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小児に関する医療費助成 訪問看護師が知っておきたい基礎知識

小児に関する医療費助成 訪問看護師が知っておきたい基礎知識

小児の場合、居住地や条件に応じて乳幼児・義務教育就学児を対象とした医療費助成制度や、小児慢性特定疾病医療費助成制度などの対象になります。今回は、訪問看護師が知っておきたい小児の主な医療費助成制度について整理します。

※本記事は、2025年4月時点の情報をもとに構成しています。

まずは、都道府県・市区町村が実施している子どもの医療費助成制度についてです。

自治体の助成で小児医療費の自己負担が軽減

医療機関受診時の自己負担は、義務教育就学前(未就学児)までは2割、義務教育就学後(小学生以上)は3割ですが、実際には各自治体が発行する「医療費受給者証」と保険証を窓口で提示することで、自己負担額の支払いが援助されます。

自治体によっては「無料」の地域もあれば、1回300円や500円など定額の負担が求められる地域もあります。また、所得制限の有無や対象となる年齢もさまざまで、高校生まで医療費が無料となる自治体も増えています。居住する都道府県を越えて医療機関を受診した場合は、いったん窓口で自己負担分の医療費を支払い、後日、領収書を添付し居住する自治体に申請することで助成が受けられます。

ただし、この助成制度は、医療保険上の自己負担が対象であり、選定療養費(差額ベッド代や紹介状なしの受診など)に当たるものは対象外です。また、居住する地域により支援内容に差があるため、自治体に確認する必要があります。

* * *

小児の医療費助成制度には、一般的な助成だけでなく、長期的・継続的な医療が必要な子どもや、障害のある子どもへの専門的な制度もあります。今回は、小児慢性特定疾病の医療費助成と更生医療、育成医療について解説します。これらの制度の基本を押さえておきましょう。

慢性的な疾患のある小児への支援:
小児慢性特定疾病医療費助成制度(公費番号:52)

小児慢性特定疾病医療費助成制度は、小児がんや腎疾患、呼吸器疾患など、特定の疾病に対して医療費の一部を助成する制度です。この制度の対象となるのは、以下の4つの条件を満たす18歳未満の児童です。
 

1.慢性に経過する疾病であること
2.生命を長期に脅かす疾病であること
3.症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること
4.長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾病であること
文献1)より引用

なお、2025年4月1日より対象となる疾病が拡大され、801疾病になりました。対象疾病の詳細は、小児慢性特定疾病情報センターのウェブサイトから確認できます。
>>小児慢性特定疾病情報センター:小児慢性特定疾病の対象疾病リスト
https://www.shouman.jp/disease/search/disease_list

自己負担上限額について

この制度では、表1に示すように世帯の所得に応じて、自己負担上限月額が決まっています(0円~15,000円)。

表1 小児慢性特定疾病医療の自己負担上限月額

小児慢性特定疾病医療の自己負担上限月額

※重症:(1)高額な医療費が長期的に継続する者(医療費総額が5万円/月(例えば医療保険の2割負担の場合、医療費の自己負担が1万円/月)を超える月が年間6回以上ある場合)、(2)現行の重症患者基準に適合するもの、のいずれかに該当。
文献2)より引用

小児の医療費は自己負担額がない場合が多いですが、図1のとおり、高額療養費制度を適用した後、自治体が小児慢性特定疾患の自己負担上限額を自治体が負担する、という流れです。

なお、訪問看護には直接関係しませんが、入院時の食事療養費は2分の1が助成されます。

図1 月額医療費の自己負担のイメージ

月額医療費の自己負担のイメージ

障害のある子どもへの支援:更生医療(15)・育成医療(16)

小児慢性特定疾病とは別に、心身の障害を除去・軽減するための医療に対しても助成があります。それが「自立支援医療制度」であり、「精神通院医療」「更生医療」「育成医療」の3種類があります。

  • 精神通院医療:統合失調症やうつ病などの精神疾患(てんかんを含む)により、通院による精神医療を継続する必要がある方を対象に、医療費の自己負担を軽減する制度。
  • 更生医療:身体障害者手帳を交付された18歳以上の方が対象。その障害を除去・軽減する効果が期待できる医療*の一部費用を助成する制度。
  • 育成医療:身体障害がある、または現存する疾患を放置すると将来障害を残すと認められる18未満の児童が対象。その障害を除去・軽減する効果が期待でき、生活能力を獲得するために行われる医療の一部費用を助成する制度。

* 対象となる医療について:障害認定を受けた障害のために行われるものであり、身体障害者の疾病に伴うすべての医療を対象とするものではない。対象となる障害と標準的な治療の例は厚生労働省や各自治体のサイトを参照のこと。

訪問看護では、特に更生医療と育成医療を利用しているお子さんに出会う可能性があると思います。

自己負担上限月額について

この制度でも、世帯の所得区分によって表2に示すように自己負担額の上限月額が設定されています(0円~20,000円)。育成医療の「中間所得1」「中間所得2」については、総医療費の1割または高額療養費(医療保険)の自己負担限度額までと定められており、軽減措置がとられています。また、一定所得以上の場合、更生医療・精神通院医療・育成医療ともに対象外となっています。

表2 自立支援医療の自己負担上限月額

自立支援医療の自己負担上限月額
文献3)を参考に作成

訪問看護ステーションの制度対応

今回紹介した制度における助成を受けるためには、訪問看護ステーションが制度ごとに定められた「指定医療機関」であることが求められます。

小児慢性特定疾病制度の場合は「指定小児慢性特定疾病医療機関」、自立支援医療制度の場合は「指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療)」(精神通院医療は別の手続きが必要)の申請が必要です。訪問看護ステーションとして登録されると、指定番号が割り振られます。

訪問看護の利用者は高齢者の方が多い傾向にありますが、近年では新生児医療の進歩や医療的ケア児の増加といった社会的背景を受け、小児の訪問看護の依頼も増えつつあります。訪問看護を利用する小児患者さんに対応するために、助成についての理解を深め、忘れずに施設の届出だけはしておいてください。
 

執筆:木村 憲洋
高崎健康福祉大学健康福祉学部医療情報学科 教授

武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部機械工学科卒業、国立医療・病院管理研究所研究科(現・国立保健医療科学院)修了。民間病院を経て、現職。
著書に『<イラスト図解>病院のしくみ』(日本実業出版社)などがある

編集:株式会社照林社

【文献】
1)小児慢性特定疾病情報センター:概要.
https://www.shouman.jp/assist/outline
2025/4/25閲覧
2)小児慢性特定疾病情報センター:小児慢性特定疾病の医療費助成に係る自己負担上限額.
https://www.shouman.jp/assist/expenses
2025/4/25閲覧
3)厚生労働省:自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み.
https://www.mhlw.go.jp/content/001507772.pdf
2025/4/25閲覧

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