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インタビュー

訪問診療クリニックで働くということ(後編)

訪問診療クリニックで働く菅 基さん。今回は一風変わったプロフィールと、病棟勤務から転職した際の驚きの経験を語っていただきました。 なぜ文系四大卒が看護師に? 一般の文科系大学を出て就職もしたのに、どうして看護師になったのかとよく問われます。 新卒で入社した会社では営業職でしたが、仕事内容や今後のキャリアに対して自分の軸がみえず、悩んでいました。偶然、実家の近所に都立の看護学校があったこともあり、看護師の資格を生かした仕事をしようと決心しました。 入学してみると、学生は若い女性ばかりではなく男性も多いし、30代・40代の方もいて、違和感なく学べました。 これまでずっと学校での成績基準の世界で生きてきて、看護学校には、それだけでは推し量れない世界があることにまず驚きました。また、ずっと文系だったので、理系科目には苦労もしました。大学入試より勉強したかもしれません。 そしてみなさんそうだと思いますが、実習期間中は課題が多すぎて眠れないのには参りました。でも目的がはっきりしているので、乗り切れました。 価値観はアップデートしていくもの 国家試験合格後は、5年間病棟勤務を経験しました。呼吸器内科、血液内科など内科系混合病棟でしたが、3年目以降、男性看護師は私一人だったので、目立つというか、下手なことはできない(笑)。力仕事的な部分では頼られましたが、男性が一人の環境は、なかなか肩身が狭かったです。 ふり返って思うのは、自分の経歴や経験で価値観を固めてはいけないな、と。今でも心掛けています。 大学卒だから看護学校でも成績がすごい良かったかというとそんなことは全然なかったし、職場でも家庭でも、その時の自分のステージや将来性を見すえ、総合的にその場での自分の価値観をアップデートさせることが必要だなと学びました。 医療の常識が通用しない訪問看護という仕事 そろそろ異動のタイミングという5年目に、もともと興味があった在宅系で、地域の人とかかわりながら経験が積めることを期待し、訪問看護ステーションに転職しました。 訪問看護は、患者さんの自宅での限られた物品と限られた空間でサービスを提供するので、病院では当たり前だと思っていたことが通じない世界でした。 また、患者さんやご家族の医療に対する考えや価値観が優先されるので、そこをはねのけると「もう来なくていいです」と言われてしまいます。実際、私もそう言われたことがありました。 ALSでずっと在宅療養されている方のところに私が入った時です。ご家族がALSの患者さんであるご本人のために介護の会社を立ち上げたほどで、鉄壁の価値観 ── たとえば酸素飽和度が1%でも下がったら困るなど ── が形成されていました。私はそこを理解せず、医療の正当性を主張して失敗しました。 「24時間対応なんて無理」と考えている人へ 高齢者の増加に伴い、訪問診療を必要とする人はますます増えていきます。サービスを提供する私たちの将来的なビジョンとして、少ない人数でいかに業務を回していくかを考える必要があります。先にお話ししたICTの導入も、業務効率化、残業ゼロへの有効な手段です。 訪問看護はやってみたいけれど、24時間対応は無理と考えている方。深夜に駆けつけることは、事業所の方針にもよりますが入職前に思っていたよりはずっと少ないとお伝えしたいです。実際に訪問看護ステーションに在籍されている方なら、みなさんご存じだと思います。 なぜ深夜の訪問をしなくてすむのか。私たち医療者は、夜間に起こりそうなことをあらかじめ予測し、日中できることでしっかり予防・対応します。また、今後起こりうることを患者さんやご家族にもしっかり説明しています。そうすることで、患者さんやご家族は安心され、コールが減り、緊急連絡にも多くが電話対応ですむことになりました。 訪問診療が入るときには多職種チームが形成されている 訪問診療は、在宅系サービスのなかでは最後に入るサービスだといわれます。 たとえば高齢になって生活に支障が出てくるようになると、まずは地域包括支援センターに相談し、ケアマネジャーが入り、要介護認定が下りると訪問介護やデイサービス・デイケアを利用しはじめます。 病後など、やがて医療が必要になってくると訪問看護が入り、ご本人が病院にも行けなくなると、最後に訪問診療が入ります。つまり患者さんにかかわる多職種がすでに形成されていることが多いのです。 すでにサービスを利用している患者さんのところに私たちが加わるため、訪問看護師さんの役割はとても重要で、連携を大切にしています。当院にも懇意にしている訪問看護ステーションは複数あり、それぞれの個性と特徴を把握し、訪問看護を依頼しています。 訪問診療クリニックも、キャリアと家庭の両立に適した職場 もちろんターミナルで自宅に戻られた方や、一切サービスを使っておらず突然調子が悪くなったけれど入院はしたくない方など、先に診療が入るケースもあります。そんなときは、私たちが介護保険とは何かなど、制度的なことを説明しています。 いざ訪問してみると、家族関係に問題があったり、必要な在宅サービスが入っていなかったりなど、手が足りないと感じる部分もあります。医療だけにとどまらず、患者さんとご家族の悩みも受け止められるよう今後も頑張っていきたいですね。 そのためにも、現在、一緒に働く仲間を増やしたいと考えています。 キャリアと家庭を両立させながら働ける職場だと自負しています。訪問看護経験者で、在宅診療クリニックに関心のある方、チームで働いてみたいという方は、ぜひご連絡ください。 ** 菅 基(すが もとむ)杉並PARK在宅クリニック(東京都杉並区)看護師 杉並PARK在宅クリニックhttps://www.suginami-park.jp/ 記事編集:株式会社メディカ出版

特集

年末年始【訪問看護のシフト調整】素朴な疑問Q&A ~誰にお願いするのが正解?~

今年初めて年末年始の訪問看護のシフト調整をする、今の訪問看護ステーションではどうもシフト調整がうまくいかない……そんな方のために、ベテラン管理者さん2名に素朴な疑問をぶつけてみました。今からすぐに取り入れられる訪問看護のシフト調整テクニックも満載です。 目次▶ Q1 大晦日と元旦の勤務は、誰にお願いするのが正解ですか?▶ Q2 勤務をした看護師に、どんなお礼をしたらいいですか?▶ Q3 一部の看護師の発言権が強く、シフト調整が難航しがちで困っています▶ Q4 シフトの正解がわからない。誰にも頼れない場合はどうすればいい? プロフィール/ E戸さん(シフト管理歴10年目)病棟や複数の訪問看護ステーションでの勤務を経て2018年に起業。訪問看護ステーション経営者として看護師の教育を行いながら、自身も訪問看護師として活躍。管理者として勤務していた時期を含め、今年でシフト管理歴10年目のベテラン看護師さん。 S山さん(シフト管理歴4年目)急性期病棟で看護師として活躍したのち訪問看護へ。新規訪問看護ステーションの立ち上げから携わり、シフト管理歴は今年で4年目。看護師3名体制から始まり、現在は合計20名のシフトを管理している。20代看護師の育成にも尽力。 Q1 大晦日と元旦の勤務は、誰にお願いするのが正解ですか? E戸:特定の方や、お願いしやすい方に頼ろうとするのはあまり良くないかもしれませんね。できるだけ『公平性』を保つのが大事だと思います。最終的に、訪問看護のシフト調整に協力的な方にお願いすることになった場合でも、フォローをしっかりするのが重要です。 「シフト調整の基本」記事で詳細をCHECK≫ S山:うちは基本的に看護師全員で分担します。まず訪問看護のシフト調整は採用面接の段階から始まっていると思っていて。面接のときに「24時間365日対応」していることとその意味をきちんと伝えて、年末年始も勤務になることがある前提で看護師を採用しています。 Q2 大晦日&元旦勤務をした看護師に、どんなお礼をしたらいいですか? S山:年末年始手当を支給するのは前提として、部下にあたる看護師に年賀状を手渡ししたら喜んでもらえましたね。 E戸:年末年始手当に加えて、お正月らしい小さなおせち料理をプレゼントするようにしています。本当に小さなものなんですが、人間気持ちだと思うので。 S山:『出勤そのものを楽しむ』ことも大事じゃないですか? 年末年始の勤務=みんなが休んでるときに自分だけツライ、とはならないようにしたいと考えていて。みんなで年末年始の雰囲気を一緒に楽しむようにしています。 E戸:すごくステキな取り組みですね。具体的にはどんなことをしているんですか? S山:出勤予定の看護師に「(勤務後に)予定がなかったらみんなで一緒にごはん食べに行かない?」「一緒に年越ししない?」と声をかけて、勤務中もワイワイと終業後の計画を立てながら過ごすんです。訪問が落ち着いている年末年始ならではのコミュニケーションですね。年末年始の特別感をみんなで楽しもうよという提案に賛同してくれる看護師も多くて。若い看護師が多いからというのもあるかもしれないんですが。 E戸:いいですね。僕もまぜてもらいたい。全国で年末年始対応してる訪問看護師みんなオンラインでつなげて、一緒に年越ししましょう! みたいなことができたら楽しそうです。 S山:それは楽しそうですね! Q3 うちは一部の看護師の発言権が強く、シフト調整が難航しがちで困っています S山:あー、ありますね。そういう方が「自分は年末年始休むんだ! みんな休みにしたら良いんだ!」とおっしゃるようなパターンですかね。困りますね。 E戸:僕も何度もお会いしたことがあります。病棟でも訪問看護ステーションでも、一定数いらっしゃいますよね。 S山:そういう方って巻き込めたらすごく心強いと思うんですよ。味方になってもらうには、やっぱり日頃からの信頼関係構築が大事。小さなことでも報連相、日々の声かけ、挨拶。自分に協力してもらえるような信頼関係構築に向けて自ら動く……というような。ただ、そこに至れないまま年末年始の訪問看護のシフト調整となってしまったら……困るなぁ(苦笑)。 E戸:発言権が強くても、主義主張に根拠があれば基本的に問題ないんです。ただ、そういう方のなかには、会社の方針や本来看護で行うべき内容を自分の都合で変えようという感覚になる人が少なくない。それは利用者さんにも良くないし、組織風土としてもよろしくない。面談を繰り返しても理解してもらえず、やむなく退職いただいたことも過去にあります。 S山:僕も同じ経験があります。ステーションの理念にのっとってお話をして、それでもわかり合えない場合はしかたのないことだと思います。 Q4 シフトの正解がわからない。誰にも頼れない場合はどうすればいい? E戸:みんなにとって正解の訪問看護のシフトなんてないですよ。色々悩んでも結論は絶対でない。ひとりで気負わずに、みんなで考えればいいんだと思います。『自分でなんとかしなくては』っていうんじゃなく『みんなで考えましょう』って、看護師に言ってしまうのも手だと思いますよ。 S山:僕も最初、訪問看護のシフト調整にすごく悩んでいたんですが、今になって振り返れば、なんであのとき人に相談しなかったんだろうと思います。訪問看護ステーション内に頼れる人がいなくても「訪問看護ステーション連絡会」や「教育ステーション」など、地域ごとに訪問看護の悩み相談ができる窓口もあるし、まず誰かに頼ってみてください。ステーション内の看護師に自分が悩んでいることを打ち明けるのも良いと思います。そうすれば、自分ごと化して一緒に悩んでくれる人もでてきます。そういう協力者をどれだけ見つけられるかが大事なんじゃないでしょうか。 E戸:それでも訪問看護のシフトの空きができたら「もうしかたない。自分が出勤しよう」と割り切る覚悟だけしておけば、気持ちがラクになるんじゃないでしょうか。ときには、背中を見せてついてきてもらうことも必要です。 S山:背中を見せてもついてこないタイプの看護師には、懇切丁寧に説明して成長を促すしかないですね。このあたりは看護師教育の話になるのでまた今度にしましょうか。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

特集

年末年始【訪問看護のシフト調整】ベテラン管理者に聞くシフト調整の基本

1年のなかで、最も訪問看護のシフト管理に気をつかう年末年始。悩ましい問題だけど誰にも相談できない……という方も多いのではないでしょうか。今回はベテランの管理者さん2名に年末年始の訪問看護におけるシフト調整の基本についてうかがいました。 目次▶ 「年末年始のシフト調整に協力的な看護師」に甘えてはいけない▶ 常勤看護師4名、平均年齢35歳のステーションのケース▶ 常勤看護師20名、平均年齢25歳のステーションのケース▶ これが年末年始、訪問看護シフト調整の大基本! 日頃からの意識統一が大事 プロフィール/ E戸さん(シフト管理歴10年目)病棟や複数の訪問看護ステーションでの勤務を経て2018年に起業。訪問看護ステーション経営者として看護師の教育を行いながら、自身も訪問看護師として活躍。管理者として勤務していた時期を含め、今年でシフト管理歴10年目のベテラン看護師さん。 S山さん(シフト管理歴4年目)急性期病棟で看護師として活躍したのち訪問看護へ。新規訪問看護ステーションの立ち上げから携わり、シフト管理歴は今年で4年目。看護師3名体制から始まり、現在は合計20名のシフトを管理している。20代看護師の育成にも尽力。 「年末年始のシフト調整に協力的な看護師」に甘えてはいけない S山:僕は、こういう看護師が年末年始のシフト調整に協力的でありがたいなと感じています。 【シフト調整に協力的な看護師】・独身で土日休みを希望していない看護師・家族に医療関係者がいる看護師・利用者目線が高い看護師 E戸:僕のところも同じです。協力を得やすい看護師はいますが、だからこそ、その方だけに負担がいかないようにするのが重要ですよね。 S山:少しずらした時期で有給を取得してもらったり、年末年始に出勤してもらう場合は『年末年始ならでは』の少し楽しい勤務をしてもらったり、という配慮も必要だと思っています。 E戸:協力的だからといって、毎年同じ方ばかりにお願いするのも避けたい。僕を含め、休んだ方は忘れてしまうけど、出勤した方は絶対に覚えていますから(笑)。特定の看護師がシフトの不満をためこんでしまうことがないよう、手当や休暇の部分でしっかりサポートします。 E戸さんの訪問看護のシフト調整テクニック 常勤看護師4名、平均年齢35歳のステーションのケース E戸:僕なりの年末年始の訪問看護におけるシフト調整テクニックをご紹介します。配偶者や子どもがいる看護師も在籍していますが、全員がオンコール対応できる体制を作っています。 【シフト管理を行っている訪問看護ステーションの基本情報】・24時間365日対応・看護師の人数:4人(常勤)+1人(非常勤)・所属看護師の年齢:31歳~48歳(平均年齢:35歳)・固定給制度 【年末年始のシフト調整難易度】いつもとても苦労する 【年末年始手当】5,000円/1件あたり ※12月31日~1月3日の期間 【ここがポイント】Point1 年末年始の勤務記録を見える化2019年、2020年、2021年……と、それぞれ年末年始に勤務した看護師を記録し、全員がひと目でわかるようにする。勤務記録をもとに訪問看護のシフト調整を行い、毎年同じ人が年末年始勤務を担当することがないようにしている。 Point2 全員でホワイトボードに出勤可能日を書き出す年末年始のシフトを決めるときは、全員参加でホワイトボードを活用。過去の年末年始の出勤履歴を見返しながら、自分が出勤できる日を自主的に書き込んでもらう。 Point3 大晦日と正月は訪問数を減らせるよう事前に調整年末年始の看護負担が大きくならないよう、利用者さんとも事前に連携。大晦日と正月は訪問数を減らせるように早めに調整を行う。 S山さんの訪問看護のシフト調整テクニック 常勤看護師20名、平均年齢25歳のステーションのケース S山:次は僕の年末年始の訪問看護におけるシフト調整テクニックをご紹介します。うちは20代の独身看護師が多く在籍していて、年末年始はどうしても休みたい! という方も少ないので、比較的シフト調整はスムーズだと思います。 【シフト管理を行っている訪問看護ステーションの基本情報】・24時間365日対応・看護師の人数:20人(常勤/4拠点合計)  ※訪問看護ステーション4拠点分のシフトをまとめて管理   ステーション間での看護師の行き来も頻繁にある・所属看護師の年齢:22歳~35歳(平均年齢:25歳)・固定給制度 【年末年始手当】1,000円/1件あたり ※12月31日~1月3日の期間 【年末年始のシフト調整難易度】普段と変わらない 【ここがポイント】Point1 11月初旬から看護師に年末年始休みの希望表を提出してもらう早め早めの調整が重要。全員に希望表を提出してもらい、11月初旬から調整を始めることで、不平等感のない訪問看護シフトに近づけていく。Point2 11月初旬から利用者にも希望を確認する利用者の方の要望に応じて必要な看護師の数を設定。できるだけ多くの看護師が休みをとれるための根回しも欠かさない。 Point3 看護師に出勤をお願いするときのポイントは『平等性』と『特別感』本人の希望通りのシフトを組むことが難しく年末年始の出勤をお願いするときは、『平等性』という視点から「なぜあなたに頼むのか」を伝える。そのとき「○○さんだからお願いしたい」と特別感を出して依頼すると承諾してもらいやすい。 これが年末年始、シフト調整の大基本! 日頃からの意識統一が大事 E戸:年末年始やゴールデンウイークなどの訪問看護におけるシフト調整はたしかに難しいですが、大前提として大事なのはこれだと思っています。 重要Point 利用者さんと看護師を固定化しないためのルール決め E戸:1人の利用者さんを1人の固定の看護師が看る体制をつくってしまうと、ゴールデンウイークや年末年始に看護師が休みにくくなりますから。だからそれを防ぐために、利用者の方との契約段階から「看護師の指名はできない」ことを伝えて理解してもらっています。 S山:そうですよね。利用者さんの気持ちをくんでどうにかしたい気持ちもあるんですけど、看護師を守らないといけない立場だからバランスが難しい。それに、担当制にすると自己犠牲でがんばりすぎる看護師が出てきてしまうんですよね。 E戸:看護師側も「私じゃなきゃこの利用者さんは看られない」なんて考えるようになってしまう人も、少なくないですからね。でもそれだと健全な関係を保てなくなることも多い。だから利用者さんに対してもだし、看護師に対しても『みんなで看る』ことを徹底するのが重要ですね。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

インタビュー

訪問診療クリニックで働くということ(前編)

サラリーマンを経験してから看護師になった訪問診療専門のクリニックに勤務する菅 基さんに、訪問看護ステーションとの働きかたの違いなどを語っていただきました。 自己実現とライフステージに合致した職場を求めて 私は私立大学で社会学を学び、一度は一般企業に就職しました。しかし仕事にやりがいを感じられず、どうせなら資格を生かした仕事をしたいと考え、家族など周囲に医療系の仕事をしている人が多かったことから、看護学校に入学しました。 卒業後、病棟で5年、訪問看護ステーションに2年勤務したのち、訪問診療専門のクリニックに看護師として入職しました。現在は、杉並PARK在宅クリニックに在籍しています。 訪問看護ステーションでは学ぶことも多かったのですが、ちょうど自分の結婚というライフイベントのタイミングと重なり、家庭も大事にしたいと思い、家から通いやすい範囲にある職場を探しました。すると、近所で訪問診療クリニックが看護師を募集していて、これまでとは異なるスキルを得られるのではと考えて転職しました。 当院は東京都杉並区西荻窪に2021年4月に開院したばかりです。家庭医療専門医である田中公孝院長とは、前職(三鷹市のぴあ訪問診療クリニック三鷹)からのお付き合いで、今回、クリニックの立ち上げから参加しました。 『個』から『集』へのジョブチェンジ 訪問診療クリニックでの仕事は多岐におよびますが、一つには医師の訪問診療に同行して、必要な用具や機器を揃えるなど、診察のサポートを行います。 訪問看護は通常一人で訪問しますが、訪問診療は当院の場合、院長と私と相談員の3人のチームで訪問します。そして、チームのなかで、自分がどういうスキルを提供できるのかを常に考えながら行動します。言ってみれば、訪問先では訪問看護ステーションは「個」の仕事、訪問診療クリニックは「集」の仕事と考えます。 「個」の仕事である訪問看護は、訪問先では基本最初から最後まで一人で完結するため、判断力や行動力が磨かれます。しかし困ったときにすぐ横に相談できる人がおらず悩みを抱えがちになってしまう面があります。 一方、「集」で行動している現在は、常に医師と相談しながらケアを提供できる点で絶対的な安心感があります。ただし、訪問同行は医師が主体のため、訪問看護のときほど自分が前面に出ることは、さほどありません。 地域をよく知り医療中心の多職種連携の要となる 訪問同行以外では、「多職種連携の窓口」も大切な仕事の一つです。 訪問看護師は医師の指示のもとでサービスを提供しますが、患者さんの状態についての報告や相談など、看護師から医師に連絡するのは気が重いと感じる方も多いと思います。その点、連絡先である訪問診療クリニックに看護師がいれば、訪問看護ステーションの看護師は相談しやすいと思います。 私自身も、看護師とのコミュニケーションの際には、先生には言いづらいことも話してもらえるよう意識して接しています。 これは訪問看護ステーションにもいえると思いますが、在宅系サービスを新たな地で新規開業するには、地域のコミュニティーの傾向をよく知り、そこにいかに入り込むかが重要だと思います。 開業時には、地元の医師会やケアマネ協議会、地域包括支援センターなどのほか、商店街など地域をよく知る方たちにも挨拶に伺いました。この地(西荻窪)は、訪問診療の導入が想像していたより多くなかったこともあり、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所からは「頼りにしています」と受け入れてもらいました。 ICTの導入で効率化を図り残業を削減 現在、患者さんは、地域包括支援センターや居宅介護事業所、訪問看護ステーションから紹介いただくケースが多いですね。よく連絡する先にはどのような連絡手段がもっとも受け入れられやすいかを知っておくと、スムーズな連携につながります。 当院の場合は電話と医療介護専用のSNS(LINEのようなソーシャルネットワークシステム)などのICTも積極的に利用しています。日々の業務では、緊急を要する場合は電話で、急ぎではないときはSNSを使うなど、臨機応変に使い分けています。 連携している訪問看護ステーションの中には、ICTを利用していないところもあるのですが、業務量の削減という観点からは、導入するメリットは大きいと思います。 ICTの活用でも、変わらない大事なこと 電話やファックス、メールなど従来の連絡手段では、すぐに電話に出られなかったり、事業所に戻ってからでないと対応できなかったりするため、どうしても記録や連絡などの事務業務は残業になってしまいがちです。でもICTツールを使えば、隙間時間にササッと連絡できるし、スマホやタブレットで連携できるので、事務所にいないときでもチェックできます。 ただICTツールばかりに頼ると、こちらが意図したことを誤解したままサービスが提供されていたり、すれ違いが起こったりする場合もあるので、合間あいまに電話で直接話して、相手との目線を合わせることは必要です。これは当院の院長も常日頃から言っていることで、どんなに便利なツールがあっても、最終的には人と人との関係性が重要なのです。(後編へ続く) ** 菅 基(すが もとむ)杉並PARK在宅クリニック(東京都杉並区)看護師 杉並PARK在宅クリニックhttps://www.suginami-park.jp/ 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー

本人の強い意志をチーム力で支える

ベテラン訪問看護師の望月葉子さんが出会った、印象深い意思決定支援のケースを前後編で紹介します。前編は、重度の障害のある人に対する現在進行形の支援について語っていただきました。 東京のICU病室から博多でのコンサートへ 「意思決定支援」というテーマをいただいたとき、まず思い浮かべたのが10年のお付き合いになるAさんです。「こうしたい」という強い意思を持ち、周りを巻き込んでそれを実現していける人だからです。 【患者Aさん】 現在63歳、アテトーゼ型脳性麻痺の女性。車いす使用。望月さんが担当するようになったのは2010年、Aさんが53歳の時から。当時、直腸膀胱障害があり、すぐに尿道カテーテルを留置。その後、気管切開、胃瘻造設、乳がん手術などを経て、今も94歳の母親と二人で在宅生活を継続している。 Aさんへのこれまでの支援で最も大きなエピソードは、2014年10月、Aさんが交流のある演歌歌手のコンサートに招待され、病院のICUを自主退院して東京から博多に行ったことです。 そのころのAさんはすでに嚥下状態が悪くなり、この年の2月には誤嚥性肺炎で入院していました。博多に行きたいと言われたとき、私は最初、本気とは思っていませんでした。でもAさんは本気でした。それでケアチームの会議を招集し、本当に博多に行けるかを検討しました。 Aさんの強い思いに、相談支援専門員(障害分野のケアマネジャー)が寄り添ってくれたことで、ケアチーム全員が実現の方向に動けたように思います。お母様も博多行きにかかる費用はすべて出すと言いました。在宅医も、万一のことが起こる覚悟を本人とお母様に確認したうえで、診療情報提供書を用意してくれました。 そうしてコンサートの半年ほど前から、ヘルパーや自費の看護師、現地でケアを引き継いでくれる看護師、携帯用の酸素などを手配し、博多行きの準備をしていました。ところがコンサートの直前、Aさんは誤嚥性肺炎で呼吸不全になり、救急搬送されてしまったのです。しかも入院中に痰が詰まって、一時は心肺停止状態に。 常識だったら「これではコンサートは行けないね」となりますよね。でも、Aさんは「どうしても行きたい」と諦めなかったのです。退院は認めないという病院と交渉し、結局Aさんは、「急変したとしても再入院は求めません」という約束をして、自主退院することになりました。 私は病院から東京駅まで車に同乗し、Aさんを自費の看護師に引き継いで新幹線に乗車させました。そしてヘルパーが合流し、何とか博多まで行き、Aさんはコンサートを楽しむことができたのです。 選択の数々 博多から帰ってきてまたすぐに、Aさんは呼吸不全になって救急搬送されました。「呼吸筋力の低下で、自力での痰の喀出は困難、経口摂取はもう無理」という医師の診断でした。Aさんも納得の上、気管切開を受けました。 その後は、胃瘻にするかどうするかの選択を迫られました。在宅でケアにあたっているお母様もこれには悩みました。お母様は当時80代後半です。在宅医や私たち訪問看護師にたびたび電話をしてきていました。 Aさん自身はとにかく生きる意欲が旺盛なので、胃瘻云々ではなく、「とにかく家に帰りたい」と訴えていました。 Aさんは気管切開で声を失っていますから、介護者が読み上げる50音に舌で合図を出して意思を伝える方法をとっています。いつもの介護者とお母様は、このコミュニケーションに慣れていますが、病院ではそうはいきません。体を動かせないAさんには、ナースコールを押すこともできません。 しかし家に帰れば、意思疎通ができるヘルパーさんが24時間いてくれるのです。結局、Aさんは胃瘻を造設して自宅に戻りました。 この後、Aさん自身もお母様も、がんの手術を受けています。でも、それらの出来事もケアチームで支え、乗り越えて、現在に至ります。胃瘻から栄養注入しながら、チョコレートや、お母様手作りのゼリーを口から召し上がっています。 いいゴールはケアチームみんなで考えたい Aさんとこれほど長いお付き合いになるとは思っていませんでした。長い期間その人の人生に寄り添っていけることは、訪問看護の醍醐味です。とても幸せなことですね。今、Aさんの自宅へは週2回の訪問で、入浴介助、摘便、服薬管理、尿道カテーテル交換などをしています。 Aさんの博多行きを経験したことなどもあって、10年の間にケアチームとしての成長を感じています。チームメンバーは入れ替わりもありますが、定期的に行政メンバーも交えてケアチーム会議をしていることもあり、Aさんの意思はみなよく分かっています。 これから起こりうる大きなエピソードとして考えられるのは、おそらくお母様に何かあったときでしょう。そのときどう対応するかについて、ケアチームで話題に上っています。しかし、施設を探すといった話はまったく出ていません。Aさんは「このまま在宅で生活する」と言うだろうと、みな思っているからです。 Aさんは、状態の悪化を嘆いて悲観的になることはありません。もちろん、感情の波はありますが、怒るエネルギーは衰えません。いろいろな難題を突き付けてくる人ですが、意思がはっきりしている分、支援の方向性は決めやすいのです。どこが本当に良いゴールなのか、今はまだわかりませんが、それはチームみなで考えていけると思っています。 ※掲載の内容については、ご本人とご家族の了承を得て掲載させていただいております。 ** 望月葉子白十字訪問看護ステーション看護師 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー

チームで共有すべき訪問看護の提供価値とは

この対談では、訪問看護ステーションの経営課題、改善点についてお話しいただいています。テーマにしたのは、新幹線清掃の仕事ぶりが『7分間の奇跡』と注目された、株式会社JR東日本テクノハートTESSEI(以下「テッセイ」という)の業務改善内容です(※1)。まったく異なる業種ですが、そこには学ぶべき多くのヒントがありました。 テッセイは、まず現場スタッフ自ら提供する商品と価値について考え、答えを出すことで、自分たちの仕事に新しい価値観を見出すことができました。新しい価値観を皆で共有できたことが、改革の大きな原動力になっています。第2回の対談では、病院とは異なる訪問看護事業の価値についてお話しいただきました。 自分たちの提供価値を定める意義 大河原: 訪問看護ステーションを見て感じるのは、看護師たちの価値観の違いに起因するいざこざが多いということです。私も経験がありますが、病院の看護師は先輩に言われたことに従わなければならない状況が多くあります。訪問看護ステーションでも、先輩看護師や管理職看護師が自分のやり方を押しつけている状況があると思います。 訪問看護は、1人の利用者さんをチームで看ています。本来は、チーム全員が同じ価値をもって連携することが理想だと思いますが、看護師以外にリハビリ職もいるため、職種によって看る観点が違ったり、看護師同士でもキャリアが違ったりして、意見が違ってしまうことがあります。 カンファレンスで担当者が集まる機会はあるのですが、みなさん忙しいので、タイムリーに行われているかというと難しいのが実情です。ウェブ会議が浸透するとよいのですが、医療や介護の領域はITリテラシーが意外と高くないのです。 当社でも、みんなが同じ1つの価値を持っているというレベルにはまだ達していないと思います。 芳賀: 提供する価値が何なのか、みんなが共通の認識を持っていれば、職種は違ってもそれを判断基準に考えることができると思います。 以前のテッセイの従業員は、新幹線の車内を掃除することが仕事だと思っていました。しかし業務改善後のテッセイは、従業員に「あなたの仕事はなんですか」と尋ねると、「お客様の旅の思い出づくり」と答えるようになりました。 これと似た話があります。墓石に名前を彫っている職人に「あなたの仕事はなんですか」と尋ねると、ある職人は「名前を彫ることだ」と言い、別の職人は「この人のお墓をつくっている」と答えました。 この2つのエピソードは、自分の仕事がどういう価値を生み出しているのかを、その人がどう認識しているかで、最終的にはお客様に提供する価値が大きく変わってしまうことを表わしています。 つまり、一人ひとりの考え方が社内でバラバラだと提供価値も変わってしまい、会社が本来目指している目的が達成できなくなるということです。 【テッセイの改革】 改革を行った矢部氏は、「新しいトータルサービスを目指す」という目標を掲げ、自分自身とスタッフたちに「私たちの商品は何なのか」と問い続けました。もちろんテッセイの仕事は、新幹線を快適に利用できるように車内を整えることです。では、なぜきれいな車内が必要なのでしょうか。それは新幹線の旅を楽しんでもらいたいからです。では、清掃員が「自分の仕事は清掃だけ」と考え、駅構内でお客様から道を尋ねられても無視したら、お客様は新幹線の旅を楽しめるでしょうか。 スタッフたちは、そのように考えていった結果、自分たちの商品(提供価値)が「お客様に旅のよい思い出を持ち帰ってもらうこと」であると気づいたのです。またこの新しい価値観を全員に理解してもらうために、新しい制服の導入、伝道師となる役職者の任命、新たな標語の設定など、スタッフの意識を変える改革を行っていきました。 関係者全員が同じ価値を共有することが理想 大河原: 当社は、それぞれがやりたい看護への想いを大事にしていますが、一つ強く言っていることがあります。それは「療養上の世話」を重視するということです。 一般的に看護師には、療養上の世話と診療の補助という二つの責務があります。病院は患者さんの病気を治す所なので、病院の看護師は診療の補助が重要な仕事だと思います。 しかし訪問看護は、療養上の世話だと思っています。なぜなら、在宅の方は病気を治したくて家にいるわけではなくて、家で生活したくて病気と向き合っているからです。 例えば、糖尿病をわずらっていて、自宅でお菓子やジュースを飲食していたらどうするか。病院なら禁止しますが、訪問看護の場合は、それが良くないとわかっていても完全に取り上げるのが利用者さんにとって一番良いとは限らないよね、というのが当社の考え方です。 リカバリーの場合、こうした価値観を『もう1人のあたたかい家族」という理念として掲げ、自分の家族だったらどう看るか、ということを医療職として考えることを大事にしています。 理念を浸透させる方法として、今は各事業所で毎日朝礼を行っています。その利用者さんが自分の家族だったらどう対応するか、理念に基づいた気づきを毎朝誰かが発信していくことで、療養上の世話という方向へみんなの意思を統一していくようにしています。 とはいえ、現在の理念にしたのは半年前なので、まだまだこれからですね。 ただ、訪問看護業界を見渡すと、価値観を示す理念を掲げている会社は多くありません。こうした点も訪問看護業界の課題といえます。 芳賀: 理念として、全社員に『もう1人のあたたかい家族」という考え方を示しているのは素晴らしいですね。また、朝礼でスタッフ自らメッセージを発信していく取り組みは、テッセイでも行なっています。理念や価値をみんなで共有していくプロセスとしては需要なことだと思います。 ただその理念は、大河原社長たち経営陣が作ったものだと思います。 テッセイの改革は、全員が同じ価値観を持つことができるようになって、初めて成果が出ました。しかも、最も大切な提供価値である「旅の思い出づくり」というコンセプトは、本社や社長が考えたのではありません。社員たちにものすごく議論をさせて、自分たちで考えさせました。 また、旅の思い出づくりは1社でできることではありません。そこで社員の要望で、車内販売の販売員や車掌などとも連携するために、他の会社や職種の人たちとも話し合いを重ねていきました。 在宅医療も同じですね。場合によっては組織も異なるさまざまな専門職の人がサービスを提供しますが、相手は1人の利用者さんです。だから、すべての関係者が同じ価値観を持っていたほうがよく、組織間の連携も欠かせません。 訪問看護ステーションでも、自分たちが提供する利用者さんへの価値とは何なのかを、社員の方々にとことん話し合ってもらってはいかがでしょうか。 ** 名古屋商科大学大学院、NUCBビジネススクール 教授 芳賀 裕子  【略歴】 慶應義塾大学卒。慶應義塾大学経営管理研究科修了(MBA)。筑波大学大学院ビジネス科学研究科後期博士課程修了。博士(経営学・筑波大学)。プライスウォーターハウスコンサルタント(株)にてコンサルティングに従事。その後コンサルティング事務所を立ち上げ、大手企業のヘルスケア分野への新規参入コンサルティングを30年近く実施。医療、健康関連、介護、ヘルスケア業界を得意とし、ベンチャー企業取締役、ヘルスケア事業会社の執行役員なども歴任。 Recovery International株式会社 代表取締役社長/看護師 大河原 峻  【略歴】 看護師として9年間臨床に携わった後に、オーストラリアで働くが現実と理想のギャップに看護師として働く自信を失う。その後、旅行先のフィリピンの在宅医療に強い衝撃を受け、帰国後にリカバリーインターナショナル株式会社を設立。設立7年で11事業所を運営し(2020年12月時点)、事務効率化や働き方改革など、既存のやり方にとらわれない独自の経営を進める。  【参考書籍】 ※1 著・矢部輝夫、まんが・久間月慧太郎(2017)『まんが ハーバードが絶賛した 新幹線清掃チームのやる気革命』、宝島社

インタビュー

皆にとって「よりよい場所」を

テンハート訪問看護ステーションは、新型コロナ流行以前から感染症対策や災害対策など「もしもへの準備」に力を入れています。 ステーション管理者であり、合同会社Beplace代表でもある佐渡本琢也さんは実はもともと臨床検査技師として働かれていたそうです。今回は、佐渡本さんがどんな思いでステーションを設立し、運営しているか伺いました。 自分の想いを追求した先にあったもの ー臨床検査技師から訪問看護師へ、それもステーションを経営するという選択をされていますよね。背景には、どんな思いがあったんですか? 佐渡本: 看護師へ転職したのは、患者さんとコミュニケーションする仕事の方が、検体相手の仕事より向いていると思ったからです。その上で、訪問看護ステーションの経営をしようと思ったのは、「自分の考える看護を追及したかったから」です。 看護師の中には、患者さんに対して敬語を使わなかったりきつい態度取ったりする人もいます。でも、それは違うと思いました。私は、利用者さんやご家族の思いを大事にする看護をしたかったんです。 医療面だけではなく「人生をみる」と言ったらおこがましいですが、人生に関われるような看護をしていきたいと思っています。 訪問する時も常に、「他にもっとできることはないかな?」と考えています。 ーステーション名の「テンハート」には、どんな意味が込められているのでしょうか? 佐渡本: 「テンハート」はもともと「Tender Heart(やさしい心)」という言葉から取った造語なんです。 スタッフにはいつでもやさしい気持ちでいることを意識してもらっています。 また、会社名の「BePlace」も、「Better Place」を短縮した、私たちが作った造語です。 経営理念にもしているように、利用者さんにとっても、ご家族にとっても、働くスタッフにとっても、「すべての人にとってよりよい場所を」という気持ちを込めて名付けました。 利用者さんやご家族から「いてくれてよかった」と思ってもらえるような看護をモットーに、気持ちの部分だけでなく、医療面や身体面でも、信頼してもらえるステーションを目指しています。 「テンハートなら大丈夫」と言ってもらえる地域密着ステーションへ ーステーションを運営する上で、心掛けていることはありますか? 佐渡本: なんでも話しやすい雰囲気を作るようにしています。 なぜなら、雰囲気が悪いと、報告・連絡・相談がスムーズにできなくなってしまうからです。 スタッフ間の年齢差は大きいですが、明るいムードでスタッフ同士が仲良く働けていると思います。 ーテンハートの特徴は、どんなところでしょうか? 佐渡本: 特徴と言えるかわかりませんが、ケアマネジャーさんから「ちょっと難しい方だけど、テンハートさんなら大丈夫だと思って」と電話をいただくことがあります。そういう風に言ってもらえると嬉しいですね。 利用者さんの割合としては、高齢者の方が多いですが、怒りっぽい性格の方や気難しい方など、対応が難しいケースの依頼も多いですね。 ーステーションとして今後、チャレンジしたいことはありますか? 佐渡本: 地域に根付いて、自分たちの理念に共有してくれる仲間と運営していきたいと思っています。 たくさん展開したいという訳ではありませんが、もう1ステーションは名古屋市内で早めに作りたいですね。 あとは、訪問看護ステーション以外にも「すべての人にとってよりよい場所を」提供できるような別事業も展開していきたいと思っています。 合同会社Beplace代表 / テンハート訪問看護ステーション管理者 / 感染管理認定看護師・臨床検査技師 佐渡本琢也 臨床検査技師として勤務する中で、患者と接する仕事に魅力を感じ、看護師の道へ。病院では脳神経外科、消化器外科を経験し、感染管理認定看護師の資格を取得。母を癌でなくした経験から「在宅で看護師ができることが、まだあるのではないか」という思いを持ち、同僚からの誘いをきっかけに愛知県名古屋市にテンハート訪問看護ステーションを立ち上げた。

コラム

管理者は組織に勇気をもって関わろう(対話の場)

職場の人間関係がスタッフの離職率の高さに影響していると感じることはありませんか? 訪問看護ステーションのスタッフは、その一人ひとりの専門性が高く、かつさまざまなバックグラウンドを持ち、働き方も異なります。今回は、管理者としてスタッフ同士の関係性をどのようにみるべきかを解説し、組織の関係の質を高める「対話の場」のつくり方をお伝えしていきます。 目に見えない上下関係 はじめに注目していただきたいのが、「職場内で心理的安全性が保たれているかどうか」です。 あなたのステーション内で、スタッフ同士の関係性にさまざまな「目に見えない上下関係」が発生してはいないでしょうか。 「目に見えない上下関係」とは、各々が仕事に誇りを持つがゆえに、他の人との価値観や看護観の違いを理解できない、あるいは、理解しようとしないということが原因でできあがってしまう人間関係のことです。 例えば、働き方が異なる同僚を下に見る、スタッフ内で派閥ができてしまう、事務スタッフへの上から目線な対応、ベテランスタッフが面倒臭がって新人を育てない。これらにはすべて「目に見えない上下関係」が存在します。 第2回のコラムで触れたように、管理者として個々のスタッフと関係を深めたとしても、上述のような「目に見えない上下関係」が職場内にあると、それぞれのスタッフの言い分が異なるため、個々にいくら対応しようとしても溝が埋まらないという経験もあるのではないでしょうか。 この軋轢が大きくなればなるほど、解決は難しくなっていきます。そこで軋轢が大きくならないうちにやっていただきたいのが、普段の業務管理、進捗管理とは異なる目的で、スタッフ同士を集めてミーティングを開くことです。 スタッフ一人ひとりに向き合う場を「1on1」と呼ぶのに対し、スタッフ同士が向き合うこのミーティングをここでは「対話の場」と呼びます。 「対話の場」開催のポイント この対話の場は、業務の話をする場ではありません。さらに飲み会とも別で行うことをおすすめします。飲み会はつい話が流れてしまいがちになり、また人によって集中力に違いが出やすくなるためです。 上述のような上下関係が生まれるのは、大概「相手が本当は何者かわからない怖さ」から来ます。管理者として、その「怖さ」がなるべく小さいうちにお互いを「相手が本当はどんな人か」理解し合える場を作ることが大切です。 最初は話しやすい話から始め、徐々にもっとその人がわかるような深いテーマにしていくといいでしょう。下記に開催時のポイントをいくつか具体的に挙げます。 ①話しやすいテーマからスタートする 対話の場は一度で終わらせる必要はなく、何度も開催するものだと思ってください。なので、最初はとにかく話しやすいテーマからスタートさせるといいでしょう。 その際に注意していただきたいのが、相手の許可なしに興味本位で話を掘り下げないようにすることです。各自「話せる範囲」を前提とし、互いに尊重して話を聴き合うことが大事です。 【テーマ例】過去のキャリアや背景、なぜこの仕事についたか、大変だったこと、充実していたこと、乗り越えたことなど ②対話の場のルールを明確にする この場で話したことは絶対に他の場では話さない、相手の話を遮らずちゃんと最後まで聴く、などお互いのことを少しでも安心安全に話せる場を前提とするためにルールを明確にしておくとよいでしょう。 【ルール例】守秘義務、相互サポート、評価判断はしない、尊重し合う、など ③時間を区切る(ダラダラ話さない) 対話の場の開催をはじめた当初は、業務以外の事を話すことに価値を見出してくれるスタッフはそう多くないでしょう。 やっていくうちに徐々に「自分の話もできる」「相手を知ることがそう悪くない」という気持ちになるので、時間としてはあくまで業務を邪魔しない程度の時間(30分〜1時間くらい)でお互いの事を話し合えるよう、配慮する必要があります。これは何度目の開催でも同様です。 そのためには1人が話す時間もせいぜい10分以内。もし、事前準備が必要ならそのように伝えておきましょう。人数が多いなら、数回に分けて同じテーマを話すのもいいかもしれません。 管理者のあり方を見せることが関係性を創る 管理者としては、各々のスタッフのプロ意識や仕事ぶりに信頼を置いている人が多いことでしょう。 管理者自身とスタッフ個人の関係性ができていれば、仕事自体は回るかもしれません。ですが、組織は人の集まりである以上、やはり職場全体のやりづらさ、働きづらさについても、少し注意しながら観察する必要があります。 そして関係性について気づいたことがあったらそれがなるべく小さな火種の時に何かしら関わることが必要です。組織のあり方を信じつつも、そこに勇気を持って関わっていくこと。 管理者がオープンで正直であり、フラットな気持ちで組織の関係性に関与していることが、その組織のあり方に反映されていくのです。 対話の場を設けたとしたら、ぜひ管理者自身が自分の話もしていきましょう。管理者のリアルな話が「その話をしてもいいんだ」という安心感を場にもたらすきっかけになるかもしれません。 組織のメンバーが互いに理解しあい、関係性についてもお互い気を使うことができれば、組織としてもっとやりたい看護を地域に提供することも可能です。ひとりの力ではできないことを、組織で取り組むことが可能だからです。 人をマネジメントするということは、その業務の管理だけではなく、人を育て、組織を育てることに管理者として心を砕いていくことです。そのことを通じて、個人としての成長のみならず、組織としての成長をも促すことができるでしょう。 OfficeItself 代表 コーチ・ファシリテーター 山縣いつ子 2008年から企業や医療従事者向けにコーチングや研修を提供。クライアントは中間管理層を始め、女性管理者も多く、ベンチャーの執行役員、医療従事者、NPO組織の代表など幅広く担当している。 【コラムご意見番】 ~訪問看護ステーション管理者 ぴあの目~ 訪問看護ステーションは開設当初は十分に話し合いができる人数でスタートすることが多いですが、利用者が増え、スタッフの人数も増えるにつれて出勤しても他のスタッフと顔を合わせないことも増えていきます。 その様な状況になると、コラムにもあるように先輩看護師と若い看護師の間に目に見えない上下関係が生じることや、相談したいことを話せず悩んでしまうスタッフが出てくると感じます。 対話の場の一つとして、現場で最も馴染みがあるのは「カンファレンス」かと思います。 これは、看護師の人数が少ないうちは活発な意見交換を行う場として適していますが、組織が大きくなってくると、意見を発することができないスタッフも出て来てしまいます。 例えば私が働いていたステーションでは、どうしてもベテランのスタッフの意見に対して、若手のスタッフが意見を出しにくいという問題がありました。 そこであるカンファレンス時に、スタッフをランダムに組み合わせて話し合ったところ、一人一人が意見を出してくれるようになりました。 またこの時のカンファレンスの議題が「ステーション内のルールを決める」という、スタッフ一人ひとりが自分自身に関係のある身近に感じられるテーマだったのですが、そこでスタッフの業務だけではわからない新たな一面を知ることができました。 このカンファレンスを振り返ってみると、対話の場の「話しやすいテーマからスタートする」というポイントをクリアした話し合いになっていたからこそ、以前のカンファレンスより有意義なものに感じたのかもしれないと思いました。 私自身、管理業務を行なっていると、業務に追われスタッフが話しかけにくい雰囲気を醸し出してしまうことがありました。 今回のコラムを読んで、「1on1」の面談だけではなく、「対話の場」を通してスタッフの新たな一面を知り、私の一面を知ってもらうことで、小さな軋轢が生まれそうになっても、思いやりを持ってお互いの関係性を構築していけるようになるといいなと思いました。

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