礼節・マナー

特集

第3回 計画的な人材採用と育成/[その2]ミスマッチを防ぐ「採用面接」のポイント

連載:働きやすい訪問看護ステーションにするための労務管理ABC 連載第3回目では[その1]~[その4]にわたり訪問看護ステーションにおける人材採用と育成について解説していきます。今回のテーマは“採用面接”です。求人広告を出し応募者が集まったら、次に行うのが面接です。今回は採用担当者が押さえておきたい求職者の人物像を見きわめるポイントと面接の場を活用した入職後のミスマッチを防ぐ方法をご紹介します。 ●ここがポイント!・面接は事業所の採用担当者と求職者がともに互いの理解を深め、ミスマッチがないか確認する場である。・面接の短い時間で求職者の能力や特性をすべて見きわめることは難しい。求める人物像をイメージし、そこからチェックする項目を絞り込む方法もある。・事業所について正確な情報提供を行い、求職者自身の考えや期待することとのギャップをできるだけ小さくすることが大切。 面接とは 面接は、求職者の性格や仕事に対する意欲や適性、能力の確認を行うために実施します。また質疑応答や意思確認などをとおして、事業所の採用担当者と求職者がともに互いの理解を深め、ミスマッチがないか確認するための場でもあります。 採用担当者の視点 採用担当者としては、大事な利用者を任せるので、本人と家族が安心できる人物を選びたいと考えるのではないでしょうか。例えば「仕事への情熱やプロ意識がある」、「安全な医療行為に関する知識がある」などは確認したい事項です。また、利用者や家族との間に何かトラブルが生じたときに適切に対応できないと、事業所にとっては顧客を手放すことになりかねません。「利用者の話をしっかりと聴くことができる」、「難しい状況や不測の事態に対処できる能力がある」といったスキルや適性も見きわめたいところです。 面接時のポイント 面接の短い時間で求職者の能力や特性をすべて見きわめることは難しいです。そこで、求める人物像をイメージし、そこからチェックする項目を絞り込むという方法を提案します。ここでは、一例として「利用者やその家族、ほかの職員との信頼関係を築ける人かどうか」という観点でチェックする際のポイントについてご紹介します。 相互理解を深めるコミュニケーション能力があるかどうか 訪問看護ステーションではさまざまな人たちとともに働きます。その中で、ほかの人の意見を聴き、気がついたことがあれば助言をしていくことも大切です。ていねいな言葉づかいや相手の話を聞く態度、自分の意見を話すときは5W1H(When・Where・Who・What・Why・How)を意識して相手に伝わる話し方をしているかなども、面接をとおして見ていきます。 基本的な接遇・マナーを身につけているかどうか 好感のもてる身だしなみや誠実な対応は、ぜひ身につけておいてほしいところです。例えば利用者のお宅に伺う際、明るく元気に挨拶をして、靴を揃えて上がれる人なのかどうかといった点は、面接室への入り方や身だしなみ、表情、声の大きさなどから判断します。 責任感があるかどうか 仕事に対する姿勢として責任感も大切です。例えば、過去の職場での不満や失敗などのエピソードからどのように対応したのかを聞き出して、責任感から行動する人物なのか、自分勝手な行動をする人物なのかがある程度推測できます。 学習意欲があるかどうか 学習意欲の有無も重要です。実務経験や資格などから仕事に対する学習意欲があるかどうかなどを判断します。 笑顔 最後に、面接で特に重視してほしいのが笑顔です。人を元気づけられる笑顔をもっているか、面接時の様子からストレートに評価してみてください。 入職後のミスマッチを防ぐために 面接には、求職者の人物像を見きわめる以外に、とても大切な役割があります。それは事業所について正確な情報提供を行い、入職後のミスマッチを防ぐということです。 面接時の質疑応答をとおして、事業所の理念や組織の雰囲気、採用条件や仕事内容、求めるスキルを求職者に伝えて、求職者自身の考えや期待することとのギャップをできるだけ小さくすることが大切です。ギャップが大きいと職員のモチベーションが低下し、入職後の定着に結びつかず、せっかく入ってくれた人材を逃すことになってしまいます。 事業所側は入職につながるよう、よいところだけをアピールしてしまいがちですが、採用前にネガティブな情報も含めてきちんと伝えられるようにしましょう。求職者がその情報も含めて入職を決められるプロセスを経ることが、その後の早期離職を防ぐ一助になるということを忘れないでください。 ** 齋藤 暁株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント 医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。 ▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/ 編集協力:株式会社照林社

コラム

医療制度・介護制度などに関しての知識と礼節・礼儀などを実践できる素養

前回は医師のいない場で医療的判断を行うスキルなどについてお話ししました。第5回は、医療制度・介護制度や礼節などについての考え方をお話ししたいと思います。 訪問看護師に必要な8つのスキル・知識 ①本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル ②本人・家族の平時の生活を想像するスキル ③他職種とコミュニケーションを取るスキル ④マネジメントスキル ⑤医師のいない場で医療的判断を行うスキル ⑥在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力) ⑦医療制度・介護制度などに関しての知識 ⑧礼節・礼儀などを実践できる素養 医療制度・介護制度などに関しての知識 病院や外来診療所から在宅医療現場で業務をする際に留意すべき点はこれまでのコラムでも数多くお話ししてきましたが、今回は医療保険や介護保険といった制度面についてお話しします。病院や外来診療所は、基本的には医療保険(診療報酬)制度の中で医業収益を上げています。その際、診療報酬には項目ごとにさまざまな要件があり、各医療機関は要件に沿う形で業務を行っています。もちろん訪問看護ステーションも同様ですが、訪問看護の場合は医療保険制度だけでなく、介護保険制度にも則る形での業務が求められます。 私自身もそうでしたが、病院勤務の時代は診療報酬に関しての知識はほとんどなく、あるとしても、「7対1看護配置での入院期間は18日以下をめざす」(平均在院日数)や、「ある程度の退院患者さんは転院ではなく、自宅に戻さないといけない」(在宅復帰率)、「DPC制度においては、入院期間が長くなると、1日単価は減る」(DPC制度における入院期間Ⅰ~Ⅲ)といった知識程度でした。病棟師長や主任といった管理経験のある看護師さんは、詳しいと思いますが、その経験がない方は、やはりなじみの薄い知識なのではないでしょうか。また、薬剤を使いすぎると返戻が来る(いわゆる「切られる」)といった感覚は多少なりともありましたが、各患者さんの病態ごとで、医療行為をどの程度実施してよいか、といった感覚もあまり持ち合わせていませんでした。 一方、在宅医療現場(特に訪問看護)においては、医療保険と介護保険の両制度の中で、業務を行う場面が非常に多くなり、業務自体が複雑化しています。さらにその制度理解は訪問看護ステーションの管理者だけでなく、各スタッフも制度を知らないと、看護プランを検討するといった日常業務に支障を来すことも多くなってしまいます。 今回お話しすることは、訪問看護の経験が長い方にとっては、すでに実践されていて真新しいことは少ないとは思いますが、訪問看護を始めて間もない方、またこれから始める方向けに制度理解で必要なことを整理したいと思います。なお、訪問看護ステーションには機能強化型訪問看護ステーションといった届出上の制度理解も必要ですが、これは管理職の方がメインとなる知識のため、今回は訪問回数などに関連する事項について、お話しをさせていただきます。 なぜ制度を理解しないといけないか 訪問看護には、冒頭で申し上げたように医療保険での訪問看護と、介護保険での訪問看護があり、前者は医療保険のため、診療報酬と同様の建て付けで医療費として患者費用負担が発生し、基本的に1日1回・週3回までの訪問(訪問看護を実施する訪問看護ステーションは1か所まで)となる。また介護保険での訪問看護は、ケアマネジャーが作成するケアプランに則った形で訪問看護を実施します(介護費として利用者費用負担)。なお、介護保険優先の原則上、多くの場合は介護保険での訪問看護を実施することとなります。 これらから分かるように、なぜ制度を理解しないといけないか?に対しての回答は、「看護プランに大きく関わる訪問可能回数などにルール(規制)があるから」となります。さらに医療保険での訪問看護は、1日あたり訪問回数、週当たり訪問可能日数、複数のステーションからの訪問看護が可能かどうかなど、制度上のルールが細かく決まっています。 このため、医療保険での訪問看護にせよ、介護保険での訪問看護にせよ、各訪問看護師が独自の判断で「この方には、もっと看護が必要だから、もう少し訪問看護回数を増やそう」というわけにはいかない形となります。病棟看護業務においては、入院患者さんの病態に応じて、自身の判断で何度も患者さんの状態確認のためにベッドサイドに足を運ぶことは多いと思いますが、訪問看護では条件にもよりますが、それが医師からの特別訪問看護指示を受けるなどしないとできなくなるのです。 訪問回数などにかかる制度(ルール) では、訪問看護にあたり知っておくべき制度(ルール)について整理したいと思いますが、ここで細かい制度を記載すると非常に膨大になってしまいます。そのため、確認すべき患者・利用者の状態と、それに紐づけられる訪問回数などに関わるルールを記載します。基本的な確認事項は、訪問看護に関しての訪問回数などの制限有無を確認する作業となります。 【訪問プランに関わる確認すべき患者・利用者の疾患等(いずれか該当する場合、医療保険)】 ①厚労大臣が定める疾患である ②介護認定を受けていない ⇒厚労大臣が定める状態か否かの確認 ③特別訪問看護指示が出ている 上記➀-③いずれかに該当する場合は、医療保険での訪問看護が実施可能となります。各項目についての留意事項は下記のとおりです。 ➀「厚労大臣が定める疾患」について 末期がんや神経難病の方が該当します(詳細は「別表7の疾病(厚生労働大臣の定める疾病等)」を参照)。1日複数回・週4日以上の訪問が可能。 ②「介護認定を受けていない」について 年齢の理由(40歳未満等)で介護認定を受けていない方は、医療保険での訪問看護の適応となりますが、ここではさらに、厚労大臣が認める状態かどうかの確認が必要となります。厚労大臣が必要な状態とは、気管カニューレや人工肛門などを使用している方が該当(詳細は「別表8の状態(厚生労働大臣の定める状態等)」を参照)し、その場合、1日複数回・週4日以上の訪問が可能(該当しない場合、1日1回、週3回まで)。 ③「特別訪問看護指示が出ている」について 急性増悪、終末期、退院直後、真皮を越える褥瘡の方などについて、医師から特別訪問看護指示が出ている場合が該当。その場合、1日複数回・週4日以上の訪問が可能。 訪問回数などに関して、表にまとめたものが上図になりますが、図中【その他】の欄をご覧頂くとわかるように、訪問回数以外にも、滞在時間90分を越える訪問看護が可能かどうか(加算が算定できるかどうか)、2名以上の複数名での訪問看護が可能かどうか(加算が算定できるかどうか)など、さらに細かく要件がわかれているため、ご注意ください。 ここでは、訪問回数などに関わる制度面を中心にお話しさせていただきました。繰り返しになりますが、これらは管理者の看護師さんだけが知っていればよいものではなく、訪問看護のプランにも関わることのため、ぜひ管理者以外の看護師さんも担当される利用者さんが「厚労大臣が定める疾患等」なのか、「厚労大臣が定める状態等」なのかを確認していただき、それらをもとに訪問回数などの看護プラン立案にぜひ役立てていただきたいと思います。 礼節・礼儀などを実践できる素養 訪問看護師に必要な8つのスキル・知識の最後として、礼節・礼儀を挙げたいと思います。 「礼節」というと病院・外来診療所、在宅現場など、どの場面においても必要な素養になりますが、病院と在宅現場の違いとなると、受け入れる側と受け入れてもらう側が逆転することにあります。要はどちらが「お邪魔します」なのか、そこに違いがあるのです。 病院などにおいては(特に入院の場合)、患者さん側が「お邪魔します」になるため、心理的に少し腰が低くなる傾向にあります(もちろん、低くする必要はないのですが…)。それにより医療従事者側に多少礼節に欠いた素振りがあったとしても、信頼関係に支障を来さないことが多いです。一方、在宅現場では医療従事者側が「お邪魔します」になるため、病院における立場とは逆転します。しかし、そういった中でも病院における医療従事者-患者・利用者関係のまま、ご自宅に訪問すると、医療従事者の態度・振る舞いなどの細かい部分をご家族が気にされることが増え、結果的に信頼関係を損なってしまうことがあります。 例えば病院においては、患者さんの病室に入る時に、入室する順番などはあまり気にされないと思いますが、利用者さん宅の場合、基本的に医療者側が「お邪魔します」になるために部屋に入る順番は、家族が最初となります。また、玄関での靴の揃え方、スリッパの揃え方など細かい部分での留意も必要となるなど、こういったことのひとつひとつが結果として、利用者さんやそのご家族との信頼関係構築に大きく寄与することとなります。 ただし、これらは訪問看護師さんにとって問題ないことが多く、むしろ医師側に課題があることが多いです。そのため、訪問看護の本来業務では無いですが、医師に同行する場合、そのサポートや指摘をいただけると、より一層ご本人・家族とチームの信頼関係が構築できると考えています。 また素養とは異なるかもしれませんが、利用者さんとの信頼関係構築には言葉遣いも重要です。もちろん利用者さんに対しては、敬語が基本となりますが、場面や相手によって遣い分けをすることで、より関係性が良好なものとなり得ます。というのも、敬語は場合により「お高くとまっている」と受けとられることがあり、遣い続けることにより信頼関係を損ねてしまうことがあるためです。これは地域性などもあるようですが、何人かの訪問看護師さんから敬語の難しさを伺ったことがあります。そのため、初回訪問から一定期間が経過したあとには、友達口調(いわゆる「タメ語」)を遣うかの検討をすることになりますが、言葉遣いによる相手の反応を見ることが信頼関係を損ねないポイントと言えます。 多くの場合、友達口調は自然な流れの中で出てくるものだと思いますが、それによる利用者さんやご家族の表情の変化を簡単にチェックしてみてください。表情の変化などがある場合は、利用者さんは友達口調に違和感を抱いている可能性があります。反対に敬語を遣い続けている状態で、初回訪問から一定期間経過しているにも関わらず、会話のキャッチボールがうまくいかない場合などは、利用者さんが敬語に違和感を抱いている可能性があるため、言葉の端々に友達口調などを入れ、相手の反応を少し見てみてください。 言葉遣いにも、色々とコツがありますが、ぜひ上手く遣うことで、利用者さんやご家族とより良い信頼関係を築いていただければと思います。 ここでは、礼儀・礼節についてお話しさせていただきましたが、基本的には病院・在宅に関係なく、一番重要なのは相手を敬う気持ちです。それがあれば、利用者さんやその家族との信頼関係を損なうことはないと考えています。 本コラム第5回目として、医療制度・介護制度などに関しての知識と礼儀・礼節ついて述べさせていただきました。次回は、本コラム最終回として、これまでの総括をお話しさせていただきたいと思います。 ** 医療法人プラタナス松原アーバンクリニック訪問診療医 / 社会医学系専門医・医療政策学修士・中小企業診断士 久富護 東京慈恵会医科大学医学部卒業、同附属病院勤務後、埼玉県市中病院にて従事。その後、2014年医療法人社団プラタナス松原アーバンクリニック入職(訪問診療)、2020年より医療法人寛正会水海道さくら病院 地域包括ケア部長兼務。現在に至る。

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