなでお風呂に入れてよかった。5日間だったけど本当にありがとう」と話すお母さんの顔は泣きながらも笑顔だった。 2024年1月投稿 「スタッフの成長・管理者の涙」 投稿者: 西尾 まり子(にしお まりこ) さん 地域ケアステーション八千代・訪問看護ステーション(大阪府) 訪問看護ステーション管理者3年目に自分に自信をつけたいと思い訪問看護認定看護師養成学校の受講をした。管理者をしながらの週末の受講であった。2月になり感染症が流行し利用者の急変やスタッフの休みが増えシフトが回らない状況になりつつあった。私は悩んだが新幹線に乗った。しかし、スタッフに電話し「やっぱり大阪に帰るわ。これ以上みんなに迷惑かけられへん」と伝えた。するとスタッフから「帰ってこないでください!認定の学校に行きたいと言われた時、これくらい大変になる事くらいみんな予測してました。こんな時のために皆で無視しない助け合う約束をしています。だから頑張って来てください!何とかします!しっかり勉強して色々教えてくださいね」と言われ涙が止まらなかった。管理者となり、自分が一人で必死になりスタッフを支えているつもりでいたのが、本当は自分がみんなに支えてもらって管理者にしてもらっていたのだと深く感じました。 2023年12月投稿 「足の爪切りから始まる看護」 投稿者: 大慈 めぐみ(だいじ めぐみ) さん 訪問看護ステーション ナースであんしん湘南(神奈川県) 96歳男性。膀胱がん末期。「出来ることは自分でやりたい」という思いが強く、他者の介入が難しい状況。転倒を繰り返したり、入浴困難になり、ご家族とケアマネジャーは支援が必要な状態であると判断するが、受け入れず。ある日、足の爪切りだけは自分で出来ないと、訪問看護の依頼があった。まずは足の爪切りで訪問し、信頼関係を築くことに。お話をしながらさりげなくお困り事を聴き…。その結果、週2回の入浴介助、褥瘡処置、内服管理の支援が出来るようになった。1か月半が過ぎた頃、体調が急激に悪化…。最期は、施設スタッフのご協力もあり、住み慣れた場所でご家族に見守られ永眠された。病気による疼痛や倦怠感がある中でも、いつも奥様の体調を気遣う優しい言葉。入浴後は、「ありがとうねぇ」と、穏やかな声で言って下さったこと。髭剃りが難しく、上手に剃れなくても「すっきりしたよぉ」と気遣って下さったこと。関係機関の皆様との連携の大切さを改めて実感したりと、多くの事を学ばせていただきました。A様は、もと学校の先生。引退された後も、こうして私達に素敵な授業をして下さいました。 2024年1月投稿 「最期の友人」 投稿者: 日高 志州(ひだか しず) さん 訪問看護ステーションおはな(埼玉県) 70代の男性、お調子者で独居の大酒飲み。今にも崩れそうなボロ家で好き勝手暮らし、年金は近場のスナックで散財していた。大腸がんがみつかり、残り少ない余命宣告をされたが、家での最期を望み帰ってきた。もちろん生活指導など聴き入れず。何か真面目な話をするとすぐ「あんたがあと30年早く産まれてくれりゃ、結婚考えてやったのになぁ…」などと冗談で返答し、私も負けじと「私と結婚するならスナック通いは禁止です」と応戦した。しかし死期が近くなり、少しずつ体にガタが出始めると、ずいぶん弱気になってきた。トイレが近い、目がくらむ、もう1人で生活するのは心細いと話され、何度も話合った結果、施設への入所が決まった。入所の当日、一緒に荷物をまとめ、お迎えの車へ車椅子で向かった。乗り込む直前、私に握手を求めてきた。「あんたは最期の友人。忘れてもいいけどたまには思い出してよ」と冗談を言って笑顔で乗り込んだ。ずっと忘れない。 2024年1月投稿 「笑顔の看取り」 投稿者: 服部 景子(はっとり けいこ) さん 愛全会 訪問看護ステーションとよひら・ちゅうおう(北海道) 訪問看護師となり8年が過ぎた頃、最愛の母が余命宣告されました。一人っ子の私にとって、親友や姉妹のような大切な存在だった母の願いは「もうすぐ死ぬなら旅行がしたい」でした。渋る先生を説得し沢山の医療品を持って、札幌から軽井沢、伊勢神宮、沖縄へと3回の家族旅行をする事が出来ました。「私のせいで大好きな仕事をやめる事になってごめんね。でも貴女がいつも側にいてくれて心強いし、毎日娘の顔を見られて本当に幸せ。出来れば最期までこの家に居たい」と母が涙した時、最後の願いを叶えてあげたいと家族で団結し、自宅での看取りを決めました。最期は父と、私の夫の手を握り「あ・り・が・と・う」と言って旅立った母。そこに涙はなく皆の穏やかな笑顔がありました。あれから4年。家族の苦悩を経験し、在宅看取りの素晴らしさを体験し復職した今、母のおかげで前より少し利用者さんとご家族の心にそっと寄り添えている様な気がしています。 2024年1月投稿 「余命を伝えないということ。」 投稿者: 小野寺 志乃(おのでら しの) さん 公益財団法人 宮城厚生協会 ケアステーション郡山(宮城県) 60代肺がん末期の男性の訪問看護が始まりました。往診から余命は3ヶ月と告げられたご家族からは本人には余命は伝えないでほしいと言われていました。しかし利用者本人も「自分の体だから分かる、いつまで生きられるんだ?」家族からは言わないように言われている、嘘もつきたくない、自分に訪問がつくたび何と声をかければ良いのか葛藤しながら訪問に向かいました。痛みや苦しさを家族に当たり散らした日には奥様が泣きながら話されることもありました。そして利用者様は家族親戚に囲まれて息を引き取られました。翌日聞いた話では亡くなる日の朝に「迎えがきた、会いたい人に会わせてくれ」と。ご家族もびっくりされていましたがとにかく連絡をして会いに来てもらっていました。最後に奥様に話される時「ラブラブな時間を奪わないでくれ」と娘様までも追い出したそうです。2人きりになるなり奥様の顔を手で包み「しわしわになったな、俺のせいか。これからも愛してるよ」と言って翌朝に亡くなられたそうです。余命を伝えなくても人生の終わりを迎える日が分かっていたんだと私自身も貴重な経験ができました。家族という存在も生きる原動力になると私は思いました。 2024年1月投稿 「思い出の淡路島」 投稿者: 池田 裕季(いけだ ゆうき) さん 社会医療法人社団正峰会 正峰会訪問看護ステーション(兵庫県) 今でも海を見ると思い出す利用者さんがいます。初回介入時点では交通機関を利用して単独外出が可能でしたが、1か月経過頃から床上生活を余儀なくされました。利用者さんはお洒落をして外出するのが趣味で、ご主人とはよく淡路島へドライブに行っていました。残された時間が少ないことは本人も感じており、涙ながらに「最期に淡路島に行きたい」と伝えてくれましたが、状態が悪く外出許可が下りませんでした。しかしステロイドの内服により活気が蘇り、この機を逃さないよう主治医から外出許可を取りました。家族との絆の深さ、関係各所の協力に支えられ、許可を得た週末に、家族全員での淡路島旅行を決行できました。時間としては移動も含めて2時間程度の旅行でしたが、「楽しかった~!」と笑顔で帰宅。その日は朝から雨が降っていましたが、家族写真には全員の眩しい笑顔と綺麗な青空が収められていました。帰宅から約6時間後、眠るように永眠されました。 2023年12月投稿 「ワンチームで叶える最後の願い」 投稿者: 坂下 聡美(さかした さとみ) さん 一般社団法人 在宅看護センター北九州訪問看護・リハビリステーション 在宅看護センター北九州(福岡県) 2023年10月、スリランカに嫁いだ娘が帰ってくると嬉しそうに語るY様。余命は、週単位となっていた。Y様家族は、実行したいリストなどを作成し、私たち訪問看護師に見せて下さる。私たち訪問看護師は、介入して間もなかったが、その温かいご家族の空気感の中、いつの間にかその家族の一員になっていくような感覚を覚えた。11月に入り、「菊花祭、見に行けるかな…」と呟くY様。娘様曰く、息子様が新車を購入したので交通安全祈願のついでに、家族みんなでお出かけしたいとのことであった。ちょうどその時、主治医がお見えになられ、勇気を振り絞り、「最後の家族外出をしたい」と、Y様が仰った。主治医は、深くうなずいて見守る私たち訪問看護師の目を見て、「ワンチームでその願い叶えましょう!」と、英断され、そこからが、このチームのすごいところ。訪問看護師の鶴の一声で、多職種各事業所の方も参加下さり、「最後の外出」を決行した。当日、天気にも恵まれ、神様もワンチームとなったその日から4日後に旅立たれた。菊を見たら、今でもその時の光景を思い出す。 2024年1月投稿 「感謝の気持ちと恩返し。」 投稿者: 鉾山 英美(ほこやま えみ) さん りゅうじん訪問看護ステーション枚方公園(大阪府) 病棟に5年勤め、訪問看護に携わり10年以上続けています。病棟では、環境の変化や人間関係から鬱病になり、一度看護師を辞めました。看護師を辞めて半年程すると、また看護師をしたいなぁと思い、知人の紹介で初めて訪問看護の世界に飛び込みました。まだ鬱病も治っていない状況で、私の中では社会復帰と思いながらまずは週2回の勤務から始めました。それでも、時々言いようのない不安や怖さに襲われ、事務所の最寄り駅に着いたら涙が溢れ、立ち竦むこともあり。出勤できない日もありました。それでもスタッフの皆が理解してくれ、温かく見守ってくれました。徐々に訪問を重ねる中で、利用者様から「また来てな」と声を掛けられたり、スタッフとも気兼ねなく話せるようになり、出勤日数も徐々に増やせました。移動中に見る景色、利用者様とのゆったりした時間。スタッフや家族のサポートがあり、鬱病を克服することができました。そして、ずっと訪問看護を続けています。あの時、訪問看護で働いていなければ、今の私はいません。私を救ってくれたこの仕事にいつも感謝し、恩返しの気持ちでいっぱいです。大好きな仕事です。これからも続けていきます!訪問看護ありがとう! 2024年1月投稿 「心に残る誕生日プレゼント」 投稿者: 大日向 麻子(おおひなた まこ) さん 訪問看護ステーションリカバリー 東村山事務所(東京都) 「誕生日を家で迎えさせてあげたい」電話口でのご家族の言葉でした。利用者様はある日ご自宅での転倒を機に入院、主疾患治療中に他疾患も併発してしまい、医師より余命や療養型病院への転院についてお話があったとの事でした。その言葉を聞いた後、私は関係各所と連絡をとり、改めてご家族へ在宅療養を提案してみる事にしました。ご家族は悩んだ末、在宅で過ごす決断をしてくださり、サービスを調整して年末に退院。徐々に全身状態低下は見られましたが年明けには待望のお誕生日を迎える事が出来ました。「ケーキのクリームを舌に乗せたら、にこっと笑った気がしたの!こっちがプレゼントもらった気分だよ…」とご家族からもニコニコで報告がありました。その1週間後、眠るように息を引き取られました。最期の時間をどう過ごすか、選択をする事は大変な事だと思いますが、その選択に意味があると感じます。これからも自分たちに出来る事を探し続けて行きたいです。 2024年1月投稿 「最期の洗髪」 投稿者: 安藤 あゆ美(あんどう あゆみ) さん 公益社団法人 新潟県看護協会 訪問看護ステーションつくし(新潟県) 癌末期のAさんは美人でいつも髪の毛をきれいにアップしている理容師さん。お姉さんと息子さんと理容室を営んでいてお姉さんが熱心に介護されていました。徐々にベッドで過ごす事が多くなり残された時間が短いと思われた頃、訪問看護師から息子さんに洗髪を提案。頭の下にオムツを敷いて「初めて母親の髪を洗いました」と言う息子さんの手つきはさすがプロ。「気持ちいいね」とAさん。数日後にご家族に見守られながら穏やかなお顔で旅立たれました。実はあの時、洗髪を息子さんにお願いしたのは理由がありました。息子さんが直接介護をする事が少なかったので、亡くなった後に後悔するのではと思ったのです。洗髪する事で息子さんが満足する看とりができるといいなと考えたのです。Aさんのお悔やみに伺った際、訪問看護への思いを聞いた時「最高でした」と笑顔で答えてくださいました。良かったなと思いました。 2024年1月投稿 「訪看だって泣いていいんだ。」 投稿者: 中島 絵理子(なかじま えりこ) さん 一般財団法人同友会 藤沢訪問看護ステーション(神奈川県) 急性期で働いていた頃、看取りは日常的だった。看護師は常に冷静で、涙を流す事など許されないと思っていた。訪問看護師として働き7年が過ぎた頃、あるご夫婦を担当することになった。ご主人Tさんは肺癌末期、奥様Sさんは心不全でお二人同時に介入をしていた。Tさんは癌性疼痛があってもSさんを気遣い、そう遠くない将来別れが来るのかと思うと、Tさんの笑顔を見る事を辛く感じる事もあった。半年が過ぎた頃、Tさんの容態が悪化し入院することになった。『僕はね、この家で死にたいんだ』といつも言っていたが、Sさんの負担になりたくないというご本人の希望だった。1人になったSさんを訪問すると私を見るなり『連れて帰りたい!私、頑張るから!私が見るから!』と泣きじゃくった。私は何と言って良いのか分からず、Sさんの肩を抱いて一緒に泣く事しかできなかった。数日後Tさんが亡くなった。Tさんの仏前に手を合わせる私にSさんは言ってくれた。『中島さん、一緒に泣いてくれてありがとう。これからも私の訪問に来てくれる?』今もSさんのお宅へ訪問に伺っている。Tさんの思い出話をするSさんの笑顔を1日でも長く見られる事を願っている。 2024年1月投稿 * * * 皆さま、おめでとうございます!今後、「みんなの訪問看護アワード」表彰式の様子をご紹介する記事や、大賞・審査員特別賞・ホープ賞を受賞したエピソードの漫画記事も順次公開予定です。ぜひご覧ください。 編集: NsPace編集部 [no_toc]

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表
つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表
特集
2024年3月12日
2024年3月12日

つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。厳正な審査を経て、受賞作品が決定しました。本記事では、大賞1件、審査員特別賞3件、ホープ賞1件、協賛企業賞5件のエピソードをご紹介します! 「役割を求めて」 投稿者: 岡川 修士(おかがわ しゅうじ) さん 訪問看護ステーションかすたねっと(大阪府) パーキンソン病に罹患して私達の訪問看護を利用することになった加東さん。彼女は元看護師で、まだまだ働く予定だったが、病気の影響で外出困難となり、退職を余儀なくされた。ある日、私が訪問すると「今は誰の役にも立ってない。まだ働きたい。欲しいのはお金じゃなく、役割なの」と話された。その表情は寂しそうだったが、働くことを諦めていない強い意志も感じた。聞くと、今もパソコンは使えるし看護師時代はサマリー等の事務作業も得意だったという。そこに可能性を感じた私は事務所に帰って社長に加東さんとのやり取りを説明した。すると社長は、「うちには事務員いないし、在宅で事務作業をしてもらおう!」と、雇用することを決めた。それを聞いて加東さんは大喜び。その後、初給料でお孫さんにクリスマスプレゼントを買ってあげた。加東さんは事務員という私達の事務所に欠かせない役割だけでなく、祖母としての役割も取り戻すことができた。 2024年1月投稿 「100年ぶりに入浴したU子さん」 投稿者: 新田 光里(にった あかり) さん @(あっと)訪問看護ステーション(東京都) U子さんは92歳。認知症があり内服管理と入浴目的で訪問が開始になった。人嫌いな一面があり、入室を拒む事もしばしば。入浴は数年間していないと思われた。皮膚トラブルを心配した私は入浴させる事に必死になり受け入れてくれないU子さんに憤りを感じ始めていた。所長に相談すると「まず、あなたがU子さんを好きにならなくちゃ」と助言をいただき、訪問の度にU子さんの素敵な所を見つけるようにした。ケアにこだわらず仲良くなることを最優先として一緒に塗り絵をしたり、りんごの唄を熱唱したり、戦争体験談を聞いては労いの言葉をかけ続けた。担当になって1年が経過したある日「汗かいちゃったから一緒にシャワーどうですか?」と声をかけると「シャワーはダメ。お風呂にしなさい」と言われた。嫌々ながらも脱衣していたが浴槽に溜まった湯が自分好みの湯加減だと分かると自ら浴槽に入り「う~ん!気持ちいい!100年ぶり~!」と満面の笑みがこぼれ、タオルで腕を擦っていた。100年ぶりの入浴後の湯は白濁していた。以後、毎週入浴介助することができた。U子さんの笑顔と甘酒のようなお湯の思い出は一生忘れられないだろう。 2024年1月投稿 「遠く離れていても」 投稿者: 鳥居 香織(とりい かおる) さん 医療法人社団亮仁会 さくら訪問看護ステーション(栃木県) 「肺気腫で在宅酸素をしている独居のAさん。奥様を亡くしてから、人との関わりを避け、いつ死んでも良いと言うの。トイレに行くだけで、肩呼吸をする程で、ヘルパーさんからは『介入するのが怖い』と言われて困って。会うだけ会ってくれないかしら」とケアマネさんからの電話。訪問するとAさんはベッドに座り、横を向いたまま私と目を合わせようとしません。ですが、テーブルにはカルピスが入ったコップが2つ並んでいました。(これがAさんの答えなのかな?)と思い、ゆっくり声をかけながら、背中のマッサージを始めると「気持ちが良いなあ。温かいなぁ。」とAさん。それから面白いように言葉が溢れ、若いころの話、奥様との馴れ初めの話、生前葬を決意した話などを語りました。人との関わりを避けていたAさんが訪問の度に笑顔になり、変化されていく様子はとても不思議な感じがしました。しかし、転倒を機に引っ越され、突然の訪問終了。どうされているか心配していたある日、葉書が届きました。「カーテンを閉めようと思って窓の外を見たら、お月様と目が合った。いつの間にか鳥居さんの顔に変わっていたよ。」と震える字で書かれていました。離れていても支えることが出来る事を学んだのです。 2024年1月投稿 「幸せとは」 投稿者: 川上 加奈子(かわかみ かなこ) さん よつば訪問看護リハビリステーション(神奈川県) 「『幸せとは、体験するものではなく、あとから思い出して気づくものだ』ですって!深いですねー」87歳になられるTさんの訪問時には、毎回その日の名言カレンダーを読み上げ、暗唱し、それについて話し合う、ということを看護ケアの脳トレとして行なっていました。「Tさんの今まで生きてきた中で1番幸せだと思ったことは何ですか?」と私。すると少しの沈黙の後に「何もない」とTさん。「えーそんな寂しいこと言わないでくださいよ。一つ位ありませんか?」と私。するとまた「…何もない」とTさん。側にいて会話を聞かれていた息子さんにも何だか申し訳ない様な気持ちになっていたその時でした。「だって、ずっと幸せだから」とぽそりとTさんが言われたのです。一瞬、時が止まったような衝撃を受け、何故だか泣きそうになっている自分がいました。寝たきりになってもなお、愛する息子さん2人がいつも側にいて、大好きな餡子を食べさせてくれたり、たまに喧嘩をしながらもリハビリをしてくれていること。それこそがTさんにとって、過去ではなく現在進行形の幸せなのだと気付かされたのでした。『幸せとは…』私もいつか自分の人生を振り返った時には、Tさんの様に思えたらいいなと感じています。 2023年12月投稿 ※訪問看護師歴3年未満の方対象 「最期のキッス」 投稿者: 大矢根 尚子(おおやね なおこ) さん 社会医療法人 三宝会 南港病院訪問看護ステーション(大阪府) O様 70歳女性 肺がん 脳転移にて終末期の方で心に残る経験をさせていただきました。口数の少ないご主人が1人で介護をされており訪問中も不安の表出や困りごとを口にされることなどがない方でした。ユマニチュードも取り入れながら、O様が大好きだった竹内まりやの「人生の扉」を流しながらケアを終えた時、ご主人が不意にO様の額にチュッとキッスをされたのです。意識も混濁していたO様ですが、嬉しそうに顔をくしゃくしゃにしながらニッコリと微笑まれました。照れくさそうに笑うご主人とO様を見ていると死が差し迫っているから特別にキッスをしたわけではなく、この夫婦の日常なんだと心が温まりました。歌詞も重なり素敵な年輪を重ねて生きてこられたご夫婦の愛を感じ涙涙でした。ユマニチュードも実践することでご主人の緊張がとけ、一緒にO様を支えることができ生活史に寄り添うことができたと感じました。また、自分の人生と重ね、今まで以上に時間を大切にしようと思いました。 2024年1月投稿 「無人島に街を!」メディヴァ賞 協賛企業:株式会社メディヴァヘルスケア系コンサルティング&イノベーション・カンパニー。「無人島に街をつくる」開拓者のように、医療・介護界の発展を実現していきます。 「秋ひまわりプロジェクト:外出のきっかけづくり」 投稿者: 白﨑 翔平(しらさき しょうへい) さん いま訪問看護リハビリステーション(大阪府) ご利用者さんの多くは、通院以外では家からほとんど出られません。そこで、秋ひまわりプロジェクトとして、事業所の駐車場裏の小さな雑木林を8ヶ月かけて丁寧にひまわり畑に変えました。その過程の写真を訪問の度にご利用者様と共に確認し、行ってみたい場所になることを目指しました。そして、ひまわり畑が形を成す頃、ご利用者様が担当の療法士や看護師と会話を楽しむ外出の機会を作り出したいと考えていました。しかし、残暑の影響で早すぎる開花があり、イベント当日には花が枯れてしまうと予測されました。そこで、企画を「ヒマワリ喫茶」から「ヒマワリの花束のプレゼント」に変更しました。刈り取る前にヒマワリ畑を訪れてくれたご利用者さんもおられました。収穫したひまわりを美しくアレンジし、お届けした瞬間の笑顔は忘れられない思い出となりました。多くの方がその花束をお仏壇に飾り、感謝の言葉を伝えてくださいました。 2024年1月投稿 ぽけにゅー賞 協賛企業:株式会社大塚製薬工場臨床栄養関連の医薬品・OS-1などに加え、在宅療養者の食・栄養課題の抽出・解決を支援するWEBサービス「ぽけにゅー」を提供しています。 「1週間は母より長生きしたい」 投稿者: 井出 咲子(いで さきこ) さん 訪問看護ステーションほのか(長野県) 進行性の胃がんを患い、医師から告げられた余命よりもう3ヶ月頑張って生きていらっしゃる76歳男性Fさん。Fさんは自宅での生活が困難で有料老人ホームで生活しています。私達はそこへ訪問看護としてお伺いしています。Fさんには97歳のお母様がいらっしゃり、お母様は別の老人ホームで生活していました。Fさんがホームで暮らすようになって、お母様と一緒に過ごしたいと希望され、お母様も同じホームに入所されました。Fさんの願いはただ一つ『母より1週間は長く生きたい』その気持ちで治療を受け、倦怠感が強くても、食欲がない時も頑張って食べ物を口に運び、精一杯生きていらっしゃいます。Fさんとお母様は仲が良く、可能な限り一緒の時間を過ごされています。Fさんのお布団にお母様は足を入れて温まっていてその姿がとても微笑ましいです。ある日、ホームの管理者からFさん親子をお寿司屋さんに連れて行きたいと相談がありました。私達訪問看護も同行しお寿司屋さんへ行きました。Fさんは6皿召し上がり大変喜ばれました。これからも『母より1週間は長く生きたい』というFさんの気持ちに寄り添い続け看護をしていきたいです。 2024年1月投稿 Tomopiia賞 協賛企業:株式会社Tomopiiaがん罹患者の方々の不安や孤独な気持ちに、SNSを使って看護師が個別対話で寄り添う、SNS看護サービス「Tomopiia」を提供しています。 「みんなに贈る体調管理表」 投稿者: 小林 奈美(こばやし なみ) さん 株式会社不二ビルサービス ケア事業部訪問看護ステーションふじ川内(広島県) Mさんは前立腺癌末期。几帳面な方で体調管理表を自ら作成されていた。妻は介護に悩み涙を見せる事もあった。ある時発熱、肺炎症状があり入院され過ごされていたが、数日経ち妻から「もう時間がない、家で過ごさせてあげたい」という電話を受けた。訪看が介入し一時外出する事になった。モルヒネ皮下注射を受けながらも笑顔のMさんに私は「おかえりなさい!」と声をかけた。そこにはいつもの日常があった。家族がいて、テレビを観たりソファーで座ったり特別な事をしているわけではなく、Mさんを包み込むように当たり前の幸せがあった。夕方病院へ帰る介護タクシーを見送った。次の日の朝である。さっき息を引き取ったよ、家に連れて帰るね、と連絡があったのは…。「見て…」と妻から見せてもらった体調管理表には「みんなのおかげで私の人生楽しかった ありがとう」と少し震えた文字。私は涙があふれた。この言葉が家族、私たちみんなを救っていた。 2024年1月投稿 看護のアイちゃん:本物の看護がしたい賞 協賛企業:セントワークス株式会社訪問看護の特性を踏まえたアセスメント・業務支援システム「看護のアイちゃん」などを提供しています。 「走る理由」 投稿者: 大日向 莉子(おおひなた りこ) さん ソフィアメディ訪問看護ステーション小山(東京都) 「息をしていないようです」と震えた声。遠くから「お父さん、お父さん、返事してよ」と叫ぶ音。連絡があったのは、年明け間もない1月のことでした。山田さん70代、前立腺癌。年越しを迎えるのは難しいと、ご家族は本人にその事実を伝えず、決死の想いで在宅療養を選択しました。家族だけが抱える「余命宣告」。それでも本人が不安でないように、眠れない日々も不安な日々も、ご家族は笑顔でいました。「山田さん、本当によく頑張りました」と話しかけると、そこにいた全員から大粒の涙が溢れました。お客様との信頼を築き、人生の最期に立ち会い、お別れに一緒に涙を流す。医療職として、一緒に涙を浮かべるのはどうなのかと言う人もいるかもしれません。だけど、ひとりの人として、その人と関わった者として、涙を流すのに正解も不正解もないと信じています。「ネクタイ結んであげませんか」「髭剃りしませんか」と家族と行うエンゼルケアも、最期に着る服が生前よく着てたスーツなのも、在宅の醍醐味だと思うのです。ケアの最後には涙でなく、そこには笑顔がありました。みんなが悔いなく、幸せであるように、今日も自転車を走らせるのです。 2024年1月投稿 NTTデバイステクノ賞 協賛企業:NTTデバイステクノ株式会社訪問看護ステーション専用に設計された電子カルテ「モバカルナース」などを提供しています。 「生涯いい男」 投稿者: 佐藤 有紗(さとう ありさ) さん 医療法人社団愛友会 訪問看護ステーションブルーべル(埼玉県) 毎週木曜日、インターホンを押すと部屋の奥から「いらっしゃい!上がって上がって」と声がする。私が訪問看護ステーションで働き始めた時から変わらない元気な声でいつも迎えてくれていました。その方は癌末期。余命は長くないと言われながらも元気に前向きに生活していました。その方はいつも野球を見ていたので、野球がわからない私は勉強がてら野球をみて、少しでも話ができるように準備してから訪問するようにしていました。担当してから3ヶ月ほど経った金曜日、かかりつけ医から「食事がしばらく取れていない、点滴加療が必要」と連絡がありました。私は驚きました。昨日もいつもと変わらない元気な利用者さんをみていたから。そこから目でわかるほど痩せて行く姿をみて、初めての終末期の対応に動揺している私を見て、利用者さんは「昨日の野球みた?」といつもの笑顔でいつも通りの会話を始めました。段々会話もできなくなって、土日まで持つかどうかと言われていたが、木曜日は訪れました。いつもの優しい笑顔で迎えてくれたその数時間後、天国へ旅立ちました。弱い所を見せず、ずっと前向きだった利用者さんはずっといい男でした。 2024年1月投稿 皆さま、おめでとうございます! 入賞作品については、こちらの記事をご覧ください。つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 編集: NsPace編集部 [no_toc]

【トリプル改定 超速報】2024年度介護、障害福祉の報酬改定で訪問看護はどうなる?
【トリプル改定 超速報】2024年度介護、障害福祉の報酬改定で訪問看護はどうなる?
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2024年3月12日
2024年3月12日

【トリプル改定 超速報】2024年度介護、障害福祉の報酬改定で訪問看護はどうなる?

2024年度は診療・介護・障害福祉の報酬・基準のトリプル改定。訪問看護は3分野にまたがることが多いだけに、早期にポイントを押さえ、対処にのぞむ必要があります。本記事では、診療報酬の改定から「訪問看護師の処遇改善」にかかるポイントに触れるとともに、介護報酬や障害福祉サービスの報酬の改定についても取り上げます。 >>2024年度【診療報酬改定】超速報はこちら【トリプル改定 超速報】2024年度診療報酬改定で訪問看護はどうなる? 看護師等の賃金アップを図る新たな評価料 診療報酬改定に関する速報記事では、将来的な労働力人口の減少をにらんだ、人材確保・働き方改革についての改定項目を取り上げました。一方で、人材確保に向けては看護師および准看護師、保健師、助産師(以下、看護師等)の処遇改善も欠かせません。 もともと看護師等の処遇改善については、毎月決まって支払われる賃金の引き上げ(ベースアップ)を図ることを目的とした「看護職員処遇改善評価料」が設けられています。ただし、これはコロナ禍での看護師等の賃金引上げを目的に誕生したもので、訪問看護ステーションを含め、対象とならない医療機関もあります。 そこで、より多くの医療機関で働く看護師等のベースアップを実現するため、新たな報酬上の評価が設けられました。それが、「ベースアップ評価料」です。訪問看護も含まれます。 「24時間対応」の新評価が介護報酬でも 次に、介護報酬での訪問看護にかかる改定項目で目立つのは、今改定を含め、診療報酬側との整合性を図ったことです。 例えば、診療報酬改定項目では、「24時間対応体制加算」において「看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制」を評価する新区分が誕生しました。この「24時間対応体制加算」に該当する介護報酬側の項目といえば、「緊急時訪問看護加算」です。ここに、やはり「看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制」を評価した新区分(月600点)が設けられました。 また、診療報酬の24時間対応の連絡相談については、一定要件を満たせば、訪問看護ステーションの看護師・保健師以外でも対応可能となりました。同様の項目が介護報酬側でも定められています。 看取り期の加算も診療報酬と整合性を 診療報酬ですでに定められている項目と整合性をとった改定もあります。それが「看取り期」の利用者への訪問看護の評価です。 介護報酬での看取り期の対応といえば、「ターミナルケア加算」があります。利用者の死亡日および死亡前14日以内に2日(末期がんなどの場合1日)ターミナルケアを実施することが要件です。この評価が「死亡月に2000単位⇒2500単位」に引き上げられました。 診療報酬での同様の評価項目には、「訪問看護ターミナルケア療養費」があります。この給付額が25,000円なので、介護報酬側の単位はこの数字と揃えたことになります(介護報酬の算定を1点=10円とした場合、金額は揃うことになります)。 遠隔死亡診断補助加算が、介護報酬にも誕生 看取り期では、訪問した看護師が利用者の死亡に立ち会うケースも想定されます。その際、利用者が離島等に在住の場合、医師の訪問による死亡診断が難しいこともあります。 そうしたケースで、訪問した看護師が情報通信機器を使って主治医による死亡診断を補助した場合、介護報酬上で、先の「ターミナルケア加算」に上乗せされる形で「遠隔死亡診断補助加算(1回150単位)」が算定できることになりました。 同じ加算が、診療報酬でも2022年度に誕生しています(1回1,500円)。ここでも、介護・診療報酬の整合性が図られたことになります。 介護報酬でも専門性の高い療養管理を評価 2022年度に設けられた診療報酬上の評価と同じものが、2024年度の介護報酬改定でも誕生──こうしたケースはほかにもあります。 それが「専門管理加算」です。診療報酬では1月に1回2,500円、介護報酬では1月に250単位となります。 これは、緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門・人工膀胱ケアにかかる研修を受けた看護師、あるいは特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理(悪性腫瘍の鎮痛・化学療法を行なっている利用者や真皮を越える褥瘡の状態にある利用者などが対象)を行った具合に算定できるものです。 在宅での重度療養ニーズが高まる中、介護報酬が診療報酬のしくみを追いかけるという傾向を象徴した改定といえます。 退院時共同指導加算、実態に合わせた要件に その他、介護報酬上での改定で注目したいのが、利用者の退院・退所に向けた流れの中での訪問看護への評価です。 まず、利用者の入院時(医療機関のほか介護老人保健施設や介護医療院含む)からの対応を評価したもの。そこで訪問看護師等が主治医等と共同し、利用者に対して在宅での療養上の指導を行った場合に、その後の初回訪問で「退院時共同指導加算」が算定できます。 この退院時の共同指導について、「文書で」という要件上の制約が削除されました。これは、入院中の指導にかかわらず、利用者が訪問看護での実地指導に頼るケースが見られる点を受けた改定です。 「退院当日の訪問」を初回加算で上乗せ評価 この「退院時共同指導料」を算定していない場合、退院・退所後の最初の訪問では、介護報酬上で「初回加算」が算定されます。 この「初回加算」について、利⽤者が退院した「その⽇」の訪問を評価する区分が誕⽣しました。既存区分(改定後はⅡ)はその⽉に1回300単位のままですが、「当⽇訪問」を⾏った場合の新区分(Ⅰ)は350単位に引き上げられます。 ちなみに、2021年度改定では「退院・退所の当⽇にも⼀定の管理が必要な利⽤者について初回加算が算定できる」とされました。ただし、特別な管理が必要でなくても、退院当⽇での本⼈や家族の困りごとは多様であることが分かっています。そうした実態から、積極的に「当⽇訪問」を評価したことになります。 理学療法士等による訪問はさらに減算 もう1つ、訪問看護で気になるのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(以下、理学療法士等)による訪問の評価でしょう。 2021年度改定では、訪問看護の機能集中の観点から理学療法士等による訪問の基本報酬がさらに引き下げられ、「通所リハビリだけでは屋内でのADL自立が困難」なケースに限定されました。 今改定では、理学療法士等による訪問が、看護師による訪問の回数を上回っている場合(緊急時訪問看護加算等を算定していない場合は同数でも)などで、さらに8単位の減算が行われます。 障害福祉の改定で訪問看護への影響は? 最後に障害福祉サービスに関する改定ですが、訪問看護が障害福祉サービスの報酬を直接受けるしくみはありません。ただし、障害者に対して医療保険での訪問看護を提供している場合、障害福祉サービスとの連携機会があるという点で注意したい項目があります。 それが、医療・保育・教育機関等連携加算です。同加算は、計画相談支援・障害児相談支援において、利用者の入退院時といったサービスの利用状況が大きく変化する際に、医療機関等との連携のもとで支援を行うことを評価した加算です。 この加算で、障害福祉サービス機関からの求めに応じて情報を提供する連携機関の中に「訪問看護」が明記されました。障害者に対して医療保険での訪問看護を提供している事業者としては、注意しておきたいポイントです。 ※本記事は、2024年2月27日時点の情報をもとに記載しています。 執筆:田中 元介護福祉ジャーナリスト 編集: 株式会社照林社 【参考】〇厚生労働省(2024).「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001195261.pdf2024/2/27閲覧〇厚生労働省(2024).「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001205321.pdf2024/2/27閲覧

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