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第1回 訪問看護ステーションの「働き方改革」/[その3]労働関係法令上の書類の整備と保存期間

連載:働きやすい訪問看護ステーションにするための労務管理ABC
労働基準法では、労働者を雇用する事業場に対し、作成・管理を義務づけている書類がいくつかあります。今回は、その中でも「法定三帳簿」と呼ばれる書類について確認します。この書類は、事業場の人事や労務管理の基本となります。義務を怠ると処罰の対象となりますので、しっかり押さえておきましょう。
●ここがポイント!
・労働に関する書類には、記載項目や保存期間が定められているものがある。
・労務管理ソフトや給与計算ソフトで自動作成できる書類もある。
・雇用関係助成金を申請する際に必要となる書類もあるためしっかり整備する!

管理者が押さえておきたい「法定三帳簿」とは

法定三帳簿とは「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つを指し、労働基準法第107条から第109条によって規定された書類です。職員を適切に管理するためにも、訪問看護ステーションでは、これらの帳簿を整備し、保存しなければなりません。帳簿ごとに定められた記載項目、保存期間について順に説明していきます。

労働者名簿

労働者名簿は、労働基準法第107条においてその作成が義務づけられています。労働者(日々雇い入れられる者を除く)の氏名や生年月日、履歴等、8つの項目の記入が必要です。また、記入事項に変更があった場合は、遅滞なく訂正しなければなりません。労働者名簿の保存期間は3年で、労働者の死亡、退職、または解雇の日を起算日とします。
労働者名簿の記載項目
①労働者氏名
②生年月日
③履歴(異動や昇進など)
④性別
⑤住所
⑥従事する業務の種類 ※従業員が30人未満の事業場の場合は不要
⑦雇入年月日
⑧退職や死亡年月日、死亡の理由や原因

賃金台帳

賃金台帳は、労働基準法第108条においてその作成が義務づけられています。労働日数や労働時間数など賃金計算の基礎となる事項や、賃金の額など、10の項目を記入します。賃金の支払いのたびに遅滞なく記入します。
労働者名簿と異なり、日々雇い入れられる労働者も作成の対象となります。
賃金台帳の保存期間は3年で、起算日は、労働者の最後の賃金について記入した日です。
賃金台帳の記載項目
①労働者氏名
②性別
③賃金の計算期間
④労働日数
⑤労働時間数
⑥時間外労働時間数
⑦深夜労働時間数
⑧休日労働時間数
⑨基本給や手当等の種類と額
⑩控除項目と額

出勤簿

出勤簿は、2017年に厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」において、労働基準法第109条に基づき、タイムカード等も含め労働時間の記録に関する書類として保存の義務が明記されました。第109条は、「記録の保存」について定められた条文です。
出勤簿の保存期間も、労働者名簿、賃金台帳と同じく3年です。労働者の最後の出勤日を起算日とします。記載項目は以下のとおりです。
出勤簿の記載項目
①労働者氏名
②出勤日
③始業・終業時刻
④休憩時間
⑤その他労働時間を正確に把握できるような情報

法定三帳簿の書式について

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿ともに、労働者1人に対して1枚作成します。各帳簿に決まった様式はありません。表計算ソフトなどで作成する場合は、記載項目が網羅できているかきちんと確認しましょう。
労務管理ソフトや給与計算ソフトなどに自動で帳簿を作成できる機能が付いている場合もありますので、訪問看護ステーションで使用しているソフトを確認してみるとよいでしょう。
なお、労働者名簿と賃金台帳は、厚生労働省のウェブサイトにテンプレートが公開されているので、ダウンロードして使用することができます。

労働者名簿の基本様式

▼厚生労働省: 「労働者名簿 様式第19号」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/pdf/b.pdf

賃金台帳の基本様式(常用労働者)

▼厚生労働省: 「賃金台帳 様式第20号」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/pdf/d.pdf

出勤簿の基本様式例

「法定三帳簿」以外に整備が必要な書類は?

法定三帳簿以外にも保存期間の定めがある労働関係の書類があります。例えば労働条件通知書や定期健康診断の結果、年次有給休暇管理簿などです。
雇用に関する助成金の申請等の際に、これらの書類の提出が求められることも少なくありません。以下に労働に関する主な書類とその保存期間・起算日をまとめましたので確認しておきましょう。
表 労働に関する主な書類
保存期間が書類によって異なるため、注意する。
(※)労働条件通知書は、厚生労働省のウェブサイトより基本書式のダウンロードが可能。
▼厚生労働省:「労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう」
https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/library/okinawa-roudoukyoku/04rouki/houteichoubo.pdf
▼厚生労働省: 「労働基準法関係主要様式 ダウンロードコーナー」
法定三帳簿をはじめ、事業場で必要となる各種書類の様式がダウンロードできます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/
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加藤明子 加藤看護師社労士事務所代表
看護師・特定社会保険労務士・医療労務コンサルタント
看護師として医療機関に在籍中に社会保険労務士の資格を取得。社労士法人での勤務や、日本看護協会での勤務を経て、現在は、加藤看護師社労士事務所を設立し、労務管理のサポートや執筆・研修を行っている。
▼加藤看護師社労士事務所
https://www.kato-nsr.com/
編集協力:株式会社照林社

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