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ヘルパンギーナと手足口病の違いは? 症状・原因・治療法・予防法を解説

ヘルパンギーナと手足口病の違いは? 症状・原因・治療法・予防法を解説

ヘルパンギーナと手足口病は夏に流行しやすいウイルス感染症で、主に乳幼児がかかります。どちらも発熱や口内の水疱を伴うため、症状が似ており、見分けがつきにくいことがあるでしょう。

本記事では、ヘルパンギーナと手足口病の原因や症状、治療法、予防法について解説します。利用者さんやそのご家族の症状から、ヘルパンギーナと手足口病の違いを見分けられるように知識を身につけておきましょう。

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ヘルパンギーナと手足口病の原因

ヘルパンギーナと手足口病は、どちらもエンテロウイルスによって引き起こされる感染症です。エンテロウイルスは、ピコルナウイルス科に属するRNAウイルスの一種であり、多くの型が存在します。

ヘルパンギーナの主な原因ウイルス

  • コクサッキーウイルスA群(CA2~CA6、CA10)
    ※まれにコクサッキーウイルスB群(CB)やエコーウイルスが原因となることも

手足口病の主な原因ウイルス

  • コクサッキーウイルスA16型(CA16)
  • エンテロウイルス71型(EV71)
  • コクサッキーウイルスA6型(CA6)

どちらも複数の型があるため、一度かかっても再び感染する可能性があります。

ヘルパンギーナと手足口病の症状&見分け方

ヘルパンギーナと手足口病は、流行時期や好発年齢、症状が似ており、見分けるのが難しいことがあります。見分け方のポイントは以下のとおりです。

◆ヘルパンギーナと手足口病の症状の違い

 ヘルパンギーナ手足口病
発熱突然の高熱(39~40℃)、2~4日で解熱軽度の発熱(38℃以下が多い)
水疱の部位口腔内(特に軟口蓋・口蓋弓)口腔内(前方にみられやすい)、手のひら・足の裏・足の甲・肘・膝・臀部など全身に水疱性発疹
口腔内症状小水疱ができ、破れると浅い潰瘍となり痛みを伴う小潰瘍を形成することがある
発疹の特徴口腔内のみ、水疱はやがて潰瘍化手足や臀部にも水疱ができ、痂皮を形成せず自然に消失
その他の症状喉の痛みが強く、哺乳障害や脱水を起こしやすい口腔内の痛みは軽度で、食事を取れることが多い

ヘルパンギーナと手足口病の流行時期

ヘルパンギーナの流行時期や好発年齢についても見ていきましょう。流行時期は重なっていますが、手足口病のほうが比較的時期が早い傾向にあります。

◆ヘルパンギーナと手足口病の流行時期や発症年齢の違い

 ヘルパンギーナ手足口病
流行時期5~7月頃
9月以降はほぼみられなくなる
7~8月頃
好発年齢5歳以下 特に1歳が多い4歳以下、特に2歳以下が多く(約半数)、小学校低学年でもかかることがある

ヘルパンギーナと手足口病の感染経路

主な感染経路は、ヘルパンギーナ・手足口病ともに飛沫感染※1・接触感染※2・糞口感染※3です。

ヘルパンギーナも手足口病も、症状が治まったあと、体内にウイルスが残る点に違いはありません。便からは、2~4週間にわたってウイルスが排出されることがあるため、注意しましょう。

※1 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみで飛散したウイルスが、ほかの人の鼻や口から侵入し感染すること。
※2 接触感染:ウイルスや細菌などに直接触れた手で鼻や口を触り、皮膚や粘膜を介して感染すること。
※3 糞口感染:ウイルスを含む排泄物に触れた後、手洗いが不十分なため主に手指を介して感染すること。

ヘルパンギーナと手足口病の治療方法と治癒期間

ヘルパンギーナと手足口病はどちらも特定の治療法がないウイルス感染症であり、症状に応じた対症療法が中心となります。

ヘルパンギーナの対症療法

ヘルパンギーナの発熱に対しては、解熱鎮痛作用がある内服薬(例:アセトアミノフェン)を使用する場合があります。咽頭痛があると飲食を避けがちになるため、脱水を防ぐためにも、ゼリーや冷ましたおかゆ、お豆腐など、薄味で柔らかく口当たりのよいものを選ぶとよいでしょう。特に乳幼児は脱水のリスクが高いため、こまめな水分補給が大切です。脱水が見られた場合は、医療機関で輸液が検討されることがあります。

重症化することは少ないものの、無菌性髄膜炎や心筋炎などの合併症が疑われる場合には、入院治療が必要となる場合があります。

手足口病の対症療法

子どもの場合、手足や口腔内の発疹にかゆみを伴うことは少なく、通常は外用薬の使用を必要としません。発疹はかさぶたを残さずに3〜7日ほどで消失します。ただし、口の中にできた潰瘍が痛みを引き起こし、食事が摂りにくくなることがあるため、薄味のスープや柔らかいおかゆ、ゼリーなど刺激の少ない食事を選ぶことが大切です。

発熱は38℃以下の軽度なものが多く、解熱剤なしでも経過を見守ることができますが、発熱が2日以上続く場合や、頭痛、嘔吐、元気がないなどの症状が見られる場合は、髄膜炎や脳炎といった合併症のリスクがあるため、医療機関を受診することが必要です。ヘルパンギーナと同様に脱水にも注意が必要です。

なお、大人が手足口病にかかった際は、発疹の痛みや倦怠感、悪寒等の症状が強く出ることがあります。大人の場合、原因が手足口病だと思い至らないケースもあるため、注意が必要です。

ヘルパンギーナと手足口病の予防方法

ヘルパンギーナと手足口病にはワクチンがなく、基本的な感染対策を行って感染リスクを抑えるほかありません。

食事の前後や外出後には石けんで丁寧に手を洗いましょう。また、便にはウイルスが長期間排泄されるため、排便後の手洗いを徹底することが重要です。特に乳幼児は手洗いの習慣が十分に定着していないことが多いため、保護者や保育者が意識して清潔な環境を保ちましょう。

* * *

ヘルパンギーナと手足口病は日頃からの感染対策が重要です。手洗いやうがいを徹底し、感染者との接触を避けることで、感染リスクを軽減することができます。脱水や合併症のリスクがある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

編集・執筆:加藤 良大
監修:久手堅 司
久手堅 司/監修医師
せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士。
「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。
著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。

【参考】
〇国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「ヘルパンギーナとは」(2014年07月23日 改訂)
https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/herpangina/010/herpangina.html
2025/6/4閲覧
〇国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「手足口病とは」(2014年10月17日 改訂)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/441-hfmd.html
2025/6/4閲覧
〇東京都感染症情報センター「ヘルパンギーナ Herpangina」(2023年6月22日)
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/herpangina
2025/6/4閲覧
〇東京都感染症情報センター「手足口病 Hand , Foot and Mouth Disease」(2024年6月20日)
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/handfootmouth
2025/6/4閲覧

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