キャリア形成に関する記事

ピラティス×訪問看護
ピラティス×訪問看護
インタビュー
2023年3月22日
2023年3月22日

【ピラティス×訪問看護】病棟看護師から訪問看護師へ転職したきっかけ

全国の主要都市に100店舗以上のピラティス・ヨガスタジオを運営する株式会社ZEN PLACE。実はそのピラティスのノウハウを、在宅医療へ導入していることを皆さんはご存じでしょうか? 今回は、自身もピラティスに魅了され、ZEN PLACE訪問看護で勤めることになった看護師の日高さんに、ピラティスの魅力やZEN PLACE入職のきっかけなどを伺いました。 日高 優(ひだか ゆう)2008年より急性期病院での看護師(ICUや救急外来など)を経て、2020年よりZEN PLACE訪問看護ステーションにて勤務。病院勤務時代にピラティスのインストラクターコースを修了。カウンセリング技術を学び、SNSを通して看護師に自分と向き合うことの大切さを発信している。ZEN PLACE訪問看護心身ケアと未病のリーディングカンパニーであるZEN PLACEが運営する訪問看護ステーション。ピラティスの技術を医療や介護の場に用い、働くスタッフから利用者様すべての人が心身ともに健康で豊かな人生が歩めることを目指している。「したい看護をするのではなく利用者様とご家族が望む生活のサポートをすること」がモットー。 ピラティスを追いかけて訪問看護の道へ ―病棟勤務時代にピラティスにご興味を持たれたようですが、きっかけを教えてください。 私は元々ダンスが好きで、病棟看護師をしながらジャズダンスのインストラクターをしていました。当時、看護部長からも「素敵だからぜひ頑張って」と応援してもらえて、時間を調整しながらレッスンをしていたんです。ピラティスとの出会いは、そのダンススタジオのメンバーから「ピラティスいいよ」っておすすめされたことがきっかけですね。偶然にも家の近所にピラティススタジオがあったので、興味本位で通ってみました。 ―実際に体験されていかがでした? 実際やってみると身体が変わることを実感して、すごく面白いと感じました。私も医療従事者なので、身体に関する知識があるぶん、余計に楽しくなっちゃって。 また、ジャズダンスはバレエが基礎になっているので、体幹やコアマッスルが足りないと踊れないんですよね。ピラティスをやり始めることで、「身体の軸がしっかりしてきたな」と感じて、ピラティスへの興味が深まっていきました。 ―その後、ピラティスのインストラクターコースも受講されたとか? はい、受講しました! とても充実した時間になりました。 私は通学してセミナーを受講しましたが、最近はオンラインや通学+オンラインのハイブリッドコースなど、自身のライフスタイルに合わせて受講できるスクールが多いです。例えば、basiピラティスのマット通学コースの場合、集中した講義を合計36時間学び、100時間以上の自己実践、20時間以上のレッスン見学や30時間以上の指導練習を通し、資格取得が可能になります。資格を取得し、ようやくスタートラインに立てました! ―ZEN PLACEに転職しようと思ったのも、やはりピラティスがきっかけなのでしょうか? そうですね。どんどんピラティスへの興味が増して、「ピラティスを看護の仕事に活かせないかな」とインターネットで色々調べるうちに、ZEN PLACEを発見したんです。利用者さんに対してもそうですし、働き手である看護師に対してもピラティスを推奨している点に共感しました。 私も当初はダンスのトレーニングの一環として始めたピラティスでしたが、すごく自分の身体や心が整うのを感じて、「もっと働く看護師にピラティスが広まり、健康的な生活を手に入れて欲しい」と思うようになったんです。 特に急性期の病棟に勤めていると、「人が生きるか死ぬか」という命の瀬戸際のなかで看護をしているので、感情的になってしまいがちです。私も、ICUではやりがいや喜びを感じながら働いていましたが、改めて振り返ってみると心身ともに疲れていることが多かったように思います。「本当は運動して発散したいけど、仕事が忙しくて続かない」という悩みが多いのも看護師の実情です。もっと看護師にピラティスが広まってほしいと思います。 ―病棟から訪問看護への転職ですし、住むエリアも変わるなかで、悩まれなかったですか? 正直とても悩みました。急性期での看護も楽しい面ややりがいがありましたし、在宅の現場は、過去に派遣の仕事として訪問入浴をしたことがある程度。転職後の仕事内容のイメージもあまりできず、不安がありました。でも、最後は「自分がやりたいことをちゃんとやりたい」「やってみなきゃわからない!」と思い、転職を決めて東京へ引っ越しました。 ピラティスを活用するZEN PLACE訪問看護とは? ―入職後のことをお伺いします。ZEN PLACEでは、同一のステーションに訪問看護師や理学療法士、作業療法士等の色々な職種が在籍されていますが、職種間の連携について教えてください。 同じ利用者さんに看護師と理学療法士両方で入っていることもあるので、「今日はこういう状態だった」とステーション内で情報交換をしています。また、訪問看護のみで入っている利用者さんでもリハビリをしたほうが良いケースもありますし、逆にリハビリメインで入っている利用者さんに医療的な処置が必要になった場合は、看護師が入ったほうが良いこともあります。多職種と連携が取りやすく、意思疎通がスムーズで良い環境ですね。 ―職場の雰囲気としてはいかがでしょうか。 基本的にスタッフはみんな明るくて、職場内では笑顔や笑い声が絶えません。ピラティスが好きなメンバーばかりで、みんなで仕事後にレッスンを受けに行くこともありますし、和気あいあいとした職場でとても楽しいです。 ―皆さんにとって、本当にピラティスはリフレッシュもできる大切な時間なんですね。仕事の後にピラティスをするケースが多いのでしょうか。 そうですね。今もステーションの近くにあるスタジオで、「期間中に50日間ピラティスをしよう」というイベント(「50days challenge」)に同僚と参加しています (笑)。 こうしたイベントがないときでも、ZEN PLACEが運営するスタジオは各所にあるので、ステーションや自宅の近くにあるスタジオに寄ってから帰ることが多いですね。オンラインレッスンもあるので、家に帰ってからやることもあります。 人によっては朝ピラティスをしてから出勤しているケースもあると思いますし、ZEN PLACEでは福利厚生として、月に2回までは業務時間内でピラティスを受けに行っても良いという制度があります。訪問にキャンセルがでた時に行くこともありますね。 ―雰囲気が良くスタッフ同士も仲の良い職場のようですが、ピラティスを行っている影響もあると思われますか? もちろん、すべてがピラティスの効果だとは言い切れませんが、私は一助になっていると思っています。医療従事者は献身的に仕事をされている方が多い印象なので、自分のために何かをする時間って意識しないと取れないんですよね。でも、ピラティスをすると、その間は自分の身体と心と向き合うことになるので、「今日はあまり足が上がらないな」「仕事のことをいっぱい考えているな」など、色々と感じ取ることができます。 ピラティスは「動く瞑想」とも言われますが、自分に向き合うことで自分を大切にできるし、心身が整う効果があると思っています。自分自身が整うことで、利用者さんへの良い看護の提供や職場の雰囲気の安定につながるのかな、感じています。 心が安定すると、ネガティブな言葉も言わなくなりますね。「こういう嫌なことがあったよ」という話が出ても、愚痴になるのではなく、「そうなんだね、大変だったね」と受けとめたあと、「こうしたら改善するんじゃない?」とみんなで意見を出し合いますし、誰かがポジティブな言葉や思考に変換してくれます。 ―ありがとうございます。次回は、ZEN PLACEでのキャリアや、どのようにピラティスを訪問看護に取り入れているのかを伺います。>> 【ピラティス×訪問看護】ZEN PLACEのキャリアパス&訪問時のピラティス活用法 ※本記事は、2023年1月の取材時点の情報をもとに制作しています。 編集・執筆: 合同会社ヘルメース取材: NsPace編集部

新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.2 新卒者から「先輩」になって思ったこと
新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.2 新卒者から「先輩」になって思ったこと
インタビュー
2022年11月15日
2022年11月15日

新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.2 新卒者から「先輩」になって思ったこと

前回「新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.1 新人看護師が感じていること」の記事で、新卒から訪問看護の世界に飛び込んだ3名の看護師の声をお伝えしました。今回は、その3名がキャリアを積んでから感じたこと、新卒者が訪問看護に携わることに対しての思いを取り上げます。 先輩になった今、後輩にしているサポートは? 職業を問わず、最初は新人であっても年月を経るにつれて経験を積み、次第に教える立場になっていきます。では、3名の新卒者は自分が先輩の立場となり、後輩をどう支えているのでしょうか?Aさん・訪問看護歴6年「最初は分からないこと自体が分からないと思うので、自分や歴代の新卒者さんがどのような勉強をしたかを伝え、誰もが同じようにできなかったところから乗り越えていることを伝えるようにしています」 Bさん・訪問看護歴6年「まずは相手の思いや考えを聞き、一旦受け止めます。そして、できていることは些細なことでも言葉にして伝えています」 Cさん・訪問看護歴7年「相手のできていないところばかりではなく、できているところはそのまま認めて、フィードバックすることを大切にしています。また、後輩の話を聞くときは、必ず手を止めて聞きますね。そして後輩が考えている時には待つ。答えをいわないようにして、後輩が自分自身で考えられるようにしています」 まずは後輩の思いや悩みを受け止める、という点は3名に共通しています。これには理由があり、自身の経験が少なかったころに「もう少し振り返りの時間がほしかった」(Bさん)、「自信を持てるような声かけ、フィードバックがほしかった」(Cさん)と感じたからだそうです。これから新卒者を迎える管理者、先輩看護師の方は、じっくり話を聞く時間を設けると良いかもしれません。 新卒を受け入れるために必要な環境、体制、心構えは? 未経験の人が訪問看護ステーションで働き、成長していくためには、何が必要なのでしょうか。大きく分けて、「新卒を受け入れる心構え」と「技術を学ぶ場」の2点が挙がりました。 Aさん「教育担当者や所長だけでは受け入れる側の負担も大きくなってしまうため、スタッフ全員で新卒を育てる気持ちが大切だと思います」 Bさん「看護技術・手技の勉強と復習を行いやすい環境が大切だと思います。受け入れる側の心構えとして、新卒でもできる、応援しているというスタンスが必要ではないでしょうか」 Cさん「受け入れる側の心構えとして『できなくて当然。時間がかかって当然』『新卒ウェルカム!』という余裕は必要だと思います。看護技術取得ができるような体制づくりも必要だと考えます」 新卒だからこそ、いち早く技術を習得して少しでも先輩方に追いつきたいもの。技術取得のための体制については、「大きめのステーションのほうが教育・体制面が整っている傾向にありそう」(Cさん)といった声も聞かれました。 「新卒からの訪問看護」にはどんなメリット・デメリットがある? 最後に、新卒者が訪問看護に携わるメリット・デメリットを聞いてみました。Aさん メリット・さまざまな先輩看護師と同行訪問することで、多様な看護観に触れられる。・一般常識が身につく(医療・介護物品などのコスト意識、訪問先のご自宅や外部連携でのマナーなど)。 デメリット・手技の獲得やひとりだちまで時間がかかり、ある程度自信をもって訪問できるまでは不安や劣等感を感じやすい。・事業所の教育体制によっては、ひとりで訪問する重圧、不安が大きい可能性がある。 Bさん メリット・利用者さんの生活や人生の一部に入り込むことができる。加えてもらえる。・医療者や支援者の知識が必ずしも正解ではないことを、利用者さんを通して気付ける。 デメリット・病院に就職した同期と比較してしまうと、スピード感の違いに落ち込む。・新卒訪問看護師への偏見がまだある印象がある。 Cさん メリット・夜勤がないため生活リズムが整いやすいこともあり、それによって『しんどいからやめたい』という看護師は少ないように思う。・キャリアが広がる印象がある(管理者、大学・大学院の教員、ケアマネ取得など)。 デメリット・スタッフのマンパワーが必要なケースが多い。・ステーションによって教育のしかたやスタッフの関わり方・雰囲気、利用者さんの受け入れ幅などが異なるが、新卒訪問看護師向けの情報が少ない。 「新卒からの訪問看護」は、乗り越えるべき課題がありますが、今回お話していただいたかつての新卒者の方々も、現在では一人前の訪問看護師として立派に仕事をこなしています。 新卒者を募る場合、訪問看護のメリットをアピールしつつ、ステーションとして新卒者の悩みや課題に向き合う姿勢を示してみてはいかがでしょうか。 記事編集:NsPace編集部

新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.1 新人看護師が感じていること
新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.1 新人看護師が感じていること
インタビュー
2022年11月1日
2022年11月1日

新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.1 新人看護師が感じていること

訪問看護師の中には、新卒ですぐに訪問看護ステーションで働く人もいます。こうした新卒の訪問看護師のみなさんは、どんな思いで働き始め、何に悩んでいるのでしょうか? NsPaceでは、新卒から訪問看護師になった3名の方々にお話を伺いました。 新卒で訪問看護を選んだ理由は? まず、なぜ新卒で訪問看護師の道を選んだのか、聞きました。すると、次のような三者三様の答えが返ってきました。 Aさん・訪問看護歴6年「自分の祖父母が在宅医療という選択肢をもてるようにしたいと思っていたことや、大学のサークル活動で神経難病を患っている方がご家族と穏やかに自宅で過ごしている場面に出会い、素敵だと思ったからです」 Bさん・訪問看護歴6年「利用者さんとゆっくり関わることができるからです。在宅看護学実習で、テキパキと処置をしながら、利用者さんに適切な情報を伝える・聞き出す訪問看護師に憧れを抱きました。誰もやったことがないことだから、おもしろそうと思い、飛び込みました」 Cさん・訪問看護歴7年「訪問看護に興味を持ったきっかけは、大学での領域実習でした。在宅では、 利用者さんと向き合う時間的な余白があり、利用者さんと看護師が対等の立場であるように感じました。その人がその人らしく生活できて、それを支援できる訪問看護がすごく魅力的に感じたので、訪問看護師になろうと思いました」 ご家族に訪問看護師という選択肢を加えたい、実際の訪問看護師の姿に憧れた、在宅医療・訪問看護に医療の理想の形を見た、というのが訪問看護師になった直接的な理由でした。一方、共通点として看護学生時代の経験を踏まえて、最終的に訪問看護師となる決心をしたことが見て取れます。 ひとりだちするまでの過程で困難に感じたことは? では、実際に新卒から訪問看護師となって感じた壁は何でしょうか。こちらの質問も、さまざまな悩みをもったという答えが返ってきました。 Aさん「一つひとつの判断が正しいか、症状を見落としていないかという不安がありました。先輩への報告でも、簡潔に必要な情報と自分のアセスメントをまとめることが難しかったです。状況や体調に変化があった場合に臨機応変に報告をしたり、手順を変更したりすることも困難に感じました。また、時間がかかりすぎて、訪問時間内に必要なケアを行うことも難しかったです」 Bさん「できなかったことに注目して落ち込み、自信がなくなるというループから抜け出せなくなることがありました。自分の『できるであろう』の基準を高く設定してしまい、落ち込みやすくなっていました」 Cさん「看護技術、特に点滴などの経験が積みにくく、技術の習得は大変苦労しました。コミュニケーションが元々苦手で、人見知りも激しかったため、利用者さんとの会話に壁を感じることもありました。また、次の訪問まで待てるのか?今すぐ対応すべきなのか?と、緊急度合いの判断がつきづらいときも困難さを感じました」 技術的な悩みもさることながら、判断に間違いがないか、との不安を抱きやすいようです。そして、「週1回2時間ほどの振り返り面談をしていただきました」「オンコールは管理者の許可を得てから訪問し、実際に報告すると『合っているよ、いいよ』と声掛けをしてもらえて、認めてくれるようなサポートをされていました」(どちらもCさん)というように、その都度のフィードバックがあると新卒者は安心感をもつようです。 先輩・利用者さん・ご家族からの言葉で印象に残っていることは? このように技術を身に着けていく間で、看護師のモチベーションとなるのが利用者さんや先輩看護師からの言葉です。また、直接的な感謝や励ましでなくても、先輩が自分を思ってくれているのがわかると、嬉しさを感じるとの声もありました。 Bさん「利用者さん・ご家族からの『いつもありがとうね』『助かるわ』『待ってたよ』という言葉です。また、しばらく訪問していなかった利用者さんが『元気にしとるんか?』と気にかけていたよ、と先輩から聞いたときも嬉しかったです」 Cさん「利用者さんからの言葉では、何度もクレームをいただいた方に『Cさんだったら、任せられるわ』と声をかけてもらえたことが印象に残っています。先輩からの言葉では、『どうしたらCさんにとって良いのか分からない』といわれたとき、私のことを考えてくれていることが伝わって嬉しかったですね。ほかにも『訪問するときに何が一番大切か分かる?毎回訪問時、同じテンション、声のトーンで訪問すること』と教えられたなど、数え切れないほどあります」 利用者さんからストレートにかけられる感謝や信頼の言葉は、新卒者に限らずベテランの訪問看護師でも嬉しさを感じることは変わらないでしょう。一方、前述の「困難に感じたこと」と同様に、先輩からのアドバイスは具体的に、どこを良くすれば改善されるかまで言及すると、新卒者や若い看護師自身の成長にもつながります。 続きの記事もありますので併せてご覧ください。次回「新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.2 新卒者から「先輩」になって思ったこと」 記事編集:NsPace編集部

インタビュー
2021年12月21日
2021年12月21日

訪問診療クリニックで働くということ(後編)

訪問診療クリニックで働く菅 基さん。今回は一風変わったプロフィールと、病棟勤務から転職した際の驚きの経験を語っていただきました。 なぜ文系四大卒が看護師に? 一般の文科系大学を出て就職もしたのに、どうして看護師になったのかとよく問われます。 新卒で入社した会社では営業職でしたが、仕事内容や今後のキャリアに対して自分の軸がみえず、悩んでいました。偶然、実家の近所に都立の看護学校があったこともあり、看護師の資格を生かした仕事をしようと決心しました。 入学してみると、学生は若い女性ばかりではなく男性も多いし、30代・40代の方もいて、違和感なく学べました。 これまでずっと学校での成績基準の世界で生きてきて、看護学校には、それだけでは推し量れない世界があることにまず驚きました。また、ずっと文系だったので、理系科目には苦労もしました。大学入試より勉強したかもしれません。 そしてみなさんそうだと思いますが、実習期間中は課題が多すぎて眠れないのには参りました。でも目的がはっきりしているので、乗り切れました。 価値観はアップデートしていくもの 国家試験合格後は、5年間病棟勤務を経験しました。呼吸器内科、血液内科など内科系混合病棟でしたが、3年目以降、男性看護師は私一人だったので、目立つというか、下手なことはできない(笑)。力仕事的な部分では頼られましたが、男性が一人の環境は、なかなか肩身が狭かったです。 ふり返って思うのは、自分の経歴や経験で価値観を固めてはいけないな、と。今でも心掛けています。 大学卒だから看護学校でも成績がすごい良かったかというとそんなことは全然なかったし、職場でも家庭でも、その時の自分のステージや将来性を見すえ、総合的にその場での自分の価値観をアップデートさせることが必要だなと学びました。 医療の常識が通用しない訪問看護という仕事 そろそろ異動のタイミングという5年目に、もともと興味があった在宅系で、地域の人とかかわりながら経験が積めることを期待し、訪問看護ステーションに転職しました。 訪問看護は、患者さんの自宅での限られた物品と限られた空間でサービスを提供するので、病院では当たり前だと思っていたことが通じない世界でした。 また、患者さんやご家族の医療に対する考えや価値観が優先されるので、そこをはねのけると「もう来なくていいです」と言われてしまいます。実際、私もそう言われたことがありました。 ALSでずっと在宅療養されている方のところに私が入った時です。ご家族がALSの患者さんであるご本人のために介護の会社を立ち上げたほどで、鉄壁の価値観 ── たとえば酸素飽和度が1%でも下がったら困るなど ── が形成されていました。私はそこを理解せず、医療の正当性を主張して失敗しました。 「24時間対応なんて無理」と考えている人へ 高齢者の増加に伴い、訪問診療を必要とする人はますます増えていきます。サービスを提供する私たちの将来的なビジョンとして、少ない人数でいかに業務を回していくかを考える必要があります。先にお話ししたICTの導入も、業務効率化、残業ゼロへの有効な手段です。 訪問看護はやってみたいけれど、24時間対応は無理と考えている方。深夜に駆けつけることは、事業所の方針にもよりますが入職前に思っていたよりはずっと少ないとお伝えしたいです。実際に訪問看護ステーションに在籍されている方なら、みなさんご存じだと思います。 なぜ深夜の訪問をしなくてすむのか。私たち医療者は、夜間に起こりそうなことをあらかじめ予測し、日中できることでしっかり予防・対応します。また、今後起こりうることを患者さんやご家族にもしっかり説明しています。そうすることで、患者さんやご家族は安心され、コールが減り、緊急連絡にも多くが電話対応ですむことになりました。 訪問診療が入るときには多職種チームが形成されている 訪問診療は、在宅系サービスのなかでは最後に入るサービスだといわれます。 たとえば高齢になって生活に支障が出てくるようになると、まずは地域包括支援センターに相談し、ケアマネジャーが入り、要介護認定が下りると訪問介護やデイサービス・デイケアを利用しはじめます。 病後など、やがて医療が必要になってくると訪問看護が入り、ご本人が病院にも行けなくなると、最後に訪問診療が入ります。つまり患者さんにかかわる多職種がすでに形成されていることが多いのです。 すでにサービスを利用している患者さんのところに私たちが加わるため、訪問看護師さんの役割はとても重要で、連携を大切にしています。当院にも懇意にしている訪問看護ステーションは複数あり、それぞれの個性と特徴を把握し、訪問看護を依頼しています。 訪問診療クリニックも、キャリアと家庭の両立に適した職場 もちろんターミナルで自宅に戻られた方や、一切サービスを使っておらず突然調子が悪くなったけれど入院はしたくない方など、先に診療が入るケースもあります。そんなときは、私たちが介護保険とは何かなど、制度的なことを説明しています。 いざ訪問してみると、家族関係に問題があったり、必要な在宅サービスが入っていなかったりなど、手が足りないと感じる部分もあります。医療だけにとどまらず、患者さんとご家族の悩みも受け止められるよう今後も頑張っていきたいですね。 そのためにも、現在、一緒に働く仲間を増やしたいと考えています。 キャリアと家庭を両立させながら働ける職場だと自負しています。訪問看護経験者で、在宅診療クリニックに関心のある方、チームで働いてみたいという方は、ぜひご連絡ください。 ** 菅 基(すが もとむ)杉並PARK在宅クリニック(東京都杉並区)看護師 杉並PARK在宅クリニックhttps://www.suginami-park.jp/ 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー
2021年12月14日
2021年12月14日

訪問診療クリニックで働くということ(前編)

サラリーマンを経験してから看護師になった訪問診療専門のクリニックに勤務する菅 基さんに、訪問看護ステーションとの働きかたの違いなどを語っていただきました。 自己実現とライフステージに合致した職場を求めて 私は私立大学で社会学を学び、一度は一般企業に就職しました。しかし仕事にやりがいを感じられず、どうせなら資格を生かした仕事をしたいと考え、家族など周囲に医療系の仕事をしている人が多かったことから、看護学校に入学しました。 卒業後、病棟で5年、訪問看護ステーションに2年勤務したのち、訪問診療専門のクリニックに看護師として入職しました。現在は、杉並PARK在宅クリニックに在籍しています。 訪問看護ステーションでは学ぶことも多かったのですが、ちょうど自分の結婚というライフイベントのタイミングと重なり、家庭も大事にしたいと思い、家から通いやすい範囲にある職場を探しました。すると、近所で訪問診療クリニックが看護師を募集していて、これまでとは異なるスキルを得られるのではと考えて転職しました。 当院は東京都杉並区西荻窪に2021年4月に開院したばかりです。家庭医療専門医である田中公孝院長とは、前職(三鷹市のぴあ訪問診療クリニック三鷹)からのお付き合いで、今回、クリニックの立ち上げから参加しました。 『個』から『集』へのジョブチェンジ 訪問診療クリニックでの仕事は多岐におよびますが、一つには医師の訪問診療に同行して、必要な用具や機器を揃えるなど、診察のサポートを行います。 訪問看護は通常一人で訪問しますが、訪問診療は当院の場合、院長と私と相談員の3人のチームで訪問します。そして、チームのなかで、自分がどういうスキルを提供できるのかを常に考えながら行動します。言ってみれば、訪問先では訪問看護ステーションは「個」の仕事、訪問診療クリニックは「集」の仕事と考えます。 「個」の仕事である訪問看護は、訪問先では基本最初から最後まで一人で完結するため、判断力や行動力が磨かれます。しかし困ったときにすぐ横に相談できる人がおらず悩みを抱えがちになってしまう面があります。 一方、「集」で行動している現在は、常に医師と相談しながらケアを提供できる点で絶対的な安心感があります。ただし、訪問同行は医師が主体のため、訪問看護のときほど自分が前面に出ることは、さほどありません。 地域をよく知り医療中心の多職種連携の要となる 訪問同行以外では、「多職種連携の窓口」も大切な仕事の一つです。 訪問看護師は医師の指示のもとでサービスを提供しますが、患者さんの状態についての報告や相談など、看護師から医師に連絡するのは気が重いと感じる方も多いと思います。その点、連絡先である訪問診療クリニックに看護師がいれば、訪問看護ステーションの看護師は相談しやすいと思います。 私自身も、看護師とのコミュニケーションの際には、先生には言いづらいことも話してもらえるよう意識して接しています。 これは訪問看護ステーションにもいえると思いますが、在宅系サービスを新たな地で新規開業するには、地域のコミュニティーの傾向をよく知り、そこにいかに入り込むかが重要だと思います。 開業時には、地元の医師会やケアマネ協議会、地域包括支援センターなどのほか、商店街など地域をよく知る方たちにも挨拶に伺いました。この地(西荻窪)は、訪問診療の導入が想像していたより多くなかったこともあり、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所からは「頼りにしています」と受け入れてもらいました。 ICTの導入で効率化を図り残業を削減 現在、患者さんは、地域包括支援センターや居宅介護事業所、訪問看護ステーションから紹介いただくケースが多いですね。よく連絡する先にはどのような連絡手段がもっとも受け入れられやすいかを知っておくと、スムーズな連携につながります。 当院の場合は電話と医療介護専用のSNS(LINEのようなソーシャルネットワークシステム)などのICTも積極的に利用しています。日々の業務では、緊急を要する場合は電話で、急ぎではないときはSNSを使うなど、臨機応変に使い分けています。 連携している訪問看護ステーションの中には、ICTを利用していないところもあるのですが、業務量の削減という観点からは、導入するメリットは大きいと思います。 ICTの活用でも、変わらない大事なこと 電話やファックス、メールなど従来の連絡手段では、すぐに電話に出られなかったり、事業所に戻ってからでないと対応できなかったりするため、どうしても記録や連絡などの事務業務は残業になってしまいがちです。でもICTツールを使えば、隙間時間にササッと連絡できるし、スマホやタブレットで連携できるので、事務所にいないときでもチェックできます。 ただICTツールばかりに頼ると、こちらが意図したことを誤解したままサービスが提供されていたり、すれ違いが起こったりする場合もあるので、合間あいまに電話で直接話して、相手との目線を合わせることは必要です。これは当院の院長も常日頃から言っていることで、どんなに便利なツールがあっても、最終的には人と人との関係性が重要なのです。(後編へ続く) ** 菅 基(すが もとむ)杉並PARK在宅クリニック(東京都杉並区)看護師 杉並PARK在宅クリニックhttps://www.suginami-park.jp/ 記事編集:株式会社メディカ出版

特集
2021年11月2日
2021年11月2日

第2回 心不全患者の療養生活を支えるために

心不全患者の再発・重症化予防のための地域ぐるみの取り組みが進んでいます。福岡大学病院循環器内科と博多みずほ訪問看護ステーションでは連携して、病院の医師と訪問看護師が医療とケアの両面で在宅療養者を支えています。療養指導の質を高めるための新しい認定資格「心不全療養指導士」は、心不全患者の日常生活指導などを行う場面で力を発揮しています。心不全療養指導士の資格を持つ、博多みずほ訪問看護ステーションの黒木絵巨所長にお話を伺いました。 博多みずほ訪問看護ステーション黒木絵巨 所長 心不全療養指導士とは 「心不全療養指導士」は、心不全の再発・重症化予防のための療養指導に従事する医療専門職のための認定資格で、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士、公認心理師、臨床工学技士、歯科衛生士、社会福祉士などが取得できます。特に実務経験は問いませんが、資格取得のために提出する5症例の症例報告書のためには、実質的に心不全患者の療養にかかわる実務経験が必要になります。あくまでも医療専門職のための制度で、医師は対象ではありません。2021年度から制度が開始され、第一期の資格取得者1,771名が活動を始めています。黒木さんも第一期取得者の一人です。 ― なぜ、心不全療養指導士の資格を取ろうと考えたのですか。 私どものステーションは循環器疾患の利用者さんに特化しているわけではありませんが、福岡大学病院との連携で、退院後の心不全療養者への援助が増えてきています。心不全患者の再発や急性増悪を防ぐためには、食事指導・運動指導・服薬指導などの日常生活援助が決め手になります。 福岡大学病院循環器内科の志賀悠平医師も、在宅での生活指導・保健指導については私たち訪問看護師に任せてくださっています。療養者の生活に責任をもって関わるうえで、医学的なエビデンスも含めて知識・技能のレベルアップを図りたいと考えていたところ、日本循環器学会で新しい資格制度をつくるという情報を知ったのがきっかけです。 ― 資格を取るためにはどのようなプロセスが必要ですか。 学会が示している資格取得のためのフローチャートを以下に示しました。 心不全療養指導士・資格取得までの流れ(抜粋) 日本循環器学会ホームページ 『資格を取るまでの流れ』 (https://www.j-circ.or.jp/chfej/flow/)を参考に作成 まず、日本循環器学会の会員になることが条件です。会員になったら、最初にeラーニングを受講します。総受講時間は6時間半弱で、非常に多岐にわたる講義が用意されています。「心不全の概念」「心臓の基礎疾患の特徴」「薬物療法」「非薬物療法」などの医学的内容から、「栄養管理」「服薬アドヒアランス」「心理的指導」などの療養支援の基本に関する講義まで幅広いテーマです。中でもとても勉強になったのが「療養指導に必要な患者指導の考え方」「療養指導の評価および修正」「認知機能低下のある患者への対応」など、患者指導の技術でした。 勤務を続けながらの受講でしたので、自宅に戻った夜や休日の自分の時間を有効に使いました。eラーニングはいつでもどこでも自分の裁量で時間の都合をつけられるので便利です。 eラーニング講習の後、症例報告書を提出します。症例はすべて異なる患者で2テーマ以上5例作成します。テーマ例としては、「ステージ別心不全患者の療養指導」「高齢心不全患者への療養指導」「多職種連携、地域連携の強化が必要な心不全患者への療養指導」などが挙げられています。最終的に認定試験を受けて審査があり、合否が決まります。eラーニング受講から約10か月の期間で取得できます。 ― 心不全患者の再入院を防ぐ取り組みで効果がみられた症例をご紹介ください。 70歳代の女性の利用者さんで、入退院を繰り返しておられました。独居の方で在宅に戻って2週間もすると必ず再入院となるのです。家で療養していると、浮腫が出て息切れが続き、また入院となるということの繰り返しでした。 私たちが週2回、訪問看護に入ることになって様子を見ていると、昔からの食生活を続けていることが原因であることがわかりました。梅干しが好きで、いつもご飯と一緒に食べておられ、さらにハムなどの加工食品で過剰な塩分を摂取されていました。本人も入退院を繰り返すのは嫌で、家でずっと暮らしたいとおっしゃっていました。 そこで、食事指導を徹底しました。塩分の摂りすぎがどうして心臓の負担を増やしてしまうのかというしくみからお話しして、毎食の塩分チェックを継続していきました。主治医とも相談して、むくみの程度によって利尿薬の増減についてご指示いただき、コントロールするようにしました。 別居している家族の方からも「私たちが言っても聞いてくれないけど、看護師さんの言うことは聞くみたいですね」と言われました。専門職が週2回入ってきっちりお話しすることで、この方の意識も変わっていったようです。日常生活の立て直しができて、再発・入退院を繰り返すことがなくなりました。 心不全の方は入院してつらい思いをしても、軽快するとすぐ忘れてしまい、元の状態に戻りがちです。食事や運動などの行動を変えていただくのは非常に難しいことだと思いますが、身体のしくみや薬が効くメカニズムなどを丁寧に説明すれば理解してくださいます。 一方的に「指導」するのではなく、行動科学的なアプローチによって行動変容を「促す」関わりが大切だと思います。そういう意味でも「心不全療養指導士」の資格はとても役に立っていると感じています。 * 心不全療養指導士の役割の1つとして、「医療機関あるいは地域での心不全に対する診療において、医師やほかの医療専門職と円滑に連携し、チーム医療の推進に貢献する」という項目があります。心不全患者の重症化・再入院を防ぐためには、病院だけでなく地域ぐるみの多職種の連携が不可欠です。チーム医療推進の要として活躍する「心不全療養指導士」の役割は、今後ますます大きくなりそうです。 ※詳しくは、一般社団法人日本循環器学会のホームページ上の「心不全療養指導士」(https://www.j-circ.or.jp/chfej/)をご覧ください。 ** 黒木 絵巨博多みずほ訪問看護ステーション 所長 大分県出身。3児の母。総合病院、透析クリニック勤務の後、2018年から訪問看護師として勤務。2021年3月に心不全療養指導士資格取得。 記事編集:株式会社照林社

特集
2021年10月26日
2021年10月26日

第1回 心不全看護の『質』を高める専門資格

心不全の再発・重症化予防のための療養指導に従事する医療専門職の認定資格、「心不全療養指導士」が注目されています。超高齢社会を迎えて増加する高齢心不全患者は、急性増悪を起こして再入院するケースが多く、再発防止のための取り組みが急務とされています。福岡大学病院循環器内科と博多みずほ訪問看護ステーションの地域連携の取り組みについては、このシリーズで以前お伝えしました。今回は、心不全の再発防止において実力を発揮して活動している「心不全療養指導士」の実践を紹介します。 心不全療養指導士とは 「心不全療養指導士」認定制度は、2021年度から日本循環器学会が始めた新しい制度です。この制度は、超高齢社会を迎えて心不全患者が急増している現状を踏まえ、心不全の発症・重症化予防のための療養指導に従事する医療専門職の資質の向上を図ることを目的として創設されました。心不全に関する基本的知識や療養指導のための技能が修得できます。 心不全療養指導士は、病院に限らず、在宅をはじめとした地域などさまざまな場面で幅広く活動し、心不全におけるチーム医療を展開していくことが期待されています。心不全患者のQOL改善をめざす多くの専門職が取得できる資格です。 2020年12月に行われた第1回の認定試験に合格し、心不全療養指導士として活動している博多みずほ訪問看護ステーション所長の黒木絵巨さんにお話を伺いました。 その日訪問する利用者さんの情報をタブレットでチェックする黒木絵巨さん(博多みずほ訪問看護ステーション所長) ― 高齢の慢性心不全患者に対するアセスメントはどのように進めるのでしょうか。 高齢の慢性心不全患者さんは、痛みなどの自覚症状をほとんど訴えません。私どものステーションの利用者さんは高齢者が多いのですが、訪問して最初にチェックするのが『むくみ』です。「浮腫が出ているな」と思って指摘しても、「これくらいのむくみはいつも出ているから大丈夫」とおっしゃる方がほとんどです。重症化してくると、「ちょっと動くと苦しい」などと訴えることもありますが、初期の浮腫や体重増加くらいでは、「いつもと同じ」という感覚のようです。 ― 「浮腫」が重要なサインの1つということですね。 心不全再発のアセスメントとして「インアウト」をみますので、その最もわかりやすい徴候が「浮腫」なのです。「足背」などの浮腫の状態をチェックしますが、まずお顔を見たとき「ちょっとむくんでいるな」と感じたら、これは大切なサインだと考えています。少しくらいの浮腫であれば食事内容などをお聞きして、水分や塩分の摂取状況を具体的に把握します。 そして、お薬のチェックをします。たいていの方が利尿薬を処方されていますが、服薬を自己判断してしまう方も多くいます。「しょっちゅうトイレに行くのが煩わしいから」、「今日は出かけるのでトイレに何回も行くのが嫌だから」などの理由で、指示されたとおりに利尿薬を飲まない方もいらっしゃいます。そういう方には、なぜこの薬が必要なのか、どうして絶対に飲まなければいけないのかということをわかりやすく説明します。 ― 具体的にはどのように説明するのですか。 まず、「心不全では心臓のポンプ機能が悪くなって全身に血液が行き渡りにくくなっています」というところからお話しします。「腎臓に流れる血液量が減ってしまって尿が作られにくくなると、体内の水分量が増えてしまいます。それで『むくみ』が起こってくるわけです。そうすると、ますます心臓の負担が大きくなってしまうので、余分な水分を尿として排泄させるために、利尿薬を飲んでいただくのですよ」と、身体の『しくみ』から説明するとよく理解してくれます。 解剖学や病態生理学などの難しいことを利用者さんや家族にかみ砕いて説明して、行動を変えていただき、生活を立て直してもらうのが私たち専門職の役割だと思っています。 ― 難解なことをわかりやく伝えるというのはとても難しいと思いますが・・・。 そうですね。第一に、私たちが病態生理をよく理解しておく必要があります。それをうまく「伝え」、最終的に「行動を変えていただく」働きかけをするのがプロフェッショナルの『わざ』だと考えています。 私は、訪問看護を始めるまでは主に透析看護を行っていましたが、透析患者に対しても行動変容を促すアプローチは必要でした。その点で、今回、「心不全療養指導士」の資格を取得するために行った勉強は、非常に役立っていると思っています。 「心不全療養指導士」の役割を以下に示しましたが、その中の②③は、まさに病態理解や療養指導の方法に関することです。学ぶべき項目の中の「心臓の構造・働き」「心不全の身体所見」「薬物療法」「患者教育に活用する心不全に関する知識」「服薬アドヒアランスへの支援」などは、今の現場での実践に非常に役立っていると思います。 心不全療養指導士に求められる役割 ①心不全の発症・進展の予防の重要性を理解し、その予防や啓発のための活動に参画することができる②心不全の概念や病態、検査、治療について理解し、それをもとに病状などを把握することができる③心不全の進展ステージに応じた予防・治療を理解し、基本的かつ包括的な療養指導を実施することができる④医療機関あるいは地域での心不全に対する診療において、医師や他の医療専門職と円滑に連携し、チーム医療の推進に貢献することができる⑤心不全患者に対する意思決定支援と緩和ケアに関する基本的知識を有している 日本循環器学会ホームページ 『心不全療養指導士とは』 (https://www.j-circ.or.jp/chfej/about/)より引用 * 次回は、黒木さんが心不全療養指導士の資格を取得するまでの経緯と、実際に関わった事例を紹介します。 ※詳しくは、一般社団法人日本循環器学会のホームページ上の「心不全療養指導士」(https://www.j-circ.or.jp/chfej/)をご覧ください。 ** 黒木 絵巨博多みずほ訪問看護ステーション 所長大分県出身。3児の母。総合病院、透析クリニック勤務の後、2018年から訪問看護師として勤務。2021年3月に心不全療養指導士資格取得。記事編集:株式会社照林社

インタビュー
2021年8月13日
2021年8月13日

オーストラリアで出会った訪問看護の魅力/海外訪問看護

オーストラリアでは訪問看護師特有の業務形態により、長年従事する看護師が多いため、求人の空きがなかなかないそうです。また、急性期、慢性期に分業されているため高いスキルが求められます。今回お話を伺った本田一馬さんは、オーストラリアで看護師資格を取得し、さまざまな経験を経て急性期の訪問看護師になりました。これまでの経緯や働き方、日本との違いについてご紹介します。 オーストラリアで訪問看護師になるまで Q 訪問看護師を目指したきっかけとは 高校卒業後に語学留学のために中国へ渡りました。その後、オーストラリアに移動したので、看護師資格を取得したのは27歳のときです。当時、オーストラリアでボランティアをしていて、そのなかで「看護師になってみてはどう?」と声をかけていただいたことがきっかけとなり、看護の道に進みました。 学生最後の実習で訪問看護を経験し、今までのクリティカルな領域とは大きな違いを感じました。患者さんと関わる中で、医学的な治療よりも住み慣れた家や家具、愛するパートナーやペットたちに囲まれた環境で、話を聴いてもらうことが一番の特効薬になり、大きな力が生まれることに気が付いたんです。 卒後はすぐにでも訪問看護師として働きたいと懇願しましたが、スタッフは経験8年以上のベテランばかり。師長からは「経験を積んできなさい」と諭されてしまいました。その言葉通り、救急外来や集中治療部、研究や老人ホーム勤務などの経験を積みました。その後も訪問看護の魅力が忘れられず、採用枠が空くのを待ちました。そしてある時、奇跡的にも1つポジションに空きが出たことで、念願だった急性期訪問看護師チームの一員になることができました。急性期訪問看護チームはなかなか求人情報が出ないこともあり、私の働いている医療機関ではゴールデンジョブと呼ばれることがあります。 急性期の訪問看護師の仕事 Q 急性期に特化した訪問看護とは オーストラリアの訪問看護は急性期と慢性期に分かれており、急性期では、1日3~4人の患者さんを訪問しています。1人当たり、約1~2時間かけて看護ケアを提供しています。また、日本でいうオンコールのような夜間対応はなく、必要があれば速やかに救急外来の受診をすすめています。 おもな仕事は、蜂窩織炎、骨髄炎、肺炎などを患った患者さんに在宅で抗生物質の投与を行うことがメインとなります。ほかには乳房摘出術後のドレーン管理などです。オーストラリアでは、ドレーンの抜去や抜糸なども看護師が行います。 急性期訪問看護チームの役割は、患者さんをできるだけ地域で看ることによって病院への入院を防ぐことです。そして容態が安定していても継続した点滴管理が必要な患者さんを、私たちのチームで受けることによって早期退院を目指し実現させることです。 患者さんの紹介は個人医院や病院からの紹介になりますが、入院されている患者さんが在宅でケアすることが可能かどうか退院前に確認し、難しそうであれば医師に対して意見することもあります。在宅では1人でケアすることになり、責任もありますからね。実際に働いてみて、やはり高い知識と技術、判断力が必要だなと感じます。経験や場数を踏んでいく必要があるという考えの方が多いですね。医療アシストを呼ぶことができない状況の中、とっさの判断を迫られたときに、いろいろな経験がとても役立ちます。 訪問看護ならではのかかわり Q 訪問看護師としてのやりがいとは 乳房摘出後のケアは男性看護師が介入しにくい部分ではありますが、まずは、患者さんと患者さんを取り囲む家族の皆さんと信頼関係を築くことだと思います。在宅なので、旦那さんが同席するケースが多くあります。一般的に女性としてのシンボルとして認識されている体の一部を失ってしまった妻を、少し離れたところから心配そうに見つめる旦那さん、そして、その妻に対して「どのように接していけばいいのか。」と悩む旦那さんは少なくありません。そういった家族の気持ちも含めたケアを行います。男性だから話せることがあったり、言いづらいことを引き出したり、家族全体のケアをいかにホリスティックに見ていくのかが大切ですね。 ただ、コミュニケーションが英語なので、細かいニュアンスが伝わりにくいことはあります。オーストラリアは多文化なので、患者さんの文化背景によって話し方やアプローチのしかたを考慮し、その患者さんに合った看護ケアを提供するよう心掛けています。もし、言葉が通じなくても、「自分のことを気にかけてくれている。」という姿勢が患者さんに伝わると信頼関係の構築につながり、コミュニケーションや看護ケアの提供がスムーズになるという経験をたくさんしています。そこがやりがいにもつながっていますね。 急性期の訪問看護は、一人ひとりにケアをする時間が長く取れることが魅力の一つだと感じます。もちろん、医師とも意見の交換をしますし、患者さんのために常に疑問を持って問いかけるようにしています。医師の言ったことがすべてとは捉えずに、納得できなかったことはとことん話し合います。看護師主体で率先して動けるので、ここもやりがいの一つですね。 日本とオーストラリアの懸け橋に Q 今後のビジョンについて 今は色々な意味で自分の視野や可能性を広げるために、大学院で修士課程(プライマリーヘルスケア看護)の勉強をしています。このまま学業に励み、博士課程まで勉強できればと思っています。博士課程取得後には、オーストラリアと日本のさらなる共同看護研究の発展や看護技術のエクスチェンジプログラムなどに加担する事で、お互いの科学的な看護実践の質を高め、より一層、患者のニーズに沿った安全で高度な看護ケアの提供につながればと考えています。日本からオーストラリアに留学や短期プログラムに参加する学生にも、グローバルな視点が身につくように色々な経験ができるような支援もしていきたいですね。お互いの文化を大切にしながら良いアイディアを取り込んでいくことで、良い変化が生まれ、最終的には患者さん、そしてコミュニティーの健康へつながると信じています。 また、知り合いの同僚が日本に行った時の感想を聞くと、とても親切であり、素晴らしい国だと言ってくれます。そんな自分の国を誇りに思います。日本の先輩や後輩の方々に、少しでも役に立つことができるよう精進していくことが最優先だと思っています。 ** Registered Nurse Nurse Immuniser Central Coast Local Health District Acute Post Acute Care Team (急性期訪問看護所属) 本田一馬 【略歴】 2010年 ニューカッスル大学 (オーストラリア) 医学部看護学科卒業 2011年 オーストラリア連邦内閣総理大臣賞を受賞し、山口大学へ客員研究員非常勤講師として赴任 2014年 主任看護師Aurrum Erina (高齢者介護施設) 2015年 正看護師 急性期内科 (Gosford Hospital, Australia) 2018年 急性期訪問看護師 Acute Post Acute Care Team, Gosford Hospital 2020年 シドニー大学 医学部保健学科修士課程 Master of Primary Health Care Nursing 入学 2021年 Nurse Immuniser として急性期訪問看護の傍、ワクチン接種業務に従事 Facebook:https://www.facebook.com/KazyAus Twitter:@KazumaHonda Instagram:kazuma_honda_aus

インタビュー
2021年5月18日
2021年5月18日

スタッフのモチベーション向上・維持を意識した環境づくり

訪問看護ステーションハートフリーやすらぎでは、スタッフのモチベーションの向上と維持のためにどのようなことを意識しているのか、引き続き常務理事の大橋さんと所長の田端さんにお話を伺います。 資格を積極的に取りに行ける環境を提供 ―ハートフリーやすらぎでは、資格取得や研修を受けに行きやすい環境が整っているのでしょうか? 田端: そうですね。2010年に大橋さんが認定看護師資格を取りに行き、「すごく勉強になるし、うちのスタッフみんなにも取ってほしい」と言われてから私も興味が湧き、2012年に訪問看護の認定看護師資格を取りました。大橋さんというロールモデルがいたおかげで、利用者さん宅に訪問する姿、地域の医師やケアマネとの連携のやりとりなど、間近で魅力を教わることができたんです。 2018年には、特定行為研修も受講しました。病院での胃ろうの交換には、ヘルパーさんの付き添いやタクシーの予約、移動の準備、病院での待ち時間などの負担がかかり、たった10~15分の処置に多大な労力が必要です。これが家でできれば、利用者さんが地域で暮らしていくのに役立つ資格ではないかと。 ―受講にあたり、金銭的補助はありましたか? 田端: 資格取得や研修に関しては出勤扱いで給料保障(ボーナス含む)をしてくれました。 なかなか、個人の訪問看護ステーションではこうした保障はないですよね。仕事を辞めてきたり、休職扱いで貯金を切り崩していたり、という人も多かったので…。学びやすく、研修に出やすい環境を整えてもらっています。 「オールOK」の精神でスタッフを後押し ―大橋さんはどうして、資格や研修などスタッフの学ぶ環境を後押しされているのですか? 大橋: もう私は、「ええやん、ええやん」言っているだけです。私が若いときに学びたい意欲が強かったのですが、「研修に行きすぎ」「あなたは2回行ったから、次はあの人に」と、頭から抑え込まれていたことがありました。別に研修に行きたくない人に嫌々行ってもらうくらいなら、学びたい人が行ってシェアすればと思っていました。 なので、自分がトップになったときには「オールOK」でやりたいと。学びたい人はどんどん学べ、学びたくない人は学ばなくてもいいと…。 ただ、学んだ人がそばにいることで、周りも自然に学べる。それは田端さんから教えてもらったことです。 褒めることがスタッフの活力に ―看護師さんからの人気が高く、魅力あふれるハートフリーさんですが、その理由はなんでしょうか? 田端: うちの看護師はみんな元気で、生き生きしているとよく言われます。それがいい看護に繋がり、患者さんや家族にもいい影響を与えると大橋さんからもずっと教えられているので、みんなで引き継いでいこうという思いがあります。 大橋さんは結構小さなことでも褒めてくれますね。「ありがとう」は毎日言うし、「今日の髪型似合っているな~」と何気ないことから、看護のことまで。利用者さんの家族がこう言ってくれていたという話を私から大橋さんに報告すると、スタッフ本人に「聞いたで~」と言いに行きますから。 大橋: 褒め言葉は無料ですから。特に褒めることは大事にしています。しかも一対一で、一人ひとりを特別に褒めます。 田端: 半年に1度、人事評価がありますが、一般的には課題や改善点を言われて、ネガティブなイメージも多いと思います。そこでも、必ず褒めることをしています。「ここができていないから頑張ろう」ではなくて、「ここができていたね、また頑張っていこう」と。 大橋: できていないところが目につくかもしれないけど、できていないところをわざわざ面接の場で言うなんて、管理職としてはあってはならないと思っています。その都度、注意したらいいんです。 「1週間前のあれな~」と言うなんて、こんな注意のしかたはありません。だから、人事評価ではしっかりとできていたことを褒める、そうしたらスタッフは元気に部屋を後にしますよ。 人事評価はご褒美をいただくような場であるべきだと思っています。 ** 医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者 大橋奈美   三次救急で8年、看護短大の非常勤講師として1年、公立病院で5年勤務の後、ハートフリーやすらぎを立ち上げる。 日本訪問看護認定看護師協議会 代表。 医療法人ハートフリーやすらぎ 訪問看護ステーション所長 田端支普  総合病院の小児科を含めた混合病棟で6年、産婦人科混合病棟で4年勤務後、ハートフリーやすらぎに入職し、訪問看護師に。2012年に訪問看護認定看護師の資格を取得。2018年に特定行為研修修了。

インタビュー
2021年4月27日
2021年4月27日

低い離職率を実現する採用戦略と教育システム

人材不足が大きな問題となっている訪問看護業界。株式会社ツクイは訪問看護事業を拡大しつつも、低い離職率を実現しています。 今回は、事業企画推進部部長の竹澤仁美さんに、離職率低下につながる採用戦略や教育システムについて詳しくお話を伺いました。 採用プロセスの工夫 ―看護師の採用において何か工夫されていることは? 竹澤: 特別なことはしていないですが、採用説明会は時間とお金をかけて必ず3日間ほど開催し、私も必ず行くようにしています。その後体験会も実施しています。説明会の参加者は多いときで1日10~20人ほどで3回に分けて行うこともあります。 応募は、ハローワーク経由でも十分にありますし、友達の紹介や、社内の紹介制度で社内移動してくる人もいます。また、各地域に配属されている、リクルーターという採用担当者から、各地域の状況や分析した情報をもらっています。 ―説明会の後はどのような採用プロセスなのでしょうか。 竹澤: そのあとは一次面接が管理者、二次面接は私かエリア長が行います。管理者面接の場合は、私が一次面接から行きます。採用面接は大事にしていて、会社の概要から訪問看護の説明も含め一時間くらい話し、そこから面接に入ります。 その後着任するまでは、リクルーターから状況確認や必要資料の手配など、しっかりフォローをするようにしています。 ―応募される人は、病院に勤めている人が多いですか?皆さん、どのような理由でツクイを選ばれるのでしょうか。 竹澤: 休職中の方もいますし、病院勤務の方もいます。会社が大きいということと、会社としての教育体制が整っているという部分をご評価いただいているようです。 給与体系が東京を標準として全国で概ね一緒であることや、管理者にも残業代が出るという部分も理由かもしれません。 採用時大切にしているポイント ―採用する側として、こういう人を採用しているとかはありますか。 竹澤: 採用基準は設けていませんが、「つくいびと」という社内の指針に合っているかを面接で見ます。人間性が一番のポイントですね。看護経験はあとから積算できますし、看護技術や知識はこちらで教育することができるので。 最近、経験年数は少ない若い看護師が入りましたが、病院の経験に根付いているベテランよりも、若い子の方がスッと入り込める部分もあり、お客様からのクレームもすごく少なかったりします。そのとき最善の判断や、対応ができるようになるには時間がかかるかもしれませんが、新人の看護師でも採用して育てられる土壌にしていくのが目標です。 ―管理者はどのように探し、アサインされるのでしょうか? 竹澤: 知人の紹介などもありますが、他社と同様に人材紹介会社やハローワーク経由での募集もします。ツクイブランドの力もあってか、応募は結構あります。皆さん一般職で応募されてきますが、その中から「この人なら管理者に向いているな」と思った方をアサインします。 管理者になる人は、管理者経験や病院などで主任や副師長などをやっていた人が多いのは事実ですが、ツクイの管理者業務は明確に文章化されていて、わからない事を聞ける体制もしっかりしているので、引き受けてくれる方が多いです。 ―離職率はどのくらいですか。低い離職率を実現するためには何が必要でしょうか。 竹澤: 一年間で辞めた人は、10%ほどです。ミスマッチがないよう、採用面接のときにツクイの将来性も含めて、働くイメージをわかりやすく伝えるようにしています。 訪問看護だけでずっと働いて、疲れ果てて辞めてしまうということにならないよう、社内で異動ができたり、次のステージを用意したりして、夢を持って仕事をしてほしいという話もします。ご縁があってツクイで働いてくれている看護師には、「ツクイで働いてよかった」と思ってもらいたいです。 管理者には「10褒めて、1指導する」ということを伝えています。この仕事はストレスも多いので、スタッフに感謝を伝えることを大切にしています。 教育システムを効率化する ―教育についてはどのようなシステムになっているのでしょうか。 竹澤: 最初に、「ツクイの基本」を身に着けてもらいます。e-ラーニングを使って、制度の事や記録、ハラスメント、ダイバーシティ、コンプライアンス、ツクイの考える育成、衛生管理などさまざまな内容を3日間で受講します。 その後、管理者や所長によって看護のオリエンテーションを行い、現場でのOJTとなります。現場が忙しい事業所だとOJTに入りながらオリエンテーションを行うところもありますが、2021年度からは管理者に負担をかけないよう、WEBでも教育サポートができる体制を整えていく予定です。 ―OJTの後はどのようなフォローを?教育パスはあるのですか。 竹澤: 看護ではおおまかな教育パスのようなものがあります。一人ひとり経験値が異なるので、目標設定は管理者がそれぞれに応じて行い、フォローしていきます。 管理者教育に関しては、定期的なe-ラーニング研修を年に2回行い、数字の見方、営業戦略、医療的な内容などを学びます。新しく入った人が管理者になる場合は、導入研修のあとに試験があり、それに受からないと管理者にはなれません。 また、ツクイではキャリアパス制度を設けていて、スペシャリストコースとマネジメントコースに分かれています。eラーニングの中にも、それぞれのコースに沿った内容があり、一人ひとり、特性に合ったコースを選択できます。 管理者にはなりたくないと思っていても、スペシャリストとしてキャリアアップすれば給料もあがりますし、専門性も高めることができます。 ―それらの教育システムは誰が作っているのですか? 竹澤: 人事です。項目は100から200ほどありますが、今後は訪問看護ならではの項目も入れたいと考えています。日本訪問看護財団が出しているeラーニング(※1)も受講してもらっています。 教育システムはすべてマニュアル化され、eラーニングの見方から、いつ管理者になっても困らないようなシステムを整えています。 また、サービス管理部では、事故起こしたときの対応から書類の書き方まで、管理者がそれを見れば対応できるようなシステムを作っています。まだ足りていない部分もありますが、介護事業でツクイが培ってきた経験が、教育システム作りに活かされていると思います。 ―今後、教育に関して取り組んでいきたいことはありますか? 竹澤: ラダーにそった教育を可視化できるようにしたいです。導入研修や管理者研修など、管理者向けの部分が多いので、スタッフもスキルアップできる制度を作りたいと思っています。 他社のような研修室をつくるのもいいなと思います。オンラインもいいですが、対面でできる研修も大事にしたいです。   【参考】 ※1 公益財団法人 日本訪問看護財団 eラーニング https://www.jvnf.or.jp/e-learning/ ** 株式会社ツクイ 事業企画推進部 医療系事業プロジェクト 部長 竹澤仁美

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