信頼&絆エピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護は利用者さんやそのご家族、医療・介護従事者などたくさんの方々と関わり合いがあるため、多様な人間関係や人間模様が存在します。「みんなの訪問看護アワード2023」から、訪問看護の絆にまつわるエピソードを5つご紹介したいと思います。
目次
「これからもよろしく」
互いに訪問看護に携わるご夫婦の、夫から妻へのメッセージ。夫婦で支え合う二人の絆を強く感じるエピソードです。
| 私の妻は、私が代表を務める訪問看護ステーションの管理者です。向上心の高い彼女は一昨年、「私は訪問看護認定看護師の勉強がしたい」と言い出しました。うちは福岡ですが、私は「どうせ勉強するならば東京に行って学びなさい」と、つい言ってしまいました。彼女は勇んで聖路加国際大学で学びました。彼女が東京に滞在しながらの実習期間中は大変でした。毎日の生活はもとより、小4息子の遠足のお弁当作りや誕生日の食事の準備の時は台所でうなってしまいました。 しかし本当に大変なのは彼女の方で、事例レポートや発表プレゼン作成など、質が高く内容の濃い勉強に自問自答し、時には目を潤ませながら一生懸命に取り組んでいる姿は「すごい」の一言でした。 正直お互い苦しかったけれど、リモートで東京と結んで息子の誕生日のお祝いが出来たことは家族の癒しになった良い思い出です。 妻へ、「認定看護師試験合格おめでとう。これからも一緒に頑張ろう。」 |
2023年1月投稿

「Hさんについて」
所作一つから愛情が溢れ出ているのが伝わり、利用者さんとその息子さんの親子の絆の強さが垣間見えるエピソードです。
| Hさんは看多機開設当時から利用されていた方で、物知りでお話上手。「何事も感謝、感謝ですよ」が口癖の方。重い病気が見つかり、息子さんが仕事を辞めご自宅で介護することになった。一時期ショートステイされていた時に面会に来られても、どこかぎこちなく他人行儀に見え、介護経験のない息子さんが最後まで続けられるのだろうかとスタッフ皆が案じていた。 ある日の夕方の訪問。その日は心無い利用者の言動に心が沈み、「利用者に寄り添うとは、看護とは、介護とは。」自問自答していた。お部屋に入るとHさんが静かに微笑まれていた。排尿介助の場面で「お母さん僕の肩につかまって」と息子さん。Hさんは細く痩せた腕を息子さんの肩に回した。息子さんはしっかり大地のように優しく、Hさんを抱きかかえていた。訪問を終え外に出る。街灯の灯が眩しい。何か元気をもらった気がした。 親子の絆。信頼と愛情。その後、息子さんは立派にご自宅でHさんを看取られた。 |
2023年1月投稿
「看護を超えた、心のつながり」
職業人としては、利用者さんには公平で適切な距離感を保つことが必要である一方、感情や気持ちはそう割り切れない、人間らしさを感じるエピソードです。
| 脳腫瘍のIさんの訪問看護を開始して、1年半が経ちました。シャワー浴を実施していましたが、徐々にADLは低下していき、訪問看護で実施することが難しくなっていきました。自分たちよりも大きな男性の移乗や更衣を全介助で行うのは正直大変でしたが、元気な奥様と息を合わせて行うシャワー浴はわたしにとってはとても楽しみな時間でした。訪問中に、これまでのお二人のお話や、ちょっとした世間話などをすることも楽しみに訪問をしていました。 しかし、ある時、シャワー浴がいよいよ安全に実施できないということで、訪問入浴導入が決定しました。訪問看護は状態観察で30分訪問を実施することになりました。何度目かの30分訪問を実施した時、奥様が話しました。「訪問が30分になってしまい、みんなが、急いで帰ってしまう様子が寂しい、これまで通り60分の訪問というわけにはいかないだろうか」と。それを聞いた時、看護を提供する者として、正解かは分かりませんが、私も、同じ気持ちですと、心の中で伝えました。 看護は、誰しもに公平でなければならないと思います。ですが、看護師も人間です。こんな風に、心が繋がることもあるんだなぁと、実感した瞬間でした。 |
2023年2月投稿
「絶対に守る!」
新型コロナウイルスの蔓延により、本来必要であった看護や介護の手が届けることができない状況下でのリアルなエピソードです。夫婦の絆だけではなく、訪問看護師への強い信頼があったからこそ為し得た看護です。
| 新型コロナウイルスが蔓延したため、とても気を付けていましたが、介護者である奥様が感染してしまいました。本人でなくても介護者が陽性の場合、ヘルパーさん、訪問入浴、デイケア、ショートステイも断られました。神経難病で寝たきり、気管支瘻で吸引も必要、経管栄養、尿留置カテーテル、浣腸も毎日必要でした。ご主人の介護をどうしよう…と、奥様が泣かれました。訪問看護で毎日訪問することにしました。防護服を着て、最後の時間に訪問し、保清と排便処置を主に、ケア時の注意、立ち位置から消毒、換気まで細かく指導し、奥様と「絶対移さない!」を合言葉に頑張りました。 症状はなくても奥様が心配で精神的に参ってしまわれ、1日ごとに抗原検査しました。奥様の発熱から最終10日目も陰性で万歳しました。「奥様凄いことです」。褒めて差し上げると、ご本人様は、強ばった身体で一生懸命頷いて笑顔を作って、ポロポロと涙を流されました。一番緊張して、奥様の体調も心配されてたんだと気付かされ感動しました。 |
2023年1月投稿

「事務さんの仕事はご利用者様への支援に繋がっている。」
勤めていると当たり前になりがちかも知れませんが、同じ職場のスタッフ同士でも信頼や絆があってこそ、良いサービスを届けることができるのだと気付くメッセージです。
| いつも事業所でさまざまな業務をこなしてくれる事務さん。 事務さんが請求業務を行ってくれるから、会社が成り立ちます。事務さんが医療機関へ訪問看護指示書を手配してくれるから私たちはご利用者様へサービスを届けることができます。事務さんが労務的な手続きを行ってくれるから、私たちは健康保険証で医療機関を受診できたり、保育園の入園申請が行えます。私たちが安心してご利用者様へケアを届けることができるのは、事務さんのバックアップがあるからです。事務さんがいるからご利用者様は安心してケアを受けることができ、ご自宅で過ごすことができています。 事務さんの仕事はご利用者様へのケアに繋がっています。事務さん本当にありがとう。 |
2023年2月投稿
医療や介護のベースには思いやりを
家族間、スタッフ間、訪問看護師と利用者間とさまざまな間柄でのエピソードでしたが、苦労がある中でもお互いの絆を感じるものでした。相手への思いやりを持っているから築けた絆なのでしょう。医療や介護も常に人が関わる仕事。信頼や絆を築いていくためにも、日頃の接遇やコミュニケーションなどに配慮するとともに、相手への気遣いや思いやりを忘れないようにしていきたいものですね。
編集: 合同会社ヘルメース
イラスト: 藤井 昌子
2026年1月23日(金)17時まで
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