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最期・お看取りエピソード【つたえたい訪問看護の話】

最期・お看取りエピソード

訪問看護では利用者さんの最期に関わることも数多くあります。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、利用者さんやご家族の最期の希望に寄り添い支援した感慨深いエピソードを5つご紹介します。

「残された時間を一緒に」

最期を看取るという利用者さんの奥様の強い覚悟を受け止めて、無事支援しきったエピソードです。

残された時間がない療養者の在宅療養を受けることを伝え、在宅医に了承してもらった。医師は「明日帰れないかもしれない、ギリギリの状態だ」と話された。翌日、在宅医は民間救急の後ろを走行し、訪問看護師は自宅で準備をした。自宅につくと妻と初対面の挨拶を済ませ、ベッドに移送し酸素吸入、持続点滴等を実施し療養者のケアをした。
妻は自宅療養に至った話をしてくれた。面会制限があり毎日電話で話していたが、数日で話せなくなった。最期は家で看取る決意で退院を希望したと話された。「義父母の最期も見送ってきた私の役目だ、その時まで一緒にいたい」と話され妻の強い決意を感じた。親しい人が「ひさしぶり」「カラオケいったなあ」と明るく笑顔で妻や孫を交えて過ごされた。その笑顔をみられてうれしく思った。深夜に「呼吸が止まった」と妻からコールがあり、医師の死亡確認のあと最期のケアをおこなった。妻は「最後に一緒に過ごせてよかった」と話された。

2022年12月投稿

「大切な時間」

残された時間の穏やかな日常をサポートできるのは、訪問看護の冥利なのかもしれません。

退院を機に自宅で最期まで過ごすと決められ、ご依頼をいただきました。優しい奥様と笑顔のご本人様。かわいい猫ちゃん。スタッフの前では、感じていたはずの「痛み・苦しみ・辛さ」マイナスの言葉は心の奥底に封印され、食べたいものを食べて、笑ってお話しされていました。
入籍一周年を間近に控えられていたこともあり、「一緒にお祝いしましょうね。」と訪問看護チーム全員でお二人の時間をサポートさせていただきました。2ヵ月もないほどの時間。少しでも寄り添い、お二人の気持ちを穏やかにすることができていたならこれ程幸せなことはないと思います。ご本人様にとって、ご家族にとっていつ訪れるか分からない最期の時間は色々な思いがあふれ出す時間だと思います。
「できる限りのことをする。」これがうちの管理者の考え方です。大切な時間を一緒に過ごさせていただいたことにスタッフ一同感謝しています。

2023年1月投稿

「よりみち」

望む最期を迎えられるよう、利用者さんとご家族の希望に寄り添ったからこそ贈られた感謝の言葉だったのだと胸打たれるエピソードです。

ステーションへの帰りによりみちすると、庭に人影があった。
「ああ、お世話になりました、四十九日が終わったところです。」
草むしりを再開しながら「今年は花が早く咲いているの。姉が早く見せてくれているみたい。」

胃がんの末期。腹水コントロールができるなら家にとおっしゃり、ご家族の希望で未告知のまま在宅療養が始まった。
「新しい時代が来ましたね。どうなるのか不安でしたが、こうやって自宅で過ごせることが分かって安心した感じです。」
ナートした留置針と延長チューブを通り、腹水はペットボトルにドレナージされた。
腹水がオレンジ色のころに「最期まで家に居させて。楽に逝かせてほしい。」
赤くなったころ「もう長くないと思う。だったらなおさら家族に最期の時期をみてもらいたい。」
希望通りに「気がついたら呼吸が止まっていて…」とステーションに電話があった。
「姉の生活は見ていて理想でした。」
別れ際に妹さんは言ってくれた。

2023年2月投稿

初めての看取り

利用者さんに寄り添い心情を汲み取った一言に、利用者さんの心が救われたことが分かるエピソードです。

訪問看護師になってもう13年が経ちますが、未だに1番初めに携わった末期癌の利用者様の看取りは忘れられません。その方はまだ65歳になられたお若い男性でした。その方には内縁の奥様がいて、利用者様の「家で死にたい」との思いを受けて、病院を退院されました。訳ありのお二人にはほかに家族はおられず。私達とケアマネが唯一の縁者でした。
緊張の面持ちで家での生活が始まりました。お二人の生活は経済的に厳しい状況であったため、奥様はパートを休むことができず、その間は利用者様が一人になります。奥様のいない間、3回訪問を提案し、体調をみさせていただいていました。初めは緊張して何もお話ししてくれなかった利用者様が、緩和マッサージ行っていた時、奥様との馴れ初めや境遇をお話しくださり、涙を流して、もうすぐ奥様を残して旅立つ自分の情けなさと、独りになる奥様の心配を話してくださいました。「私たちがいますから、奥様は大丈夫です。」と思わずでた言葉に「ありがとう。」と微笑んでくださいました。数日後、奥様の膝枕で、微笑んだお顔で旅立たれました。今でも奥様は事務所に時々お顔を見せてくださっています。

2023年2月投稿

訪問看護で初めての看取り

最期の笑顔に寄り添って

偶然の中に縁を感じるとともに、投稿者さんを看護師に導いてくれたお父様への感謝も感じられるエピソードです。

訪問看護師の仕事をして23年目。たくさんの出会いがあり、お別れもあった。
ある日のこと、午前の訪問先と午後の訪問先は不思議なことに、お二人とも年齢は90代の男性。どちらも奥さんが介護されていた。そしてどちらも男性のお孫さんがそばにいた。
手も足も指の色は紫色になり血圧も低く、血中酸素濃度は測定できない。それでも意識はしっかりされていた。午前の方は、お孫さんが子供の頃、学習塾へ送迎をされていたことを奥さんが思い出して話をされた。お孫さんはしっかりと手を握り、「おじいさんわかる?」と声をかけ涙を流された時、頭を持ち上げお孫さんの顔を見てにこりとされた。
午後の方はギャッチアップして口腔ケアの後、「Mさん今日もかっこいいですね」と声かけ、すると微笑まれた。奥さん娘さんお孫さんとで記念撮影をした。お二人ともそれが最期の訪問となり、静かに旅立たれた。訪問看護師として人生の最期の時を伴走して、ゴールテープを切られるのを見届けた。
2月1日の訪問看護。その日は、私に看護師になることを勧めてくれた父の命日だった。

2023年2月投稿

訪問看護師と利用者さん

最期のお別れを共有する存在

看護師は人の生と死に立ち会うことのある職業です。今回は最期の別れのエピソードをご紹介しましたが、旅立つ方にはなるべく心安らかに、見送る方には後悔なく見送れることを願う看護師としての想いが伝わってくるようでした。最期の支援を家族とともにできる看護師の誇りを感じるとともに、別れの儚さや切なさなど、いろんな感情が入り交じる感慨深いエピソードです。

編集: 合同会社ヘルメース 
イラスト: 藤井 昌子 

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