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インタビュー
2021年6月1日
2021年6月1日

人と人との繋がりを大切にするステーション運営

医療法人ハートフリーやすらぎ常務理事の大橋さん、訪問看護ステーション所長である田端さんに、引き続き採用や営業、ステーション運営についてお話を伺いました。 協調性を重視した採用試験 ―スタッフへのインセンティブをしっかり還元する、こうした魅力的なステーションだと募集が多くて採用が大変そうですが、実際はどのようにされているのですか。 大橋: うちでは一次試験は書類審査、二次試験は同行訪問、三次試験は面接をしています。 種明かしをすると、面接時よりもリラックスしやすい昼食や休憩時間の様子をよく見ています。例えば昼食のとき、一緒に同行した人から「先に食べていていいよ」と言われたときにどうしているかなどです。訪問看護で大事なのは、相手に合わせられるか、配慮がどこまで行き届くかというところなので、そこを見ています。 あくまで私の考えですが、職場の風土が「相談しやすい関係づくり」を目指しているので、こうした非言語的なコミュニケーションを含めて採用のときには大事にしています。 地域に貢献することで営業なしで黒字経営 ―営業に関してはどのようなことを行っていますか。 大橋: 正直、営業といわれるようなことはしていません。例えば、地域の老人会などに参加した際、その集会場のトイレの便座が冷たかったので、温水洗浄便座を購入してくださいと40万円寄付したことがありました。すると、集会に参加した方々が「トイレが温かい」「これはあそこの訪問看護ステーションの方がつけてくれた」ということで、それがゆくゆくは顧客に繋がっています。 そもそも私はギブ&テイクのテイクは基本的に求めていません。こうして地域が潤うために必要なことは何かを考えています。 田端: ほかには、子ども食堂への寄付や小学生の職業体験を受けることもしています。また、訪問看護先で、利用者さんのご家族が自分も訪問看護を受けたいと言ってくれたりして、家族同士や口コミなどでも繋がっています。 大橋: ナーシングデイは、あえて団地にこだわりました。ちょうど殺風景になっていた団地があり、私たちが入ることで活性化するのではないかと思ったんです。そのために、1年間草むしりから美化運動をはじめました。最初は住民から怪しまれていましたが、少しずつ挨拶をしてもらえるようになりました。 それから「ピンクの服を着た人たちは看護師だ」という認識となり、ナーシングデイを開くころには、「あんたらやったんか、嬉しいわ~」と言ってくれるまでになりました。ナーシングデイの開設時は、地域住民からの反対なども一切なく、すぐに受け入れてもらえました。 運営に悩む管理者へのアドバイス ―ステーション運営に悩む管理者も多いと思いますが、大橋さんからアドバイスをするとすればどんなことでしょうか。 大橋: 私はトップで決まると思っています。明るくなかったらダメ。能力が高くても考え方がマイナスだと、スタッフにも伝わります。明るいところには明るい人材が来ますから。 できない言い訳を考えるような人が管理者になったらダメです。よく管理者が「誰が責任をとるのか」「責任はとれるのか」という言葉を使うことがありますが、説明責任はあるにしても、人のせいにする人は向いていないと思います。スタッフに対して尊敬して敬意を表しながら、ともにチームで歩むという姿勢がない限りは、スタッフは育ちません。そこの人選をミスしないことが大事だと思います。 また、「どんどん営業に行きなさい」と言われることもありますけど、突然パッと来た営業の人に、「じゃあお願いします」と大事な家族を任せられますか? 地道に一人ひとりに丁寧に接することで、必ず次に繋がると思っています。ケアマネさんにも、郵送で報告書を渡して終わりではなく、たまには「こんにちは~いつもありがとうございます!そういえばね~」と気軽に会話ができるような、そんな機会をなくしてはいけないと思います。 一人ひとりを大事にするというのは、利用者さんやスタッフを大事にするだけではなく、付随する人全員を大事にすることなんです。こうした地道な活動を経て、組織は着実に大きくなっていくと思っています。 ** 医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者 大橋奈美   三次救急で8年、看護短大の非常勤講師として1年、公立病院で5年勤務の後、ハートフリーやすらぎを立ち上げる。 日本訪問看護認定看護師協議会 代表。 医療法人ハートフリーやすらぎ 訪問看護ステーション所長 田端支普   総合病院の小児科を含めた混合病棟で6年、産婦人科混合病棟で4年勤務後、ハートフリーやすらぎに入職し、訪問看護師に。2012年に訪問看護認定看護師の資格を取得。2018年に特定行為研修修了。

インタビュー
2021年6月1日
2021年6月1日

訪問看護が子どもや家族を地域に繋ぐためのかけ橋に

医療ケアがあるから…と諦めるのではなく、その先をともに考える。小児に特化した訪問看護ステーションベビーノの所長平原さんに、ベビーノの強みや今後の取り組みについてお伺いしました。 医療だけではなく、生活に根付いたサービスを提供する ―ベビーノさんの強み、力を入れているところを教えてください。 平原: ベビーノでは小児に特化した理学療法士や作業療法士などもいます。看護だからリハ職だからということではなく、子どもや家族に対してチームで関わっているところが強みだと思います。未就学児で訪問する期間は限定されているなかで、医療だけではなく、生活に根付いたサービスの提供ができればと思います。スタッフが皆、優秀なのですごく助かっています。 ―ベビーノさんが今後取り組みたいのはどんなことでしょうか。 平原: NICUからお家に帰ってきて、楽しく安全に生活ができるという土台はその子の人生のベースにもなるので、医療保険での訪問は変わらずに丁寧に続けていきたいです。 実は2020年9月に相談支援事業所を開設し、2021年2月からは保育所等訪問支援事業も準備しています。ベビーノを使っている子が対象です。子どもたちがお家で生活することを考えて、訪問だけではなく、地域にしっかり繋がっていくところをやっていきたいと思っています。 保育所等訪問支援は、お家ではできるけど、保育所ではうまくできないところをお手伝いするイメージです。例えば、ごはんがうまく食べられないといった場合、何回かベビーノのスタッフが訪問し、姿勢や使っている道具、環境、周囲のお友達、先生たちとの関わりなどを見て、調整していきます。今までは家族の希望で、自費やボランティアでやっていたところをシステム化したものです。もちろん、保育所に連絡をして許可がもらえてから介入します。 インクルーシブに、きっかけを作って繋ぐ 平原: 医療ケアが必要な子たちが、どんどん保育園に入っていって、訪問看護師も保育園などに訪問しながら医療ケアのサポートや体調管理のお手伝いをやりたいと思っています。だけど、「保育所等訪問支援事業は福祉サービスで、医療じゃないから訪問看護師は訪問できないよ」と言われてしまいました。既存のシステムには乗れないところもありますが、医療ケアがあるから保育園を諦めるということではなく、通えるように一緒に目指していきたいです。世の中いろんな人たちがいるので、インクルーシブに、その中で少しサポートが必要なところにベビーノがお手伝いにいくようになればいいですね。書類だけで疾患名や障がいをみると、「どんな子が来るんだろう…」と保育園側も不安が大きいと思います。だけど、実際にお子さんたちに会われると、「全然、ほかの子たちと一緒にいても大丈夫じゃない」と、特別なことをするわけではないと思ってもらえるケースもあります。 私たちはずっと大きくなるまで携われるわけではないですが、きっかけを作って繋いでいくところを専門的にやっていきたいです。そのためには、訪問看護の部分はしっかりとやらないと説得力がないので、お家での生活のお手伝いを丁寧にやっていきたいです。そして今後はグループ事業として、重症児や医療的ケア児のための発達支援事業所の開設も準備中です。 今、関わっている子たちがどういう風に幸せな生活を組み立てていくのか、コロナ禍で今までの当たり前ができなくなることもあるので、答えがないところを一緒に考えていく存在でありたいです。 ** 訪問看護ステーションベビーノ所長 平原真紀 (助産師、看護師) 大学病院のNICUで勤務し、主任を経験した後、2010年に訪問看護ステーションベビーノを開設。当時はNICUから退院した子どものサポートがなかったため、育児支援サービスとして乳幼児専門の訪問看護を提供している。 ※本記事への写真掲載はご家族の許可をいただいております。

インタビュー
2021年5月25日
2021年5月25日

従業員エンゲージメントが高まる革新的な取り組み

従業員エンゲージメントの高い職場ではどんな取り組みが行われているのでしょうか。引き続き、医療法人ハートフリーやすらぎ常務理事の大橋さん、訪問看護ステーション所長の田端さんにお話を伺いました。 訪問看護のマイナスなイメージを払拭 ―大橋さんがスタッフのことを大事にしていることがひしひしと伝わってきました。こうした考えはどのようにして得られたのですか? 大橋: 盛和塾という経営の塾に通っていて、ずっと「職員を大事にしなさい」と言われてきました。成果をスタッフにしっかり還元するために、かなり給料規定は変えました。人を育てるためには、満足度の高い給料をしっかり出すことが大切です。全国の訪問看護ステーションで1番の給料を払うことを考えています。 これまでの訪問看護のマイナスなイメージを、高給与でちゃんと休みも取れる、オンコールの拘束はみんなで分担するというプラスなイメージに変えていきたいです。オンコールを持つ人には月に5万円の手当を、フォローが必要な人には月3万の手当を出しています。うちの給料は新卒1年目では基本給が26万円、年収は410万円くらいです。それと親御さんを安心させる意味でも、支度金を30万円出しています。10年目では年収600万円、所長で900万円は超えていきます。 だけど、最近思うのはお金じゃないなと。お金は一時的なものであって、やっぱりスタッフとのコミュニケーション、信頼関係、安心な場づくりがあってこそだと思います。 田端: ボーナスも収支に合わせて還元してくれているので、みんな感謝していると思います。スタッフも職場に対する愛情がありますね。離職率は細かく出したことはないですが、家庭の事情で辞める人以外は辞めることがほとんどないです。 スタッフを守るためにフレキシブルな体制を整備 ―給料や手当が充実していると感じますが、経営的には大丈夫なんでしょうか? 大橋: 経営的には黒字です。必要な金額はしっかり払うスタンスでいると、みんな仕事をどんどんやりたいと言ってくれます。 でも、子どもが小さいママさんは緊急対応を免除している人もいますし、土日は出勤できない人、逆に土日出勤したい人もいます。お金だけではなく生活を含む経済保障をされてこそ、はじめていいケアができると思っているので、社労士ともよく相談して、時短などフレキシブルな体制も作りました。特に子どもが体調不良で休む場合、ぜひ看護休暇を使ってねと。「仕事のことは気にせんで、こっちはなんとかなるから大丈夫」と、これまでやってきました。 利用者さんはもちろんのこと、スタッフを守ることは常に頭にあります。スタッフを守ることで、その先の利用者も守れるんです。スタッフも自然と周りを大事にして、そういう風土になっていると思います。私がしんどいなと思ったことを、やらなくても成り立つような環境を目指していて、それが今では実現できるようになりました。スタッフがのびのび生き生きと働いてくれることが、何よりも私の幸せです。 新人の登竜門「おでんパーティー」 大橋: そういえば、うちでは少し変わった催し物をしています。新人さんが「おでんパーティー」を主催するというものです。これは、たまたまお昼休みに「おでん食べたいな~」と話題になったことからはじまりました。スタッフにおでんの好みや味付けを聞いたり、仕入れをどうするか、私に値段の交渉をしたり、各事業所に声をかけたりして…。 実はこれは看護計画と考えることは一緒なんですよね。おでんパーティーの企画で看護計画を学ぶ。これなら新人さんであってもイニシアティブを握れます。実際の準備や調理もひとりではできませんが、チームのメンバーにお願いをして、段取りをする。人とコミュニケーションをとることの大事さが学べるんです。おでんパーティーの後には、スタッフに声をかける頻度も増え、自己肯定感や自発性も高まります。たまたまやったことですが、結果として良かったので続けています。こうしてスタッフからも日々教えられています。 ** 医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者 大橋奈美   三次救急で8年、看護短大の非常勤講師として1年、公立病院で5年勤務の後、ハートフリーやすらぎを立ち上げる。 日本訪問看護認定看護師協議会 代表。 医療法人ハートフリーやすらぎ 訪問看護ステーション所長 田端支普  総合病院の小児科を含めた混合病棟で6年、産婦人科混合病棟で4年勤務後、ハートフリーやすらぎに入職し、訪問看護師に。2012年に訪問看護認定看護師の資格を取得。2018年に特定行為研修修了。

インタビュー
2021年5月25日
2021年5月25日

専門性の高い小児訪問看護の求人や経営の工夫

小児に特化した訪問看護ステーションの数は全国的に見てもまだそれほど多くなく、専門性も高く、小児科領域ならではの経営の難しさもあるようです。訪問看護ステーションベビーノ所長の平原さんに、求人採用、経営についてお話を伺いました。 経験年数の条件は家族の安心材料として ―ベビーノさんの求人情報には「小児科5年の経験」と書いてありましたが、どのようなお考えからこのような条件に設定したのですか。 平原: 5年という区切りにしたのは、病院では3年目で新人教育をしたりして、ひと通り経験してくるころだからです。病院では同じフロアに先輩がいてすぐに相談できる状況ですが、訪問看護ではひとりでいろんな判断をしなければならないため、まずは経験者というところを考えています。そろそろ時代の流れとして変えていかなくてはいけないかもしれませんが、曲げずにやっています。その経験年数はご家族にとっての安心材料にもなり得るという点もあるからです。NICUは独特な雰囲気なので、そこをわかってくれる看護師というのは、家族も話をする上で安心できる存在になるのではないかと思います。 5年やっていれば、看護技術や知識がすべて網羅できるわけではありませんが、いろいろと周りの状況も見えてくるころではあると思います。未就学児専門でやっているので、専門性を大事にしたいというところで、線引きをさせてもらっています。 ―実際にスタッフの求人状況はどうですか。 平原: 子どもの訪問をやりたいと、ホームページや研修会などで知った人が来てくれます。10年やってきているので、「ベビーノって聞いたことがある」と調べてきてくれているようです。開設した当初は、小児の訪問看護ステーションの数も少なかったため、関西や中部地方から就職に来てくれた方もいました。ベビーノではスタッフの生活や働き方も守りながら、利用者さんも家族もスタッフも幸せにしたいと考えていて、ぼちぼちとやっているところがいいなと思って来てくれるのではないかと思います。 ―採用の際にはどういうところをみているのでしょうか。 平原: 子どもや家族とどう向き合っているのか、関係性をどう築いていこうと思っているのかをみています。看護技術の部分は最低限できていてほしいところで、面接のときには直接仕事とは関係のないようなさまざまな話をします。看護のことももちろんですが、趣味のことなども。人間性というか、その人の中の部分を見るようにしています。 ―病院から訪問看護に来るとギャップを感じることも多いという話を聞きますが、実際に働き始めで苦労することはなんでしょうか。 平原: 採用するときには「病院は治療メインだけど、訪問看護は生活をみるところだから」という話はしっかりします。まずはその頭の切り替えをしてもらうところからですね。先輩看護師とある程度は同行するところからはじめるので、多少ギャップがあってもうまく切り替えていけている印象です。 NICUや小児科でも最近は在宅にも力を入れるようになってきたので、病院で働いていても家に帰ってからの生活を見据えて看護していこうという流れがあり、そこまでギャップを感じて苦しむということはなさそうです。NICUの場合には、お家に訪問するのも診療報酬で認められているので、病院スタッフも少しずつ自宅訪問を始めており、病院と地域の差は埋まってきているように感じます。 小児に特化した訪問看護ステーションの経営 ―小児では訪問時間が長くなり、時間単位の報酬が低かったり、キャンセルが多かったりすることが特徴で、経営の難しさがあるという話を聞きますが、ベビーノさんではどのような工夫をされていますか。 平原: 確かに、医療デバイスのある子どもの場合は1時間半~2時間ほど訪問の時間を取っています。例えば、気管切開をしていて呼吸器をつけている子では、バイタルを取ってお風呂に入って、ケアをしていると1時間はあっという間です。それだけでは訪問の意味がなくなってしまうので、もう少し時間をとって一緒に遊んだり、身体を少し動かしたり、ご両親も少し手が離れるような時間を作りながら、訪問の時間を使っています。 キャンセルなども中にはありますが、キャンセル待ちの利用者さんや、医療ケアはそこまでないけどご家族がしんどそうだなと気になるお家に声をかけて行くこともあります。東京都の在宅レスパイトサービスもうまく組み合わせながら、なんとかやっています。子どもが小さいと入院することも多いですし、入院期間も1~2か月ということもざらにありますが、帰ってくるとなれば再調整して対応しています。 ―コロナ禍で感染対策なども大変だと思いますが、どのように対応されていますか。 平原: 一度目の緊急事態宣言のときには、キャンセルや保留も多くありました。しかし、二度目のときにはそこまでではなく、やっぱり訪問看護が入らないと生活がまわらないというところもあるので、感染対策を徹底しながら訪問しています。ご家族の意向をそれぞれに聞きつつ、何かあればいつでもお話してくださいという風にして対応しています。 ** 訪問看護ステーションベビーノ所長 平原真紀 (助産師、看護師) 大学病院のNICUで勤務し、主任を経験した後、2010年に訪問看護ステーションベビーノを開設。当時はNICUから退院した子どものサポートがなかったため、育児支援サービスとして乳幼児専門の訪問看護を提供している。

インタビュー
2021年5月18日
2021年5月18日

初めてお家に帰ってくる子どもと家族をサポートする

子どもだけではなく、家族のケアも大切な小児訪問看護。小児に特化した訪問看護ステーションベビーノの所長平原さんに、引き続き子どもとその家族への看護についてお話を伺いました。 よその家族とも繋がりたい、親子の集い ―何か家族に対して活動していることはありますか。 平原: 医療保険での訪問看護がベースではありますが、開設した年に「よその家族とも繋がりたい」というお声をいただいて、親子の集いをはじめました。子どもと家族が楽しく生活していくことを目標にしているので、親子の集いがちょっとでもそうした楽しみになればいいなという思いからです。 春には新宿御苑でピクニックをしたり、秋にはお寺の本堂を借りて小さな運動会をしたりして、いろいろと企画しています。ママやパパ、子どもたちとそれぞれに分かれてお楽しみ会をすることもあります。月に一回は広場を借りて遊んだりすることもあります。中には出かけるのが怖い、近所の児童館でも少し躊躇してしまうご家族もいるので、安心して出かけられる場を提供することもしています。今はコロナ禍のため開催できていませんが、オンラインでリトミックなどをして工夫しています。 ―家族の反応はどうですか。  平原: はじめたころはどこも出かけられないというご家族もいて、ベビーノの親子の集いをうまく使ってもらっていたこともありました。最近はSNSなども普及したためか、ママ友の繋がりも結構あるようで、私たちが場を設定しなくても活動的になっている印象があります。それでも、まずはひとつのきっかけになればいいなと思いながらやっています。訪問看護師がいるということで、「ちょっと行ってみようかな」となってくれればと思っています。 初めて家族の中に子どもがやってくるときのサポート ―家族看護で気を付けていることは何ですか。 平原: 成人だと元々家に住んでいて、入院してまた帰ってくるという状況ですが、NICUから退院の場合には、初めてその子がお家にやってくる状況なので、どういう風に迎え入れるか、ご両親も初めて尽くしです。そこをきちんとサポートするために、病院のスタッフや私たち訪問看護師も力を入れてやっています。 なかには、初めての子どもで核家族、ご両親以外にサポーターがいないケースも多いです。そのため、夫婦だけの生活のところにお子さんが入ってきても、家族の生活がちゃんとまわるかどうか、夜は眠れて、ごはんが食べられるかというところを、特に最初は意識しています。子どもの安全が保てているか、危険じゃないかどうかを確認しながら、退院直後は訪問看護の頻度も週2~3日、「時間が空いたら様子を見に来ます」といって頻回に行きます。そこから、子どもや家族の状況をみながら段々訪問回数を調整していきます。小児の場合ケアマネはいないので、訪問回数の調整などを訪問看護師が行っていくのが特徴的です。 ** 訪問看護ステーションベビーノ所長 平原真紀 (助産師、看護師) 大学病院のNICUで勤務し、主任を経験した後、2010年に訪問看護ステーションベビーノを開設。当時はNICUから退院した子どものサポートがなかったため、育児支援サービスとして乳幼児専門の訪問看護を提供している。 ※本記事への写真掲載はご家族の許可をいただいております。

インタビュー
2021年5月18日
2021年5月18日

スタッフのモチベーション向上・維持を意識した環境づくり

訪問看護ステーションハートフリーやすらぎでは、スタッフのモチベーションの向上と維持のためにどのようなことを意識しているのか、引き続き常務理事の大橋さんと所長の田端さんにお話を伺います。 資格を積極的に取りに行ける環境を提供 ―ハートフリーやすらぎでは、資格取得や研修を受けに行きやすい環境が整っているのでしょうか? 田端: そうですね。2010年に大橋さんが認定看護師資格を取りに行き、「すごく勉強になるし、うちのスタッフみんなにも取ってほしい」と言われてから私も興味が湧き、2012年に訪問看護の認定看護師資格を取りました。大橋さんというロールモデルがいたおかげで、利用者さん宅に訪問する姿、地域の医師やケアマネとの連携のやりとりなど、間近で魅力を教わることができたんです。 2018年には、特定行為研修も受講しました。病院での胃ろうの交換には、ヘルパーさんの付き添いやタクシーの予約、移動の準備、病院での待ち時間などの負担がかかり、たった10~15分の処置に多大な労力が必要です。これが家でできれば、利用者さんが地域で暮らしていくのに役立つ資格ではないかと。 ―受講にあたり、金銭的補助はありましたか? 田端: 資格取得や研修に関しては出勤扱いで給料保障(ボーナス含む)をしてくれました。 なかなか、個人の訪問看護ステーションではこうした保障はないですよね。仕事を辞めてきたり、休職扱いで貯金を切り崩していたり、という人も多かったので…。学びやすく、研修に出やすい環境を整えてもらっています。 「オールOK」の精神でスタッフを後押し ―大橋さんはどうして、資格や研修などスタッフの学ぶ環境を後押しされているのですか? 大橋: もう私は、「ええやん、ええやん」言っているだけです。私が若いときに学びたい意欲が強かったのですが、「研修に行きすぎ」「あなたは2回行ったから、次はあの人に」と、頭から抑え込まれていたことがありました。別に研修に行きたくない人に嫌々行ってもらうくらいなら、学びたい人が行ってシェアすればと思っていました。 なので、自分がトップになったときには「オールOK」でやりたいと。学びたい人はどんどん学べ、学びたくない人は学ばなくてもいいと…。 ただ、学んだ人がそばにいることで、周りも自然に学べる。それは田端さんから教えてもらったことです。 褒めることがスタッフの活力に ―看護師さんからの人気が高く、魅力あふれるハートフリーさんですが、その理由はなんでしょうか? 田端: うちの看護師はみんな元気で、生き生きしているとよく言われます。それがいい看護に繋がり、患者さんや家族にもいい影響を与えると大橋さんからもずっと教えられているので、みんなで引き継いでいこうという思いがあります。 大橋さんは結構小さなことでも褒めてくれますね。「ありがとう」は毎日言うし、「今日の髪型似合っているな~」と何気ないことから、看護のことまで。利用者さんの家族がこう言ってくれていたという話を私から大橋さんに報告すると、スタッフ本人に「聞いたで~」と言いに行きますから。 大橋: 褒め言葉は無料ですから。特に褒めることは大事にしています。しかも一対一で、一人ひとりを特別に褒めます。 田端: 半年に1度、人事評価がありますが、一般的には課題や改善点を言われて、ネガティブなイメージも多いと思います。そこでも、必ず褒めることをしています。「ここができていないから頑張ろう」ではなくて、「ここができていたね、また頑張っていこう」と。 大橋: できていないところが目につくかもしれないけど、できていないところをわざわざ面接の場で言うなんて、管理職としてはあってはならないと思っています。その都度、注意したらいいんです。 「1週間前のあれな~」と言うなんて、こんな注意のしかたはありません。だから、人事評価ではしっかりとできていたことを褒める、そうしたらスタッフは元気に部屋を後にしますよ。 人事評価はご褒美をいただくような場であるべきだと思っています。 ** 医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者 大橋奈美   三次救急で8年、看護短大の非常勤講師として1年、公立病院で5年勤務の後、ハートフリーやすらぎを立ち上げる。 日本訪問看護認定看護師協議会 代表。 医療法人ハートフリーやすらぎ 訪問看護ステーション所長 田端支普  総合病院の小児科を含めた混合病棟で6年、産婦人科混合病棟で4年勤務後、ハートフリーやすらぎに入職し、訪問看護師に。2012年に訪問看護認定看護師の資格を取得。2018年に特定行為研修修了。

インタビュー
2021年5月11日
2021年5月11日

退院後の子どもや家族が安心して生活できる環境を

都内23区を対象エリアとし、小児に特化した訪問看護ステーションとして育児支援サービスを提供しているベビーノさん。今では、小児に特化した訪問看護ステーションの数も増えてきていますが、所長の平原さんはNICUでの長年の経験を活かし、退院後の子どものサポートが手薄だったころに訪問看護ステーションを立ち上げました。 開設してから10年という月日の中で、真摯に子どもと家族と向き合ってきた平原さんにお話を伺います。 ベビーノはなぜ小児に特化したのか ―ベビーノの事業内容について教えてください。 平原: NICUから退院してきた未就学児を対象に、医療保険で訪問が可能な方に看護を提供しています。事業所は新宿にありますが、訪問エリアは23区に対応しています。開設した当初は新宿や中野のエリアを想定していましたが、大学病院にはいろんなところから通ってきている家族も多く、退院後の住所がバラバラだったため、対象エリアを広げました。 ベビーノでは小学校に入るまでに今後の見通しを立て、繋げていく役割を担っています。小さく生まれた子どもや生まれながらに障がいがある子どもは、酸素や経管栄養を使うこともありますが、その後普通に保育園や小学校に行く子もいますし、反対に疾患や障がいが複雑になっていく子もいます。前者の場合には、医療サービスから福祉や教育のサービスに繋げていき、後者の場合には訪問看護ステーションを併用する必要も出てくるため、一緒に探していきます。だいたい3歳くらいで今後の見通しを考え始めて、子ども本人の状況とご家族と相談しながら決めていきます。 NICUからお家に帰ってくる子どもや家族をしっかりサポートしていきたいという思いから、乳幼児専門の訪問看護をしています。 ―ベビーノさんでは、どのようなケースが多いのでしょうか。 平原: NICUは、生まれてすぐに医療的なサポートが必要な子が集まっているので、小さく生まれた子や、心臓や脳の疾患など、本当にさまざまです。24時間呼吸器管理が必要な子もいれば、ちょっと小さく生まれはしたけど、医療ケアは必要なく、だけどご両親の不安が強いために、精神的なサポートも含めて訪問に行くこともあります。ご両親の精神面が不安定になると、子どもの体重の増えが悪くなることもあります。その場合には、医療保険で訪問をしているので、体重増加不良などの疾患名がついて訪問に行きますが、全体的に子どもたちの健康を守るために、子どものケアはもちろんですが、家族看護という視点で入らせてもらうことがほとんどです。 病院、他のステーションとの連携 ―病院との連携はどのようなことをされているのでしょうか。 平原: 子どもの訪問看護の場合には、ケアマネージャーがいるわけではないので、病院のソーシャルワーカーが地域のサービスに繋げるために動きます。そこでケースに入らせてもらうことが多いです。24時間医療ケアが必要な子どもの場合だと毎日のように訪問看護が入るので、訪問看護も2社使っていることがあり、一緒に組んで入らせてもらいます。 今は新宿にある病院だけではなく、母子医療センターがある病院とはだいたい連携をとらせてもらっています。開設した当初は「子どもの訪問看護って何?」という状態だったので、こちらからこういうサービスを行っていると病院に直接話をしに行くこともありました。今は、子どもたちに訪問看護を入れるのが当たり前になってきたので、病院からの連絡で訪問看護に繋がることがほとんどです。 ** 訪問看護ステーションベビーノ所長 平原真紀 (助産師、看護師) 大学病院のNICUで勤務し、主任を経験した後、2010年に訪問看護ステーションベビーノを開設。当時はNICUから退院した子どものサポートがなかったため、育児支援サービスとして乳幼児専門の訪問看護を提供している。 ※本記事への写真掲載はご家族の許可をいただいております。

インタビュー
2021年5月11日
2021年5月11日

利用者とスタッフの思いを反映する先進的な訪問看護ステーション

大阪市住吉区にある「医療法人 ハートフリーやすらぎ」。その訪問看護ステーションで、スタッフが生き生きとして働けるよう、さまざまな取り組みをされているのが、常務理事の大橋奈美さんと、訪問看護ステーション所長の田端支普さんのお二人です。今回は事業内容や職場環境についてお話しを伺いました。 常勤看護師17名が在籍する訪問看護ステーション ―ハートフリーやすらぎの事業内容について教えてください。 田端: ハートフリーやすらぎは医療法人で、『地域住民の命と尊厳を守ります』という法人理念のもと、診療所、訪問看護ステーション、居宅支援事業所、ナーシングデイを開設しています。 訪問看護ステーションは、2004年に2.5人からスタートし、現在では常勤看護師17人、非常勤看護師1人で運営しています(2021年1月時点)。訪問認定看護師、認知症認定看護師に加えて、特定行為研修(創傷管理関連、ろう孔管理関連、精神および神経症状に係る薬剤投与関連)を修了した看護師が在籍しています。 訪問看護での気付きからナーシングデイを開設 ―ナーシングデイの概要を教えてください。 田端: 小児医療が発達し、500gに満たない赤ちゃんも助かる時代になっています。しかし、なんらかの障害を持ちながら退院することが多く、その子たちが自宅に帰ってきたときに使えるサービスが余りにも少ないという現状があります。 ママが24時間離れずに吸引し、ちょっと散歩に行くにも器材など準備をしないと外出できず、ママが引きこもりになっている。そういうママたちがゆっくりお茶をしたり、安心して美容室に行けたりする時間を提供できるように、小児をメインとしたナーシングデイをオープンしました。 大橋: ナーシングデイは2020年の1月から全国で13か所目、大阪では1か所目として開設しました。障がいを持った子どもの親御さんとの出会いがきっかけです。障がいを持った子どもは、特別支援学校に通うまで受け皿がないので、ナーシングデイを立ち上げて全国にも広げていく必要があると考えました。 田端: 訪問看護では1時間や1時間半と限られたなかでの関わりですが、自分が見ていた部分は本当に少ないものだと、ナーシングデイをはじめてからよくわかりました。1日6~8時間と一緒に過ごすなかで、1日の変化や非言語的コミュニケーションも段々とわかるようになり、お母さんたちと一緒に育てていく気持ちで関わらせてもらっています。 ナーシングデイに通う子どものお母さんたちからは、「お風呂に入れるのが大変だったのですごく助かります」と言ってもらえています。何より、お母さんのリラックス具合がすごく変わりました。それが子どもにも大きく影響していると思います。 訪問看護でのニーズや看護師の意見・思いが反映される職場環境 ―訪問看護からニーズを感じてデイを作られたと思いますが、看護師の意見や思いが反映される法人の姿勢についてどう思われますか? 田端: 大橋さんの力が強いですね。ないものを作っていこうというパワーがあって、先見の明というか、必要なものを早いうちに取り入れていこうとされています。情報収集をいろいろなところでされていたり、常務理事という立場で経営にも参加されていたりと、新しいことを取り入れるために動かれています。「自分たちのステーションさえ良ければいい、ではなくて、法人全体の底上げをしていこう」とよく言われていますね。 常務理事になられたときに、経営の知識が欲しいと盛和塾に行き、経営について学ばれていました。学んだ内容について管理者への伝達講習があり、経営の考え方や人材の管理方法、新しい事業の進め方などをみんなで勉強させてもらっています。毎月の収支はスタッフが見られる場所に貼り出していて、収支の増減について原因を伝えるようにしています。 大橋: これまでは、訪問看護ステーションで利用者さんに対してケアをしてきましたが、ナーシングデイのように組織として地域貢献や社会貢献をするフェーズに来たとも感じていて、今後はより広い視野で活動をしていきたいと思っています。 ** 医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者 大橋奈美   三次救急で8年、看護短大の非常勤講師として1年、公立病院で5年勤務の後、ハートフリーやすらぎを立ち上げる。 日本訪問看護認定看護師協議会 代表。 医療法人ハートフリーやすらぎ 訪問看護ステーション所長 田端支普  総合病院の小児科を含めた混合病棟で6年、産婦人科混合病棟で4年勤務後、ハートフリーやすらぎに入職し、訪問看護師に。2012年に訪問看護認定看護師の資格を取得。2018年に特定行為研修修了。

インタビュー
2021年5月6日
2021年5月6日

地域住民の健康生活を支える場として

 「せわのわ」の名前は「世話の輪」から付けられました。その名のとおり、地域で住み続けるためのキーステーションとして健康支援ネットワークの役割も担っています。 最終回は、地域住民との「世話の輪」のコミュニティづくりを進める取り組みについて、せわのわ事業支援部長の半田さん、せわのわ事業本部長の目井さんにお話を伺いました。 地域に開かれたレストラン「健康食堂」 半田: 地域住民の方に普段使いをしてもらえるような、楽しく食事ができる場所を目指しています。車いすやベビーカーでもそのまま入れる、お一人さまもお母さん方や子ども、ご高齢の方も気軽に入ってこられるようなフリーアクセスな場所にしたい、というのが狙いとしてあります。 当初はもっと健康志向が強く、健康に寄与できる、役立つような場所として考えていました。最初は管理栄養士だけで、栄養素を重視した食事を提供したのですが、食事そのものを楽しみに来てもらえるような感じにはならず、リピーターもつきませんでした。 そこで、コロナ禍の影響もあり、営業自粛となった段階で食の部分は大きく考え直し、調理師を迎えてメニューを全部見直しました。基本はやっぱり食べておいしいもの、もう一度行きたいねとなるような食事。健康の捉え方にはさまざまあるでしょうが、身体も心も健康になるという観点でいえば、適度なカロリーやアルコールなどもあっていいだろうと考えています。 目井: ご高齢の方でもお肉が好きな方が多く、実は今一番の人気メニューはから揚げなんです(笑)。 ご高齢の方で毎日のように来られる方もいますし、お母さん方も多いです。意外にもお一人で食べに来られる女性・男性も多くて、一人でもふらっと入れるような雰囲気があるようですね。 ―地域の見守りネットワークみま~も(※1)のまちづくりにも参加されているそうですね。 半田: 窓口は私がやっています。 当初、健康食堂のコミュニティサロンを活用して、さまざまなコミュニティを引き込みたいと考えていたのですが、独自のアプローチだけでは難しかったのです。その後いろいろ探していたら、ちょうど大田区で地域のネットワークを作る活動をしている団体があるということで、入れていただきました。 目井: 今はコミュニティサロンの提供がメインになります。コロナ禍で今まで使っていたところが使えなくなったとかそういう話もありまして、無償で貸しています。高齢者の方々が簡単な運動をしたり、引きこもりの家族会、生活保護世帯の子どもの学習支援など、社会福祉協議会や地域包括センターなどとも連携し、いろいろやっています。 最初の3カ月くらいはどこの誰だと怪しまれましたが、段々と既存の町づくりをやっている団体ともつながりができてきたところです。 地域の拠り所、在宅のなんでも屋 ―せわのわさんは今、地域にとってどんな場所なのでしょうか。 目井: 大田区高齢福祉課から大田区高齢者見守り推進事業者に登録してもらっていて、地域の困ったときの拠り所として活動しています。 半田: せわのわとしても、「もやっと相談」という窓口を設けて対応しています。なんとなく「専門家がいるので相談できるかな」と、ふらっと来られる方もいます。 みなさん、お話がしたいんですね。そんな場所はほかにはなかなかないので。 目井: ここは、住民の方々との距離がすごく近いと思います。近所のおばあちゃんが毎日顔を出してくれたり、おすそ分けしてくれたり…。 その方々も今は元気ですが、今後、訪問看護などが必要となったときに、せわのわがいいと言ってもらえたら…と、そうしたことも考えながらやっています。着地点はそこですね。先の長い話ですが、ご高齢の方、地域のコミュニティをうちに呼び込むことが最終的な目的です。 住民の方々や利用してくださる方々から、「とにかく困ったときは『せわのわ』に…」と言われることがありますが、そうした声に応えられるようにしていきたいですね。 半田: あとは、今後の展開としてはデリバリーサービスですね。 階段があるのがしんどくてという相談があったりしたので、試験的に始めました。データを集めるために今は無料でやっていますが(2020年12月取材時点)、ある程度スキームが固まれば、2021年から有料化も考えていかなければとは思っています。 目井: 現場の声を集めるために始めましたが、まだ依頼はそれほど多くはないですね。現状ここに来るお客様は歩ける方が多いので、そもそも用がない人が多いのです。民生委員経由で独居の高齢者などにアプローチする方法もありますが、いきなりだと怪しまれることもあるので、社会福祉協議会や地域包括支援センターなどとも連携して、地道に足元から固めている段階です。 半田: 最終的には広域デリバリーの中に調剤薬局の薬を届けることも入れ込んで、ネットワークを作っていきたいと思っています。 ** 株式会社キュアステーション24 せわのわ事業支援部 部長 半田 真澄 30年以上臨床検査領域で働いた後、2013年にTRホールディングスグループに入社。代表取締役の田中氏とは社会人1年目が同期という縁。せわのわでは主に業務全般のサポートを行っている。 株式会社キュアステーション24 取締役/せわのわ事業本部 本部長 目井 俊也 ゼネコンや外資系保険会社などを経て、まったく畑違いの介護業界に。訪問介護ステーションやデイサービス、サービス付き高齢者向け住宅などの開業・運営経験がある。 【参考】 ※1 みま~も(おおた高齢者見守りネットワーク) 高齢者が安心して暮らせる街づくりのために、地域の医療・福祉・介護の専門職が活動する大田区の地域ネットワーク 関連記事:全国に拡大中!地域を支える『みま~も』とは?(牧田総合病院 地域ささえあいセンター センター長 澤登久雄)

インタビュー
2021年5月6日
2021年5月6日

外部センターとICTの活用で運営効率アップ!

株式会社ツクイでは、効率的な事業運営や現場スタッフの負担軽減のために、外部センターやICTの運用を進めているそうです。 今回は、事業企画推進部部長の竹澤仁美さんに、外部センターやICTの活用によって現場にどのようなメリットがあるのか、詳しくお話を伺いました。 外部センターを活用して現場の負担を減らす ―外部の事務センターを利用しているそうですが、どのように活用しているのでしょうか。 竹澤: 今は、医療保険の請求業務だけですが、全国の訪問看護ステーションのレセプト入力から提出までの業務を、すべて沖縄にある外部の事務センターが行っています。介護保険の請求業務はまだ体制が整っていないので、各地域、各県にある自社の事務センターで、介護保険の請求業務や勤怠管理、その他事務にかかわることを行っています。 今後、変更申請や事業所の新規出店、新しい加算の申請に関する書類手続きなどの事務作業も、全部やっていけるようにと考えています。 ―なぜ、外部の事務センターなのですか? 竹澤: 悠翔会さんとツクイが同じグループ企業になったということもあり、両者が育てばいいなという気持ちで、悠翔会さんの沖縄にある外部センターを選択しました。 また、一括集中できる事務業務は、外部の事務センターでも可能なので、事務作業のための事務員はステーションに置いていません。 現場のスタッフがサービスを提供しながら電話を受けるのは、お客様にも失礼ですし、スタッフも大変なので、2021年度からは夜間の電話だけでなく昼間の電話も、沖縄の事務センターで受けてもらうように調整しています。 ICT活用でステーション内のシステムを標準化 ―ICTの活用はどのようにされているのでしょうか。 竹澤: 悠翔会さんの在宅医療用クラウド型電子カルテhomis(ホーミス)を利用し、実績入力など請求関連をおこない、直行直帰ができるようになっています。 記録に関してはWyL株式会社のオマハシステム(※1)を実装してトライアル中で、それが終われば2021年4月から本格始動の予定です。オマハシステムはケアの質の標準化、情報共有、スケジュール管理も全部できます。また、携帯でとったものが転送され、大事なものを持ち歩かなくていいので、現場看護師の受け入れは良さそうです。今は記録が手書きなので、「楽になるよ」と、伝えています。 電子カルテは病院向けにできていることが多く、領域も少なく、在宅での汎用性の低さを感じていました。訪問看護をやっていくうえで、一人一人使ってきたカルテも違いますし、記録の書き方なども違うので、オマハシステムを導入することでやり方を全員統一することができるのは良いですね。 今後オマハシステムとhomisの連携作業を行い、さらに効率化を進める予定です。 ―今後、業務の効率化のためにやっていきたいことはありますか?  竹澤: とにかく現場の事務業務を無くすことです。 例えば今は、事故やトラブルが発生した際の業務を、本部の事故課で引き取るようにしています。初動は事業管理者がしなくてはならないですが、入力フォームがあって、そこに必要事項を入力すればシステム上にあがるようになっています。 本部でまだ作っているところではありますが、そのように事務業務を現場から取り上げて、現場のスタッフが業務に集中できるようにしたいです。 ** 株式会社ツクイ 事業企画推進部 医療系事業プロジェクト 部長 竹澤仁美 【参考】 ※1 オマハシステム 関連記事:ケアの質を向上させる!オマハシステムを徹底解説(ウィル訪問看護ステーション 岩本大希)

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