初めての訪問看護に関する記事

訪問看護師が知っておきたい医療費助成制度 基礎知識&概要
訪問看護師が知っておきたい医療費助成制度 基礎知識&概要
特集
2025年3月4日
2025年3月4日

訪問看護師が知っておきたい医療費助成制度 基礎知識&概要

医療費助成制度は、患者さんの自宅療養を支える上で欠かせないサポートですが、複雑で分かりにくい側面があります。そのため、訪問看護師として助成制度についてしっかりと理解しておくことが重要です。今回は、訪問看護にかかわる代表的な助成制度を取り上げ、その概要を分かりやすく解説します。 ※本記事は、2025年1月時点の情報をもとに構成しています。 医療費助成制度の基礎知識 患者さんから質問されて、特に答えにくいのが医療費に関することではないでしょうか。健康保険証を持っている場合、医療費の自己負担割合は、原則として高齢者は1割、未就学児は2割、それ以外の人は3割と決められており、年齢によって割合が異なります。また、高齢者の医療費は1ヵ月の上限が18,000円だったり、自治体によっては小児の医療費がかからなかったりと、条件によってまちまちで複雑です。 改めて、医療費助成制度に関する考え方を図1で簡単に示します。 図1 医療費と自己負担分、助成制度 (1)は、治療を受けたときの医療費の総額を示しています。(2)は、医療費の保険者負担分と自己負担分を表しています。(3)は自己負担分に対して医療費が助成される場合を示しています。(4)は、自治体からさらに助成を受けられる場合のイメージです。 訪問看護においては、患者さんの金銭的な負担を減らすさまざまな制度があります。病院では相談室の社会福祉士や事務が対応しますが、訪問看護ステーションでは訪問看護を担当する看護師が直接質問を受けることも多いでしょう。 ここからは、訪問看護を行う上で知っておいたほうがよい医療費に関する代表的な助成制度の概要を説明したいと思います。 指定難病に関する助成制度 指定難病患者さんへの医療費助成は、患者さんの自己負担が所得に応じて1,000円から30,000円まで変化します。病院や診療所、薬局、訪問看護ステーションなどの自己負担額は、患者さんごとに決められた上限額までです。 なお、患者さんによって月初に「自己負担上限額管理票」の記入が必要となる場合があります。その際は、毎月月末に患者さんの自己負担額が確定してから記入します。 高額療養費制度 医療機関を受診し、自己負担額が高額になったときに、患者さんの負担を少なくしてくれるのが高額療養費制度です。医療機関や薬局に支払った額が、上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給されます。一時的な自己負担はありますが、申請すれば、後から払い戻されます。 支払いを上限額までに抑えたい場合は、「限度額適用認定証」またはマイナンバーカードによる健康保険証(マイナ保険証)※1を利用します。限度額適用認定証は、訪問看護がスタートした患者さんから、健康保険証と別に確認してほしいと言われることがあります。 ※1 マイナンバーカードによる健康保険証(マイナ保険証)は、限度額適用認定証を兼ねています。 高額療養費制度は患者さんが恩恵を受けることが多く、大抵の場合、70歳以上であれば18,000円、70歳未満であれば85,000円以内に収まります※2。また、「世帯合算」や「多数回該当」のしくみにより、さらに負担額を減らすことも可能です。 ※2 上限額は、年齢や所得によって異なります。適用区分と上限額に関する詳細は厚生労働省のサイトをご参照ください。▼厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html さらに、介護サービスを利用していれば「高額介護合算療養費制度」が活用できます。この制度は、医療保険と介護保険における1年間の自己負担の合算額が高額な場合に、自己負担を軽減する制度です。 自立支援医療制度(精神通院医療、更生医療、育成医療) 自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療を提供するにあたり、患者さんの医療費の自己負担を軽減する制度です。 小児に関する支援医療制度が更生医療と育成医療、精神科系の疾患に関する支援医療制度が精神通院医療として区分されています。 更生医療は、身体障害者福祉法第4条に規定された身体障害者が対象となります。また、育成医療は、児童福祉法第4条第2項に規定される障害児(幼児:満1歳から、小学校就学の始期に達するまでの者)が対象となります。精神通院医療は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定された統合失調症、精神作用物質による急性中毒またはその依存症、知的障害、その他の精神疾患を有する者が対象となります。 自己負担額は0円から20,000円までですが、一定所得以上に該当する場合や「重度かつ継続」(継続的に相当額の医療費負担が発生する方1))に該当しない場合は対象外となります。 その他の医療支援制度 生活保護の医療扶助と介護扶助 その他の医療費に関する支援制度として生活保護における医療扶助と介護扶助があります。医療・介護サービスは公費で負担されるため自己負担はありません。 特定疾病療養費 特定疾病療養費は、慢性腎不全や血友病、HIV感染者の高度な治療を長期間にわたって継続しなければならない療養について、自己負担限度額を減額する高額療養費の特例の制度です。 基本的には、毎月10,000円の負担となりますが、透析については70歳未満の標準報酬月額53万円以上の方は自己負担限度額が20,000円になります。 * * * 医療費には、各地方が独自に実施する助成制度もあります。都道府県や市区町村ごとに異なる助成が行われています。 代表的なものとして子どもの医療費にかかる助成が挙げられます。「中学卒業まで」や「高校卒業まで」と住んでいる自治体によって対象となる年齢の違いがあります。さらに、乳幼児医療やひとり親家庭医療、重度心身障害者医療に対する支援も行われています。支援内容は、地域による差が大きく、その違いは各自治体を比較してみると分かると思います。 医療費助成制度を正しく理解しよう 訪問看護ステーションでの毎月のレセプト作成や、患者さん・利用者さんから自己負担額を受け取るにあたって疑問に思うことも多くあると思います。それは医療保険制度や医療費助成制度が複雑で理解しづらいためです。 今回は訪問看護に関連する助成制度の概要を解説しました。今後は、各助成制度の具体的な利用方法や申請のポイントをさらに詳しく紹介していきます。患者さんや家族が適切な支援を受けられるよう、必要な知識をしっかりと身につけましょう。知識を深めることで、あなたの仕事にもきっと役立つはずです。 【今後のラインアップ】第2回 指定難病に関する助成制度について第3回 高額療養費制度について第4回 小児に関する医療支援制度について第5回 精神科領域に関する医療支援制度について第6回 その他の医療支援制度について(生活保護、特定疾病療養など) 執筆:木村 憲洋高崎健康福祉大学健康福祉学部医療情報学科 教授 武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部機械工学科卒業、国立医療・病院管理研究所研究科(現・国立保健医療科学院)修了。民間病院を経て、現職。著書に『<イラスト図解>病院のしくみ』(日本実業出版社)などがある 編集:株式会社照林社 【引用文献】1)厚生労働省:障害者福祉.https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushienhou04/ 2025/1/31閲覧

励みになったエピソード【つたえたい訪問看護の話】
励みになったエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年2月25日
2025年2月25日

励みになったエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護師として働いていると大変な出来事もたくさんありますが、利用者さんが自身の訪問を楽しみにし、感謝してもらえると心の励みになることでしょう。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードの中から、支援を通じて利用者さんやご家族から元気をもらったエピソードを5つご紹介します。 「本人と家族の意思を尊重できたことで…」 利用者さんとのお別れで悲しい中でも、訪問看護を楽しみにしてくれていた利用者さんの想いやご家族からの感謝が励みになるエピソードです。 利用者様は、直腸がん末期の方でした。訪問看護導入時はADLも自立されて、ご家族と自宅周囲の散歩をおこなっておりました。訪問時は、毎回笑顔で「よく来たね」と看護師を暖かく迎えてくださいました。がん末期であり疼痛増強にて、ADLは徐々に低下していきました。また肺転移もみられており、呼吸困難感も出現いたしました。予後が週単位となり、症状が増強しているため本人に入院をすすめると「まだ家にいたい」とおっしゃっており、家族も「本人の意見を尊重してまだ家でみます」との意向により在宅療養が継続になりました。意識レベルの低下がみられ、主治医の医療機関へ救急搬送になり、同日お亡くなりになりました。グリーフケアで後日訪問した際にご家族より「本人の希望通り、ぎりぎりまで家にいられてよかったです。毎回お父さんは看護師さんが来るのを楽しみで看護師さんが来ると元気になるんですよ」とおっしゃっていただきました。 2023年2月投稿 「訪問が楽しみ…それだけで頑張れる」 利用者さんにとって、訪問看護の時間が希望に近づくための大切で待ち遠しい時間だと受け止めてもらえた励みになるエピソードです。 在宅HOTを導入されている利用者様でした。ご自宅の敷地内にぶどう棚や畑、ビニールハウスなどでいろんな野菜や果物を育てておられご本人様の希望も今までどおり、作物の手入れができるようになりたいというものでした。訪問内容としては、呼吸訓練を主に呼吸法の訓練も取り入れておりました。天候や体調が良い日にはご自宅敷地内の畑やぶどう棚を見に散歩をしておりました。敷地内の散歩の際には本人も気持ちが昂るのか足早となり、呼吸困難がでてしまうこともありました。ご本人の嬉しい気持ちも察しておりますが、時には少し厳しく指導させていただくこともありました。その後、呼吸状態が安定せず逝去となりました。この後、長女様よりご連絡をいただき、訪問のある日は早くに着替えをし、来るのを楽しみにされていたとうかがい嬉しく思いました。 2023年2月投稿 「こころに寄り添う家族の絆」 故人とのお別れやお見送りは、看護師として経験を重ねても辛く、心苦しい場面です。しかし、ご家族が心残りなく見送れるよう支援できたときには、嬉しさを感じることもあります。そんな訪問看護のリアルが伝わるエピソードです。 お看取りで関わらせていただいたIさんとご家族のお話です。Iさんは、自宅退院後1週間ほどでご自宅にて亡くなられました。奥様は、亡くなる直前の数時間「苦しい」「痛い」と話すIさんの体をさすったり、手を握ったりしていたそうです。最後までIさんの心に寄り添うご家族の姿に、強さと絆を感じました。エンゼルケアのご依頼があり、奥様やお嫁さんと一緒に体拭きをさせていただきました。その際、ご家族の皆さまから、Iさんはずっと「家で死にたい」とおっしゃっていたという話を聞きました。ご本人の想いに寄り添ったからこそ、できたことなのだと思います。後日談ですが、偶然会ったお嫁さんから「体拭きが一緒にできてよかった。実の両親の時はできなかったから。」とお礼の言葉をいただき、とても嬉しかったです。弊社の理念は「こころに寄り添い、地元で生きることを支援します」ご利用者さんはもちろん、家族の想いにも寄り添う訪問看護をしていきます。 2023年2月投稿 「その言葉で頑張れる」 垣間見える本心にこそ力をもらえる、そんなエピソードです。 90代 認知症の利用者様。排便コントロールで訪問させていただいていますが、ケア中はいつも全力で抵抗。ご家族も「なんでこんなに力があるの」と手を焼くほど。その日も抵抗されながら、気持ち悪いよね、もうすぐ終わりますよ、と声を掛けながらケア実施。たっぷりお通じが出た後の達成感をご家族と称えあっていると、ご家族ではない小さな声が「ありがとう」と。びっくりして思わずご家族と顔を見合わせてしまいましたが、ふとした言葉が日々の励みになります。今日も変わらず抵抗されながらの排便コントロール。私も全力で応えます。 2023年2月投稿 「笑顔いっぱい」 利用者さんの生き生きとした様子や素敵な場の雰囲気が伝わってくるエピソードです。 90代男性、心不全で在宅生活。元々社交的でボランティア活動などを積極的にしたりと、しっかりした方でした。心不全で入退院を繰り返すようになってから外出はデイサービス程度でした。ある日、趣味のマジックショーを開催できないかと家族より相談を受けました。体調のことを考えて自宅で家族と看護師を集めて会を開き、その後サプライズでお誕生日会を開きました。普段見ることのないイキイキした素敵な表情をされ、「ありがとう。みんなの笑顔とみんなが喜んでくれたことがとても嬉しい」と言ってもらいました。訪問看護師として利用者さんの生活を支えるだけでなく、本当の意味で利用者さんに支えられ支えあっていると感じました。さらにあたたかい幸せな気持ちになれ、感謝でいっぱいでした。 2023年1月投稿 利用者さんと励まし合う関係 利用者さんの人生や生活とともに歩む訪問看護では、ときに家族の一員かのようにあたたかい言葉をかけられ、「また頑張ろう」と思える活力をもらえることも。そうした人とのつながりがたくさんできるのも訪問看護の魅力のひとつかもしれませんね。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子 

ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
特集
2025年1月28日
2025年1月28日

利用者さんのお宅事情はいろいろ ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

ケアするためのスペースが… 利用者さん宅のスペースや家具配置によっては、どうやってケアするか悩むこともあるにゃ 訪問看護は利用者さんのご自宅でケアするため、スペースや家具の配置等によっては苦慮するケースもありますよね。訪問看護師さんからは、「部屋の都合上、介護ベッドを壁際につけて配置せざる負えないことが多いです。片側からしかアプローチできないため、浣腸や摘便などの排便ケアを行う際に、悩むことがあります」といった声も聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

心温まるエピソード【つたえたい訪問看護の話】
心温まるエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年1月21日
2025年1月21日

心温まるエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護で利用者さんを支援していると、利用者さんやご家族の心情や感情を垣間見て心温まる瞬間があります。「みんなの訪問看護アワード2023」への投稿から、胸がほっこりするエピソードを5つご紹介したいと思います。 「みんなと“同じ“になるために。」 目標達成のため努力する利用者さんにエールを送りたくなるエピソードです。 10歳女の子の輝かしい第一歩のお話です。白血病に対する骨髄移植、重症GVHDに悩む女の子です。一般の小学校に通い、周囲のお友達と「同じように」を強く望んでいました。その一つが自転車に乗ることです。お友達と同じ場所や同じ速度感で遊べないことに、もどかしさを感じていました。練習を始めるも課題は多く、特に皮膚トラブルや免疫力の影響で一度でも転んでしまえば入院は免れません。転ばないよう注意しますが、手の巧緻動作や握力が十分でなく、ブレーキが上手くかかりませんでした。本人の強い想いと周囲のサポートにより、最後にはすべての課題を克服し自転車に乗ることができました。練習はとても大変で、「つらい…」と泣いてしまうこともありましたが、最後は笑顔で締めくくることができました。女の子はこの先も、周囲と「同じように」という大きな壁に次々とぶつかると思いますが、今回の成功体験を思い出し、前向きに生きて行くことを願います。 2023年1月投稿 「私を呼ぶ、あなたの声がきけた」 家族の強い愛情が通じ合う瞬間を感じ取れるエピソードです。 5月のうりずん(※)の時期、しとしと雨が降る中でMさんの訪問看護は始まった。Mさんは交通事故に遭われ、持病も重なり長く入院生活を過ごされた後で、ご家族の強い希望で自宅退院された。訪問が始まった時は、脈も早く、口呼吸をし、意識も朦朧としており、いのちの灯火は消えかけていた。Mさんとのコミュニケーションは難しく、声かけに頷いているか明らかでないことも多かった。ある日、それまでは少し遠巻きで見ていた父のことが大好きな長女さんに声かけをし、一緒にMさんの洗髪、足浴、清拭を行った。痩せ細り骨ばった父のからだに愛おしそうに触れ、涙しながら父に話しかけていた。そのとき、意識も朦朧としていた父がはっきりと娘の名前を呼んだ。その呼び声は娘への愛情に満ちていた。この時、この場面でしか出なかった声かもしれない。「こんなに安心して手厚い看護を受けられるなら、早く帰ってくればよかった。お父さん、ごめんね」。長女さんからは、涙がとめどなく流れていたが、どこか父に触れ、大切なことをしてあげられたことへの清々しい笑顔もあった。時期が遅かったかもしれない。しかし、その時間の中でできる最善を尽くす、それだけだ。 2023年1月投稿 ※編集部注:うりずん: 沖縄の古語で、春分から梅雨入りの頃までを指す 「やっぱりお風呂が1番」 乗り気ではなかった利用者さんの様子が変わっていく姿に、見守る私たちも思わず笑顔になってしまうエピソードです。 80代の男性の方でケアハウスに入所している方です。多発性筋痛症、認知症を患っている方でバイタル値は安定し室内は独歩、廊下や少し距離のある場所への移動はシルバーで移動していました。お風呂は週に一回は施設の大浴場で貸切で入っています。倦怠感や全身の関節痛は自制内で経過していますが面倒なことはあまり好きではない性格もあり入浴に対して少し億劫になることも時折見られています。私たち訪問看護師もそのお風呂介助に携わり、一緒に大浴場まで付き添い、背中や手の届かない部分の洗浄をお手伝いします。訪問時は入浴に対して乗り気じゃなく、今日はやめておこうと言われていましたが清潔への大切さや爽快感の話をすると渋々納得され一緒に大浴場へ移動していきます。そしていざ浴槽へ入るとそれまでに固かった表情がなくなり、すごい爽快感が溢れる表情へと変わりました。浴槽に入りながら歌も歌い、心地よい時間を過ごしており私も見守っていました。居室へ戻る時にはやっぱりお風呂が1番と言われ優しく癒された表情にホッコリしたエピソードでした。 2023年1月投稿 「夜空の花火」 利用者さんのご家族かのように思い出を共有する関係に心温まるエピソードです。 大きな家で1人暮らしのAさん。たくさんの薬を自己管理するのが難しくなったり1人でお風呂に入るのが危ない状況となり訪問看護が始まりました。Aさんは「娘ができたみたいで嬉しいよ。」と訪問看護の日をいつも楽しみにしてくれていましたが、「1人はさみしいよ。夕方になると本当にさみしい。」といつも言っていました。ある夏の日ステーションの携帯電話にAさんから電話があり、電話に出た看護師に「○○さん(担当の看護師)いる?」と。携帯に転送になっており、別の看護師が携帯当番なので「ここにはいないですよ。」と伝えると「なら○○さんに伝えて!空を見てごらん。花火がキレイだよ」と言い電話を切ったそうです。携帯当番の看護師が私に電話をくれ、電話の内容を伝えてくれました。Aさんの家から少し離れている私の家からは花火は見えなかったのですが、いつも1人でさみしい思いをしているAさん。「今日はキレイな夜空を見ているんだなぁ。」と花火は見えなくても心がほっこり温かくなりました。今は亡きAさん。夏の夜空に花火を見ると思い出します。 2023年2月投稿 「ちょうだいできた!」 日々の子どもの成長をご家族とともに喜べる微笑ましいエピソードですね。 顔を覗き込んで「こんにちは」と声をかけると、K君は小さなふたつの人差し指をペコリと曲げた。「こんにちは」のサインです。K君がコロナに感染するのが怖くて、外出は病院との往復のみ。補聴器と気管カニューレ、経管栄養の管理も家族だけで頑張っていました。2歳半を過ぎて「社会の中で普通に生きていってほしい」というご両親の思いから、私たちとの関わりが始まりました。K君は難聴で自閉傾向、偏食があり、食事テーブルにつけず、自分から何かしてほしいと伝えることもできませんでした。食事や人との関りを持てるように、K君のペースに合わせ、一緒にお気に入りの電車で遊ぶ、サインや絵カードで対話するなどし、日々、K君の心と体の状態をご家族と共有していきました。訪問看護を開始して数ヵ月、「ちょうだいできた!」とお母さんから連絡がきました。お母さんに空のマグを持ってきたそうです。来週には、春から幼稚園に通うための担当者会議をします。 2023年2月投稿 訪問看護師もまるで家族の一員 訪問看護の利用者さんはお子さんからご高齢の方まで幅広い年代の方がいらっしゃいますが、時には親のように、時には子どものように利用者さんと絆が生まれることもあります。日々の支援の中で、微笑ましい出来事や楽しい時間を共有することができるのも、訪問看護師としてのやりがいのひとつなのかもしれません。こうした心温まるエピソードを見ていると、「明日からも頑張ろう!」と力を分けてもらえる気がしますね。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子 

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2025年1月14日
2025年1月14日

オンコール当番の日って…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

オンコール当番の日、なかなか寝付けなくなることも… 緊急電話の対応をする「オンコール当番」の日。「寝られるときには寝なきゃ」と思っても、なかなか寝られなくなることがあるにゃ オンコール当番の日は、何かと落ち着かないものですよね。実際に対応する頻度が低くても、「いつでも行けるようにしなきゃ」と思うと気が張ってしまうもの。訪問看護師さんからは、「実際に緊急出動するケースよりも、傾聴やアドバイスで終わることのほうが多いですが、やっぱり電話が鳴るとドキっとします」「電話のやりとりのみで終わっても、なかなか寝付けなくなることがあります」といった声も聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特集 会員限定
2024年12月24日
2024年12月24日

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A

2024年10月25日(金)に開催したNsPaceオンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」では、重症な足病変の予防やケアについて、倉敷市立市民病院 形成外科医長 小山晃子医師が解説。今回は、セミナー時に寄せられたご質問について、特別に小山先生に回答いただきました。 なお、本記事はQ&Aの抜粋版です。完全版はお役立ちツールにてダウンロード可能ですので、そちらもぜひご利用ください。 【セミナー講師/質問回答】 小山 晃子 氏倉敷市立市民病院 形成外科医長平成16年 高知大学卒 倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修終了平成18年 川崎医科大学付属病院 形成外科・美容外科にて 褥瘡、創傷治癒を学ぶ平成24年より現職入院・外来・在宅で医療を行いながら、医療者、介護者、市民を対象としたセミナーを行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動中です。 ■お役立ちツールも公開! お役立ちツール『「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧』では、より多数のご質問への回答を読むことができます。ぜひご活用ください。>>「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 足の洗浄について <Q1>・セミナーでは、「血流がない場合は足を洗ってはいけない」とおっしゃっていましたが、なぜでしょうか?感染が広がるためでしょうか。湿潤や摩擦、温度が影響するためでしょうか。 ・血行不良の状態で洗うと、どういう機序で悪化するのでしょうか。 「血流がない足=すべて洗ってはいけない」というメッセージを受け取られた方が多いようで、私の説明不足を反省しています。漫然と洗浄してはいけないのは、傷のある血流のない足です。 ミイラ化を目指している場合には、極力組織の水分を減らしたいため、当然洗浄は避けます。血流の乏しい足の傷に壊死した皮膚皮下組織、腱などの血流のない組織が露出しているケースを想定してみましょう。血流がない(免疫細胞が到達しない)組織は、血流がある(免疫細胞が到達できる)生きた組織・人体側と接しています。その二つの境界で、人体側はゆっくりと傷を治そうとしています。この状態で血流がない組織に水を含ませると、その組織は細菌にとってのよい培地(湿気と温度がある環境)になってしまいます。生きた傷の表面に、細菌培地で「湿布」することになるので、水分を避けることが望ましいと考えています。 壊死組織がなく、傷のある血流の乏しい足については、漫然と洗わないでいただきたいです。洗ってそのままにするのではなく、翌日以降 痛みの訴え浸出液傷の周囲の腫れ壊死組織 等の変化がないかを見て、洗浄したことの功罪を慎重に判断してください。 <Q2>・患部を避けた清拭や入浴、シャワー浴は可能ですか? ・血流がなく壊疽して感染している場合の洗わないケア方法を教えていただきたいです。 患部を避けた入浴、シャワー、清拭は可能です。 血流がなく感染しているときは、ケアではなく、キュア(治療)が必要です。抗菌薬全身投与、局所処置(浸出液の除去、消毒)、疼痛管理などの治療を行います。 <Q3>月に1、2回の訪問をしている独居の方で、足病変があった場合、医師に処置の指示を依頼し、洗浄をするために訪問頻度を増やしたほうがいいでしょうか。毎日が難しい場合は、最低限どれくらいの頻度で洗浄が必要ですか? 自分で足が洗えない方だと理解をしました。靴下を履き替えるだけでもいいのではないかと思っています。 足病変があった場合、血の巡りがあるのかないのか、傷の深さがどうか、感染を起こしているかどうか、といったような専門の判断を一度受けて、みんなで「治療の組み立て」をしてからどれぐらいの頻度で看護師さんに助けていただくのが良いか、考えたいです。 「最低限」ということであれば、靴下を毎日履き替えるっていうことを、頑張ってみたらいかがでしょうか。清潔が何よりです。 ミイラ化について <Q4>血流障害の方は洗浄をしてはいけないとのことですが、ターミナル期で治療をしない方は、何もせずミイラ化を見守るだけでよいのでしょうか?軟膏塗布などの処置だけなのか、看護師がやるべき処置があったら教えていただきたいです。 ミイラ化を目指す場合、放置はすすめません。ターミナル期でも、目と手をかけることを続けていただきたいです。まずは、十分な除痛を行うことが最優先です。ミイラ化をしていく過程で生体と壊死部分の境目から浸出液が出る場合は、その境目をポビドンヨード液で清拭します。浸出液が多いときは、オムツパッド等で患部をふんわり巻いて、寝具が汚染したり、においで利用者さんやご家族が不快な思いをしたりしないよう配慮します。におい対策にはストーマ用のスプレーも有効です。 処置は、基本的に「シンプル」にすることも重要です。ターミナル期の利用者さんの大切な時間を浪費しないよう配慮してください。軟膏を使用した場合、次回の処置で落とす必要があります。落とすのに苦労するような種類の軟膏(ワセリン基剤のものは堆積します)は避けるようにしましょう。 足に傷・潰瘍がある場合について <Q5>訪問で、最初に創を見つけたとき、何をしたらよいのでしょうか?もちろん受診をすすめますが、すぐに行けない場合はそれまでどう手当てしたらよいのでしょうか?微温湯での洗浄もいけないのでしょうか。 初回の訪問では、まず微温湯で洗浄して足をよく観察していただくのがよいと思っています。よく見た結果、傷を見つけたら、以下の対応でよいと思います。 血流のない足は1日単位で悪化する可能性があるので直ちに受診をすすめる(少なくとも写真を病院に届けて、相談)血流に問題のない足は通常の創処置をし、1週間ごとの評価をする 保清・軟膏について <Q6>黒色壊死の方は洗ってはだめでしょうか?精製白糖・ポビドンヨードを使う場合が多いですが、微温湯洗浄をして処置をしていました。 血流があり、黒色壊死部をどんどん浸軟させて除去(物理的デブリードマン)したいときには、しっかり洗うこともあります。洗浄と併せて精製白糖・ポビドンヨードを使用し、浸出液の吸収と、抗菌を図ります。いずれにしても、行った処置の結果、傷が治癒傾向なのか悪化傾向なのかをしっかりと「見る」こと、悪化傾向の場合に主治医に伝えることが肝要です。 <Q7>・血流の悪い足を洗わない場合、毎日処置する際は軟膏の除去などはどうしたらよいのでしょうか?当院では基本的にほとんどの傷をしっかり洗浄するように指示があり、血流が悪い足の場合で血行再建前でもしっかり洗浄していました。 ・血流が悪い方の下肢の創処置を行う際に 医師からは洗浄し軟膏処置(ヨウ素軟膏)の指示が出ます。洗浄できない血流の悪い足の場合、軟膏を落とすためにはどのような方法が適切でしょうか? 病院で、「きれいな水がある」「しっかりと水分を拭き取ることができる」「十分な量の滅菌ガーゼがある」「毎日観察ができる」「すぐに医師に相談できる」環境があれば、創が悪化していかない限り、洗浄可能だと思います。一方、在宅においては衛生資材、観察環境、病院へのアクセスに制限のある環境を想定し、リスクヘッジのため無闇に洗わないことをおすすめしています。 また、洗浄の際に落としやすい軟膏を選択することも医師の責務だと考えています。ヨウ素軟膏を使っているということは、浸出液が多く、感染を制御したい傷があるということですね。浸出液が多いということは、血流はさほど悪くないと逆算できます。洗い流してよろしいのではないかと思います。 ウオノメ、タコのケア方法について <Q8>・市販のタコ、ウオノメ用シール(サリチル酸絆創膏)を使う際の注意点はありますか? ・毎日観察できるわけではないため心配な面もありますが、在宅でサリチル酸絆創膏を使用することについての先生のご意見をいただきたいです。 少しでもそのウオノメ・タコ自体を柔らかくして対処しやすくしてあげようという考えであれば、尿素配合クリームやサリチル酸を塗っていただくとよいと思います。ただし、皮膚を少しただれさせるような効果もありますので、周りの薄い皮膚には塗らないように、ウオノメ・タコのところだけピンポイントで塗るようにお願いします。 ウオノメシールを貼るときは、肥厚している角質よりも一回り小さく切って貼って下さい。3日ほど貼りっぱなしにすると浸軟した角質がとれやすくなります。シールを固定するためのテープでまわりの皮膚を損傷しないようにすることも注意しましょう。 ただし、シールは「その場しのぎ」で、前述のとおり外力の除去が根本的治療です。極論ですが、「寝たきり」になったら足の裏のウオノメ、タコは「完治」します。外力を減らせるような履物を使うことを強くおすすめします。 爪切り、爪のケアについて <Q9>・爪白癬、肥厚爪についてケアのしかたを教えてください。・かなり肥厚している爪を小さくするために在宅で簡単に用意できるものはありますか? ・ワルファリンカリウム錠を服薬中のため、ニッパーは避けてヤスリがけをしています。ほかによい方法はありますか? 爪が非常に分厚くなっていて、どこから手をつけたらいいか分からないというような爪の方も本当に多くいらっしゃると思います。在宅で、簡単に肥厚爪に取り組むことはなかなか難しいことかもしれません。 爪切りをする前に、まずは必ず「血流があるかないか」を見てください。血流がある方に対して爪切りをする前提でお話をします。私の場合は、爪切りにはニッパーを使います。十分に明るい環境で、切りやすい方向から、少しずつ爪切りをすることを心がけています。 その時に、爪の甲がどのように変形しているのかのイメージをしっかりと持ちましょう。爪白癬の場合、爪がバームクーヘンのように層になっているので、そのバームクーヘンの層を1枚ずつ剥がすようなイメージで、ニッパーを層と層の間に入れていただくとポロッと剥がれると思います。そのようにして使ってみてください。大まかなところをニッパーで減量して、爪床が近くなってきたなと思ったら、ヤスリで整える…という風に手当てをしていただければと思います。 <Q10>白癬により爪が剥がれた場合の対処方法を教えてください。 あまりに白癬がひどいと、爪の根まで白癬菌が食べてしまい、爪の甲がぽろっと自然と取れてしまうという現象が起こることがあります。この場合、剥がれた後に出血していなければ、そのままで結構です。剥がれた後に爪床や爪母の部分に傷があったら、消毒などをしてください。 実は、白癬の分厚い爪が指先から取れたということは、「白癬菌のお家がいなくなった」ということなので、爪の表面にいる白癬菌の量は確実に減っています。ここをチャンスとして爪の水虫の治療をすると、分厚い爪の甲に塗るよりも塗り薬の効き目が早くしっかりと出ます。傷が治った後に爪白癬、水虫の薬をしっかり塗って、水虫菌をしっかりとやっつけてあげてください。 <Q11>・反っている小さい爪のケアについて教えてください。・寝たきりの児童で、肥厚して足背側にどんどん反沿ってしまうので、とりあえずやすりをかけていますが、それがいいのか悪いのかも分かりません。 例えば、この患者さんの右足の第3趾と左足の2、3趾が反り爪で、4趾も少し反り爪っぽくなっています。このちゃんと踏めない指の爪が反ってくるということを時々経験します。この方も含めて、反り爪は爪の甲がブリッジしたようになっており、爪先が指の近位側、体の中心に近い側にあります。 そのため、そこの部分に注意しながら細い爪切りで切っていただくのが、最も手っ取り早くて、患者さんの指の痛みを除去できる方法じゃないかなと思っています。 なので、この爪の先を、できたら気を付けてニッパーややすりで切っていただくっていうことをやってみてください。爪先側に、指先側に爪先がないので、よく見てどこを切るかをよくよく考えながら対応していただけるとありがたいです。 <Q12>爪の同じところに亀裂が入ります。治す方法はありますか? 爪甲の縦方向の亀裂は(1)爪甲に白癬などの感染を起こしている(2)爪床の変形(3)爪母に腫瘍ができているということが理由として考えられます。 一方、爪甲に横方向の亀裂が生じる場合、その原因が爪甲に限られることはまれで(1)爪床の変形(2)爪母全幅の問題 a:抗癌剤などで爪母の爪甲製造能力が一時的に衰えていた b:爪甲を伸ばしすぎたことで爪甲の自由縁を圧迫され、爪母に圧が加わったことで 製造された爪甲に横皺を形成した等の状況がよくみられる状態です。 また、爪甲先端のひび割れ・剥がれの場合は過度の乾燥が考えられます。それぞれの原因に対処することで爪の亀裂が改善する可能性があります。 医師との連携について <Q13>・医師への報告のしかたについて教えてください。 ・看護師からの報告について困るケース、助かるケースを知りたいです。 私たち形成外科の領域は特に、傷の状態を見れば何が起こっているかが分かるという場合が本当に多いです。そのため、報告のしかたとしては、ぜひ写真に撮って見せていただきたいです。写真を撮る際のポイントとしては、足の全体像と病気があるピンポイントの部分の2種類を撮ることです。その2種類をいただくと、何かお役に立てることが多いです。また、写真からは伝わりませんがぜひ伝えていただきたい情報が、「血流」です。「この人の足は冷たいです。そしてこのような症状が出ています」と写真を添えて相談していただけると本当に助かります。写真を撮った日付もお願いします。 また、セミナーでも申し上げたとおり、体にできた傷は基本的には治ります。治らない傷には、治らない理由があります。その理由を見つけて取り除かない限りは、傷は「治りたくても治ることができない」んです。様子を見る期間は2週間です。皆さんが困って、あるいは主治医の先生が何か対応を始めて、それでも2週間経ってなかなか治らない傷には、理由が必ずあります。その治ることができない理由を、もしかしたら形成外科の医師は見つけることができるかもしれません。なので、2週間やってみて難しいケースは、傷を診る専門の先生にぜひ繋いでいただきたいんです。 NsPace読者の方は全国にいらっしゃるので「困ったら私に見せてください」といういつもの逃げ口上が言えないのですが、皆さんの地域にも形成外科はきっとあると思います。皮膚科の先生の中にも足の傷を診ることに長けた先生はいらっしゃるし、糖尿病専門の先生の中に足の傷まで診てくれる先生も全国に散らばっています。 フットケア・足病医学会のホームページを見ていただけると、どんな先生が頼りになるのかのヒントがありますので、ぜひ一度勇気を持って「困ったときには相談に乗ってもらえませんか?」という風に一度声を掛けていただいて、そして本当に困ったときには写真を持って、血の巡りの有無を添えて、相談していただければと思っています。 * * * 後日、オンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」の講義内容をダイジェストにしたレポート記事も公開いたします。ぜひそちらもご覧ください。 >>シリーズ一覧はこちら「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」セミナーレポート>>お役立ちツールはこちら「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 編集: NsPace編集部

人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】
人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】
特集
2024年12月17日
2024年12月17日

人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】

2024年11月17日(日)の日本在宅看護学会 第14回学術集会では、NsPaceの運営元である帝人株式会社が共催し、ランチョンセミナー「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」を実施しました。座長に山本 則子氏、演者(ファシリテーション)に長嶺 由衣子氏をお迎えし、「第2回 みんなの訪問看護アワード」の受賞者のお二人とともにトークセッションで盛り上がりました。当日の内容をダイジェストでお届けします。 座長:山本 則子氏 東京白十字病院、虎の門病院に勤務した後、東大大学院医学系研究科修士課程修了。米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)nurse practitioner programを修了。現在、東京大学大学院医学系研究科 教授。公益社団法人 日本看護協会 副会長。   演者:長嶺 由衣子氏沖縄県 粟国島で離島医療に取り組んだ後、東京や英国で地域医療、公衆衛生、社会疫学を学ぶ。東京科学大学(旧:東京医科歯科大学) 公衆衛生学 非常勤講師。厚生労働省 老健局老人保健課 課長補佐。訪問診療医。新田 光里氏第2回 みんなの訪問看護アワード 審査員特別賞受賞。@(あっと)訪問看護ステーション 訪問看護師。幼い頃体が弱かったことをきっかけに看護師を志す。救急救命士の資格を習得して病院の救急部門で働いた後、在宅看護の重要性を感じて訪問看護の道へ。日高 志州氏第2回 みんなの訪問看護アワード 入賞。ひだかK&F訪問看護ステーション 訪問看護師。病院の救命センターで働き、救急看護認定看護師資格取得。慢性疾患の急性増悪や終末期の患者さんを看護する中で在宅看護の重要性を感じ、訪問看護師へ。 ※プロフィール情報は、2024年11月時点。※本文中敬称略。 訪問看護の魅力・やりがいとは? 山本: 今回は、「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」をメインテーマに、訪問看護の現場で活躍されているお二人のお話を伺います。訪問看護は、利用者さんの生活や価値観に深く触れるケアが求められる分野です。具体的なエピソードも交えながら、その魅力や課題についてざっくばらんにお話ししていきたいと思います。では、長嶺先生お願いします。 長嶺: ありがとうございます。最初のテーマはこちらです。訪問看護師の新田さん、日高さんの考える訪問看護の魅力について教えてください。 新田: はい。訪問看護は毎日新しい経験の連続で飽きることがありませんし、多様な利用者さんと深く関わることができる点が魅力だと感じています。私は元々病院の救急部門で働いていたのですが、訪問看護は「利用者さんに関わりたい」と思ったら、どこまでも深く看護ができる仕事だと思っています。 日高: 私も以前は救急の仕事をしていたのですが、訪問看護は救急の経験を活かしやすい点も魅力だと思っています。ちょっとした変化を早期に察知し、医師に繋いで状態の悪化を防ぐことができると、やりがいを感じます。 また、多様な働き方ができる点も魅力です。副業や起業をしながら訪問看護をされている方もいますよね。 長嶺: ありがとうございます。 たまたまですが、救急経験のある人が集まりましたね。実は、私が沖縄で離島医療をしていた際、日高さんと一緒に働いていたことがあるんです!日高さんがフライトナースをされていて、ドクターヘリで飛んできてくださいました。まさか訪問看護師さんとしてお会いすると思いませんでしたね(笑)。 では、座長の山本先生も、訪問看護の魅力に関するお考えをお聞かせください。 山本: そうですね。審査員として「みんなの訪問看護アワード」のエピソードを読んでいても、改めて訪問看護には「究極の個別性」があると感じます。利用者さんがどんな生き方をしてきて、残された時間をどんな風に過ごしたいと思っているのか。ご本人が必ずしも意識していないようなところまで入り込み、希望される生き方や想いを実現するところまで入っていくのが訪問看護です。「訪問看護師はここまでできるのか」と驚くことがとても多く、そこが魅力だと思います。 長嶺: ありがとうございます。私が行っている訪問診療にも通じるものがありますね。 病院では「点」でしか患者さんと関われないように感じますが、訪問診療では地域の方々やご家族との関わりもあって「面」になり、だんだんと「立体」になっていくようなイメージを持っています。訪問看護・訪問診療ともに、そういった点は魅力ですよね。 エピソード1:「100年ぶりに入浴したU子さん」 長嶺: ここからは新田さん、日高さんが「第2回 みんなの訪問看護アワード」で受賞されたエピソードをもとに、お話を伺っていきたいと思います。まず、こちらが新田さんのエピソードです。事業所の所長さんの言葉をきっかけに心持ちの変化があったと思いますが、その点はいかがでしょうか。 「100年ぶりに入浴したU子さん」(投稿者:新田 光里) ・関連記事受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 新田: はい。それまでは「入浴・内服管理の依頼を達成しなければ」という問題解決思考で考えていたのですが、所長の言葉を機に、「ケアの達成度合いは一旦置いておこう」「まずはU子さんと信頼関係を築こう」と思ったんです。 そこからは、私が訪問看護師だと理解していただくために、仏壇の横に私の写真を飾る、なんてこともしました(笑)。 久しぶりに入浴され、「う~ん、気持ちいい!100年ぶり!」とおっしゃったU子さんの笑顔は、私にとって忘れられない瞬間です。 日高: このエピソード、とても感動しました。利用者さんの心を開くまでのプロセスが本当に丁寧で、新田さんの根気と工夫が伝わってきます。 長嶺: 日高さん、涙ぐんでいますもんね…!これは、医療従事者の成長過程の「あるある」ではないかと思います。医療者自身が「主語」になるのではなく、患者さん・利用者さん等の相手を主語にしたときに、「そうか、ご本人にとっては〇〇のほうがいいんだ」といった気付きがあると思うんです。 U子さんはすでにお亡くなりになっているそうですが、今回のテーマである「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」という点については、いかがでしょうか。 新田: はい。実はU子さんはその後ずっとお風呂に入れたわけではなく、私が子どもの発熱で急遽担当が変わった日を境に、また入れなくなってしまい…。認知症の利用者さんをケアする難しさを感じました。 でも、訪問看護師が中心になって、状況にあわせてケアプランの変更を相談し、寝たきりになっても、歯がなくても最期まで好きな桃のゼリーを召し上がるなど、多職種で協力しながらケアを行いました。U子さんの「家で逝きたい」という願いを支えられたのではないかと思っています。 長嶺: ありがとうございます。 利用者さんと深く関われていると、自然と願いに沿ったケアができる、そんなお話を伺えたように思います。山本先生、いかがでしょうか。 山本: はい。エピソードについては、地道に関係性を築いていき、1年経ってからおもむろに発した一言がヒットしたという部分に「技」を感じましたし、とても感動しました。 また、担当が変わって入浴できなくなったとのことでしたが、これは認知症のある利用者さんだったから、ということだけが理由ではなく、おそらくU子さんがお風呂に入るにあたって新田さんが実践した上手なアプローチ方法、ノウハウがあったんだと思うんです。今後、そういったノウハウを言語化して共有できれば、担当が変わってもうまくいくかもしれません。 新田: ありがとうございます! エピソード2:「最期の友人」 長嶺:続いては、日高さんのエピソードです。この利用者さんは最終的に施設に入ることになったそうですが、当時の心境や経緯について教えてください。 「最期の友人」(投稿者:日高 志州) 日高: この利用者さんは、ご家族とは疎遠になっている一人暮らしの方でした。退院後もお酒を飲んだり、スナックに行ったり…という生活を続けていたのですが、次第に体が動かなくなり、楽しみが減っていってしまったんです。訪問看護やヘルパーの支援があっても、一人の時間をすべて埋めることはできず、ご本人が心細く感じるようになって、施設入所を選択されたという経緯です。私は、在宅看取りのみが最善の選択とは限らないと考えているので、この利用者さんにとって一番いい選択は何か、たくさん話し合って検討しました。 長嶺: ともすると、感情移入をして「在宅でずっと看たい」という気持ちになることもあると思いますが、「ご本人にとって何が一番いいのか」を最優先にして、ディスカッションしてこられたんだなということがよくわかりました。 利用者さんが笑顔で施設に行かれた描写が印象的でしたが、「最期までこの方が豊かに生きる」ということに対してのヒントを教えてください。 日高: この利用者さんは、深刻な場面もおちゃらけた様子で切り抜けるような性格の方で、真面目に問いかけても冗談で返されることが多かったんです。なので、こちらも冗談で応じながら親しくなり、徐々に価値観や想いを引き出せるよう努めました。深刻になりすぎず、「その方の世界」に寄り添うアプローチが、結果的によかったのではないかと感じています。 山本: この方は、ご家族とも疎遠ということなので、元々は「一人でよい」と考えていたのですよね。しかし、晩年に日高さんに対して「最期の友人」とおっしゃったことから、心のどこかで友人や仲間を求めていたのではないかと感じました。その想いを最期に実現させた日高さんの存在は非常に大きく、「最期まで豊かに生きる」ことを支えたことが感動的です。 長嶺: 本当ですね。私は医師なので「先生」と付けられると距離を感じることもありますが、看護師さんも一定の距離を取られがちなところを、「友人」と表現されたところはすごいと思います。 利用者さんやご家族の意思を尊重するために大切なこと 長嶺: ここからは、利用者さんやご家族の意思を尊重するために大切なことは何か?について、ディスカッションしたいと思います。新田さんいかがですか? 新田: 難しいテーマですが、「その方がどのように生きてこられたか」「どんな最期を迎えたいのか」を理解することを大切にしています。利用者さんがお話できる場合は極力丁寧に耳を傾け、生活歴やサマリーから背景を想像する…ということを訪問のたびに行っています。 日高: 私も同じです。時間が許すなら、できるだけ「どんな最期を迎えたいですか?」などと直球で質問することはせず、雑談から自然にご本人の価値観を引き出すよう心がけています。 長嶺: 確かに、直球で聞かれて明確な答えが返ってくることは少ないですよね。 私自身が当事者だったとしても、看取るご家族をはじめ「残される人たち」のことを考えると即答できませんし、一人では決められません。 山本: そうですね。多くの人はご自身の最期について明確な希望をもっていませんし、誰しも死ぬのは初めてなので、イメージもできません。だからこそ、看護師が選択肢を伝えることで、利用者さんのやりたいこと、できることが広がりますよね。例えば、「もうお風呂には入れない」「散歩ができない」と考えている方に、「できる」とお伝えできるケースもあります。これも大切なことではないでしょうか。 また、洗髪や足浴等をする際、目線は必ずしも合っていなくても、体をタッチしていますよね。そんなときに、何気なく利用者さんから出る言葉が重要なような気がしているんです。それを聞き出すことができるのは、看護の強みだと思いますね。 長嶺: 確かに、具体的な提案を通じて意思決定を支えることは重要ですね。また、「触れ合いながら引き出す」アプローチは、なかなか医師には難しく、看護師さんならではのアプローチだと感じます。日高さん、いかがですか。 日高: はい。訪問回数が多い分、看護師は怒り、悲しみ、苦しみなどを打ち明けられることが多いと思いますし、山本先生がおっしゃるように、リラクゼーションやタッチングをしながらお話を聞くと、最初はとてもいらだっていた方の感情がスーッとおさまったり、急に昔の話をしてくださったりする経験をしたことがあります。これは本当に看護師だからこそだと思いますし、私もそういうケアを大切にしたいと思っています。 山本: そうですよね。 また、私は「尊厳を保つ」ことがとても大事だと思っており、看護だからこそできることがたくさんあると思っているんです。清潔を保つこと、症状をマネジメントすることは、ケアや医療として大事であると同時に「尊厳を守る」ことでもあるんです。 「尊厳を保てないぐらいだったら、私を生かしてくれるな」というような発言を利用者さんから聞くことがあるくらい、人の尊厳は大事だと言えますし、人生の最終段階で本当に自分でできることがなくなったり、症状が強くなったりしたときに、看護の強みが発揮されると思っています。私たちはそういった仕事ができることを誇りに思ってよいと思うんです。 長嶺: ありがとうございます。 本当に在宅医療の現場は自分が持っているものをすべて総動員しないといけない場ですし、皆さんもそこにやりがいや魅力を感じていると感じました。 さて、早いもので終わりが近づいてまいりました。皆さん、素敵なセッションをありがとうございました。 こういった学術集会では学術的な発表はもちろん大切ですが、全国から同じ現場を共有できる方々が集まる場なので、今回のように感情面を共有することも非常に大切だと感じました。訪問看護の魅力を伝えるためには、皆さんが「なぜ訪問看護をしているのか」、その根底にある想いや教育課程では教わらなかった人と関わる上での工夫を共有できる場も大切だと思います。最後に、皆さんのご感想もお聞かせください。 日高: 山本先生、長嶺先生とディスカッションさせていただける大変貴重な場でした。ありがとうございます。 全国で働く訪問看護師の皆さんは、それぞれ素敵なエピソードを持っていると思うので、ぜひ皆さんのエピソードも伺いたいと思いました。 新田: ありがとうございました。こういった学術集会の場に来ると、訪問看護業界を牽引する方々がビジョンを描き、課題解決のために動いてくださっていることを実感します。また、ディスカッションを通じて、改めて自分にできることを日々一生懸命実践していきたいと思いました。 山本: 私も、改めて訪問看護の持つ力の強さを感じました。訪問看護の魅力が、一般の方々も含めて多くの人に伝わればよいなと思います。 * * * 本ランチョンセミナーは、立ち見が出るほど盛況で、参加者の皆さまは熱心に耳を傾けていました。会場にお越しくださった方々、ありがとうございました。 受賞者の皆さまをご招待する「みんなの訪問看護アワード」の表彰式では、このように訪問看護の未来について意見交換するトークセッションや懇親会の場も提供しています。 皆さまのご応募をお待ちしております!>>みんなの訪問看護アワード特設ページはこちらみんなの訪問看護アワード2025 執筆・編集: NsPace編集部

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2024年11月26日
2024年11月26日

初の電動自転車にドキドキ…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

訪問看護で初めて電動自転車に乗る人も多い 新任訪問看護師さんは「電動自転車が初めて!」ということも多いにゃ。 最初は戸惑うけど、慣れればとっても快適!がんばってにゃ! 訪問看護を始めてから電動自転車デビューをした!という人も多いのでは? 電動自転車は坂が多いエリアでも楽に移動できて便利ですが、慣れないうちは戸惑うもの。思いのほかスピードが出て驚いたり、うっかり充電を忘れてバッテリー残量が少なくてヒヤヒヤしたり…なんてことも。訪問看護師さんからは、「雨の日はスリップに要注意!マンホールの上で特に滑りやすいです。車道と歩道との境目の段差でも転倒した話を聞いたことがあります」といった声が聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

訪問看護漫画「家にいる幸せ」 退院した利用者さんは…【ニャースペース】
訪問看護漫画「家にいる幸せ」 退院した利用者さんは…【ニャースペース】
特集
2024年11月12日
2024年11月12日

訪問看護漫画「家にいる幸せ」 退院した利用者さんは…【ニャースペース】

自宅に戻って「自分らしさ」を取り戻す 「家に帰りたい」と熱望して在宅医療に切り替える利用者さんは多いにゃ。好きな人やものに囲まれて、生き生きとする様子をみるとうれしいにゃ! ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

ニャースペース
ニャースペース
特集
2024年10月29日
2024年10月29日

時計のズレもばっちり把握!ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

時間はそれとなく確認 訪問看護中は時計をつけず、利用者さんのお宅の時計をササっと確認してるにゃ。時計のズレも含めてバッチリ把握してるにゃ! 今回の「訪問看護あるある」を提供してくださったのは、かんわ訪問看護ステーションのC.M.さんです。ケア中は腕時計を外し、利用者さん宅の時計を確認している訪問看護師さんが多いでしょう。「私が時計を気にしていることを利用者さんに悟られないよう気を付けながら、それとなく時計を確認しています。その家のどこに時計があるのかは、重要な申し送り事項です」(C.Mさん)。 ほかの訪問看護師さんからも、「初回訪問時に検温などの数値をタブレットに入力する際、利用者さん宅の時計と実際の時間(タブレットの時計)とのズレを確認しています」「ケアに夢中になり、つい時計を見忘れて焦ることもありますが、だんだん体内時計の精度が上がってきて、ちらっと時計をみたときに想定どおりだと『よし!』という気持ちになります」といった声が聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

あなたにオススメの記事

× 会員登録する(無料) ログインはこちら