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【セミナーレポート】看取りの作法 Q&A≪特別先行公開≫

本記事は2021年11月12日に開催したオンラインセミナー「看取りの作法」のレポート≪特別先行公開≫です。 当日は、家庭医療専門医である、杉並PARK在宅クリニック院長の田中公孝先生にご講演いただき、セミナー中にたくさんのご質問をいただきました。今回は先生のご厚意で、時間内に答えきれなかったご質問からいくつか抜粋し、解説いただきました。 在宅医として看取りに向き合う心構えや、訪問看護師さんへの期待について、先生のお考えを記事にいたしましたので、セミナーに参加された方も参加出来なかった方も是非ご覧ください。 老衰の看取りのケース 老衰の看取りの場合、ゆっくり機能が低下していく経過となりますが、ご本人やご家族に、どのようにお話されますか? ご質問ありがとうございます。老衰については、癌末期と違って予後予測が延びたりすることはお話ししています。また、老衰でご本人に説明するというシーンはあまり無いのですが、もしご本人に聞かれたら「もう〇〇歳ですからね、病気も沢山ありますし、年齢による影響は否めないと思います」とやんわり伝えるイメージです。ご家族については、老衰の看取りを自宅で行う決意をされたことを支持することをお伝えし、「病院よりも自然な形で過ごせますしね」や「癌で痛みがある例などに比べると穏やかで寝ているような時間が増えますよ」と声掛けします。また、食事が摂れなくなってきても無理に口には入れず、お楽しみ程度に、数口試して難しければやめるという助言をします。途中、せん妄状態になる方がいることもお話することで、手足をバタバタする、などの状況を理解してもらうように早め早めに説明します。最後の1週間は、講義でもお話した看取りのパンフレットを説明してお渡しし、それに沿って経過が流れることを確認しながら往診します。老衰の看取りはしっかりとサポートするとご家族も満足度が高い印象です。ただ、食事水分がほとんどとれない高齢者が予後予測よりも1週間以上延びたことが経験上あるので、癌末期の事例よりも非癌の事例の方が難しい面があると以前在宅のエキスパートナースの方がおっしゃっていた話は、実感するところです。 ガン末期の方のお看取りの心構え 今まさに、亡くなりそうなガン末期の利用者様がおられます。呼吸が止まれば連絡をいただくようになっています。私自身とても緊張しています。心構えをお教えください。 私も経験がありますので、よくわかります。心構えとしては、呼吸が止まった時の連絡をいただいたとき、どういう声かけや対応するか、死後の対応や説明をどうするか、を想定して詰めておくと少しは不安が和らぐ印象です。 例えば、ご家族の安心と不安の違いを過去に分析して感じたことなのですが、「人間、漠然としたものをそのままにしていると不安が募る」ようです。なので、専門職でも後のことについて漠然としていると不安が募りやすい側面はあると思いますので、この後のことをしっかり具体的に想定しておくことが大事と思います。また、定期の訪問時によくご家族とコミュニケーションをとっておくことも夜間電話がかかってくるかどうかの際の不安軽減につながります。というのも電話しながら、ご家族の表情や感じが目に浮かぶようになれば、呼吸停止の電話でも面と向かって喋っているような感覚で落ち着いて対応できるのではないかなと思います。 普段のケアのコミュニケーションが、いざというときの助けになる、というところは、看取り直前だけではなく、急変の場面でもそうだと思いますので、我々訪問の専門職は日ごろからぜひ意識したいところです。 誤嚥性肺炎を繰り返す方の往診医との連携について 訪問看護師です。現在、誤嚥性肺炎を繰り返している利用者さんがいます。本人は自宅を希望しており、家族も本人の意向を尊重したいと思われています。ただ、妻が食事形態を理解できず普通食を提供することが続いています。自宅看取りの方向ですすんでいますが、往診医はリスク説明をして、何かあれば救急搬送するしかないと言われています。本人家族の意向を叶えつつ、往診医との連携をうまくとっていくのをどうすれば良いか悩んでいます。 それは難しい状況ですね。。往診医との連携についてですが、まずは往診医以外の他職種と相談して、根回しをしながら担当者会議を開くのが良い気がします。本人家族はもちろんのこと、他の職種がリスクを承知でも自宅看取りを支えたいと思っていることを皆で伝えれば、理解を示してもらえる可能性が出てくるやもしれません。 他の手段としては、往診クリニックのスタッフさん(看護師さん、相談員さんなど)で普段からコミュニケーションとっている方がいたら、まずはその方に相談するというのも1つです。もしかしたら伝え方のヒントや一緒に考えてくれるやもしれません。参考にしてみてください。 家族間の看取りの調整 家族での看取りの方法が一致しない場合、どの様に対応したらよいですか? これも難しい場面ですね。。私であれば、まずは家族全員の意見を聞き、家族間の話し合いを促します。ただそれでも難しい場面もあると思いますので、自宅看取りの場面で想定されること、病院への救急搬送を言われる場面など、この後の様々なシチュエーションを想定しておいて、都度都度の対処に臨む心構えを私はしています。 また、意見がそれぞれ違うご家族と一度は直接面談することも重要です。やはりキーパーソンだけ喋っていて、方針の違うご家族と直接しゃべらないとあまりうまくいかない印象で、私も過去にどんでん返しを受けた事例がありました。できる限り意見の違う家族とも会い、この後予想されるシナリオをいくつか想定しながら、集まった情報をもとに多職種で話し合い、ともに考えるといったプロセスが大事かなと思います。 ちなみに多職種で話し合うと別の視点や情報、アイデアなども出てきますので、なかなか担当者会議となると家族もいて目の前ではできないという場合は、点数などは発生しませんが専門職だけで会議することをお勧めします。 特化型ステーションに在宅医が求めること 病院併設の訪問看護ステーションで働いています。緩和ケア病棟から異動になり、終末期に特化したステーションにしたいと思ってます。在宅医が求める訪問看護師について、何を求めるか、何が必要か、教えて頂きたいです。また、先生が考える特化したステーションとは具体的にどのようなステーションか知りたいです。 あと、在宅では介護者の高齢化や子の介入不足、地域性からか子に頼れない親も多く、介護負担で疲弊してしまうケースも少なくありません。初めての待機当番で夜中にオムツ交換で呼ばれ、翌日、主治医や病院側が訪問看護師の負担を考慮して即緩和ケア病棟に入院させたケースもありました。終末期のバルーンカテーテル留置は積極的に行ってよいのか迷います。 もっと在宅医とうまく連携して家族に寄り添ってできたらと日々葛藤です。本人ばかりに注目せず、もっと家族に寄り添い、グリーフケアにつながる看護ができたらと思いますが、なかなかチームでとなると難しいです。 ご質問ありがとうございます。私が看取りに特化した訪問ステーションと呼ぶ訪問看護は、 ・今回お話した看取りの作法ができている・困難だった事例も多く経験していて、イレギュラーな末期事例でも対応できる・麻薬や鎮静薬の提案タイミングが卓越している・グリーフケアの声かけが非常にうまい・家族の療養方針の迷いにしっかり対峙し、アドバイスができる・時には主治医の迷いに対してもしっかり応えられる・ケアマネジャー/サービス担当責任者に報告・連携・フォローしながら進められる あたりができているところだと思います。 私自身、看取りに卓越した訪問看護ステーションと組むと毎回こちらも勉強させられます。それくらい、人の看取りにまつわる技法というものは、医学の知識をしっかり蓄えながら、コミュニケーションの技術も向上させ、経験、心構え、ご自身のあり方を深めることが必要なのだと思います。おっしゃる通り、本人だけのケアでは在宅の看取りケアとしては片手落ちで、家族のケアをしながら、多職種で目線を合わせて迷いや葛藤が現れる過程をしっかりと取り組めるということが大事だと思います。 エピローグ オンラインセミナー「看取りの作法」にご参加いただきました皆さま、ご質問をいただいた皆さま、誠にありがとうございました。 田中公孝 先生のご講演内容やQ&Aセッションの様子を後日、セミナーレポートとして全2回でお送りします。明日からの訪問看護にいきる内容となっておりますので、ぜひご覧ください。 <セミナーレポート前編につづく|12月21日公開予定> ** セミナー講師:田中 公孝 2009年滋賀医科大学医学部卒業。2015年家庭医療後期研修修了し、同年家庭医療専門医取得。2017年4月東京都三鷹市で訪問クリニックの立ち上げにかかわり、医療介護ICTの普及啓発をミッションとして、市や医師会のICT事業などにもかかわる。引き続き、その人らしく最期まで過ごせる在宅医療を目指しながらも、新しいコンセプトのクリニック事業の立ち上げを決意。2021年春 東京都杉並区西荻窪の地に「杉並PARK在宅クリニック」開業。 杉並PARK在宅クリニックホームページhttps://www.suginami-park.jp/ 記事編集:NsPace

特集

訪問看護あるある座談会 vol.8 女性のお悩み編

生理痛、PMS(月経前症候群)、妊娠、出産…女性ならではのさまざまな体調変化に悩まされ、仕事に影響が出るという方も多いのではないでしょうか。今回は3人の訪問看護師さんにお集まりいただき、女性のお悩みをテーマに、訪問看護の「あるある」についてぶっちゃけトークをしてもらいました。 ■座談会に参加してくれた看護師さんプロフィール みほ訪問看護の実習で暮らしが新卒から訪問看護師に。オンコールやプリセプターもしている中堅ナース。訪問看護師6年目。 あい病棟、介護施設を経て、家族が訪問看護を受けていた経験から訪問看護ステーションに転職。訪問看護師2年目で現在妊娠中。 さき大学病院に勤務していたが、退院支援から在宅に興味を持ち訪問看護の道へ。訪問看護師は6年目。1児の母。 ライフイベントやホルモンに左右される体でも健康的に働きたい! 訪問看護に行けない…焦りや申し訳なさの妊娠期 あい:実は妊娠していて、安定期に入ったんです。みほ:おめでとうございます。体調は大丈夫ですか?あい:今は大丈夫なんですけど、つわりがつらくて仕事はお休みしてたんです。みんなどうやって耐えてるんだろう?って思いました。さき:私は妊娠中も訪問看護をしていたんですが、ハンドクリームとかボディーソープの香りで「ウッ」としちゃって。匂いに敏感になって排泄ケアもできなかったんです。そういう訪問は他のスタッフさんに替わってもらいました。あい:私も一緒でした。匂い、つらいですよね…。さき:ただ、途中で切迫早産になってしまって、仕事を休むことになったんです。急遽他の看護師さんに訪問を代わってもらって。急な調整も対応してもらえて、やっぱり職場環境って大事だなって思いました。 みほ:調整してくれる職場、ありがたいですね。 さき:でも、調整してもらうことへの罪悪感もあったんです。他の看護師さんは訪問が増えて大変だろうなって思うと、申し訳なくて。自分を追い詰めちゃうタイプだったので、体調だけではなくて精神的にもつらかったですね。 あい:わかります。「迷惑かけてるんじゃないか」って思いますよね。 みほ:私の訪問看護ステーションにも妊娠中に体調が安定しない看護師さんがいたのですが、それでも何かできる仕事がないかって言ってくれて。計画書や報告書を書いてもらうとか、デスクワークのフォローに回ってもらっていました。事務さんじゃ難しいけど看護師ならできるような、手が回っていなかった調整業務などをやってもらえたりもして、ありがたかったです。 さき:私もデスクワークはお手伝いさせてもらってました。軽めでも仕事振ってもらってると、気持ちが楽ですね。ずっと自宅待機だと、現場はどうなってるのかなって焦ったり、取り残されている感じがして「仕事がしたい!」って思っていました。 あい:うちのステーションでは代わりにできるようなデスクワークが少なくて、居場所がない感じがして葛藤しています。もともと不妊治療をしていたので、妊娠前から勤務調整をしてもらうことが多かったんです。不妊治療のこと、上司には話していたんですが、それ以外のスタッフには伝えていなくて。体調不良とか受診で急に休んだりしていたので、周りも「どうしたんだろう」って思っていたみたいです。コミュニケーション不足でギクシャクしてしまった時期もあって、とても悩みましたね。 さき:うーん。不妊治療も大変ですよね。 あい:でも職場の協力のおかげで、妊娠に繋がったので感謝しています。家とかステーションの中でできる業務があると、少しでも貢献できている気がして救われますよね。社会との繋がりも感じられそうです。 子育てと仕事の両立は? みほ:もし自分が子供を産むとなった時、育児と仕事の両立で悩みそうです。近所に親がいるから仕事復帰できたという話を先輩から聞いて、近所に親がいない場合とかはどうしてるのかなと思って。 さき:うちは0歳クラスから保育園に入れたので、早い段階で職場復帰ができました。小さい時はよく体調崩していて、迎えに来てほしいと言われることがあったんですが、職場がすぐ調整してくれてお迎えに行ってました、夫はすぐに帰って来れるような仕事じゃなかったので、本当に職場に助けてもらいましたね。あとは自治体の産前産後ヘルパーを利用したりしてました。3時間おきの授乳は大変だったけど、保育園も助けてくれるし、意外とできるんだなって思いました。私も構えてたんですけど、そんなに構えすぎずでも大丈夫かもしれませんよ。 みほ:そう言ってもらえると、ちょっと安心します。 さき:ズボラでも大丈夫です。笑 あい:未知の世界すぎてイメージつかないですよね。妊娠してみて、こんな大変なんだっていうことばかりで。みんな乗り越えてきたんだと思うと、本当にすごいです。 みほ:さきさんはお子さん産んでから体の変化とかありましたか? さき:産後3年くらいは風邪引きやすくなりましたね。何十年かぶりにインフルエンザにかかりました。体質が変わるんでしょうかね。産後は慣れない育児とか睡眠不足もあってか、1人で戦っている気持ちになっちゃって夫にもイライラしたりしちゃいました。産後の体の変化とか育児のことを男性も理解して、サポートしてくれると嬉しいんですけどね。 あい:電車の中や職場でも気を遣うので、家庭のストレスはなるべく少なくしたいですね。パートナーが気に掛けてくれたり、家事を手伝ったりしてもらえるだけでもとっても助かります。 生理痛やPMSのあるある みほ:女性のお悩みといえば、PMSや生理痛もありますよね。私はPMSがひどくて、頭痛やイライラがくると、これは生理が来るかも、ってなります。生理痛で布団から起きられなくて仕事を休んでしまうことも何度かあって、上司から受診をすすめられたりしました。婦人科に行ったら低容量ピルをすすめられて、飲み始めたらだいぶ楽になったんです。 あい:私もピルを飲んでいたことがあるんですけど、副作用で肌が荒れて、ニキビができちゃったんです。やめようか悩んだんですけど、先生に「3ヶ月頑張ってみて」って言われて、しばらくしたら落ち着いてきたのでよかったです。副作用にはびっくりしましたけど、生理の出血量も減って、今までの量が普通じゃなかったって分かりました。 みほ:普通の量がわからないですもんね。ピルを飲んだ方が体調的には楽なんですけど、受診に行くのが億劫で。今通っている婦人科が混んでいて、待ち時間が読めないし、新型コロナもあるしで足が遠のいてしまって、結局今は飲んでいないんですよ。 さき:定期的に病院いかなきゃですもんね。最近はオンラインでも相談できたりもするらしいですよ。 みほ:オンラインは便利ですね。あとピルを飲み忘れることもあって、結局内服リズムがずれちゃったりして。自分の内服コンプライアンスが悪くて、毎日ちゃんと定期内服できている利用者さんがスゴいと思います。 さき:生理痛とかPMSって個人差があったり、仕事が忙しいとつい我慢しちゃうこともありますけど、自分に合った方法を見つけてうまく付き合っていきたいですよね。最近話題のフェムテックの商品やサービスも増えているみたいなので、活用していきたいですね!

特集

訪問看護あるある座談会 vol.7 認知症看護編

2025年には日本の65歳以上の高齢者のうち約5人に1人が認知症になると言われています。(引用元:厚生労働省 認知症の人の将来推計について https://www.mhlw.go.jp/content/000524702.pdf  )また、介護や支援が必要になる原因の第1位が認知症で、介護保険を利用した訪問看護おいて関わる機会も多いかと思います。今回は3人の訪問看護師さんにお集まりいただき、在宅での認知症看護の「あるある」についてトークをしてもらいました。 ■座談会に参加してくれた看護師さんプロフィール ゆりやりたいことを支えられる看護に魅力を感じて訪問看護に転職。訪問看護ステーションの管理者経験もあるママナース。訪問看護師7年目。 あい病棟、介護施設を経て、家族が訪問看護を利用していた経験から訪問看護ステーションに転職。訪問看護師2年目。 みほ訪問看護の実習で暮らしが見える面白さを感じ、新卒から訪問看護師に。オンコールやプリセプターもこなす中堅ナース。訪問看護師6年目。 臨機応変に対応できる力が必要!奥の深い認知症看護 本人に告げずに施設入居することのモヤモヤ あい:最近訪問している利用者さんに徘徊のトラブルがあったんです。認知症の方への対応って悩みますね。 みほ:徘徊ですか…。印象に残ってる利用者さんがいて、一人暮らしで認知症がある方でした。足腰は元気で、近所の食堂にご飯を食べに行くんだけど、お金を払い忘れてしまって。その度に遠方に住んでる息子さんがわざわざ謝罪に来ていました。いろいろ工夫はしたのですが、トラブル続きで息子さんが限界になってしまって、最終的に施設に入ることになったんです。ちょっと徘徊とは違うかもしれませんが。 あい:ご家族もお辛い時期がありますよね…。 みほ:でもご本人に「施設」という言葉を出すと怒るので、最終的には遊びに行くという名目で息子さんが施設まで連れて行ったんです。本人に告げずに施設に入ることにはモヤモヤしましたね…。ご家族の心配とか疲れとの兼ね合いもあるけど、あまり会えないご家族のフォローは難しいですね。 ゆり:あのときご家族にこうフォローしておけばよかった、とか思い返すこともありますよね。コロナ禍になって、直接話せる機会が減って余計に難しくなってる。 みほ:ご本人も一人で暮らすことのつらさを時々話したりはしてたんですけど、それでもやっぱり家にいたいって言っていて。 あい:自分でも忘れちゃうことに葛藤していて、不安だけど家にいたいっていう時期だったんですね。 ゆり:モヤッとしますよね。もともとの家族関係もさまざまだと思うんだけど、なんとなくのニュアンスで伝わるような関係もあれば、はっきり言うことでうまくいく関係のご家族もいたりするし。もしかしたら、何も言わなくても施設に連れて行くときの雰囲気で察せるような家族関係の人もいるかもしれない。そのご家族にどのパターンが合っているのかを探るのも、看護師の大切な役割かもね。 みほ:たしかに。当時はまだ新人で「認知症の方にも正しいことを正しく伝えるべき」って思っていたんですけど、正しい情報を伝えるとか、本人の意思をすべて汲むのが、必ずしも正解ではないなと。ふんわりケアする方向に誘導して、利用者さんの命とか体調を守ることも必要だと最近は思うようになりましたね。 ゆり:そうねー。命に関わるようなお薬を飲むのを見届けなきゃいけないんだけど、利用者さんが他のことに集中して飲んでくれない時とか、お話して気をそらして薬を飲んでもらうとかも必要なことだし。興奮してバイタルサイン測れない時には、お話だけ聞いて帰ってくるときもあるしね。 みほ:バイタルサイン測定できない時は、そっと手首に指当てて、脈は大丈夫、皮膚も熱くないので熱もなさそう、って確認したりします。基本的な視診や触診、会話などから得られるものもありますね。 チームでケアを繋いで利用者さんの生活を保つ あい:毎回のケアの順序って大体決まってるじゃないですか。でも認知症の方の訪問は特に毎回違っていて「今日はどこからやろう」ってなります。今日は入浴介助の日だったけど、利用者さんの気分が乗らなくて、じゃあ代わりにこれをしよう、みたいな。決まった流れができるだけではなくて、応用力必要だなって思います。 みほ:めっちゃわかります。訪問時間に収まるようにケアを組み立ててイメトレして行ったけど、おうちに着いてみたら「入れ歯がないのよ」ってずっと探し物をしていて。結局入れ歯を探して訪問時間が終わったこともありました。でも入れ歯も見つかったし、これで食事も食べられるし、利用者さんの心配事も解消されたしオッケーかなと。 あい:そうそう、ポジティブに捉えて置き換えますね。その日のケアができなくても、1人でどうにかするのは難しくても、1週間でチームでケアを繋いでいけば生活を保てるなって。次に行く看護師に「今日はこれができなかったので、次行ってできそうであれば、このケアをお願い」って引き継いでやってもらうとか。 ゆり:ヘルパーさんと連絡ノートを作って、これできましたってリレーしていくのもいいよね。連絡ノート書くの、時間かかるけど。 あい:連携は何かと時間かかりますよね。お薬とか排泄のこととか…。 ゆり:ケア内容を変えるだけでも、試行錯誤して数ヶ月とかかったりしますよね。でもピタッとケアがハマった時って、嬉しいよね。 あい:嬉しいですね。利用者さんで薬の飲み忘れが増えた方がいて、看護師管理で内服カレンダーを使い始めたんですけど、いざ導入してみたら混乱してしまって。色々試していたら「薬は自分でセットできるよ」って仰るのでやってもらったら、自分でセットできたんです。思ったより自分でできるね!ってみんなびっくりして。落ち着くまでに2〜3ヶ月かかりましたけど、利用者さんも慣れればちゃんと自分でできたりするんですよね。 ゆり:こっちができることを奪っている場合もあるから、利用者さんに合う方法を考えるとか、その人がやりやすいような置き場所にするとかも大切。医療的なケアが少ないからか、認知症看護って楽でしょ?って言う人もいるけど、すごく奥が深いんだよね。

インタビュー

本人の強い意志をチーム力で支える

ベテラン訪問看護師の望月葉子さんが出会った、印象深い意思決定支援のケースを前後編で紹介します。前編は、重度の障害のある人に対する現在進行形の支援について語っていただきました。 東京のICU病室から博多でのコンサートへ 「意思決定支援」というテーマをいただいたとき、まず思い浮かべたのが10年のお付き合いになるAさんです。「こうしたい」という強い意思を持ち、周りを巻き込んでそれを実現していける人だからです。 【患者Aさん】 現在63歳、アテトーゼ型脳性麻痺の女性。車いす使用。望月さんが担当するようになったのは2010年、Aさんが53歳の時から。当時、直腸膀胱障害があり、すぐに尿道カテーテルを留置。その後、気管切開、胃瘻造設、乳がん手術などを経て、今も94歳の母親と二人で在宅生活を継続している。 Aさんへのこれまでの支援で最も大きなエピソードは、2014年10月、Aさんが交流のある演歌歌手のコンサートに招待され、病院のICUを自主退院して東京から博多に行ったことです。 そのころのAさんはすでに嚥下状態が悪くなり、この年の2月には誤嚥性肺炎で入院していました。博多に行きたいと言われたとき、私は最初、本気とは思っていませんでした。でもAさんは本気でした。それでケアチームの会議を招集し、本当に博多に行けるかを検討しました。 Aさんの強い思いに、相談支援専門員(障害分野のケアマネジャー)が寄り添ってくれたことで、ケアチーム全員が実現の方向に動けたように思います。お母様も博多行きにかかる費用はすべて出すと言いました。在宅医も、万一のことが起こる覚悟を本人とお母様に確認したうえで、診療情報提供書を用意してくれました。 そうしてコンサートの半年ほど前から、ヘルパーや自費の看護師、現地でケアを引き継いでくれる看護師、携帯用の酸素などを手配し、博多行きの準備をしていました。ところがコンサートの直前、Aさんは誤嚥性肺炎で呼吸不全になり、救急搬送されてしまったのです。しかも入院中に痰が詰まって、一時は心肺停止状態に。 常識だったら「これではコンサートは行けないね」となりますよね。でも、Aさんは「どうしても行きたい」と諦めなかったのです。退院は認めないという病院と交渉し、結局Aさんは、「急変したとしても再入院は求めません」という約束をして、自主退院することになりました。 私は病院から東京駅まで車に同乗し、Aさんを自費の看護師に引き継いで新幹線に乗車させました。そしてヘルパーが合流し、何とか博多まで行き、Aさんはコンサートを楽しむことができたのです。 選択の数々 博多から帰ってきてまたすぐに、Aさんは呼吸不全になって救急搬送されました。「呼吸筋力の低下で、自力での痰の喀出は困難、経口摂取はもう無理」という医師の診断でした。Aさんも納得の上、気管切開を受けました。 その後は、胃瘻にするかどうするかの選択を迫られました。在宅でケアにあたっているお母様もこれには悩みました。お母様は当時80代後半です。在宅医や私たち訪問看護師にたびたび電話をしてきていました。 Aさん自身はとにかく生きる意欲が旺盛なので、胃瘻云々ではなく、「とにかく家に帰りたい」と訴えていました。 Aさんは気管切開で声を失っていますから、介護者が読み上げる50音に舌で合図を出して意思を伝える方法をとっています。いつもの介護者とお母様は、このコミュニケーションに慣れていますが、病院ではそうはいきません。体を動かせないAさんには、ナースコールを押すこともできません。 しかし家に帰れば、意思疎通ができるヘルパーさんが24時間いてくれるのです。結局、Aさんは胃瘻を造設して自宅に戻りました。 この後、Aさん自身もお母様も、がんの手術を受けています。でも、それらの出来事もケアチームで支え、乗り越えて、現在に至ります。胃瘻から栄養注入しながら、チョコレートや、お母様手作りのゼリーを口から召し上がっています。 いいゴールはケアチームみんなで考えたい Aさんとこれほど長いお付き合いになるとは思っていませんでした。長い期間その人の人生に寄り添っていけることは、訪問看護の醍醐味です。とても幸せなことですね。今、Aさんの自宅へは週2回の訪問で、入浴介助、摘便、服薬管理、尿道カテーテル交換などをしています。 Aさんの博多行きを経験したことなどもあって、10年の間にケアチームとしての成長を感じています。チームメンバーは入れ替わりもありますが、定期的に行政メンバーも交えてケアチーム会議をしていることもあり、Aさんの意思はみなよく分かっています。 これから起こりうる大きなエピソードとして考えられるのは、おそらくお母様に何かあったときでしょう。そのときどう対応するかについて、ケアチームで話題に上っています。しかし、施設を探すといった話はまったく出ていません。Aさんは「このまま在宅で生活する」と言うだろうと、みな思っているからです。 Aさんは、状態の悪化を嘆いて悲観的になることはありません。もちろん、感情の波はありますが、怒るエネルギーは衰えません。いろいろな難題を突き付けてくる人ですが、意思がはっきりしている分、支援の方向性は決めやすいのです。どこが本当に良いゴールなのか、今はまだわかりませんが、それはチームみなで考えていけると思っています。 ※掲載の内容については、ご本人とご家族の了承を得て掲載させていただいております。 ** 望月葉子白十字訪問看護ステーション看護師 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー

意思決定支援とは誰のため? 何のため? 「ややのいえ」の取り組みから考える

さまざまな人々が集い、出会い、語らう場として、看護から看取りまで「地域まるごとケア」を行う「ややのいえ」を運営する榊原千秋さん。今回は、「ややのいえ」の大切な理念とその実践、そこで出会ったある男性の最期について語っていただきました。 地域をまるごとケアする 「ややのいえ」の四つの理念 「ややのいえ」には、高齢者を中心とした出会いの場「ことぶきカフェ」、医療や介護相談「暮らしの保健室」、排泄の総合相談「おまかせうんチッチ」、産院+親子サポートを行う「ちひろ助産院」、訪問看護ステーションなど、さまざまな機能があります。住民は、「ややのいえ」とつながることで、新たな出会いやつながりが生まれます。ここは0歳から100歳を超える方々の「地域まるごとケア」の拠点であり、自分なりのありかた、生きかたを見つけていく「居場所」となっているのです。 「ややのいえ」には四つの理念があります。それは、前回お話しした義母のことも含め、私が三十余年、地域で出会った人たちから教えてもらったことがベースになっています。 一つめは、「とことん当事者」ということ。訪問看護でも、「今、いちばんしたいことは何?」と、家族ではなく本人の願いを聞きます。「星空が見たい」「猫と遊びたい」「お化粧をしたい」「『おしん』を最初から最後まで見たい」など、いろいろな望みが出てきます。願いを聞いたら、なぜそれを望むのかもたずねます。言葉にした「願い」だけではなく、「なぜそれを望むのか」が大事な場合もあるからです。それに、「なぜ」を聞くと、私たちもそれを実現したくなりますからね。 本当の願いがわかったら、ときにはチームを作り、それを実現します。そのプロセスが、「ややのいえ」のACP(アドバンス・ケア・プランニング)であり、意思決定支援の取り組みなのです。 大切にしていることの二つめは、専門職として出会う前に「人として出会う」こと。専門職として病気のこともきちんと診るけれど、最初にその人がいちばん大事にしているものを見る。気付く。そこから人と人としての関係を作っていくのです。 三つめに、「自分ごととして考える」。相手を人として知り、願いを知り、その願いへの思いを知る。そしてその願いをひとごとではなく、自分ごととして考えるのです。 一人の人を支えるには、医療職や介護職、制度だけでなく、いろいろな仲間の力が必要です。「ややのいえ」には文房具屋さんや不動産屋さんなど、地域のさまざまな仲間がいます。本人の願いをかなえるために必要なら、そうした仲間たちとチームを作ります。こうした、専門職だけでない支援、本人を取り巻く多くの人たちが一体となる「十位一体のネットワーク」の力が「ややのいえ」の理念の四つめであり、意思決定支援につながるものです。 ナラティブに出会い エビデンス的に人を看る 「ややのいえ」の訪問看護では、初回訪問から「ナラティブ」でその人と出会います。壁に表彰状がかかっていたら、「すごい、○○で賞を取ったんですか?」と聞いてみる。その人が大事にしていることを知ろうという目線で接していくのです。そうした目線は、「ややのいえ」として、「聞き書き」にずっと取り組んできた文化が影響していると思います。「エビデンス」的に人を看ながら、同時に、「ナラティブ」でも人を見る。そんな姿勢がスタッフに身についています。だから、専門職として出会う前に人として出会うことができるのです。 「聞き書き」は何も、構えて相手の話を聞き、書き留めるだけではありません。「あんたらの魂胆に乗せられてやるか」とか、「あーあ、俺はもうすぐ死ぬのか」とか、訪問したときに、ふと漏らした、その人らしいちょっとした独特な言葉があったとき、それをカルテに書き留めます。そんな「ひと言聞き書き」が、意思決定支援につながるACPの一部なのです。 それは、きちんと相手と向き合っているから、拾い上げることができる言葉です。「今日の血圧は」「足がむくんでいますね」と、体だけを看るかかわりだけでは、聞き逃してしまうかもしれません。 満足と幸せが残る意思決定支援とは 末期がんで在宅療養していたAさんは、あれこれ気遣われるのが煩わしく、心配する奥さんをも怒鳴りつける人でした。本人はまだ3~4年は生きられると思っていたのですが、いよいよ状態が厳しくなってきたとき、訪問看護師に「わしはどうなっていくのか」と聞いてきました。 そのとき訪問看護師は、「もともと生まれてきたところに帰って行くのですよ」と答えました。するとAさんはにこっと笑って、「母ちゃんを呼んでくれ。そして二人にしてくれ」と言いました。看護師が退出後、Aさんは奥さんの手を握り、二人でしかできない話をしたのだそうです。Aさんは、その日の深夜3時に亡くなりました。 Aさんが亡くなったあと、私たちはお通夜とお葬式に同席させていただき、ご親族と空気感を共有しました。グリーフケアですね。その後、四十九日までに弔問に訪れると、「あの時逝くとは思っていなかった。あの時間があってよかったよ」と奥さんはとてもいいお顔をされていました。 亡くなることを「旅立つ」という言葉で表現することがありますが、浄土真宗のさかんな北陸では「お浄土に帰る」と言います。看護師の「もともと生まれてきたところに帰って行くのですよ」という言葉は、Aさんの心に自然に受け止められたのだと思います。 意思決定支援はひとつの地域文化でもあると思います。同じ地域で暮らしているからこそ共有できるのだと。そして意思決定支援は、本人が亡くなられたあとのグリーフ期に真実が語られることがよくあります。はじめて出会ってからグリーフケアまで、本人にもご家族にも、ほがらかで穏やかな時間が持てますようにと願っています。   ** 榊原千秋コミュニティスペースややのいえ&とんとんひろば代表訪問看護ステーションややのいえ統括所長 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー

介護者、看護師、そして三男の嫁として 亡き義母の「意思」に触れた日々

保健師として地域で活動後、難病患者の在宅療養者の支援を経験した榊原千秋さんは、地域でさまざまな人々が集い、出会い、語らう場として「ややのいえ」(石川県小松市)を開設。訪問看護ステーション、助産院なども併設しています。今回は、夫の母を介護した経験から、身内の「意思決定支援」で強く考えさせられた事例について語っていただきました。 認知症があっても自分で居場所を決めた義母 「意思決定支援」という言い方、実は私、好きじゃないんです。ひと言で言えるような単純なものではないですし、一方向から見た真実にしかならないと思うからです。また、本人が本当の意思を表明するとは限りません。 93歳の時に、転倒による腰椎圧迫骨折で入院して寝たきりになった義母も、私たち親族には本音を言いませんでした。でも、知人を連れてお見舞いに行ったとき、会話の中でポロリと「家に帰りたい」と言ったのです。これが義母のACP(アドバンス・ケア・プランニング)に取り組んでいく、大きなきっかけとなりました。 同居していた長男夫婦は、「家では看られない」と私に施設入所の相談がありました。長男夫婦に初孫が産まれたこともあり、ひとまず介護老人保健施設(老健)に移りました。その直後に長男の妻が交通事故で入院し、面会に行けなくなりました。そこで義母は、「自分は捨てられた」と思い、ストレスからガリガリに痩せてしまったのです。 地方都市では、今も、親の介護は長男の嫁がするもの、という考えかたが根強くあります。本来なら、三男の嫁である私は、義母の介護に対して発言権もありません。しかし老健に義母を見舞いに行った際、夫が「このままにしておいていいのか」と私に言ったのです。 そこで、「ややのいえ」について親戚中を説明してまわり、私が「ややのいえ」に義母を引き取り、ケアすることが了解されました。 「今したいことは何?」と聞くのが、私の考えるACPの始まりです。 「ややのいえ」をお試しで訪れた義母の答えは、「鳴門金時(さつまいもの品種)を植えたい」でした。畑にうねを作ると、痩せ細った姿で、植えかたを指導してくれました。 そうして何回か「ややのいえ」で過ごしてもらううち、義母は自分から「ここに置いてくれやの」と言いました。認知症があっても、義母はちゃんと自分で自分の身の置き所を決めたのです。 すごいな、と思いました。これで、私も「ややのいえ」でともに暮らしながら義母をみていく覚悟が決まりました。 「迷惑をかけるから」の言葉の裏にあった思い 「ややのいえ」で暮らすようになった義母に、「どうしたい?」と聞くと、返ってくる答えは決まって、「最期の日までほがらかに楽しくおらせてくれやの」でした。老健にいたころには出なかった言葉です。 義母の望みどおり、畑仕事をし、梅干を漬け、洗濯物をたたみ、繕い物をする。隣のかき氷屋のかき氷をペロリと一人前食べたり、晩御飯を食べたのを忘れて私と半分こしてどら焼きを食べたり、義母は「ややのいえ」で自由にのびのびと過ごしていました。 義母とは1年半、「ややのいえ」で暮らしました。それが中断したのは、私が腎臓結石の手術のために入院することになったからです。やむなく、義母にはショートステイへ。しかし、その2泊目、義母は急性出血性大腸炎で緊急入院しました。 3か月たっても義母は回復せず、“いわゆるACP”として、胃瘻にするか、高カロリー輸液のポートをつくるかを聞かれました。 ショートステイ入所前日まで、お寿司をペロリと食べていた義母です。VF(嚥下造影検査)をしてもらうと、回復の見込みはあると言われました。 それなら、一時的に胃瘻を造設して栄養を確保し、嚥下のリハビリをお願いしようと考えました。 退院の時期が来たとき、胃瘻になり、痩せこけた義母に聞きました。「『ややのいえ』に戻らない? 帰ろうよ」と。すると義母は、「千秋さんに迷惑をかけるから行けない」と言うのです。 「迷惑をかける」とは、三男の嫁である私が再び義母をみることになったら、兄弟間で“もめる”、という意味で言っているのだと、私にはわかりました。認知症があっても、義母はちゃんと状況を理解していたし、家族のことを考えていたのです。 結局、義母は療養型病院に転院し、そこで亡くなりました。 「意思決定」のとらえかたは 立場によってさまざま 義母のお通夜の席で、米寿祝いの時作った義母のライフヒストリーを聞き書きでつづった冊子とアルバムとともに思い出が語られました。皆、それを見ながら話しているのに、義母が「ややのいえ」で過ごした日々のことは、まったく話題に上りませんでした。長男夫婦は私が義母の介護をすることをよしとせず、施設への入所を望んでいたこともあったからだと思われます。 一方、義母方の親族が言った「母は幸せやったよ」の一言には救われました。それぞれの立場や考えによって、本人の「意思決定」を取り巻く事実のとらえかたはまるで違うのです。 専門職として数多くの看取りにかかわってきた私ですら、「ややのいえ」での義母との1年を親族に語れない状況や、その時の感情は、今も大きなトラウマとなっています。 このように「意思決定支援」にかかわる当事者は多岐にわたり、その登場人物ごとに真実があります。支援者は、まずそのことを十分に認識しておく必要があると思います。 ** 榊原千秋 コミュニティスペースややのいえ&とんとんひろば代表 訪問看護ステーションややのいえ統括所長 編集協力:株式会社メディカ出版

特集

第3回 計画的な人材採用と育成/[その3]「人材育成」のカギはコミュニケーション力アップ!

連載:働きやすい訪問看護ステーションにするための労務管理ABC 連載第3回目では[その1]~[その4]にわたり訪問看護ステーションにおける人材採用と育成について解説していきます。今回のテーマは“人材育成”です。今回はOJTやOFF-JTといった研修制度とともに、部下の育成に特化した対話形式のマネジメント手法である1on1ミーティングについてご紹介します。 ●ここがポイント!・新任訪問看護師の育成方法にはOJTとOFF-JTがある。・現場での指導だけでなく、その後もフォローと振り返りを促し次の成長につなげるしくみづくりが大切。・1on1ミーティングは、対話を通じて部下自らが問題解決の糸口を見つけ行動できるようにサポートする手法。 OJTとOFF-JT 新任訪問看護師の育成方法には、OFF-JT(Off the Job Training)による事業所外での基礎的な知識・技能の習得とともに、実際の仕事を通じて指導し知識・技術などを身に付けてもらい、担当ケースの難易度のレベルを徐々にあげるOJT(On the Job Training)があります。 さらに、OJTやOFF-JTで学んだ知識や技能を実践し、その結果について気づきや課題、改善点などを振り返るプロセスも育成の過程ではとても重要です。指導後のフォローも忘れずに、日常的に声かけし、振り返りを促し、次の成長につなげるしくみづくりが大切です。 例えば、OJTのしくみづくりに活用できるものとして、東京都福祉保健局のサイトで公表されている「訪問看護OJTマニュアル」と「評価シート」があります。▶東京都福祉保健局 訪問看護OJTマニュアル 「評価シート」をもとに訪問前に目標の意識づけを行い、訪問時に態度・行為全般を管理者がチェックし、訪問後に訪問内容全体の振り返りと次の目標設定を行います。お互いがOJTの状況を共有し、目標設定や振り返りに用いるコミュニケーションツールとして活用できます。 またこうした日々のOJTとは別に、新任訪問看護師以外の職員の人材育成を進めるうえで週1回あるいは月1回などのペースで「1on1ミーティング」と呼ばれる時間をもつことも効果があります。 1on1ミーティングとは 1on1ミーティング(以下、1on1とします)とは、部下と上司が1対1で行う対話のことをいいます。 上司が主体となって実施する業務管理や評価のための面談とは異なり、1on1の主体は部下です。部下のほうから仕事の悩みや問題などを上司に伝え、上司は一方的にアドバイスをするのではなく、問題解決に向けてどうしたらよいか部下と対等に意見を交わします。そして、対話を通じて部下自らが問題解決の糸口を見つけ行動できるようにサポートします。1on1は、職員1人ひとりが自律的な行動をとれるように、人材育成やパフォーマンスの向上を目的に、さまざまな企業で取り入れられています。 組織活動ではコミュニケーションをとることがとても重要です。これが不十分だと、報告や連絡、相談が滞り、お互いに何をしているのかわからなくなってしまいます。1on1では、仕事だけでなく、プライベートな話題も話します。部下とのコミュニケーション不足を解消するしくみとして、1on1を活用するのも1つの方法です。 1on1の進め方 事業所で1on1を導入するには、どのようにすればよいでしょうか。ここでは、1on1の進め方を4つのステップに沿って説明していきます。 Step1 信頼関係をつくる まずは日ごろからコミュニケーションを重ね、信頼関係をつくっておくことが大切です。信頼関係のないところで1on1を行っても、職員から本音を引き出すことは難しいでしょう。 普段の接し方や受け答えから、職員は上司がどのような人物か見ています。職員との関係性を築くためにどうしたらよいか考え、行動することが必要です。「私の話にしっかり耳を傾け、認めてくれる。信頼できる上司だ」と思ってもらえるように心がけます。 Step2 1on1を設定する  1on1を定期的なイベントとしてスケジュールに組み込みます。週に1回、最低でも月に1回の頻度で、1回あたり15~30分程度をめやすに実施します。直接会えない場合は、電話などで柔軟に対応し、短時間でもよいのでコミュニケーションの機会を設けるようにします。1on1は維持・継続することが大切です。 Step3 テーマを決める  テーマを決めずに1on1を始めると、時間がかかってしまいがちです。あらかじめ話すテーマを決めておき、質問事項や伝達事項をお互いに考えておくとよいでしょう。Step2で決めた実施時間を守るためにも効率的に進める工夫が必要です。 Step4 実施と記録  1on1では、部下の意見や考えをしっかり受け止め、認めることが大切です。また、「こういう問題を抱えているのではないか」「前回こう言っていたので今日はこれをアドバイスしよう」といった先読みや深読みはせず、先入観をもたずに、その場で部下が話すことに耳を傾けます。部下が安心して話せるような雰囲気をつくります。 そして、1on1の内容は共有できるように議事録を残すとよいでしょう。記録があれば認識の違いを避けることでき、振り返りにも活用できます。 質の高い1on1で人材育成を 1on1を定期的に行っていると、職員の成長や変化にすぐに気づくことができます。機動的に部下の行動計画をサポートすることができ、その結果として部下自身が自律的にスピーディかつ柔軟に目標達成に向けた行動をとれるようになります。 1on1は最初からスムーズに進むとは限りませんし、その効果はすぐにあらわれないかもしれません。しかし、1on1成功の秘訣は、継続・維持することです。回数を重ねるうちに信頼関係が深まるとともに、部下の実践能力が向上していきます。上司自身が成長する機会にもなるため、組織にとってプラスに働くことが期待できます。ぜひ質の高い1on1を取り入れ、職員の育成に取り組んでください。 ** 齋藤 暁株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント 医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。 ▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/ 編集協力:株式会社照林社

特集

訪問看護あるある座談会 vol.6 移動中編

今回は3人の訪問看護師さんに、訪問看護の「移動中あるある」についてぶっちゃけトークをしてもらいました。 暑い日も寒い日も雨の日も、自転車移動! どう過ごす?訪問中の微妙な空き時間 みほ:このメンバーは3人とも自転車移動なんですよね。最近入った新人さんから「訪問移動中の5〜10分の微妙な空き時間、どうしてるんですか?」って聞かれて。 あい:私もそれ気になります。みんなどうしてるのかなって。 みほ:車移動だと車の中で待機できるじゃないですか。自転車だと、暑さをしのぐのにコンビニのイートインが便利なんですけど… ゆり:コロナでイートイン閉鎖してるところ、多いよね…  みほ:そうなんですよ。ここのコンビニにイートインコーナーがあるよって案内したら、新型コロナのせいでイートイン休止中でした… ゆり:外にいるのも暑いよね。イートインない時は、夏場だとアイス買ってコンビニの外の日陰見つけて食べたりしますね。最近はフラッペも売ってるから、熱中症にならないように顔とか首とか冷やして、溶かしながら飲んでいます。熱中症対策だと、干し梅も持ち歩いてますね。 あい:熱中症対策、大事ですよね。 ゆり:前の座談会(※夏対策編)でも話したけど、熱中症にかかるとつらいんですよね。暑くない時期だと、公園のベンチに座ってたり、自転車のサドルにタブレット置いて記録したりしてるかな。 あい:私もジュースとか買って、木陰や公園で休憩しながら記録してます。コンビニに寄って何か食べるほどの移動時間はあまりないので、ステーションの訪問の組み方とかにもよるのかもしれないですね。 ゆり:ステーションによっては移動時間を短く設定して、タイムロスないようにしているところもあるもんね。また食べ物の話になっちゃうけど、冬だとコーンスープとか肉まんとかで暖をとってるよ。 みほ:温まりますよね。隙間時間あると何かつまんじゃうので、病院から転職してきた看護師さんが、自転車移動だから痩せそうと思っていたけど結局合間で食べちゃって痩せない、って言ってました。 あい:私も痩なかったですね。夏の暑さで水分が出ていく感じはありますが。 ゆり:水飲むとトイレが心配になっちゃわない? あい:トイレのことも考えますね。次の訪問までの移動で「どこにトイレあったっけ」とか考えますね。 ゆり:そうそう。女性専用トイレがあるコンビニとか把握するようにしてます。 みほ:わかります。新人さんと同行しながら「ここのコンビニはトイレがきれいなのでおすすめ」とか教えますね。 あい:すごく詳しくなりますよね。笑 ササっと済ませる外ランチ みほ:外でランチすることとかありますか? ゆり:移動で事務所戻れない時は外で食べますね。食べるの早いほうなので、途中ラーメン屋さん入って、オーダーして3分くらいでラーメン出てきて、5分で食べて、出る、みたいな。すぐ出てくるところなら15分くらいで食べますね。 あい:すごい、私食べるの遅いのでできない…! ゆり:男性スタッフとか、牛丼屋でサッと食べる人とか結構いる気がする。 あい:たしかに、うちのところもそういう男性看護師さんいます。 みほ:ファーストフード店はすぐ出てくるので、よく寄りますね。時間もないしササッと食べちゃうんですが、早食いは体に良くないとは思ってます。 あい:みなさん早く食べて移動しているの、すごいですね。 みほ:しっかり休めればいいんですけど、移動時間がギリギリとか、緊急訪問が入ってバタついたりとかもあって。ゆっくり食べられる日はありがたいですね。 ゆり:忙しいときこそ、食べないと倒れちゃうからね。 移動中の急な雨あるある みほ:突然の雨が多くて、かっぱも持ち歩いてるから、荷物多くなるんですよね。 ゆり:荷物が気になるんだったら、かっぱ以外に小さいポンチョをリュックに忍ばせるとか、雨よけのビニールの靴カバーを持ち歩くとかはおすすめ。ふくらはぎくらいまでの長さで、コンパクトにまとめられるんですよ。 あい:なるほど。いいですね。降りそうで降らない時に、何を履いていくか迷うんです。雨予報だけどまだ降ってないときに「なんとか大丈夫だろう」ってスニーカーで訪問行ったら、途中から降ってきて「ああ、長靴にしとけばよかった…」ってなります。 ゆり:しかも雨の日はマンホールとか点字ブロックで滑りますよね。 あい:みんな通る道ですよね。かっぱ着てレインバイザーするから、視界も悪くなって怖くないですか? みほ:わかります。怖いですよね。 ゆり:傘差し運転してる自転車とすれ違うのも怖い…。 あい:急な雨の日とか多いですよね。 ゆり:電動自転車、重いから避けるのが大変なんですよ。 あい:電動自転車、訪問看護で初めて乗ったんですけど、「えっ、重い!」ってびっくりしました。車道と歩道の溝の段差にハマって転びそうになったこともあって。訪問中に自転車で転ぶのも、みなさん1回はやってる気がします。 みほ:安全運転が一番ですね。

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