コミュニケーションに関する記事

ニャースペースのつぶやき 夏
ニャースペースのつぶやき 夏
特集
2025年3月4日
2025年3月4日

世代を越えた関わりがほほえましい ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

家にいるから家族と触れ合える 在宅療養をしているからこそ、お孫さんとの関わりが持てることも。ほほえましいにゃ 在宅で療養していると、世代を越えた家族との触れ合いがあったり、利用者さんがご家族のケアを担っていたりすることも。訪問看護師さんからは、「車椅子の利用者さんが、幼児のお孫さんの食事のお世話をしているケースもあります。関わりや役割を持てて利用者さんも嬉しそうです」「ベッド上の生活をしている利用者さんがいらっしゃいましたが、お孫さんがベッドに乗って一緒に遊んだり、添い寝したりしていることもあり、とても良い表情をしていました」といった声が聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

励みになったエピソード【つたえたい訪問看護の話】
励みになったエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年2月25日
2025年2月25日

励みになったエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護師として働いていると大変な出来事もたくさんありますが、利用者さんが自身の訪問を楽しみにし、感謝してもらえると心の励みになることでしょう。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードの中から、支援を通じて利用者さんやご家族から元気をもらったエピソードを5つご紹介します。 「本人と家族の意思を尊重できたことで…」 利用者さんとのお別れで悲しい中でも、訪問看護を楽しみにしてくれていた利用者さんの想いやご家族からの感謝が励みになるエピソードです。 利用者様は、直腸がん末期の方でした。訪問看護導入時はADLも自立されて、ご家族と自宅周囲の散歩をおこなっておりました。訪問時は、毎回笑顔で「よく来たね」と看護師を暖かく迎えてくださいました。がん末期であり疼痛増強にて、ADLは徐々に低下していきました。また肺転移もみられており、呼吸困難感も出現いたしました。予後が週単位となり、症状が増強しているため本人に入院をすすめると「まだ家にいたい」とおっしゃっており、家族も「本人の意見を尊重してまだ家でみます」との意向により在宅療養が継続になりました。意識レベルの低下がみられ、主治医の医療機関へ救急搬送になり、同日お亡くなりになりました。グリーフケアで後日訪問した際にご家族より「本人の希望通り、ぎりぎりまで家にいられてよかったです。毎回お父さんは看護師さんが来るのを楽しみで看護師さんが来ると元気になるんですよ」とおっしゃっていただきました。 2023年2月投稿 「訪問が楽しみ…それだけで頑張れる」 利用者さんにとって、訪問看護の時間が希望に近づくための大切で待ち遠しい時間だと受け止めてもらえた励みになるエピソードです。 在宅HOTを導入されている利用者様でした。ご自宅の敷地内にぶどう棚や畑、ビニールハウスなどでいろんな野菜や果物を育てておられご本人様の希望も今までどおり、作物の手入れができるようになりたいというものでした。訪問内容としては、呼吸訓練を主に呼吸法の訓練も取り入れておりました。天候や体調が良い日にはご自宅敷地内の畑やぶどう棚を見に散歩をしておりました。敷地内の散歩の際には本人も気持ちが昂るのか足早となり、呼吸困難がでてしまうこともありました。ご本人の嬉しい気持ちも察しておりますが、時には少し厳しく指導させていただくこともありました。その後、呼吸状態が安定せず逝去となりました。この後、長女様よりご連絡をいただき、訪問のある日は早くに着替えをし、来るのを楽しみにされていたとうかがい嬉しく思いました。 2023年2月投稿 「こころに寄り添う家族の絆」 故人とのお別れやお見送りは、看護師として経験を重ねても辛く、心苦しい場面です。しかし、ご家族が心残りなく見送れるよう支援できたときには、嬉しさを感じることもあります。そんな訪問看護のリアルが伝わるエピソードです。 お看取りで関わらせていただいたIさんとご家族のお話です。Iさんは、自宅退院後1週間ほどでご自宅にて亡くなられました。奥様は、亡くなる直前の数時間「苦しい」「痛い」と話すIさんの体をさすったり、手を握ったりしていたそうです。最後までIさんの心に寄り添うご家族の姿に、強さと絆を感じました。エンゼルケアのご依頼があり、奥様やお嫁さんと一緒に体拭きをさせていただきました。その際、ご家族の皆さまから、Iさんはずっと「家で死にたい」とおっしゃっていたという話を聞きました。ご本人の想いに寄り添ったからこそ、できたことなのだと思います。後日談ですが、偶然会ったお嫁さんから「体拭きが一緒にできてよかった。実の両親の時はできなかったから。」とお礼の言葉をいただき、とても嬉しかったです。弊社の理念は「こころに寄り添い、地元で生きることを支援します」ご利用者さんはもちろん、家族の想いにも寄り添う訪問看護をしていきます。 2023年2月投稿 「その言葉で頑張れる」 垣間見える本心にこそ力をもらえる、そんなエピソードです。 90代 認知症の利用者様。排便コントロールで訪問させていただいていますが、ケア中はいつも全力で抵抗。ご家族も「なんでこんなに力があるの」と手を焼くほど。その日も抵抗されながら、気持ち悪いよね、もうすぐ終わりますよ、と声を掛けながらケア実施。たっぷりお通じが出た後の達成感をご家族と称えあっていると、ご家族ではない小さな声が「ありがとう」と。びっくりして思わずご家族と顔を見合わせてしまいましたが、ふとした言葉が日々の励みになります。今日も変わらず抵抗されながらの排便コントロール。私も全力で応えます。 2023年2月投稿 「笑顔いっぱい」 利用者さんの生き生きとした様子や素敵な場の雰囲気が伝わってくるエピソードです。 90代男性、心不全で在宅生活。元々社交的でボランティア活動などを積極的にしたりと、しっかりした方でした。心不全で入退院を繰り返すようになってから外出はデイサービス程度でした。ある日、趣味のマジックショーを開催できないかと家族より相談を受けました。体調のことを考えて自宅で家族と看護師を集めて会を開き、その後サプライズでお誕生日会を開きました。普段見ることのないイキイキした素敵な表情をされ、「ありがとう。みんなの笑顔とみんなが喜んでくれたことがとても嬉しい」と言ってもらいました。訪問看護師として利用者さんの生活を支えるだけでなく、本当の意味で利用者さんに支えられ支えあっていると感じました。さらにあたたかい幸せな気持ちになれ、感謝でいっぱいでした。 2023年1月投稿 利用者さんと励まし合う関係 利用者さんの人生や生活とともに歩む訪問看護では、ときに家族の一員かのようにあたたかい言葉をかけられ、「また頑張ろう」と思える活力をもらえることも。そうした人とのつながりがたくさんできるのも訪問看護の魅力のひとつかもしれませんね。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子 

「褥瘡の評価とケアの実践」 対面実技セミナーレポート(12/7開催)
「褥瘡の評価とケアの実践」 対面実技セミナーレポート(12/7開催)
特集
2025年2月4日
2025年2月4日

「褥瘡の評価とケアの実践」 対面実技セミナーレポート(12/7開催)

2024年12月7日(土)に、帝人株式会社の東京本社にてNsPace主催の対面セミナー「褥瘡の評価とケアの実践」を開催しました。ご登壇いただいたのは、皮膚・排泄ケア認定看護師で、教育支援やコンサルティングのトップランナーとして活躍する岡部美保さん。デモンストレーションを交えた実践的なケア方法のレクチャーはもちろん、現場における不安や疑問解決につながる知識やリアルなテクニックを幅広くご講義いただきました。約4時間にわたるセミナーの様子をダイジェストでお届けします。 【講師】岡部 美保さん皮膚・排泄ケア認定看護師 在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に「在宅創傷スキンケアステーション」を開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 褥瘡の評価やケア方法のイロハを復習 まずは講義形式での学習。参加者の皆さんには、以下のセミナーレポートをあらかじめお読みいただいた上で受講いただきました。 過去に岡部さんにご登壇いただいたオンラインセミナーのレポート記事 写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 褥瘡の評価/セミナーレポート前編 写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 事例に学ぶ創部の見方/セミナーレポート後編 治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針~【セミナーレポート前編】 治りにくい褥瘡ケア~代表例と具体的なケア~【セミナーレポート後編】 講義では、褥瘡の定義や原因はもちろん、褥瘡状態の評価スケール「DESIGN-R(※)2020」について解説。特に評価に迷いやすい「G:肉芽組織」や「N:壊死組織」といった項目を評価する際のポイントや、外用薬・創傷被覆材選びの指標などを教えていただきました。「不良肉芽と壊死組織の見分けに悩む」「良性肉芽か不良肉芽か判断しにくい」といった不安に対しても、組織の硬さや色合い、見た目など、評価の具体的なポイントを解説いただき、参加者の皆さんは熱心にメモを取っていました。 褥瘡ケアにおいて重要な外用薬については、薬効成分だけでなく「基材」を考慮することも重要。また、創傷被覆材は「被覆材の大きさ、厚さ、吸水量などの特徴を理解した上で、創傷の状態に応じて選ぶこと」が基本とのこと。過去に開催されたオンラインセミナーの復習だけに留まらず、プラスαの知識も得られる贅沢な内容となりました。 より実践的な知識も解説された座学の時間 チームに分かれて症例の評価やケアを検討 座学の後は4人1組に分かれ、症例検討会が実施されました。【症例検討会の流れ】 具体的な症例に対する評価とケア方法を検討 創傷模型にケアを実施 上記の内容と理由を発表 岡部先生による解説 参加者には、療養者の資料や創傷模型、ケア用品などが配布され、まずはDESIGN-R2020を使った褥瘡の評価からスタート。「深さ(Depth)はd2(真皮までの損傷)かD3(皮下組織までの損傷)のあたりでしょうか」「サイズ計算は私が担当しますね」「壊死組織(Necrotic tissue)とポケット(Pocket)はないので、NとPは0点で良さそうですね」などと意見を交わし、お互いに協力し合いながら進めていきました。 外用薬は講義資料を参考に選定。講師の岡部さんから「外用薬は評価スケールの大文字に着目して、改善するための優先順位を考えながら選んでみましょう」といったヒントがあると、「やはりヨウ素系の外用薬ですよね」などとケア方法を確かめ合っていました。 評価スケールをもとに真剣にケア方法を協議 創傷模型を使ったケアの実践では、創傷被覆材やテープの厚さや大きさ、貼る位置を確かめながら丁寧に進めていました。「外用薬はこのくらいの量をガーゼに塗ってから貼るのが良さそう」「仙骨部の褥瘡の場合、肛門側は八の字貼りが良いのではないか」など、議論が活発に行われていました。 外用薬の塗り方や創傷被覆材の貼り方も検討 褥瘡の状態評価とケアが終わると、いよいよ発表の時間です。DESIGN-R2020の点数をはじめ、外用薬の選定理由やケアのポイントが各チームから発表されました。どの参加者も真剣に聞き入り、発表が終わると拍手が起きていました。 その後、岡部さんが評価とケア方法を解説。チームによって個性が出ていましたが、岡部さんの評価と大きくずれることはなく、外用薬の分類も岡部さんの選んだものと一致。 各チームの発表も先生の解説も真剣そのもの 前半の講義が活かしつつ、具体的な症例をもとに評価・ケア方法を検討し、ディスカッションすることで、褥瘡に対する学びをさらに深めていきました。 気づきの多いデモンストレーション 最後は岡部さんによるデモンストレーション。褥瘡周囲皮膚の洗浄や拭き方、外用薬の塗り方や創傷被覆材の当て方など、一連のケア方法を見せていただきました。 「洗浄料は何プッシュくらいすると思いますか?」という質問からスタートした実演は、いきなり参加者を驚かせる展開に。岡部さんは10プッシュ以上の泡を手に取り、多くの参加者が「泡はこんなに山盛りでいいんだ!」「こんなに使っていなかった!」などの声があがりました。また、ポケットがある方の洗浄方法やカテーテルの使い方、拭き方のコツまで丁寧にレクチャー。 食い入るように先生の手元を見つめる参加者の皆さん 外用薬の塗り方や量、臀裂部のケア方法、ワセリンの塗り方、患部を観察する際の注意点なども伝えられました。 参加者からは「褥瘡は治癒傾向なのに対し、ポケットが縮小しない場合のケア方法は?」「高機能な創傷被覆材を使用したいが、購入していただくのが難しい場合はどうすれば良いか」「褥瘡を繰り返している方で、皮膚に盛り上がりや凹凸がある場合のケア方法は?」などの具体的な質問が寄せられ、訪問看護現場での褥瘡処置に対する真剣な姿勢が感じられました。 参加者からの質問にも丁寧に回答する岡部さん 現場の「リアル」を語り合った懇親会 セミナー終了後は、懇親会も開催。参加者の皆さんから「状態にあった外用薬を処方してもらうには、担当医に対してどのように報告・相談したらよいか」「創傷被覆材を代用する場合、どのようなものが使用できるか」など、質問も多く挙がっていました。 NsPaceの「N」マークを作って記念撮影も ◆参加者の感想「DESIGN-R2020の重要性を改めて認識しました。セミナーを通して各項目の評価のポイントを学ぶことができて良かったです。これまで良性肉芽か不良肉芽か迷うことがあったのですが、具体的な判断の目安も知れたので、現場ですぐに活かせそうです」「この秋に新たに事業所を立ち上げて、管理や教育が必要な立場になったのでセミナーに参加しました。評価やケア方法を再確認する良い機会になったので、今日のセミナーを参考に、事業所の看護の質向上に努めたいです」 そのほかにも、「受講前は評価方法や外用薬の選定基準が曖昧でしたが、受講してみて不安が解決しました」「知識を得たことで、今後は根拠をもとに自信を持ってケアを実践できそう」といった声も聞かれました。 ◆講師 岡部さん コメント「普段から訪問看護の現場で褥瘡ケアを実践されている方々にご参加いただいたので、評価もケア方法の検討も非常に的確で、皆さまの日頃の看護風景が目に浮かぶようでした。肉芽組織や壊死組織の見分け方、炎症の有無など、参加者の皆さんが評価に悩まれているシーンもありましたが、評価スケールを日常的に使用することで、自身の評価の精度が向上します。ぜひケア方法を検討する指標としても、苦手意識を持たずに評価スケール を活用していただければと思います。また、私は今後、褥瘡の患者さんは増えていくと想定しています。看護の質を保ち、さまざまな職種がチームとなって、褥瘡に悩む患者さんを少しでも減らしていけると良いですね」 * * * NsPaceでは、月に1回程度、オンラインセミナーも開催しています。ぜひ学びの場をご活用ください。 ※ DESIGN-Rは、一般社団法人日本褥瘡学会の登録商標です。 取材・執筆・編集:高橋 佳代子

心温まるエピソード【つたえたい訪問看護の話】
心温まるエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2025年1月21日
2025年1月21日

心温まるエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護で利用者さんを支援していると、利用者さんやご家族の心情や感情を垣間見て心温まる瞬間があります。「みんなの訪問看護アワード2023」への投稿から、胸がほっこりするエピソードを5つご紹介したいと思います。 「みんなと“同じ“になるために。」 目標達成のため努力する利用者さんにエールを送りたくなるエピソードです。 10歳女の子の輝かしい第一歩のお話です。白血病に対する骨髄移植、重症GVHDに悩む女の子です。一般の小学校に通い、周囲のお友達と「同じように」を強く望んでいました。その一つが自転車に乗ることです。お友達と同じ場所や同じ速度感で遊べないことに、もどかしさを感じていました。練習を始めるも課題は多く、特に皮膚トラブルや免疫力の影響で一度でも転んでしまえば入院は免れません。転ばないよう注意しますが、手の巧緻動作や握力が十分でなく、ブレーキが上手くかかりませんでした。本人の強い想いと周囲のサポートにより、最後にはすべての課題を克服し自転車に乗ることができました。練習はとても大変で、「つらい…」と泣いてしまうこともありましたが、最後は笑顔で締めくくることができました。女の子はこの先も、周囲と「同じように」という大きな壁に次々とぶつかると思いますが、今回の成功体験を思い出し、前向きに生きて行くことを願います。 2023年1月投稿 「私を呼ぶ、あなたの声がきけた」 家族の強い愛情が通じ合う瞬間を感じ取れるエピソードです。 5月のうりずん(※)の時期、しとしと雨が降る中でMさんの訪問看護は始まった。Mさんは交通事故に遭われ、持病も重なり長く入院生活を過ごされた後で、ご家族の強い希望で自宅退院された。訪問が始まった時は、脈も早く、口呼吸をし、意識も朦朧としており、いのちの灯火は消えかけていた。Mさんとのコミュニケーションは難しく、声かけに頷いているか明らかでないことも多かった。ある日、それまでは少し遠巻きで見ていた父のことが大好きな長女さんに声かけをし、一緒にMさんの洗髪、足浴、清拭を行った。痩せ細り骨ばった父のからだに愛おしそうに触れ、涙しながら父に話しかけていた。そのとき、意識も朦朧としていた父がはっきりと娘の名前を呼んだ。その呼び声は娘への愛情に満ちていた。この時、この場面でしか出なかった声かもしれない。「こんなに安心して手厚い看護を受けられるなら、早く帰ってくればよかった。お父さん、ごめんね」。長女さんからは、涙がとめどなく流れていたが、どこか父に触れ、大切なことをしてあげられたことへの清々しい笑顔もあった。時期が遅かったかもしれない。しかし、その時間の中でできる最善を尽くす、それだけだ。 2023年1月投稿 ※編集部注:うりずん: 沖縄の古語で、春分から梅雨入りの頃までを指す 「やっぱりお風呂が1番」 乗り気ではなかった利用者さんの様子が変わっていく姿に、見守る私たちも思わず笑顔になってしまうエピソードです。 80代の男性の方でケアハウスに入所している方です。多発性筋痛症、認知症を患っている方でバイタル値は安定し室内は独歩、廊下や少し距離のある場所への移動はシルバーで移動していました。お風呂は週に一回は施設の大浴場で貸切で入っています。倦怠感や全身の関節痛は自制内で経過していますが面倒なことはあまり好きではない性格もあり入浴に対して少し億劫になることも時折見られています。私たち訪問看護師もそのお風呂介助に携わり、一緒に大浴場まで付き添い、背中や手の届かない部分の洗浄をお手伝いします。訪問時は入浴に対して乗り気じゃなく、今日はやめておこうと言われていましたが清潔への大切さや爽快感の話をすると渋々納得され一緒に大浴場へ移動していきます。そしていざ浴槽へ入るとそれまでに固かった表情がなくなり、すごい爽快感が溢れる表情へと変わりました。浴槽に入りながら歌も歌い、心地よい時間を過ごしており私も見守っていました。居室へ戻る時にはやっぱりお風呂が1番と言われ優しく癒された表情にホッコリしたエピソードでした。 2023年1月投稿 「夜空の花火」 利用者さんのご家族かのように思い出を共有する関係に心温まるエピソードです。 大きな家で1人暮らしのAさん。たくさんの薬を自己管理するのが難しくなったり1人でお風呂に入るのが危ない状況となり訪問看護が始まりました。Aさんは「娘ができたみたいで嬉しいよ。」と訪問看護の日をいつも楽しみにしてくれていましたが、「1人はさみしいよ。夕方になると本当にさみしい。」といつも言っていました。ある夏の日ステーションの携帯電話にAさんから電話があり、電話に出た看護師に「○○さん(担当の看護師)いる?」と。携帯に転送になっており、別の看護師が携帯当番なので「ここにはいないですよ。」と伝えると「なら○○さんに伝えて!空を見てごらん。花火がキレイだよ」と言い電話を切ったそうです。携帯当番の看護師が私に電話をくれ、電話の内容を伝えてくれました。Aさんの家から少し離れている私の家からは花火は見えなかったのですが、いつも1人でさみしい思いをしているAさん。「今日はキレイな夜空を見ているんだなぁ。」と花火は見えなくても心がほっこり温かくなりました。今は亡きAさん。夏の夜空に花火を見ると思い出します。 2023年2月投稿 「ちょうだいできた!」 日々の子どもの成長をご家族とともに喜べる微笑ましいエピソードですね。 顔を覗き込んで「こんにちは」と声をかけると、K君は小さなふたつの人差し指をペコリと曲げた。「こんにちは」のサインです。K君がコロナに感染するのが怖くて、外出は病院との往復のみ。補聴器と気管カニューレ、経管栄養の管理も家族だけで頑張っていました。2歳半を過ぎて「社会の中で普通に生きていってほしい」というご両親の思いから、私たちとの関わりが始まりました。K君は難聴で自閉傾向、偏食があり、食事テーブルにつけず、自分から何かしてほしいと伝えることもできませんでした。食事や人との関りを持てるように、K君のペースに合わせ、一緒にお気に入りの電車で遊ぶ、サインや絵カードで対話するなどし、日々、K君の心と体の状態をご家族と共有していきました。訪問看護を開始して数ヵ月、「ちょうだいできた!」とお母さんから連絡がきました。お母さんに空のマグを持ってきたそうです。来週には、春から幼稚園に通うための担当者会議をします。 2023年2月投稿 訪問看護師もまるで家族の一員 訪問看護の利用者さんはお子さんからご高齢の方まで幅広い年代の方がいらっしゃいますが、時には親のように、時には子どものように利用者さんと絆が生まれることもあります。日々の支援の中で、微笑ましい出来事や楽しい時間を共有することができるのも、訪問看護師としてのやりがいのひとつなのかもしれません。こうした心温まるエピソードを見ていると、「明日からも頑張ろう!」と力を分けてもらえる気がしますね。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子 

想いに寄り添うエピソード【つたえたい訪問看護の話】
想いに寄り添うエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年12月24日
2024年12月24日

想いに寄り添うエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護をしていると、利用者さんやご家族のたくさんの想いと向き合います。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、利用者さんやそのご家族の想いに胸が迫るエピソードを5つご紹介します。 「最期まで、妻・母・娘として生きたN子さん。」 末期のがんに罹りながら家族とともに懸命に生き、最期の場面でも家族を想う姿に胸が打たれるエピソードです。 63歳のN子さんは肺がん末期で骨転移等もあった。12月初めの退院前カンファレンスでは、クリスマスは迎えられてもお正月は厳しい、と告げられていた。自宅に戻る際も頸部・体幹のコルセットは外せず、不本意ではあるが夜間はおむつ内で排泄するよう指導されていた。しかし、63歳という年齢、夫にも気兼ねがありコッソリと夜間もポータブルトイレに座っておられた。クリスマスが過ぎお正月が過ぎ、期待と不安を抱え桜の季節を迎えた。担当ケアマネから、近所の川沿いにある桜並木の下でお花見をさせてあげたい!と声が上がり、ご主人・ヘルパー・看護師・ケアマネとともに小春日和の中、ゆっくりと桜の下を車いすで散歩することができた。その後、「最後になるかも知れないけれど、家族のために料理がしたい。お風呂に入りたい」とご本人から希望があり、短期間であったが調理や入浴をすることができた。秋が過ぎ骨盤に転移した腫瘍が急激に大きくなり、みるみる体調は悪化傾向になっていったが、お酒の好きな夫の健康を気遣い、高齢のご両親より先に逝くことを詫び、夏に生まれた孫の成長を楽しみに、初冬、最期まで弱音を吐かず笑顔の素敵な母の姿を残して旅立たれた。 2023年1月投稿 「涙あり、笑いあり、そんなお看取り。」 故人との別れに悲しみもある中、家族総出でのお見送りの準備に愛情が感じられるエピソードです。 最期が近いAさん。お正月というのもあって娘様家族が来ている。同じ空間にベッドで寝ているAさん。とても穏やかな時間が流れていた。Aさんは声掛けに「はい」と吐息で答えてくれる。何か言いたげだが言葉にならない。(今日中かな…)そう思いながら明日も訪問することを伝え退室。その日の夜、ご家族から「息が止まりました」と連絡が入った。私は車で向かう。到着すると家族に見守られながら眠っているAさん。娘様は涙を流している。湯灌の予定だったが、それが高いことを知り、急遽フルエンゼルケアをさせていただくことに。お孫さんも含め全員で行った。みんなで役割分担しながらあーでもない、こーでもないと言いながら娘様を中心に。そこには涙は無くて笑顔が溢れていた。うるさすぎて奥様に怒られるほどだった。最後に奥様に口紅を塗ってもらったが、グロスだったのかな?「女装したみたいになったね」と笑い合う。ご家族に囲まれて幸せだなぁ。 2023年2月投稿 「患者の最期の願いを叶えた自宅での看取り」 最期に願いを叶えられた利用者さんの心からの感謝が胸に響くエピソードです。 私は訪問看護ステーションに配属された新人訪問看護師。肺癌の診断で自宅療養中のA氏から訪問看護利用の依頼があった。呼吸苦はあるが園芸の話をする、好きなサイダーを飲む等病状は安定していた。1ヵ月後、病状は増悪し「30年かけ作った庭をもう一度見たい。ほかに思い残すことはない。」と言葉が聞かれるようになった。自宅前に本人が作った庭があった。願いを叶えるためケアマネ、家族と協力しスロープと車椅子を準備した。当日本人から「体調が悪い、庭へ行くのは諦める。」と電話があった。短時間で行えるようがんばるので庭を見ましょうと励まし私、ケアマネ、家族で本人を庭へ移動した。涙を浮かべ「庭を見られて良かった。ありがとう。」と言葉が聞かれた。翌日、肺から出血し麻薬投与が開始され家族に見守られながら永眠された。後日訪問時、香典返しの挨拶状に庭を見た日のことが記載されており庭を見た後「幸せな人生だった。」と話していたことが分かった。 2023年2月投稿 「思い出の一場面」 ひとりでも自宅にいたいと思う利用者さんの気持ちが伝わってくるエピソードです。 24時間緊急対応の当番は電話が鳴るとビクビクする。何年やっていても緊張する。そんな中、Aさんからの緊急電話はなんだかホッとしてしまう。よく緊急電話をかけてくるAさん。尿カテトラブルが多く、呼ばれるのは大抵尿漏れ。夕飯時に呼ばれることが多く、またかぁ、という気持ちになるけれど、「こんな時間に悪いねぇ。」と申し訳なさそうに言うAさんの顔を見ると、そんな嫌な気分は吹き飛んでしまう。ある時、いつも通り夜に呼ばれて処置をしていると犬の遠吠えが聞こえてきた。そこから、かつてラブラドールを飼っていたと話し出すAさん。奥さんも子どももいて、よくラブラドールを家の庭で走らせていたという。「家の周りぐるぐる回るんだけど、曲がり損ねて転んじゃって。妻と大笑いしたよ。13年間、楽しませてもらったよ。」と嬉しそうに話すAさん。楽しい話なのになんだか切なくなり泣きそうになってきた。広い家に一人暮らしのAさん。話を聞いていて、楽しかったころの情景がパッと頭の中に浮かんできた。思い出たくさんの家で、少しでも長く過ごせるようお手伝いしていきたいと切に思った出来事だった。 2023年2月投稿 「優しく切ないけれど、温かい話」 相手を想うからこその奥様の配慮と、その優しさに気付きながらも配慮したご主人。どんな時でもお互いを想い合う夫婦に胸が温かくなるエピソードです。 ALSの60代男性。点滴加療の入院中に、可愛がっていた小鳥が突然死んでしまいました。奥さんと子どもは「とても可愛がっていたので、悲しんで気落ちすると病状も進行してしまう」と心配しました。そこで退院までに同じ種類の小鳥を手配して取り繕うことにしました。皆ハラハラしましたが、ご主人は亡くなるまで特に変わりなく小鳥に接していたので安心していました。初盆参りの時に奥さんは「小鳥が変わっていたことに本当は気が付いていたと思います」「主人にもっと優しく接することができたら良かったのに」と涙を流されていました。それから1年と経たないうちに、奥さんから私を看取って欲しいと驚きの連絡がありました。末期の肺がんでした。3ヵ月後、気丈で美しい最期を子どもさんとともに看取らせていただきました。命の儚さについて、改めて考えさせられた小鳥とご主人、そして奥さん。きっとどこかで再会しているはずだとスタッフ一同、信じています。 2023年2月投稿 利用者さんとそのご家族の想いを支える 今回は、投稿者の皆さんが利用者さんを大切にする姿勢が垣間見えるお話ばかりでした。訪問看護では、利用者さんやそのご家族の立場、背景、想いなどをくみ取って理解し、それぞれにあった支援をしていくことが求められます。正解がわからず模索するケースも多い中で、勇気づけられるエピソードですね。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子 

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
特集
2024年12月24日
2024年12月24日

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ コミュニケーション、栄養、口腔ケアetc.

訪問看護では、認知症の利用者さん・ご家族との関わりも多いですよね。NsPaceでは、これまで認知症に関連する多くの記事やセミナーをお届けしてきました。今回は、知りたい情報にアプローチしやすいように、記事をピックアップしてご紹介。気になる記事からチェックしていただき、日々の看護に役立てていただけたら嬉しいです。 「認知症」疾患の知識を深める! 認知症という病気がもたらす事象の原因や理由を理解することで、対応が変わり、できることが増えます。利用者さん・ご家族への貢献度が上がることはもちろんのこと、日々の看護の喜びも増えるはず。ケアする側のこころの状態が相手に大きく影響するので、好循環が生まれます。 【在宅医が解説】「認知症」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 認知症の鑑別、認知症以外の可能性や治る認知症を見逃さない、悪化させないなどの視点で、わかりやすく解説いただいています。 また、鑑別に役立つ「せん妄アセスメントシート」を以下記事にてご紹介しています。ぜひご活用ください。>>せん妄への対応【精神症状の緩和ケア】 「高齢者のうつ病の特長」などについて解説されている以下の記事もおすすめです。>>【在宅医が解説】「うつ病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 【セミナーレポート】看護師が意識したい7つのポイント -在宅で行う認知症看護-   講師の福岡裕行さん(認知症看護認定看護師)の優しい言葉と関わりが心に染みる記事です。ポイントがわかりやすく紹介されていて、「すぐにやってみよう!」と楽しみになる内容です。後編では、「認知症患者を支えることは、その家族の心を癒すこと」という言葉が印象的。Q&Aセッションも学びが深まる内容です。あわせてお読みください。>>セミナーレポート後編【セミナーレポート】ご家族とのかかわり方 -在宅で行う認知症看護- 高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~【セミナーレポート後編】 高齢者の栄養管理を専門とする医師の吉田 貞夫先生にご登壇いただいたセミナーのレポート記事です。認知症の方に対しての具体的な食事支援や認知症予防につながる食事について学ぶことができます。 事例を通じてケアを磨く! 認知症のある方やそのご家族へのケアは多種多様。事例を通じて、引き出しを増やしていきましょう。 認知症のある患者さんに接するときの7か条(前編)   シリーズ「認知症患者とのコミュニケーション(全12回)」の第1弾の記事です。シリーズ第1回~2回では認知症患者さんと接するときのポイントを、第3回~12回では、「言葉による返事がない」「物盗られ妄想がある」など、ケースごとにケアのポイントを解説いただいています。実践に生かせる内容なので、興味のあるテーマから学んでみてください! >>認知症のある患者さんとのコミュニケーションシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/dementia-patient-communication/ 自己流の介護を続ける家族への関わり【家族看護 事例】 認知症のある利用者さんのご家族は、複雑な心情や多くのストレスにさらされているからこそ、訪問看護師との関係性が難しくなってしまうこともありますよね。本記事では、「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」を用いた事例解説を通じて、訪問看護ならではの家族看護について学ぶことができます。 認知症と義歯の関係 認知症があると口腔ケアに難色を示されることや意思の疎通が難しい状況で効果的なケアが行えないこともありますよね。咀嚼機能が回復した事例を通して、工夫のしかたを学べる記事です。 高齢者の頭の体操10選 脳トレに期待できる効果や方法について解説 脳トレや「脳トレ+運動」で、認知機能の向上、身体機能の向上が期待できます。具体的な方法と効果についてご紹介しています。利用者さんが楽しめるケアのヒントになれば幸いです。 「上手く伝えられない」に対応する! 認知症では、辛さや症状を上手く表現できないからこそ、看護師が異常を察知し、適切に評価できることが求められます。場合によっては表現通りの意味とは限らない訴えや拒否をいかに捉えられるかが重要です。利用者さんの価値観をおもんぱかるために、見識を拡げていきましょう! 悪性消化管閉塞への対応【がん身体症状の緩和ケア】 認知症の終末期は、症状マネジメントに苦慮しますよね。事例をとおして、悪性消化管閉塞について学びつつ、認知症の在宅看取りについてイメージを持てる記事です。 大学教授が解説!大量嘔吐でイレウスが疑われる場合のアセスメント 「イレウスの既往のあり、認知症が進み、自分からは訴えられない方が大量に嘔吐…。あなたはどう考えますか?」という事例とおして、フィジカルアセスメントについて学べる記事です。なお、このフィジカルアセスメントシリーズは全12回です。ほかにも『認知症のある患者さんが「転んだけど大丈夫」と話している場合』など、認知症の方の事例解説がありますので、あわせてご覧ください。 >>訪問看護のフィジカルアセスメントシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/physical-assessment/ もしかしてネグレクト? 訪問看護師は虐待疑いにどう対応すべきか 虐待が疑われる場合、どのように行動すればよいか。状況に合わせた慎重な対応が求められ、特に認知症が疑われる場合は、判断が難しくなることもあります。このようなセンシティブな状況では、多角的な視点で考え、細心の注意を払った言動が求められます。本記事は、弁護士の外岡潤先生に解説いただいた、法律・制度を踏まえた事例解説記事です。訪問看護に発生する義務は何か?という点も含めて確認しておきましょう。 * * * 認知症のある方は、今後もますます増加すると予測されています。地域を支える訪問看護師のサポートへの期待もさらに高まっていくでしょう。認知症のある方が幸せに生きられる社会になるヒントは、日々のケアの蓄積の中から見出されていくようにも感じます。NsPaceでは、今後も日々の学びの機会を通して、訪問看護に携わる皆さまの力になる企画を提供していきます。 執筆・編集: NsPace編集部

人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】
人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】
特集
2024年12月17日
2024年12月17日

人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】

2024年11月17日(日)の日本在宅看護学会 第14回学術集会では、NsPaceの運営元である帝人株式会社が共催し、ランチョンセミナー「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」を実施しました。座長に山本 則子氏、演者(ファシリテーション)に長嶺 由衣子氏をお迎えし、「第2回 みんなの訪問看護アワード」の受賞者のお二人とともにトークセッションで盛り上がりました。当日の内容をダイジェストでお届けします。 座長:山本 則子氏 東京白十字病院、虎の門病院に勤務した後、東大大学院医学系研究科修士課程修了。米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)nurse practitioner programを修了。現在、東京大学大学院医学系研究科 教授。公益社団法人 日本看護協会 副会長。   演者:長嶺 由衣子氏沖縄県 粟国島で離島医療に取り組んだ後、東京や英国で地域医療、公衆衛生、社会疫学を学ぶ。東京科学大学(旧:東京医科歯科大学) 公衆衛生学 非常勤講師。厚生労働省 老健局老人保健課 課長補佐。訪問診療医。新田 光里氏第2回 みんなの訪問看護アワード 審査員特別賞受賞。@(あっと)訪問看護ステーション 訪問看護師。幼い頃体が弱かったことをきっかけに看護師を志す。救急救命士の資格を習得して病院の救急部門で働いた後、在宅看護の重要性を感じて訪問看護の道へ。日高 志州氏第2回 みんなの訪問看護アワード 入賞。ひだかK&F訪問看護ステーション 訪問看護師。病院の救命センターで働き、救急看護認定看護師資格取得。慢性疾患の急性増悪や終末期の患者さんを看護する中で在宅看護の重要性を感じ、訪問看護師へ。 ※プロフィール情報は、2024年11月時点。※本文中敬称略。 訪問看護の魅力・やりがいとは? 山本: 今回は、「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」をメインテーマに、訪問看護の現場で活躍されているお二人のお話を伺います。訪問看護は、利用者さんの生活や価値観に深く触れるケアが求められる分野です。具体的なエピソードも交えながら、その魅力や課題についてざっくばらんにお話ししていきたいと思います。では、長嶺先生お願いします。 長嶺: ありがとうございます。最初のテーマはこちらです。訪問看護師の新田さん、日高さんの考える訪問看護の魅力について教えてください。 新田: はい。訪問看護は毎日新しい経験の連続で飽きることがありませんし、多様な利用者さんと深く関わることができる点が魅力だと感じています。私は元々病院の救急部門で働いていたのですが、訪問看護は「利用者さんに関わりたい」と思ったら、どこまでも深く看護ができる仕事だと思っています。 日高: 私も以前は救急の仕事をしていたのですが、訪問看護は救急の経験を活かしやすい点も魅力だと思っています。ちょっとした変化を早期に察知し、医師に繋いで状態の悪化を防ぐことができると、やりがいを感じます。 また、多様な働き方ができる点も魅力です。副業や起業をしながら訪問看護をされている方もいますよね。 長嶺: ありがとうございます。 たまたまですが、救急経験のある人が集まりましたね。実は、私が沖縄で離島医療をしていた際、日高さんと一緒に働いていたことがあるんです!日高さんがフライトナースをされていて、ドクターヘリで飛んできてくださいました。まさか訪問看護師さんとしてお会いすると思いませんでしたね(笑)。 では、座長の山本先生も、訪問看護の魅力に関するお考えをお聞かせください。 山本: そうですね。審査員として「みんなの訪問看護アワード」のエピソードを読んでいても、改めて訪問看護には「究極の個別性」があると感じます。利用者さんがどんな生き方をしてきて、残された時間をどんな風に過ごしたいと思っているのか。ご本人が必ずしも意識していないようなところまで入り込み、希望される生き方や想いを実現するところまで入っていくのが訪問看護です。「訪問看護師はここまでできるのか」と驚くことがとても多く、そこが魅力だと思います。 長嶺: ありがとうございます。私が行っている訪問診療にも通じるものがありますね。 病院では「点」でしか患者さんと関われないように感じますが、訪問診療では地域の方々やご家族との関わりもあって「面」になり、だんだんと「立体」になっていくようなイメージを持っています。訪問看護・訪問診療ともに、そういった点は魅力ですよね。 エピソード1:「100年ぶりに入浴したU子さん」 長嶺: ここからは新田さん、日高さんが「第2回 みんなの訪問看護アワード」で受賞されたエピソードをもとに、お話を伺っていきたいと思います。まず、こちらが新田さんのエピソードです。事業所の所長さんの言葉をきっかけに心持ちの変化があったと思いますが、その点はいかがでしょうか。 「100年ぶりに入浴したU子さん」(投稿者:新田 光里) ・関連記事受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 新田: はい。それまでは「入浴・内服管理の依頼を達成しなければ」という問題解決思考で考えていたのですが、所長の言葉を機に、「ケアの達成度合いは一旦置いておこう」「まずはU子さんと信頼関係を築こう」と思ったんです。 そこからは、私が訪問看護師だと理解していただくために、仏壇の横に私の写真を飾る、なんてこともしました(笑)。 久しぶりに入浴され、「う~ん、気持ちいい!100年ぶり!」とおっしゃったU子さんの笑顔は、私にとって忘れられない瞬間です。 日高: このエピソード、とても感動しました。利用者さんの心を開くまでのプロセスが本当に丁寧で、新田さんの根気と工夫が伝わってきます。 長嶺: 日高さん、涙ぐんでいますもんね…!これは、医療従事者の成長過程の「あるある」ではないかと思います。医療者自身が「主語」になるのではなく、患者さん・利用者さん等の相手を主語にしたときに、「そうか、ご本人にとっては〇〇のほうがいいんだ」といった気付きがあると思うんです。 U子さんはすでにお亡くなりになっているそうですが、今回のテーマである「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」という点については、いかがでしょうか。 新田: はい。実はU子さんはその後ずっとお風呂に入れたわけではなく、私が子どもの発熱で急遽担当が変わった日を境に、また入れなくなってしまい…。認知症の利用者さんをケアする難しさを感じました。 でも、訪問看護師が中心になって、状況にあわせてケアプランの変更を相談し、寝たきりになっても、歯がなくても最期まで好きな桃のゼリーを召し上がるなど、多職種で協力しながらケアを行いました。U子さんの「家で逝きたい」という願いを支えられたのではないかと思っています。 長嶺: ありがとうございます。 利用者さんと深く関われていると、自然と願いに沿ったケアができる、そんなお話を伺えたように思います。山本先生、いかがでしょうか。 山本: はい。エピソードについては、地道に関係性を築いていき、1年経ってからおもむろに発した一言がヒットしたという部分に「技」を感じましたし、とても感動しました。 また、担当が変わって入浴できなくなったとのことでしたが、これは認知症のある利用者さんだったから、ということだけが理由ではなく、おそらくU子さんがお風呂に入るにあたって新田さんが実践した上手なアプローチ方法、ノウハウがあったんだと思うんです。今後、そういったノウハウを言語化して共有できれば、担当が変わってもうまくいくかもしれません。 新田: ありがとうございます! エピソード2:「最期の友人」 長嶺:続いては、日高さんのエピソードです。この利用者さんは最終的に施設に入ることになったそうですが、当時の心境や経緯について教えてください。 「最期の友人」(投稿者:日高 志州) 日高: この利用者さんは、ご家族とは疎遠になっている一人暮らしの方でした。退院後もお酒を飲んだり、スナックに行ったり…という生活を続けていたのですが、次第に体が動かなくなり、楽しみが減っていってしまったんです。訪問看護やヘルパーの支援があっても、一人の時間をすべて埋めることはできず、ご本人が心細く感じるようになって、施設入所を選択されたという経緯です。私は、在宅看取りのみが最善の選択とは限らないと考えているので、この利用者さんにとって一番いい選択は何か、たくさん話し合って検討しました。 長嶺: ともすると、感情移入をして「在宅でずっと看たい」という気持ちになることもあると思いますが、「ご本人にとって何が一番いいのか」を最優先にして、ディスカッションしてこられたんだなということがよくわかりました。 利用者さんが笑顔で施設に行かれた描写が印象的でしたが、「最期までこの方が豊かに生きる」ということに対してのヒントを教えてください。 日高: この利用者さんは、深刻な場面もおちゃらけた様子で切り抜けるような性格の方で、真面目に問いかけても冗談で返されることが多かったんです。なので、こちらも冗談で応じながら親しくなり、徐々に価値観や想いを引き出せるよう努めました。深刻になりすぎず、「その方の世界」に寄り添うアプローチが、結果的によかったのではないかと感じています。 山本: この方は、ご家族とも疎遠ということなので、元々は「一人でよい」と考えていたのですよね。しかし、晩年に日高さんに対して「最期の友人」とおっしゃったことから、心のどこかで友人や仲間を求めていたのではないかと感じました。その想いを最期に実現させた日高さんの存在は非常に大きく、「最期まで豊かに生きる」ことを支えたことが感動的です。 長嶺: 本当ですね。私は医師なので「先生」と付けられると距離を感じることもありますが、看護師さんも一定の距離を取られがちなところを、「友人」と表現されたところはすごいと思います。 利用者さんやご家族の意思を尊重するために大切なこと 長嶺: ここからは、利用者さんやご家族の意思を尊重するために大切なことは何か?について、ディスカッションしたいと思います。新田さんいかがですか? 新田: 難しいテーマですが、「その方がどのように生きてこられたか」「どんな最期を迎えたいのか」を理解することを大切にしています。利用者さんがお話できる場合は極力丁寧に耳を傾け、生活歴やサマリーから背景を想像する…ということを訪問のたびに行っています。 日高: 私も同じです。時間が許すなら、できるだけ「どんな最期を迎えたいですか?」などと直球で質問することはせず、雑談から自然にご本人の価値観を引き出すよう心がけています。 長嶺: 確かに、直球で聞かれて明確な答えが返ってくることは少ないですよね。 私自身が当事者だったとしても、看取るご家族をはじめ「残される人たち」のことを考えると即答できませんし、一人では決められません。 山本: そうですね。多くの人はご自身の最期について明確な希望をもっていませんし、誰しも死ぬのは初めてなので、イメージもできません。だからこそ、看護師が選択肢を伝えることで、利用者さんのやりたいこと、できることが広がりますよね。例えば、「もうお風呂には入れない」「散歩ができない」と考えている方に、「できる」とお伝えできるケースもあります。これも大切なことではないでしょうか。 また、洗髪や足浴等をする際、目線は必ずしも合っていなくても、体をタッチしていますよね。そんなときに、何気なく利用者さんから出る言葉が重要なような気がしているんです。それを聞き出すことができるのは、看護の強みだと思いますね。 長嶺: 確かに、具体的な提案を通じて意思決定を支えることは重要ですね。また、「触れ合いながら引き出す」アプローチは、なかなか医師には難しく、看護師さんならではのアプローチだと感じます。日高さん、いかがですか。 日高: はい。訪問回数が多い分、看護師は怒り、悲しみ、苦しみなどを打ち明けられることが多いと思いますし、山本先生がおっしゃるように、リラクゼーションやタッチングをしながらお話を聞くと、最初はとてもいらだっていた方の感情がスーッとおさまったり、急に昔の話をしてくださったりする経験をしたことがあります。これは本当に看護師だからこそだと思いますし、私もそういうケアを大切にしたいと思っています。 山本: そうですよね。 また、私は「尊厳を保つ」ことがとても大事だと思っており、看護だからこそできることがたくさんあると思っているんです。清潔を保つこと、症状をマネジメントすることは、ケアや医療として大事であると同時に「尊厳を守る」ことでもあるんです。 「尊厳を保てないぐらいだったら、私を生かしてくれるな」というような発言を利用者さんから聞くことがあるくらい、人の尊厳は大事だと言えますし、人生の最終段階で本当に自分でできることがなくなったり、症状が強くなったりしたときに、看護の強みが発揮されると思っています。私たちはそういった仕事ができることを誇りに思ってよいと思うんです。 長嶺: ありがとうございます。 本当に在宅医療の現場は自分が持っているものをすべて総動員しないといけない場ですし、皆さんもそこにやりがいや魅力を感じていると感じました。 さて、早いもので終わりが近づいてまいりました。皆さん、素敵なセッションをありがとうございました。 こういった学術集会では学術的な発表はもちろん大切ですが、全国から同じ現場を共有できる方々が集まる場なので、今回のように感情面を共有することも非常に大切だと感じました。訪問看護の魅力を伝えるためには、皆さんが「なぜ訪問看護をしているのか」、その根底にある想いや教育課程では教わらなかった人と関わる上での工夫を共有できる場も大切だと思います。最後に、皆さんのご感想もお聞かせください。 日高: 山本先生、長嶺先生とディスカッションさせていただける大変貴重な場でした。ありがとうございます。 全国で働く訪問看護師の皆さんは、それぞれ素敵なエピソードを持っていると思うので、ぜひ皆さんのエピソードも伺いたいと思いました。 新田: ありがとうございました。こういった学術集会の場に来ると、訪問看護業界を牽引する方々がビジョンを描き、課題解決のために動いてくださっていることを実感します。また、ディスカッションを通じて、改めて自分にできることを日々一生懸命実践していきたいと思いました。 山本: 私も、改めて訪問看護の持つ力の強さを感じました。訪問看護の魅力が、一般の方々も含めて多くの人に伝わればよいなと思います。 * * * 本ランチョンセミナーは、立ち見が出るほど盛況で、参加者の皆さまは熱心に耳を傾けていました。会場にお越しくださった方々、ありがとうございました。 受賞者の皆さまをご招待する「みんなの訪問看護アワード」の表彰式では、このように訪問看護の未来について意見交換するトークセッションや懇親会の場も提供しています。 皆さまのご応募をお待ちしております!>>みんなの訪問看護アワード特設ページはこちらみんなの訪問看護アワード2025 執筆・編集: NsPace編集部

在宅TPPV療法中の看護 観察ポイントや呼吸ケア、栄養管理、外出支援
在宅TPPV療法中の看護 観察ポイントや呼吸ケア、栄養管理、外出支援
特集 会員限定
2024年11月26日
2024年11月26日

在宅TPPV療法中の看護 観察ポイントや呼吸ケア、栄養管理、外出支援

呼吸ケアにより生命の安全が確保できると、日常生活は安定していきます。その先にある、その人らしい生活や自己実現に、療養者さんやご家族が目を向けられるよう、在宅での支援を模索し続けることが大切です。今回は在宅でのTPPV(気管切開下陽圧換気)療法の看護のポイントやコツについて解説します。 安全・快適に過ごすための観察ポイント ベッド周りや物品配置などの環境調整 退院当初は、療養者さんの生活の場を考慮してベッドの位置、周辺環境を調整します。よく使用する吸引用具や気管カニューレ、蘇生バッグ(バッグバルブマスク)などはベッドサイドに誰もがわかるように整理しておきます。移動が簡単にできるようカートにまとめて整理されている方もいます(図1)。 図1 ベッドサイドのカートの例 家族の手技や健康状態 退院当初は手技獲得のための支援を行いますが、慣れてくると徐々にご家族のやりやすい方法に変化していきます。ご家族のちょっとした言動や療養者さんの訴えから、「吸引圧が40cmH2Oを超えていた」「吸引時間がやけに長い」「経管栄養注入時間が異様に短い」等に気づくこともあるでしょう。ご家族を否定せず、なぜその方法に変化したのか背景を把握しつつ安全な支援方法に修正していきます。 医療依存度の高い療養者さんの支援は介護負担が大きくなるため、ご家族の健康状態や疲労にも目を向けて観察します。 医療機器の管理状況 安全対策のため、次の点を確認します。 呼吸器回路をはじめとしたチューブ類がギャッジアップ時にベッド柵に挟まったり引っ張られたりしてないか固定方法は安全か吸引器・呼吸器などのコンセントの差し込みプラグがゆるんでないか電源ランプがついているか など 特に呼吸器や吸引器を移動する頻度が多い方は、気付かないうちにコンセントの接続がゆるみ、内部バッテリーに切り替わり、突然電源が切れるといったことが起こり得ます。ヘルパーさんやご家族とヒヤリハットを共有し、事故防止につなげましょう。トラブル発生時の対応や連絡先をすぐ分かるところに掲示する工夫も大切です。 療養者の表情や言動、全身状態、呼吸状態 療養者さんの表情や言動、バイタルサイン、視診、触診、聴診、痰の性状や胸郭の動き、浮腫の有無などの全身状態、呼吸状態を観察します。圧管理であれば、モニター表示を見て、最高気道内圧(peak inspiratory pressure:PIP)、1回換気量(Vt)や分時換気量(Mv)、呼吸数等の実測値を確認します(図2)。発熱や何か苦しさを感じる時には呼吸数の変化やVt・呼吸パターンの変化が生じますが、普段の実測値を把握しておくことで変化に気づけます。 図2 呼吸器のモニター表示の例 圧管理では赤枠で囲んだ項目の実測値を確認する。モニター画面の緑色のバーは気道にかかる圧力をリアルタイムで表示している。青色のラインはPIPを示し、現在の圧力は12.9hPaで吸気中であることを示す 例えば、呼吸器回路のわずかな振動や音、触診による胸骨周囲でのラトリング(胸壁の振動)、Vtのわずかな減少、療養者さんの表情で痰吸引のタイミングが分かることもあります。 また、痰がつまってくるとPIPの上昇やVtの低下が見られることもあります。胸郭や肺が徐々に固くなることでも少しずつPIPが上昇しVtが低下します。呼吸数が上昇しMvを維持しますが、それも徐々に低下していきます。 このような長期的な変化は呼吸器のログデータからも把握できますが、その兆候が分かれば早めに対応策を検討できます。グラフィック波形では気道の状態や呼吸器との同調など今の呼吸状態を推測できます。 人工呼吸療法は、換気量の維持と酸素化の改善により安楽な呼吸を支援するものです。ただ、長期療養により人工呼吸器関連肺損傷(ventilator-induced lung injury:VILI)などの弊害も出てきます。呼吸器を使用しているのに苦しい状態を作り出さないよう呼吸の変化を観察し、異常を早期に発見し対処できるように取り組みます。 呼吸ケア:唾液処理、排痰支援、痰の硬さ調整 気道クリアランスケアにおいて重要なのは唾液処理と排痰支援、痰の硬さの調整です。 唾液を吸引する低圧持続吸引器(図3)や痰吸引器(図4)を活用し、唾液や痰の垂れ込みをできる限り予防します。 図3 低圧持続吸引器 図4 痰吸引器 商品の例:アモレSU1(画像提供:トクソー技研株式会社) 排痰補助装置の使用により、痰の喀出を助け、深呼吸代わりにしっかり肺を膨らますケアにつなげます。神経難病患者では、肺や胸郭の柔軟性を維持するために呼吸のリハビリテーション機器(図5)を活用している方もいます。看護師が訪問した時に積極的に身体を動かし、さらに訪問リハビリテーションによる呼吸リハや身体リハにも積極的に活用します。 図5 呼吸のリハビリテーション機器と実際のリハビリテーションの場面 機器の例:LICトレーナー(R)声をかけて人工呼吸器を外し蘇生バッグで加圧する。圧は医師の指示のもと、40cmH2Oまでかけて息止めを3~5秒実施。その後、呼気ラインを解除し、息を吐いてから呼吸器を装着し、呼吸を整える。1日数回実施している*写真は療養者さんご本人・ご家族の同意を得て掲載しています。 これらの専門性を活かしたケアのほかに、ベッド上で側臥位にしたり、ギャッジアップで身体を動かしたりします。また、車椅子移乗をはじめとした離床は痰を動かし胸郭を広げるケアにつながると考え、生活の中に取り入れるよう提案しています。 痰が硬い場合は、加湿の調整や水分量・薬剤調整を検討します。 できるだけカフ圧計を使用してカフ圧を管理し、合併症を防ぐことも大切です。 長期人工呼吸管理が必要なALS(筋萎縮性側索硬化症)の療養者さんの中には、胸郭の柔軟性低下によりPIP上昇やカフリークといった対応困難な症状を生じる方がいます1)。積極的な呼吸ケアがこれらの症状緩和の一助となり、VILIのリスクを少しでも予防することができるのではと考えケアを継続しています。 栄養管理:過剰な栄養の回避、摂取カロリーの減量 在宅でのTPPVによる人工呼吸管理は、主に慢性期の支援になります。ALSにおいては発症初期〜進行期は体重減少が独立した予後予測因子となりますが、人工呼吸管理期は過剰な栄養の回避、摂取カロリーの減量が必要です2)。TPPV療法の導入後、そのままの栄養量で在宅療養を継続していると、体重が急激に増えていく場合があります。定期的な採血や体重測定などにより、栄養状態を評価し、栄養量を訪問診療医や管理栄養士と相談していくことが必要です。 入浴支援:他職種や関係機関との協働が大切 在宅では、入浴支援は訪問入浴を活用します。入浴スタッフが3名で訪問し、持参した浴槽で入浴をサポートします(図6)。入浴に訪問看護師が同席するわけではありませんが、その時間帯にご家族が休息を希望される場合や、呼吸や全身状態が不安定な状況により入浴スタッフが不安を感じる場合は同席しています。 入浴は療養者さんにとって楽しみの1つですが、特に終末期が近くなると体調が安定せず入浴できる機会が減ってしまいます。療養者さんやご家族の意向を汲み取り、少しでも安楽への支援の1つとなるよう関係機関と恊働しています。 図6 入浴時の様子 呼吸器につないだ状態で入浴の介助を行う。入浴中にご本人の訴えが分かるように文字盤をそばに置くようにしている(写真では机の上にある)*写真は療養者さんご本人・ご家族の同意を得て掲載しています。 外出時の支援:移動方法や物品、人手を確認 外出はご家族やヘルパーさんと行うことが多く、持参物品、機器類の管理、呼吸トラブル時の対応などを想定し指導を行います。 療養者さんが初めて外出する場合、車椅子移乗動作を支援します。ほかに、室内廊下のクランクに車椅子が通るのか、階段の昇降方法など部屋から道路までの動線を確認します。公共交通機関を使用する場合は乗車場所の確認や支援依頼のための事前連絡などが必要となります。 持参物品も人工呼吸器、吸引器などの医療機器類が多くを占めます。呼吸器のバッテリー耐用時間を確認し、外出時間により予備の外部バッテリーの準備、それ以上の時間を要する場合は携帯型の蓄電池を準備します。 また、外出先や外出時間によって支援者の人数がどの程度必要か、ご家族やヘルパーさんと相談します。 コミュニケーションの実際 まずは安全のために誰かを呼べる手段を確立します。手足が動けばスイッチやボタンを設置します。身体を動かせない療養者さんの場合、視線入力装置やピエゾセンサーを活用します。中には呼吸器のアラームを鳴らしてコール代わりにする方もいます。 近年は、さまざまなコミュニケーション手段が増えましたが、ケア中は処置をしながらコミュニケーションをとることが多く、原始的な透明文字盤や口文字盤を活用します。ただ、ALSの療養者さんの場合、病状が進行すると眼球の動きを捉えづらくなります。療養者さんがよく希望されることをまとめた文字盤に切り替えますが(図7)、それも難しくなると「はい」「いいえ」で微かに反応のある方で意思確認を行います。表情や呼吸数、Vt、脈拍などの変化から普段と違う「何か」を読み取ります。 コミュニケーション手段を活用できない療養者さんの意思を汲み取るため、それまでの関係性から、「この場面ではこれを希望することが多かった」「このような反応を示していた」など、推測することも多くなります。療養者さんと支援者の信頼関係の構築により成り立つコミュニケーションがとても大切になると感じています。 図7 文字盤の例 療養者さんがよく希望することをまとめてオリジナルの文字盤を作成している 執筆:温盛 由紀子あい訪問看護ステーション平尾 所長監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長編集:株式会社照林社 【引用文献】1)芝崎伸彦,小西かおる,宮川哲夫.「長期人工呼吸、合併症とその対応(ALSの気管拡張に着目して)」.日本難病看護学会誌 2021;25(3):226-229.2)清水俊夫.「筋萎縮性側索硬化症の代謝異常と栄養療法」.神経治療 2022;39(1):22-26. 【参考文献】〇山本美保.「TPPV管理中の呼吸状態のアセスメントとケア」.みんなの呼吸器Respica 2022;20(6):795-801.〇本間武蔵.「支援経験での気づき」.難病と在宅ケア 2021;26(12):32-36.

みんなの訪問看護アワードとは? エピソード・漫画・表彰式などまとめて紹介
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特集
2024年11月19日
2024年11月19日

みんなの訪問看護アワードとは? エピソード・漫画・表彰式などまとめて紹介

2024年10月から募集を開始した「第3回 みんなの訪問看護アワード」。訪問看護に携わる皆さまからエピソードを募集し、厳正な審査を経て表彰や記事化を行うNsPaceの特別イベントです。今回は、「みんなの訪問看護アワード」の魅力がわかる記事をピックアップしてご紹介します! みんなの訪問看護アワードってどんなイベント? 私たちNsPace編集部は、これまで取材やイベント、アンケート等を通じて訪問看護師の皆さまから訪問看護の魅力を数多く伺ってきました。訪問看護の現場では、日々さまざまなドラマが生まれているはず。しかし、一人で利用者宅に訪れることが多い特性上、そのドラマが日の目を見ることは少ない現状があります。また、忙しい日々の中で皆さま自身が発信することもなかなか難しいでしょう。 そこで、NsPaceが皆さまから「つたえたい訪問看護の話」(エピソード)を募集し、コンテンツ化して発信。訪問看護のリアルな魅力を広めていきます。 特別審査員の先生方とともに厳正な審査を行い、入賞した方には旅行券・ギフトカードやトロフィーを贈呈するほか、都内で行われる表彰式にもご招待します! 本イベントは過去にも2回実施しており、受賞者の方々から喜びの声をいただいているほか、SNSや受賞者様の所属事業所の運営メディア、雑誌、新聞等でもシェア・紹介され、大きな反響を生んでいます。 上位入賞作品の一部は漫画化! 第1回、第2回「みんなの訪問看護アワード」で入賞したエピソードは、以下の記事からご覧いただけます。 第1回つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!【みんなの訪問看護アワード】第2回つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 そして、大賞をはじめとした上位入賞作品は一部漫画化!『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』など多数の雑誌で活躍するさじろう先生や、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』著者の広田奈都美先生に丁寧に描き起こしていただきました。 漫画化されたエピソードの投稿者の方々からは、「友人や家族から『訪問看護って素敵な仕事だね』と言ってもらえた」「利用者さんやご家族、同僚のみんなが喜んでくれた」といったお声をいただいています。ここでは、過去の大賞作品の漫画をご紹介します。 第1回「みんなの訪問看護アワード」大賞作品 「七夕の奇跡」第1回の大賞を受賞したのは、公益社団法人山梨県看護協会ますほ訪問看護ステーション(山梨県)の石井啓子さんです。認知症がある利用者さん宅を訪問していた石井さん。七夕の日、ふと思い立って利用者さんに「短冊にお願いを書いてみませんか?」と促すと、「奇跡」のような出来事が…? 第2回「みんなの訪問看護アワード」大賞作品 「役割を求めて」第2回で大賞を受賞したのは、訪問看護ステーションかすたねっと(大阪府)の岡川修士さん。パーキンソン病の利用者さんから「まだ働きたい。欲しいのはお金じゃなく、役割なの」というお話を聞いた岡川さんや事業所の皆さんがとった行動とは…? そのほかにも、訪問看護師の皆さまの日々の様子や試行錯誤の過程、訪問看護の魅力が伝わる漫画を多数公開しています。 表彰式では新たなつながりも 都内で行われる表彰式では、表彰、特別トークセッション、懇親会などでおおいに盛り上がります。 漫画「みんなの訪問看護アワード」ご紹介/広田奈都美先生広田奈都美先生が第1回の表彰式の模様をレポートしてくださった漫画もあります。看護師でもある広田先生の視点から表彰式の魅力が紹介されていますので、ぜひお読みください。 第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月9日開催】 第2回みんなの訪問看護アワード 投稿のきっかけは? 特別トークセッション 前編(会員限定)写真付きで表彰式当日の様子や審査員の先生方、参加者の皆さまの感想をまとめたイベントレポート記事や、当日行われた訪問看護にまつわるトークセッションの内容をまとめた記事はこちらです。 表彰式には全国から受賞者の皆さまが集まり、特別審査員の先生方や訪問看護に携わる方々同士のネットワークも生まれています。初対面の方々がほとんどの中、すぐに打ち解けて、会話や記念撮影を楽しむ姿も多く見られました。同じ職種だからこそ話せる日々の悩みを相談したり、都道府県ごとに異なる事情を共有して盛り上がったり。 審査員の先生方からも、こうしたイベントがあることで「エピソードを書いて言語化することで気づきがある」「意見交換した内容を地域に持ち帰ることができる」「現場に戻って働くための心の糧になる」などのご感想をいただいています。 * * * 第3回 みんなの訪問看護アワードのエピソード応募締め切りは2025年1月24日(金)17:00まで!特設ページよりぜひご応募ください。皆さまのエピソードをお待ちしています!

訪問看護のエンゼルケア 学べる情報まとめ
訪問看護のエンゼルケア 学べる情報まとめ
特集
2024年11月12日
2024年11月12日

訪問看護のエンゼルケア 学べる情報まとめ エンゼルメイク、ご遺体の変化etc.

訪問看護師は、ご本人やご家族と深い関係性を築きながら看護を展開し、病気や障がいがあってもその人らしく生き、その人らしく人生を全うできるようにサポートをする、とてもやりがいのある仕事です。 人生の最期をご自宅で迎えられた際に行うエンゼルケアは、ご家族のグリーフケアにつながる大切なケアのひとつでしょう。エンゼルケア(死後ケア)の流れはわかっていても、なかなか自信がもてない訪問看護師の方も多いのではないでしょうか。今回は、過去に掲載したエンゼルケアにまつわる記事をご紹介。自信を持ってエンゼルケアを行うための助けとなれば幸いです。 エンゼルケアをするときの姿勢やメイクの知識 漫画「おたんこナース」、ドラマ「ナースマン」の原案者である小林光恵さんにご執筆いただいた「訪問看護師のエンゼルケア」シリーズ。エンゼルケアについて知っておきたい知識について、全8回に渡って解説いただいています。 [1]エンゼルケアの基本姿勢をキーワード化して共有しよう まずはエンゼルケアの基本姿勢について。エンゼルケアの目的は何か。どういったスタンスで看護をすればいいのかをまず理解したいところです。本記事では、事例も交えながらエンゼルケアの基本姿勢について解説いただいています。 [2]一方的に進めない! エンゼルケアでもコミュニケーションが重要 エンゼルケアを行う上でのご家族とのコミュニケーションについても、具体的な例をもとに紹介されています。よかれと思って行ったケアが、実はご家族のつらい記憶につながることもあるとのこと。ご家族の要望に対して、どのように応えていけばいいのか、回答例も含めてポイントが紹介されています。 [5]身だしなみの整え――看取りの手段としてのエンゼルメイク 悲嘆の苦痛を乗り越える過程を見守り、支えるグリーフケア。ご家族が「あのときこうしていたら」と後悔の念を抱いたとき、エンゼルケアが助けになる事例が紹介されています。限られた訪問の中で何ができるか、という観点でもおすすめの方法が紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。 [7]ここだけは押さえたい お顔のエンゼルメイク3つのポイント お顔のエンゼルメイクをする際に印象を左右するポイントは、「乾燥対策」「血色」「眉の形」とのこと。エンゼルメイクをする際に注意すべき点が、イラストとともにわかりやすくまとめられています。そのほかにも、エンゼルケアをする際の「ならわし」への対応や冷却などについても解説されています。ぜひシリーズをとおしてお読みください。 >>訪問看護のエンゼルケアシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/angel-care/ 納棺師の視点から学ぶエンゼルケア 納棺師の大垣麻里さんを講師にお迎えしたセミナーでは、訪問看護師があまり目にすることのない死後24時間以降のご遺体の変化や、トラブル対処法などについて解説いただきました。その際のレポート記事がこちらです。 納棺師解説/死後24時間以降のご遺体変化と対処法【セミナーレポート前編】(会員限定) エンゼルケアを行う上で「ご遺体の変化」を学ぶことはとても大切。「死後硬直は何時間後から?」「黄疸変化は?」など、さまざまな時間変化の流れを意識して、ご家族が望むケアをしていきましょう。 お顔に死斑が出ないようにするための方法や、ご家族が希望されるお洋服をご本人に着せる際の硬直の解き方、腐敗対策や止血の方法など、現場での実践方法が紹介されています。 納棺師解説/ご遺体への最新詰め物事情【セミナーレポート後編】(会員限定)後編では、COVID-19が故人とのお別れに与えた影響や、体液漏れを防ぐための詰め物・尿や便の対応の必要性や具体的な処置方法など、気になるポイントを解説いただいています。 エンゼルケアにまわるQ&Aや資料 NsPaceでは、訪問看護に役立つ「お役立ちツール」もご用意しています。エンゼルケアに関するツールもあるので、ぜひご活用ください。>>お役立ちツール(会員限定)https://www.ns-pace.com/tools/#6 お役立ちツール「死後24時間以降のご遺体変化&最新詰め物事情」-Q&A一覧.pdf納棺師の大垣麻里さんより、現場の看護師さんからセミナー時にいただいたご質問に一つひとつ丁寧に回答していただきました。悩みごとの解説につながるQ&Aが見つかるかもしれません。「特別先行公開! 死後24時間以降のご遺体変化&最新詰め物事情 セミナーQ&A」(会員限定)とあわせて、ぜひご確認ください。 お役立ちツールエンゼルメイクの手順例.pdfエンゼルメイクの手順について、15ページにわたってイラスト付きで解説されています。お顔のメイクに加えて、シャンプー、手浴・足浴・着衣、迷いやすい個別の対応事例についても解説。印刷して手元に置いておきたい資料です。 * * * エンゼルケアは、正解がわからず、迷いながら行うことも多いでしょう。また、亡くなった方のご家族の悲しみは言うまでもありませんが、看護師にとっても利用者さんとの別れは悲しい出来事です。エンゼルケアを通じて看護師自身のグリーフケアにつながることもあるはず。今回ご紹介した記事やお役立ちツールが、少しでもお役に立てば幸いです。 執筆・編集: NsPace編集部

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