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訪問看護計画書の書き方は? 記入例や注意点も紹介

訪問看護計画書の書き方

新卒訪問看護師の方や、病棟から訪問看護へ転職した方は、訪問看護計画書の書き方で悩むケースが多いでしょう。本記事では、これから訪問看護に従事する方に向けて、訪問看護計画書の書き方について解説します。記入例や注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

訪問看護計画書とは

訪問看護計画書とは、訪問看護サービスを提供するにあたり、療養上の目標や具体的なサービス内容を利用者ごとに記載する書類です。訪問看護指示書の交付による主治医の指示を受けた上での作成が必要になります。訪問看護計画書の作成は「利用者の健康状態の評価」「ケアプランの立案と目標設定」「コミュニケ-ションと連携の促進」の3つが主な目的で、利用者に質の高い訪問看護サービスを提供するために作成します。

作成後は、利用者やご家族・支援者に内容の説明を行い、同意を得なければなりません。また、すでにケアマネジャーや利用者などが居宅サービス計画書を作成している場合、その計画内容に沿った作成が必要です。ちなみに居宅サービス計画書は、基本的にケアマネジャーが作成しますが、まれに利用者やご家族が作成することもあります。しかし、手続きや事業所との連携および調整まで行う必要があるため、一般的には利用者やご家族にとっては難易度が高いです。

訪問看護計画書の書き方

訪問看護計画書を書く際のポイントは、以下のとおりです。

  • 主語は看護師側ではなく利用者側にする
  • 目標は利用者主体で記載する
  • 挙がった問題には優先順位をつける(いのちや生活に影響するものは優先順位が高い)
  • 優先順位を付けるために「#(ナンバー)」の記号で#1、#2とナンバリングする
  • コピー&ペースト(同じ文章の使いまわし)はなるべくしないようにする
  • 義務として医師への定期的な提出が必要であり、ケアマネジャー・連携している訪問看護ステーションや医療機関にも提出する場合があるため、分かりやすく丁寧に記載する

これらの基本的なポイントを押さえた上で、各項目の記入例と詳細内容を見ていきましょう。

訪問看護計画書 記入例


訪問看護計画書 記入例

訪問看護計画書は、標準とする様式に準ずる必要があり、厚生労働省によって以下の7つの項目を記載するよう定められています。順にみていきましょう。

(1)利用者の基本情報

利用者の氏名や生年月日、要介護認定の状況、住所を記載します。電子カルテを使用している訪問看護ステーションでは登録したIDを入れることで自動的に入力されます。

(2)看護・リハビリテーションの目標

訪問看護計画書では、主治医の指示、利用者の希望、利用者の状態を考慮し、看護・リハビリテーションの目標を設定します。ケアプラン(居宅サービス計画書)や訪問看護指示書の内容を参考にしながら、利用者がどのような生活を送りたいのかを理解し、目標を具体的に立てることが大切です。

(3)年月日/問題点・解決策/評価

訪問看護計画書では、計画を作成した日付や修正した日付を記載します。毎月、計画書の見直しをしている場合は、見直しで修正を行った日付を記載してください。問題点・解決策の項目では、目標とリンクした内容を記載します。具体的な問題点やそれに対する解決策、必要な看護や支援、ケアの内容を具体的に記載します。また、評価の項目では、実際に提供したサービスの評価や問題の改善状況、引き続き計画を実施するかどうかの判断を記載する必要があります。

(4)衛生材料等が必要な処置の有無

脱脂綿やガーゼ、絆創膏など、衛生材料が必要な処置の有無では、はじめに「有」または「無」のどちらか該当する方に丸をつけます。必要な処置がある場合は、処置の内容、衛生材料の種類、サイズ、必要量などを具体的に記載しましょう。「無」の場合は記載する必要はありません。

訪問看護で使用する衛生材料の具体例としては、次のものがあります。

  • 使い捨て手袋:感染予防や処置時の衛生を保つために使用
  • 注射器・注射針:採血や薬の注射などに使用
  • カテーテル:膀胱留置カテーテルや胃ろうカテーテルなど、体液の排出や栄養剤の投与に使用
  • 絆創膏:創傷部位の保護に使用
  • テープ:包帯の固定に使用
  • ガーゼや脱脂綿:傷口や皮膚の保護に使用
  • 消毒薬:処置前の手指消毒や器具の消毒に使用
  • 生理食塩水:創傷や口腔内の洗浄に使用
  • 尿バッグ(ウロバッグ)やドレーンバッグ:体液の管理に使用

使用する衛生材料はすべて記載しましょう。

(5)備考

備考には、各項目に書ききれない留意事項や特記事項を記載します。利用者やご家族からの情報や注意事項、連絡事項などを必要に応じて追記し、訪問看護師同士や関係者間で情報共有を円滑に行えるようにします。

また、すでに老人保健法及び健康保険法等の指定訪問看護を実施している場合、備考欄に要介護認定の状況を記載しましょう。

(6)作成者名

計画書を作成した人の氏名を記載します。訪問看護計画書は、訪問看護に携わる医療従事者が同じ目標に向かってケアプランを共有し、作成しています。そのため、訪問看護師以外にも、リハビリ職や保健師なども記載した場合は、全員の氏名を明記し、計画の責任者を明確にすることが必要です。

(7)年月日/事業所名/管理者氏名

最後に、計画書を作成した日付、事業所名、管理者の氏名を記載します。こちらも責任の所在を明確にするために必ず記載しましょう。加えて、管理者の捺印が必要になるので、主治医に提出する前には押してもらっておきます。

訪問看護計画書を作成する際のQ&A


Q&A

訪問看護計画書を作成する際に疑問点として挙げられやすい内容についても、Q&A形式で解説します。

誤った内容を記載してしまったらどうなる?

前提として、訪問看護計画書は必要に応じて情報開示を求められることもあるため、偽りのない内容を記載するべきです。しかし、誤って記載してしまうこともあるでしょう。その際は、気付いた時点ですぐに該当箇所を修正する必要があります。修正前の内容、修正した箇所、修正した日時が分かるようにして、改ざんの疑いや誤解を防ぐことが大切です。もし、看護記録の改ざんを行った場合、刑法により「証拠隠滅」「文章偽造」の罪に問われ、処罰の対象となる可能性があります。

どれくらい保管しないといけないの?

訪問看護計画書は、訪問看護終了日から2年間の保存が必要だと法的に定められています。保管期間中は、いつでも復元できる状態にしておく必要があります。保管の方法として、訪問看護計画書は、電子媒体と紙媒体のどちらでも問題ありません。紙媒体で作成した訪問看護計画書を、電子媒体に保存しておくことも可能です。

どれくらい具体的に書くべき?

具体性の程度に関しては、明確に定められていません。しかし、どのような目標に対して、どのようなサービスを行ってきたかを第三者が見ても分かるよう、曖昧な表現を避け、具体的な情報を記載することが大切です。

例えば、衛生材料等が必要な処置の有無の項目では、処置の内容や衛生材料について具体的に記入し、次の1ヵ月に必要な量を明記しましょう。ただ、訪問看護計画書は、利用者やご家族の方も見る書類です。専門用語の多用や問題点、評価などの書き方には配慮が必要になります。

訪問看護計画書はいつ作成する?

訪問看護計画書に提出期限はありません。しかし、適切な指定訪問看護を提供するためには、定期的に提出する必要があります。

一般的には、毎月提出するところが多いです。例えば、月末に報告書・計画書を作成して、利用者やご家族の同意を得た後、翌初月に主治医へ提出します。そして、翌月の頭には、次の計画書を作成するといった流れになります。事業所によって、訪問看護計画書の提出時期は異なるため確認しておくとよいでしょう。また、利用者の状態に変化があった際や訪問看護指示書に変更があった場合は、修正するか別途作成が必要です。

訪問看護計画書を修正するタイミングとしては、次のような場合です。

  • 保険が切り替わったとき
  • 区分の変更があったとき
  • 主治医からの指示が変更されたとき
  • 利用者の状態が変化したとき
  • 居宅サービス計画書が変更されたとき

提供する訪問看護サービスと訪問看護計画書の記載内容に相違がないよう作成しましょう。

初回訪問後の計画書作成は初回加算できる?

一定の条件に該当した場合、初回加算することができます。条件については、次のとおりです。

  • 同月内に複数訪問看護事業所がそれぞれ新規に訪問看護計画書を作成した場合
  • 訪問看護を2ヵ月以上休止し、再開した場合
  • 要支援の状態で介護予防訪問看護を実施した後、要介護状態になり、訪問看護へ移行する場合(逆に訪問看護から介護予防訪問看護に移行する場合や継続の場合も同様)
  • 初回もしくは初回訪問看護を行った日の属する月に指定訪問看護を行った場合(暦月で1月のみ)

介護保険の訪問看護において、退院共同指導加算を算定する場合は、初回加算の算定はできません。また、医療保険による訪問看護の利用から介護保険の利用に変更した場合でも算定はできないので、注意が必要です。

訪問看護計画書は利用者の意向に沿って作成


チェック

訪問看護計画書は、利用者により質の高い訪問看護サービスを提供するために作成します。医療従事者の考えだけで計画書を作成するのではなく、あくまで利用者主体で作成することが大切です。利用者が満足できるケアの提供を念頭に置いた上で、本記事でご紹介した書き方や記入例、注意点を参考にして訪問看護計画書を記載していきましょう。

執筆:柿野 俊弥

監修:川島 峻
監修者プロフィール:医師、医学博士。横浜市立大学医学部、東京大学大学院医学系研究科卒業。
虎の門病院、東大病院心臓呼吸器外科などで勤務ののち、Harvard Medical School, Brigham and Women’s Hospital留学。
帰国後、新宿アイランド内科クリニック院長として幅広い世代に対して内科疾患、予防医療を中心に診療している。
呼吸器専門医、胸部外科専門医会員、呼吸器外科専門医、外科専門医、がん治療認定医。

編集:株式会社パンタグラフ

【参考】
○厚生労働省「訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4396&dataType=1&pageNo=1
(2023/6/15閲覧)
○公益社団法人 日本看護協会「看護記録に関する指針」
https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/nursing_record.pdf
(2023/6/15閲覧)
○厚生労働省「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa0500&dataType=0&pageNo=1
(2023/6/15閲覧)
○厚生労働省「訪問看護計画書等の記載要領等について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000613544.pdf(2023/6/15閲覧)
○一般社団法人 大阪府訪問看護ステーション協会「訪問看護記録の管理方法について」
https://daihoukan.or.jp/記録に関する事項/
(2023/6/15閲覧)
○社団法人 全国訪問看護事業協会「訪問看護に係る看護消耗品、看護用器具等に関する現状調査」
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/H11-2-1.pdf
(2023/6/15閲覧)

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