認知症看護

インタビュー

当事者の思いを大事にする認知症ケア

のばなでは、認知症の方々が安心して生活できる社会を目指し、認知症に特化した取り組みを進めています。どのような思いや体制のもとで認知症ケアを実践されているのでしょうか。引き続き、冨田さんにお話を伺いました。 本人の思い、確認してますか? ―のばなさんは認知症ケアのイメージが強いのですが、どのような経緯で認知症に力を入れるようになったんですか? 冨田: 認知症にフォーカスを当てたのは、認知症が進んでいくと、どうしても家族の意見が強くなってしまい、当事者の思いが置き去りにされてしまいがちという課題を感じたからです。 多職種連携の中で生活を支えるとなると、ご家族のニーズが優先されて、それで問題ないように感じてしまっていました。 そこでふと「当事者の思いがきちんと確認できているか」という視点が漏れていたことに気づいたんですね。それに気が付いてからは、常々「本人の思いって確認できてる?」と振り返るような形でケアをするようになりました。 ―具体的にどのようにご本人の思いを確認されているのでしょうか? 冨田: 当事者のこれまでの生い立ち、どういった生活をされてきたか、当事者や家族の思いを伺っています。 今まさに困っていることだけを聞くのではなく、認知症になる前はどんな性格だったのか、どんなことを大切にされていたのか。これらを言葉にして、できないことばかりを集めるアセスメントではなく、「これはできるかも」という部分を一緒に探していきます。 定期的に行う社内研修や事例検討会でも、こういったやり方を共有しています。 看護師だからこそ受け入れてもらえることもある ―冨田さんはきらめき認知症トレーナーという資格をお持ちと伺いました。具体的にどのような実践をされているのですか? 冨田: 資格勉強で学んだことは、本人の思いはもちろん「本人の居心地を大事にすること」です。それを表情などからチェックするスケールで評価します。 言葉で意思疎通がうまくできない状態でも、泣いたり、怒ったり、表情に関わり方の結果が必ず出てきます。これは医療従事者が活用するだけではなく、家族へも伝えて、家での環境や関わり調整にも役立ててもらっています。 ―表情を注意深く観察するんですね。やっていてうまくいかないケースもありますか? 冨田: ひとつ難しいことがあります。それは、私たちとの関係の中ではうまくいったことでも、家族とはまた別の関係性があるので、同じことを家族でやってもうまくいかないことです。 例えば、利用者さんの仕事上の呼ばれ方で声を掛けると、話がすごくスムーズになったことがありました。でも、家族が利用者さんを仕事上の呼び方で呼べるかというと、そうはいきませんよね。 第三者だからこそ気づいて実践ができる、看護師だから受け入れてもらえることもあるんだと思いました。 利用者さんの安心をつくる ―居心地を大切にするアプローチをすることで、気持ちが落ち着いて、症状も改善されていくのですね。 冨田: 認知症ケアのキーワードは「安心を与えること」だと思っています。反対に、不安や焦りは認知症の症状を悪化させてしまいます。自分たちであっても、できないことを強要されると焦ったり不安になったりしますよね。 ―確かにそうですね。具体的に「安心」とはどういうことなんでしょうか? 冨田: 「安心」とは、できることを見つけることです。利用者さんの過去の行動から、何ができるかを見つけ、それをしてもらうことで、利用者さんは安心できます。そして安心した環境をつくった中にスタッフがいると「この人たちは安心だ」と感じてくれます。 認知症ケアに正解はないと思いますが、今は手探りながらも、これが一番いい形かなと思っています。 ―のばなの訪問看護では、やはり認知症の利用者さんが多いのでしょうか? 冨田: 最初は認知症に特化していましたが、最近は医療依存度の高い方で、かつ認知症がある方の紹介がすごく多くなっています。 急性期や慢性期、精神科も看取りもできて、認知症も看られることがのばなの強みです。 今後は在宅がメインとなり、「ほとんど在宅ときどき入院」という時代がくると言われている中で、他の疾患と認知症を併発する利用者の数は増えてくると思います。 多職種の方にも、認知症に備えることは避けて通れない、という話は必ずしています。認知症が看られなかったら、ケアもできないのではないかと思っています。 野花ヘルスプロモート代表取締役 冨田昌秀 祖母が看護師だった影響を受けて自身も看護師に。病棟での看護に違和感があり、介護保険施行のタイミングで起業を決意。代表を務める野花ヘルスプロモートは認知症ケアに注力しており、大阪府岸和田市にてケアプランセンター、デイサービス、訪問介護、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームを運営している。  

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