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4コマ漫画「小児の卒業」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
4コマ漫画「小児の卒業」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
特集
2024年4月9日
2024年4月9日

漫画「これだけは」ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

「当たり前」の生活を支える 訪問看護では、例えば「子どものお弁当を作りたい」など、利用者さんにとっての当たり前の生活や想いを支えることも大切だにゃ ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

6月病とは?5月病との違いや早くから始めたい予防法
6月病とは?5月病との違いや早くから始めたい予防法
特集
2024年4月9日
2024年4月9日

やる気が出ない6月病とは?5月病との違いや早くから始めたい予防法

季節に関わる心身の不調といえば、環境の変化や気象などの影響で気分が落ち込む5月病が一般的に知られています。実は、6月にも5月病と同じような症状が現れる場合があります。これを6月病といい、あまり知られていないことから、症状が現れた際に不安に感じる人は少なくありません。本記事では、6月病の症状や原因、5月病との違い、予防法などについて解説します。6月に自分自身や周りの訪問看護スタッフ、利用者さんに心身の不調がみられた際には、6月病である可能性を考えてみると良いでしょう。 6月病とは 6月病とは、環境の変化に適応できないことによってストレスや疲労が溜まり、結果的に心身に不調をきたす状態のことです。5月病は、新社会人や新入生に見られることが多いもので、症状と原因は基本的に6月病と同じです。しかし、6月病は5月病よりも悪化しやすく、うつ病に移行してしまう恐れもあるため、早期に対処する必要があります。 6月病と5月病の違い 6月病と5月病は、いずれも適応障害の1つといわれています。適応障害とは、環境や出来事に適応することに対してつらく感じ、ストレスや疲労が溜まって気分の落ち込みや疲労感などが現れる状態のことです。 5月病は、5月頃に突如として現れ、6月に入るころにはおさまるのが一般的です。一方、6月病は改善と悪化を繰り返しながら慢性的な経過をたどる傾向があります。 症状は、頭痛やめまい、吐き気、不眠、イライラ、不安感、注意力の低下、抑うつなどです。梅雨は気圧の変化による気象病の症状も同時に出やすいため、5月病よりつらく感じる方もいます。 6月病のセルフチェック方法 以下に挙げる項目について、該当する症状が多くなればなるほど、6月病の可能性が高まります。 【身体の症状】 朝起きるのがつらいなかなか寝つけない疲れが取れない食欲がないめまいや頭痛がある肩こりがある下痢や便秘などでお腹の調子が悪い 【心の症状】 イライラする原因のわからない不安がある趣味を楽しめなくなった注意力や判断力が低下した感情の起伏が激しい飲酒や喫煙を我慢できないすぐに謝ることが増えた人と会う予定を直前でキャンセルしてしまう 上記に当てはまる項目が多かったとしても、別の何らかの病気によって症状が現れている可能性もあるため、自己判断せずに医師に相談しましょう。 6月病の予防方法 6月病は、心身をケアすることで予防できる可能性が高まります。次のような生活を習慣づけましょう。 十分に睡眠を取る 十分な睡眠はストレスや疲労を軽減するため、6月病になるリスクを抑えることができます。睡眠の質を高めるためには、就寝の2時間ほど前に入浴する、寝る1時間前からスマホの使用を避ける、寝る前に軽いストレッチをするなどの対策が効果的です。 ストレスが過剰になると睡眠の質が低下して寝つけなくなる可能性があるため、普段から十分な睡眠を取って、ストレスと疲労を溜めないようにしましょう。 適度に運動する 適度な運動は、気分をリフレッシュさせ、ストレスを軽減するのに役立ちます。ウォーキングやジョギング、ヨガなどの軽い運動を毎日続けましょう。 また、運動することで血液の循環が良くなり、脳への酸素供給が増えます。これにより、集中力や注意力の改善、ストレスの軽減などが期待できます。無理な運動はかえってストレスや疲労の原因となるため、自分に合った運動を長く続けることが大切です。 ストレスをこまめに発散させる 仕事や家事、育児などをしているかどうかにかかわらず、ストレスは少しずつ溜まっていきます。そのため、ストレスが溜まっている自覚がなかったとしても、趣味や心を許せる人とのコミュニケーションなどでストレスを発散させましょう。 人との会話を楽しむだけでもストレスを軽減できますが、不安を抱えている場合は、それを打ち明けることでストレスを発散できるでしょう。人に悩み事を打ち明けることによるストレス発散効果は長く続きます。人に打ち明けたり原因に対処したりして、人生における悩みを少しでも軽減することがストレスコントロールのコツです。 また、マインドフルネスや瞑想、深呼吸などでも、ストレスを軽減できます。体の状態や体力、心の余裕などを踏まえて、そのときに適した方法を試してみてください。 6月病になったときの対処法 6月病の対処法は予防法と共通しています。しかし、すぐに状態を改善させるのは難しいかもしれません。6月病を治そうと頑張ることでストレスが溜まり、状況を悪化させてしまう可能性もあるため、自分のペースで回復に向けて取り組むことが大切です。まずは医師に相談し、適切なアドバイスや治療を受けましょう。 * * * 6月病は5月病と同じく、環境や出来事に適応できないことで疲労やストレスが溜まり、心身に不調をきたすものです。自分自身や周りの訪問看護スタッフ、利用者さんが6月に不調となった場合は、6月病の可能性を考えてみましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。

第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート
第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート
特集
2024年4月2日
2024年4月2日

第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月9日開催】

春の足音を感じる2024年3月9日(土)、銀座 伊東屋 「HandShake Lounge」(東京都中央区)で「第2回 みんなの訪問看護アワード」の表彰式を開催しました。訪問看護に携わる皆さまの日々の努力を世の中に認知してもらうことを目的に2023年度から始まった本イベント。表彰式では、全国各地からお越しいただいた受賞者の方々や審査員の先生方、協賛企業の皆さまとともに、表彰、特別トークセッション、懇親会などで盛り上がりました。表彰式当日の様子や、参加者の皆さまの感想をまとめたレポートをお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 受賞者の皆さまへのトロフィー・記念品授与 まずは受賞者の皆さまへの表彰が執り行われました。入賞12名、協賛企業賞5名、審査員特別賞3名、ホープ賞1名、大賞1名の順にお一方ずつ審査員の先生方からトロフィーと記念品が授与されました。 贈呈されたトロフィー 入賞エピソード「笑顔の看取り」の投稿者の服部景子さん 栄えある大賞には、岡川修士さん(大阪府)が投稿されたエピソード「役割を求めて」が選ばれました。 大賞エピソード「役割を求めて」投稿者の岡川修士さん(左)と、特別審査員の高橋洋子さん(右) 岡川さんの受賞コメントを一部ご紹介します。「まずは、『パーキンソン病と闘う患者さんの励みになるなら』と、本名とご自身の病名をエピソードに使ってもいいと承諾してくださった同僚の加東さんにお礼を伝えたいです。私が所属する訪問看護ステーションは6人と小規模で、まだ開設して2年も経っていません。日々一緒に奮闘する仲間たちに受賞を報告すると、みんな私以上に喜んでくれました。当社は『ものがたりケア』をモットーにしています。私たちがケアに当たる利用者さんには、それぞれ今に至るまでの『ものがたり』があり、過去からつながる人生の一部なのだと念頭に置きながら、丁寧に接することを大切にしています。そんな私たちのケアがひとつのエピソードとして受賞したので、弊社代表もとても喜んでくれました。大賞をいただけて素直にうれしい気持ちでいっぱいです。ありがとうございました」 岡川さんの「役割について」を大賞作品に選出した理由について、特別審査員の高橋洋子さんからのコメントもご紹介します。「パーキンソン病で今までできたことができなくなるという悲嘆の中、利用者さんは自分の存在や役割について悩まれます。そんな利用者さんに対して何かしたいという岡川さんの真摯な姿勢が文章から伝わってきました。利用者さんができる役割を思いつき、それを後押しする社長さんや訪問看護ステーションの風土にも感銘を受けました。体が自由に動かなくなっても自分らしく生きたいと思われる利用者さんを、訪問看護のスタッフが支えていく。それが我々の目指すべき姿であることを教えてくださったエピソードだと思い、選出させていただきました」 「役割を求めて」の漫画を制作いただく広田奈都美さん(右) 会場では、制作中の漫画の下書きも披露されました。大賞の「役割を求めて」の漫画化をしていただく看護師・漫画家の広田奈都美さんからのコメントも一部ご紹介します。「このエピソードを読んだとき、何か哲学を教わっているような感覚になりました。漫画を描くにあたって岡川さんからお話を伺った際、『ものがたり』というキーワードが出てきて『なるほど』と共感しました。この利用者さんのものがたりすべてを描くことはできませんが、ものがたりの中の『一瞬』を精一杯、描かせていただきたいと思います」 エピソード・訪問看護に関するトークセッション 表彰後は、特別審査員の長嶺由衣子さんと受賞者3名(小野寺志乃さん/宮城県、新田光里さん/東京都、白﨑翔平さん/大阪府)による特別トークセッションが行われました。エピソードを投稿したきっかけや訪問看護の世界に身を置いた経緯、訪問看護の魅力を世の中に伝えるアイデアなど、幅広いテーマでのディスカッションが繰り広げられました。登壇者のお話にうなずき、時には驚きながら耳を傾けている受賞者や関係者のみなさんの姿が印象的でした。 例えば作業療法士の白﨑さんは、引きこもりがちな利用者さんの「外出する目的」をつくるため、ご本人が「お花好き」という点に着目。雑木林をひまわり畑にし、「お花の世話をする」という目的をつくり出そうとしたことが、今回の投稿エピソードにつながったと紹介。利用者さんの状態や気持ちに寄り添いながら、「自分たちに何ができるか」と真摯に考え、日々チャレンジし、奮闘されている様子が3人のお話から伝わってきたトークセッションでした。 すぐに打ち解けて話が尽きなかった懇親会 式典が終了した後は、軽食や飲み物を楽しみながら審査員の先生方、受賞者のみなさん、協賛企業のみなさんとの懇親会を開催。リラックスした雰囲気の中、同じ職種だからこそ話せる日々の悩みを相談する姿も。初対面の方々がほとんどの中、すぐに打ち解けて、記念撮影を楽しまれている姿も多く見られました。笑いが絶えずいつまでも話が尽きない中、みなさんお別れが名残惜しそうでした。 審査員の先生方・受賞者の皆さまのご感想 最後に、「みんなの訪問看護アワード」や表彰式について、特別審査員の先生や受賞者の皆さまに伺った感想をご紹介します。 高砂 裕子さん(一般社団法人全国訪問看護事業協会 副会長)こうしたイベントを開催することで、訪問看護の現場で頑張っているみなさんの声を世の中に届ける機会になるだけでなく、これから訪問看護師として働く方々にも、現場のイメージができて役立つ内容だと思います。全国各地から集まって意見交換をし、元気になってそれぞれの地域に戻る、という仕組みをつくっていただいたことはとても素晴らしいことだと思います。このイベントが今後も継続できるように、運営企業や協賛企業の皆さまのご支援をいただければ幸いです。 高橋 洋子さん(公益財団法日本訪問看護財団 事業部課長)審査員としてみなさんのエピソードを読ませていただき、利用者さん一人ひとりに素晴らしい人生ドラマがあり、そうした人たちを支えている訪問看護師は本当に素敵な仕事だと感じました。普段は一人で利用者さんのお宅をまわり、孤独でハードな仕事だと思います。でもこうしたイベントがあれば、ほかの訪問看護師さんの話を聞いて共感し、悩んでいるのは自分だけではなく全国に同じように頑張っている仲間がいるんだと思えます。現場に戻って働くための心の糧になるでしょう。そうした意味でも、素晴らしいイベントだと感じました。 山本 則子さん(東京大学大学院医学系研究科 教授)トークセッションが大変興味深く、投稿エピソードの背景にはどのようなお考えがあったのか、本来であれば全員のお話を掘り下げて伺いたいと感じたくらいです。なかなか表に出てこない訪問看護のエピソードが、「みんなの訪問看護アワード」によって日の目を見ることができるのは、とても意味のあることだと思います。利用者さんの背景も価値観も異なるので、十人十色のエピソードがあり、それが在宅ケアの特徴なのだと改めて感じました。 長嶺 由衣子さん(東京医科歯科大学国際健康推進医学 非常勤講師)このイベントは訪問看護の世界で働く人々のネットワークを生むことはもちろん、訪問看護に携わるみなさんの感性を育てる場でもあると改めて思いました。エピソードを書くという場があることで、自身の仕事を振り返り、感じ、気づく機会になります。ぜひこのイベントを継続していただきたいです。今回はリハビリ職が利用者さんのやりがいにアプローチをして受賞したケースも複数あり、訪問看護が地域ではたす機能の可能性について思考する会になりました。ぜひ多職種が連携して訪問看護を盛り上げていただきたいと思います。 大石 佳能子さん(医療法人社団プラタナス/株式会社メディヴァ 代表取締役)訪問看護という忙しい仕事の中で、日々の経験を振り返って文章にすることはなかなかないと思います。こうしたきっかけがあれば言語化して振り返る機会となり、「自分はこんなことを大切にしていたんだ」という気づきを得られるはずです。報告書には書かれていない利用者さんやご家族、そして訪問看護師の心の軌跡のようなエピソードを所属先の仲間に共有すれば、普段から何を大切にして働いているのかといった価値観をみんなが知る機会となり、その訪問看護ステーションの強みになっていくのではないかと思います。 大日向 莉子さん(協賛企業賞受賞者/東京都/写真左)妹に誘われたのがきっかけで今回応募するに至りました。まさか姉妹で受賞できるとは思わず、本当に光栄です。私のエピソードはみなさんのように特別な、素敵なイベントを切り取ったものではなく、お看取りを経験する人なら誰もが抱えるジレンマなのではないかなと思っています。今回賞をいただいたことで、私の抱えるジレンマや感情が肯定されたように感じ、それが一番嬉しかったです。今回みなさんの素晴らしい看護のお話を聞き、多くの学びがありましたしもっと知りたいと思いました。このような場がこれからも増えますように。大日向 麻子さん(入賞者/東京都/写真右)受賞して会場に訪れ、みなさんのお話を伺えたことが何よりもうれしかったです。トークセッションでは、利用者さんやご家族が納得して看護やケアの方法を選択し、前に進めるかどうかを尊重する考え方もあると知り、感銘を受けました。また、私は看護の限界を決める必要はなく、アイデア次第で可能性が広がっていくと思っています。エピソードが入賞したことでそうした訪問看護の魅力を伝えられる機会を与えていただきました。ありがとうございます。 小林 奈美さん(協賛企業賞受賞者/広島県)「みんなの訪問看護アワード」の存在は、SNSで交流をしていた第1回の受賞者の方に教えていただいたんです。その方から「来年もあるから、一緒に受賞して銀座で会いましょう!」と言ってもらい、エピソードを投稿しました。その言葉通り、今日初めて対面でお会いすることができて、とてもうれしかったです。漫画家の広田奈都美先生にもお会いでき、広島から参加した甲斐がありました。 「第2回 みんなの訪問看護アワード」表彰式にご参加いただいた皆さまの集合写真 表彰式にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。大賞作品の漫画は、2023年4月下旬にNsPace上で公開予定です。審査員特別賞・ホープ賞の漫画化や、表彰式のトークセッションのレポート記事の制作も予定しています。ぜひご覧ください。 取材・執筆:高島三幸編集:NsPace編集部

交通事故【訪問看護 緊急時の対応法】
交通事故【訪問看護 緊急時の対応法】
特集
2024年4月2日
2024年4月2日

訪問看護の移動中に交通事故が発生したら【緊急時の対応法】

訪問先で思わぬ出来事に遭遇したとき、訪問看護師としてどう動けばよいのでしょうか。このシリーズではさまざまな緊急時に対し、具体的な臨床知をもとに何を確認・判断して、誰にどの手順で連絡・調整すればよいか分かりやすく解説します。今回のテーマは訪問看護の移動中に交通事故が発生した場合の対応法です。 交通事故は事業所運営のリスクの1つ 訪問看護業務は利用者さんのご自宅に訪問して看護を提供します。そのための移動手段として一般的には普通自動車や自転車、普通自動二輪車を使用することが多いでしょう。移動を頻繁に行う訪問看護において、交通事故は平常時から安全管理体制を整えておくべき問題です。 交通事故は被害者になることもあれば加害者になることもあり、どちらにおいても事業所の運営におけるリスクの1つといえます。今回は自動車運転中に交通事故の加害者になった場合、被害者になった場合についてそれぞれの対応法を解説します。 加害者になったらどう対応? 移動中に交通事故を起こしてしまったら、負傷者の救護、道路上の危険防止措置、警察への連絡を行います。警察への連絡は対物であっても対人であっても必要です。これらは事故発生時に加害者が行うべき措置として法律で定められた義務です。 【参考】道路交通法第72条第1項交通事故があったときは、(中略)直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。(中略)この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、(中略)警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。 負傷者を救護する ただちに運転を停止し、死傷者の有無や負傷の程度、物損の有無、損壊の程度などを確認します。負傷者がいるなら負傷者の救護が最優先です。負傷者の状態に応じて、近くの医療機関に受診してもらうか、救急車を要請します。救急車が到着するまでの間、可能な限りの応急処置を実施します。 もし、負傷者が「受診するほどではない」と話しても、後遺症がその後発生した場合のことも考え受診してもらうようにします。 道路上の危険を取り除く 事故車両をそのままにせず、ほかの通行車両や歩行者に二次被害が生じないよう安全な場所へ移動させます。停止表示板(三角表示板)を設置する、発煙筒を使用するなど道路上における危険防止の措置を講じます。 警察に連絡する 負傷者の救護と道路上の安全を確保したら、警察に連絡をします。どんなに小さな事故であっても連絡し、事故に係る状況(場所や負傷の程度、損壊の程度など)について説明します。なお、自動車保険を利用する場合、「交通事故証明書」が必要です。交通事故証明書は警察への届出がないと発行してもらえません。この点からも警察への連絡は必須です。 事業所への報告と状況の確認も行う ほかにも大切な手順があります。負傷者だけでなく自分も受傷していないか確認し、その結果と現在の状況を事業所に報告します。事故処理には相応の時間がかかりますので、次の訪問があれば、訪問時間に間に合わないため事業所に対応を依頼します。 事故対応で判断に迷うときは、事業所に連絡し管理者に相談してください。また、決してその場で示談にはしないのも重要な注意点です。相手には氏名、住所、連絡先、保険会社などの情報を確認しておきます。相手の負傷状況が軽度か重度かにかかわらず、誠意をもって対応してください。 事故の大小に限らず、事故を起こしてしまった事実により、それなりに動揺してしまうと思います。車両の破損がなく、運転して事業所に戻るのであれば十分に注意して移動します。 移動手段が自転車や普通自動二輪車であっても事故が起こったときの対応は同様です。 さまざまな事態に備える ここまでで示した対応は一般的な例に過ぎず、交通事故の状況はさまざまです。 例えば、加害者であっても自分で連絡の対応ができない状況も起こり得ます。自分に意識があれば「事業所に連絡して状況を伝えてください」と依頼できますが、それさえもできないケースが考えられます。そのような場合に備え、私の訪問看護ステーションでは、訪問バッグの中や車内の見やすい位置に訪問看護師であること、事業所名、氏名、連絡先を記入したカードを準備しています(図1)。 また、相手に負傷状況を確認しようとしても「大丈夫です」と答え、連絡先を聞いても何も言わずに急いで立ち去ってしまうケースがあります。このようなときでも、警察には一つの事故として必ず届出をしておきましょう。警察に連絡しないで現場を離れてしまうと、後になって救護義務違反として罰則を受ける可能性もあるため、安易な判断は禁物です。 図1 連絡先カード 事故の当事者が連絡対応できない場合に備え、このような連絡先カードを作成し、訪問バッグの中や車内の見やすい位置に準備している。 被害者になったらどう対応? 交通事故の被害者になったときは、加害者になったときと同様に必ず警察に連絡します。また、加害者の氏名、住所、連絡先の確認と医師の診察を必ず受けるようにします。 事故が生じた直後、「利用者宅への訪問に遅れてしまう」という気持ちの焦りが生じます。自分の身体には外傷もないから大したことがないと判断し、利用者さんに迷惑をかけないようにと訪問を優先してしまうかもしれません。 しかし、そのときは問題がないように感じても、数日後に痛みやしびれなどの症状が出る可能性もあります。交通事故では自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)をよく使いますが、業務中であれば労災保険を使うこともあります。保険の問題も関係しますので、利用者さんに迷惑をかけたくない気持ちは理解できますが、そのときの感情だけで行動しないようにしましょう。 事業所として取り組みたいリスク管理 交通事故は誰にでも起こり得ます。訪問看護における移動中の交通事故に関しては、事業所として次に示すようなリスク管理をしておきます。 運転者の心構えをチェックリストにする事故に遭遇したときの連絡体制を定めておく交通事故発生時の対応方法をマニュアル化しておく定期的に事業所内で移動中の事故対応に関する研修会を開催する安全なルートの共有や訪問間隔の確保など、スタッフが安心して移動できるようにサポートする移動中に故障しないように定期的に業務用車両の管理を行う事故に備えて自動車保険に加入する こうした取り組みを行い、実際に事故に遭遇しても焦らず対応できるようにしておきます。事業所は交通事故を未然に防ぐ対策と事故が起きたときの対策を講じなければなりません。 * * * 訪問看護師が加害者となった場合、当事者だけで対応させるのではなく、事業所の管理者ができるだけ早く相手に連絡をします。誠意をもって謝罪にうかがうなど、速やかな対応が必要です。また、事故に遭遇した訪問看護師は落ち込んでいることが予測されます。管理者は訪問看護師のフォローにも配慮してください。事業所として、訪問看護師が安全に移動でき、訪問看護を提供できる環境を作っていきたいものです。 >>関連記事 第7回 防災対策、交通事故、個人情報保護、医療事故編/[その2]スタッフが交通事故を起こしたら? これだけ押さえて冷静に対応! 執筆:阿部 智子訪問看護ステーションけせら統括所長 ●プロフィール約12年の臨床経験後、育児に専念する期間を経て、訪問看護の道に入る。自宅を訪問し、利用者との個別ケアを通して看護師としての力量の評価を得られ、利用者一人ひとりの生きざまを感じることができる訪問看護に魅力を感じる。2000年に「訪問看護ステーションけせら」を設立し、看護と介護を一体的に運営し、医療と生活の両面から在宅を支えられる実践を行ってきた。最期まで地域で暮らしたいという思いも支えられるようにホームホスピスの運営と、24時間対応できる定期巡回随時訪問介護看護事業にも携わる。 編集:株式会社照林社

実践的浮腫ケア セミナーレポート【現地開催】
実践的浮腫ケア セミナーレポート【現地開催】
特集 会員限定
2024年4月2日
2024年4月2日

【現地開催】明日から使える実践的浮腫ケア セミナーレポート(1/27開催)

2024年1月27日(土)に、越屋メディカルケア株式会社東京営業所(東京都新宿区)にてオフラインセミナー「明日から使える実践的浮腫ケア」が開催されました。ご登壇いただいたのは、ICAA認定リンパ浮腫専門医療従事者の岩橋 知美さん。総勢20名の訪問看護師さんに向けて、浮腫の基本から実践的なケア方法に至るまで、実技演習を交えながら講義いただきました。約4時間に渡るセミナーの様子を写真とともにダイジェストでお伝えします。 【講師】岩橋 知美さんICAA認定リンパ浮腫専門医療従事者、メディカル アロマセラピスト、メンタル心理士、リンパ浮腫外来顧問(聖マリア病院)1988年に看護師資格を取得後、病院にて勤務。2005年にメディカルアロマを学び「アロマセラピスト・アロマ講師」の資格を取得。産婦人科などでアロマケアに携わる。その後、2009年にICAA設立。2014年聖マリア病院形成外科でアロマ、リンパ浮腫ケア外来開設。厚生労働省委託事業「リンパ腫専門医療者の育成」主任講師としても活躍。 まずは座学で浮腫の基本を総ざらい 在宅療養者にとって辛い症状のひとつである浮腫。座学では、浮腫が起きるメカニズムや原因、在宅療養者に多く見られる浮腫の特長といった基礎知識の復習からスタートしました。浮腫はADLだけでなく、QOLの低下を招く原因にもなることが伝えられ、参加者は真剣な眼差しで熱心に耳を傾けていました。 また、浮腫悪化のリスクやアセスメントで注目すべき点なども伝えられ、参加者は改めて在宅看護における浮腫ケアへの理解を深めた様子でした。 >>関連記事NsPaceセミナーレポート「浮腫のアセスメントとケア」シリーズ一覧はこちらhttps://www.ns-pace.com/series/edema-assessment-and-care/ 数々の圧迫用品に参加者は興味津々 浮腫の基本を復習した後は、具体的なアプローチ方法についても講義。浮腫ケアは、複合的治療が前提だとした上で、圧迫療法やスキンケアが重要といったポイントが伝えられました。 各テーブルに多種多様なチューブ包帯(筒状包帯)やインジケーター付き弾性包帯などの見本が配られると、参加者は肌触りや伸縮性を確かめたり、腕に装着したりと学びを深めていました。 圧迫用品やパッティング材に見て触れる参加者の方々 中でも盛り上がりを見せたのは、市販の化粧パフで作成されたパッティング材。チューブ包帯の食い込み対策や皮膚硬化部の保護のために使用しますが、簡単に作成できることから驚きの声が上がっていました。 ドレナージや浮腫ケアの手技を実演 座学終了後はいよいよ実技講習がスタート。圧迫用品の使用方法をはじめ、ドレナージや浮腫ケアの流れなどが実演されました。 まず行われたのが上肢・下肢へのチューブ包帯の使用方法の実演です。浮腫ケアは、チューブ包帯で圧力の「勾配」を作ることが重要だと解説され、勾配の作り方や注意点などが紹介されました。 包帯の巻き返しが起きやすい箇所も丁寧に解説 中でも大きな盛り上がりを見せたのは、顔への圧迫療法。化粧パフで作成したパッティング材とイビキ用マスクを組み合わせた方法で、参加者からは驚きの声が上がりました。 続いて、ドレナージややや圧力のある浮腫アプローチ手技も実演されました。浮腫ケアには、圧力が少しある方がより効果的だとし、下肢・上肢の順で浮腫アプローチの手技を解説。半円を描きながらリンパドレナージをしていく方法や、ふくらはぎを下からすくい上げるように施術し、巡りを促す方法など、さまざまな手技を実演。どの参加者も講義に熱中し、患者さんを想う真剣な気持ちが会場全体を包み込んでいました。 参加者の皆さんは時に大きく頷きながら講義に集中 実演の終盤では、平編みのチューブ包帯やインジケーター付き弾性包帯の使用法も紹介。圧迫状態での運動が効果的だとし、足首の曲げ伸ばしや、股関節の回旋運動などの方法が伝えられました。 参加者も浮腫ケアを実践し、大盛り上がり 実演を踏まえ、参加者も3~4名ずつに分かれて浮腫ケアの実践へ。岩橋さんが各ベッドをまわり、力のかけ方や手の動かし方をレクチャー。特にドレナージと浮腫ケアアプローチの力加減の違いをレクチャーすると、その大きな違いに驚く声があちこちで上がりました。 参加者からは「浮腫ケア施術ひとつをとっても奥が深い」「ドレナージは、思ったよりも軽い力で驚いた」「すごく気持ちいいし、日々の患者さんのケアに役立てたい」といった声が続々。 実技演習は明るく楽しい雰囲気で大盛り上がり はじめは見様見真似だった参加者も次第にコツをつかみ、岩橋さんから「上手!その調子!」と声をかけられるシーンも多数。実際の訪問看護を想定し、「この手技なら10分くらいはできるかも」とシミュレーションをはじめる参加者もいらっしゃいました。 圧迫用品も参加者同士で装着し合い、圧力の勾配の作り方などを確認。中でもインジケーター付き弾性包帯の巻き方に苦戦する参加者が多く見られましたが、伸縮をかけずに足にそわせるように巻くとうまく巻けることを教わると、みるみる上達。楽しくも着実に学びを深める様子がうかがえました。 圧迫用品の使用方法も丁寧にレクチャー 時間終了後も質問が飛び交い、大盛況のうちに座学・実技演習を終えました。 「明日から実践したい」と喜びの声が多数 セミナー終了後は、集合写真を撮り、懇親会も開催。参加者はすっかり打ち解け合い、お互いの実務や訪問看護への想いを語り、モチベーションを高め合っていました。 感想などを共有し合いながら懇親会を楽しむ皆さん セミナーの感想をうかがうと、「明日からでもすぐに実践したい」や「気軽に質問できる雰囲気が良かった。手技も楽しく学ぶことができた」などの声が寄せられました。 ■参加者の感想(抜粋) 「先月から訪問看護のお仕事を任されたばかりなんですが、浮腫に悩む患者さんもいて、少しでもお役に立ちたいという一心で参加しました。ドレナージや浮腫ケアの手技を直接先生に教わり、とても勉強になりました。訪問看護は時間との勝負ですが、その中でもすぐに実践できることが見つかって良かったです」 「対面開催のセミナーがあることを知り、群馬から駆け付けました。浮腫に悩む患者さんを多く受け持っていますが、寝たきりの方は多くなく、リハビリが必要な方が中心です。今回、圧迫して運動した方が良いことを学んだので、リハビリ専門の職員とも連携し、さらに患者さんの役に立つことができればと思います」 講師を務めた岩橋さんも、大きな手ごたえを感じたご様子。 「波打つように頷く皆さんの反応を受け、患者さんへの真剣な想いや日頃の努力がひしひしと伝わってきました。質問も数多くいただき、具体的な解決策や手技をお伝えできてとても良かったです。訪問看護はどうしても時間が限られますが、その中でもできるケアやポイントをお伝えでき、有意義な時間となりました」 懇親会終了後は、どの参加者も笑顔で会場を後にし、大好評のうちにセミナーの幕を閉じました。NsPaceでは今後も訪問看護師さんのためのセミナーを企画していく予定です。ぜひ今後のセミナー情報にご注目ください。 取材・執筆・編集:高橋佳代子

治りにくい褥瘡ケア~代表例と具体的なケア
治りにくい褥瘡ケア~代表例と具体的なケア
特集 会員限定
2024年3月26日
2024年3月26日

治りにくい褥瘡ケア~代表例と具体的なケア~【セミナーレポート後編】

2023年12月15日(金)に開催したNsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「治りにくい褥瘡のケア~在宅で治癒を目指す方法~」。在宅創傷スキンケアステーションの代表で、皮膚・排泄ケア認定看護師でもある岡部美保さんを講師に迎え、治りにくい褥瘡をケアする際に役立つ知識やノウハウを教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、前編に引き続き治りにくい褥瘡の代表例と、そのケア方法や注意点をご紹介します。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針~【セミナーレポート前編】 【講師】岡部 美保さん皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 複数の褥瘡がある/創部が大きいケース 複数の褥瘡があったり、創部が大きくその周りにポケットができていたりする褥瘡は治りにくい褥瘡の代表例です。 >>関連記事写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 事例に学ぶ創部の見方/セミナーレポート後編複数の褥瘡を有する方の事例について解説しています。 ここで、創部の形に着目してみてください。以下の写真を見ると、創部には丸いものと縦長のものがあることがわかります。 この差には、どのように外力が加わったかが表れています。創部が円形に近い褥瘡は、骨突出部に圧迫が加わったことで生じます。一方、創部が縦長など不整形な褥瘡は、圧迫に加えてずれの影響も受けて生じます。 こうした外力の影響は、ポケットにも表れます。 ポケットには「初期型ポケット」と「遅延型ポケット」の2種類がありますが、このうち遅延型ポケットは、治癒過程で外力が加わることで生じます。 ポケットがある褥瘡のケア これをふまえて、ポケットのケアのポイントを見ていきましょう。 外力の低減、排除ポケットのケアでは、外力を極力排除することが重要です。ポケットを観察すると、どの方向にずれや摩擦が加わっているかがわかるので、それをふまえて外力への対策を検討してください。褥瘡の評価やケアによる損傷を防ぐ吸引カテーテルで創部を洗浄する際は、カテーテルのサイズが細いもの(10Fr以下)を使用し、肉芽損傷を防ぎましょう。同じくポケットの計測も、鑷子を内部に入れると、先端の尖った部分で肉芽を傷めたり、ポケットを深く、広くしたりするリスクがあります。細い綿棒などを使って計測するのが安全です。ポケット内部に充填物を入れすぎないガーゼをはじめとした充填物を使用する場合は、ポケットを拡大しないよう、たくさんの量を強く押し込まないように注意してください。介助による外力に注意する私たちの介助によって創周囲の皮膚に加わる外力も、ポケットを広げる原因に。体位変換や褥瘡のケアをするときに創周囲の皮膚を引っ張ると、ポケット内部の組織を損傷する可能性があります。できるだけずれや摩擦などの外力をかけないよう気をつけましょう。ポケットに使用する外用剤は適切なものを選ぶポケットを形成した褥瘡の場合、カデキソマー・ヨウ素の使用にはご注意ください。カデキソマー・ヨウ素は洗浄が不十分であるとポケット内部にポリマービーズが残存して、感染を起こす可能性があります。使用の際は、ポケット内部の洗浄を確実に行いましょう。 局所に臨界的定着疑いがあるケース 臨界的定着疑いのある褥瘡とは、感染一歩手前の非常に危険な状態です。創面にはぬめりがあり、多量の滲出液により創周囲の皮膚は浸軟。そこに外力が加わることで創周囲の皮膚は肥厚し、さらに表皮の巻き込みなどを生じると治りにくくなっています。 在宅における褥瘡ケアでは、密閉性が高いあてものを使用しているケースがよく見られます。これにより創面、創周囲の温度と湿度が上がって皮膚が浸軟するだけでなく、感染リスクも高まります。また、厚みのあるあてものを使用している場合は創部が圧迫され、肉芽が損傷し、血流が障害されることにより肉芽組織の形成も遅れ、褥瘡の悪化はもちろん治癒も遅延します。 臨界的定着疑いのある褥瘡のケア 臨界的定着の疑いがある場合は、感染に移行させないケアが重要です。 ケア方法としては、まずは口腔ケア用スポンジや医療用スポンジなどで創面のぬめりをとります。その後、抗菌、細菌抑制作用がある外用剤(カデキソマー・ヨウ素やポビドンヨードをはじめとしたヨード製剤など)で創面の環境を整えましょう。 多量な滲出液を吸収できる非固着性のガーゼを使って創部を管理することをおすすめします。非固着性ガーゼは、肉芽損傷の予防にもつながり、安全かつ確実なケアができます。 創辺縁部に問題があるケース 以下の写真の褥瘡のように、創辺縁部に浸軟や肥厚、表皮の巻き込みといった問題がある場合は、さらに治癒の遷延やポケットの拡大を引き起こしやすくなります。 以下の写真は、比較的浅い褥瘡であるにもかかわらず、なかなか治癒しないケースです。創周囲の皮膚が浸軟していることがわかりますよね。 浸軟の原因としては、多量の油脂性軟膏を塗布していることが考えられます。油脂性軟膏は厚塗りすると外用剤と皮膚の間に汗などの水分が溜まりやすくなり、浸軟を起こしやすくなります。 それから、あてものに排泄物が潜り込んだ状態で長い時間密閉されると、皮膚は浸軟を生じます。いわば、尿で湿布をしてしまうような状態になっています。浅い褥瘡であっても治りにくくなっていきます。 上記の図は、褥瘡の深さについて、「NPIAP分類」と「DESIGN-R(※1)2020」を比較し、まとめたものです。 赤線部分が浅い褥瘡と深い褥瘡を分ける境界線です。ただし、浅い褥瘡であっても、適切なケアが行われないと治癒までの期間は長くなります。 >>関連記事写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 褥瘡の評価/セミナーレポート前編NPIAP分類とDESIGN-R2020について解説しています。 創辺縁部に問題がある褥瘡のケア 創辺縁部に問題がある褥瘡のケアでは、浸軟を防ぐ工夫も必要になります。以下の写真は、使用した外用剤に含まれる水分、および滲出液による浸軟が見られる褥瘡です。 壊死組織の自己融解のためにスルファジアジン銀クリームを使用しましたが、同薬剤は乳剤性基剤であることから水分が多く、さらに壊死組織が融解する過程でも滲出液が多くなります。こういうケースで必要なのが、創周囲の皮膚に油性の撥水クリームや白色ワセリンなどを薄く塗っておくこと。水分から創辺縁部の皮膚を守るケアをプラスするとよいでしょう。 創辺縁部に問題がある褥瘡の具体例とケア方法 最後に、写真で具体例をご紹介します。以下の写真は、いずれも滲出液が非常に多く出ているケースになります。 ここで「滲出液が多いから」とガーゼを必要以上に厚くしてしまったり、密閉性の高いパッド類を使用すると、創部の圧迫や創周囲の浸軟を起こします。 以下の写真は、そうして創周囲の皮膚が浸軟した褥瘡です。 創周囲皮膚の浸軟・肥厚・表皮の巻き込みは、褥瘡を治りにくくする大きな要因です。これらを予防するためには、外力・栄養ケアや洗浄・保湿・保護のスキンケアなどを実践しましょう。 * * * 在宅での治りにくい褥瘡に対するケアを考える際には、難治化している要因を多面的に分析し、見極めることが大切です。褥瘡を正しく評価し、利用者さんやご家族と一緒にその家でできる最善のケア方法を見つけていただければと思います。 ※1 DESIGN-Rは、一般社団法人日本褥瘡学会の登録商標です。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

【学会レポート】第13回日本在宅看護学会学術集会
【学会レポート】第13回日本在宅看護学会学術集会
特集
2024年3月26日
2024年3月26日

【学会レポート】第13回日本在宅看護学会学術集会 「在宅看護、すぐそばに在る」

2023年11月18・19日と2日間にわたり、クロス・ウェーブ船橋(千葉県船橋市)にて「第13回日本在宅看護学会学術集会」が対面・オンラインのハイブリットで開催されました。学術集会長は、東京医療保健大学教授・清水準一氏。学術集会テーマは「在宅看護、すぐそばに在る」です。聴講したNsPace(ナースペース)編集部が学会の模様をレポートします。 テーマは在宅看護へのアクセシビリティ 学会冒頭の学術集会長講演の中で清水氏が訴えたのは、在宅看護へのアクセシビリティの重要性。いまだに在宅看護にアクセスできない方は多く、地理情報システム(GIS)活用の有効性や、地理的関係を考慮した需要の分析・把握していく必要性、若い世代が離脱せず、シニア世代がアクティブに働ける環境づくりの重要性などが語られました。 シンポジウム・教育講演報告 数多くの演目がありましたが、シンポジウム(公開討論会)と教育講演について、編集部がピックアップしてレポートします。 『在宅看護専門看護師の誕生、役割の充実から今後の展望を考える』 座長:鹿内あずさ氏、長内さゆり氏 シンポジスト:河原加代子氏、長内さゆり氏、岩本大希氏 高齢者の医療・介護の需要が増大し、在宅看護への社会的ニーズが高まる中、2012年に誕生した在宅看護専門看護師の役割が重要になってきています。在宅看護専門看護師に求められる6つの役割は「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」とのこと。これに加え、地域住民や関連業界から信頼を得るためのPR(Public Relations)や、「最期まで安心して暮らせるまちづくり」への取り組みの必要性にも言及されました。地域共生社会の段階で住民同士が気にかけ合う関係性づくりや、その仕掛けをつくることも期待されており、在宅看護専門看護師は今後の社会において不可欠な存在であると感じました。(編集部I) 『看護師として「遊ぶように働く」ための業務効率化とテクノロジー活用』 座長:吉江悟氏 シンポジスト:藤野泰平氏、宮武晋治氏、大田章子氏 少子高齢化社会において訪問看護のニーズが増加する一方、その担い手が減少していることの解決策を追求すべく、業務効率化、テクノロジー化の必要性について議論されました。効率化が現実となれば、ケアを届けること、磨くことに時間をかけられます。また、アウトソーシングの需要が高まり、外部のリソースやノウハウを活用する動きについても注目。生成AIの活用事例が挙げられ、テクノロジーを活用しながら「遊ぶように働く」ことが、担い手の負担軽減につながる可能性があるのだと学ぶことができました。(編集部I) 『離島・過疎地域におけるICTを利用した遠隔死亡診断と看護』 講師:尾崎章子氏、座長:吉原由美子氏 医療にアクセスしづらい地域における遠隔死亡診断に関する教育講演でした。講演内では、「最期は島の土にかえりたい」と希望する島民は少なくないということ。しかし、本土の病院に移って最期を迎える方が多く、その願いは叶えられにくい現状にあることが共有されました。離島では、円滑に死亡診断書を交付できないことが理由で、火葬できなくなるおそれもあるとのこと。このような状況を踏まえて策定されたのが「ICTを利用した死亡診断書等ガイドライン」。このガイドラインを正しく運用するためには、医師の死亡診断をサポートする看護師が制度について正しく理解することが重要とのことでした。(編集部I) 交流集会報告 続いて、交流集会についてもピックアップしてご紹介します。 『難病療養者の災害の備えについて 防災用品を実際に体験してみよう!』 企画:今福恵子氏 ほか 本集会では、災害への備えに関する調査結果や実践内容の共有、防災用品の体験等が行われました。災害対策用のマニュアル作りや訓練が重要であること。そして、日々利用者のアセスメントを行う看護師は、災害時に状況を推測して適切な対応を行う能力を持つ重要な存在であることが示唆されました。防災グッズの体験については、「意外に力がいる」「大きな音がする」など、試さなければわからない気づきが多くありました。参加者の方々も、自身の事業所の災害対策に活かそうと熱心に体験する様子がみられました。(編集部N) 『BCP―作った?使った?よかった?』 企画:日本在宅看護学会 業務委員会 BCPを策定した日本在宅看護学会 業務委員会の方々より、各事業所のシミュレーションや訓練の実例が発表されました。備蓄の量やそれにかかる経費など、具体的な話に踏み込んで情報共有されました。災害を経験された方からは、「持ち運び可能なマニュアル」が必要というお話も。こうした場で知見が共有されることで、災害時の状況や対応を具体的に想定でき、「自分事」として捉えやすくなる貴重な場だと感じました。(編集部N) 『訪問看護事業所におけるBCP(事業継続計画)とBCM(事業継続マネジメント)』 企画:石田千絵氏 ほか NsPaceの記事([1]そもそもBCPって何だろう?)でご執筆いただいた石田千絵氏をはじめ、訪問看護BCP研究会によるBCP・BCM策定に関するノウハウが発表されました。BCPのみならず、BCMも作る必要があること、具体的なフォーマットや地理情報システムの使い方などにも言及。2024年4月の義務化に向けての実践的な解説がありました。今後特に注目すべき課題であることもあり、参加者の方々は熱心に聞き入っていました。(編集部F) 『新卒訪問看護師を「活かし・育てる」人材育成を考える』 企画:岡田理沙氏 ほか 訪問看護師の人材育成の研究をされている中村順子氏による講演や、参加者との意見交換などが行われました。課題が多いと言われている新卒訪問看護師の人材育成。「教育」を意識するよりも「面白さを分かち合える仲間になる」という気持ちを強く持つことで、結果的によい人材育成に繋がるという示唆がありました。参加者の新卒訪問看護師さんからは、「次は自分が先輩として寄り添いたい」という声も聞かれました。(編集部F) 参加者・受賞者・学術集会長のコメント 学会の参加者、主催者等のコメントもご紹介します。 情報交換会 参加者の声 1日目の終わりに行われた「情報交換会」では、登壇者や聴講していた訪問看護師・企業など、多様な方々によって情報交換が行われました。参加者の中には、訪問看護ステーションの立ち上げを考えている若手看護師も。「登壇者や参加者には若い訪問看護ステーション管理者の方もいて、勇気づけられました。情報交換会も有意義で、2日目にも情報交換会がほしいくらいですね」との感想コメントをいただきました。 学術集会賞 受賞者コメント 閉会式では、一般演題(口演・示説)からの表彰も行われました。「学術集会長賞」を受賞したのは、野口麻衣子(東京医科歯科大学)氏、山花令子氏、砂田純子氏の「専門性の高い看護職による訪問看護師への遠隔相談の試行と実用可能性の検討」でした。野口氏のコメントをご紹介します。 学術集会長賞をいただき、本当に嬉しく思っています。専門性の高い看護職による訪問看護師への遠隔相談、その思考と実用可能性の検討について発表し、その後も耳を傾けてくださった皆さまとお話する機会を持つことができました。遠隔相談の試行時には皮膚・排泄ケア認定看護師さんとがん看護専門看護師さんにご協力いただいたのですが、ニーズが多い精神科・小児科などでの実施や自治体とのコラボレーションについての示唆もいただきました。この領域への「期待」として受け取っています。 学術集会長コメント 最後に、学術集会長・清水準一氏(東京医療保健大学)のコメントをご紹介します。 学会に集まった皆さまは、現場においてさまざまな悩みを抱えているかと思います。今回の学会を通じて、共感することや、新たなアイデアを得ることがあったはず。それこそ学会の原点となるものです。研究と研究を戦わせ、自分のやり方を洗練させていくという流れこそ、ひとつの大きな醍醐味といえるのではないでしょうか。そして、若い方々の新しい発想・取り組みが多いことに感激しました。コロナ禍での停滞を乗り超え、今後大きく発展していくという期待を持ちました。 また、コーディネーターとして秋山正子さんをお招きし、故 村上紀美子さんの追悼ができたことも、研究とは異なる意味合いで印象的でした。ひとつの場所に集まることで、想いを共有できることを実感しました。 * * * 本学会では、多くの方々が集まって積極的に議論を交わし、在宅看護の課題に向き合う場となっていました。最新の実践状況や取り組みも共有し、新たな気づきを得た方も多かったようです。2024年の第14回日本在宅看護学会学術集会のテーマは「可能性がインフィニティ(∞)在宅看護」。次の学会にも注目していきましょう。 取材・編集:NsPace編集部執筆:倉持 鎮子

HOT・NPPV・HFNC・CPAPの特徴を解説。在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法の基礎知識
HOT・NPPV・HFNC・CPAPの特徴を解説。在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法の基礎知識
特集
2024年3月26日
2024年3月26日

NPPV・HFNC・CPAPの特徴を解説。在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法の基礎知識

本シリーズでは、安心して確実な在宅呼吸ケアを行えるようになるために、ケアのポイントはもちろん、機器のしくみや管理方法、トラブル対応にいたるまで、酸素療法や人工呼吸療法のエキスパートがわかりやすく解説。今回は、HOT(在宅酸素療法)と在宅人工呼吸療法について、NPPV(非侵襲的陽圧換気)やTPPV(気管切開下陽圧換気)、HFNC(ハイフローセラピー/高流量鼻カニュラ酸素療法)、CPAP(シーパップ療法/持続陽圧呼吸療法)も含め各療法の特徴を概観していきます。 増えてきた慢性呼吸不全に対する在宅医療 近年では疾患があっても住み慣れた自宅や施設で病院と同じような医療的ケアを受けて過ごしたいという患者さんが増加しています。そのような患者さんの意思や希望を尊重し、できるだけ入院の機会や期間を減らして患者さんやご家族のQOL向上をめざすのが在宅医療です。慢性呼吸不全をきたして在宅医療を利用する患者さんも多く、その原因となる主な呼吸器疾患は次に示すとおりです。 慢性閉塞性肺疾患(COPD):在宅医療を受ける慢性呼吸不全の中でも最も多くみられる疾患の1つ。比較的長期間にわたって徐々に進行することが多い間質性肺炎:労作時にかなりの高流量酸素投与が必要になるケースが多い肺結核後遺症:近年は罹患率や外科的治療の減少などにより少しずつ減少傾向にある肺がん:原発性や転移性の肺がんは在宅療養期間が上記の疾患と比較して短いものの主要な疾患の1つ神経筋疾患:非常に長期間の在宅療養となる これらの疾患患者さんに対して行われている各治療法を概説します。 在宅酸素療法とは 在宅酸素療法(home oxygen therapy:HOT)は、主には慢性呼吸不全状態の疾患に対する酸素を吸入する治療として最も頻繁に行われています。対象疾患はCOPD、間質性肺炎、肺結核後遺症、それに肺がんや慢性心不全などの患者さんにも適応があります。図1は2010年の報告にはなりますが、在宅酸素療法を導入している患者さんで最も多い疾患はCOPDで全体の45%を占めていました。 図1 在宅酸素療法の疾患別内訳 日本呼吸器学会肺生理専門委員会,在宅呼吸ケア白書COPD疾患別解析ワーキンググループ編.「在宅呼吸ケア白書 COPD(慢性閉塞性肺疾患)医療担当者アンケート調査」,日本呼吸器学会,2010.をもとに作成 適応基準 適応基準は、安静時の室内空気吸入下で動脈血液ガスの酸素分圧(PaO2)が55Torr以下、または60Torr以下で睡眠時や労作時に著しい低酸素血症をきたす場合です。 使用する酸素供給装置 在宅酸素療法には主に「酸素濃縮器」を使用する方法と「液体酸素」を使用する方法があります。酸素濃縮器は空気から窒素を吸着して約90%以上の酸素濃度に濃縮する装置です。3L/分程度から10L/分ほどの高流量の酸素を流せるものや、通常の設置型と充電して持ち運んで使用できるポータブルタイプなど、さまざまなものが提供されています。 液体酸素は、自宅に液体酸素の入った大きなタンクを設置し、酸素チューブを介してタンクから直接酸素を吸入する方法であり、外出時には小型の容器に液体酸素を移して持ち運ぶことができます。 使用するデバイス 在宅酸素療法で使用されるデバイスで最も一般的なものは鼻カニュラです。これは比較的手軽に負担なく装着できますが、患者さんの一回換気量や呼吸回数の影響を受けやすく、同じ酸素流量でも患者さんの呼吸状態により吸入気の酸素濃度が異なってしまうことに注意が必要です。また6L/分以上の流量では鼻粘膜への刺激が強くなるため、一般的には5L/分までの流量となっています。より高流量の酸素投与が必要な場合にはリザーバー付きカニュラや開放型酸素吸入システムを使用することもあります。 酸素流量の設定 酸素流量の設定は、一般的にはPaO2≧60〜80Torr(SpO2 90〜95%)を目標とします。しかし、COPDや肺結核後遺症などにしばしば認められる慢性II型呼吸不全、つまりCO2貯留傾向にある患者さんに対しては、換気状態を維持してCO2ナルコーシスを避ける必要があります。やや低めの目標設定が必要となるため、酸素流量や吸入デバイスの選択にも注意を要します。 在宅人工呼吸療法とは 在宅人工呼吸療法(home mechanical ventilation:HMV)とは、在宅で人工呼吸器を使用して換気の補助を行う治療法です。HMVにはNPPVとTPPVの2つの方法があります。 在宅NPPVとは NPPVとは「non-invasive positive pressure ventilation」の略で、非侵襲的陽圧換気を意味します。 慢性呼吸不全患者さんのうち、呼吸困難や下腿浮腫などの肺性心の兆候があり、低酸素血症に加えて慢性的なCO2貯留傾向を示す患者さんに対しては、継続的な補助換気(人工呼吸療法)が必要となる場合があります。その中で導入が比較的容易で侵襲度が低いNPPVは第一選択であり、気管内挿管や気管切開をすることなくマスクを介して換気を行うことができます。 マスクは鼻マスクや口鼻マスク(フルフェイスマスク)を使用します。徐々に病状が進行してきた安定期(慢性期)に導入する場合と、II型呼吸不全の増悪によって入院時にNPPVを導入してからそのまま在宅に移行する場合などがあり、導入基準は疾患によって少し異なります。CO2貯留の程度と低酸素血症、増悪の頻度などによって導入が検討されます。実際に導入されている対象疾患はCOPD、肺結核後遺症、神経筋疾患が主なものとなります。 一方で自発呼吸が弱い、もしくはない場合や認知症で協力や理解が得られにくい場合、顔面の外傷、皮膚障害などでうまくマスク装着ができない患者さんに対しては適応外となってしまいます。 在宅TPPVとは TPPVとは「tracheostomy positive pressure ventilation」の略で、気管切開下陽圧換気を意味します。気管を切開し、確実に空気を肺に送り込むことができるので、自発的な呼吸が十分できない場合に導入されます。 以前は病院で気管内挿管による人工呼吸管理を受け、抜管が困難となった症例に対して気管切開を施行し、そのまま在宅に移行していたケースが多くみられました。NPPVが保険適応となってからは大多数の症例が在宅NPPVで対応できるようになってきたため、在宅TPPVの患者さんの数は減少しています。 しかし、筋力低下や球麻痺が進行する神経筋疾患患者はNPPVでは対応することができず、TPPVを施行せざるを得ません。したがって現在では在宅TPPVを施行している患者さんの8割近くは筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)や筋ジストロフィーといった疾患が主体となっています。 NPPVとTPPVの違いについては、表1に簡単にまとめました。 表1 NPPVとTPPVの比較表 *【VAP】ventilator-associated pneumonia:人工呼吸器関連肺炎 在宅ハイフローセラピーとは 在宅ハイフローセラピーとは在宅で行う「高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula oxygen therapy:HFNC)」のことです(図2)。 通常の鼻カニュラであれば6L/分以上の流量で鼻粘膜への刺激が強くなり、FiO2(吸入気酸素濃度)の上昇はあまり期待できません。より高流量の酸素投与を行うためには、ほかのデバイスへの変更を要しますが、マスクは口元まで覆われるため飲食がしにくく、患者さんが閉塞による不快感を訴えることもしばしばです。 一方、ハイフローセラピーは、専用の鼻カニュラを介して加温加湿した高流量の空気と酸素の混合ガスを投与する方法の1つで、さらに高流量の酸素投与が可能になります。メリットは次のとおりです。 口を覆わないことによる快適性PEEP*効果が得られる解剖学的死腔のウォッシュアウト一定の酸素濃度を投与できる十分な加温加湿による気道クリアランスの維持 など 在宅ハイフローセラピーは病院内での使用とはやや異なり、今のところ適応はPaCO2が一定の範囲のCOPD患者さんに限られています。 *【PEEP(Positive End Expiratory Pressure)】気道内圧が低下する呼気の終わりにも一定の陽圧をかけて、呼気時に肺胞や末梢気道がつぶれないようにすること 図2 在宅ハイフローセラピーの装置の例と鼻カニュラの装着イメージ (画像提供:Fisher & Paykel Healthcare 株式会社) (画像提供:レスメド株式会社) CPAPとは CPAPとは「continuous positive airway pressure therapy」の略で、「シーパップ療法」、「持続陽圧呼吸療法」と呼ばれます。 主に閉塞性睡眠時無呼吸に対する代表的な治療法です。鼻マスクもしくはフルフェイスマスクを装着して気道内に陽圧をかけて気道の閉塞を防ぐことにより、睡眠時に生じる無呼吸を抑制して低酸素血症を改善します。日中の眠気をはじめとした自覚症状の改善や合併症の予防・改善、生命予後の改善、交通事故リスクの軽減、心疾患イベントの減少などの効果が認められています。 CPAPはほかの治療法とはやや異なり、比較的若く、ご自身で機器の管理が可能な患者さんに導入されるケースがほとんどです。ただし、導入された患者さんが高齢になった場合、訪問看護で対応する必要性が多くなることが考えられます。 * * * ここまでご紹介してきた呼吸器関連の治療法は、どれも訪問看護で対応する必要性があるものばかりです。各治療法の位置づけは図3のようなイメージです。また、訪問看護に関連する診療報酬(在宅療養指導管理料)を表2にまとめましたので、こちらもご参照ください。 次回以降の連載で、各治療法についてのさらに詳しい解説や患者さんの観察・アセスメント、治療継続のためのポイントなどについての看護師、医師、臨床工学技士といった専門的な立場からお話しする予定です。より理解を深めていただき実際の現場で安心して確実なケアを行っていただけることを願っております。 >>シリーズ一覧はこちら「訪問看護と酸素・人工呼吸療法」https://www.ns-pace.com/series/hot-hmv/ 図3 呼吸器関連の治療法の位置づけ HMVの実施方法にはTPPVとNPPVがある。HFNCはNPPVとHOTの中間的な治療法として位置づけられている。睡眠時無呼吸症候群の治療に使われるCPAPは人工呼吸療法に含まれない。*1【HMV】home mechanical ventilation:在宅人工呼吸療法*2【TPPV】tracheostomized positive pressure ventilation:気管切開下陽圧換気*3【NPPV】noninvasive positive pressure ventilation:非侵襲的陽圧換気*4【HFNC】high flow nasal cannula:高流量鼻カニュラ酸素療法*5【HOT】home oxygen therapy:在宅酸素療法*6【CPAP療法】continuous positive airway pressure therapy:シーパップ療法、持続陽圧呼吸 表2 在宅での呼吸管理に関連する在宅療養指導管理料 監修・執筆:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 呼吸器内科 主任部長呼吸ケアセンター センター長編集:株式会社照林社

食中毒の原因・応急処置・注意点を解説
食中毒の原因・応急処置・注意点を解説
特集
2024年3月26日
2024年3月26日

【食中毒予防】梅雨の時期は要注意!食中毒の原因・応急処置・注意点を解説

細菌やウイルス、有害物質等が付着したものを食べることで、下痢・嘔吐などの症状が出る食中毒。梅雨の時期は高温多湿により食中毒の原因菌が増えやすいため、より一層の注意が必要です。特に小さな子どもや高齢者は免疫力が低いため、食中毒が重症化するリスクが高いとされています。 今回は、梅雨の時期に特に気を付けたい食中毒の原因や応急処置、注意点などについて解説します。訪問看護の現場でも、利用者さんやそのご家族から食中毒について質問されることもあるでしょう。その際に答えられるように、食中毒について基本的な知識を再確認しておくことをおすすめします。 食中毒の原因と分類 食中毒の原因は、ウイルスや細菌、植物をはじめとした自然毒、寄生虫、化学物質などさまざまですが、大半を占めるのが「ウイルス性食中毒」と「細菌性食中毒」です。 ウイルス性食中毒は、ウイルスが付着している食品や人の手を介して感染します。主な原因はノロウイルスです。細菌性食中毒には、サルモネラ菌やカンピロバクターなどが増殖した食品を摂取することによって生じる「感染型」、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などの細菌から産生された毒素を食品とともに摂取することによって生じる「毒素型」に分けられます。 そのほかフグ毒や貝毒、毒キノコ、ジャガイモの芽といった「自然毒食中毒」、農薬やヒスタミン、油脂の酸敗といった「化学性食中毒」、魚介類、生肉、野菜に寄生している虫による「寄生虫」に分類されます。 食生活において、特に注意が必要なのは細菌性食中毒でしょう。自然毒についても、十分な知識なく有毒な山野草を口にすることで食中毒になるケースがあるため気を付けたいところです。 食中毒になりやすい食べ物・飲み物 どのような飲食物でも食中毒になる可能性がありますが、特に次のようなもので多数発生しています。 飲みかけのペットボトル 飲みかけのペットボトルには、人の口腔内や鼻腔、皮膚などに存在する黄色ブドウ球菌が付着しています。短時間で飲みきるのであれば問題ありませんが、時間を置いたり細菌が増えやすい高湿度な環境に放置したりすると、食中毒になるリスクが高まります。これは、食べかけのお弁当やおにぎり、パンなどにもいえることです。また、製造過程で黄色ブドウ球菌が付着し、それを食べた人が食中毒になる場合もあります。 黄色ブドウ球菌が作る毒素は強力で、加熱では除去できません。食中毒になった際の症状は吐き気や腹痛などで、汚染された食品を口にしてから30分~6時間程度で発症します。 鶏肉等の生焼け肉 鶏肉や豚肉、牛肉などの生焼け肉には、サルモネラ菌やカンピロバクターなどが付着しています。牛肉は表面にしか細菌が付着していないため、中まで火が通っていなくても問題ないとされています。しかし、調理工程で細菌が付着するリスクもあるため、食中毒を防ぐという観点からは中まで十分に火を通すことが大切です。 食中毒になった際の主な症状は、食後数時間から数日後に現れる吐き気や腹痛、下痢、発熱などです。 生野菜 生野菜には、腸管出血性大腸菌のO157やO111などが付着している可能性があります。また、十分に加熱されていない肉に細菌が付着しており、生肉に触れた手や包丁、まな板などが生野菜に触れることが原因で食中毒になるケースも少なくありません。細菌は十分な加熱によって死滅するため、うっかり生肉を触った手で生野菜に触れた場合は加熱調理しましょう。 腸管出血性大腸菌による食中毒は、食後12~60時間に激しい下痢や血性下痢(下血)が腹痛とともに現れます。重症化によって亡くなるケースも珍しくないため、より一層の注意が必要です。 魚介類 十分に加熱していない魚介類には、ノロウイルスや腸炎ビブリオ菌、貝毒等による食中毒のリスクがあります。ノロウイルスによる食中毒は冬季に流行すると知られていますが、ウイルス自体は1年を通して存在しており、夏場にも発生しています。なお、貝毒は熱に強く、十分に加熱しても無害にはなりません。貝毒は2~4月、6~8月に発生しやすいため、この時期を中心に国によって貝毒検査が行われています。 ノロウイルスは牡蠣やアサリ、シジミといった二枚貝、腸炎ビブリオ菌は魚介類全般に見られます。いずれも熱に弱いため、十分に加熱することで食中毒を防ぐことができます。ノロウイルス食中毒になった場合は、食後1~2日程度で下痢・吐き気・腹痛・発熱などの症状が現れます。 有毒植物 有毒植物については、厚生労働省が定期的に注意喚起しています。食用と間違えやすい有毒植物には、ニラと似たスイセン、ギョウジャニンニクと間違えやすいバイケイソウ、ジャガイモやタマネギと似たイヌサフラン、サトイモと似たクワズイモなどがあります。 嘔吐や下痢のほか、頭痛やめまい、手足のしびれなど全身に症状が現れます。イヌサフランについては重症の場合は死亡することもあるため、より一層の注意と速やかな対処が必要です。 食中毒の応急処置 食中毒を疑う症状が現れた場合は、脱水症状を防ぐために水分を補給しましょう。また、吐き気や嘔吐がある場合は、食べ物が気道に詰まらないように横向きに寝かせます。下痢止めは、食中毒の原因菌やウイルスの排泄を阻害し、症状を悪化させるおそれがあるため、自己判断で使用してはいけません。また、解熱鎮痛剤も同様です。 激しい嘔吐や呼吸困難、意識がもうろうとする、血便や激しい下痢が続くなどした場合は、医療機関を受診しましょう。 食中毒を防ぐために普段から注意しておくこと 食中毒を防ぐために、利用者さんには以下のような行動を奨励しましょう。 手洗いを徹底する食べかけのものは冷蔵や冷凍はせず、食べきるか廃棄する食材の賞味期限や保存方法を守る劣化や変色が見られる場合は適切に処分する食品を再加熱する際は、十分に加熱する 上記の中でも、食べかけのものを保存するケースに気をつけましょう。特に認知症の方は冷蔵庫にいつから入れていたものかわからないものを口にしてしまうことがあります。「もったいない精神」によって変色しているものを口にする可能性もあるため、注意しておきましょう。 * * * 食中毒は、不衛生な調理方法をした場合だけでなく、保存方法の問題や不十分な再加熱によっても起きる可能性があります。また、誤って有毒植物を口にしてしまうこともあるでしょう。食中毒は身近なトラブルのため、梅雨の時期はより一層の注意が必要です。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇厚生労働省.「食中毒」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html2024/3/21閲覧〇農林水産省.「食中毒の原因と種類」https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/afp1.html2024/2/12閲覧〇日本訪問看護財団.「有毒植物による食中毒防止の徹底について 」https://www.jvnf.or.jp/newinfo/2023/230413rouken-tsuchi.pdf2024/2/12閲覧

治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針 ~
治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針 ~
特集 会員限定
2024年3月19日
2024年3月19日

治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針~【セミナーレポート前編】

2023年12月15日(金)に開催したNsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「治りにくい褥瘡のケア~在宅で治癒を目指す方法~」。在宅創傷スキンケアステーションの代表で、皮膚・排泄ケア認定看護師でもある岡部美保さんを講師に迎え、治りにくい褥瘡をケアする際に役立つ知識やノウハウを教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、低栄養によって治癒が進まない褥瘡に対するアプローチや創傷治癒の基本的指針についてまとめます。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】岡部 美保さん皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 「治りにくい褥瘡」とは 治りにくい褥瘡の代表例としては、以下の5つが挙げられます。 慢性的な低栄養状態複数の褥瘡を有している創部やポケットのサイズが大きい局所に臨界的定着疑いがある創周囲の皮膚(創辺縁)に浸軟や肥厚、表皮の巻き込みなどの問題がある また、上記の褥瘡が生じる原因には以下のようなものがあり、褥瘡があるご本人の問題と、療養生活環境の問題の2つに分類できます。 >>関連記事褥瘡の基礎知識 発生原因・予防的スキンケア・在宅療養生活でのポイント褥瘡の基礎知識についてはこちらをご参照ください。 慢性的な低栄養状態があるケース まずは、「慢性的な低栄養状態」への対応方法を見ていきましょう。例えば、こちらは一人暮らしの高齢者男性の冷蔵庫、および食事の写真です。 冷蔵庫の中には、基本的に調理不要の食べ物が入っており、食事内容を見ると、栄養バランスが偏っていることがわかりますよね。エネルギー摂取量も不足しています。 このように低栄養の状態が続くと、以下の写真のような治りにくい褥瘡ができやすくなります。 栄養状態の評価方法 まずは現在の栄養状態を評価します。以下の簡易栄養状態評価表(MNA-SF)は、在宅で活用しやすい評価スケールでしょう。 ふくらはぎの周囲径と、資料右側のAからF2までの質問への回答があれば、BMI測定が難しくても栄養状態をスクリーニングできます。 褥瘡の治癒に必要な栄養素 以下の資料は、褥瘡の治癒を目指すにあたって必要なエネルギーとたんぱく質量、そして食材に含まれるたんぱく質量をまとめたものです。 褥瘡の治癒を促進するためには、1日あたり約1,600〜1,800kcal(体重45kg)のエネルギー摂取が推奨されています。また、たんぱく質は体重1kgあたり1.25〜1.5gが目標となっており、体重45kgで1,350kcalを摂取する方なら50〜70gになります。食材に含まれるたんぱく質量を参照すると、毎日必要量を確実に摂取することは難しい場合もあると思います。そのため、「目標値にできるだけ近づけられるような支援を目指す」という意識を持って看護や介護ができると良いと思います。 また、アミノ酸やビタミン類、微量元素を摂ることも重要なポイントです。とくに、褥瘡の治癒にはコラーゲンペプチドが非常に有効です。コラーゲンペプチドは、飲料やゼリータイプのものが市販されていますので、経口摂取の状態やお好みに合わせてお選びいただくことができます。 創傷治癒の基本指針 TIMEコンセプト 次に、創傷治癒の基本的な指針についても押さえておきましょう。創傷治癒遅延の要因を取り除き、創面の環境を整えて治癒を促進する「創面環境調整(wound bed preparation:WBP)」という概念として、「TIMEコンセプト」があります。TIME(タイム)とは次のスライドに示した4つの臨床的観察ポイントに合わせ、具体的対策が提示されています。 例えば、「活性のない組織または組織の損傷(Tissue non-viable or deficient)」が見られる場合は、デブリドマンによる壊死組織の除去を行うことで、創面の環境を整えます。「感染または炎症(Infection or inflammation)」が起こっている場合は、全身的な治療を含め、感染創に有効な外用剤などを用いて感染のコントロールを行います。「湿潤のアンバランス(Moisture imbalance)」があるときは、創面が乾燥したり、過剰に湿潤した状態にならないケアが大切です。創部の肉芽形成や上皮化に重要な細胞の増殖・遊走のためには適度な湿潤環境が重要です。「創縁の治癒遅延またはポケット(Edge of wound non advancing or undermined)」がある場合はポケットを縮小させるために正しい評価と治療が大切になります(詳細は後編参照)。 DESIGN-R2020に基づいた褥瘡ケア DESIGN-R(※1)2020も病院や訪問看護の現場で重要な褥瘡評価ツールとして利用されています。DESIGN-R2020はTIMEコンセプトと同じく、壊死組織を取り除き、肉芽形成をし、創の収縮を促すというステップで治癒を目指します。褥瘡が発生した場合、一つひとつの褥瘡をきちんと評価して、その褥瘡状態に合ったケア方法を考えることが大切です。 >>関連記事写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 褥瘡の評価/セミナーレポート前編DESIGN-R2020について詳しく解説しています。 「活性のない組織または組織の損傷」のケア例 ここで、TIMEコンセプトの「T」にあたる「活性のない組織または組織の損傷」の例をもう少し詳しく見てみましょう。 訪問看護の現場で行われるデブリードマンでは、スルファジアジン銀クリームを使用した自己融解的デブリドマンなどがあります。また、ブロメラインの軟膏を使った酵素的デブリドマンを行うケースもあります。水分を含んだ柔らかい壊死組織で覆われた創面などに有効です。肉芽組織が多い創面では、薬剤の持つたんぱく分解酵素の特徴から痛みや灼熱感を生じる場合がありますので、使用の際は注意が必要です。 なお、以下はDESIGN-R2020に基づいた在宅における褥瘡ケアの外用剤をまとめたものです。ケアに迷われた時のご参考になればと思います。 次回は、治りにくい褥瘡に対する具体的なケア方法に焦点を当てて解説します。 >>後編はこちら治りにくい褥瘡ケア/~代表例と具体的なケア~【セミナーレポート後編】 ※1 DESIGN-Rは、一般社団法人日本褥瘡学会の登録商標です。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

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