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第8回 労災保険・健康診断・メンタルヘルス対策/[その3]パートも健康診断の対象者? スタッフの健康管理、正しく知ってしっかり実践

事業者は、労働安全衛生法に基づき、労働者に健康診断を実施する義務があります。訪問看護ステーションには常勤だけでなく、パートやアルバイドなど、さまざまな勤務形態のスタッフがいます。健康診断の実施対象となる範囲や健康診断の種類など、今回は管理者にとって必須の知識である健康診断の概要について解説していきます。


私の訪問看護ステーションには、パートタイムで働く看護師や理学療法士が在籍しています。健康診断では「常時使用する労働者」が対象になっていますが、パートのスタッフも健康診断の対象になりますか。

パートで働くスタッフに対しても、一定の要件を満たす場合は、健康診断を実施する義務があります。

健康診断の種類にはどのようなものがある?

訪問看護ステーションは、事業者として労働安全衛生法(以下「安衛法」という)66条に基づき、スタッフに対して医師による健康診断を実施しなければなりません。では、実施が義務づけられている健康診断にはどういったものがあるのでしょうか。表1に、事業者が実施しなければならない一般健康診断の種類をまとめましたので、ご覧ください。

表1 一般健康診断の種類

※特定業務:深夜業を含む業務。労働安全衛生規則(以下「安衛則」という)13条1項2号で14の業務が定められている

ここでは一般健康診断のうち、「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」について説明していきます。

パートタイム労働者も健康診断の対象者に含まれる?

雇入時の健康診断と定期健康診断の対象者は「常時使用する労働者」です。常時使用する労働者とは、次の2つの要件を満たす人をいいます。

(1)期間の定めのない労働契約により使用される者であること。なお、 期間の定めのある労働契約により使用される者の場合は、契約期間が1年以上の者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者および1年以上引き続き使用されている者。
(なお、特定業務従事者健診〈安衛法45条の健康診断〉の対象となる者の雇入時健康診断については、6か月以上使用されることが予定され、または更新により6か月以上使用されている者)
 
(2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。

厚生労働省「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について(抜粋)」(平成19年10月1日付け基発第1001016号)より

つまり、1年以上雇用している、またはそれが見込まれる労働者で、1週間の所定労働時間が常勤スタッフの4分の3以上であるパートタイム労働者(以下、パート)に対しては、健康診断を実施しなければなりません。

では、1週間の所定労働時間が常勤スタッフの4分の3に満たないパートではどうなるのでしょうか。この場合、法的な実施規定はありませんが(1)の要件に該当していれば、1週間の所定労働時間が常勤スタッフのおおむね2分の1以上あれば健康診断を実施することが望ましいとされています。

健康診断の費用はステーションで負担しますか?

労働安全衛生法の義務に基づいて実施される健康診断の費用は、すべて事業者が負担します。

また、管理者の方から「健康診断を受けている間の賃金はどうなるのか?」との疑問もよく聞かれます。厚生労働省の基準によると、一般健康診断の場合は、受診に要した時間の賃金は労使協議により定めるべきものとしたうえで、スタッフの円滑な受診を考えれば、事業者が支払うことが望ましいとしています。参考にしてください。

健康診断実施後の注意点は?

健康診断の実施後も、ステーションには事業者として行わなければならないことがあります。

まず、健康診断の結果は、スタッフ自ら健康管理できるよう、スタッフに通知しなければいけません(安衛法66条の6)。そして、健康診断個人票を作成し5年間保存することが義務づけられています(安衛則51条)。なお、従業員が50人を超える事業所では、定期健康診断を行ったら所轄の労働基準監督署長に結果報告書を提出する義務があります(安衛則52条)。

また、健康診断で異常の所見ありと診断されたスタッフがいれば、健康を保持するための必要な措置について医師に意見をきく必要があります(安衛法66条の4)。そして、医師の意見により必要ありと認めるときは、就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮など、適切な措置を講じなければなりません(安衛法66条の5)。さらに、特に保健指導が必要なスタッフがいれば、医師や保健師による保健指導の実施に努めなければなりません(安衛法66条の7)。

健康診断は、労働者に受診義務があります。もし受診を拒否するスタッフがいれば、そのままにしておくのではなく、義務であることを伝えて受診するよう促してください。

よりよい看護サービスを提供するためにも、スタッフの健康管理はとても大切です。管理者としてスタッフの健康状態の把握に努め、その結果に基づき適切な対応を実践できるようにしましょう。


・1年以上雇用している、またはそれが見込まれ、1週間の所定労働時間が常勤スタッフの4分の3以上であるパートタイム労働者は、健康診断を実施しなければなりません。
・健康診断実施後も、診断の結果に基づきスタッフの健康管理を適切に行うことが必要です。

【参考】
〇厚生労働省リーフレット「健康診断を実施しましょう」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf
〇厚生労働省リーフレット「パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう!!」
https://www.lcgjapan.com/pdf/lb09094.pdf?22
※健康診断の種類や実施義務などについて詳しく紹介されています。ぜひご参照ください。

齋藤 暁
株式会社ムトウ 執行役員 コンサルティング統括部 部長・CPS事業部 部長

 
●プロフィール
中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント
医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。
▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部
https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/
 
記事編集:株式会社照林社

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