特集

第2回 理念作成と事業計画/[その3]事業計画―夢を実現するストーリー

連載:働きやすい訪問看護ステーションにするための労務管理ABC

連載第2回目では[その1~4]にわたり訪問看護ステーションの運営に必要な理念と事業計画について解説していきます。
[その3]のテーマは“事業計画”です。事業計画には人に理解してもらい、納得してもらえるストーリー性が求められます。めざすべき方向性や将来像を明確にし、相手に伝わる、共感してもらえる事業計画に仕上げていくことが大切です。

●ここがポイント!
・事業計画とは事業所の存在意義と進むべき方向性を示すもの。
・理念達成のための中間目標や基本方針が明確になっていると、事業計画は立てやすくなる。
・事業計画を立てたあとはもう一度見直すことが大切である。

理念と基本方針だけでうまくいくの?

理念や基本方針は概念的、抽象的であるため、定めることによる成果が見えにくいかもしれません。事業者の中には「理念や基本方針を作成することでいくら儲かるの? どんな効果があるの?」とダイレクトに訊ねる方もいらっしゃいます。

理念と基本方針は、事業所と職員の一体感を醸成しブランド構築に寄与しますが、即効性のあるものではなく、時間をかけて育んでいくものです。しかし、事業者としてはいち早く収入が安定し、資金や職員確保の心配から解放されたいのが心情でしょう。そこで必要となるのが「事業計画」です。

事業計画とは

事業計画とは、事業所の存在意義と進むべき方向性を示すものです。いわば、理念を実現するためのストーリーを表現したものといえるでしょう。相手が理解でき、納得できるような話の流れをつくる必要があります。

ここで、私の体験をお話ししたいと思います。
コロナ禍の前、私は仕事に追われ、忙しくて休みが取れない状況が数年続いていました。

そんなある日、ひょんなことから社員旅行として4泊6日のハワイ(オワフ島)旅行に行くことが決まりました。会社の行事とはいえ、初日のウェルカムパーティー以外は団体行動の必要がなく、2日目以降は完全自由行動です。

今回の社員旅行では日中は1人で過ごし、夜は気心の知れた仲間と食事をしたいと考え、以下のような計画を立てました。

●初日
チェックイン後ワイキキでおいしいスイーツを食べる。その後はワイキキやアラモアナでショッピングをして、夜はウェルカムパーティー。
●2~3日目
日中は、スキューバダイビングのライセンスを取得できる講習を受けて、夜はステーキ、ロコモコがおいしい店に行く。
●4日目
日帰りでハワイ島に移動し、火山観光をする。

そして、さっそくお店のリサーチです。ワイキキで楽しむスイーツは、世界一おいしい朝食が食べられると評判のレストランのパンケーキに決めました。ステーキはホテルからも近く、港の夜景が臨めるレストランで、ロコモコはハワイフード・ロコモコ部門で第1位に選ばれたことのあるレストランに決定です! 夕食を共にしたい同僚に声をかけ、ダイビング、ハワイ島ツアーの予約もして、準備万全の計画を立てることができました。

果たして、旅行では素晴らしい体験や思い出がたくさんできました。想定外のトラブルもありましたが、それも含めてよい旅行になりました。

さて、ここまでに私がお話しした体験を、理念や基本方針、事業計画に置き換えてみると、このようになります。

●私の夢(=理念)
 1人でのびのびと過ごしたい
●旅行中の過ごし方(=基本方針)
 日中は1人で思い出になることをする 夜は気心の知れた仲間と食事をする
●旅程(=事業計画)
 初日はスイーツとショッピング、ウェルカムパーティー、2~3日目の日中はダイビングライセンス講習と、夜は仲間と夕食、4日目は火山ツアー

「1人でのびのびと過ごす」ために、それを実現する方針とその方針に沿った計画を立て、実行することで満足度の高い旅行になったというわけです。

事業計画には目標が必要

「将来ありたい姿」を理念として描き、それを達成するための道程に中間的・段階的な目標(中間目標)を設定します。基本方針は、中間目標を達成するための考え方や方向性を示したものです。理念達成のための中間目標や基本方針が明確になっていると、事業計画は立てやすくなります。

事業計画が具体的になると、ワクワクしてきます。なぜならその段階になれば、目標の実現が確定するからです。そのワクワクは人に伝わりやすく、共感してくれる人も表れ、協力してくれる人もでてきます。計画はより具体的になればなるほど相手に伝わるものです。「いつまでに」、「どこで」、「何を」、「誰と」、「どのように」、「どのくらいの予算が必要か」の視点で計画を立てるとよいでしょう。

最後に、計画を立てたら「なぜそれをするのか?」という視点で、もう一度見直してみることが大切です。本当に必要な計画か、ワクワクする計画かなど、自問自答してみましょう。もし腑に落ちない部分があれば、もう一度、理念や基本方針に立ち戻って考え直します。そこにきっとモヤモヤの答えがあるはずです。

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齋藤 暁
株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント

医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。

▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部
https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/

編集協力:株式会社照林社  

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