特集

第3回 計画的な人材採用と育成/[その4]「目標管理」で“強いステーション”づくりを!

連載:働きやすい訪問看護ステーションにするための労務管理ABC

連載第3回目では[その1]~[その4]にわたり訪問看護ステーションにおける人材採用と育成について解説していきます。
今回のテーマは“目標管理”です。ここでいう目標は事業所の理念や基本方針につながるものであり、利用者へのケアをとおして、その実現に貢献できる目標である必要があります。目標管理の重要性を職場にしっかりと周知し、理解を浸透させましょう。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 罫線画像-1100x9.jpg

●ここがポイント!
・目標管理とは、職員一人ひとりが目標を設定し、自らを管理することである。
・目標設定では、個人と組織のベクトルを合わせることが大切である。
・目標管理を形骸化させずより高い成果を得るために目標達成を支援するコーチの存在が必要不可欠である。

目標管理とは

目標管理とは、経営学者ピーター・F・ドラッカーによって提唱されたマネジメント手法です。ドラッカーの著書『現代の経営』の中で目標管理は次のように記載されています。

「今日必要とされているものは、一人ひとりの人の強みと責任を最大限に発揮させ、彼らのビジョンと行動に共通の方向性を与え、チームワークを発揮させるためのマネジメントの原理、すなわち一人ひとりの目標と全体の利益を調和させるためのマネジメントの原理である。これらのことを可能にする唯一のものが、自己管理による目標管理である。自己管理による目標管理だけが、全体の利益を一人ひとりの目標にすることができる。」
(P.F.ドラッカー著,上田惇生訳 『現代の経営【上】』ダイヤモンド社,2015,p.187.より引用)

目標管理とは、職員一人ひとりが目標を設定し、自らを管理すること、つまり、目標による管理のことです。

目標管理は「Management by Objectives and Self-Control」と表記します。目標管理を構成する3つのキーワード、「マネジメント」、「オブジェクティブズ」、「セルフ・コントロール」について順に説明していきます。

マネジメント(management)とは

直訳すると「管理」、「経営」ですが、managementの動詞形manageの原義には「馬を手で扱う」という意味があり、そこから転じて「(扱いにくい人や事柄などを)うまく取り扱う」、また「なんとかやり遂げる」という意味があります。ここではマネジメントを英語の訳に即して「工夫や苦労を重ねてやり遂げること」と考えます。

オブシェクティブズ(objectives)とは

複数のストレッチ目標を意味します。ストレッチ目標とは、簡単に達成できる目標ではなく、背伸びをして手を伸ばさないと達成できないような目標のことをいいます。

セルフ・コントロール(self-control)とは

自分自身で目的を定め、計画を立て、意欲的、かつ主体的な行動をとれることをいいます。

目標管理のねらいと効果

目標管理のねらいは、主体的に考えて活動する人材を育成することにあります。

職員自らがストレッチ目標を設定し、目標達成に向けて創意工夫して取り組むことで、自分で考え行動し、壁を乗り切る力が身につきます。何か問題が生じたときにも、常に当事者意識をもって対処できるようになります。

また目標が達成されることで、自信が育まれ、レジリエンス(さまざまな困難な環境や状況に対しても適応し生き延びる能力)が鍛えられます。

目標設定のポイント

目標設定では、個人と組織のベクトルを合わせることが大切です。職員一人ひとりの目標が事業所のめざす最終目標(理念や基本方針)につながることで、事業所全体の利益が調和された状態になり、組織全体のパフォーマンスが向上します。

そして、目標は具体的に設定します。ここでは「グタイテキ」の頭文字に沿って、設定のポイントをご紹介します。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 罫線画像-1100x9.jpg

グ:具体的
言った人のイメージと受け取った人のイメージが一致する。行動レベルの言葉にする。
タ:達成可能
ストレッチ目標を設定する。
イ:意欲的
達成することで自分自身、または周囲にどんな価値やメリット、意味があるのか考える。
テ:定量化・数値化
例えば、よく使われる「~に貢献する」「~をバックアップする」「~を推進する」「スムーズに~する」「迅速に~する」は具体的ではないため目標設定では不適切。
キ:期限を定める
「いつまでに」達成するのかを明確にする。

目標管理の形骸化を防ぐコツ

目標管理を1人で行い続けるのは大変なことです。忙しさのなかで怠けてしまったり、中身が追いつかず形式的なものに陥ってしまったりしがちです。この形骸化を防ぐコツは成果を出して、成功体験を積み上げていくことです。

そして、成果を出すためには目標達成を支援するコーチの存在が不可欠です。コーチがいることで、達成に至るまでの時期が短縮され、成果のレベルが格段に上がります。コーチ役は上司が担うとよいでしょう。信頼関係が深まりチームワークが強化されます。

コーチに期待される役割には以下のようなものがあります。
・新しい気づきをもたらす
・視点を増やす
・考え方や行動の選択肢を増やす
・目標達成に必要な行動を促す
基本的にコーチは一方的に指導したり、アドバイスを与えたりすることはしません。対話をとおして問いかけ、相手からさまざまな考え方や行動の選択肢を引き出します。この技法を「コーチング」といいます。

コーチ自身も目標管理を支援する能力が必要となりますので、部下の可能性を最大限引き出せるようなコーチングスキルを身につけましょう。

**

齋藤 暁
株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長
中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント

医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。

▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部
https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/

編集協力:株式会社照林社

【引用文献】
P.F.ドラッカー著,上田惇生訳(2015)『現代の経営【上】』ダイヤモンド社

× 会員登録する(無料) ログインはこちら