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受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年6月5日
2024年6月5日

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<後編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、新田 光里さん(@(あっと)訪問看護ステーション/東京都)の審査員特別賞エピソード「100年ぶりに入浴したU子さん」をもとにした漫画の後編をお届けします。 「100年ぶりに入浴したU子さん」前回までのあらすじ認知症があり、人嫌いなところもある利用者のU子さん。長らくお風呂に入っていない様子で、清拭や更衣もできない状況…。悩んだ新田さんが所長に相談すると、「まずはあなたがU子さんを好きにならなくちゃ」と言われました。新田さんは、もっとU子さんの気持ちを受けとめようと考えて…。 >>前編はこちら受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 100年ぶりに入浴したU子さん<後編> 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)エピソード投稿:新田 光里(にった あかり)@(あっと)訪問看護ステーション(東京都)審査員特別賞をいただき、U子さんと関係者の皆様に心から感謝しております。訪問看護師になって14年経ちますが、受賞によりこれまで携わってきたことが報われたように感じています。利用者さんにじっくりと関われることも訪問看護の醍醐味だと思いますが、中には「これは看護なのだろうか?」と迷うこともあります。「100年ぶりに入浴したU子さん」はそうした訪問看護の「リアルで泥臭い」部分をエピソードに記しました。審査員の方に共感していただけて、とても嬉しく思います。自分の看護に不安を感じることもありますが、利用者さんやご家族にとってひとつでもプラスになれるような心構えで関わるようにしています。残念ながらU子さんは2021年に99歳で亡くなりました。「私のおかげで受賞したのよ!」と天国で笑ってくださっていると思います。U子さんは私に訪問看護の奥深さを教えてくださいました。今後も利用者さんお一人お一人との出会いを大切に、感謝し、学んだことを次に活かしながら訪問看護師を続けていきたいと思います。多くの方に訪問看護の魅力が伝わりますように! >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年6月4日
2024年6月4日

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、新田 光里さん(@(あっと)訪問看護ステーション/東京都)の審査員特別賞エピソード「100年ぶりに入浴したU子さん」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 100年ぶりに入浴したU子さん<前編> >>後編はこちら受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<後編>」【つたえたい訪問看護の話】 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)エピソード投稿:新田 光里(にった あかり)@(あっと)訪問看護ステーション(東京都) [no_toc]

HOT(在宅酸素療法)Q&A/メンテナンス、酸素ボンベ持ち時間、チューブ整理
HOT(在宅酸素療法)Q&A/メンテナンス、酸素ボンベ持ち時間、チューブ整理
特集 会員限定
2024年6月4日
2024年6月4日

HOT(在宅酸素療法)Q&A/メンテナンス、酸素ボンベ持ち時間、チューブ整理

今回はHOTに関するよくある相談やアドバイスを集め、Q&A形式でお答えします。日ごろ感じている疑問や不安を解決します。 Q1 酸素濃縮器のメンテナンスはどのようにすればよいですか? A フィルターの掃除と加湿器の洗浄を行います 酸素濃縮器のメンテナンスとして、主にフィルター掃除と加湿器洗浄があります。 現在はフィルターが内蔵され、手入れが必要のないタイプもありますが、フィルターが外付けの場合は毎日布や掃除機などで埃を取り除くようにします。週1回は中性洗剤で洗浄後水洗いし、乾燥させておきます。 加湿器の洗浄は、水道水を使用している場合は毎日、蒸留水を使用している場合は週1回の洗浄が必要です。 半年に1回程度、酸素業者による機器内部の点検がありますが、内部異常のアラームが鳴った場合はすぐに業者に点検を依頼してください。 Q2 酸素ボンベの持ち時間はどのように把握すればよいですか? A ボンベサイズ、吸入量、呼吸同調装置の有無を確認の上、使用可能時間の早見表を参考に持ち時間を把握します 酸素ボンベの持ち時間に影響するのは、ボンベの内容量(L)、内圧(MPa)、呼吸同調装置の種類や使用の有無、患者さんの呼吸回数です1)。 呼吸同調装置を使用している場合と使用していない場合では、使用時間が4倍程度の違いがあるため、必ず同調か連続使用かを確認します。また、患者さんの呼吸回数が多い場合は、酸素機器メーカーが作成している酸素ボンベ使用可能時間の早見表より短くなる可能性があるため、注意します。外出時には必ずボンベサイズ、吸入量、呼吸同調装置の有無を確認の上、各メーカーが作成している早見表を参考に持ち時間を把握しておくことが重要です。 Q3 HOT使用中の患者さんに対して注意することは何ですか? A 処方された酸素流量を守れているか適宜確認することはもちろん、訪問時には酸素チューブのねじれや破損の有無、鼻カニュラによる皮膚障害の有無も確認します。また、日頃から停電時の備えについて話し合い、酸素ボンベの使用上の注意点も説明しておきます 処方酸素流量を守れているか自宅での酸素使用に慣れてくると、呼吸困難の状態やわずらわしさなどによって患者さんが処方酸素流量を守れないことがあります。Ⅱ型呼吸不全の場合、安静時に長時間高流量を吸入し続けると高二酸化炭素血症になる可能性があります。患者さんが処方された酸素流量が守れているか、適宜確認します。酸素チューブに問題はないか酸素チューブは、コネクタとチューブを接続し、最大20mまで延長します。そのため、自宅訪問時には、コネクタとチューブのつなぎ目が抜けていないか、チューブ自体が折れ曲がっていないか、ねじれていないか、破損がないかの確認を行います。鼻カニュラに問題はないか鼻カニュラは長期間使用すると、チューブが硬くなり、皮膚損傷の原因となります。チューブが汚染したり、硬くなっていたりする場合には交換をしましょう。停電時の対応は決めているか酸素濃縮器は電気を使用するため、停電すると酸素供給が停止します。そのため、停電時にパニックにならないよう、事前に停電時の対応について話し合っておくことが大切です。具体的には、濃縮器の側にボンベを置いておく、慌てずにボンベへ切り替える、高流量の酸素を使用している患者さんの場合は停電時用の大きめのボンベを設置しておいてもらうといったことです。火気・炎天下厳禁であることを把握しているか酸素ボンベは、火気厳禁はもちろんですが、高温炎天下の車内に放置しないようにしましょう。内部の酸素が膨張し、爆発事故につながる恐れがあります。外出を予定している患者さんには、事前に説明しておきます。 Q4 患者さんが快適に日常生活を送れるよう工夫できることは何ですか? A 酸素チューブの取り扱いに注意し、転倒予防や動作のしやすさに配慮した管理ができるとよいでしょう チューブ整理で転倒防止自宅では、生活範囲や動線に合わせてチューブを延長します。常にチューブが足元にあるため、歩くたびに足に絡まり、高齢者に限らず、転倒するリスクが高まります。廊下の壁に引っ掛ける、S字フックを使用する、洗濯かごを利用するなどしてチューブを整理し、転倒を予防することが大切です。図1、図2に、患者さんが実際に行っている工夫を紹介します。また 、酸素濃縮器や液体酸素の親機の設置場所を確認し、動線に合わせ、チューブが必要以上の長さにならないように配慮します。運転時は酸素ボンベを後ろに運転時には、運転席の後ろ側に酸素ボンベを起き、真後ろからチューブを出すようにします。そうすることでボンベの出し入れもスムーズに行え、チューブも引っ張られずに運転できます。障害物を置かない酸素濃縮器のリモコンが赤外線タイプの場合、間に障害物があると使用できないため、注意が必要です。 図1 手すりを利用したチューブが濡れない工夫 図2 洗濯かごを使用したチューブ整理 Q5 HOTを使用しながら旅行するときに、必要な手続きや注意することはありますか? A 移動手段を確認し、公共交通機関を利用する場合は持ち込める酸素ボンベの本数に注意します HOT導入後にも旅行を楽しむ患者さんは多くいます。旅行には、事前の準備が必要です。主治医の許可をとり、酸素吸入量に加え、移動時間や距離、移動手段を確認し、どのサイズのボンベが何本必要かをメーカー作成の換算表を参考に患者さんと相談しておきます。その後、各酸素業者指定の旅行届を事前に酸素業者に提出します。 移動手段が公共交通機関の場合、酸素ボンベを持ち込める本数などが決まっているほか、事前の届け出が必要な場合が多いです。詳細は使用する公共交通機関へ問い合わせし、事前に確認します。ただし、液体酸素は飛行機へ持ち込めませんので、飛行機利用の際には酸素ボンベに変更しなければなりません。 Q6 患者さんが酸素を指示通り使用してくれません。どうしたらよいですか? A HOT導入後も、さまざまな理由から処方通りに使用できない場合があります。だからといってアドヒアランス不良と安易にレッテルを貼らず、患者さんの話をよく聞き、アドヒアランスを阻害している要因をアセスメントした上でかかわることが大切です 信頼関係の構築とパートナーシップの形成 患者さんはHOTを導入することで、多くの場合、これまでの生活の再編を余儀なくされます。また、呼吸困難による活動範囲の制限やそれに伴い社会的役割を果たせなくなることでの自尊心の低下、自己コントロール感の喪失などを体験します。医療者は、HOT導入によってさまざまな病いの体験をする患者さんの心理を理解した上で、アドヒアランス支援を行っていく必要があります。支援をする上で、最も重要なことの1つは信頼関係を築くことです。 患者さんの病気に対する思い、HOT導入への思い、これまで大切にしてきたことなど、ナラティブ・アプローチで患者さんの語りを促します。語りの中から患者さんの価値観や希望を知り、理解していきましょう。その過程で患者さんは価値観を承認されたと感じ、相手を信頼できるようになります。 また、病気によって変化した生活の中でも、患者さんにとって「欠かせない」と思うことを一緒に探してくれる人がいることで、限られた選択肢の中で生活を再構築でき、成長につながります2)。そのため、信頼関係の構築とともにパートナーシップの形成も非常に重要です。 アドヒアランスに影響する要因3) アドヒアランスに影響する要因として、患者さんに関連する要因、治療に関連する要因、社会/環境に関する要因(表1)があるといわれています。各要因の具体例は次に示すとおりです。  患者さんに関する要因患者さんの健康に対する考え方、HOT管理をするにあたっての認知能力、心理的状態、病気やHOTに対する認識など治療に関連する要因HOTを実施する期間や酸素吸入に伴う身体的な不快感、鼻カニュラ装着による外見の変化に伴う周囲の反応、HOTに伴う費用、HOT導入に伴う呼吸困難の軽減の程度など社会/環境に関連する要因医療者との関係性、フォローアップ体制、医療機関へのアクセスの利便性、HOT患者さんを支えるサポート体制が整っているかなど HOTを処方通りに使用できない患者さんに対し、ただ単に使用を促すのではなく、アドヒアランスの低下の要因をアセスメントし、その要因に対してアプローチしていくことが重要です。 表1 アドヒアランスに影響する要因 文献3)を参考に作成 【参考文献】1)塚田さやか.「HOT患者の在宅療養がわかる(導入/外来/訪問)HOTで起こりやすいトラブル」,石原英樹,竹川幸恵編著,『病棟・外来・在宅医療チームのための在宅酸素療法まるごとガイド』,メディカ出版,東京,2021: 104-107.2)高橋綾.「『患者の価値観に寄り添う』と私がモヤモヤする理由」.緩和ケア 2018;28(2):84-89.3)Bourbeau J,Bartlett SJ.Patient adherence in COPD.Thorax 2008;63(9):831-838.   執筆:平田 聡子地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター慢性疾患看護専門看護師 監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長 編集:株式会社照林社

RSウイルス感染症の症状・原因・治療法
RSウイルス感染症の症状・原因・治療法
特集
2024年6月4日
2024年6月4日

RSウイルス感染症の症状・原因・治療法は?子どもも大人も注意

RSウイルス感染症は子どもを中心にしばしば流行する感染症ですが、大人もかかる可能性があります。この記事では、RSウイルス感染症への対処方法や保育園・幼稚園への登園可否、大人がかかるとどうなるかなどについて解説します。高齢者や心疾患・肺疾患のある訪問看護の利用者さんや、ご自身・ご家族の健康管理のためにも確認しておきましょう。 RSウイルス感染症とは RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染によって引き起こされる呼吸器感染症です。生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼすべての子どもが罹患するとされています。症状や原因、感染経路、重症化リスクなどについて詳しく見ていきましょう。 症状 RSウイルスに感染してから2〜8日後に発熱や鼻水などの症状が現れます。初めて感染した乳幼児の約3割と、COPDや喘息などの慢性呼吸器疾患や心疾患のある高齢者の場合は、咳が悪化して喘鳴が生じ、呼吸困難になることもあります。細気管支炎、肺炎へと進む恐れもあるため、経過を慎重に見ることが重要です。 原因 RSウイルス感染症の原因は、その名のとおりRSウイルスの感染です。RSウイルスは世界中に存在するウイルスで、都市部において流行を繰り返すことがあります。流行は2〜5ヵ月ほど続き、日本では主に11~1月に流行します。 感染経路 RSウイルス感染症は、飛沫感染・接触感染します。子どもがいる家庭では、ドアノブや手すり、おもちゃなどを介して感染する可能性があります。なお、空気感染するとの報告はありません。 重症化リスク 特に生後数週間〜数ヵ月の間にRSウイルス感染症にかかると細気管支炎や肺炎に進展しやすいため、より入念な感染予防対策が必要です。その他も含め、重症化リスクが高まる要因は以下のとおりです。 生後6ヵ月未満の新生児および乳児早産、低出生体重の新生児および乳児先天性心疾患慢性肺疾患ダウン症免疫不全症 高齢者(特に慢性呼吸器疾患や心疾患等の基礎疾患を持つ場合)など 従来、RSウイルス感染症に予防接種はなし 2023年9月、国内で初めてRSウイルス感染症ワクチン(60歳以上対象)の製造販売が承認されましたが、従来はRSウイルス感染症にはワクチンがなく、予防接種は行われてきませんでした。ただし、モノクローナル抗体製剤であるパリビズマブをRSウイルス感染症の流行初期に投与を開始し、流行期においても1ヵ月ごとに筋肉注射することで、重症化リスクを抑制できます。対象となるのは、以下に該当する方です。 妊娠28週以下で生まれた生後12ヵ月以内の新生児および乳児妊娠29~35週で生まれた生後6ヵ月以内の新生児および乳児過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた2歳以下の子ども血行動態に異常のある先天性心疾患を持つ2歳以下の子ども免疫不全がある2歳以下の子どもダウン症候群がある2歳以下の子ども RSウイルスにかかった際の対処法 RSウイルス感染症に罹患した場合の治療法、自宅療養などについて詳しく見ていきましょう。 対症療法を行う RSウイルス感染症には特効薬が存在しません。基本的には対症療法ですが、呼吸症状が重度の場合は酸素投与や痰の吸引、呼吸管理が必要になる場合があります。 気管支拡張剤とステロイドの効果については、一定の見解が得られておらず、使用にあたっては慎重な判断が求められます。 自宅で療養する RSウイルス感染症では、発熱による発汗や不感蒸泄の増加、食欲低下などにより体内の水分が失われやすくなります。体内の水分が不足すると、痰の粘稠度が上がるために痰の喀出が困難となり、息苦しさや呼吸困難感が増す可能性があります。特に乳幼児や高齢者は脱水傾向になりやすいため、療養期間中はこまめな水分補給を心がけるようにしましょう。 また、喘息をはじめとした呼吸器疾患がある場合は、RSウイルス感染症に罹患すると症状が悪化したり、肺炎を合併したりする可能性があります。RSウイルス感染症の疑いがある場合は、軽い症状であっても早めに医療機関を受診しましょう。 RSウイルスにかかった際の登園は? RSウイルス感染症にかかった際の保育園・幼稚園において、出席停止に関する取り決めはありません。適切な休養期間を確保しつつ、感染拡大を防ぐための対策を講じることが大切です。 感染拡大防止策と休養期間 休養期間については、かかりつけ医に相談することが大切です。症状がある間は感染を広げる恐れがあるため、保育園・幼稚園は休んだほうがよいでしょう。 厚生労働省の保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)では、「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」1)が登園の目安としています。また、感染拡大を防ぐために、咳が出ている子どもにはマスクの着用を促すほか、咳エチケットや手洗いの勧奨、流行期における乳児との接触制限などが重要とされています。 RSウイルス感染症の再発について RSウイルス感染症は再感染のリスクがあります。成人では再感染が少ない傾向がありますが、子どもの場合は症状が落ち着いてから2〜3週間で再感染する場合もあるといわれています。マスクの着用や手洗い、子どもが使用するおもちゃや触れた場所の消毒などを徹底しましょう。 * * * RSウイルス感染症は、風邪のような症状が現れ、比較的軽度で済むことが多い感染症です。しかし、乳幼児の約3割や高齢者では重症化する可能性があるため、状態に応じて早めに医療機関を受診しましょう。今回、解説した内容を自身やご家族の体調管理、利用者さんのアセスメントにぜひ役立ててください。 編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。 【引用】1)厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」,p.61.(2021(令和 3)年 8 月一部改訂)https://www.mhlw.go.jp/content/001005138.pdf2024/5/29閲覧 【参考】〇厚生労働省「RSウイルス感染症Q&A(令和5年7月14日一部改訂)」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html2024/5/29閲覧

受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年5月29日
2024年5月29日

受賞作品漫画「幸せとは<後編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、川上 加奈子さん(よつば訪問看護リハビリステーション/神奈川県)の審査員特別賞エピソード「幸せとは」をもとにした漫画の後編をお届けします。 「幸せとは」前回までのあらすじ嚥下機能の低下に伴い、肺炎を繰り返していた利用者のともみさん。長男の圭介さんと次男の裕介さんは、医師から胃ろうの造設と施設の検討を提案されましたが、ともみさんの「うちに帰りたい」という言葉を受けて悩んでいました。長男の圭介さんから電話で相談を受けた川上さんは…。 >>前編はこちら受賞作品漫画「幸せとは<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 幸せとは<後編> 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。 エピソード投稿:川上 加奈子(かわかみ かなこ) よつば訪問看護リハビリステーション(神奈川県)ともみさんの「だってずっと幸せだから」の言葉を聞いた瞬間に、「やられた!胸が突き抜かれた!」と思いながら、「みんなの訪問看護アワード」が頭をよぎり、この感動をエピソードにして、また銀座に行かなければ!と思っていました(笑)。願いが叶って審査員特別賞に選んでいただいたとわかった時には、一番にともみさんと息子さんたちに報告しました。圭介さんは「本当にあのエピソードが受賞したんですか!すごいなぁ。ねえ!あなた(ともみさん)の話が選ばれたんだってさ」とおっしゃり、皆さん喜んでくださいました。最近はケーキもつぶして食べられるようになってきていたため、表彰式の翌日にはケーキを3種類持っていき、「喧嘩しないで食べてね」とご報告に行きました。その後訪問に行った際には、「全部のケーキを少しずつ食べさせてもらったの。チョコレートは苦かった。チーズケーキは久しぶりに食べておいしかったけど、やっぱりショートケーキが好き。でも一番あんこが好き」と素敵な笑顔を見せてくださいました。 >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年5月28日
2024年5月28日

受賞作品漫画「幸せとは<前編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、川上 加奈子さん(よつば訪問看護リハビリステーション/神奈川県)の審査員特別賞エピソード「幸せとは」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 ※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。 幸せとは<前編> >>後編はこちら受賞作品漫画「幸せとは<後編>」【つたえたい訪問看護の話】 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。 エピソード投稿:川上 加奈子(かわかみ かなこ) よつば訪問看護リハビリステーション(神奈川県) [no_toc]

訪問看護師のためのリハビリ知識 実践ノウハウ編
訪問看護師のためのリハビリ知識 実践ノウハウ編
特集 会員限定
2024年5月28日
2024年5月28日

訪問看護師のためのリハビリ知識 実践ノウハウ編【セミナーレポート後編】

2024年2月3日に開催した、NsPace(ナースペース)オンラインセミナー「訪問看護師向けのリハビリセミナー ~実践的な知識を身につけよう!~」。京都大学大学院の教授で医学博士の青山朋樹先生を講師に迎え、訪問看護の現場で活きるリハビリテーションの知識を教えてもらいました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、訪問看護で実践できる具体的なリハビリテーション(以下、リハビリ)と、訪問看護師自身の負担軽減にもつながるボディメカニクスのポイントについてご紹介します。 ※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら訪問看護師のためのリハビリ知識 基礎&環境調整編【セミナーレポート前編】 【講師】青山 朋樹先生医学博士/京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 先端理学療法学講座 教授整形外科医として長らく病院で臨床経験を積んだ後、2009年から京都大学大学院で学生の指導、研究にあたる。専門は再生医学、リハビリテーション医学。近年はリハビリテーションのDX化に取り組んでいる。 円背の方におすすめのストレッチ 特に高齢者の方に多く見られる円背は、股関節や膝関節の屈曲にもつながり、「お年寄りっぽい姿勢」の原因になります。改善のためには、背中だけではなく、股関節や膝関節も一緒に伸ばすストレッチがおすすめです。 円背のある高齢者の方は体のバランスが不安定なので、こちらの左の画像のように、まず壁にしっかりと手をついてもらってください。そして可能な範囲でつま先立ちになり、3秒かけて背中を伸ばします。その後、同じく3秒かけてかかとを戻しましょう。 続いて、右の画像のようなストレッチも行います。先ほどと同じように壁に手をついたら、足を前後にずらし、背中と太もも、膝の裏を左右10秒ずつ伸ばします。 このストレッチを行うと、背中が丸まっているせいで硬くなっていた胸筋が伸びて、とても気持ちがよいはずです。訪問看護師のみなさんも、日々の処置で前かがみの姿勢をとることが多いと思いますので、ぜひ利用者さんと一緒にストレッチをやってみてください。 なお、このストレッチは、腰椎圧迫骨折後の方でも骨が固まっていれば実践可能です。転倒にはくれぐれも注意しながら行ってください。また、骨はすでに完治しているにもかかわらずストレッチができない場合は、ぜひ理学療法士や作業療法士に意見を聞いてもらえたらと思います。 呼吸困難感がある方向けのトレーニング 呼吸困難感は、PaO2低下やPaCO2上昇による化学受容器への刺激や肺や胸郭の広がりが悪い場合に生じます。 一方、慢性呼吸不全の利用者さんは、呼吸不全、困難になることへの恐怖心が強いことがほとんどです。そのため、「リハビリのためにどんどん動きましょう」と提案しても承諾してもらえないケースが多いと思います。「動くことで苦しくなるんじゃないか」と警戒してしまうんですね。 そんな利用者さんには、運動強度があまり高くないストレッチを提案してみてください。まずは無理のない範囲から始めて、自信をもってもらうのがよいと思います。 上の写真は、胸郭周辺を柔らかく動かせるようにするストレッチです。これらを継続することで、だんだんと胸郭を大きく広げられるようになり、胸郭が動かないことによって生じる呼吸困難感の解消につながります。写真のストレッチすべてを行う必要はないので、利用者さんの様子や意向を確認しながら、できそうなものをピックアップしてチャレンジしてください。また、先ほどご紹介した円背の方向けのストレッチも有効です。 ストレッチを習慣化してどんどん自信がわいてきたら、長距離を歩いたり、少し速度を上げて歩いたりといった「持久力を強化するトレーニング」へ徐々に移行してもらえたらと思います。 認知・運動機能の同時刺激トレーニング フレイル予防のためにも、ぜひ取り入れていただきたい運動。しかし運動習慣がなく、体を動かすことに抵抗がある方は少なくありません。 そんな利用者さんにトレーニングをすすめるときに重要なのは、「体を動かさないと寝たきりになってしまうよ」といった恐怖訴求をしないこと、そして「運動」や「筋トレ」といった言葉を使わないことです。ゲームのような感覚で楽しめるトレーニングを用意し、「気づいたら体を動かしていた」という状況をつくることが望ましいでしょう。 具体的には、認知機能と運動機能の両方を同時に刺激できるトレーニングがおすすめです。例えば、イスに座ってできるだけ早く足踏みをしながら、5秒間でお題に答えてもらいます。お題は「【あ】から始まる言葉」や「日本の県庁所在地」など、一人ひとりに合わせて難易度を調整してください。このようなトレーニングのメニューは、ほかにもたくさんあります。 チャンネル名:京都市左京区地域介護予防推進センター「おうちでもアタマとカラダを同時に刺激! ~ステッププラス シート編~」 YouTubeに動画をアップしているので、ぜひ「ステッププラス」と検索してご参照ください。 看護師のボディメカニクスについて 看護師のみなさんにとっては、自身の体の負担を軽減し腰痛や膝痛を予防する、もしくは大きな体格の利用者さんを介助するためのボディメカニクスも気になるポイントではないでしょうか。 ボディメカニクスの細かな手法については各種文献をご覧いただければと思いますが、重要なポイントは、体の軸をつくって下半身を安定させることです。しっかりと足を開き、膝を曲げ、腰を落とす。そして、脇をきちんと締める。これを徹底すると、自然と体の軸が安定します。 この軸がブレると、バランスが不安定になり、特定の筋肉に負荷をかけすぎてしまいます。さらに、不安定な状態で介助を行うと、利用者の方が恐怖心を抱き、体に余計な力を入れてしまいます。そうすると、介助する側の負担もより大きくなるため注意が必要です。 * * * 訪問看護師のみなさんとリハビリ職が連携したり、看護の中でストレッチやトレーニングに取り組んでもらったりすれば、訪問リハビリの可能性はもっと広がると考えています。かつては「ADLをこれ以上低下させないこと」が目標になっていましたが、これからの時代は、むしろ身体機能を回復するために訪問リハビリが行われるようになるのではないでしょうか。利用者さんのより健やかな生活を目指して、訪問看護師のみなさんも、ぜひリハビリに対するアンテナを高く張ってもらえたらと思います。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

2024年度障害福祉報酬改定 ポイント解説/相談支援における連携への対応など
2024年度障害福祉報酬改定 ポイント解説/相談支援における連携への対応など
特集
2024年5月28日
2024年5月28日

2024年度障害福祉報酬改定 ポイント解説/相談支援における連携への対応など

医療、介護に加え、トリプル改定のもう1つの対象が障害福祉サービスです。訪問看護の場合、障害福祉での報酬は発生しませんが、診療・介護報酬による障害福祉サービス利用者への訪問看護の提供は可能です。そうしたケースでの障害福祉サービス側との連携のしくみに注目します。 障害福祉サービス利用者も訪問看護は利用可能 障害福祉サービスを利用しつつ、居宅や共同生活援助(以下、グループホーム)で生活している人は、診療報酬による訪問看護の利用が可能です。また、障害福祉サービスの利用者が65歳以上になって介護保険の利用が優先されると、介護報酬で訪問看護を利用するケースも想定されます。 その場合、利用者にかかわる障害福祉、医療、介護など多様な機関による情報連携が重要になります。今回のトリプル改定では、こうした情報連携に関するしくみが新設・見直しされました。連携機関の1つとなる訪問看護事業所としては、障害福祉サービス事業所等からの情報提供の求めに応じる際の連携環境がどのように変わっていくか注意が必要です。 相談支援事業所の多機関連携加算 注目したいのは、相談支援事業所が手がける計画相談支援および障害児相談支援の「医療・保育・教育機関等連携加算」です。相談支援事業所とは、障害福祉サービスの利用意向がある人から、さまざまな相談を受けたり、具体的なサービス計画(以下、サービス利用等計画)の立案およびサービス調整を行う機関です。 そのサービス利用等計画を作成する際に、当事者が利用する医療や保育、教育機関などの職員と面談した上で、必要な情報提供を受けた場合に算定されるのが上記の加算です。対象となる障害当事者1人につき、月1回を限度として算定されます。 相談支援事業所と訪問看護事業所の連携が明記 同加算の訪問看護に関係する見直し点は、第一に算定の留意事項(通知改正)で、相談支援事業所の連携対象に「訪問看護事業所」が明記されたことです。これにより、相談支援専門員から面談(テレビ電話等の活用含む)を通じて、訪問看護提供時の利用者の心身の状態に関する情報提供依頼が増える可能性があります。 また、訪問看護事業者からの情報提供だけでなく、訪問看護側で利用者へのサービス提供に際して必要な情報が生じた場合、担当の相談支援専門員に情報提供を求めることができます。その求めに相談支援専門員が応じた場合の加算区分が新設されました。 医療・保育・教育機関等連携加算のしくみ 「精神障害者支援体制加算」と訪問看護の関係 指定相談支援事業所の報酬で、訪問看護との連携体制が要件となるものが、「精神障害者支援体制加算」です。 これは、精神障害者支援にかかる一定の研修を修了した相談支援専門員を配置している事業所を評価するものです。一定の研修とは、地域生活支援事業による精神障害者の障害特性およびこれに応じた支援技法等に関する研修、またはそれに準じた研修で都道府県知事が認める研修課程を指します。 今改定では、この加算が2区分となり、上乗せとなる新要件を満たした場合に、高単位の区分が算定できることになりました。その新要件とは、以下の内容です。 精神障害者支援体制加算の新区分(Ⅰ)の上乗せ要件重点的な支援を要する精神疾患の患者(前1年以内に以下の機関への通院・利用をしていること)を支援する以下の機関に所属する保健師、看護師、精神保健福祉士と連携する体制が構築されていること1. 診療報酬の療養生活継続支援加算を算定する病院等2. 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第57条第3項に規定する訪問看護ステーション等(精神科重症患者支援管理連携加算の届出があること) なお、この場合の「連携する体制」 とは、 研修を修了した相談支援専門員病院や訪問看護ステーションの保健師、看護師、または精神保健福祉士 が1年に1回以上面談または会議を行い、精神障害者に対する支援に関して検討を行っていることを指します。 つまり、訪問看護事業者としては、加算対象となる相談支援事業所からの依頼を受けて合同検討会を開催することになります。 横断的な改定ポイントが地域生活移行支援 今回の障害福祉サービスの報酬改定では、横断的なポイントとして、利用者の意向に沿った地域生活移行支援の強化が上げられます。 例えば、地域生活支援拠点等に位置づけられている障害者支援施設において、当事者の地域移行に向けた動機付け支援として、グループホーム見学や食事体験、地域活動への参加などを行った場合の評価が設けられました。これを「地域移行促進加算(動機付け支援を強化した区分はⅡ)」といいます。 また、グループホームから居宅生活への移行を望む当事者に対し、退居から一人暮らしに向けた計画作成と支援を行った場合を評価するという方針で、「自立生活支援加算」も見直されました。 障害者の地域生活移行の際、連携対象に注意 このように、本人の意向に沿って、施設から居住系サービス、さらには居宅への移行が進むと、主に医療保険で対応する訪問看護の利用ケースも増えてくることになります。 もちろん、それまでと生活環境が大きく変わることになるので、当事者が新しい暮らしになじむためには、移行前後での手厚い支援が欠かせません。例えば、グループホームでは、グループホームから居宅生活に移行した人への継続的な支援を評価する加算「退居後共同生活援助サービス費」が新設されました。これは、グループホーム側が退居後の利用者の居宅を週1回以上訪問し、本人の心身の状況や環境、そのほか日常生活全般の把握を行った場合に算定できます。 移行支援では、退居後に利用する障害福祉サービス事業者や医療機関、訪問看護事業者との連絡調整も必要となります。訪問看護事業者としても、こうした「居宅生活への移行支援」に関連して、利用者が以前生活していたグループホームの担当者との連携機会が生じることも頭に入れておきたいものです。 ※本記事は、2024年4月30日時点の情報をもとに記載しています。 執筆:田中 元介護福祉ジャーナリスト 編集:株式会社照林社 【参考】○厚生労働省(2024).「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00009.html2024/4/30閲覧

訪問看護師のためのリハビリ知識 基礎&環境調整編
訪問看護師のためのリハビリ知識 基礎&環境調整編
特集 会員限定
2024年5月21日
2024年5月21日

訪問看護師のためのリハビリ知識 基礎&環境調整編【セミナーレポート前編】

2024年2月3日に開催した、NsPace(ナースペース)オンラインセミナー「訪問看護師向けのリハビリセミナー ~実践的な知識を身につけよう!~」。京都大学大学院の教授で医学博士の青山朋樹先生を講師に迎え、訪問看護の現場で活きるリハビリテーションの知識を教えてもらいました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、リハビリテーションを行うにあたって必要な考え方や、病院から在宅に移行する際の環境調整のポイントなどをまとめます。 ※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】青山 朋樹先生医学博士/京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 先端理学療法学講座 教授整形外科医として長らく病院で臨床経験を積んだ後、2009年から京都大学大学院で学生の指導、研究にあたる。専門は再生医学、リハビリテーション医学。近年はリハビリテーションのDX化に取り組んでいる。 訪問看護とリハビリ職の連携の必要性 リハビリテーション(以下、リハビリ)と聞くと、多くの方々が筋力や可動域の評価をイメージするかと思います。もちろんそうした評価も行いますが、実は訪問リハビリでは多くの時間を「リスクアセスメント」に費やしています。 リハビリでは筋力の強化や可動域の改善に向けて体を動かすため、どうしても呼吸・循環器にさまざまな影響を与えます。血圧が上がったり、脈が速くなったり、息切れが強くなったりといった変化が生じる可能性もあるでしょう。そうした場合にはリハビリを一旦中止し、必要に応じて主治医に報告の上、何らかの手立てを検討する必要があります。 ただし、時間は限られているので、リスクアセスメントに多くの時間を費やすと、リハビリ時間が削られてしまいます。そのため事前に訪問看護でアセスメントしていただいた結果をリハビリ職と共有してほしいと考えています。 がん終末期の方は特に注意が必要 がんに罹患している方、特に骨転移が見られる方の場合は、リハビリに臨むにあたって注意が必要です。骨転移の状態を把握できずにリハビリを行えば、過度な負荷により骨痛の出現や悪化、骨折を引き起こす危険性があります。もちろんリハビリ職でもアセスメントは行いますが、ぜひ訪問看護師のみなさんからも情報を共有してもらえるとありがたいです。 訪問リハビリテーションの考え方 リハビリテーション計画 リハビリの計画は、筋力や可動域の状態に基づいて立てると考えられがちですが、実はADLの評価によって決められることが多いのです。いわゆる「課題志向型」で、特定の課題、例えばトイレ動作をするためのアセスメントを行い、できないことを把握した上でリハビリの計画を立てます。 つまり「この部位の筋力が強ければ大丈夫」といった評価はしておらず、むしろADLの課題からさかのぼって「動作ができないのはこの部位の筋力が影響しているのだろう。では、筋力を強化するリハビリを行いましょう」と考えます。出発点は、一つひとつの関節可動域や筋力の状態ではなくADLです。 するADL、できるADL、しているADL リハビリの計画や実践においては、まず「するADL、できるADL、しているADL」を正しく把握することがポイントになります。それぞれの言葉の意味は、以下のとおりです。 【するADL】利用者さん本人が、生きがいを得るためにやりたい、自立したいと思うADL。できるADL、しているADLの上位の概念にあたります。【できるADL】身体計測に基づいて予想されるADL。例えば、「筋肉や可動域の状態がこれくらいであればつたい歩きしかできないだろう、車いすを使うべきかもしれない」といった評価のことです。【しているADL】実際に行っているADL。筋肉や可動域などの身体的な要素だけではなく、環境因子も影響します。 「できるADL」と「しているADL」の2つには、ギャップが生じることが多々あります。「体の状態を考えればこれくらいできるのではないか」という予想に対して実際にしているADLが届いていないケースでは、リハビリでその差を縮めることを目指します。また、「できるADL」と「しているADL」のどちらにおいても、目指す方向は「するADL」です。 環境調整を検討する際のポイント 病院でのリハビリを経て在宅に移行する際は、環境調整を検討することも多いでしょう。そのときに大切なのが、もともとの生活空間がどのような状態か、利用者さんが自宅で何をしたいか、そのやる気を阻害する因子があるかを検討すること。これらよく考えずに環境調整を行うと、不十分であったり、利用者さんの意向とは違う結果になってしまったりする可能性があります。 ここで、環境調整を行ったものの、あまり有効ではなかった具体例をひとつご紹介します。私の友人で、在宅看取りを支援する診療所の医師が経験したAさんのケースです。 AさんのADLと環境調整の判断Aさんは頸部骨折で入院され、リハビリに取り組んでいた。しかし、自立歩行や段差の昇り降りは難しいと判断され、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修の環境調整を行った。自宅に戻ってからのAさんのADL後日医師が自宅に戻ったAさんの元へ訪問診療に伺うと、なんと畑仕事を行っていた。畑で種をまいたり、野菜を収穫したりといった動作が可能で、結果的に住宅改修は必要なかった。 病院のリハビリ室の環境と、実際の生活環境のギャップを考慮できていなかったことが、このような結果につながったと考えられます。例えば階段ひとつとっても段差の高さが異なり、慣れている環境であればスムーズに動作ができる可能性があるんです。また、本人の「やりたい」という気持ちも影響しているでしょう。リハビリではできなくても、大好きな畑仕事のためなら、体を動かせたのです。 >>後編はこちら訪問看護師のためのリハビリ知識 実践ノウハウ編【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

2024年度介護報酬改定 ポイント解説/BCP・高齢者虐待防止措置の減算規定
2024年度介護報酬改定 ポイント解説/BCP・高齢者虐待防止措置の減算規定
特集
2024年5月21日
2024年5月21日

2024年度介護報酬改定 ポイント解説/BCP・高齢者虐待防止措置の減算規定

2024年度介護報酬改定では、多くのサービスにまたがる義務化措置や加算の見直しが行われています。また、報酬の適正化という観点からの改定も行われました。今回は、そうしたテーマについて取り上げます。 BCPが未策定の場合の減算規定 まずは、2021年度に基準上の規定が設けられ、3年の経過措置をもって完全義務化された業務継続計画(以下、BCP)策定等の取り組みと高齢者虐待防止の推進です。いずれも2024年度からの完全義務化に伴い、未実施の場合の減算規定も設けられました。 1つめのBCP策定に関する完全義務化の内容を整理すると以下のようになります。 1. 感染症および自然災害の発生時を想定したBCPの策定2. 1に従い必要な措置(備蓄品の管理や担当者の使命など)を講ずること3. 従事者に対して、1にかかる研修を実施すること※4. 従事者に対して、1にかかる訓練(シミュレーション)を実施すること※ ※3および4に関しては、訪問看護の場合で年1回以上 上記のうち、1、2が未実施の場合の減算が設けられました。これを「業務継続計画未策定減算」といい、未策定の状況が解消されるまで所定単位数から1%が減算されます(施設・居住系については3%)。感染症および自然災害のBCP、いずれか1つでも未策定の場合で減算適用となるので注意しましょう。ただし、訪問看護を含む訪問系サービスについては、感染症対策の強化に関する義務化から日が浅いため減算規定の適用は2025年3月末まで猶予されます。 なお、減算になる期間は「1、2を満たさない状況が発生した翌月(状況の発生が月の初日であればその月)」からスタートし、「1、2を満たさない状況が解消された月」までです。 高齢者虐待防止措置の未実施も減算 高齢者虐待防止の推進において、2024年度から完全義務化となる項目は以下のとおりです。 1. 虐待の防止のための対策を検討する委員会(オンライン開催可能)を定期的に開催すること2. 1の結果について、従事者に周知徹底を図ること3. 虐待の防止のための指針を整備すること4. 従事者に対し、虐待の防止のための研修を年1回以上実施すること5. 1~4の措置を適切に実施するための担当者を置くこと この1~5のいずれかでも実施されていない状況が生じた場合、速やかに都道府県*1に「改善計画」を提出しなければなりません。その上で、「改善計画」に則った取り組みを行い、「実施されていない状況」が生じて*2から3ヵ月後に、改善状況をやはり都道府県に報告して「改善」が認められることが必要です。 上記の「実施されていない状況が生じた月の翌月」から「最終的に都道府県に改善が認められた月」までの間は、減算が適用されます。これを「高齢者虐待防止措置未実施減算」といい、月あたり所定単位数から1%の減算が行われます。 *1 看護小規模多機能型居宅介護の場合、市町村(指定権者)に改善計画を提出する。 *2 運営指導等で未実施が発見された場合、その発見月の翌月からとなる。 身体的拘束等の適正化が運営基準に 先の高齢者虐待防止の取り組みは、利用者の尊厳確保に関して不可欠なテーマです。同様のテーマから定められた規定がもう1つあります。それが「身体的拘束等の適正化」です。診療報酬改定でも規定されていますが、改めて取り上げましょう。 >>診療報酬改定の「身体的拘束等の適正化」についてはこちら2024年度診療報酬改定のポイント解説/医療DX、既存加算の適正化 具体的には、以下の規定が運営基準に設けられました。 1. 利用者または他の利用者等の生命・身体を保護するための「緊急やむを得ない場合」を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下、身体的拘束)を行ってはならない。2. 身体的拘束等を行う場合には、その態様および時間、その際の利用者の心身の状況ならびに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。 いずれも施設系、居住系、短期入所系、小規模多機能系ではすでに設けられている規定ですが、2024年度からは訪問系や通所系、居宅介護支援でも定められました。 1の規定にある「緊急やむを得ない場合」とは、 切迫性(利用者等の生命・身体への危険が切迫していること)非代替性(他に方法がないこと)一時性(一時的であること) の3つの要件を満たすことです。各要件の確認については、組織としての手続きを慎重に踏む必要があります。現場の一従事者の判断だけに任せてはいけません。 特別地域加算等の地域の範囲見直し 訪問系、通所系、小規模多機能系など複数のサービスにまたがる加算上の見直しとしては、特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算があります。いずれも、訪問時の移動に過剰な時間が費やされがちな地域で、その人件費・燃料費等のコストを考慮した加算です。 具体的な対象地域を示します。 いずれの対象地域にも含まれている「過疎地域」。この場合の「過疎地域」とは、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」の第2条第1項に規定された地域です。一方で、同法では「みなし過疎地域」に関する公示もあり、今改定ではこの「みなし」とされていた地域も含めることになりました。 PT等による訪問にかかる厳しい減算 最後に、利用者ニーズに合わせた訪問看護の適切な提供を図るための改定を取り上げます。具体的には、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下、PT等)によるサービス提供への評価です。 近年、訪問看護ステーションにおけるPT等の従事者割合が増えており、PT等の訪問による単位数も増加傾向にあります。 こうした状況を受け、リハビリ系サービスとの役割分担の観点から、2021年度改定ではPT等による訪問での基本報酬が引き下げられました。それでも、例えばPT等による訪問回数が看護職員による訪問を上回っているといったケースも指摘されていました。 そこで、2024年度からは、PT等による訪問についての減算も設けられました。減算の対象はPT等による訪問で、要件は以下のとおりです。 1. 事業所における前年度(前年4月から当該年3月まで)のPT等による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること2. 1に適合しない場合であっても、前6ヵ月間において、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算をいずれも算定していないこと【上記を満たす場合】1回につき8単位を所定単位数から減算(なお、1について、2023年度の実績に応じ、2024年度は同年6月1日から2025年3月末までの減算となる) 上記は介護予防訪問看護でも同様です。 なお、2021年度改定では、介護予防訪問看護の適正化の観点からサービス提供が12ヵ月超の場合に5単位の減算が適用されています。このケースについて、上記のPT等による過大訪問の減算が適用されている場合、減算幅は「5単位」⇒「15単位」となります。かなり厳しい減算となる点に注意が必要です。 次回は、トリプル改定のうちの障害福祉サービスの中から、訪問看護に関係のある内容を取り上げます。>>次回の記事はこちら2024年度障害福祉報酬改定 ポイント解説/相談支援における連携への対応など ※本記事は、2024年4月23日時点の情報をもとに記載しています。 執筆:田中 元介護福祉ジャーナリスト 編集:株式会社照林社 【参考】○厚生労働省(2024).「令和6年度介護報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html2024/4/23閲覧○厚生労働省(2024).「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230308.pdf 2024/4/23閲覧

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