初めての訪問看護に関する記事

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2023年4月11日
2023年4月11日

遺族訪問時の請求書って…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

遺族訪問時の請求書のお渡しって、切ない 遺族訪問は、とっても大切で緊張する場面。せっかく良い雰囲気になった後に請求書を渡すのって、ちょっと切ないにゃ… 遺族ケアの集大成である遺族訪問。ご遺族と故人との思い出も振り返ります。当たり前のことですが、そんな状況下でもご請求書を渡さなくてはいけません。ちょっと気まずいな…切ないな…と思っているかたも多いのではないでしょうか。訪問看護師さんからは、「せっかく良い雰囲気になっているのに、請求書を渡すとその雰囲気が壊れてしまう気がする」という声も聞かれました。 ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

エンジョイALS
エンジョイALS
コラム
2023年3月28日
2023年3月28日

医師からみたできる看護師、患者からみたできる看護師

ALSを発症して7年、41歳の現役医師である梶浦さんによるコラム連載です。患者の立場になってみて改めて気づいた視点での、「自分が看護してもらいたい看護師さん」。ある看護師さんとのエピソードを紹介します。 患者の立場になってから変化した考え 医師として患者さんをみる側であった私は、ALSを発症してからは、患者として医師にみられる側になりました。ALSと確定診断されるまで、ALSをはじめとした神経難病を専門としているさまざまな先生方に診察してもらいました。 淡々と診断して治療を始めていく先生もいれば、とても親身になって、私のつらさや悩みに寄り添って、一筋の希望を残しながら「心が通った診療」をしてくださる先生もいらっしゃいました。 私はその先生を頼って東京から徳島大学病院まで行き、入院しました。その先生は今でもときどき、徳島から東京の私の家まで様子を見に来てくださいます。 たとえ同じ診断名と治療法であっても、医師の姿勢によって、患者はこんなにも気持ちが楽になるんだと、患者になってみて改めて気がつきました。 私は大学病院で働いていたとき、どれくらいの患者さんに「心が通った診療」ができていたのであろうか。今あのころに戻れたら、ひと回りもふた回りも、良い医師になれるような気がします。患者の立場になってみて、改めて医師とはどうあるべきか考えさせられました。 視点が変わると、見えてくるものも変わるのだなぁと思い、今回は「医師からみたできる看護師、患者からみたできる看護師」をテーマに書きたいと思います。 医師時代の私からみた「できる看護師」 医師としてバリバリ働いていたころに感じていた「できる看護師(一緒に働きやすい看護師)」とは、しっかりと周りの状況がみえており、フットワークの軽い看護師でした。 私のいた大学病院の皮膚科外来はかなり規模が大きく、皮膚科だけで診察室10室と処置室にベッドが2つあり、最大で12人の医師が同時に診察や処置や手術を行ないます。それを3~4人の看護師さんでサポートしてくれていました。 できる看護師さんはどの医師がどんな患者さんを診察しているかを常に把握しており、迅速にサポートしてくれます。たとえば、やけどの患者さんを診察していたら、医師が何も言わなくても処置カートを用意し、ガーゼや包帯や軟膏などの処置物品をすぐ使えるようにして、そばで待機しています。そんな看護師さんと一緒に仕事をすると、「この看護師さんできる!」と思ったものです。 患者になってから思う「できる看護師」 患者になってから感じた「できる看護師(こんな看護師さんに看護をしてもらいたいと思える人)」とは、危機管理能力がある、看護技術や知識レベルが高い、……などなどありますが、何といっても「優しくて思いやりのある、心のこもった看護」をしてくださる方だと私は思います。 私は2019年(ALSを発症して4年)に胃瘻をつくるために入院しました。2週間弱の短い入院でしたが、そのときに担当してもらった看護師さんの優しさを今でもはっきりと覚えています。 当時の私は、手足はあまり動かせませんでしたが、まだ自力で呼吸ができて、食事も会話もできる状態でした。その看護師さんは、いつも笑顔で病室に来て、何か困っていることはないか、つらいことはないか、と聞いてくれました。 私は「何とかなるさ!」をモットーに前向きに生きてきましたが、そのころはまだ完全には自分の病気を受け入れられてはいませんでした。徐々に進行する症状を目の当たりにして、ときどき無性につらくなり泣きたくなることがありました。しかし、家にはまだ幼稚園児の息子がいます。私を懸命に支えてくれる妻がいます。私が泣いたり弱音を吐いたりしたら家族に心配をかけてしまう、たとえ体が動かなくなっても私が家族の精神的な柱でいなくてはならない、という思いから、泣きたくなることを我慢する時もありました。 そんななかで胃瘻の手術は無事終わり、退院が近づいてきたある日の夜です。勤務時間は過ぎて夜勤への申し送りも終わったはずのその看護師さんが、病室に来て、困っていることはないか、つらいことはないか、と聞いてくれました。退院間近の安堵感と相まり、その言葉が胸の中にスッと入ってきて、気がついたら涙が溢れ、それまでのつらかったことを吐露しながら泣いていました。その看護師さんも私の話を聞きながら一緒に泣いてくれて、ため込んでいたつらさから解放された気がしました。 理解してもらえるかではなく、理解しようとしてくれる姿勢が嬉しい よく医療教育の現場では、「患者の立場になって考える」という言葉を耳にしますが、ALSになって、体も動かせず声も出せないこの感覚を、健康な人が理解するのは無理だと思いました。ただ、患者の状態を理解しようと努力することはできます。つらさを想像して寄り添うことはできます。患者はそんな看護師さんの態度を敏感に感じ取るものです。 患者にとっては、看護師さんの経験年数や学歴などは関係ありません。患者の思いを汲み取って、共感し、寄り添い、「心の通った看護」をしてくださる看護師さんに出会えることが何よりも喜びなのです。そんな看護師さんが増えてくれたら嬉しいなぁと思います。 コラム執筆者:医師 梶浦智嗣編集:株式会社メディカ出版

ニャースペースのつぶやき
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特集
2023年3月22日
2023年3月22日

毎月恒例なのに、「あっ請求書…!」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

利用者さん宅を出てから請求書渡し忘れ発覚 毎月恒例、利用者さんへの請求書配り。出発するときには覚えていたはずなのに、つい渡し忘れちゃうにゃ… 事務担当から渡された請求書。事務所を出るときには忘れないように気合いを入れていたはずなのに、利用者さん宅に入ったら忘れてしまう…という経験、ありませんか? 多くの場合、そこまで大事には至りませんが、忘れると落ち込んでしまいますよね。訪問看護師さんからは、「利用者さん宅を出て、移動中に『あっ!』となる」「事務所に戻ってカバンの中を見てから思い出すことが多い」といった声も聞かれました。 ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

訪問看護師が使うメリット
訪問看護師が使うメリット
特集
2023年3月22日
2023年3月22日

利用者の負担軽減も。訪問看護師がポータブルエコーを使うメリット&課題

近年、手軽に利用できる低価格のポータブルエコーが、訪問看護の現場でもみられるようになりました。アセスメントツールのひとつとして医師への報告や多職種連携に活用され、ケアの質向上にも期待が高まっています。しかし、ポータブルエコー購入や技術習得にかかる経済的・時間的な負担が大きく、ハードルの高さを感じる方が多いのではないでしょうか? 今回は、看護師がポータブルエコーを使うメリットと課題について、褥瘡・排便ケアにポータブルエコーを活用する東葛クリニック病院の皮膚・排泄ケア特定認定看護師の浦田克美先生にお話を聞きました。 ポータブルエコーの主なメリット3つ ポータブルエコーのメリット(1)ケアの客観的な根拠にできる 看護師がポータブルエコーを使う第一のメリットは、画像をケアの根拠にできる点です。看護師にとってポータブルエコーは、さまざまな場面で役に立ちます(図1)。 図1:「ポータブルエコーが役立つ場面の一例」(提供:浦田克美氏) たとえば、褥瘡ケアの分野では、褥瘡の深さ、発赤、DTI(深部組織損傷)など、皮膚表面からの観察は看護師の経験値や知識レベルに左右されます。しかし、ポータブルエコーの使用によって、皮下脂肪や筋肉組織内に隠れている褥瘡を可視化できます。 排泄ケアの分野でも、通常、直腸まで便が下りてきているかどうか、看護師の経験や肛門診をした際の感覚で想像し、判断することが多くあります。そこでポータブルエコーを使えば、直腸に便が溜まっていることが可視化され、浣腸、摘便といったケアも明確な根拠のもと行うことができます。 ポータブルエコーのメリット(2)客観性のある画像で判断に自信が生まれる 第二に、客観性のあるポータブルエコー画像で、判断に自信が生まれます。五感による観察は、看護師として必要ですが、経験値の格差は少なからずあります。ポータブルエコーは、必要なケア方法を導くための補完的なツールとなる可能性を秘めています。一歩立ち止まって、果たしてこれでよいのかと考える時、ポータブルエコーの画像は大きな判断材料になるでしょう。 訪問看護の現場では、膀胱留置カテーテルからの尿流出がなくなった時、カテーテル交換で済むレベルなのか、急な受診を要するレベルなのか、判断を迫られる場面があると思います。カテーテルの閉塞・屈曲などのトラブルなのか、尿閉・乏尿などの問題なのかを一人で見極めなければなりません。 しかし、ポータブルエコーがあれば、より根拠を持って、直ちに見分けられます。画像でカテーテルは膀胱内にあるけれども、膀胱内に尿がたまっていないのを確認すれば、尿閉・乏尿で腎機能低下の可能性があるため、受診をすすめる根拠として画像提供できます。利用者さんやご家族にとって、急な受診は大きな負担となるため、救急車を呼ぶのか、明日の外来まで待てるか、それは大きな違いではないでしょうか。画像を撮影しておけば、医師が不在でも後で所見を聞き、利用者さん宅を出た後でも対応できます。 ポータブルエコーのメリット(3)多職種や利用者さんと現状を共有できる 第三のメリットは、医師や多職種、利用者さん、ご家族との情報共有による関係性の向上です。ポータブルエコー導入前から同僚や多職種との情報共有のメリットは予想していましたが、これは予想外のメリットでした。利用者さんやご家族など、医療の専門性に関わらず画像提示し、褥瘡の深さや便、尿の貯留部位を見せると納得が得られやすく、ケアに説得力が生まれます。 当院での事例ですが、「毎日便が出ないと気持ち悪い」と下剤に固執していたある患者さんは、食事摂取量が少なく、活動性も低いため、毎日便が出る状態ではありませんでした。そこで、ポータブルエコーを使い、その画像を患者さんと見ながら「便は今、ここにありますよ」と画像を共有しました。便は白くモコモコした雲のように画像化されるのでわかりやすく、患者さんも画像を見ることで「排便は今日じゃないな」というのを理解できるのです。 一方、排便がしばらくみられないことを心配した看護師が、患者さんの訴えがなくても浣腸や摘便を実施することがあります。 しかし、実際には直腸には便が溜まっていなかったり、摘便を実施したけど便が下りていない状態であったり、結果的に浣腸は不必要な排便ケアだった、というケースも多くあります。ポータブルエコーを用いることで、便が下りていないことが分かれば、患者さんは不必要な排便ケアを免れ、苦痛を回避することができます。また、直腸に便があれば浣腸や摘便、無ければ下剤と便秘の状態に合わせてケア方法を選択できます。例えば、「直腸に便が溜まってないから今日は浣腸しません」と伝えることができるので、訪問看護師にとっても業務の効率化に繋がるのではないでしょうか。 ポータブルエコーは、患者さんとの情報共有や信頼関係形成といった面でも、とても有益だと感じます。患者さん自身が排便の時期を予測できると、ポータブルエコーが患者さんのセルフケアに貢献できる部分もあります。 訪問看護師のポータブルエコー活用の課題 ポータブルエコー活用の課題(1)機材が身近にない 訪問看護師がポータブルエコーを使うケースも出てきましたが、大きな壁が2つあります。1つ目はポータブルエコーの機材そのものがないことです。最近、ポータブルエコーは手頃な価格のものも増えましたが、まだまだ浸透していません。やはり、血圧計やサチュレーションモニターのように、ポータブルエコーがもっと身近に判断できるツールとなればと思います。 ポータブルエコー活用の課題(2)技術習得までのサポートを得にくい 2つ目は、ポータブルエコーを学ぶ看護師の環境が十分に得られにくいことです。看護師にとって、基礎教育でまったく学ばなかったポータブルエコーの走査や画像の読み方を、一人で学ぶことは難しいと思います。質問したらすぐ答えてくれる指導者がいるといった、学びの環境を整えることが重要でしょう。 私たちの医療チームでは、褥瘡回診からポータブルエコーの使用を始めました。検査部がポータブルエコーを持って参加し、チームメンバーと一緒に画像を読影しています。その中で、プローブ走査のコツや持ち方、見やすく説得力のある画像の描出方法を教えてもらいます。気長に分かりやすく教えてくれる指導者がそばにいることが大きなカギになります。 ポータブルエコー活用で質の高いケアを提供する 訪問看護でポータブルエコーの活用をしていくためには、管理者が根拠を持ち、質の高いケアを行っていこうという風土を作ることも重要です。確かにポータブルエコーを活用しなくても質の高い看護は提供できます。多くの看護師は、使った事もないポータブルエコーをゼロから学ぶ時間も余力も無いと感じているでしょう。 しかし、褥瘡写真はどうでしょう。カメラの購入やカルテに貼り付ける手間があっても、以前に比べかなり一般化しました。 それは、ケア方法の統一や医師や家族と情報共有するメリットの方が大きく、診療報酬がつかなくても費用対効果が高いと感じているからです。 デジタル時代となり、医師と褥瘡の写真をやりとりするなどの情報共有が一般的になりつつあります。褥瘡を画像化する事で、ケアの統一や教育、家族指導にも活用できるようになりました。これからは、皮膚表面から見えない領域を、ポータブルエコーで見ることもできます。五感を使ったプロの技と客観的な画像を掛け合わせれば看護の質はもっと発展していくはずです。 また、ポータブルエコーの採用を検討している管理者の方には、ポータブルエコーでおこなったアセスメントとケアに対して、適宜フィードバックしてあげてください。上司からのフィードバックがあるだけで、ポータブルエコーを使ったアセスメントに自信を持ち、ケアする喜びにつながるはずです。 取材協力浦田克美氏(皮膚・排泄ケア特定認定看護師)編集:メディバンクス株式会社

法制度「生活保護」
法制度「生活保護」
特集
2023年3月14日
2023年3月14日

知っておきたい生活保護の基礎知識ー「生活保護を受けたい」と相談されたら?

この連載では、訪問看護師のみなさんが現場で遭遇しそうなケースをもとに、利用者さんからの相談に関連する法律や制度についてわかりやすく解説します。法律に苦手意識がある方でも自信をもって対応できるよう、役立つ知識をお届けします。今回のテーマは「生活保護」です。 事例 独居の利用者Eさん(70代男性)。タクシーの運転手を自営業で細々と営んできましたが、引退後は貯金を切り崩して生活してきました。年金は、納付期間が短かったため、月4万円程度しか受給できていません。 ある日、訪問した看護師のFさんは、思い詰めた表情のEさんからこう打ち明けられました。 「お恥ずかしい話だが、もうお金がありません。ついては、生活保護を受給したいのだが、ここに現金で10万円ある。これだけは私の葬儀代として別にとっておきたい。でも、所持金が完全にゼロにならないと生活保護は受けられないのですか。もしそうなら、あなたに預かってもらって、私が死んだら葬儀代に充ててほしい。」 Eさんは目立った浪費癖もなく、堅実に生活しているかに見えましたが、よくよく話を聞いてみると、昔ギャンブルにはまっていたそうです。そのころに作った借金の支払いにずっと追われており、返済は今でも100万円ほど残っていると言います。 相談を受けたFさんとしては、「役所へどうぞ」と言えば済みそうですが、それだけではさすがに冷たい対応と言われてしまいそうです。10万円を預かる話も断るべきことはわかりますが、どのような言い方をすればよいのでしょうか。 回答例 「生活保護を受給されたいのですね。その場合、福祉事務所にご相談いただく必要があります。生活保護は、国が定めた「最低生活費」に満たない収入しか得られない人を保護するための制度です。ご自身の経済状況を正直に申告することが大前提となりますし、そもそも看護職員は利用者様の金銭をお預かりできる立場にはなく、お金をお預かりすることはできません。生活保護にはいくつか種類があり、葬儀の補助もあるそうですので、葬儀代のことはそれほどご心配なさる必要はないかと思います。そうしたことも含めて、福祉事務所の生活保護担当の方にご相談されてみてはいかがでしょうか。」 今回は、利用者さんが生活保護を受給する場合の支援機関へのつなげ方はもちろん、生活保護の受給条件や申請の流れ、扶助の内容なども確認していきましょう。制度について知っておくことで、適切な対応につながると思います。 生活保護とはどんな制度か 生活保護とは、病気で働けない、失業で収入がないといった理由で生活費が足りない方に、その不足の程度に応じて、最低限の生活保護費(以下、保護費)を国から支給される制度です。日本国憲法第25条ではすべての国民に生存権を認めており、1項には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定められています。この権利を実現するための施策が生活保護です。 なお、生活保護の申請件数は年々増加傾向にあります。特に新型コロナ以降は急増しました。2022年10月時点の調査結果では、生活保護を受給する世帯は約164万世帯あり、そのうちの約半数が単身の高齢者世帯となっています1)。 生活保護を受けるための要件 厚生労働省は、生活保護を受けるための要件を「生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提であり、また、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。」と説明しています2)。 つまり、生活保護を申請する前に以下のことが求められているのです。・預貯金や土地、生命保険、自動車といった資産があれば、それらを売却して生活費に充てる・世帯の中で働くことが可能な人がいれば、その能力に応じて働く・年金や雇用保険、健康保険、児童扶養手当など、他の制度で給付を受けることができる場合は、まずはそれらを生活費に充てる・配偶者や両親、祖父母、きょうだいといった3親等以内の親族から援助が受けられる場合は援助を受ける その上でもなお毎月の世帯収入が「最低生活費」に満たない場合、生活保護を受けることができます。 支給される保護費は「最低生活費―世帯収入」で決まる 最低生活費とは「生活扶助」と「住宅扶助」の合計金額のこと。生活扶助と住宅扶助の金額は、居住する地域や家族構成、生活態様などによって大きく異なります。世帯収入がこの額に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた額が保護費として支給されます。 例えば、Eさんの居住地を東京都八王子市と仮定した場合、70代の単身世帯の生活扶助は74,220円、住宅扶助は53,700円です。これを合計すると最低生活費は127,920円です。Eさんの収入は、毎月支払われる年金が相当しますので、あくまで概算ですが「127,920円-40,000円=87,920円」程度の保護費を受けられることになります。 生活保護には8種類の扶助がある 一口に生活保護といっても、実は8種類に分類されます。表1に種類と内容をまとめましたので、ご覧ください。 表1 生活保護の種類と内容 これらの中から申請者の生活に必要な扶助が、福祉事務所の審議に基づき、単体で、あるいは組み合わせて支給されます。Eさんの場合、生活扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、葬祭扶助の5つが受けられそうです。 なお、生活保護を受給している場合も訪問看護の利用は可能です。Eさんのケースであれば、事前に福祉事務所に介護扶助、あるいは医療扶助の申請を行い、福祉事務所の指示に従い必要な手続きをします。 生活保護受給までの流れ 相談・申請 まずは、居住する市町村の福祉事務所の生活保護相談窓口に行きます。そして、ケースワーカーと呼ばれる生活保護担当者に、制度や申請について詳しい説明を聞きます。 その際、先ほどご説明したように、生活保護以外の方法を活用できないか確認されます。もしあれば指示に従いますが、それでも生活保護が必要であれば申請の手続きを行います。 持参する物 収入を申告する書類や資産状況を示す通帳や生命保険の証書、本人確認書類として健康保険証や運転免許証などを用意します。初回の相談で完璧にそろえる必要はないので、ケースワーカーに聞いて準備すれば十分です。 結果通知 申請後2週間から1ヵ月の間に自宅に「保護決定通知書」が届きます。生活保護が却下された場合、却下理由に不服があれば、行政不服審査法に基づく再審請求を行うことが可能です。 生活保護受給後は制限や義務があることも知っておく 生活保護のメリットは、言うまでもなく、働けない状態でも最低限の生活費を受給できる点です。Eさんのように訪問看護を利用しているのであれば、介護費や医療費が現物支給されるのは大きなメリットでしょう。他に、住民税、国民年金保険料なども免除されます。 ただし、さまざまな制限や義務が生じることも知っておきたいポイントです。 特に確認したいのは、申請時点で所有ができる財産が制限されることです。基本的に、車や高級腕時計といった贅沢品の所有は認められません。ローンやクレジットカードも利用できません。ただし、預貯金は最低生活費の半額以下であれば、所有が認められます。Eさんの場合、10万円の所持金がありましたから、ゼロにする必要はないですが、3~4万円は使ってからでないと認められない可能性が高いでしょう。 そのほか、年に2~3回程度、ケースワーカーによる家庭訪問を受けることが義務づけられます。また、福祉事務所に毎月収入状況を申告しなければなりません。 受給後の生活において、収入の申告は非常に重要です。申請時よりも収入や財産が増えた場合、必ず報告しなければなりません。報告せずに保護費を受給し続けると、不正受給とみなされ、返還しなければならなくなります。悪質と判断されて逮捕に至る場合もあるので、収入を得たらすぐに報告します。 扶養照会の運用は大幅に見直された 従来、生活保護申請者にとって大きな心理的負担となっていた親族への扶養照会は、2021年に出された厚生労働省の通知により運用が改められました。DVや虐待がある場合、一定期間音信不通が続いている(例えば10年程度)、相続をめぐり対立している、といった事情がある場合は、扶養照会を行わなくてよくなりました。 また同年、福祉事務所職員の実務マニュアルも改正されました。生活保護の申請者が扶養照会を拒んだ場合、その理由を丁寧に聞き取り、照会をしなくてもよい場合にあたるかどうかを検討するという対応方針が新たに示されました。加えて、扶養義務の履行が期待できる者に限る、という点も明確になりました。 もし、利用者さんが「家族に知られたくない」と思い、申請に踏み切れないケースがあれば、この点を伝えてあげることで安心されるかもしれません。 ワンポイントメモ 借金があっても生活保護の申請はできるの? 事例のEさんのように借金がある場合でも生活保護の申請は可能です。ただし、受給後に、支払い督促に応じて弁済してしまうと不正受給と見なさるので注意が必要です。なぜなら、保護費は借金返済のために支給されるものではないからです。 では、どうすればよいかというと、債務整理が有効です。裁判所を介する「自己破産」の制度が別にあるので検討するとよいでしょう。まずは、経済的にお困りの方が無料で弁護士に相談できる「法テラス」といった機関を利用し、相談してみてはどうか、というアドバイスが可能と思います。 ▼「法テラス」ホームページttps://www.houterasu.or.jp/ 執筆 外岡 潤介護・福祉系 弁護士法人おかげさま 代表弁護士 ●プロフィール弁護士、ホームヘルパー2級介護・福祉の業界におけるトラブル解決の専門家。介護・福祉の世界をこよなく愛し、現場の調和の空気を護ることを使命とする。著書に『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)他多数。 YouTubeにて「介護弁護士外岡潤の介護トラブル解決チャンネル」を配信中。https://www.youtube.com/user/sotooka 記事編集:株式会社照林社 【引用】1)厚生労働省「被保護者調査(令和4年10月分概数)」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2022/dl/10-01.pdf2023/1/16閲覧2)厚生労働省「生活保護制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html 2023/1/16閲覧

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2023年3月7日
2023年3月7日

冬場の利用者さん宅の床と水が…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

とっても床が冷たい&お湯が出ないお宅も 冬場の床、とっても冷たくて凍えそうになることがあるにゃ…。お湯が出ない洗面所も、肉球がかじかむにゃ 冬場にフローリングやビニールの床がとっても冷たくなってしまうお宅、ありますよね。洗面所でお湯が出ないお宅もあり、手足が冷えてしまいます…。訪問看護師さんからは、「冬は厚手の靴下を履いている」という声や、「訪問先によっては逆にとても暖かいこともある。厚着するとかさばるし、ケア・シャワー浴等の邪魔になってしまうので悩ましい」といった声が聞かれました。 ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

幸せのかたち 〜ALSだって幸せだ!〜
幸せのかたち 〜ALSだって幸せだ!〜
コラム
2023年2月28日
2023年2月28日

幸せのかたち 〜ALSだって幸せだ!〜

ALSを発症して7年、41歳の現役医師である梶浦さんによるコラム連載です。今回は、体の状態に合わせて変化していく「幸せのかたち」を考えます。 体を動かせなくなって初めて気づく幸せがある 「幸せ(幸福)」とは、辞書によると、 心が満ち足りていること 「広辞苑」1) 人間は生きていくなかでさまざまな欲求をもち、それが満たされることを願うが、幸福とはそうした欲求が満たされている状態、もしくはその際に生ずる満足感である(後略) 「日本大百科全書(ニッポニカ)」2) とありますが、皆さんはどんなときに幸せを感じるでしょうか? ALSを発症する前の私は、仕事で疲れはてた後に冷えたビールを飲むひと口目の瞬間や、まだ薄暗いうちに海に入って日の出を見ながらサーフィンをしているとき、休みの日に家族で出かけるとき、息子と思いっきり遊んでいるときなどに、特に幸せを感じていました。 今の私は、体をまったく動かせず、声を出すこともできませんし、人工呼吸器を着けないと呼吸もできません。このことだけを聞くと、私はとびきり不幸なように思えるのでしょう。私もALSと診断されて間もないころは、将来の自分の姿を想像して、何て悲惨なんだと思っていました。いや正直、想像もつかなかったのが本音です。 しかし、体が動かせなくなって初めて気づく幸せもあるのです。確かに、できなくなったことも、不自由なことも、たくさんあります。しかし、だから不幸かといったら、そんなことはありません。「不便であること」と「不幸であること」は違うのです。徐々に動かせなくなっていく体に順応して「幸せのかたち」は変化していきます。 今の私は、動かない手足をときどき曲げ伸ばししてもらうだけで、気持ち良くて、幸せな気分になります。この感覚は、手足が自由に動かせたときにはわからないものでした。 また週1回は外出し、都会のコンクリートジャングルを抜けて、広い芝生がある公園でランチ(胃瘻からの経管栄養)をとります。皆さんにとってはただの公園かもしれませんが、ふだん家にこもっている私にとってはまるでニューヨークのセントラル・パークに行ったような気分です(行ったことはありませんが……笑)。 ALSになる前は、こんな些細なことで幸せを感じられるとは思ってもいませんでした。幸せとは日常生活でのギャップによって感じることができるのだと思います。そういう意味では、人一倍何もできない私は、人一倍ギャップを感じることができるのでしょう。 困難に対して鈍感になれる そして、人間は「鈍感力」と「適応力」という大きな力を持っています。 「鈍感力」とは、継続的に降りかかる困難などに対して鈍くなることで、上手に受け流し、ストレスをため込まない力です。 多くのALS患者は、症状がどんどん進行していき、月単位で体が動かせなくなっていきます。私も、発症当初の、利き腕である右腕が動かせなくなっていったときは強いストレスに襲われました。しかし、動かせない状態が続くと、その状態が当たり前になっていき、ストレスをあまり感じなくなりました。両腕ともまったく動かせない今では、動かせていたことが思い出せないくらい、動かせない状態が自然になっています。 このように、できない状態が続くと、その状態に慣れ、苦痛に感じなくなっていきました。一種の生体防御反応だと思いますが、周りが想像しているより本人は意外とつらくありません。(私の場合ですので、ALS患者さん全員に当てはまるわけではないと思いますが。) できなくなる状態に対応して、自分を変えられる 「適応力」とは、変わっていく環境に合わせて、自分の行動や考えかたのほうを切り替えて、うまく対応させる力です。 ALS患者は筋力低下に伴い、それまでできていたことが、徐々にできなくなっていきます。筋力低下のスピードは、ALS患者のなかでも個人差がありますが、急に何もできなくなるわけではありません。次にできなくなるであろうことを、それができなくなる前に予測して対応することができます。 私は、右手の指先から動かせなくなっていったため、左手で文字を書く練習を始めました。最初はまったくうまく書けず何度も挫折しましたが、毎日練習を続け、右手で文字が完全に書けなくなるころには、何とか左手で文字を書いて、カルテも書けるようになりました(まあ、下手すぎて、私にしか読めなかったのですが……笑)。その数ヵ月後には左手も動かなくなりましたが、そのころには音声入力装置を使ってカルテを書くようになりました。 「できなくなった。じゃあそこで諦めよう」ではなく、そこから何ができるのかを考えていけば、必ず道は見つかりました。たとえその道が険しく過酷な、綱渡りのような道であっても、最初の一歩さえ踏み出せれば、そこから道は続いていきます。 私がいちばん伝えたいこと ALSと診断された当初は、いったい自分はこれからどうなってしまうのか?と、不安と恐怖で胸がいっぱいでしたし、今振り返るとつらいこともたくさんありましたが、幸せなこともたくさんありました。 不安や恐怖が完全になくなることはないかもしれませんが、ALSという病気は、人それぞれ症状も進行するスピードも違うのだから、つらい未来のことを考えすぎてもよいことはありません。 そのつどできることを模索しながらやっていけば、何とかなるさ! コラム執筆者:医師 梶浦智嗣記事編集:株式会社メディカ出版 【引用】1)新村出編.広辞苑.第7版.東京,岩波書店,2018.2)宇都宮芳明.「幸福」日本大百科全書(ニッポニカ),JapanKnowledge, https://japanknowledge.com/閲覧2023/01/13

ニャースペース
ニャースペース
特集
2023年2月22日
2023年2月22日

入浴介助時の足元って…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

入浴介助って長靴…?裸足…? 利用者さんの入浴介助。みんなは何を履いてるにゃ…? 裸足でやって足が濡れるのは嫌だけど、長靴もっていくのも大変にゃ 「浴室で入浴介助をするとき、みんなは何を履いているの?」という声が訪問看護師さんから聞かれます。確かに難しい問題です。長靴を持参して履く? 裸足で介助して、あとで足を拭く…? 長靴を全員分用意しているステーションもあれば、利用者さんに用意していただくステーションもあるようです。小さなことに見えるけれど、結構困りますよね。 ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

オンライン同行訪問の活用ポイント 基本研修にプラスすることで安心感アップ
オンライン同行訪問の活用ポイント 基本研修にプラスすることで安心感アップ
インタビュー
2023年2月21日
2023年2月21日

オンライン同行訪問の活用ポイント 基本研修にプラスすることで安心感アップ

「NsPace With(ナースペースウィズ)」は、多忙な訪問看護ステーションの新人教育をサポートするサービスです。現場経験やスタッフ指導経験のある看護師が、新任訪問看護師の訪問にオンライン同行するほか、訪問前の準備や訪問後のフィードバック、定期的な管理者への評価結果報告なども行います。 実際にオンライン同行訪問サービス(以下「オンライン同行」)を利用した「しもふり訪問看護ステーション」の経営者 木和田さんと、所長・管理者の木下さんにお話を伺いました。後編では、オンライン同行利用後の所感と活用方法についてお話しいただきます。 >>前編はこちら試行錯誤の末に生み出した教育体制。オンライン同行訪問を活用した理由 >>オンライン同行を体験した文屋さんの記事はこちら「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記 株式会社 ユニメコム 代表取締役木和田 俊治郎さん調剤薬局の運営会社での取締役時代、訪問看護ステーションの立ち上げ責任者に。企業買収に伴い2015年に独立し、訪問看護ステーション運営会社である株式会社ユニメコムを設立。 しもふり訪問看護ステーション 所長・管理者木下 亜矢子 さん銭湯の番台や外来勤務の准看護師を経て、正看護師になるタイミングで訪問看護の道へ。 しもふり訪問看護ステーション看護師 8名、理学療法士 3名、作業療法士 4名、言語聴覚士 1名、事務 1名が所属(2023年1月時点)。 オンライン同行がスタッフの精神的サポートに ―2022年に、当時入職したばかりだった訪問看護師の文屋さんがオンライン同行を利用されています。実際にオンライン同行を利用してみて、いかがでしたか? 木下さん(以下敬称略): 本人もそう言っていますが、最初はオンライン同行の看護師さんとのコミュニケーションにかなり緊張している様子でした。慣れない職場でひとりだけ外部の人とオンラインミーティングをしている、という状況も発生するので、気を遣うことも多かったと思います。でも、回を追うごとにどんどんオンライン同行の看護師さんとも仲良くなって、慣れていきましたね。 人によって向き不向きがあると思いますが、文屋の場合は利用してよかったです。私にとって一番うれしいのは、サービスを利用した文屋が笑顔で「安心した」「心強かった」と言っていることですね。訪問看護師なりたての一人訪問は誰しも緊張しますし、初めて訪問看護の世界に飛び込むわけですから、普通は不安になったり、病棟とのギャップで苦しんだりします。 文屋が抱える不安は十分わかっていても、時間の制約があって私や他のメンバーが常に寄り添い続けることはできません。オンライン同行が精神的なサポートをしてくれて、よかったと思います。 右から木下さん、木和田さん、オンライン同行を利用した訪問看護師の文屋さん 管理者の方針が明確なら、意見の相違も「良い気づき」に ―サービス利用前は、木下さんの方針とオンライン同行の看護師の指導内容に差異が生じるのでは、というご懸念もあったと伺いました。実際に方針や意見の相違はあったのでしょうか。 木下: ありました。「オンライン同行の看護師さんの言うこともわかるが、しもふりではこうしてほしい」「この利用者さんの過去の経緯や背景を踏まえると、AではなくBにしたほうがいい」などと思ったことがあります。その際は、「私は管理者としてこう思うよ。あなたはどう思う?」と、文屋自身に考えてもらうことを意識しながら議論して、そこで出た結論を文屋から伝えてもらいました。 実際にやってみると、管理者としての方針をきちんと伝えられれば、意見が食い違っても特に困ることはないと思いました。オンライン同行の看護師さんの指摘が「そのとおりだな」と思った案件もありますし、第三者が入ることで、気づきや考えるきっかけが生まれてよかったです。 ただ、私と同行訪問の看護師さんとの間で文屋が板挟みにならないように、という点は意識していましたね。文屋と話し合って決めた結論がオンライン同行の看護師さんの意見と違っていた場合にも、「じゃあ〇〇のほうがいいね。そう言っておいて~」くらいの軽いトーンで伝えていました。管理者も同行する看護師さんも、どちらもあなたの味方なんだよ、というスタンスが伝わるように気を付けました。 木和田さん(以下敬称略): このように、木下が管理者として「自分の軸がちゃんとしていれば大丈夫」という考えで対応してくれたことは、経営者として本当にうれしいことですし、大きな成果だと考えています。オンライン同行を利用する前にイメージしていた「レベルアップ」はしっかり達成できたと思います。 オープンマインドな姿勢で臨むと学びが増える ―しもふり訪問看護ステーションでは、スタッフの方の意向も確認しながらオンライン同行の利用有無を決めていらっしゃいますが、人によって向き不向きはあると思われますか? 木和田: 本当に、プラスになるかマイナスになるかは「その人次第」という側面があると思います。例えば、過去のやり方を「絶対的基準」として捉えている人の場合、コンフリクト(対立)が起こりやすいですし、学びにつながりにくい。オンライン同行を使う方には、オープンマインドな姿勢が求められると思います。 木下: そうですね。オンライン同行の看護師さんに対して、自分の意見や考えをきちんと言えることも大事だと思います。なかには、何か意見を聞かれたときに「特にありません」という回答ばかりになる方もいらっしゃると思うのですが、そういう方は向いていないというか、「まだ早い」かもしれないですね。アセスメントができない看護師さんに対しては、オンライン同行を始めるより先に教えることがあると思います。 教育の土台があってこそ「あと一押し」として活用できる ―最後に、他の訪問看護ステーションがオンライン同行を利用する際のアドバイスをお願いします。 木和田: 当ステーションにはオンライン同行がマッチしましたし、今後も使っていこうと考えています。ただ、「オンライン同行だけ」を研修とするのはあまりよくないと思いますし、教育体制をきちんと構築してからの利用がいいのではないでしょうか。所属しているステーションの方針が不明確なまま突き進んでしまうと、目指す方向を見失いやすいでしょう。 まずは訪問看護ステーションとして数ヵ月単位の研修プログラムを組んだうえで、プラスαとしてオンライン同行を使うのがいいんじゃないかなと思います。不安な部分をあと一押ししてもらう、というイメージですね。 ―ありがとうございました。 編集・執筆: NsPace編集部 ※本記事は、2022年12月の取材時点の情報をもとに制作しています。 *  *  *  *   ■ナースペースウィズ訪問看護スタッフ向けオンライン同行訪問サービス。訪問看護の現場景観と新任看護スタッフ指導経験のある看護師が同行訪問OJTをオンラインで支援

訪問看護のヒヤリハット
訪問看護のヒヤリハット
特集
2023年2月21日
2023年2月21日

ケア・忘れ物・移動トラブル…訪問看護のヒヤリハット体験談23連発

限られた時間のなかで、利用者さんの病態や自宅の環境等に応じて臨機応変に対応する訪問看護師。病棟看護師ではなかなか経験しないヒヤリハット&インシデントも数多くあるはず。今回は、訪問看護師さんたちから寄せられた体験談をご紹介します。 ※訪問看護ステーションによっては、「アクシデント」に分類される体験談も含まれる可能性があります。あらかじめご了承ください。 【ケア編】 自動点滴停止、指示見落とし… まずはケア編から。在宅看護ならではの医療機器・コミュニケーションにまつわる体験談も寄せられています。 「利用者さん宅の交換ノートに書かれていた医師の褥瘡への軟膏変更指示を見落としてしまったスタッフがいた。それまでめったに指示変更がなかったことと、訪問時に見学者がいて気を取られてしまったことが影響したようだ」(40代) 「在宅用の自動点滴ポンプを使用していたところ、電源プラグが抜け気味になっており、充電がゼロになってしまった。あわてて電池を入れたが、作動せず。充電がゼロになると電池を入れてもすぐには動かず、手動に切り替えたため、ある程度充電されるまで滞在せざるを得なかった」(50代) 「電池・バッテリーが使える在宅用の自動点滴ポンプについて、災害時用に充電式電池を2~3日に1回交換するようにしていたが、あるとき業者から『毎日交換しないと放電する可能性がある』と聞いた。それ以降、ご家族の協力も得ながら毎日交換するようにしている。災害が起きる前に知れてよかった」(30代) 「爪がとっても切りにくい利用者さんで、爪切りのときに皮も切ってしまい、出血してしまった。出血は少量で、ご本人には『大丈夫』といってもらえたが、ヒヤッとした」(50代) 「薬の処方がかなり複雑な利用者さんの訪問が始まり、まだ薬の色分け・記載分けなどの工夫をしていないときのこと。一緒に同行した看護師が薬のセットを間違えてしまった。複数人で訪問していたためその場で気づくことができたが、危なかった」(30代) 【忘れ物編】 バッグ・バイタルセット忘れ… 訪問看護師は毎回移動するため、忘れ物をしてしまうと取りに戻るのが大変…。時間に追われるなかで、うっかり大事なものを置いてきてしまう経験をした人も多いようです。 「バイタルセットを忘れてしまうケースはよく耳にする。次の訪問先でバイタル測定物品を借りられるケースでない限り、急いで取りに戻るしかない…」(40代) 「緊急コールで深夜に独居の認知症の方に訪問したところ、ご本人から不審者扱いをされてしまった。なんとか理解してもらおうと必死に説明しながら慌てて看護や薬のセットなどの対応を行い、訪問を終了。しかし、訪問バッグをまるごと忘れてしまった…。取りに戻るしかなく、再び利用者さんからは不審者扱いをされた」(30代) 「非常に点滴の針が入りづらい利用者さんで、針を2~3本使用した。時間が押しており、一度棚の上にその針を置いて片付けていたところ、次の訪問歯科の方々が来てしまい、針を置いてきてしまった。ご自身で移動ができない利用者さんのため実害はなかったが、ご家族は『針を何本もさした上に忘れるなんて』と不信感を抱かせてしまった…」(50代) 「ものの置き忘れはステーション内で何度か事例がある。はさみをベッドのなかに置いてきてしまって、報告になったこともあった」(50代)  「清拭の際は給湯器の温度をマックスの60℃まで上げることがあるが、元の温度に戻し忘れてしまい、ホームヘルパーさんに下げてもらうように頼んだことがある」(50代)  「電子カルテを閲覧できるタブレットを忘れてきてしまった。たまたま目が見えない利用者さんだったため情報流出はしなかったが、『いつもはないものがある』とご本人からお電話をいただいてしまった」(30代) 【スケジュール管理編】 訪問のすっぽかし… 訪問の予定が変更になったケースで、気を付けてはいても訪問漏れを経験してしまった方々もいました。 「訪問をすっぽかしてしまい、青くなって利用者さん宅に駆け付けたことがある。お風呂やマッサージなどがメインの方で、利用者さんも『忙しいと思ったから連絡しなかった』と怒っていなかったが、いつも訪問を心待ちにしてくれているので心が痛んだ。予定変更があったのだが、そのことを失念してしまったことが原因。最新の予定表はステーションにしかなく、出先では確認できなかった」(50代) 「翌月から曜日変更がある利用者さんの予定を、自分(管理者)がシステムに入力し間違えてしまい、訪問漏れを起こしてしまった。それ以来、管理者以外の実担当者にも直近1週間の予定をダブルチェックしてもらうようにしている」(40代) 【訪問・移動編】 電動自転車を路駐の車に… 訪問看護師ならではの「移動」に関する体験談。違反切符をきられたケースや、怖い経験をした人もいました。 「利用者さん宅の前に路上駐車していた車に、うっかり訪問用の電動自転車を倒してぶつけてしまったスタッフがいた。そのスタッフは当初自分でなんとかしようと思ったようだが、激怒した車の持ち主からガンガン電話がかかってきて、先輩や所長に相談。所長が間に入り、和解できた」(40代) 「車で移動する際、基本的には利用者さんに駐車料金を払ってもらうが、『自宅の前で大丈夫』『一度も駐禁とられていないから』と言われ、そのとおりにしたところ駐禁をとられてしまったスタッフがいた。ステーションからは『駐禁は払わないからね』と前もって言われていたため、自己負担…」(50代) 「初めての利用者さん宅に車で行ったスタッフが、ナビに従って運転していたら、『住民以外進入禁止』の看板を見落とし、警察に違反切符を切られてしまった。看板もあまり目立たないものだったようで、誰がやっていても防ぎづらかった事例と考え、看護師が支払った罰金相当額をステーションが負担した」(40代) 「いつもカギをあけてくれるご家族が不在で、利用者さんご本人は動けないため、家に入れなかったことがある。窓越しに利用者さんと会話ができ、ご本人から『窓から入って』と言われた。木によじ登って入ろうとしたが、近隣の方から不審者扱いをされそうになり、結局訪問はできなかった」(30代) 【経理・事務関連編】 指示書が期限切れ… 訪問看護師が理解しておけなければならない手続き・制度の知識はたくさん…。煩雑で、抜け漏れが生じるケースも多いようです。 「訪問看護の指示書が2ヵ月切れていたにも関わらず、訪問していた。指示書発行依頼や管理は事務の方にお願いしているが、期限の把握が不十分だった」(40代) 「新規事業所で、本部から指定許可がおりていると言われてサービスを開始したが、実際は許可が下りておらず、結局10万円分ほどの訪問看護費用をいただけないことになってしまった」(50代) 「気管カニューレを使用している利用者さんだったので、特別管理加算がとれたのだが、チェック項目に入れておらず、加算されていなかった。管理者も現場の看護師に伝えきれておらず、現場の看護師もそうした意識が薄くなりがち」(50代) 「ファクスの送り間違えがあり、お叱りの電話を受けたことがある。以降、できるだけファクス機に番号を登録するようにしている」(50代) 「初回の訪問を終えていたが、すぐに入院されてしまい、契約書に書かれていたご家族は連絡がとれなかった。どこに入院されているのか、いつ戻ってこられるかもわからず、口座は残金不足。訪問費用を請求できない状態が続き、半年ほど経過したが、結局回収できなかった」(30代) 「訪問看護師になりたてのころのこと。振込依頼書の書き方をあまり理解していなかったので利用者さんの記入ミスに気付かず受領。後日書き直していただくことになってしまった」(30代) 「わかる!」という声が聞こえてきそうな体験談から、「そんなことがあったの…?」と驚く体験談まで、多種多様なエピソードが寄せられました。さまざまな事例を知ることで、重大な事故を防げるケースも多くあります。報告までには至らない内容でも、ぜひ積極的に訪問看護ステーション内で共有してみてください。ヒヤリハット・インシデントを防ぐヒントが見つかるかもしれません。 編集・執筆: NsPace編集部

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