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網膜色素変性症

網膜色素変性症は、網膜にある細胞が障害され、次第に視力が衰えていく遺伝性の疾患です。患者数は60歳代にピークがありますが、先天盲の原因にもなっています。

病態

目の奥にある網膜には、外から入った光を感知して信号に変換する細胞や、信号を脳に伝える視神経線維などが存在し、眼球に入った光を脳に伝えます。

網膜色素変性症は、この網膜の働きに進行性の異常を生じる疾患です。

視神経には、桿体細胞と錐体細胞の、二種類の細胞があります。桿体細胞は、中心窩以外の網膜全体に存在します。主に暗所で働き、明暗を判別します。視野にも関連します。錐体細胞は、明所でおもに働き、色を判別します。黄斑部に多く存在します。

網膜色素変性症は、桿体細胞の障害が主体です。暗所で物が見えにくい(夜盲)、視野が狭くなるといった症状が最初に出現し、病状の進行とともに視力が低下していきます。

網膜色素変性症は遺伝子異常によって起こり、多くは単一の遺伝子の異常が原因です。ただし、原因となる遺伝子異常の種類は多く、それぞれに応じてタイプがあるため、それも症状などの多彩さの一因になっています。

なお、親からの遺伝が明らかに認められる患者は全体の5割程度です。

疫学

日本における有病率は4,000~8,000人に1人の割合とされています。
2019年度末時点の網膜色素変性症での受給者証所持者数は、約2.3万人です。ピークは60歳代で、75歳以上の人が4割弱と高齢者での受給が目立ちます。一方、小児の受給例もあり、一定程度の障害を持つ人は幅広い年代に分布しています。

症状・予後

夜盲が特徴的です。夜盲と視野狭窄が、初期に自覚されやすい症状です。

病状の進行に伴って、視力低下や色覚異常、羞明(まぶしく見える)、光視症(光が視野の一部に走って見える)などが生じます。これらの症状は、すべて両眼で進行します。

網膜色素変性症は、途中失明の原因にもなり、早ければ40歳代で失明状態に至ります。ただし、光が感知できず視野が真っ暗になるような例(医学的失明)はあまり多くはありません。

同じ病名、遺伝子異常でも重症度や進行スピードが違う例も報告されているため、病状の見通しなどは専門医に確認してください。

白内障や黄斑浮腫を合併する場合があります。これらの合併症に対しては、通常の治療を行います。

治療・管理・リハビリなど

確立された治療法はありません。対症療法として、βカロテンの一種やビタミンA、ビタミンE、網膜の血液循環を改善する薬などがありますが、効果については明確な結論は出ていません。現在、遺伝子治療や網膜移植、人工網膜などの研究が進められている段階です。

ロービジョンケアの観点から、視覚を補うための用具を活用することも、生活支援につながります。コントラストのはっきりした食器や調理器具、ルーペ、書見台など簡単な補助具や、百円ショップで入手できる代用品でも、QOLの向上が見込めることが多くあります。ロービジョンケアに理解のある眼科医など、専門家につなぐことが重要です。

最近の技術革新は目覚ましく、視覚障害者がパソコンやスマートフォンを操作できる音声ソフトなどもあります。白杖や、羞明のための遮光眼鏡、夜盲のための暗所視支援眼鏡といった専門的な補助具もあり、専門家のアドバイスを求めることがとても有効です。

一定程度以上の視覚障害は、身体障害者手帳の対象です。症状の程度に応じて社会福祉制度を利用することも推奨されます。

看護の観察ポイント

視力低下や視野狭窄のため、周囲にある物に気づきにくく、衝突や転倒の原因になります。医師やケアマネジャーなど多職種とともに、患者の生活習慣をふまえ、室内環境や外出時のサポート体制などを整えることが大切です。

障害の程度に応じて補助具を活用するとともに、後の視機能の低下に備え、症状が進行する前から操作に慣れてもらうことも推奨されます。

白内障などの合併症もあるため、症状の進行が疑われる場合は、そのつど医師に情報提供し受診につなげます。

●視力低下や視野狭窄などの症状が進行していないか
●日常生活に支障が出ていないか
●転倒などがないか
●視機能低下に対する補助具を使用できているか
●必要な社会福祉制度に橋渡しされているか
●視力視野の低下に対して患者の不安や焦りなどが大きくなっていないか
など


監修
あおぞら診療所院長 川越正平
【略歴】

東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。
 
記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】
〇厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班網膜色素変性診療ガイドライン作成ワーキングクループ.『網膜色素変性診療ガイドライン』日本眼科学会雑誌.121(12),2016,846-961.
〇難病情報センター.『病気の解説(一般利用者向け)』『網膜色素変性症(指定難病90)』
https://www.nanbyou.or.jp/entry/196
〇難病情報センター.『診断・治療指針(医療従事者向け)』『網膜色素変性症(指定難病90)』
https://www.nanbyou.or.jp/entry/337
〇厚生労働省.『難病・小児慢性特定疾病』令和元年度衛生行政報告例.2021-03-01.

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