特集

第2回 理念作成と事業計画/[その2]基本方針―やりたいことを表現する

連載:働きやすい訪問看護ステーションにするための労務管理ABC
連載第2回目では[その1~4]にわたり訪問看護ステーションの運営に必要な理念と事業計画について解説していきます。
[その2]のテーマは“基本方針”です。基本方針は事業所の理念を実現するために明確に示すことが大切です。基本方針の役割やつくり方をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
●ここがポイント!
・基本方針とは理念を達成するための事業所の基本的な姿勢や考え方を示すものである。
・基本方針を明確にすることで、事業所のめざすべき方向性が明らかになる。
・基本方針の作成は、3つの顧客の視点で考え、理念と結びつけることが必要。

基本方針とは

「基本方針」とは、理念([その1]参照)を達成するための事業所の基本的な姿勢や考え方を示すものです。皆さんがやりたいことや実現したいことに対して、どういう考え方や方向性で達成するのかを基本方針によって明確にします。
事業を運営していくうえで必要となる基本方針は、利用者(療養者)の視点だけでなく、訪問看護サービスを提供する自施設の職員、事業所の活動を支える医療機関やほかの事業所、地域とのかかわりなど多様な視点から考えていくことが求められます。

基本方針の役割

基本方針の大きな役割は、理念を達成することです。よって、基本方針は理念がなければつくることができません。また基本方針は事業所の活動指針となるものです。つまり、基本方針を定めることで、理念達成に向けた具体的な計画を打ち出すことが可能になります。このように基本方針は非常に重要な役割を担っています(図1
図1 基本方針の役割
基本方針があると、理念に向かっていく方向が明確になる。一方、基本方針がないと向かっていく方向が曖昧になり迷ってしまう。

基本方針の作成ステップ

基本方針を作成するために必要なのは次の2つのステップです。順に説明していきます。
 Step1 顧客の視点で考える
Step2 理念と基本方針をつなげる

Step1 顧客の視点で考える

  “経営学の父”と呼ばれるピーター・F・ドラッカーは、その著書『マネジメント』の中で顧客についてこのように述べています。
「企業の目的とミッションを定義するとき、そのような焦点となるものは一つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。」
(上田惇生訳:マネジメント【上】-課題、責任、実践.ダイヤモンド社,2008:99.より引用)
ここで言う「顧客」には、大きく3つの視点があると考えられます。第1の視点は、訪問看護サービスの利用者(療養者)。つまり、訪問看護サービス事業の「活動対象」としての顧客です。第2の視点は、職員、開業医、ケアマネジャー、委託先など「パートナー」としての顧客です。第3の視点は、業界や地域社会など事業を取り巻く「環境」としての顧客です。
基本方針を「理念を実現するための事業所の基本姿勢・考え方」と捉え、これら3つの顧客のそれぞれの視点で「事業所の基本姿勢・考え方」を明確にしましょう。

Step2 理念と基本方針をつなげる

次に3つの顧客の視点から整理した基本方針をつなげて1つのストーリーにします。そうるすと、次のような表現が考えられます。
理念と基本方針の例
  <理 念>
地域医療の向上と在宅療養の生活の質向上を図ることで、療養者様と地域に愛され、全職員の幸せを実現する。
  <基本方針>
療養者が可能な限り自立し、安心して日常生活を営むことができるよう【活動対象の視点】、地域の医療機関、主治医、各事業所との連携を密にし【パートナーの視点】、療養者の在宅療養に必要なネットワークサービスが提供できるよう支援します。
地域で必要とされ、なくてはならない事業所【環境の視点】をめざしながら、全職員の成長と夢を実現する事業所にします【パートナーの視点】。
  このように3つの顧客の視点を含むことで、理念の実現に結びつく具体的な方法が基本方針に示されます(図2)。
理念や基本方針は、事業所の運営を考えるうえでなくてはならないものです。理念や基本方針が明示され徹底されれば、職員たちの働く姿勢(仕事に対する考え方やかかわり方)がそろいます。めざすベクトルが1つになることで、事業所の風土、職員の意識は飛躍的にレベルアップしていくことでしょう。
図2 3つの顧客の視点を組み込み基本方針をより強固なものにする
1本の矢では折れやすいが、3本にまとまると・・・・・
また、理念や基本方針を正しく理解した職員の行動は、事業所のブランド構築にも貢献します。ブランド構築とは、利用者とその家族や地域の住民などが事業所に対して抱くイメージを、事業所が認識してほしいイメージに近づける活動をいいます。
図3に示すように、ブランド構築は、事業所の理念と基本方針に沿った従業員の行動や態度、そして事業所が作成するパンフレットやウェブサイトなどのコミュニケーションツールによって構成されます。事業所のブランド構築には、理念や基本方針に対する従業員の理解がとても重要なのです。まずは理念と基本方針をしっかりと整え、職員たちに事業所の基本姿勢や考え方を示していきましょう。
図3 ブランド・ビルディング(ブランド構築)の考え方
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齋藤 暁
株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長
中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント
医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。
▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部
https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/
編集協力:株式会社照林社

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