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自律神経の不調の原因とセルフケアについて

自律神経の不調

自律神経は人体の恒常性(ホメオスタシス)を維持するために重要な役割を担っていますが、この自律神経に不調をきたすと、心身ともにさまざまな影響が出てきます。この記事では自律神経に不調をきたしうる要因を復習しつつ、セルフケアの方法や受診の目安についてもご紹介します。

自律神経に不調をきたす原因は?

自律神経は交感神経と副交感神経の2つの神経からなります。交感神経は血圧や心拍数、体温を上げ、体を興奮状態にするよう作用します。一方で副交感神経には血圧や心拍数、体温を下げ、体をリラックスさせようとする働きがあります。

自律神経は体の状態のバランスを維持するため、ひいては生命を維持するため、常に相互に作用しあっている神経です。自律神経のバランスが崩れると、「だるい、眠れない、疲れがとれない」「頭痛、動悸、めまい、のぼせ、冷え、下痢、便秘」「情緒不安定、イライラ、不安感、抑うつ」など、体にさまざまな不調をきたします。

自律神経のバランスが乱れる4つの原因を見ていきましょう。ご自身にあてはまるものがないかどうか、ぜひチェックしてみてくださいね。

原因1:女性ホルモンの分泌量の変化

月経前症候群(PMS)や更年期での自律神経の不調には、女性ホルモンが関係していると考えられます。PMSの場合は卵巣から分泌されるエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が変動することで、更年期の場合はエストロゲンの分泌量が減少していくことで、さまざまな体調不良を引き起こします。生理前や更年期にイライラしてしまい円滑な人間関係に支障が出たり、体調が悪く普段と同じような生活が送れなくなったりすることも。そういった状態にお悩み方は、一度婦人科で相談してみることをおすすめします。

原因2:生活環境の変化やストレス

仕事・人間関係のストレス、過労、生活環境の急激な変化などは、自律神経に不調をきたす原因となりえます。これらは自分の力だけでコントロールするのは難しい側面もありますが、可能な範囲でストレスの原因から距離を置くことが大切です。

原因3:生活習慣

睡眠不足や偏った食事、不規則な生活、喫煙、過度な運動、カフェインやアルコールの摂りすぎも、自律神経に不調をきたす原因となります。夜勤がある看護師の方の場合、夜勤による睡眠サイクルの乱れも不調の原因となりえます。生活習慣を見直す、あるいは勤務を調整することで、症状が改善することもあります。

原因4:基礎疾患の存在

持病として糖尿病や高血圧、甲状腺疾患、パーキンソン病などの神経疾患、うつ病がある方は、自律神経の不調が出やすいと考えられます。すでに診断を受けている方は、セルフケアにもチャレンジしつつ医師の指導のもとで治療をしっかり受けていただくことが大切です。

また、持病がない方も職場や自治体などでの健康診断や人間ドックを定期的に受けて自分の健康状態を把握するようにしましょう。「自律神経の不調と思っていたら、健診でほかに原因が見つかった」というケースも想定されます。疾患を放置すると自律神経の不調だけでなくさまざまな合併症を引き起こす恐れがありますので、日々の勤務に追われて忙しいとは思いますが、自分の健康にも気を配る時間を作りましょう。

自律神経のバランスを整えるセルフケア

原因を確認したところで、改めて自律神経のバランスを整えるためのセルフケアの方法を6つご紹介します。ご自身の生活習慣と見比べてみてください。

【1】規則正しい生活

バランスのとれた食生活、7~8時間程度の適切な睡眠時間の確保、適度な有酸素運動の習慣を身に着けるなど、規則正しい生活をこころがけましょう。

【2】禁煙

喫煙者の方は、禁煙を検討してみましょう。タバコに含まれるニコチンは必要以上に交感神経を刺激し、自律神経のバランスに悪影響を及ぼします。また、タバコはさまざまながんのリスクを上昇させるほか、脳、心臓、呼吸器にも悪影響を及ぼします。

【3】カフェイン・お酒の摂取量減

カフェイン入りの飲み物やお酒が好きな方は、摂取量を少し減らしてみることをおすすめします。カフェインやアルコールは交感神経を刺激して、休むべきときでも体が興奮状態になってしまいがちです。カフェイン摂取量の目安としては、ホットコーヒーであればマグカップで1日3杯程度です。お酒は純アルコール1日20g以下の摂取をこころがけましょう。純アルコール20gとは、ビール中瓶1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、チューハイ1缶(350ml、度数7%)、ワインはグラス2杯(200ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)に含まれる量です。

【4】リラックス

自分がリラックスできる方法を見つけ、普段の生活に取り入れる習慣をつけましょう。ストレッチやマッサージ、軽い運動、アロマテラピー、ぬるめのお風呂でゆっくり過ごす、不安やストレスに効くツボを押すなどがおすすめです。

【5】太陽の光を浴びる

眠れない、途中で覚醒してしまうなど、睡眠に関する不調がある方は、朝起きたら太陽の光を浴びる習慣をつけましょう。また、日中はなるべく昼寝をしないことも夜よく眠るためのコツです。

【6】定期的な健康診断

職場や人間ドックなどで、定期的に健康診断を受けましょう。自分の体の状態を知ることが、その不調の解決の一歩になるかもしれません。

こんな時は病院へ

日常生活に支障が出るほどの不調があるときや、症状が少しずつ悪化するときは、忙しくても病院を受診しましょう。

女性の方で生理前に自律神経の不調が出る方は、月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)の可能性があります。また、40~50代の女性の方では更年期障害の可能性があります。いずれも婦人科で治療の方針について選択肢を提示できますので、お気軽にご相談ください。PMSの場合は漢方薬や低用量ピルをはじめとしたホルモン治療など、更年期に関連する症状の場合は漢方薬やホルモン補充療法を、個人の症状に応じて選択し治療に臨むことができます。

自律神経の不調との付き合い方を知ろう

今回は、自律神経の不調と原因、自分でできるケアや病院受診の目安についてご紹介しました。自律神経の不調は健康な方でも一時的に起こることがあり、自律神経の不調すべてが病院で治療しなければならないものではありません。しかし、自律神経の不調に関連する症状を知り、その原因についての考察やセルフケアをできるようになれば、今よりもう少し自分自身と上手に付き合うことができるようになるかもしれません。あなたが元気になることで、患者さんのケアもより一層充実させることができるでしょう。お悩み解決の糸口が見つかれば幸いです。

執筆:島袋 朋乃(しまぶくろ ともの)
産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科専門医として総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に幅広く携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会認定専門医、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。
 
編集:合同会社ヘルメース

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