チーム運営に関する記事

訪問看護ステーションの立ち上げメンバー座談会
訪問看護ステーションの立ち上げメンバー座談会
インタビュー
2023年4月11日
2023年4月11日

規模が拡大してどうなった? 訪問看護ステーションの立ち上げメンバー座談会

8期目を迎えた福岡県の訪問看護ステーション、レスピケアナース(管理者:山田真理子氏)。2022年12月現在、看護師20名、リハビリスタッフ10名、事務4名という大所帯ですが、設立当初のメンバーは数名のみ。建物の一角、「台所」からのスタートでした。 そんなレスピケアナースの初期時代を知る「台所メンバー」が集まっての座談会。前編では、立ち上げ当時のことや規模が拡大していく過程を振り返っていただきました。後半の今回は、規模が拡大したことによる変化や、今後の展望などについてお話しいただいた内容をお伝えします。 >>前編はこちら設立当時を振り返る 訪問看護ステーションの立ち上げメンバー座談会>>レスピケアナース管理者 山田真理子氏 インタビュー記事はこちら規模拡大への想いと理念浸透の秘訣【利用者も看護師も幸せにする経営】 神﨑 喜代子さん(看護師)立ち上げメンバー。管理者山田さんとは学生時代からの付き合い。看護師歴18年、訪問看護歴は7年目。レスピケアナース入職前は、大規模病院の心臓外科や消化器内科などで、終末期の患者に向き合う看護を経験。長崎県の総合診療クリニックにて、主任の経験も。堀川 佐和子さん(事務)立ち上げメンバー。山田さんとは福岡病院の地域連携室にて出会う。レスピケアナースの前身となる訪問看護ステーションからの参加。平行して病院の連携室にも勤めていたが、2015年に退職し、レスピケアナース立ち上げに携わることとなった。 亀谷 涼子さん(看護師)レスピケアナース稼働から4ヵ月後に入社。訪問看護歴は15年程度。前職中、さらなるやりがいを求めて転職活動をしていたところ、Facebookで情報発信している山田さんを知る。ともに働きたいとの希望を伝え、レスピケアナースに転職した。 大久保 奈央子さん(看護師)2016年に登録看護師として入職、現在は楽らく療養通所「プルーンベリーハウス」の準社員。小児科外来で看護師をした後、一時専業主婦に。長子の小学校入学を機に知人から山田さんを紹介され、訪問看護の世界に入る。 ※文中敬称略 幅広い利用者の受け入れ&広がっていく連携 ─これまでを振り返って、嬉しかったことや心に残っていることなどを教えてください。 大久保: 私はやっぱり、利用者さんとの思い出が心に残っています。特に覚えているのは、18トリソミーのお子さんが歩けるようになったことですね。そこまでの成長や歩みも思い出して、ご家族と一緒になって喜びました。もちろん、病院で勤めていたころにも似た経験はあったのですが、訪問看護だと長くご一緒できるぶん、さらにご家族と一歩踏み込んだ関係になれるように思います。 亀谷: わかります。訪問看護は幅広い年齢層の利用者さんと関われるから、その年代ごとに異なる感動がありますよね。お子さんの場合はやはり成長がダイナミックで、それをそばで見ていられるのはとてもワクワクします。 規模が拡大していくにつれ、より幅広い利用者さんを受け入れられるようになりますし、リハビリ職との連携も増えました。チームで情報共有して、利用者さんによりよい看護を提供できると、やっぱりうれしいですね。 ─規模が大きくなると、それだけスタッフ間のコミュニケーションが難しくなってくる側面もあるのでは? 堀川: そう感じた時期もありますね。事業所の体制が整う前に辞めてしまったスタッフが何人かいて、コミュニケーション不足が原因だったかもしれないと思うことはあります。私からすれば「山田さんにストレートに伝えればなんでも解決する」職場なんですが、やはり自分の意見をうまく外に出せない人というのはどうしてもいる。タイミングもあるのでしょうが、なんとかなった可能性が捨てきれないだけに、残念な気持ちはあります。 いまはそのときよりもスタッフが増えていますが、利用者さんのことはもちろん、プライベートのことも含めてよくコミュニケーションがとれていると思います。ここまでよい組織になってきたことに対して、喜びややりがいも感じています。 神﨑: そうそう。堀川さんは、一般的に想像する事務の範囲を超えて、利用者さんの情報をしっかり提供してくれて、ありがたいんですよね。利用者さんのことをしっかり把握していて、それこそどのようにご家族と過ごしているのかとか、利用者さん個人の「背景」まで把握している。 亀谷: 私もそう思います。堀川さん、利用者さんについてすごく詳しいので、最初のころ私は堀川さんが看護師資格を持つ方だと思い込んでいたんですよ(笑)。それくらい、的確な情報を伝えてくださると思います。 神﨑: やっぱり、レスピケアナースとして目指すところがはっきりしているからだと思うんですよね。それは亀谷さんも大久保さんも同じで、共通した強い思いがあるから、しっかり連携できるんじゃないかな。 「いつでも相談できる」という安心 ─規模が大きくなって、改めて感じたメリットを教えてください。 亀谷: まず、休みが取りやすくなりましたね。スタッフが多いので、気兼ねなく休日を取得できる。ほかのメンバーも、自分のライフスタイルに合わせて、柔軟な働き方ができていると思います。ありがたいことですよね。そういったことも含め、全体的にゆとりができたと言えます。 堀川: 山田さんと神﨑さんが日替わりで相談担当をやってくださるのも助かります。なにかあったらすぐ相談する、というシステムが整えられているんです。これもスタッフの層が厚いからこそできることではないかと。 ─「相談担当」と言うのは、訪問時に何かあった際の相談を受け付けているのでしょうか? 神﨑: いえいえ! もちろん訪問時の相談もありますが、内容はそれこそなんでも、「全部」です。当日のスタッフの体調不良や、「事故に遭った」などのトラブルも。今後自分はどう働いていけばいいのか、といった就業問題もありますね。件数で言うと、1日40件くらい、かな。 一同: えー!!?? ─みなさんも相談件数まではご存じなかったんですね(笑) 神﨑: 相談担当の日は、ずっとイヤホンを付けて電話していますね。例えば、「これから緊急訪問がある」というスタッフがいる場合、やはりそのスタッフは少し緊張しているんです。だから、少しでもその緊張がほぐれればいいな、と思いながら話します。まずは誰からコールがあったかを私に知らせてもらう。スタッフが利用者さんのところに到着したら、再び電話。実際に利用者さんの状態を確認してもらい、私からどう対応するかを提案するわけです。医師とコンタクトを取ったときにも電話をもらい、診療が完了したらまた連絡をもらう。そんな感じでやりとりをするので、夜通し電話は鳴っています。 ─とても大変なことだと思いますが、それだけ「相談を受ける」ことを大事にされているのですね。 神﨑: そうですね。やはり「レスピケアらしい看護」をしてほしい。その想いにブレが生じるのはイヤだから、客観的には大変に見えるかもしれませんが、相談してもらっていいんです。規模が大きくなるのはいいことですが、あくまでもレスピケアらしく、大きくならないと意味がない。少なくとも私はそう思っているので。 なかには「相談したいというより、話をしたいだけなんだな」っていう内容のときもありますが、それはそれでいいんじゃないかな。窓口をちゃんと開けておくことが大事ではないでしょうか。 子どもの夢の選択肢に「訪問看護師」を ─レスピケアナースは順調に規模を拡大されていますが、今後の目指している姿について教えてください。 神﨑: まず、訪問看護業界そのものに課題があるのは明白です。これを変えていくような働きかけをしたいですね。もちろん、うちの事務所だけが変わればいいという話ではありません。 訪問看護業界全体の人手不足が何年も続いている状況なので、高い技術を持つ人だけでなく、「さまざまなレベルの人がこの業界で働ける」というシステムの構築が必要なのではないかと思います。敷居を低くして、幅広い方が訪問看護業界の仕事に携わっていけるような社会にすることが理想です。利用者と看護師の数のバランスが取れ、訪問看護が特別なものでなく、地域社会に必要なもの、当然あるもの、という位置付けが確立されていくといいですよね。 それから、職場内での教育を継続していきたいとも考えています。立ち上げ当時からしばらくは毎日大変だったのですが、少ない人数でマンツーマンで教え合い、経験できたこと、学べたことがある。さらに規模が大きくなっても、そういった教育が維持できるような体制を整えていきたいですね。 時間があれば、その教育を地域に広げたい。中学校などに行って、子どもたちに訪問看護とはどういうものか、見せてあげたいんです。そういう職業があるんだ、こういう感じなんだ、というのを伝えたいですね。いつの日か、子どもたちから「将来の夢は訪問看護師」という言葉が出てくる世の中になるといいなと、思います。 ─ありがとうございました! 執筆: 倉持鎮子取材: NsPace編集部 ※本記事は、2023年12月の取材時点の情報をもとに制作しています。

訪問看護ステーションの立ち上げメンバー座談会
訪問看護ステーションの立ち上げメンバー座談会
インタビュー
2023年4月4日
2023年4月4日

設立当時を振り返る 訪問看護ステーションの立ち上げメンバー座談会

8期目を迎えた福岡県のレスピケアナース(管理者:山田真理子氏)。2022年12月現在、看護師はパートを含め20名(正規スタッフ15名人)所属。加えてリハビリスタッフ10名、事務4名という大所帯です。しかし、設立当初のメンバーは数名のみ。建物の一角、「台所」からのスタートでした。初期から在籍したメンバーが「台所メンバー」と呼ばれるゆえんです。今回の座談会では、台所メンバーの皆さんに、立ち上げ当時や規模が拡大していく過程を振り返っていただきました。 >>レスピケアナース管理者 山田真理子氏 インタビュー記事はこちら規模拡大への想いと理念浸透の秘訣【利用者も看護師も幸せにする経営】 神﨑 喜代子さん(看護師) 立ち上げメンバー。管理者山田さんとは学生時代からの付き合い。看護師歴18年、訪問看護歴は7年目。レスピケアナース入職前は、大規模病院の心臓外科や消化器内科などで、終末期の患者に向き合う看護を経験。長崎県の総合診療クリニックにて、主任の経験も。 堀川 佐和子さん(事務)立ち上げメンバー。山田さんとは福岡病院の地域連携室にて出会う。レスピケアナースの前身となる訪問看護ステーションからの参加。平行して病院の連携室にも勤めていたが、2015年に退職し、レスピケアナース立ち上げに携わることとなった。 亀谷 涼子さん(看護師)レスピケアナース稼働から4ヵ月後に入社。訪問看護歴は15年程度。前職中、さらなるやりがいを求めて転職活動をしていたところ、Facebookで情報発信している山田さんを知る。ともに働きたいとの希望を伝え、レスピケアナースに転職した。大久保 奈央子さん(看護師)2016年に登録看護師として入職、現在は楽らく療養通所「プルーンベリーハウス」の準社員。小児科外来で看護師をした後、一時専業主婦に。長子の小学校入学を機に知人から山田さんを紹介され、訪問看護の世界に入る。 ※文中敬称略 レスピケアナース入職のきっかけ ─まずは、皆さんが集まってひとつの事業所をつくることになった、そのきっかけを教えてください。管理者の山田真理子さんとはどのような出会いだったのでしょうか。 神﨑: 私は、山田さんとは高校と准看学校の同級生なんです。名簿順では隣り合わせでしたね。学校を卒業した後の配属先でも、病棟が隣り合わせ。さらにその後、私は地元に帰って就職と結婚をしたのですが、なんと結婚相手が山田さんのおばあちゃんの家の裏に住んでいて(笑)、なんだか不思議な縁がありましたね。 そもそもは友人の就職のために山田さんにお声がけしたのですが、友人が引っ越しをすることになり、なぜか私が働くことになりました。それまで訪問診療の経験しかなかったので、訪問看護の世界を知ってはいたものの、自分が携わることになるとは思っていませんでしたね。 堀川: 私が山田さんや神﨑さんと知り合ったのは、山田さんがレスピケアナースのひとつ前の訪問看護ステーションを立ち上げたときです。そこで「事務のお手伝いをしてくれないか」と声をかけていただいて。しばらくは、日赤病院の連携室にもパートとして所属し続けていたのですが、2015年には完全に退職し、その半年後に山田さんや神﨑さんたちとレスピケアナースを立ち上げました。 レスピケアナースの始まりの場所となった台所 亀谷: 私が山田さんのお名前を知ったのは、福岡市南区の研修会ですね。転職活動中にはFacebookでの発信も覗かせていただきました。そうしているうちに、なんだか自分も山田さんと一緒に働いているような気持ちになっていまして(笑)。なにか通じるものがあったんでしょうね。「ぜひご一緒させていただきたい」と私から山田さんに連絡し、入職しました。転職してよかったなあと思いつつ、充実した日々を送っています。 大久保: 私は入社してもうすぐ7年になるかな、というところです。山田さんについては「すごい人がいるから、訪問看護をやってみないか」と友達に誘われまして。面接の時、訪問看護の経験がないことが不安だと伝えたら、「血圧が測れるなら大丈夫だから、おいで」と言ってもらって、入職しました。 神﨑: そうそう。私も大久保さんも、入職当時は人工呼吸器の管理なんてやったことがなかったんですよね。一から覚えていって、できるようになりました。大久保さんはすごくきっちりしている人で、管理やケアの方法を記録してしっかり勉強して、丁寧に取り組んでいたことを思い出します。 依頼を断らず、常によりよいケアを目指して ─レスピケアナースが規模を拡大できた理由は何だと思われますか? 堀川: 立ち上げ当時、とにかく新規依頼が多かったんです。それに対して十分な対応をするためにも、スタッフの増員は急務でした。 神﨑: なにせ、当時は訪問する看護師が、私と亀谷さんの2人しかいなかったんですよね。20時になっても訪問が終わらない。亀谷さんと電話で、「全部終わった?」「全然終わってない」「やっぱり?私も。じゃあね」などと、慌ただしくやり取りしながら回っていました(笑)。事務関連の業務についても、外注ができるわけもなく、自分たちでやるしかありません。苦手でも無理矢理ですね。 亀谷: そんなときもありましたね(笑)。どんなに利用申し込みが多くても、断ることはありませんでしたからね。すごいことだと思っていました。たとえ他の事業所で断られるようなケースでも、うちでは断りませんでしたから。 最初はバタバタしましたが、そうやっていくうちに、利用者さんからは「ありがとう」って言っていただいて。それに、外部に対してもレスピケアナースの価値をうまくアピールできていたと思います。必要なことを医師やケアマネジャーにフィードバックして、よりよいケアに繋げる。一つひとつ着実にやっていくことで、新規依頼も呼び込めます。そういった、良い循環をつくれたことが大きかったんじゃないでしょうか。 「理想の看護」を追い求めた結果が規模拡大 ─レスピケアナースはとても風通しが良いように見えますが、そうした職場環境も成長の要因になったのでしょうか? 大久保: もちろん、関係していると思います。不安なことがあっても、カンファレンスや情報共有の場ですぐに解決できました。しっかりコミュニケーションをとっていくとスタッフ同士いい関係を築きやすくなりますし、とても働きやすくなるんです。 カンファレンスではレスピケアナースとしての数値目標も共有されていましたので、自分も一緒になってその数字を目指していこうという気持ちにもなる。「貢献したい」と思えたんです。個々のモチベーションアップにも繋がりますし、規模の拡大という結果にも繋がったのでは。きっと、「みんなで同じ目標を持つ」ということが、自然にできていたんですよね。 亀谷: いまも、みんなが意見を聞いてくれて、シームレスに話せる環境ができあがっていますね。意思決定も早い。「今後どうしたいか」がしっかり伝わり、全体に浸透するんです。山田さんが持つ目標というのも、単純に規模を大きくすることがゴールではないとわかります。訪問看護はあくまでも入り口に過ぎない。地域の人々の困りごとを減らし、生活しやすい場所に整えていきたい、という確たる目標がある。そして、みんながそれについていこうとしています。 神﨑: 山田さんは管理者としての視点で組織の規模拡大を見据えていたと思いますが、私自身は規模拡大を強く目指していたわけではありませんでした。ただ、ご依頼が増えるぶん、やはりそれだけの器は必要です。無理に数をこなし続ければ、看護師として働き続けることはできません。仲間が無理をしなければならないという状況にあって、どうすれば問題解決できるのか、やりたい看護を実践するにはどうすればいいか……ということを考えたら、結果的に規模の拡大が解決策であった、ということです。 「自分たちがどんな看護をしたいのか」というのを意識するのは、とても重要ですね。それは、事業所の収益や個々の報酬といった形でもいいし、利用者さんやそのご家族が喜んでくださる姿でもいい。それらを具体的に表現することはできないとしても、スタッフの間で少しずつ意見交換し、想いを共有しながらやってこられたからこそ、自分たちの理想の看護に近づくことができた。その結果がいまの姿なのではないかと思います。 >>後編に続く規模が拡大してどうなった? 訪問看護ステーションの立ち上げメンバー座談会 執筆: 倉持鎮子取材: NsPace編集部 ※本記事は、2023年12月の取材時点の情報をもとに制作しています。

ピラティス×訪問看護
ピラティス×訪問看護
インタビュー
2023年3月22日
2023年3月22日

【ピラティス×訪問看護】病棟看護師から訪問看護師へ転職したきっかけ

全国の主要都市に100店舗以上のピラティス・ヨガスタジオを運営する株式会社ZEN PLACE。実はそのピラティスのノウハウを、在宅医療へ導入していることを皆さんはご存じでしょうか? 今回は、自身もピラティスに魅了され、ZEN PLACE訪問看護で勤めることになった看護師の日高さんに、ピラティスの魅力やZEN PLACE入職のきっかけなどを伺いました。 日高 優(ひだか ゆう)2008年より急性期病院での看護師(ICUや救急外来など)を経て、2020年よりZEN PLACE訪問看護ステーションにて勤務。病院勤務時代にピラティスのインストラクターコースを修了。カウンセリング技術を学び、SNSを通して看護師に自分と向き合うことの大切さを発信している。ZEN PLACE訪問看護心身ケアと未病のリーディングカンパニーであるZEN PLACEが運営する訪問看護ステーション。ピラティスの技術を医療や介護の場に用い、働くスタッフから利用者様すべての人が心身ともに健康で豊かな人生が歩めることを目指している。「したい看護をするのではなく利用者様とご家族が望む生活のサポートをすること」がモットー。 ピラティスを追いかけて訪問看護の道へ ―病棟勤務時代にピラティスにご興味を持たれたようですが、きっかけを教えてください。 私は元々ダンスが好きで、病棟看護師をしながらジャズダンスのインストラクターをしていました。当時、看護部長からも「素敵だからぜひ頑張って」と応援してもらえて、時間を調整しながらレッスンをしていたんです。ピラティスとの出会いは、そのダンススタジオのメンバーから「ピラティスいいよ」っておすすめされたことがきっかけですね。偶然にも家の近所にピラティススタジオがあったので、興味本位で通ってみました。 ―実際に体験されていかがでした? 実際やってみると身体が変わることを実感して、すごく面白いと感じました。私も医療従事者なので、身体に関する知識があるぶん、余計に楽しくなっちゃって。 また、ジャズダンスはバレエが基礎になっているので、体幹やコアマッスルが足りないと踊れないんですよね。ピラティスをやり始めることで、「身体の軸がしっかりしてきたな」と感じて、ピラティスへの興味が深まっていきました。 ―その後、ピラティスのインストラクターコースも受講されたとか? はい、受講しました! とても充実した時間になりました。 私は通学してセミナーを受講しましたが、最近はオンラインや通学+オンラインのハイブリッドコースなど、自身のライフスタイルに合わせて受講できるスクールが多いです。例えば、basiピラティスのマット通学コースの場合、集中した講義を合計36時間学び、100時間以上の自己実践、20時間以上のレッスン見学や30時間以上の指導練習を通し、資格取得が可能になります。資格を取得し、ようやくスタートラインに立てました! ―ZEN PLACEに転職しようと思ったのも、やはりピラティスがきっかけなのでしょうか? そうですね。どんどんピラティスへの興味が増して、「ピラティスを看護の仕事に活かせないかな」とインターネットで色々調べるうちに、ZEN PLACEを発見したんです。利用者さんに対してもそうですし、働き手である看護師に対してもピラティスを推奨している点に共感しました。 私も当初はダンスのトレーニングの一環として始めたピラティスでしたが、すごく自分の身体や心が整うのを感じて、「もっと働く看護師にピラティスが広まり、健康的な生活を手に入れて欲しい」と思うようになったんです。 特に急性期の病棟に勤めていると、「人が生きるか死ぬか」という命の瀬戸際のなかで看護をしているので、感情的になってしまいがちです。私も、ICUではやりがいや喜びを感じながら働いていましたが、改めて振り返ってみると心身ともに疲れていることが多かったように思います。「本当は運動して発散したいけど、仕事が忙しくて続かない」という悩みが多いのも看護師の実情です。もっと看護師にピラティスが広まってほしいと思います。 ―病棟から訪問看護への転職ですし、住むエリアも変わるなかで、悩まれなかったですか? 正直とても悩みました。急性期での看護も楽しい面ややりがいがありましたし、在宅の現場は、過去に派遣の仕事として訪問入浴をしたことがある程度。転職後の仕事内容のイメージもあまりできず、不安がありました。でも、最後は「自分がやりたいことをちゃんとやりたい」「やってみなきゃわからない!」と思い、転職を決めて東京へ引っ越しました。 ピラティスを活用するZEN PLACE訪問看護とは? ―入職後のことをお伺いします。ZEN PLACEでは、同一のステーションに訪問看護師や理学療法士、作業療法士等の色々な職種が在籍されていますが、職種間の連携について教えてください。 同じ利用者さんに看護師と理学療法士両方で入っていることもあるので、「今日はこういう状態だった」とステーション内で情報交換をしています。また、訪問看護のみで入っている利用者さんでもリハビリをしたほうが良いケースもありますし、逆にリハビリメインで入っている利用者さんに医療的な処置が必要になった場合は、看護師が入ったほうが良いこともあります。多職種と連携が取りやすく、意思疎通がスムーズで良い環境ですね。 ―職場の雰囲気としてはいかがでしょうか。 基本的にスタッフはみんな明るくて、職場内では笑顔や笑い声が絶えません。ピラティスが好きなメンバーばかりで、みんなで仕事後にレッスンを受けに行くこともありますし、和気あいあいとした職場でとても楽しいです。 ―皆さんにとって、本当にピラティスはリフレッシュもできる大切な時間なんですね。仕事の後にピラティスをするケースが多いのでしょうか。 そうですね。今もステーションの近くにあるスタジオで、「期間中に50日間ピラティスをしよう」というイベント(「50days challenge」)に同僚と参加しています (笑)。 こうしたイベントがないときでも、ZEN PLACEが運営するスタジオは各所にあるので、ステーションや自宅の近くにあるスタジオに寄ってから帰ることが多いですね。オンラインレッスンもあるので、家に帰ってからやることもあります。 人によっては朝ピラティスをしてから出勤しているケースもあると思いますし、ZEN PLACEでは福利厚生として、月に2回までは業務時間内でピラティスを受けに行っても良いという制度があります。訪問にキャンセルがでた時に行くこともありますね。 ―雰囲気が良くスタッフ同士も仲の良い職場のようですが、ピラティスを行っている影響もあると思われますか? もちろん、すべてがピラティスの効果だとは言い切れませんが、私は一助になっていると思っています。医療従事者は献身的に仕事をされている方が多い印象なので、自分のために何かをする時間って意識しないと取れないんですよね。でも、ピラティスをすると、その間は自分の身体と心と向き合うことになるので、「今日はあまり足が上がらないな」「仕事のことをいっぱい考えているな」など、色々と感じ取ることができます。 ピラティスは「動く瞑想」とも言われますが、自分に向き合うことで自分を大切にできるし、心身が整う効果があると思っています。自分自身が整うことで、利用者さんへの良い看護の提供や職場の雰囲気の安定につながるのかな、感じています。 心が安定すると、ネガティブな言葉も言わなくなりますね。「こういう嫌なことがあったよ」という話が出ても、愚痴になるのではなく、「そうなんだね、大変だったね」と受けとめたあと、「こうしたら改善するんじゃない?」とみんなで意見を出し合いますし、誰かがポジティブな言葉や思考に変換してくれます。 ―ありがとうございます。次回は、ZEN PLACEでのキャリアや、どのようにピラティスを訪問看護に取り入れているのかを伺います。>> 【ピラティス×訪問看護】ZEN PLACEのキャリアパス&訪問時のピラティス活用法 ※本記事は、2023年1月の取材時点の情報をもとに制作しています。 編集・執筆: 合同会社ヘルメース取材: NsPace編集部

特集
2022年10月18日
2022年10月18日

安心感をどう作るか⑤ 感染症版BCPの作成

最初の発生から2年が過ぎても、いまだ終息の見えない新型コロナ。感染防止対策だけではなく、目には見えないスタッフの不安やメンタルヘルスへの対応もステーションの管理者には要求されます。ベテラン管理者のみなさんに、今必要とされるスタッフマネジメントについて語っていただきます。第6回は、第4回・第5回に続き、岐阜県看護協会立訪問看護ステーション高山の野崎加世子さんです。 お話野崎加世子岐阜県看護協会立訪問看護ステーション高山 管理者 BCP(業務継続計画)の作成が、診療報酬・介護報酬上でも、強く求められるようになりました。今回は、そのうちの感染症版BCPについての話ですが、感染症版BCPについては、厚生労働省のHPで「新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」が発行されており、私たちの訪問看護ステーションでも、それを参考にBCPを策定しました。そのプロセスで最も重視したのは、「自分たちのこととしてBCPを作成する」という強い姿勢です。 自分たちのBCP 私たちの訪問看護ステーションでの感染症版BCPは、「感染対策委員会」と「BCP委員会」の共同で策定しました。これは、同BCPの策定は、「感染症対応マニュアル」の刷新と切り離せないという考えかたによります。 その過程で重視したのは、管理職などの委員会のメンバーだけではなく、すべてのスタッフが、「自分のこと」「自分の課題」として積極的に策定に参画するということでした。「自分が感染したらどうするか?」「自分が濃厚接触者になったらどうするか?」「そのとき、自分の家族はどうするか?」「自分が担当している利用者への訪問はどうするか?」「自分のチームのメンバーが訪問に行けなくなったらどうするのか?」そのようにスタッフに問いかけていきます。 事業の継続を個人目線でみれば、「今の仕事が続けられるかどうか」です。それは、「いかにして、自らの生活と利用者の健康を守るか」という真剣な問いであり、感染症版BCPの策定に参画することで、「他人事ではない」といった当事者意識が芽生えます。 しかし、そうした問いに関する回答は容易ではありません。スタッフの考えかたと事業所の方針とを合わせながら、具体的な回答を見つけ出すプロセスで、当事者であるスタッフは、「安心」を手にします。 具体的なシミュレーション もしも○○となった場合にはどうするか?──感染症BCPの策定プロセスは、具体的なシミュレーションの積み重ねです。たとえば、このように決めていきます。 チーム5人で訪問看護を行なっていたとします。うち1人が濃厚接触者になって訪問から離脱した場合は、チーム内で補い合い、現行のサービスを維持します。 2人が濃厚接触者になった場合は、ほかのチームから応援し、現行のサービス量を何とか保ちます。 3人が濃厚接触者になり、チーム内の戦力が2人になった場合には、現行のサービス量の維持は困難になるものと考えます。そこで、訪問の回数を調整したり、ご家族でできるところをお願いしたりします。ふだんから、もしものときにご家族の協力をどこまで得られるか、セルフケア能力をアセスメントしておくことが重要となります。また、かかりつけの診療所などにも協力を求め、訪問診療時に家族ケアを行なってもらうなど、あらゆる可能性を視野に入れた計画を立てます。 法人としての対応 感染または濃厚接触者になった場合の休業の扱いについても、法人として確定しておく必要があります。私たちの事業所では、「業務命令」として自宅待機してもらう観点から、感染したり、濃厚接触者になったりした場合には、「特別休暇」扱いとして給与を支給します。 スタッフは、それを知ることで、安心して働くことができます。 自然災害版BCPとの違い 自然災害版と感染症版のBCPは、共通点が少なくありませんが、明らかな違いもあります。その一つは「予防」の視点です。 自然災害に対して、私たちはきわめて非力です。ところが感染症の場合は、感染予防を行うことで感染拡大を未然に食い止めることができます。この点が、感染症対応マニュアルとセットで考えることが求められる理由です。 地域連携の内容も自然災害版BCPとは異なります。自然災害では、地域がまるごと被害を受けることが想定されます。一方、感染症の場合は、いわゆる「無傷」の事業所が数多く温存されていることが想定できます。そうした認識に立ち、感染拡大時の事業所連携の内容を平時から詰めておくことが重要です。 実際、私たちの地域でも、ほかの訪問看護ステーションが新規の受け入れを休止した際に、私たちの事業所が新規受け入れを代替したことがありました。また、訪問看護ステーションどうしはもとより、介護系サービスとの連携も考慮しておく必要もあるでしょう。 BCPの策定では、国からいわれたからではなく、「自分たちと利用者の安心のために作る」という積極的な姿勢が、もしものときの有効性を担保します。「事業所をつぶさないために作ろうよ」。それが私たちの合い言葉です。 ―第7回に続く 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー
2021年12月21日
2021年12月21日

訪問診療クリニックで働くということ(後編)

訪問診療クリニックで働く菅 基さん。今回は一風変わったプロフィールと、病棟勤務から転職した際の驚きの経験を語っていただきました。 なぜ文系四大卒が看護師に? 一般の文科系大学を出て就職もしたのに、どうして看護師になったのかとよく問われます。 新卒で入社した会社では営業職でしたが、仕事内容や今後のキャリアに対して自分の軸がみえず、悩んでいました。偶然、実家の近所に都立の看護学校があったこともあり、看護師の資格を生かした仕事をしようと決心しました。 入学してみると、学生は若い女性ばかりではなく男性も多いし、30代・40代の方もいて、違和感なく学べました。 これまでずっと学校での成績基準の世界で生きてきて、看護学校には、それだけでは推し量れない世界があることにまず驚きました。また、ずっと文系だったので、理系科目には苦労もしました。大学入試より勉強したかもしれません。 そしてみなさんそうだと思いますが、実習期間中は課題が多すぎて眠れないのには参りました。でも目的がはっきりしているので、乗り切れました。 価値観はアップデートしていくもの 国家試験合格後は、5年間病棟勤務を経験しました。呼吸器内科、血液内科など内科系混合病棟でしたが、3年目以降、男性看護師は私一人だったので、目立つというか、下手なことはできない(笑)。力仕事的な部分では頼られましたが、男性が一人の環境は、なかなか肩身が狭かったです。 ふり返って思うのは、自分の経歴や経験で価値観を固めてはいけないな、と。今でも心掛けています。 大学卒だから看護学校でも成績がすごい良かったかというとそんなことは全然なかったし、職場でも家庭でも、その時の自分のステージや将来性を見すえ、総合的にその場での自分の価値観をアップデートさせることが必要だなと学びました。 医療の常識が通用しない訪問看護という仕事 そろそろ異動のタイミングという5年目に、もともと興味があった在宅系で、地域の人とかかわりながら経験が積めることを期待し、訪問看護ステーションに転職しました。 訪問看護は、患者さんの自宅での限られた物品と限られた空間でサービスを提供するので、病院では当たり前だと思っていたことが通じない世界でした。 また、患者さんやご家族の医療に対する考えや価値観が優先されるので、そこをはねのけると「もう来なくていいです」と言われてしまいます。実際、私もそう言われたことがありました。 ALSでずっと在宅療養されている方のところに私が入った時です。ご家族がALSの患者さんであるご本人のために介護の会社を立ち上げたほどで、鉄壁の価値観 ── たとえば酸素飽和度が1%でも下がったら困るなど ── が形成されていました。私はそこを理解せず、医療の正当性を主張して失敗しました。 「24時間対応なんて無理」と考えている人へ 高齢者の増加に伴い、訪問診療を必要とする人はますます増えていきます。サービスを提供する私たちの将来的なビジョンとして、少ない人数でいかに業務を回していくかを考える必要があります。先にお話ししたICTの導入も、業務効率化、残業ゼロへの有効な手段です。 訪問看護はやってみたいけれど、24時間対応は無理と考えている方。深夜に駆けつけることは、事業所の方針にもよりますが入職前に思っていたよりはずっと少ないとお伝えしたいです。実際に訪問看護ステーションに在籍されている方なら、みなさんご存じだと思います。 なぜ深夜の訪問をしなくてすむのか。私たち医療者は、夜間に起こりそうなことをあらかじめ予測し、日中できることでしっかり予防・対応します。また、今後起こりうることを患者さんやご家族にもしっかり説明しています。そうすることで、患者さんやご家族は安心され、コールが減り、緊急連絡にも多くが電話対応ですむことになりました。 訪問診療が入るときには多職種チームが形成されている 訪問診療は、在宅系サービスのなかでは最後に入るサービスだといわれます。 たとえば高齢になって生活に支障が出てくるようになると、まずは地域包括支援センターに相談し、ケアマネジャーが入り、要介護認定が下りると訪問介護やデイサービス・デイケアを利用しはじめます。 病後など、やがて医療が必要になってくると訪問看護が入り、ご本人が病院にも行けなくなると、最後に訪問診療が入ります。つまり患者さんにかかわる多職種がすでに形成されていることが多いのです。 すでにサービスを利用している患者さんのところに私たちが加わるため、訪問看護師さんの役割はとても重要で、連携を大切にしています。当院にも懇意にしている訪問看護ステーションは複数あり、それぞれの個性と特徴を把握し、訪問看護を依頼しています。 訪問診療クリニックも、キャリアと家庭の両立に適した職場 もちろんターミナルで自宅に戻られた方や、一切サービスを使っておらず突然調子が悪くなったけれど入院はしたくない方など、先に診療が入るケースもあります。そんなときは、私たちが介護保険とは何かなど、制度的なことを説明しています。 いざ訪問してみると、家族関係に問題があったり、必要な在宅サービスが入っていなかったりなど、手が足りないと感じる部分もあります。医療だけにとどまらず、患者さんとご家族の悩みも受け止められるよう今後も頑張っていきたいですね。 そのためにも、現在、一緒に働く仲間を増やしたいと考えています。 キャリアと家庭を両立させながら働ける職場だと自負しています。訪問看護経験者で、在宅診療クリニックに関心のある方、チームで働いてみたいという方は、ぜひご連絡ください。 ** 菅 基(すが もとむ)杉並PARK在宅クリニック(東京都杉並区)看護師 杉並PARK在宅クリニックhttps://www.suginami-park.jp/ 記事編集:株式会社メディカ出版

特集
2021年12月14日
2021年12月14日

年末年始【訪問看護のシフト調整】素朴な疑問Q&A ~誰にお願いするのが正解?~

今年初めて年末年始の訪問看護のシフト調整をする、今の訪問看護ステーションではどうもシフト調整がうまくいかない……そんな方のために、ベテラン管理者さん2名に素朴な疑問をぶつけてみました。今からすぐに取り入れられる訪問看護のシフト調整テクニックも満載です。 目次▶ Q1 大晦日と元旦の勤務は、誰にお願いするのが正解ですか?▶ Q2 勤務をした看護師に、どんなお礼をしたらいいですか?▶ Q3 一部の看護師の発言権が強く、シフト調整が難航しがちで困っています▶ Q4 シフトの正解がわからない。誰にも頼れない場合はどうすればいい? プロフィール/ E戸さん(シフト管理歴10年目)病棟や複数の訪問看護ステーションでの勤務を経て2018年に起業。訪問看護ステーション経営者として看護師の教育を行いながら、自身も訪問看護師として活躍。管理者として勤務していた時期を含め、今年でシフト管理歴10年目のベテラン看護師さん。 S山さん(シフト管理歴4年目)急性期病棟で看護師として活躍したのち訪問看護へ。新規訪問看護ステーションの立ち上げから携わり、シフト管理歴は今年で4年目。看護師3名体制から始まり、現在は合計20名のシフトを管理している。20代看護師の育成にも尽力。 Q1 大晦日と元旦の勤務は、誰にお願いするのが正解ですか? E戸:特定の方や、お願いしやすい方に頼ろうとするのはあまり良くないかもしれませんね。できるだけ『公平性』を保つのが大事だと思います。最終的に、訪問看護のシフト調整に協力的な方にお願いすることになった場合でも、フォローをしっかりするのが重要です。 「シフト調整の基本」記事で詳細をCHECK≫ S山:うちは基本的に看護師全員で分担します。まず訪問看護のシフト調整は採用面接の段階から始まっていると思っていて。面接のときに「24時間365日対応」していることとその意味をきちんと伝えて、年末年始も勤務になることがある前提で看護師を採用しています。 Q2 大晦日&元旦勤務をした看護師に、どんなお礼をしたらいいですか? S山:年末年始手当を支給するのは前提として、部下にあたる看護師に年賀状を手渡ししたら喜んでもらえましたね。 E戸:年末年始手当に加えて、お正月らしい小さなおせち料理をプレゼントするようにしています。本当に小さなものなんですが、人間気持ちだと思うので。 S山:『出勤そのものを楽しむ』ことも大事じゃないですか? 年末年始の勤務=みんなが休んでるときに自分だけツライ、とはならないようにしたいと考えていて。みんなで年末年始の雰囲気を一緒に楽しむようにしています。 E戸:すごくステキな取り組みですね。具体的にはどんなことをしているんですか? S山:出勤予定の看護師に「(勤務後に)予定がなかったらみんなで一緒にごはん食べに行かない?」「一緒に年越ししない?」と声をかけて、勤務中もワイワイと終業後の計画を立てながら過ごすんです。訪問が落ち着いている年末年始ならではのコミュニケーションですね。年末年始の特別感をみんなで楽しもうよという提案に賛同してくれる看護師も多くて。若い看護師が多いからというのもあるかもしれないんですが。 E戸:いいですね。僕もまぜてもらいたい。全国で年末年始対応してる訪問看護師みんなオンラインでつなげて、一緒に年越ししましょう! みたいなことができたら楽しそうです。 S山:それは楽しそうですね! Q3 うちは一部の看護師の発言権が強く、シフト調整が難航しがちで困っています S山:あー、ありますね。そういう方が「自分は年末年始休むんだ! みんな休みにしたら良いんだ!」とおっしゃるようなパターンですかね。困りますね。 E戸:僕も何度もお会いしたことがあります。病棟でも訪問看護ステーションでも、一定数いらっしゃいますよね。 S山:そういう方って巻き込めたらすごく心強いと思うんですよ。味方になってもらうには、やっぱり日頃からの信頼関係構築が大事。小さなことでも報連相、日々の声かけ、挨拶。自分に協力してもらえるような信頼関係構築に向けて自ら動く……というような。ただ、そこに至れないまま年末年始の訪問看護のシフト調整となってしまったら……困るなぁ(苦笑)。 E戸:発言権が強くても、主義主張に根拠があれば基本的に問題ないんです。ただ、そういう方のなかには、会社の方針や本来看護で行うべき内容を自分の都合で変えようという感覚になる人が少なくない。それは利用者さんにも良くないし、組織風土としてもよろしくない。面談を繰り返しても理解してもらえず、やむなく退職いただいたことも過去にあります。 S山:僕も同じ経験があります。ステーションの理念にのっとってお話をして、それでもわかり合えない場合はしかたのないことだと思います。 Q4 シフトの正解がわからない。誰にも頼れない場合はどうすればいい? E戸:みんなにとって正解の訪問看護のシフトなんてないですよ。色々悩んでも結論は絶対でない。ひとりで気負わずに、みんなで考えればいいんだと思います。『自分でなんとかしなくては』っていうんじゃなく『みんなで考えましょう』って、看護師に言ってしまうのも手だと思いますよ。 S山:僕も最初、訪問看護のシフト調整にすごく悩んでいたんですが、今になって振り返れば、なんであのとき人に相談しなかったんだろうと思います。訪問看護ステーション内に頼れる人がいなくても「訪問看護ステーション連絡会」や「教育ステーション」など、地域ごとに訪問看護の悩み相談ができる窓口もあるし、まず誰かに頼ってみてください。ステーション内の看護師に自分が悩んでいることを打ち明けるのも良いと思います。そうすれば、自分ごと化して一緒に悩んでくれる人もでてきます。そういう協力者をどれだけ見つけられるかが大事なんじゃないでしょうか。 E戸:それでも訪問看護のシフトの空きができたら「もうしかたない。自分が出勤しよう」と割り切る覚悟だけしておけば、気持ちがラクになるんじゃないでしょうか。ときには、背中を見せてついてきてもらうことも必要です。 S山:背中を見せてもついてこないタイプの看護師には、懇切丁寧に説明して成長を促すしかないですね。このあたりは看護師教育の話になるのでまた今度にしましょうか。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

特集
2021年12月14日
2021年12月14日

年末年始【訪問看護のシフト調整】ベテラン管理者に聞くシフト調整の基本

1年のなかで、最も訪問看護のシフト管理に気をつかう年末年始。悩ましい問題だけど誰にも相談できない……という方も多いのではないでしょうか。今回はベテランの管理者さん2名に年末年始の訪問看護におけるシフト調整の基本についてうかがいました。 目次▶ 「年末年始のシフト調整に協力的な看護師」に甘えてはいけない▶ 常勤看護師4名、平均年齢35歳のステーションのケース▶ 常勤看護師20名、平均年齢25歳のステーションのケース▶ これが年末年始、訪問看護シフト調整の大基本! 日頃からの意識統一が大事 プロフィール/ E戸さん(シフト管理歴10年目)病棟や複数の訪問看護ステーションでの勤務を経て2018年に起業。訪問看護ステーション経営者として看護師の教育を行いながら、自身も訪問看護師として活躍。管理者として勤務していた時期を含め、今年でシフト管理歴10年目のベテラン看護師さん。 S山さん(シフト管理歴4年目)急性期病棟で看護師として活躍したのち訪問看護へ。新規訪問看護ステーションの立ち上げから携わり、シフト管理歴は今年で4年目。看護師3名体制から始まり、現在は合計20名のシフトを管理している。20代看護師の育成にも尽力。 「年末年始のシフト調整に協力的な看護師」に甘えてはいけない S山:僕は、こういう看護師が年末年始のシフト調整に協力的でありがたいなと感じています。 【シフト調整に協力的な看護師】・独身で土日休みを希望していない看護師・家族に医療関係者がいる看護師・利用者目線が高い看護師 E戸:僕のところも同じです。協力を得やすい看護師はいますが、だからこそ、その方だけに負担がいかないようにするのが重要ですよね。 S山:少しずらした時期で有給を取得してもらったり、年末年始に出勤してもらう場合は『年末年始ならでは』の少し楽しい勤務をしてもらったり、という配慮も必要だと思っています。 E戸:協力的だからといって、毎年同じ方ばかりにお願いするのも避けたい。僕を含め、休んだ方は忘れてしまうけど、出勤した方は絶対に覚えていますから(笑)。特定の看護師がシフトの不満をためこんでしまうことがないよう、手当や休暇の部分でしっかりサポートします。 E戸さんの訪問看護のシフト調整テクニック 常勤看護師4名、平均年齢35歳のステーションのケース E戸:僕なりの年末年始の訪問看護におけるシフト調整テクニックをご紹介します。配偶者や子どもがいる看護師も在籍していますが、全員がオンコール対応できる体制を作っています。 【シフト管理を行っている訪問看護ステーションの基本情報】・24時間365日対応・看護師の人数:4人(常勤)+1人(非常勤)・所属看護師の年齢:31歳~48歳(平均年齢:35歳)・固定給制度 【年末年始のシフト調整難易度】いつもとても苦労する 【年末年始手当】5,000円/1件あたり ※12月31日~1月3日の期間 【ここがポイント】Point1 年末年始の勤務記録を見える化2019年、2020年、2021年……と、それぞれ年末年始に勤務した看護師を記録し、全員がひと目でわかるようにする。勤務記録をもとに訪問看護のシフト調整を行い、毎年同じ人が年末年始勤務を担当することがないようにしている。 Point2 全員でホワイトボードに出勤可能日を書き出す年末年始のシフトを決めるときは、全員参加でホワイトボードを活用。過去の年末年始の出勤履歴を見返しながら、自分が出勤できる日を自主的に書き込んでもらう。 Point3 大晦日と正月は訪問数を減らせるよう事前に調整年末年始の看護負担が大きくならないよう、利用者さんとも事前に連携。大晦日と正月は訪問数を減らせるように早めに調整を行う。 S山さんの訪問看護のシフト調整テクニック 常勤看護師20名、平均年齢25歳のステーションのケース S山:次は僕の年末年始の訪問看護におけるシフト調整テクニックをご紹介します。うちは20代の独身看護師が多く在籍していて、年末年始はどうしても休みたい! という方も少ないので、比較的シフト調整はスムーズだと思います。 【シフト管理を行っている訪問看護ステーションの基本情報】・24時間365日対応・看護師の人数:20人(常勤/4拠点合計)  ※訪問看護ステーション4拠点分のシフトをまとめて管理   ステーション間での看護師の行き来も頻繁にある・所属看護師の年齢:22歳~35歳(平均年齢:25歳)・固定給制度 【年末年始手当】1,000円/1件あたり ※12月31日~1月3日の期間 【年末年始のシフト調整難易度】普段と変わらない 【ここがポイント】Point1 11月初旬から看護師に年末年始休みの希望表を提出してもらう早め早めの調整が重要。全員に希望表を提出してもらい、11月初旬から調整を始めることで、不平等感のない訪問看護シフトに近づけていく。Point2 11月初旬から利用者にも希望を確認する利用者の方の要望に応じて必要な看護師の数を設定。できるだけ多くの看護師が休みをとれるための根回しも欠かさない。 Point3 看護師に出勤をお願いするときのポイントは『平等性』と『特別感』本人の希望通りのシフトを組むことが難しく年末年始の出勤をお願いするときは、『平等性』という視点から「なぜあなたに頼むのか」を伝える。そのとき「○○さんだからお願いしたい」と特別感を出して依頼すると承諾してもらいやすい。 これが年末年始、シフト調整の大基本! 日頃からの意識統一が大事 E戸:年末年始やゴールデンウイークなどの訪問看護におけるシフト調整はたしかに難しいですが、大前提として大事なのはこれだと思っています。 重要Point 利用者さんと看護師を固定化しないためのルール決め E戸:1人の利用者さんを1人の固定の看護師が看る体制をつくってしまうと、ゴールデンウイークや年末年始に看護師が休みにくくなりますから。だからそれを防ぐために、利用者の方との契約段階から「看護師の指名はできない」ことを伝えて理解してもらっています。 S山:そうですよね。利用者さんの気持ちをくんでどうにかしたい気持ちもあるんですけど、看護師を守らないといけない立場だからバランスが難しい。それに、担当制にすると自己犠牲でがんばりすぎる看護師が出てきてしまうんですよね。 E戸:看護師側も「私じゃなきゃこの利用者さんは看られない」なんて考えるようになってしまう人も、少なくないですからね。でもそれだと健全な関係を保てなくなることも多い。だから利用者さんに対してもだし、看護師に対しても『みんなで看る』ことを徹底するのが重要ですね。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

インタビュー
2021年12月14日
2021年12月14日

訪問診療クリニックで働くということ(前編)

サラリーマンを経験してから看護師になった訪問診療専門のクリニックに勤務する菅 基さんに、訪問看護ステーションとの働きかたの違いなどを語っていただきました。 自己実現とライフステージに合致した職場を求めて 私は私立大学で社会学を学び、一度は一般企業に就職しました。しかし仕事にやりがいを感じられず、どうせなら資格を生かした仕事をしたいと考え、家族など周囲に医療系の仕事をしている人が多かったことから、看護学校に入学しました。 卒業後、病棟で5年、訪問看護ステーションに2年勤務したのち、訪問診療専門のクリニックに看護師として入職しました。現在は、杉並PARK在宅クリニックに在籍しています。 訪問看護ステーションでは学ぶことも多かったのですが、ちょうど自分の結婚というライフイベントのタイミングと重なり、家庭も大事にしたいと思い、家から通いやすい範囲にある職場を探しました。すると、近所で訪問診療クリニックが看護師を募集していて、これまでとは異なるスキルを得られるのではと考えて転職しました。 当院は東京都杉並区西荻窪に2021年4月に開院したばかりです。家庭医療専門医である田中公孝院長とは、前職(三鷹市のぴあ訪問診療クリニック三鷹)からのお付き合いで、今回、クリニックの立ち上げから参加しました。 『個』から『集』へのジョブチェンジ 訪問診療クリニックでの仕事は多岐におよびますが、一つには医師の訪問診療に同行して、必要な用具や機器を揃えるなど、診察のサポートを行います。 訪問看護は通常一人で訪問しますが、訪問診療は当院の場合、院長と私と相談員の3人のチームで訪問します。そして、チームのなかで、自分がどういうスキルを提供できるのかを常に考えながら行動します。言ってみれば、訪問先では訪問看護ステーションは「個」の仕事、訪問診療クリニックは「集」の仕事と考えます。 「個」の仕事である訪問看護は、訪問先では基本最初から最後まで一人で完結するため、判断力や行動力が磨かれます。しかし困ったときにすぐ横に相談できる人がおらず悩みを抱えがちになってしまう面があります。 一方、「集」で行動している現在は、常に医師と相談しながらケアを提供できる点で絶対的な安心感があります。ただし、訪問同行は医師が主体のため、訪問看護のときほど自分が前面に出ることは、さほどありません。 地域をよく知り医療中心の多職種連携の要となる 訪問同行以外では、「多職種連携の窓口」も大切な仕事の一つです。 訪問看護師は医師の指示のもとでサービスを提供しますが、患者さんの状態についての報告や相談など、看護師から医師に連絡するのは気が重いと感じる方も多いと思います。その点、連絡先である訪問診療クリニックに看護師がいれば、訪問看護ステーションの看護師は相談しやすいと思います。 私自身も、看護師とのコミュニケーションの際には、先生には言いづらいことも話してもらえるよう意識して接しています。 これは訪問看護ステーションにもいえると思いますが、在宅系サービスを新たな地で新規開業するには、地域のコミュニティーの傾向をよく知り、そこにいかに入り込むかが重要だと思います。 開業時には、地元の医師会やケアマネ協議会、地域包括支援センターなどのほか、商店街など地域をよく知る方たちにも挨拶に伺いました。この地(西荻窪)は、訪問診療の導入が想像していたより多くなかったこともあり、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所からは「頼りにしています」と受け入れてもらいました。 ICTの導入で効率化を図り残業を削減 現在、患者さんは、地域包括支援センターや居宅介護事業所、訪問看護ステーションから紹介いただくケースが多いですね。よく連絡する先にはどのような連絡手段がもっとも受け入れられやすいかを知っておくと、スムーズな連携につながります。 当院の場合は電話と医療介護専用のSNS(LINEのようなソーシャルネットワークシステム)などのICTも積極的に利用しています。日々の業務では、緊急を要する場合は電話で、急ぎではないときはSNSを使うなど、臨機応変に使い分けています。 連携している訪問看護ステーションの中には、ICTを利用していないところもあるのですが、業務量の削減という観点からは、導入するメリットは大きいと思います。 ICTの活用でも、変わらない大事なこと 電話やファックス、メールなど従来の連絡手段では、すぐに電話に出られなかったり、事業所に戻ってからでないと対応できなかったりするため、どうしても記録や連絡などの事務業務は残業になってしまいがちです。でもICTツールを使えば、隙間時間にササッと連絡できるし、スマホやタブレットで連携できるので、事務所にいないときでもチェックできます。 ただICTツールばかりに頼ると、こちらが意図したことを誤解したままサービスが提供されていたり、すれ違いが起こったりする場合もあるので、合間あいまに電話で直接話して、相手との目線を合わせることは必要です。これは当院の院長も常日頃から言っていることで、どんなに便利なツールがあっても、最終的には人と人との関係性が重要なのです。(後編へ続く) ** 菅 基(すが もとむ)杉並PARK在宅クリニック(東京都杉並区)看護師 杉並PARK在宅クリニックhttps://www.suginami-park.jp/ 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー
2021年10月12日
2021年10月12日

本人の強い意志をチーム力で支える

ベテラン訪問看護師の望月葉子さんが出会った、印象深い意思決定支援のケースを前後編で紹介します。前編は、重度の障害のある人に対する現在進行形の支援について語っていただきました。 東京のICU病室から博多でのコンサートへ 「意思決定支援」というテーマをいただいたとき、まず思い浮かべたのが10年のお付き合いになるAさんです。「こうしたい」という強い意思を持ち、周りを巻き込んでそれを実現していける人だからです。 【患者Aさん】 現在63歳、アテトーゼ型脳性麻痺の女性。車いす使用。望月さんが担当するようになったのは2010年、Aさんが53歳の時から。当時、直腸膀胱障害があり、すぐに尿道カテーテルを留置。その後、気管切開、胃瘻造設、乳がん手術などを経て、今も94歳の母親と二人で在宅生活を継続している。 Aさんへのこれまでの支援で最も大きなエピソードは、2014年10月、Aさんが交流のある演歌歌手のコンサートに招待され、病院のICUを自主退院して東京から博多に行ったことです。 そのころのAさんはすでに嚥下状態が悪くなり、この年の2月には誤嚥性肺炎で入院していました。博多に行きたいと言われたとき、私は最初、本気とは思っていませんでした。でもAさんは本気でした。それでケアチームの会議を招集し、本当に博多に行けるかを検討しました。 Aさんの強い思いに、相談支援専門員(障害分野のケアマネジャー)が寄り添ってくれたことで、ケアチーム全員が実現の方向に動けたように思います。お母様も博多行きにかかる費用はすべて出すと言いました。在宅医も、万一のことが起こる覚悟を本人とお母様に確認したうえで、診療情報提供書を用意してくれました。 そうしてコンサートの半年ほど前から、ヘルパーや自費の看護師、現地でケアを引き継いでくれる看護師、携帯用の酸素などを手配し、博多行きの準備をしていました。ところがコンサートの直前、Aさんは誤嚥性肺炎で呼吸不全になり、救急搬送されてしまったのです。しかも入院中に痰が詰まって、一時は心肺停止状態に。 常識だったら「これではコンサートは行けないね」となりますよね。でも、Aさんは「どうしても行きたい」と諦めなかったのです。退院は認めないという病院と交渉し、結局Aさんは、「急変したとしても再入院は求めません」という約束をして、自主退院することになりました。 私は病院から東京駅まで車に同乗し、Aさんを自費の看護師に引き継いで新幹線に乗車させました。そしてヘルパーが合流し、何とか博多まで行き、Aさんはコンサートを楽しむことができたのです。 選択の数々 博多から帰ってきてまたすぐに、Aさんは呼吸不全になって救急搬送されました。「呼吸筋力の低下で、自力での痰の喀出は困難、経口摂取はもう無理」という医師の診断でした。Aさんも納得の上、気管切開を受けました。 その後は、胃瘻にするかどうするかの選択を迫られました。在宅でケアにあたっているお母様もこれには悩みました。お母様は当時80代後半です。在宅医や私たち訪問看護師にたびたび電話をしてきていました。 Aさん自身はとにかく生きる意欲が旺盛なので、胃瘻云々ではなく、「とにかく家に帰りたい」と訴えていました。 Aさんは気管切開で声を失っていますから、介護者が読み上げる50音に舌で合図を出して意思を伝える方法をとっています。いつもの介護者とお母様は、このコミュニケーションに慣れていますが、病院ではそうはいきません。体を動かせないAさんには、ナースコールを押すこともできません。 しかし家に帰れば、意思疎通ができるヘルパーさんが24時間いてくれるのです。結局、Aさんは胃瘻を造設して自宅に戻りました。 この後、Aさん自身もお母様も、がんの手術を受けています。でも、それらの出来事もケアチームで支え、乗り越えて、現在に至ります。胃瘻から栄養注入しながら、チョコレートや、お母様手作りのゼリーを口から召し上がっています。 いいゴールはケアチームみんなで考えたい Aさんとこれほど長いお付き合いになるとは思っていませんでした。長い期間その人の人生に寄り添っていけることは、訪問看護の醍醐味です。とても幸せなことですね。今、Aさんの自宅へは週2回の訪問で、入浴介助、摘便、服薬管理、尿道カテーテル交換などをしています。 Aさんの博多行きを経験したことなどもあって、10年の間にケアチームとしての成長を感じています。チームメンバーは入れ替わりもありますが、定期的に行政メンバーも交えてケアチーム会議をしていることもあり、Aさんの意思はみなよく分かっています。 これから起こりうる大きなエピソードとして考えられるのは、おそらくお母様に何かあったときでしょう。そのときどう対応するかについて、ケアチームで話題に上っています。しかし、施設を探すといった話はまったく出ていません。Aさんは「このまま在宅で生活する」と言うだろうと、みな思っているからです。 Aさんは、状態の悪化を嘆いて悲観的になることはありません。もちろん、感情の波はありますが、怒るエネルギーは衰えません。いろいろな難題を突き付けてくる人ですが、意思がはっきりしている分、支援の方向性は決めやすいのです。どこが本当に良いゴールなのか、今はまだわかりませんが、それはチームみなで考えていけると思っています。 ※掲載の内容については、ご本人とご家族の了承を得て掲載させていただいております。 ** 望月葉子白十字訪問看護ステーション看護師 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー
2021年6月15日
2021年6月15日

チームで共有すべき訪問看護の提供価値とは

この対談では、訪問看護ステーションの経営課題、改善点についてお話しいただいています。テーマにしたのは、新幹線清掃の仕事ぶりが『7分間の奇跡』と注目された、株式会社JR東日本テクノハートTESSEI(以下「テッセイ」という)の業務改善内容です(※1)。まったく異なる業種ですが、そこには学ぶべき多くのヒントがありました。 テッセイは、まず現場スタッフ自ら提供する商品と価値について考え、答えを出すことで、自分たちの仕事に新しい価値観を見出すことができました。新しい価値観を皆で共有できたことが、改革の大きな原動力になっています。第2回の対談では、病院とは異なる訪問看護事業の価値についてお話しいただきました。 自分たちの提供価値を定める意義 大河原: 訪問看護ステーションを見て感じるのは、看護師たちの価値観の違いに起因するいざこざが多いということです。私も経験がありますが、病院の看護師は先輩に言われたことに従わなければならない状況が多くあります。訪問看護ステーションでも、先輩看護師や管理職看護師が自分のやり方を押しつけている状況があると思います。 訪問看護は、1人の利用者さんをチームで看ています。本来は、チーム全員が同じ価値をもって連携することが理想だと思いますが、看護師以外にリハビリ職もいるため、職種によって看る観点が違ったり、看護師同士でもキャリアが違ったりして、意見が違ってしまうことがあります。 カンファレンスで担当者が集まる機会はあるのですが、みなさん忙しいので、タイムリーに行われているかというと難しいのが実情です。ウェブ会議が浸透するとよいのですが、医療や介護の領域はITリテラシーが意外と高くないのです。 当社でも、みんなが同じ1つの価値を持っているというレベルにはまだ達していないと思います。 芳賀: 提供する価値が何なのか、みんなが共通の認識を持っていれば、職種は違ってもそれを判断基準に考えることができると思います。 以前のテッセイの従業員は、新幹線の車内を掃除することが仕事だと思っていました。しかし業務改善後のテッセイは、従業員に「あなたの仕事はなんですか」と尋ねると、「お客様の旅の思い出づくり」と答えるようになりました。 これと似た話があります。墓石に名前を彫っている職人に「あなたの仕事はなんですか」と尋ねると、ある職人は「名前を彫ることだ」と言い、別の職人は「この人のお墓をつくっている」と答えました。 この2つのエピソードは、自分の仕事がどういう価値を生み出しているのかを、その人がどう認識しているかで、最終的にはお客様に提供する価値が大きく変わってしまうことを表わしています。 つまり、一人ひとりの考え方が社内でバラバラだと提供価値も変わってしまい、会社が本来目指している目的が達成できなくなるということです。 【テッセイの改革】 改革を行った矢部氏は、「新しいトータルサービスを目指す」という目標を掲げ、自分自身とスタッフたちに「私たちの商品は何なのか」と問い続けました。もちろんテッセイの仕事は、新幹線を快適に利用できるように車内を整えることです。では、なぜきれいな車内が必要なのでしょうか。それは新幹線の旅を楽しんでもらいたいからです。では、清掃員が「自分の仕事は清掃だけ」と考え、駅構内でお客様から道を尋ねられても無視したら、お客様は新幹線の旅を楽しめるでしょうか。 スタッフたちは、そのように考えていった結果、自分たちの商品(提供価値)が「お客様に旅のよい思い出を持ち帰ってもらうこと」であると気づいたのです。またこの新しい価値観を全員に理解してもらうために、新しい制服の導入、伝道師となる役職者の任命、新たな標語の設定など、スタッフの意識を変える改革を行っていきました。 関係者全員が同じ価値を共有することが理想 大河原: 当社は、それぞれがやりたい看護への想いを大事にしていますが、一つ強く言っていることがあります。それは「療養上の世話」を重視するということです。 一般的に看護師には、療養上の世話と診療の補助という二つの責務があります。病院は患者さんの病気を治す所なので、病院の看護師は診療の補助が重要な仕事だと思います。 しかし訪問看護は、療養上の世話だと思っています。なぜなら、在宅の方は病気を治したくて家にいるわけではなくて、家で生活したくて病気と向き合っているからです。 例えば、糖尿病をわずらっていて、自宅でお菓子やジュースを飲食していたらどうするか。病院なら禁止しますが、訪問看護の場合は、それが良くないとわかっていても完全に取り上げるのが利用者さんにとって一番良いとは限らないよね、というのが当社の考え方です。 リカバリーの場合、こうした価値観を『もう1人のあたたかい家族」という理念として掲げ、自分の家族だったらどう看るか、ということを医療職として考えることを大事にしています。 理念を浸透させる方法として、今は各事業所で毎日朝礼を行っています。その利用者さんが自分の家族だったらどう対応するか、理念に基づいた気づきを毎朝誰かが発信していくことで、療養上の世話という方向へみんなの意思を統一していくようにしています。 とはいえ、現在の理念にしたのは半年前なので、まだまだこれからですね。 ただ、訪問看護業界を見渡すと、価値観を示す理念を掲げている会社は多くありません。こうした点も訪問看護業界の課題といえます。 芳賀: 理念として、全社員に『もう1人のあたたかい家族」という考え方を示しているのは素晴らしいですね。また、朝礼でスタッフ自らメッセージを発信していく取り組みは、テッセイでも行なっています。理念や価値をみんなで共有していくプロセスとしては需要なことだと思います。 ただその理念は、大河原社長たち経営陣が作ったものだと思います。 テッセイの改革は、全員が同じ価値観を持つことができるようになって、初めて成果が出ました。しかも、最も大切な提供価値である「旅の思い出づくり」というコンセプトは、本社や社長が考えたのではありません。社員たちにものすごく議論をさせて、自分たちで考えさせました。 また、旅の思い出づくりは1社でできることではありません。そこで社員の要望で、車内販売の販売員や車掌などとも連携するために、他の会社や職種の人たちとも話し合いを重ねていきました。 在宅医療も同じですね。場合によっては組織も異なるさまざまな専門職の人がサービスを提供しますが、相手は1人の利用者さんです。だから、すべての関係者が同じ価値観を持っていたほうがよく、組織間の連携も欠かせません。 訪問看護ステーションでも、自分たちが提供する利用者さんへの価値とは何なのかを、社員の方々にとことん話し合ってもらってはいかがでしょうか。 ** 名古屋商科大学大学院、NUCBビジネススクール 教授 芳賀 裕子  【略歴】 慶應義塾大学卒。慶應義塾大学経営管理研究科修了(MBA)。筑波大学大学院ビジネス科学研究科後期博士課程修了。博士(経営学・筑波大学)。プライスウォーターハウスコンサルタント(株)にてコンサルティングに従事。その後コンサルティング事務所を立ち上げ、大手企業のヘルスケア分野への新規参入コンサルティングを30年近く実施。医療、健康関連、介護、ヘルスケア業界を得意とし、ベンチャー企業取締役、ヘルスケア事業会社の執行役員なども歴任。 Recovery International株式会社 代表取締役社長/看護師 大河原 峻  【略歴】 看護師として9年間臨床に携わった後に、オーストラリアで働くが現実と理想のギャップに看護師として働く自信を失う。その後、旅行先のフィリピンの在宅医療に強い衝撃を受け、帰国後にリカバリーインターナショナル株式会社を設立。設立7年で11事業所を運営し(2020年12月時点)、事務効率化や働き方改革など、既存のやり方にとらわれない独自の経営を進める。  【参考書籍】 ※1 著・矢部輝夫、まんが・久間月慧太郎(2017)『まんが ハーバードが絶賛した 新幹線清掃チームのやる気革命』、宝島社

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