セミナーレポートに関する記事

ストーマトラブル対処法 アセスメントと原因【セミナーレポート前編】
ストーマトラブル対処法 アセスメントと原因【セミナーレポート前編】
特集 会員限定
2025年2月18日
2025年2月18日

ストーマトラブル対処法 アセスメントと原因【セミナーレポート前編】

NsPace(ナースペース)では、2024年11月8日にオンラインセミナー「事例で解説!ストーマトラブル対処法」を開催しました。講師にお迎えしたのは、ながのホームケアコンサルティング代表/皮膚・排泄ケア認定看護師の原慎吾さんです。アセスメント方法や装具、アクセサリーの選び方など、トラブル解消のノウハウを教えていただきました。セミナーレポート前編では、アセスメントに必要な知識をまとめます。 ※75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】原 慎吾さんながのホームケアコンサルティング代表/皮膚・排泄ケア認定看護師急性期の中核病院に20年以上勤務し、ストーマ、褥瘡の管理などを10数年経験。トラブルが起きても通院できない患者さんをサポートする必要性を感じ、起業。病院や施設、医療機器メーカーへのコンサルティング事業を展開するほか、ストーマアクセサリーの開発も手がける。2021年には訪問看護ステーションも開業。 ストーマトラブルのアセスメントの重要性 ストーマ装具装着により皮膚トラブルが起きたとき、まずはしっかりアセスメント行い、原因を明らかにすることが重要です。そうしないと、トラブルが再発してしまいます。ストーマ装具装着に関連する皮膚トラブルの主な原因は、以下の4つです。 <皮膚トラブルが起こる4つの原因>原因1:皮膚保護剤によるアレルギー(医学的要因)原因2:細菌や真菌による感染(生理的要因)原因3:排泄物付着によるもの(科学的刺激)原因4:装具の脱着による刺激(物理的刺激) 「原因4」については、面板を無理に剥がすようなケースで起こり得るため、粘着剥離剤を使用したり、面板を丁寧に剥がしたりすることでリスクを軽減できます。ほかの3つについては、それぞれの特徴や対処方法を詳しく見ていきましょう。 原因1:皮膚保護剤によるアレルギー(医学的要因) アレルギーが起きた場合は、今使っているものと似た形状の「他社製の装具」に変更します。同じメーカーだと面板の素材が共通する場合が多いためです。 その上で、アレルギー反応が起きている部分には、ステロイド(ミディアム以下のクラス)を使います。ポイントは、油脂性軟膏ではなくローションタイプの外用剤を選択すること。油脂性軟膏を塗ると、面板が粘着しなくなってしまいます。 2週間ほどステロイドを使っても改善が見られなければ、真菌感染を疑って皮膚科を受診してください。なお、ステロイドより先に抗真菌薬を使ってはいけないことに注意しましょう。抗真菌薬を使うと「肌表面の真菌」がいなくなり、顕微鏡検査や培養で真菌の有無を鑑別することが困難になります。 原因2:細菌や真菌による感染(生理的要因) 皮膚保護剤によるアレルギーが「ストーマ粘膜から全周的に赤くなる(面板を貼っている箇所以外はきれい)」のに対し、細菌や真菌による感染の場合、面板の外を含めて赤い斑点が連続せずに広がります。 この場合は、抗真菌薬(できれば軟膏ではなくローションタイプ)を使います。装具を変更する必要はありません。 なお、医師から「現状の装具の交換頻度よりも高い頻度で抗真菌薬を塗って」と指示されるケースもあります。その場合、皮膚トラブルが解消されるまでは、装具の交換頻度を上げなければならず、粘着力が強い長期交換用の装具を使用すると剥離刺激によって皮膚に大きな負担がかかります。薬剤を塗る期間中は、長期交換用の装具の使用は避けてください。 原因3:排泄物付着によるもの(科学的刺激) 排泄物の刺激で皮膚トラブルが起きた場合は、同じ装具を使用していても改善されないので、他社の装具への変更やアクセサリーの追加によって対処します。 患部の特徴としては、ストーマ粘膜から連続して発赤、びらんが見られます。何らかの原因で、ここに排泄物が触れていると考えられるでしょう。 排泄物の漏れやもぐりこみの原因をアセスメントしつつ、皮膚の改善を図ると、10日間ほどで上の写真のような状態になるはずです。その後、装具の変更を検討してください。発赤やびらんがあり、浸出液が出る状態では、装具をうまく装着できません。 なお、皮膚の改善にあたっては、安易に薬剤を使ってはいけません。肛門周囲によく使われるアズノール軟膏、亜鉛華軟膏などを使うと、皮膚を保護する面板をうまく貼れなくなります。 漏れ・もぐりこみの原因を探る 科学的刺激への対処では、漏れやもぐりこみの原因を探る必要があるとご紹介しました。具体的には、以下のような原因が考えられます。 装具と腹壁の不適合 装具が腹壁の状態に合っていないケースです。ストーマ造設時から長年にわたって同じ装具を使っている方は多くいらっしゃいますが、体型や皮膚の状態は加齢に伴って変化するため、装具の見直しが必要です。 装着時の不適切な手技 軟膏を塗る、洗浄後の濡れた皮膚に面板を貼る、面板を貼ってすぐに体を動かすなどの不適切な手技もトラブルの原因です。 面板には「初期の密着力が弱い」という特徴があります。装着してからしばらくすると体温や汗によって皮膚保護剤が溶けて皮膚のしわに入り込み、12~24時間かけて完全に密着します。そのため、貼った直後に動くと隙間ができて剥がれてしまう可能性があります。貼ってから5〜10分は体を動かさず、面板を温めるように上から手を置くのがベストです。 装具の限界を超えた装着 「もったいない」という考えから、装具を適切なタイミングで交換しないケースもよく見られます。中には「漏れるまで貼っている」という方も。利用者さんの状況を確認し、適切な使用期間で装具交換ができるように導いてください。 なお「漏れのリスク」は、剥がした面板の裏面をチェックするとわかります。 漏れない装具は、裏面のふやけた部分が「きれいな正円」を描いていますが、漏れやすい装具では円がいびつな形になる傾向があります。便の潜り込み具合や膨潤・溶解の程度などは漏れの原因を探る手がかりになるため、面板の裏側を確認する習慣をつけることをおすすめします。 次回は装具やアクセサリーの選び方、ストーマ傍ヘルニアへの対応やストーマトラブルの症例について解説します。 >>後編はこちら(※近日公開)ストーマトラブル対処法 装具選択とケーススタディ【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

【2月4日up】足のミカタ 重症化を防ぐフットケア 爪のケア実践編【セミナーレポート後編】
【2月4日up】足のミカタ 重症化を防ぐフットケア 爪のケア実践編【セミナーレポート後編】
特集 会員限定
2025年2月4日
2025年2月4日

足のミカタ 重症化を防ぐフットケア 爪のケア実践編【セミナーレポート後編】

2024年10月25日に開催したNsPace(ナースペース)オンラインセミナー「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」。在宅でのフットケアにも尽力している倉敷市立市民病院 形成外科医長 小山晃子先生に、訪問看護で役立つ足病変の知識やケアのノウハウを解説いただきました。セミナーレポート後編では、具体的なフットケアの方法を紹介します。 ※約80分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら足のミカタ 重症化を防ぐフットケア アセスメント編【セミナーレポート前編】 【講師】小山 晃子先生倉敷市立市民病院 形成外科 医長平成16年に高知大学を卒業し、倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修を修了。平成18年から川崎医科大学附属病院 形成外科・美容外科にて、褥瘡・創傷治癒を学ぶ。平成24年より現職。入院・外来・在宅で医療を提供しながら、医療者や介護者、市民を対象としたセミナーも行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動している。 圧迫による鶏眼や胼胝を防ぐフットケア 鶏眼(魚の目)や胼胝(タコ)は、潰瘍につながる恐れがあるため、フットケアでの予防が大切です。鶏眼や胼胝は、皮膚に角質が「くさび」のように突き刺さってできており、踏み続けると皮膚が破れる可能性があります。なお、鶏眼や胼胝にできた黒い点は、赤血球の色によるもの。すでに出血しているので、早急な対応が必要です。 具体的には、専門外来に相談し、適切なフットウェア・履物を選びましょう。着用して実際に歩き、鶏眼や胼胝がある箇所に圧がかかっていないことを確認してください。 足病変がある利用者さんの中には神経障害がある方も多く、潰瘍に気づかないケースもあります。ぜひみなさんの目と手で、圧迫もケアしてください。 【ケアのための知識】爪の構造 爪切りを含むフットケアをするにあたっては、爪の構造理解や名称を押さえておくことも大切です。 爪母(そうぼ) 爪をつくる「工場」のような組織で、断面図で見ると爪の根っこにあります。爪母でつくられた爪が、「爪床」と呼ばれるベルトコンベアのような皮下組織によって前に送り出され、次に説明する「爪甲」ができあがります。つまり、根本に近い部分は最近できた爪で、爪先の爪は1〜1年半前に生まれた爪です。 爪甲(そうこう) 爪の甲。爪周辺の皮膚の中にも埋まっており、ケアする際は「見えない部分にも爪甲がある」ことをイメージする必要があります。 爪郭(そうかく) 爪の縁の皮膚。両横を「側爪郭(そくそうかく)」、根本を「後爪郭(こうそうかく)」といいます。治療で使われる言葉なので、知っておいてください。 【ケアのための知識】爪の役割と変形の原因 爪は歩行を支える役割を担っています。歩く際に地面から受ける圧力を爪甲が受け止めることで、正常に歩行できるのです。 しかし、「歩かなくなる(爪に圧がかからなくなる)」と、爪甲は次第に縦にも横にも湾曲。あまり歩けなくなった方の爪が曲がるのはこのためです。 また、爪先を踏みしめて歩けていない場合も、爪に力が加わらず、同じように湾曲します。その場合、足の母趾裏にタコができるのが特徴です(左下写真参照)。 このように爪が湾曲し、「巻き爪」「陥入爪」になってしまうと、爪が非常に切りにくくなります。指先を踏んで歩く、もしくは同様の圧がかかるような運動を行うなどして、日頃から予防に努めましょう。 ただし、湾曲の程度が深刻な場合(右下図参照)は圧をかけると爪がホチキスの針を畳むように食い込んでしまうので、可能な範囲で爪切りをしつつ、病院に相談してください。そのほか、 外反母趾がある 立ち上がることができない 痛みや傷がある といった場合も、病院の受診が必要になります。 正しい爪の切り方 爪を切る際は、上の写真の姿勢で行ってください。使用する爪切りは、力が伝わりやすいバネつきのもの、爪をしっかりとキャッチする「のこぎり刃」のものがおすすめです。 爪を切る際は、あらかじめ目安となる線を引き、少しずつ小分けにして切り進め、線のところまで切りましょう。上の写真の場合、20回ほど刃を当てて切るイメージです。 湾曲した爪も、ご紹介した爪切りで少しずつ切ると、写真のように整えられます。また、湾曲に爪切りを沿わせるようにすると、痛みを抑えられます。 在宅における取り組み 在宅でのフットケアに長く取り組む中で、すべてのケースで「足病の完全な解消」を目指すのは難しく、「現状維持」を選ばざるを得ない利用者さんもいらっしゃると感じています。ただ、治療の目標に関係なく、ケアを続けることは必要です。 今後は、すべての方に継続的にケアを提供できる体制づくり、例えば「病院と在宅・施設との連携強化」が重要になると考えています。その一歩として、本セミナーでお伝えした内容が、みなさんの日頃の看護に少しでも役に立ち、「利用者さんの味方」として良質なケアを実践するヒントになれば幸いです。 * * * 足病ケアの質を向上するためには、病院や診療所と在宅医療を提供する方々がしっかりと連携し、チーム医療を実現することが欠かせないと感じています。訪問看護師さんの中には、今フットケアについて悩んでいる方も多いでしょう。そんなときは、ぜひ病院に相談してください。近年、スマートフォンやタブレットを利用することで、時間や場所に依存せず情報を共有できるようになりました。特に「見方」を共有する上で、画像の共有は大変重要です。在宅の患者さんと医師との間をつなぐ訪問看護師さんの、強力な「味方」を活用くださいね。 これからの時代、足病の利用者さんを助けるには、訪問看護師さんの存在が絶対に必要です。よりよい未来に向けて、みなさんと連携していければと思います。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

「褥瘡の評価とケアの実践」 対面実技セミナーレポート(12/7開催)
「褥瘡の評価とケアの実践」 対面実技セミナーレポート(12/7開催)
特集
2025年2月4日
2025年2月4日

「褥瘡の評価とケアの実践」 対面実技セミナーレポート(12/7開催)

2024年12月7日(土)に、帝人株式会社の東京本社にてNsPace主催の対面セミナー「褥瘡の評価とケアの実践」を開催しました。ご登壇いただいたのは、皮膚・排泄ケア認定看護師で、教育支援やコンサルティングのトップランナーとして活躍する岡部美保さん。デモンストレーションを交えた実践的なケア方法のレクチャーはもちろん、現場における不安や疑問解決につながる知識やリアルなテクニックを幅広くご講義いただきました。約4時間にわたるセミナーの様子をダイジェストでお届けします。 【講師】岡部 美保さん皮膚・排泄ケア認定看護師 在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に「在宅創傷スキンケアステーション」を開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 褥瘡の評価やケア方法のイロハを復習 まずは講義形式での学習。参加者の皆さんには、以下のセミナーレポートをあらかじめお読みいただいた上で受講いただきました。 過去に岡部さんにご登壇いただいたオンラインセミナーのレポート記事 写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 褥瘡の評価/セミナーレポート前編 写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 事例に学ぶ創部の見方/セミナーレポート後編 治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針~【セミナーレポート前編】 治りにくい褥瘡ケア~代表例と具体的なケア~【セミナーレポート後編】 講義では、褥瘡の定義や原因はもちろん、褥瘡状態の評価スケール「DESIGN-R(※)2020」について解説。特に評価に迷いやすい「G:肉芽組織」や「N:壊死組織」といった項目を評価する際のポイントや、外用薬・創傷被覆材選びの指標などを教えていただきました。「不良肉芽と壊死組織の見分けに悩む」「良性肉芽か不良肉芽か判断しにくい」といった不安に対しても、組織の硬さや色合い、見た目など、評価の具体的なポイントを解説いただき、参加者の皆さんは熱心にメモを取っていました。 褥瘡ケアにおいて重要な外用薬については、薬効成分だけでなく「基材」を考慮することも重要。また、創傷被覆材は「被覆材の大きさ、厚さ、吸水量などの特徴を理解した上で、創傷の状態に応じて選ぶこと」が基本とのこと。過去に開催されたオンラインセミナーの復習だけに留まらず、プラスαの知識も得られる贅沢な内容となりました。 より実践的な知識も解説された座学の時間 チームに分かれて症例の評価やケアを検討 座学の後は4人1組に分かれ、症例検討会が実施されました。【症例検討会の流れ】 具体的な症例に対する評価とケア方法を検討 創傷模型にケアを実施 上記の内容と理由を発表 岡部先生による解説 参加者には、療養者の資料や創傷模型、ケア用品などが配布され、まずはDESIGN-R2020を使った褥瘡の評価からスタート。「深さ(Depth)はd2(真皮までの損傷)かD3(皮下組織までの損傷)のあたりでしょうか」「サイズ計算は私が担当しますね」「壊死組織(Necrotic tissue)とポケット(Pocket)はないので、NとPは0点で良さそうですね」などと意見を交わし、お互いに協力し合いながら進めていきました。 外用薬は講義資料を参考に選定。講師の岡部さんから「外用薬は評価スケールの大文字に着目して、改善するための優先順位を考えながら選んでみましょう」といったヒントがあると、「やはりヨウ素系の外用薬ですよね」などとケア方法を確かめ合っていました。 評価スケールをもとに真剣にケア方法を協議 創傷模型を使ったケアの実践では、創傷被覆材やテープの厚さや大きさ、貼る位置を確かめながら丁寧に進めていました。「外用薬はこのくらいの量をガーゼに塗ってから貼るのが良さそう」「仙骨部の褥瘡の場合、肛門側は八の字貼りが良いのではないか」など、議論が活発に行われていました。 外用薬の塗り方や創傷被覆材の貼り方も検討 褥瘡の状態評価とケアが終わると、いよいよ発表の時間です。DESIGN-R2020の点数をはじめ、外用薬の選定理由やケアのポイントが各チームから発表されました。どの参加者も真剣に聞き入り、発表が終わると拍手が起きていました。 その後、岡部さんが評価とケア方法を解説。チームによって個性が出ていましたが、岡部さんの評価と大きくずれることはなく、外用薬の分類も岡部さんの選んだものと一致。 各チームの発表も先生の解説も真剣そのもの 前半の講義が活かしつつ、具体的な症例をもとに評価・ケア方法を検討し、ディスカッションすることで、褥瘡に対する学びをさらに深めていきました。 気づきの多いデモンストレーション 最後は岡部さんによるデモンストレーション。褥瘡周囲皮膚の洗浄や拭き方、外用薬の塗り方や創傷被覆材の当て方など、一連のケア方法を見せていただきました。 「洗浄料は何プッシュくらいすると思いますか?」という質問からスタートした実演は、いきなり参加者を驚かせる展開に。岡部さんは10プッシュ以上の泡を手に取り、多くの参加者が「泡はこんなに山盛りでいいんだ!」「こんなに使っていなかった!」などの声があがりました。また、ポケットがある方の洗浄方法やカテーテルの使い方、拭き方のコツまで丁寧にレクチャー。 食い入るように先生の手元を見つめる参加者の皆さん 外用薬の塗り方や量、臀裂部のケア方法、ワセリンの塗り方、患部を観察する際の注意点なども伝えられました。 参加者からは「褥瘡は治癒傾向なのに対し、ポケットが縮小しない場合のケア方法は?」「高機能な創傷被覆材を使用したいが、購入していただくのが難しい場合はどうすれば良いか」「褥瘡を繰り返している方で、皮膚に盛り上がりや凹凸がある場合のケア方法は?」などの具体的な質問が寄せられ、訪問看護現場での褥瘡処置に対する真剣な姿勢が感じられました。 参加者からの質問にも丁寧に回答する岡部さん 現場の「リアル」を語り合った懇親会 セミナー終了後は、懇親会も開催。参加者の皆さんから「状態にあった外用薬を処方してもらうには、担当医に対してどのように報告・相談したらよいか」「創傷被覆材を代用する場合、どのようなものが使用できるか」など、質問も多く挙がっていました。 NsPaceの「N」マークを作って記念撮影も ◆参加者の感想「DESIGN-R2020の重要性を改めて認識しました。セミナーを通して各項目の評価のポイントを学ぶことができて良かったです。これまで良性肉芽か不良肉芽か迷うことがあったのですが、具体的な判断の目安も知れたので、現場ですぐに活かせそうです」「この秋に新たに事業所を立ち上げて、管理や教育が必要な立場になったのでセミナーに参加しました。評価やケア方法を再確認する良い機会になったので、今日のセミナーを参考に、事業所の看護の質向上に努めたいです」 そのほかにも、「受講前は評価方法や外用薬の選定基準が曖昧でしたが、受講してみて不安が解決しました」「知識を得たことで、今後は根拠をもとに自信を持ってケアを実践できそう」といった声も聞かれました。 ◆講師 岡部さん コメント「普段から訪問看護の現場で褥瘡ケアを実践されている方々にご参加いただいたので、評価もケア方法の検討も非常に的確で、皆さまの日頃の看護風景が目に浮かぶようでした。肉芽組織や壊死組織の見分け方、炎症の有無など、参加者の皆さんが評価に悩まれているシーンもありましたが、評価スケールを日常的に使用することで、自身の評価の精度が向上します。ぜひケア方法を検討する指標としても、苦手意識を持たずに評価スケール を活用していただければと思います。また、私は今後、褥瘡の患者さんは増えていくと想定しています。看護の質を保ち、さまざまな職種がチームとなって、褥瘡に悩む患者さんを少しでも減らしていけると良いですね」 * * * NsPaceでは、月に1回程度、オンラインセミナーも開催しています。ぜひ学びの場をご活用ください。 ※ DESIGN-Rは、一般社団法人日本褥瘡学会の登録商標です。 取材・執筆・編集:高橋 佳代子

足のミカタ 重症化を防ぐフットケア アセスメント編【セミナーレポート前編】
足のミカタ 重症化を防ぐフットケア アセスメント編【セミナーレポート前編】
特集 会員限定
2025年1月28日
2025年1月28日

足のミカタ 重症化を防ぐフットケア アセスメント編【セミナーレポート前編】

2024年10月25日、NsPace(ナースペース)オンラインセミナー「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」を開催しました。講師にお迎えしたのは、在宅でのフットケアにも尽力されている小山晃子先生。訪問看護師が知っておきたい足病変とそのアセスメント、ケアの知識を、たくさんの症例とともに教えていただきました。セミナーレポートの前編では、足病変のアセスメントに必要な知識をまとめます。 ※約80分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】小山 晃子先生倉敷市立市民病院 形成外科 医長平成16年に高知大学を卒業し、倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修を修了。平成18年から川崎医科大学附属病院 形成外科・美容外科にて、褥瘡・創傷治癒を学ぶ。平成24年より現職。入院・外来・在宅で医療を提供しながら、医療者や介護者、市民を対象としたセミナーも行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動している。 訪問看護師さんに伝えたい足の「ミカタ」 本セミナーでは、フットケアをするにあたり「何を見て、どう考えて、どう行動したらよいか」、つまり足の「ミカタ(見方)」をお伝えします。あえてカタカナ表記にしているのは、「味方」の意味も込めているからです。みなさんには「利用者さんの味方になる」という姿勢でケアをしてほしいと考えています。 また、多職種との連携において重要なのは、言葉や考え方の統一。そして、利用者さんを中心に据えた共通の未来像を描くことです。在宅と病院の連携においても、同じ「ミカタ」で物事を捉え、同じ言葉で情報を伝え合うことで、共に利用者さんを支えてもらえたらと思います。 足病の定義と捉え方のポイント 最初に、「足病のミカタ」をご紹介しましょう。「重症化予防のための足病診療ガイドライン」では、足病を以下の7つに分けて定義しています。 糖尿病性足病変 → 血流・感染・圧迫 末梢動脈疾患(PAD) → 血流 慢性静脈不全症 → 血流・感染 慢性腎不全に伴う足病変 → 血流・感染 下肢リンパ浮腫 → 血流・感染 膠原病による足病変 → 血流 神経性疾患による足病変 → 圧迫 一見難しく感じるかもしれませんが、矢印右側の「血流」「感染」「圧迫」という3つの切り口で考えると、それぞれの問題や必要な対応を捉えやすくなるはず。私はこの3つの切り口を、「足病の3つのミカタ」と呼んでいます。 足を洗う前に必ず確認すべき「血流」 「足病の3つのミカタ」のうち、特に訪問看護師の方々に注目してほしいのが「血流」です。 ここでひとつ質問があります。みなさんはフットケアにあたり、利用者さんの足を洗いますか? 洗いませんか? その回答をふまえて、以下のケースをご覧ください。 [ケース1]糖尿病を患い、神経障害があるために足の状態が悪いことに気づいていない利用者さん。足を洗うと、皮膚が破れていた箇所に新しい皮膚が形成され、6週間後には傷が治りました。創傷処置もしましたが、足を清潔に保つことで治癒が促進されています。 [ケース2]糖尿病で足の一部が黒くなっている利用者さん。足を洗ったところ、感染が一気に進み、足の広範囲が壊死してしまいました。 ケース2で状態が悪化した理由は、「血流障害があり、傷を伴う足」だったためです。こうした状態の足を漫然と洗ってはいけません。 特に糖尿病性の足潰瘍は、血流障害の有無で治療方針が大きく変わります。血流障害がある冷たい足を洗浄し、垢やはがれかけた皮膚を除去する、つまり一種のデブリードマンをすると、状態が急速に悪化することがあるのです。 そのため、「洗うと悪くなる足」が存在することを念頭におき、足を洗うかどうか判断をしてください。よかれと思って洗った結果、利用者さんの足が壊死したら、利用者さんが大変な苦痛を強いられるだけでなく、ケアを提供するみなさんも心に大きなダメージを負ってしまうはず。後悔のないよう、覚えておいてほしいポイントです。 血流のアセスメント 末梢動脈疾患や下肢閉塞性動脈硬化症などにおける血流の状態を評価するスケールに、「Fontain分類」「Rutherford分類」があります。いずれも数字が大きいほど血流が悪いという評価です。間欠性跛行(歩いていると足が重く、もしくは痛くなって止まってしまい、少し休むとまた歩けるようになる状態。)の程度から動脈の詰まりを判断します。 ただし、歩いてもらわなければ評価できないため、あまり歩かない方の場合は間欠性跛行の進行に気づけません。無症状からいきなり足の痛みを訴えたり、壊疽が始まったりして、慌てて病院に駆け込む事態になりかねません。 在宅で実践してほしい「CRT検査」 そのほかにも血行の検査は数多くありますが、おすすめは「CRT(キャピラリィ・リフィリング・タイム/ Capillary Refilling Time)」です。道具を使わず、検査者の手だけで簡単に実践でき、動脈を探す手間もありません。 ご自身の手の親指と人差し指の先端を、ものをつまむような形で力を込めて5秒間合わせてください。指を開く時、指先に注目です。白くなっていた指先が、2秒以内に元の色に戻るかと思います。これが、血流が正常であるサインです。CRTでは、同じ要領で利用者さんの足の指先を検査者の指でぎゅっと押さえ、皮膚の色の変化を観察します。色が戻るのに3秒以上かかる場合は、血流障害の可能性を考え、病院への相談を検討してください。 形成外科医の傷の見方「神戸分類」 ここからは、「形成外医の足のミカタ」をさらに詳しくご紹介します。私たちは、血流と感染の状態を考慮しつつ、糖尿病性足潰瘍の「神戸分類」に照らし合わせて検討していきます。「神戸分類」とは、「知覚障害」「血流障害」「足の変形」という3つの「足病変の基礎因子」に注目して足の状態を4タイプに分け、治療を考えていくしくみです。 タイプⅠ知覚の障害や足の変形があり、足裏にタコができているような状態タイプⅡ血流障害があり、傷ができている状態タイプⅢ感染が見られる状態タイプⅣ血流障害と感染が合併している最重症の状態 タイプⅠの足の変形にはフットウェアの活用を、タイプⅢには感染した組織を除去するデブリードマンを選択します。一方で血行障害があるタイプⅡ、Ⅳは、第一に血行再建しなければなりません。血のめぐりが悪いまま、腐った組織を足浴で洗い流したり、デブリードマンをしたりすると、状態はかえって悪くなります。 次回は鶏眼や胼胝の予防や爪の構造や役割、爪の切り方などフットケア実践における必要な知識について解説します。>>後編はこちら足のミカタ 重症化を防ぐフットケア 爪のケア実践編【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇日本フットケア・足病医学会 (編).『重症化予防のための足病診療ガイドライン』南江堂,2022年

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
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2024年12月24日
2024年12月24日

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A

2024年10月25日(金)に開催したNsPaceオンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」では、重症な足病変の予防やケアについて、倉敷市立市民病院 形成外科医長 小山晃子医師が解説。今回は、セミナー時に寄せられたご質問について、特別に小山先生に回答いただきました。 なお、本記事はQ&Aの抜粋版です。完全版はお役立ちツールにてダウンロード可能ですので、そちらもぜひご利用ください。 【セミナー講師/質問回答】 小山 晃子 氏倉敷市立市民病院 形成外科医長平成16年 高知大学卒 倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修終了平成18年 川崎医科大学付属病院 形成外科・美容外科にて 褥瘡、創傷治癒を学ぶ平成24年より現職入院・外来・在宅で医療を行いながら、医療者、介護者、市民を対象としたセミナーを行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動中です。 ■お役立ちツールも公開! お役立ちツール『「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧』では、より多数のご質問への回答を読むことができます。ぜひご活用ください。>>「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 足の洗浄について <Q1>・セミナーでは、「血流がない場合は足を洗ってはいけない」とおっしゃっていましたが、なぜでしょうか?感染が広がるためでしょうか。湿潤や摩擦、温度が影響するためでしょうか。 ・血行不良の状態で洗うと、どういう機序で悪化するのでしょうか。 「血流がない足=すべて洗ってはいけない」というメッセージを受け取られた方が多いようで、私の説明不足を反省しています。漫然と洗浄してはいけないのは、傷のある血流のない足です。 ミイラ化を目指している場合には、極力組織の水分を減らしたいため、当然洗浄は避けます。血流の乏しい足の傷に壊死した皮膚皮下組織、腱などの血流のない組織が露出しているケースを想定してみましょう。血流がない(免疫細胞が到達しない)組織は、血流がある(免疫細胞が到達できる)生きた組織・人体側と接しています。その二つの境界で、人体側はゆっくりと傷を治そうとしています。この状態で血流がない組織に水を含ませると、その組織は細菌にとってのよい培地(湿気と温度がある環境)になってしまいます。生きた傷の表面に、細菌培地で「湿布」することになるので、水分を避けることが望ましいと考えています。 壊死組織がなく、傷のある血流の乏しい足については、漫然と洗わないでいただきたいです。洗ってそのままにするのではなく、翌日以降 痛みの訴え浸出液傷の周囲の腫れ壊死組織 等の変化がないかを見て、洗浄したことの功罪を慎重に判断してください。 <Q2>・患部を避けた清拭や入浴、シャワー浴は可能ですか? ・血流がなく壊疽して感染している場合の洗わないケア方法を教えていただきたいです。 患部を避けた入浴、シャワー、清拭は可能です。 血流がなく感染しているときは、ケアではなく、キュア(治療)が必要です。抗菌薬全身投与、局所処置(浸出液の除去、消毒)、疼痛管理などの治療を行います。 <Q3>月に1、2回の訪問をしている独居の方で、足病変があった場合、医師に処置の指示を依頼し、洗浄をするために訪問頻度を増やしたほうがいいでしょうか。毎日が難しい場合は、最低限どれくらいの頻度で洗浄が必要ですか? 自分で足が洗えない方だと理解をしました。靴下を履き替えるだけでもいいのではないかと思っています。 足病変があった場合、血の巡りがあるのかないのか、傷の深さがどうか、感染を起こしているかどうか、といったような専門の判断を一度受けて、みんなで「治療の組み立て」をしてからどれぐらいの頻度で看護師さんに助けていただくのが良いか、考えたいです。 「最低限」ということであれば、靴下を毎日履き替えるっていうことを、頑張ってみたらいかがでしょうか。清潔が何よりです。 ミイラ化について <Q4>血流障害の方は洗浄をしてはいけないとのことですが、ターミナル期で治療をしない方は、何もせずミイラ化を見守るだけでよいのでしょうか?軟膏塗布などの処置だけなのか、看護師がやるべき処置があったら教えていただきたいです。 ミイラ化を目指す場合、放置はすすめません。ターミナル期でも、目と手をかけることを続けていただきたいです。まずは、十分な除痛を行うことが最優先です。ミイラ化をしていく過程で生体と壊死部分の境目から浸出液が出る場合は、その境目をポビドンヨード液で清拭します。浸出液が多いときは、オムツパッド等で患部をふんわり巻いて、寝具が汚染したり、においで利用者さんやご家族が不快な思いをしたりしないよう配慮します。におい対策にはストーマ用のスプレーも有効です。 処置は、基本的に「シンプル」にすることも重要です。ターミナル期の利用者さんの大切な時間を浪費しないよう配慮してください。軟膏を使用した場合、次回の処置で落とす必要があります。落とすのに苦労するような種類の軟膏(ワセリン基剤のものは堆積します)は避けるようにしましょう。 足に傷・潰瘍がある場合について <Q5>訪問で、最初に創を見つけたとき、何をしたらよいのでしょうか?もちろん受診をすすめますが、すぐに行けない場合はそれまでどう手当てしたらよいのでしょうか?微温湯での洗浄もいけないのでしょうか。 初回の訪問では、まず微温湯で洗浄して足をよく観察していただくのがよいと思っています。よく見た結果、傷を見つけたら、以下の対応でよいと思います。 血流のない足は1日単位で悪化する可能性があるので直ちに受診をすすめる(少なくとも写真を病院に届けて、相談)血流に問題のない足は通常の創処置をし、1週間ごとの評価をする 保清・軟膏について <Q6>黒色壊死の方は洗ってはだめでしょうか?精製白糖・ポビドンヨードを使う場合が多いですが、微温湯洗浄をして処置をしていました。 血流があり、黒色壊死部をどんどん浸軟させて除去(物理的デブリードマン)したいときには、しっかり洗うこともあります。洗浄と併せて精製白糖・ポビドンヨードを使用し、浸出液の吸収と、抗菌を図ります。いずれにしても、行った処置の結果、傷が治癒傾向なのか悪化傾向なのかをしっかりと「見る」こと、悪化傾向の場合に主治医に伝えることが肝要です。 <Q7>・血流の悪い足を洗わない場合、毎日処置する際は軟膏の除去などはどうしたらよいのでしょうか?当院では基本的にほとんどの傷をしっかり洗浄するように指示があり、血流が悪い足の場合で血行再建前でもしっかり洗浄していました。 ・血流が悪い方の下肢の創処置を行う際に 医師からは洗浄し軟膏処置(ヨウ素軟膏)の指示が出ます。洗浄できない血流の悪い足の場合、軟膏を落とすためにはどのような方法が適切でしょうか? 病院で、「きれいな水がある」「しっかりと水分を拭き取ることができる」「十分な量の滅菌ガーゼがある」「毎日観察ができる」「すぐに医師に相談できる」環境があれば、創が悪化していかない限り、洗浄可能だと思います。一方、在宅においては衛生資材、観察環境、病院へのアクセスに制限のある環境を想定し、リスクヘッジのため無闇に洗わないことをおすすめしています。 また、洗浄の際に落としやすい軟膏を選択することも医師の責務だと考えています。ヨウ素軟膏を使っているということは、浸出液が多く、感染を制御したい傷があるということですね。浸出液が多いということは、血流はさほど悪くないと逆算できます。洗い流してよろしいのではないかと思います。 ウオノメ、タコのケア方法について <Q8>・市販のタコ、ウオノメ用シール(サリチル酸絆創膏)を使う際の注意点はありますか? ・毎日観察できるわけではないため心配な面もありますが、在宅でサリチル酸絆創膏を使用することについての先生のご意見をいただきたいです。 少しでもそのウオノメ・タコ自体を柔らかくして対処しやすくしてあげようという考えであれば、尿素配合クリームやサリチル酸を塗っていただくとよいと思います。ただし、皮膚を少しただれさせるような効果もありますので、周りの薄い皮膚には塗らないように、ウオノメ・タコのところだけピンポイントで塗るようにお願いします。 ウオノメシールを貼るときは、肥厚している角質よりも一回り小さく切って貼って下さい。3日ほど貼りっぱなしにすると浸軟した角質がとれやすくなります。シールを固定するためのテープでまわりの皮膚を損傷しないようにすることも注意しましょう。 ただし、シールは「その場しのぎ」で、前述のとおり外力の除去が根本的治療です。極論ですが、「寝たきり」になったら足の裏のウオノメ、タコは「完治」します。外力を減らせるような履物を使うことを強くおすすめします。 爪切り、爪のケアについて <Q9>・爪白癬、肥厚爪についてケアのしかたを教えてください。・かなり肥厚している爪を小さくするために在宅で簡単に用意できるものはありますか? ・ワルファリンカリウム錠を服薬中のため、ニッパーは避けてヤスリがけをしています。ほかによい方法はありますか? 爪が非常に分厚くなっていて、どこから手をつけたらいいか分からないというような爪の方も本当に多くいらっしゃると思います。在宅で、簡単に肥厚爪に取り組むことはなかなか難しいことかもしれません。 爪切りをする前に、まずは必ず「血流があるかないか」を見てください。血流がある方に対して爪切りをする前提でお話をします。私の場合は、爪切りにはニッパーを使います。十分に明るい環境で、切りやすい方向から、少しずつ爪切りをすることを心がけています。 その時に、爪の甲がどのように変形しているのかのイメージをしっかりと持ちましょう。爪白癬の場合、爪がバームクーヘンのように層になっているので、そのバームクーヘンの層を1枚ずつ剥がすようなイメージで、ニッパーを層と層の間に入れていただくとポロッと剥がれると思います。そのようにして使ってみてください。大まかなところをニッパーで減量して、爪床が近くなってきたなと思ったら、ヤスリで整える…という風に手当てをしていただければと思います。 <Q10>白癬により爪が剥がれた場合の対処方法を教えてください。 あまりに白癬がひどいと、爪の根まで白癬菌が食べてしまい、爪の甲がぽろっと自然と取れてしまうという現象が起こることがあります。この場合、剥がれた後に出血していなければ、そのままで結構です。剥がれた後に爪床や爪母の部分に傷があったら、消毒などをしてください。 実は、白癬の分厚い爪が指先から取れたということは、「白癬菌のお家がいなくなった」ということなので、爪の表面にいる白癬菌の量は確実に減っています。ここをチャンスとして爪の水虫の治療をすると、分厚い爪の甲に塗るよりも塗り薬の効き目が早くしっかりと出ます。傷が治った後に爪白癬、水虫の薬をしっかり塗って、水虫菌をしっかりとやっつけてあげてください。 <Q11>・反っている小さい爪のケアについて教えてください。・寝たきりの児童で、肥厚して足背側にどんどん反沿ってしまうので、とりあえずやすりをかけていますが、それがいいのか悪いのかも分かりません。 例えば、この患者さんの右足の第3趾と左足の2、3趾が反り爪で、4趾も少し反り爪っぽくなっています。このちゃんと踏めない指の爪が反ってくるということを時々経験します。この方も含めて、反り爪は爪の甲がブリッジしたようになっており、爪先が指の近位側、体の中心に近い側にあります。 そのため、そこの部分に注意しながら細い爪切りで切っていただくのが、最も手っ取り早くて、患者さんの指の痛みを除去できる方法じゃないかなと思っています。 なので、この爪の先を、できたら気を付けてニッパーややすりで切っていただくっていうことをやってみてください。爪先側に、指先側に爪先がないので、よく見てどこを切るかをよくよく考えながら対応していただけるとありがたいです。 <Q12>爪の同じところに亀裂が入ります。治す方法はありますか? 爪甲の縦方向の亀裂は(1)爪甲に白癬などの感染を起こしている(2)爪床の変形(3)爪母に腫瘍ができているということが理由として考えられます。 一方、爪甲に横方向の亀裂が生じる場合、その原因が爪甲に限られることはまれで(1)爪床の変形(2)爪母全幅の問題 a:抗癌剤などで爪母の爪甲製造能力が一時的に衰えていた b:爪甲を伸ばしすぎたことで爪甲の自由縁を圧迫され、爪母に圧が加わったことで 製造された爪甲に横皺を形成した等の状況がよくみられる状態です。 また、爪甲先端のひび割れ・剥がれの場合は過度の乾燥が考えられます。それぞれの原因に対処することで爪の亀裂が改善する可能性があります。 医師との連携について <Q13>・医師への報告のしかたについて教えてください。 ・看護師からの報告について困るケース、助かるケースを知りたいです。 私たち形成外科の領域は特に、傷の状態を見れば何が起こっているかが分かるという場合が本当に多いです。そのため、報告のしかたとしては、ぜひ写真に撮って見せていただきたいです。写真を撮る際のポイントとしては、足の全体像と病気があるピンポイントの部分の2種類を撮ることです。その2種類をいただくと、何かお役に立てることが多いです。また、写真からは伝わりませんがぜひ伝えていただきたい情報が、「血流」です。「この人の足は冷たいです。そしてこのような症状が出ています」と写真を添えて相談していただけると本当に助かります。写真を撮った日付もお願いします。 また、セミナーでも申し上げたとおり、体にできた傷は基本的には治ります。治らない傷には、治らない理由があります。その理由を見つけて取り除かない限りは、傷は「治りたくても治ることができない」んです。様子を見る期間は2週間です。皆さんが困って、あるいは主治医の先生が何か対応を始めて、それでも2週間経ってなかなか治らない傷には、理由が必ずあります。その治ることができない理由を、もしかしたら形成外科の医師は見つけることができるかもしれません。なので、2週間やってみて難しいケースは、傷を診る専門の先生にぜひ繋いでいただきたいんです。 NsPace読者の方は全国にいらっしゃるので「困ったら私に見せてください」といういつもの逃げ口上が言えないのですが、皆さんの地域にも形成外科はきっとあると思います。皮膚科の先生の中にも足の傷を診ることに長けた先生はいらっしゃるし、糖尿病専門の先生の中に足の傷まで診てくれる先生も全国に散らばっています。 フットケア・足病医学会のホームページを見ていただけると、どんな先生が頼りになるのかのヒントがありますので、ぜひ一度勇気を持って「困ったときには相談に乗ってもらえませんか?」という風に一度声を掛けていただいて、そして本当に困ったときには写真を持って、血の巡りの有無を添えて、相談していただければと思っています。 * * * 後日、オンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」の講義内容をダイジェストにしたレポート記事も公開いたします。ぜひそちらもご覧ください。 >>シリーズ一覧はこちら「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」セミナーレポート>>お役立ちツールはこちら「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 編集: NsPace編集部

看取りの作法2024 グリーフケアと支援の実践【セミナーレポート 後編】
看取りの作法2024 グリーフケアと支援の実践【セミナーレポート 後編】
特集 会員限定
2024年12月17日
2024年12月17日

看取りの作法2024 グリーフケアと支援の実践【セミナーレポート 後編】

2024年9月20日に開催したNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナーでは、「看取りの作法2024 〜習得のための理論と実践〜」と題し、看取り支援に必要な基礎知識を教えていただきました。講師として登壇してくださったのは、家庭医療専門医で訪問診療専門クリニック院長の田中公孝先生です。 セミナーレポート後編では、前編に続いて看取りの対応にあたって知っておきたい理論と、実践に際して役立つ考え方をまとめました。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら看取りの作法2024 終末期・看取りの基礎知識【セミナーレポート 前編】 死前教育を実践する 死前教育(看取り直前の経過の説明)は、看護師のみなさんにもできるようになってほしい対応のひとつです。具体的には、看取りパンフレットを使いながら、死亡前の「1週間以内」「48時間以内」に現れやすい以下のような症状や体の状態を説明します。 【死亡1週間以内】 ・ADLが低下する(トイレに行けなくなる) ・水分摂取ができなくなる・発語が減少する・見た目が急激に弱ってくる・意識障害が起こる  【死亡前48時間以内】・血圧が低下する・一日中、反応が少なくなってくる・脈拍の緊張が弱くなり、確認が困難になる ・手足の末梢冷感・チアノーゼが認められる・死前喘鳴が出現する(ゼェゼェという痰が絡むような音が聞こえる)・身の置き所がない様子で、手足をバタバタさせる(「せん妄」状態に陥る) これらをご家族が前もって理解できていると、看取りのときがきても慌てにくくなります。 私の場合は基本的に週に1回往診するので、タイミングを見計らい、できれば土日に入る前に死亡前1週間以内にみられる変化についてご案内しています。また、「1週間以内に看取りになる可能性が高い」と判断したときは、併せて「もうそろそろ、葬儀業者を検討しておくことをおすすめします」とお伝えすることもあります。少し遠回しな表現ではありますが、これによりご家族は「死期が近づいていること」を感じ取り、看取りの準備をしたり、覚悟をしたり、気持ちの整理をするきっかけになることが多いと感じています。 >>関連記事看取りのパンフレットについては以下の記事をご参照ください看取りの作法 ~ 最期の1週間 グリーフケアを意識する 人は、死別をはじめ愛する人を失ったとき、大きな悲しみ(悲嘆=グリーフ)を感じます。その後、特別な精神状態の変化を経て、長い時間をかけて悲しみを乗り越えるのです。この悲嘆のプロセスを「グリーフワーク」、悲嘆をケアすることを「グリーフケア」といいます。 グリーフケアは、看取り支援の大切な最後のプロセス。看護師のみなさんにはその技術をきちんと身につけ、意識的に取り組んでいただきたいと考えています。訪問看護は病院とは違い、四十九日にお花を送る、弔問することもあるくらい利用者さんやご家族との距離が近い存在なので、死前・死後のグリーフケアをぜひ大切にしてください。具体的には、以下を実践してみましょう。 死前のグリーフケア 亡くなった後の世界を想像するよう働きかけることをはじめ、ご家族が心構えできるように促します。ご家族の中には相続に関する問題を抱えていたり、最期にしてあげたいことがあったりと、それぞれ異なる状況や想いを持っています。そのため、訪問を通してご家族に話し合いのきっかけを提供し、考える時間を設けることが重要です。また、死生観は、葬儀の参列や故人の顔を見届けるなどの経験を通じて深まるとされています。私たち専門職も多くの方のお看取りに関わる中で、こうした意識を持ち、死生観を養っていくことが求められます。 死後のグリーフケア 死後にご家族の悲嘆が長引かないよう、感情の整理や表出を促すことが大切です。葬儀や四十九日といった節目は、親族や近しい人々が集まるための協力を仰ぐ機会となり、「死に対する感情の表出」を支える場として役立っているといわれています。私たち医療職も、こうした感情表出を手助けできるよう、「がんばりましたね」と声をかけたり、エンゼルケアの場でお話しいただいたりすることで、悲しみを抱え込まずに表現してもらえるよう努めていきましょう。 なお、グリーフケアは医療・介護職の心のケアにもつながります。支援の内容を振り返りつつ、ご家族をフォローする中で「上手に支援ができた」「満足していただけた」と思えるケースを増やせるとよいと思います。 看取り支援の実践に役立つ考え方 最後に、実際に支援を行う際のポイントをご紹介します。 看取りの現場でつまずきがちなポイント 看取り支援でとくにつまずきがちなのが「初回訪問時の見立て」「ギアチェンジ(利用者さんの体調が急激に悪くなる)の見極め」「亡くなる直前の説明」です。一定の経験を積むまでは、これらのタイミングでは慣れたスタッフに伴走してもらうことをおすすめします。 ちなみに私は、急変に備えて在宅コンフォートセットを準備しています。みなさんには、麻薬やステロイド、抗不安薬の使い方など、一つひとつ経験を通じて覚えてもらえたらと思います。 カンファレンスでトラブルを防ぐ 事業所内でカンファレンスを行い、急変時の予測をしておくのもおすすめです。例えば「排泄介助の負担が増えて、訪問看護やヘルパーの介入頻度が増えそう」「急に看取りとなってご家族が慌てるのでは」といった具合ですね。現状をふまえて今やるべきこと、そして次に予測される展開を考えれば、焦りやトラブルを軽減できるはず。私の場合は、常に看取りまでの全体の流れを予測しています。丁寧に見通しを立てて準備をしておけば、時間外対応も減ってバタバタしにくくなります。 また多職種でデスカンファレンスを開催することも大切です。私はオンラインで行うことが多く、時間がない中でも実施しやすいのでおすすめです。クリニック側はどうみていたのか、医師がどう判断していたのかを知ると、今後に活かすことができます。 療養場所の変更を常に検討する 自宅で看取る方針を定めた後も、緩和ケア病棟への入院の可能性は常に意識すべきです。逐一ご家族に状況を確認し、介護力が不足している、症状コントロールが難しいなどと判断した場合は、入院の選択肢を提示できることも大切です。「在宅看取りがベスト」と決めつけるとご家族とのすれ違いを招きかねません。十人十色であることを念頭に置き、複数の関係者でディスカッションや振り返りをしながら検討してください。 * * * 看取りの支援では、医療技術だけでなく、コミュニケーションも重視されます。今日のセミナーを参考に、どういうコミュニケーションをとるのがよいか考え、明日から少しずつでも実践していただけたらうれしいです。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

看取りの作法2024 終末期・看取りの基礎知識【セミナーレポート 前編】
看取りの作法2024 終末期・看取りの基礎知識【セミナーレポート 前編】
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2024年12月10日
2024年12月10日

看取りの作法2024 終末期・看取りの基礎知識【セミナーレポート 前編】

2024年9月20日に開催したNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナー「看取りの作法2024 〜習得のための理論と実践〜」。家庭医療専門医で訪問診療専門クリニック院長の田中公孝先生を講師にお迎えし、訪問看護師が看取り支援をより身近な業務として捉えられるように必要な基礎知識を教えていただきました。 セミナーレポート前編では、看取り支援にあたって知っておきたい理論や田中先生が現場で意識しているポイントなどをまとめました。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】田中 公孝先生杉並PARK在宅クリニック 院長/日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医滋賀医科大学卒業。2017年から東京都三鷹市で訪問クリニックの立ち上げに参画し、2021年4月には訪問診療に特化した杉並PARK在宅クリニックを開業。すべての患者さんに「最期までその人らしく過ごせる在宅医療」を提供することを目指す。 「病の軌跡(がん、非がん)」を理解する 看取り支援に必要な知識としてまず挙げられるのが、病の軌跡。「がん」「非がん」の2パターンの軌跡を理解しておくと、看取りの流れをイメージしやすくなります。 がんの軌跡 がんの軌跡の特徴は、身体機能が非がん疾患と比べて長い期間保たれ、その後亡くなる直前に急速に悪化する点が挙げられます。機能が急速に低下する期間は、平均して約2ヵ月ともいわれており、若い方の場合は急激に悪化するため、この期間が短くなるケースにもしばしば遭遇します。一方、ご高齢の方では、がん細胞の進行も老いてゆっくりなのか、悪化のペースが緩やかになることもあります。 また、がんの悪液質を緩和するステロイド治療を行った場合、食欲が回復したり体を動かせたりするようになり、亡くなるまでの期間が1、2ヵ月ほど延びることもあります。しかし、原則として最期の2ヵ月間は急速に機能が低下し、排泄介助が必要になる、疼痛が悪化するなど問題に直面する機会が増えていきます。 非がん疾患の軌跡 非がん疾患の軌跡の特徴は、予後予測が難しい点が挙げられます。例えば心・肺疾患では、急性増悪を繰り返しながら徐々に機能低下が起こり、最後は比較的急な経過を辿るケースも見られます。一方、認知症・老衰の場合は、誤嚥性肺炎で一度口から食事がとれなくなっても、状態が安定して再び食事ができるようになる方もいます。そのため、ご家族には亡くなる可能性についてお伝えする一方で、機能が一時的に持ち直す可能性もあることを事前に説明しておくとよいでしょう。 「全人的苦痛(トータルペイン)」を活用する 全人的苦痛とは、利用者さんの苦痛を総合的に捉えるための概念のこと。「身体的苦痛」「社会的苦痛」「スピリチュアルペイン」「精神的苦痛」の4つに分類され、密接に影響し合っているという考え方です。例えば、がんの症状に伴う疼痛や息苦しさ、倦怠感などの身体的苦痛がある場合も、精神的、社会的、スピリチュアルな要因を含めたすべての側面を考慮する必要があります。適切なケアを提供する上で役に立つ考え方なので、ぜひ活用してください。 >>関連記事全人的苦痛(トータルペイン)の詳しい解説については以下をご参照ください。トータルペインでとらえる 終末期の現場で医師が考えていること 看取り支援の現場で私が意識しているポイントもお伝えします。 がんの症状 「肺がんは呼吸器に症状が現れる」「膵臓がんは強い痛みを伴う」など、一口にがんといっても種類によって症状は異なります。そのため、がんの種類や治療経過(手術歴、放射線治療や化学療法の有無や程度)を必ず確認します。みなさんも、各がんの特徴やおもな症状は押さえておきましょう。 多職種連携 終末期には訪問看護、訪問薬局、ケアマネジャーなどさまざまな職種の方々と方針を共有し、一丸となってご家族をサポートします。このとき、連携先はできるだけ看取りの経験があるところを選んでいます。 在宅看取りが可能か 在宅での看取りでは、家族の介護力や覚悟が問われます。早い段階での要介護認定を受けることをはじめ、各種制度を最大限活用できるよう環境を整えることも必要です。これらの条件を総合的に考慮し、「在宅で看取りきれるか」を常に考えています。 なお、緩和ケア病棟へのエントリーは、基本的にすべてのケースで行います。レスパイト入院をはじめ、在宅看取りを希望していても状況に応じて利用を検討する可能性があるためです。 利用者さんとご家族の認識に向き合う 告知の判断 私は、認知機能に問題がある利用者さんを除いて、基本的に告知はすべきだと考えています。とくにご本人が自身の体調の異変を感じているにも関わらず、ご家族から「落ち込むから伝えないでほしい」と要望がある場合は、本当に告知なしでよいかを丁寧に確認します。ちなみに、ご本人が違和感を覚えているのに告知しなかったケースは私の在宅医療のキャリアではほとんどなく、告知がよい結果に結びついたケースは多いです。ご家族に踏み込んだ話をするには医療者としての覚悟や経験が求められますが、利用者さんやご家族にとっての最善を考えて行動してください。 なお、告知と「予後を伝えること」は別の話です。ご家族には予後について必ず説明しますが、利用者さんにはご本人から強い要望がない限り伝えておらず、伝えなくてもうまくいくケースが多いです。 家族の受容段階の確認 ご家族の認識にアプローチするには、「キューブラー・ロス-死の受容5段階モデル」に基づいて考えるのがおすすめです。 もうこれ以上治すための手段がなく、緩和ケアに意識を切り替えていく、もしくは余命が幾許もないという受容の段階に進んでもらうために、私は早い時期にがんの特徴と看取りまでの経過をお伝えします。亡くなるまであと1ヵ月ほどの段階で「病の軌跡」について話し、「看取りのパンフレット」もお渡しして、「看取りの1週間前になったらこういう説明をさせてもらいます」と概要を伝えるんです。そうすればご家族も、「もうすぐそのときがくるんだな」と心構えできますから。 >>関連記事看取りのパンフレットについては以下をご参照ください。看取りの作法 ~ 最期の1週間キューブラー・ロス-死の受容5段階モデルの詳しい解説については以下をご参照ください。患者・家族の認識とグリーフケア 次回は、看取りのパンフレットを使用した死前教育やご家族へのグリーフケア、看取り支援の実践に役立つ考え方について説明します。>>後編はこちら「看取りの作法2024 グリーフケアと支援の実践【セミナーレポート 後編】」 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス
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2024年10月22日
2024年10月22日

退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス【セミナーレポート後編】

2024年7月12日のNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナーのテーマは、在宅緩和ケアと病院との連携。講師には、訪問看護と病院の地域連携部門の両方を経験した廣田芳和さん(楓の風在宅療養支援株式会社)をお招きしました。 セミナーレポートの後編では、退院支援・退院調整の具体的なプロセスを中心にまとめます。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本【セミナーレポート前編】 【講師】廣田 芳和さん楓の風在宅療養支援株式会社 スーパーバイザー/元 緩和ケア認定看護師(~2024年6月)神奈川県内の病院で約13年にわたって勤務した後、「在宅療養支援ステーション楓の風」に入職し、管理者も経験。その後は前職の病院に戻り、地域連携部門に約3年間勤め、再び訪問看護の現場に戻って現在に至る。 退院支援・退院調整のプロセス 退院支援・退院調整は3段階に分けられ、以下のような内容を実施します。 第1段階:外来入院が決定してから入院後3日以内入院前の生活状況を調査するとともに、入院理由・目的・治療計画などをふまえて退院時の状態像を把握。また、退院支援の必要性を医療者と患者さん、ご家族で共有。第2段階:入院3日目から退院までアセスメントを継続し、チームで情報の共有や支援策の検討を実施。また、患者さんとご家族が疾患について理解、受容するための支援や、退院後の生活イメージの構築も行う。第3段階:必要になった時点から退院まで退院を可能にする制度・社会資源の調整や、退院前カンファレンスを実施。 段階ごとの詳細やポイントも見ていきましょう。 第1段階の内容とポイント 入院前面談 多くの病院では、患者さんの情報を把握し、患者さんに情報を提供するための面談を入院前に行います。主な面談の内容は以下のとおりです。 ・身体・社会・精神的な情報の把握 ・現在利用している介護サービスの把握・褥瘡や栄養状態の評価・服薬中の薬の把握・退院困難な要因の有無の評価・入院中に行われる治療・検査や入院生活についての説明 退院困難要因の把握 早期にスクリーニングを実施し、入院理由や目的、治療計画などをふまえ、退院困難要因の有無を予測します。なお、ほとんどの患者さんが何らかの項目に当てはまるのが実状です。 退院支援の必要性の共有 患者さんとご家族の病状への理解度を確認。退院後の見通しの説明も行います。 第2段階の内容とポイント 継続的にアセスメントし、チームで支援 多くの場合、スクリーニングに基づいたカンファレンスを実施し、情報を整理しながら具体的な支援方法を決めていきます。 退院後の生活イメージを相談・構築 患者さんやご家族の不安を一つひとつ明確にし、在宅に戻る自信がもてるように支援します。不安を払拭するには以下3つの点を意識し、医療・看護を在宅モードに変換することが必要です。 (1)今後の変化を予測し、必要な処置や治療に関する準備・調整をしておく(2)自己管理がどの程度可能か、サポート体制はどのくらい整っているかを把握する(3)生活の場に合わせて可能な限りシンプルに管理できる方法を考える なお、ご家族の介護力をふまえて訪問看護の利用が決まっていれば、この段階で退院指導に訪問看護師も携われると、「在宅での現実的な方法」をより見つけやすくなるはずです。これは、退院前カンファレンスの意義にも通じると思います。 また、入院に伴うADLの低下を最小限にするよう調整すること、家族が不安な思いを表出できるようにすること、食事や排泄、入浴などのアセスメントと支援を行っていくことが重要です。 患者さんとご家族の疾患理解・受容への支援 第2段階では、患者さんとご家族が疾患について理解し、受け入れるための支援も行います。例を挙げながら見ていきましょう。 入院時の患者さんの情報 肝臓がんを患い、外来で化学療法を続けていたが、緊急入院1ヵ月前から食事量が減り、体重も5kg減少体力が低下しており、トイレに行くのがやっとの状態腹部の痛みあり 検査の結果 がんは腹膜にも転移し、腹水が溜まっていた末期状態と診断医療用麻薬が使用され、痛みは改善傾向 検査結果をふまえ、医師から病状と新たな治療選択肢がないことが説明され、「残された時間の過ごし方(病院、ホスピス、家のどこで最期を迎えるか)を考えてほしい」と伝えられました。本人とご家族はもちろんショックを受けて動揺しますが、この先の選択にはあまり多くの時間はかけられません。 この場合、病棟や退院支援部門の看護師は以下のような関わりをします。 ・時間の許す限り不安な気持ちに寄り添う・返答できる質問には真摯な態度で丁寧に答える・利用者さんとご家族の希望を伺う・転帰先をイメージできるよう、ホスピスやそれに類似する施設、もしくは在宅での生活についてそれぞれわかりやすく説明する 特に、不安から「在宅療養は不可能」と判断してしまうご家族が非常に多いです。適切なサービスを利用すれば選択できることを、きちんと説明しなければなりません。 また、以前は病棟看護師が在宅療養は困難と判断してしまうケースもありましたが、最近では在宅緩和ケアの知識をもった退院支援部門の看護師やソーシャルワーカーに対応を任せる病院が増加しています。そのため、説明不足が原因で在宅を選べなくなる事例は減ってきています。 第3段階の内容とポイント 第3段階で行う退院前カンファレンスには、3つの目的があります。 (1)包括的なケアのための情報の共有(2)患者・家族が安心して退院できる環境づくり(3)安定した退院後の療養生活の確保 本来は、地域ケアが必要な全ケースで退院前カンファレンスを行うのが理想的でしょう。しかし、人員が潤沢ではない現状では難しいため、必要性が明確なケースに絞って行われています。 退院前カンファレンスでは、以下のような点を確認します。 ・住環境や家族との関係を含めた利用者さんの基本情報・病名や予後告知の状況、それに対する本人とご家族の理解度・本人とご家族の意向 ・転帰先(在宅or施設)・住環境の改修(手すりの設置や車イスの導入)の必要性・訪問看護指示書をはじめとした書類の内容・薬の処方(退院時処方の量や訪問診療との調整)・退院時の移送方法 そのほか、医療管理の状況や課題を地域ケアチームへ引き継いだり、訪問看護の頻度や内容、その費用を説明したりもします。必要に応じて、ヘルパーやデイサービス、訪問リハビリの活用検討も行います。 * * * 在宅緩和ケアに移行するにあたっての流れや課題を見てきましたが、やはり重要なのは訪問看護と病院の連携です。互いを「同じ地域の一員であり、同じ志をもつ者」と認識し、協力することが、よりよいサービスにつながるはず。ぜひ歩み寄る意識をもっていただけたら幸いです。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス「在宅ケア移行の為のヒント」https://www.utsunomiyahiroko-office.com/zaitaku.html2024/08/26閲覧

在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本
在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本
特集 会員限定
2024年10月15日
2024年10月15日

在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本【セミナーレポート前編】

2024年7月12日に開催したNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナー「【事例で解説】在宅緩和ケアの課題&病院との連携」。在宅における緩和ケアの課題や退院支援・退院調整の具体的な工夫などを、訪問看護と病院の地域連携部門の両方を経験した廣田芳和さん(楓の風在宅療養支援株式会社)に教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、在宅緩和ケアの課題の概要と、その解消に向けて訪問看護師に求められることなどをまとめました。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】廣田 芳和さん楓の風在宅療養支援株式会社 スーパーバイザー/元 緩和ケア認定看護師(~2024年6月)神奈川県内の病院で約13年にわたって勤務した後、「在宅療養支援ステーション楓の風」に入職し、管理者も経験。その後は前職の病院に戻り、地域連携部門に約3年間勤め、再び訪問看護の現場に戻って現在に至る。 在宅緩和ケアの課題 在宅緩和ケアの難しさは、利用者さんによってアプローチの内容やタイミング、求められることが異なる点にあります。 例えば、がんの利用者さんは非がんの方に比べて「訪問看護開始から死亡までの期間」が短く1)、スピーディーな対応が求められます。一方で、非がんの慢性疾患を抱える利用者さんは予後予測が難しく、死にゆく過程は多様。治療の必要性も最後まで残されており、「終末期」の定義づけが難しいため、緩和ケアが必要になる時期はさまざまです。また、非がん疾患の高齢者の意思決定支援2)では、本人がどう生きたいかを明確にして、その実現を支えることが求められます。 このように、在宅緩和ケアに取り組むにあたっては、医療機関との情報共有が重要になります。そこで必要になるのが、退院支援・退院調整。特に慢性疾患の利用者さんのケースでは、退院支援・退院調整がケアの質を左右するといっても過言ではありません。 退院支援・退院調整とは 退院支援・退院調整とは、それぞれ以下の内容を指します(具体的な内容やポイントは後編でご紹介します)。 退院支援患者さんが自身の病気や障害について理解し、退院後も必要な医療・看護を受けながらどこでどのように生活を送るか、自己決定するための支援。退院調整退院支援で明らかになった想いや願いを実現するために、ご家族の意向をふまえて、「環境・人・物」を社会保障制度や社会資源につないでいく過程。 退院支援・退院調整は、患者さんの「こう生きていきたい」という想いに基づき、人生の再構築をサポートすることといえるでしょう。 少子高齢化が進み、医療費が増加している今、在院日数の削減は全病院の共通の課題。その解消のカギとなるのが、より効率的な退院支援・退院調整です。その重要性はますます認識されており、病院で専門の部門や担当者が設けられたり、関連する診療報酬が追加されたりする動きもあります。 病院との連携に関する今後の課題 在宅緩和ケアへの移行に伴う「訪問看護ステーションと病院との連携」においては、さまざまな課題があります。 多くの病院で看護師が不足する今、一人ひとりの退院後を見据えて退院支援部門につなげたり、訪問看護への依頼を考えたりする時間が十分にとれないことは珍しくありません。また、連携に関する教育が行き届いていないケースもあると思います。 そのために訪問看護師のみなさんにお願いしたいのが、病院関係者への積極的な働きかけです。連携の基本は、相手を知り、理解すること。患者さんが入院している間に退院前カンファレンスをはじめとした話し合いの機会をもち、在宅緩和ケアについて一緒に考えることができれば、連携体制はよい方向に変わるはずです。そんな双方の歩み寄りが、今後の在宅緩和ケアにおける連携で最も重要になると思います。 >>後編はこちら退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】1)厚生労働省.「訪問看護について」(平成23年11月11日)P.30https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uo3f-att/2r9852000001uo71.pdf2024/08/26閲覧2)藤田愛.『「最期の場所」を決める 最終的な意思決定支援とは』.訪問看護と介護,医学書院.2015,20(2)

2024年度診療報酬改定 DX推進と今後の展望
2024年度診療報酬改定 DX推進と今後の展望
特集 会員限定
2024年9月24日
2024年9月24日

2024年度診療報酬改定 DX推進と今後の展望【セミナーレポート後編】

NsPace(ナースペース)では、2024年6月14日に、オンラインセミナー「2024年度診療報酬改定 訪問看護の注意点&今後の展望」を開催しました。講師にお招きしたのは、訪問診療医で、医療・介護分野のコンサルタントとしても活躍する久富護先生です。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、利用者さんの状態やDX推進に応じた変更点や、今後の診療報酬改定の見通しなどについてご紹介します。 ※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら2024 年度診療報酬改定 働き方改革と機能評価【セミナーレポート前編】>>関連記事2024年度トリプル改定(診療報酬・介護報酬・障害福祉報酬改定)解説シリーズ 【講師】久富 護 先生医療法人プラタナス 松原アーバンクリニック 訪問診療医/株式会社メディヴァ コンサルティング事業部 マネージャー/医療法人寛正会 水海道さくら病院 地域包括ケア部長/社会医学系専門医/医療政策学修士/中小企業診断士大学病院、民間病院に内科医として勤務する中で、医療・介護業界が抱えるさまざまな課題に直面。現在は訪問診療医として臨床現場に立ちつつ、業界の課題解決を目指し、行政や医療機関に対するコンサルティング支援も行っている。 緊急訪問看護加算の変更点 厚生労働省の調査で、緊急訪問看護加算を毎日算定している訪問看護ステーションが全体の約1%あるとわかり、訪問看護基本療養費の適正化のために緊急訪問看護加算の評価の見直しが行われました。具体的には、以下のとおり区分されています。 月14日目まで 2,650円月15日目以降 2,000円 多くの訪問看護ステーションでは従来どおり2,650円を算定できるかと思いますが、新たな算定要件として、訪問看護記録をつけること、加算理由を訪問看護療養費明細書に記載することが必要になりました。業務負担の増加をふまえると、緊急訪問看護加算は「実質減」と考えられるでしょう。 医療ニーズが高い利用者の退院支援の見直し 訪問看護管理療養費の加算として、「退院支援指導加算」が見直されました。これまでは「1回の退院支援指導が90分を超えた場合」のみ算定できましたが、利用者さんの状態によっては長時間の指導が難しく、頻回訪問が必要になるケースがあることから「複数回の退院支援指導の合計時間が90分超えた場合」も算定できるようになりました。なお、退院支援指導を実施した翌日以降に利用者さんが亡くなったり、再入院となったりした場合も退院支援指導加算を算定可能です(訪問看護基本療養費の算定は不可)。 訪問看護医療DXの推進 訪問看護の領域でも50円の「DX活用加算」が新設されました。現状では、オンライン請求を行い、オンライン資格確認ができる体制を整え、「医療DX推進の体制に関する事項及び情報の取得・活用等についての情報」を事業所内かウェブサイトに掲示することで請求可能です。 ただし、約1年間(2025年5月31日まで)の経過措置のうちに、オンライン資格確認プラットフォームの活用と「医療DX推進の体制に関する事項及び情報の取得・活用等についての情報」のウェブサイト掲載の両方を行う必要があります。なお、ウェブサイトには、以下の情報を明記しなくてはなりません。 ・訪問看護事業を行う事業所であること・重要事項(運用規定概要、職員勤務体制、そのほかステーションが定める重要事項)※介護サービス情報公表システムに記載があれば不要・そのほか、診療報酬項目上求められるもの また、レセプトのオンライン請求開始にあたり、訪問看護指示書に「傷病名コード」の記載が必須となりました。傷病名コードがない場合、監査で訪問看護ステーションにも指導が入る可能性があるため注意してください。 明細書の発行が義務化 明細書の発行が義務化されました。ただし、2025年5月31日までは、現行の領収証を領収証兼明細書※としてもよいとされています。 ※▼領収証兼明細書の一例厚生労働省.「医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について」P.8https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219498.pdf 診療報酬改定から見える国の方針 2024年度診療報酬改定にあたっては、今後2年間で議論してほしい内容をまとめた付帯意見が出されました。以下は、その概要をまとめたものです。 同一建物施設への訪問看護の規制強化 同一建物居住者への効率的な訪問診療、訪問看護体制の検討を今後さらに進めることが求められています。この2年間で締めつけはきつくなる可能性がある、と考えられるでしょう。 ICTのさらなる推進 中央社会保険医療協議会(中医協)は、ICTを用いた情報連携状況調査の実施を決定。これをふまえ、2年後はさらに踏み込んだ推進の方針が示される見込みです。 他事業者との連携への加算 訪問看護ステーションと他事業者の連携について調査し、実施している事業所に対して加算していく姿勢がうかがえます。 また、厚生労働省が診療報酬改定前に出した基本方針を見ると、働き方改革やDX関連、他事業者との連携、口腔・嚥下・栄養領域の医療の推進は、2022年度に続いてアップデートされています。これらの項目は、今後も重ねて改定されると予想できます。 訪問看護ステーションが今後とるべき方針 訪問看護の利用者数はこの20年間で約10倍になり、医療依存度の高い方がどんどん在宅領域に入ってくるようになりました。また、医療費も増大しています。それを受けて、訪問看護ステーションには、「質の向上」と「量へのさらなる対応」の両立が求められるでしょう。 「質の向上」に向けた具体的な取り組みとしては、重症度の高い方や重い精神疾患がある方への対応、専門資格をもった看護師の配置があげられます。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのセラピストによる訪問看護は、引き続き厳しい評価を受ける可能性が高いでしょう。 「量への対応」では、ICTの活用やタスクシフト・シェアによる効率化があげられます。訪問看護管理療養費の見直しのところで同一建物居住者数が全体の7割未満に設定されたように(前編を参照)、医療機関も訪問看護ステーションも、効率的な事業所に対する締めつけは強化される見込みです。 また、連携面の充実化も重要なポイント。訪問診療医やケアマネジャー、歯科領域との連携が利用者さんにもたらすメリットの調査も行われる予定となっているので、今から意識することをおすすめします。 * * * 今回の診療報酬改定を総括すると、「医療保険と介護保険のすり合わせ」が行われた印象です。繰り返しになりますが、今後は質と量の双方を見据えた対応がより求められるため、組織づくりを含めたサービス提供環境の整備がますます重要に。ぜひ、その点を意識した運営を心がけていただければ幸いです。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇厚労省.中央社会保険医療協議会 総会(第560回)議事次第.中医協 総-2.「在宅(その3)」(令和5年10月20日)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001158972.pdf2024/8/29閲覧〇厚生労働省(2024).「令和 6 年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療、訪問看護)」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf2024/8/29閲覧

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