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利用者も看護師も幸せにする経営
利用者も看護師も幸せにする経営
インタビュー
2023年3月7日
2023年3月7日

先を見越した採用とオープン経営の重要性 【利用者も看護師も幸せにする経営】

0歳から高齢者の方まで幅広く介護保険や医療保険を利用しての訪問看護を提供する、機能強化型訪問看護ステーション、「レスピケアナース」。前編に引き続き、レスピケアナース設立者で管理者の山田真理子さんにお話を伺いました。 >>前編はこちら規模拡大への想いと理念浸透の秘訣 【利用者も看護師も幸せにする経営】 株式会社アイランドケア 常務取締役レスピケアナース 管理者 在宅看護専門看護師(2020~)山田真理子さん内分泌内科と血液内科の混合病棟に2年、呼吸器内科病棟に計5年ほど勤務。その後、人工呼吸器や患者教育に興味を持ち、在宅酸素や在宅マスク式人工呼吸器等を扱う企業で9年間訪問看護ステーションの管理者を務める。事業所設立を目指して2015年に独立。同年12月にレスピケアナース設立。 レスピケアナースの制度と戦略的採用 ─レスピケアナースでは土日祝日も安定してサービスを提供されていますが、各曜日や時間帯の人員バランスを調整するのは、大変ではありませんか? 家庭環境によっては「ほどほどに稼げればいい」という人もいますし、「たくさん働いて稼ぎたい」という人もいます。そういった希望を聞き、バランスを考えた上で採用することが大切です。「平日のみ希望」で入った方に「土曜日も働いてください」とお願いするのは、当然難しいでしょう。でも、あらかじめ「土曜日も働く前提」で採用していれば、あまり問題になりません。入職後に働き方の希望が変わることもありますが、ある程度余裕をもって人材を採用しているので、即座に人員不足にはならないようにしているんです。 一定の条件に希望が偏らないように人を集めること、先を見越した採用をしていくことで、バランス調整はしやすくなると思います。 ─レスピケアナースへの就職希望者には、どの年代が多いですか? そうですね、30代から40代が多いです。ほかに比べると、比較的若い年齢の人が集まっているかもしれません。今後は新卒の採用も増やしたいと考えており、学生向けのイベントも実施しています。 新卒採用を積極的に進めたい理由は、訪問看護に対して先入観のない人材のほうが、より効率的に教育できると思うから。私も病棟経験がありますが、病院特有の思考回路になると、それを切り崩して新たな感覚を構築するのは難しく、看護師当人が苦しむこともあります。学校で在宅看護論を習い、そのままレスピケアナースに就職してもらえば、本人もあまり苦労することなくスムーズに働けると思います。やるべきことがすっと頭のなかに入るというか。誰しも、経験を積めば積むほどそれまでの働き方を変えるのに苦労しますよね。入社してからのスキルアップが重要だと思いますので、専門知識は求めていません。 ─報酬制度については、何か意識されていることはありますか? スタッフのモチベーション維持を大事にしたいので、簡単に言うと「働いたら働いた分だけ稼げる環境」を整えています。例えば、土日祝日や夜間に働けば、当たり前ですがそのぶんの給与を支払います。土日祝や早朝夜間も働き、当番もするスタッフは、夜勤もこなす病棟看護師と同等程度はもらえるようなイメージです。 平日のみのスタッフと夜間・休日も働くスタッフが、「ちょっと給与が違う」程度ではモチベーションは維持できませんよね。目に見えて給与が上がり、「これだけ働いた甲斐がある」という実感を持てるように、と思いながら設定しています。 オープン経営で、スタッフも経営者視点に ─スタッフの皆さんへの報酬を支払うための利益確保は、どのようにされていますか? 訪問単価を上げていくために、特別管理加算がとれる利用者を確保してきました。自分自身の専門分野が呼吸ケアであり、在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法を行っている利用者が得意だとパンフレットなどで広報したり、関連の研究会や学会で成功事例を発表したりと工夫しています。ある程度戦略的な部分になりますが、機能強化型ステーションの制度ができたとき、「これは必ず取りに行こう」と考え、まずは「機能強化型2」を、次に「機能強化型1」を取りました。 さらに言えば、「よい看護をすれば事業所が儲かる。その儲けは自分たちに戻ってくる」というところを、みんなで分かち合いたいと思っています。これは採用面接のときから伝えていることですが、レスピケアナースの賞与は完全に利益に連動しています。赤字か黒字か、というところは本来経営者の視点ですが、スタッフにもその視点を持ってもらいたい。「黒字なら自分たちに還元される」ということであれば、満足度が上がります。多忙さが目に見える報酬として戻ってくれば、納得もできるでしょう。そんなふうにして、我々経営者と働くスタッフとが、一緒になってやっていければと思っています。 ─レスピケアナースでは、基本的に残業をしない方針と伺っています。余裕のある人員採用以外に、何か工夫されていることはありますか? 効率化のために、勤怠管理やカルテ、スケジュール表等をICT化(※)しています。これは設立当初から実践すると決めていたことで、行政からの助成金もいただきました。ICT化により直行直帰が可能になるので、わざわざカルテを取りに事務所に立ち寄る必要もありません。週に一度は、ZOOMで事例検討やカンファレンスなどをしていますが、集まるのはそれで十分だと思っています。 ※ICT化= Information Communication Technologyを取り入れること。PCやスマートフォンといったデジタル機器を導入し、情報を可視化。より管理しやすくすることで、効率的に業務を行う。 ICT化によって、訪問単価、売上人件費率、常勤換算数、どこから紹介があったか、訪問件数などのデータも、グラフ化してスタッフの誰もが見られるようにしています。グラフを読む能力となるとまた別問題なのですが、情報をオープンにすることで、さきほどの「スタッフの経営者視点」にもつながっていくと思っています。 ─データの共有によって、具体的にはどんなアクションが生まれるのでしょうか。 例えば、どんな流れで利用者が増えるのかわかれば、利用者を増やすために何をすればいいのかのアイディアも浮かびます。レスピケアナース内の小児チームが「〇〇病院からの利用者紹介が減っている様子」から「病院に配るパンフレットを刷新しよう」といった動きをしていましたが、そういった具体的な動きに繋がるんです。 また、スケジュール表や常勤換算数・訪問数等を見れば、どの部分にスタッフが足りないか、余裕があるなら利用者をどれだけ増やせるか、といったこともスタッフ自身が判断できます。まずは適切な情報を見せ、それぞれが考えていい環境をつくることが大事ですね。 組織に「余裕」をつくり、学んだことを実践 ─風通しのよい職場づくりのために、スタッフの皆さんに特に伝えていることはありますか? 「失敗してもいい」「リカバリーできない失敗はない」ということでしょうか。例えば、失敗したことの報告に対して、私がそれを責めることはありません。報告さえしてくれれば、必ず何かしらの形でフォローする。リカバリーする。だから、うちのスタッフはたとえヒヤリハットの報告があっても嫌がらないんです。むしろ、「報告すると感謝されるから、どんどん報告する」と言っていますね。自分の発言が業務改善に繋がりますから、「自分はこの職場に必要とされているんだ」という気持ちにもなると思います。 ─最後に、組織をつくる上で重要視すべきことはなんだと思いますか? これからマネジメントに取り組む方々に向けてお伝えしたいことがあればお願いします。 大切なのは、余裕をつくるということかなと思っています。「忙しくて何もできない」という状況をつくらないことが大切です。レスピケアナースでは、オンとオフをきっちり分ける、長時間勤務になった翌日は勤務時間の調整を行う、年に1回はリフレッシュ休暇を取るなどのルールを設け、それが実現できるスタッフ数と利用者数のバランスを考えて、採用と新規利用者の受け入れを行っています。オンとオフをきっちり分け、しっかり休日を確保するには、チームワークが大事で、一人で担当の利用者に対峙せず、複数のスタッフが一人の利用者に訪問できることが重要です。しかし、レスピケアナースでも立ち上げ1~2年は忙しくて余裕がない時期もありました。今どうしても忙しい人は、多少無理をしてでも勉強会に参加して発想の転換をしたり、仕事を仲間と分担したりすることが大切です。 レスピケアナースでは、小児ケア、医療安全、呼吸不全のワーキングチーム、ACP看取りチームと、4つのチームがあり、それぞれ勉強会等も企画してくれます。自分自身が主体にならなくても、スタッフたちが動かしてくれるようなしくみづくりも重要でしょう。 そういったことも踏まえると、最初の話に戻りますが、やはり、ある程度の規模の大きさは必要ですね。「規模を大きくすること」そのものが目的だったわけでなく、そういった余裕のある働き方を可能にするために、立ち上げ時から規模を大きくすることを重要視し、目標としていました。SNSやブログでもその想いを発信していたから、より具体的に方向性が見えたのかもしれません。 私は別に、経営者としてオリジナリティがあるわけじゃないんです。きっと、私と同じことを誰かが言っています。私はセミナーに参加するのも好きなんですが、いいお話を聞けば「自分もやってみよう」と素直に思う。「そんなことはできない……」ではなく、たぶんやれるな、じゃあどうすればいいのかな、と前向きに考え、実践することが重要なのだと思います。「現状を打破したい」というとき、情報取集はとても大事ですからね。ぜひ、新たな情報に触れ、固定概念を持たずにチャレンジしてほしいと思います。 ─ありがとうございました。 執筆: 倉持鎮子取材: NsPace編集部

規模拡大への想いと理念浸透の秘訣 【利用者も看護師も幸せにする経営】
規模拡大への想いと理念浸透の秘訣 【利用者も看護師も幸せにする経営】
インタビュー
2023年2月28日
2023年2月28日

規模拡大への想いと理念浸透の秘訣 【利用者も看護師も幸せにする経営】

福岡市の「レスピケアナース」は、0歳児から高齢者の方まで幅広く介護保険や医療保険を利用しての訪問看護を提供する、機能強化型訪問看護ステーション。医療依存度の高い方向けの看護を得意としています。設立者で管理者の山田真理子さんに、ご自身が目指してきた訪問看護ステーションの在り方や、順調に規模を拡大してきた秘訣を伺いました。 株式会社アイランドケア 常務取締役レスピケアナース 管理者 在宅看護専門看護師(2020~)山田真理子さん内分泌内科と血液内科の混合病棟に2年、呼吸器内科病棟に計5年ほど勤務。その後、人工呼吸器や患者教育に興味を持ち、在宅酸素や在宅マスク式人工呼吸器等を扱う企業で9年間訪問看護ステーションの管理者を務める。事業所設立を目指して2015年に独立。同年12月にレスピケアナース設立。 前職での違和感と、成し遂げたかった想い ─早速ですが、レスピケアナース設立のコンセプトから教えてください。 「看護職」というと技術や経験が注視されがちですが、私は物事の受け止め方、看護観・ケア観、ビリーフ(思い・信条)に共感できるスタッフであることを重視しています。仕事から学び、学ぶことが仕事だという考えに共感してくれる方々と働くために、レスピケアナースを設立しました。看護師2.5人と、事務・アルバイトさんのみの小さな事業所からのスタートでしたが、現在は順調に人員と売上の規模を拡大しており、多くの方々に訪問看護をご提供しています。 ─訪問看護ステーション設立以前の働き方について教えてください。現在の山田さんの指針に繋がっているご経験などもお伺いしたいです。 前職では、大企業が運営する訪問看護ステーションで9年間、管理者を務めていました。そこで感じたのは、大きな組織のなかで自分ができることの限界です。例えば、人員を増やすにしても、欠員補充しかできず、マッチする人材を選ぶことができませんでした。 訪問看護ステーションは、当然ながら看護師がいなければ何もできませんから、「不足してから補う」という方法は合いませんし、現場が疲弊してしまいます。また、ミスマッチな人材が加わると現場が混乱し、お互いに不幸なのです。次第に「私に人事裁量権をもらえたら、もっとうまく運営できるのに、成果が出せるのに」という気持ちが強くなっていきました。 それから、自由に発言できないというのも組織にいるからこその制限ですね。自分自身が強い想いを持っていても、あくまでも会社の方針と齟齬がない形でしか語れません。「私自身」がどんなことから影響を受けどうしたいか、といったことも言えない。そこから飛び出したいと思いましたし、愚痴や文句を言う前に、自分で理想の事業所をつくるべきだと思いました。 現在は余裕のあるうちに人材を採用する体制を作っているので、予期なく欠員が出ても残された従業員が疲弊しづらくなっています。また、SNSやブログで自分の想いを発信できるので、共感してくれた方がレスピケアナースに来てくれるケースも多くありますね。 ─山田さんの経営思想は、ナイチンゲールからも影響を受けていると伺っています。 はい。20年ほど前ですが、ナイチンゲール思想を研究されている金井一薫先生の「KOMI(Kanai Original Modern Innovation)理論」を知り、勉強会にも参加するようになりました。それまで私はナイチンゲールに対しとにかく献身的なイメージを持っていたのですが、彼女はイギリス初の統計学者であり、レーダーチャート開発や病院経営などでも手腕を奮っていました。「戦争で死ぬよりも感染症で死ぬ人の方が多い、だから衛生環境を整えるべきだ」といったことを、数字を用いて根拠を示し、政府の意思も動かしているんです。 つまり、彼女はただ「患者さんのためになると思う」という気持ちだけで献身的に働くのではなく、根拠を示して他人を納得させることのできる人間でした。それまで私が抱いていた印象とはまるで違う。とてもかっこいいと思ったんです。私もナイチンゲールのようにデータを駆使し、広い視野を持って経営したいと考えるようになりました。 また、この思想は看護の現場にも生かせます。例えば医師と話す場面で、「この患者さんは痛がるからレントゲンを撮ってほしい」ではなかなかうまくいきません。「この患者さんはこのような動作をすると痛がるため圧迫骨折の可能性がある、だからレントゲンを撮るべきでは」と、根拠をもとにアセスメントをしたほうがいいでしょう。 視野を広げて「みんなが幸せになる看護」へ ─ナイチンゲールは「情報」を重要視したのですね。それが冷静な判断を産み出す材料になると知っていた。現代に近い理論的な考え方だと思います。 そうです。もっと正確に言うと「客観的な情報」です。利用者さんの言葉だけを重視すると、その方の主観的な考え、いわゆる「S情報」だけに振り回されてしまいます。なぜ、このような「S情報」が出てきたのか、発言の背景にあることに目を向けなければ、利用者さんの困りごとの解消や軽減に至りません。また、「よかれ」と思って、利用者さんの「S情報」のみを元に現行の制度の域を超えたサービスをチームに黙って一人のスタッフが提供してしまったり、スタッフ自身が「利用者さんの希望を叶えられない」と無力感を感じたり、「こんなことは看護じゃない!」と不満に思うスタッフがいたりして、スタッフの方向性が揃わない。そのようなサービスを続ければ現場に無理が出て、訪問看護事業所が潰れてしまう恐れもあります。 訪問看護事業所が潰れても利用者さんは地域にいますので、次の訪問看護事業所を利用した時、制度の域を超えたサービスを受けられて当然と思ってしまい、次の事業所に不満を感じることになるでしょう。事業者の数が減れば、サービス自体も受けられなくなる。これでは、利用者さんも看護師も、誰も幸せにはなれません。 ─「よかれ」と思って対応している看護師さんに対して、理解を促す難易度は高いのではないかと想像します。どういった対応をしていますか? 看護の「意味付け」をし、レスピケアナースらしさを浸透させるために、月に2回、必ず「事例検討」をしています。この事例検討の目的は、いわゆる「SECI(セキ)モデル」(一橋大学大学院教授の野中郁次郎氏らが提唱するフレームワーク)を回すことです。これはそれぞれが持つ知恵を言語化して共有し、暗黙知を形式知に変える。これにより、さらに上の知恵を発見したり、作り出したりしていくモデルです。それぞれが個別で持っている「暗黙知」が「形式知」となり、客観的な情報になります。討論を通じてマニュアルに書いてあっても読めない「行間」までを読み合い、浸透させる。私はこれを「文化を作る」と表現しています。 事例検討時に自身の看護を評価するために利用してもらっているのが、ICFの情報整理シートや臨床判断モデルです。ICFの情報整理シートは、看護利用者の環境についての情報を整え、客観的に把握するためのもの。臨床判断モデルは、利用者さんのニーズや関心、健康問題などを総合的に捉え、必要とされる具体的な看護行為を導き出すための思考モデルです。このどちらかを使って担当者に発表してもらい、私がファシリテーションしています。 中堅のスタッフには成功事例も出してもらうようにしています。様式に落とし込むだけで、「暗黙知」が言語化されるんです。そして、ディスカッションすることによって、参加したスタッフがハッと気づきを得る体験をし、事例提供者は自身が行ったケアを客観的に見返すことができます。このように共有できる形にすることが、「形式知」になることであり、これを繰り返して「文化を作る」ということを実践しています。 そのほかの日々の記録や報告書や計画書もできるだけ確認し、適宜フィードバックしています。こうした成果物をみれば、「行き詰まっているのかな」「悩んでいるのかな」と気づくこともできるので、とても大事なことだと思っています。 繰り返し丁寧に理念や意図を説明する ─事例検討について、スタッフの皆さんの反応はいかがですか? みんな精力的に取り組んでくれています。ただ、慣れない新人さんには複雑で難しい作業に見えるようで、焦ってしまうこともあるようです。そういうときに私は、「『筋トレ』のように考えてくれればいい」と伝えています。決してプレッシャーを与えるために事例検討をしているわけではなく、「レスピケアナースらしさ」を身につけていくためのトレーニング手法なのです。スタッフの反応を見ながら、こういった意図も丁寧に繰り返し説明するようにしています。 ─クリニカルラダー(※)も活用されていらっしゃるんですよね。 はい。基本的には日本看護協会のものをベースにしています。クリニカルラダーは、活動の場を問わず、看護師ひとり一人が力を発揮できるようにという考えのもとで開発されたものです。看護師の評価の項目に、意思決定を支える力、ニーズを捉える力、協働する力、ケアをする力の4つがあり、バランスがよいと思って採用しました。年に1回、12月から1月にチェックしてもらうようにしています。 ※クリニカルラダー: はしご(=ラダー)を上るように段階的にキャリアアップするしくみ。段階ごとに課題は異なり、それぞれの段階で明確な目標設定が可能 特に「意思決定を支える力」「協働する力」については、病棟看護師も含めて足りないケースが多いと思います。クリニカルラダーでチェックすることにより、今は持っていないが将来には獲得しなければならない能力についても理解できるようになり、「これは自分の仕事ではない」と人任せになるケースが減りました。一緒に仕事をする者同士、連携することができるようになるんです。スタッフたちには具体的なエピソードも書いてもらい、私はそれらに対してフィードバックをしています。 仕事に来てくれれば9割満足 ─自分が得るべき技術が明確になると、やる気に繋がりますよね。それぞれが持つ看護についての考え方もしっかりするのでは。 そうです。レスピケアナースとしての考えが浸透します。ただそれでも、「素晴らしいことをするのが看護だ」とは考えないでほしいんです。利用者さんにとっては「看護してくれる人が来てくれた」というだけで、基本的には十分。私はいつも、スタッフに「仕事に来てくれれば私は9割満足」と伝えています。 例えば、事例検討の担当になることが重荷になってしまう心境なら、また別の時にすればいい。無理をせず働いてほしいと考えています。シフトについてもそうです。週に3回休みが欲しいなら、そういう働き方をすればいい。バーンアウトして訪問看護ができなくなったら、誰の幸せにもならないからです。それができる職場にするためにも、規模を拡大してきたんです。 当たり前のことですが、人によってできることとできないことがあり、考え方が違い、「でこぼこ」しています。私は、「でこぼこしているメンバーがたくさんいるが、関係性はフラットで、チームになると力を発揮する」組織を作りたいんです。パーフェクトなスペシャリストになってほしいわけではありません。自分の考えを押し付けたり、自分には技術がないと卑下したりするのは、ノーマライゼーションではありません。お互いを受け入れ、誰しも自分の可能性や能力を高められる状況でこそ、さまざまな意見や知恵が生まれてくると考えています。 ─ありがとうございました。後編では、採用や経営についてさらにお話を伺います。>>後編はこちら先を見越した採用とオープン経営の重要性 【利用者も看護師も幸せにする経営】 執筆: 倉持鎮子取材: NsPace編集部

オンライン同行訪問の活用ポイント 基本研修にプラスすることで安心感アップ
オンライン同行訪問の活用ポイント 基本研修にプラスすることで安心感アップ
インタビュー
2023年2月21日
2023年2月21日

オンライン同行訪問の活用ポイント 基本研修にプラスすることで安心感アップ

「NsPace With(ナースペースウィズ)」は、多忙な訪問看護ステーションの新人教育をサポートするサービスです。現場経験やスタッフ指導経験のある看護師が、新任訪問看護師の訪問にオンライン同行するほか、訪問前の準備や訪問後のフィードバック、定期的な管理者への評価結果報告なども行います。 実際にオンライン同行訪問サービス(以下「オンライン同行」)を利用した「しもふり訪問看護ステーション」の経営者 木和田さんと、所長・管理者の木下さんにお話を伺いました。後編では、オンライン同行利用後の所感と活用方法についてお話しいただきます。 >>前編はこちら試行錯誤の末に生み出した教育体制。オンライン同行訪問を活用した理由 >>オンライン同行を体験した文屋さんの記事はこちら「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記 株式会社 ユニメコム 代表取締役木和田 俊治郎さん調剤薬局の運営会社での取締役時代、訪問看護ステーションの立ち上げ責任者に。企業買収に伴い2015年に独立し、訪問看護ステーション運営会社である株式会社ユニメコムを設立。 しもふり訪問看護ステーション 所長・管理者木下 亜矢子 さん銭湯の番台や外来勤務の准看護師を経て、正看護師になるタイミングで訪問看護の道へ。 しもふり訪問看護ステーション看護師 8名、理学療法士 3名、作業療法士 4名、言語聴覚士 1名、事務 1名が所属(2023年1月時点)。 オンライン同行がスタッフの精神的サポートに ―2022年に、当時入職したばかりだった訪問看護師の文屋さんがオンライン同行を利用されています。実際にオンライン同行を利用してみて、いかがでしたか? 木下さん(以下敬称略): 本人もそう言っていますが、最初はオンライン同行の看護師さんとのコミュニケーションにかなり緊張している様子でした。慣れない職場でひとりだけ外部の人とオンラインミーティングをしている、という状況も発生するので、気を遣うことも多かったと思います。でも、回を追うごとにどんどんオンライン同行の看護師さんとも仲良くなって、慣れていきましたね。 人によって向き不向きがあると思いますが、文屋の場合は利用してよかったです。私にとって一番うれしいのは、サービスを利用した文屋が笑顔で「安心した」「心強かった」と言っていることですね。訪問看護師なりたての一人訪問は誰しも緊張しますし、初めて訪問看護の世界に飛び込むわけですから、普通は不安になったり、病棟とのギャップで苦しんだりします。 文屋が抱える不安は十分わかっていても、時間の制約があって私や他のメンバーが常に寄り添い続けることはできません。オンライン同行が精神的なサポートをしてくれて、よかったと思います。 右から木下さん、木和田さん、オンライン同行を利用した訪問看護師の文屋さん 管理者の方針が明確なら、意見の相違も「良い気づき」に ―サービス利用前は、木下さんの方針とオンライン同行の看護師の指導内容に差異が生じるのでは、というご懸念もあったと伺いました。実際に方針や意見の相違はあったのでしょうか。 木下: ありました。「オンライン同行の看護師さんの言うこともわかるが、しもふりではこうしてほしい」「この利用者さんの過去の経緯や背景を踏まえると、AではなくBにしたほうがいい」などと思ったことがあります。その際は、「私は管理者としてこう思うよ。あなたはどう思う?」と、文屋自身に考えてもらうことを意識しながら議論して、そこで出た結論を文屋から伝えてもらいました。 実際にやってみると、管理者としての方針をきちんと伝えられれば、意見が食い違っても特に困ることはないと思いました。オンライン同行の看護師さんの指摘が「そのとおりだな」と思った案件もありますし、第三者が入ることで、気づきや考えるきっかけが生まれてよかったです。 ただ、私と同行訪問の看護師さんとの間で文屋が板挟みにならないように、という点は意識していましたね。文屋と話し合って決めた結論がオンライン同行の看護師さんの意見と違っていた場合にも、「じゃあ〇〇のほうがいいね。そう言っておいて~」くらいの軽いトーンで伝えていました。管理者も同行する看護師さんも、どちらもあなたの味方なんだよ、というスタンスが伝わるように気を付けました。 木和田さん(以下敬称略): このように、木下が管理者として「自分の軸がちゃんとしていれば大丈夫」という考えで対応してくれたことは、経営者として本当にうれしいことですし、大きな成果だと考えています。オンライン同行を利用する前にイメージしていた「レベルアップ」はしっかり達成できたと思います。 オープンマインドな姿勢で臨むと学びが増える ―しもふり訪問看護ステーションでは、スタッフの方の意向も確認しながらオンライン同行の利用有無を決めていらっしゃいますが、人によって向き不向きはあると思われますか? 木和田: 本当に、プラスになるかマイナスになるかは「その人次第」という側面があると思います。例えば、過去のやり方を「絶対的基準」として捉えている人の場合、コンフリクト(対立)が起こりやすいですし、学びにつながりにくい。オンライン同行を使う方には、オープンマインドな姿勢が求められると思います。 木下: そうですね。オンライン同行の看護師さんに対して、自分の意見や考えをきちんと言えることも大事だと思います。なかには、何か意見を聞かれたときに「特にありません」という回答ばかりになる方もいらっしゃると思うのですが、そういう方は向いていないというか、「まだ早い」かもしれないですね。アセスメントができない看護師さんに対しては、オンライン同行を始めるより先に教えることがあると思います。 教育の土台があってこそ「あと一押し」として活用できる ―最後に、他の訪問看護ステーションがオンライン同行を利用する際のアドバイスをお願いします。 木和田: 当ステーションにはオンライン同行がマッチしましたし、今後も使っていこうと考えています。ただ、「オンライン同行だけ」を研修とするのはあまりよくないと思いますし、教育体制をきちんと構築してからの利用がいいのではないでしょうか。所属しているステーションの方針が不明確なまま突き進んでしまうと、目指す方向を見失いやすいでしょう。 まずは訪問看護ステーションとして数ヵ月単位の研修プログラムを組んだうえで、プラスαとしてオンライン同行を使うのがいいんじゃないかなと思います。不安な部分をあと一押ししてもらう、というイメージですね。 ―ありがとうございました。 編集・執筆: NsPace編集部 ※本記事は、2022年12月の取材時点の情報をもとに制作しています。 *  *  *  *   ■ナースペースウィズ訪問看護スタッフ向けオンライン同行訪問サービス。訪問看護の現場景観と新任看護スタッフ指導経験のある看護師が同行訪問OJTをオンラインで支援

試行錯誤の末に生み出した教育体制。オンライン同行訪問を活用した理由
試行錯誤の末に生み出した教育体制。オンライン同行訪問を活用した理由
インタビュー
2023年2月14日
2023年2月14日

試行錯誤の末に生み出した教育体制。オンライン同行訪問を活用した理由

「NsPace With(ナースペースウィズ)」は、多忙な訪問看護ステーションの新人教育をサポートするサービスです。現場経験やスタッフ指導経験のある看護師が、新任訪問看護師の訪問にオンラインで同行するほか、訪問前の準備や訪問後のフィードバック、定期的な管理者への評価結果報告なども行います。 しかし、こうしたオンライン同行訪問サービス(以下「オンライン同行」)は誕生したばかりのサービスのため、なかなか利用イメージが湧かない方も多いでしょう。実際にNsPace Withを利用した「しもふり訪問看護ステーション」の経営者 木和田さんと、所長・管理者の木下さんにお話を伺いました。前編である今回は、オンライン同行を利用した経緯についてお話しいただきます。 >>オンライン同行を体験した文屋さんの記事はこちら「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記 株式会社 ユニメコム 代表取締役木和田 俊治郎さん調剤薬局の運営会社での取締役時代、訪問看護ステーションの立ち上げ責任者に。企業買収に伴い2015年に独立し、訪問看護ステーション運営会社である株式会社ユニメコムを設立。 しもふり訪問看護ステーション 所長・管理者木下 亜矢子 さん銭湯の番台や外来勤務の准看護師を経て、正看護師になるタイミングで訪問看護の道へ。 しもふり訪問看護ステーション看護師 8名、理学療法士 3名、作業療法士 4名、言語聴覚士 1名、事務 1名が所属(2023年1月時点)。 リハビリスタッフとの連携で医療依存度の高い利用者をケア ―まずは、しもふり訪問看護ステーションの特徴を教えてください。 木下さん(以下敬称略): 当ステーションは、看護師とリハビリスタッフとの連携による質の高いケアの提供を得意としています。東京の町屋と駒込に事業所がありますが、二拠点は自転車移動が可能です。ケースによっては所属拠点に関わらずチームを組み、ステーション一丸となって利用者様のケアにあたっています。また、最近は人員面でも技術面でも看護スタッフが充実してきたこともあり、医療依存度の高い利用者様が増加傾向にあります。 ―しもふり訪問看護ステーションの運営会社は、途中で変更になったと伺っています。経緯を教えていただけますか。 木和田さん(以下敬称略): もともと、しもふり訪問看護ステーションは調剤薬局会社の新規事業として立ち上げました。当時、私はその会社の取締役で、新規事業として訪問看護ステーションを立ち上げる際、責任者を任されたんです。しかし、立ち上げ後に会社がバイアウト(買収)されることになり、ステーションは取り残されることになってしまいました。そこで、私が会社から独立して新たに「ユニメコム」という法人を立ち上げ、訪問看護ステーションの運営を引き継ぐことにした、という経緯ですね。 人材が定着せず、悩み抜いた結果生まれた教育体制 ―訪問看護ステーションの運営は、当初から軌道に乗っていたのでしょうか。 木和田: いえ、訪問看護ステーションの立ち上げ当初から2020年ごろまでは、人材がなかなか定着せず困っていました。ユニメコム本部で採用したら、研修は現場にお任せ、という流れでやっていましたが、どんどんスタッフが辞めてしまったんです。 ―どういった理由で退職される方が多かったのでしょうか。 木和田: 辞める方が本音で退職理由を言ってくれるケースはあまりありません。でも、おそらく「会社が自分のがんばりを評価してくれない」と感じていたスタッフが多かったのだろうと分析しています。 私は、仕事は何らかの「課題解決」「価値創出」に意味があると教えられ、自分自身もそう思って邁進してきました。「がんばっていることそのもの」が評価されなくても気に留めていなかったので、他者のがんばりへの承認にも重きを置いていなかったんですね。そこに従業員と私との間にズレが生じる要因があったんだと思います。従業員のことは以前も今も大切に思っていますが、気持ちが伝わらず、当時はかなり「ドライで冷たい経営者」だと思われていたようです。 ―そういったお話からは想像がつかないほど、現在のしもふり訪問看護ステーションは経営者・管理者からスタッフまで和気あいあいとした雰囲気に見えます。どういった改善策を講じられたのでしょうか? 木和田: 今は本当に雰囲気が良くなっていますが、当時はかなり悩みました。試行錯誤を重ねて学び直しをした結果、やっぱり「エンゲージメント」(従業員との確固たる信頼関係)と「オンボーディング」(採用した人材を定着させ、戦力化するための教育施策)が大事だという結論に至ったんです。「採用したらあとは現場にお任せ」という状況を打破して、きちんと教育プログラムを構築することにしました。 2021年からは座学の初期研修や計画的なOJTを行うようになり、そこで一旦教育体制の土台が作れました。現場のみんなの努力はもちろんのこと、こうした教育体制の構築も人材定着につながっていると思います。 ―教育プログラムについて、具体的な内容を教えてください。 木和田: 座学では、ユニメコムの理念をはじめ、訪問看護を取り巻く社会的な制度の概要や課題、従業員に期待していることなどを伝えています。OJTについては、3ヵ月目のひとり立ちに向けて必要な要素や計画を木下に練ってもらいました。通常業務の流れのなかでOJTをして、「時期が来たら一人で訪問に行ってね」ではなく、何がどこまでできているかをきちんと振り返って記録に残し、管理・指導するようにしています。 オンライン同行を利用したきっかけとは ―2022年に、当時入職したばかりだった訪問看護師の文屋さんがオンライン同行を利用されています。サービス利用のきっかけや理由について教えてください。 木和田: オンラインで外部の看護師が訪問に同行するサービスがあると紹介されて、「ぜひやってみたい」と思いました。教育体制がより充実することはもちろん、全国的に訪問看護師の数が足りていないなかで、こうしたサービスが普及していくことは、社会的にもプラスになると考えたんです。ただ、実は現場からは当初反対意見もありました。 木下: そうですね。最初は反対しました。私は訪問看護の現場を大切にしてきましたし、現場では五感をフルに使う必要があると考えています。対面で接することで積み上げてきた利用者さんとの信頼関係もあります。「オンラインで何がわかるんだろうか」と思ったのが正直なところです。 また、管理者としての方針や誇りをもってステーションを運営しているなかで、ステーション外の看護師さんにスタッフの育成を任せることに対する抵抗感もありました。自分のいないところで、私の方針とズレた指導をされてしまうと困ると思いましたし、どんな方に同行してもらうのかわからない本当の初期段階は、「大事なスタッフが困る事態になったらどうしよう」という思いもありました。実務面では、導入にあたって利用者様の許可をいただくなどの事前準備もありますし、工数面での負担感も心配でしたね。 ―そうした不安や懸念があるなかでも、オンライン同行をはじめた理由は何だったのでしょうか。 木下: 木和田の「導入する」という意志が固いことはわかっていましたし(笑)、気持ちとしては新しいスタッフに全力で寄り添いたくても、多忙で時間が足りず、なかなかそばにいてあげられない現状があります。 また、結局のところは実際にサービスを受けるスタッフが「やりたいかどうか」が一番重要だと思ったんです。文屋の場合は本人が「やりたい」と言いましたし、訪問時の安心感が上がるなら、やってみてもいいのでは、と思いました。もちろん、やってみてもしも本人の負担感が強そうなら、見守るだけではなく口を出そうと思っていました。 木和田: 最終的に木下がそのように受け入れてくれて嬉しかったですね。うちだけに限らず、訪問看護ステーションは管理者のカラーで方向性が決まってくる側面が大きく、「これが正解」というスタンダードがまだない状態だと思うんです。だから、第三者の目を入れれば、コンフリクト(対立)が起こりやすいですし、木下が反対した理由もよくわかる。でも、あえてそういう状況をつくることで、一段階レベルアップできるという想いもありました。 ―ありがとうございます。後編では、実際にオンライン同行を利用してみた所感や活用方法についてお伺いします。 >>後編はこちらオンライン同行訪問の活用ポイント 基本研修にプラスすることで安心感アップ 編集・執筆: NsPace編集部 ※本記事は、2022年12月の取材時点の情報をもとに制作しています。 *  *  *  *   ■ナースペースウィズ訪問看護スタッフ向けオンライン同行訪問サービス。訪問看護の現場景観と新任看護スタッフ指導経験のある看護師が同行訪問OJTをオンラインで支援

学び直しの機会を提供することが重要~看護の対象は目の前の一人だけではない~
学び直しの機会を提供することが重要~看護の対象は目の前の一人だけではない~
インタビュー
2023年2月14日
2023年2月14日

学び直しの機会を提供することが重要~看護の対象は目の前の一人だけではない~

訪問看護業界での人材戦略を考える特別トークセッション。第2回は、採用時の教育の重要性を考えます。「旧型の病院看護師を育てることに最適化された教育」をアンラーニングする機会を提供することが、望ましくない早期離職回避につながります。 第1回「人材採用難に立ち向かうために」はこちら>> 訪問看護に迎えるときにはルール変更の教育が必要 中原: 病院看護から訪問看護に移ることは「ゲームチェンジ」ですよね。その意識が必要だと思います。例えるなら、「将棋に熟達していた人」が突然、「チェス」を始めるようなもの。駒を使うところは同じなんだけれど、ルールが何もかも違う別の競技だよって話ですね。それぐらい異なるものだと、採用時に説明しなくてはならないでしょうね。 落合: そのとおりだと思います。やはり教育からチェンジが必要だと。 公的な訪問看護サービスは社会資源の一部であって、「目の前の人だけに最高の看護を」ではなく、「すべからく多くの人に、最低限度健康で文化的な生活が送れるための看護を」提供することが本来のはずです。ですが、看護教育で私たちが教わってくることは、「目の前の患者さんをどうやって幸せにできるか」に重きが置かれていて、そこでかなりギャップがある。 そういうわけで、社会保障のあるべき姿から逆行する発想をする傾向もある。「私がいいと思う看護を後輩ができないんだったら、そんな後輩はいらない」というような。そのときに「後輩を辞めさせた結果、ケアが届かなくなる患者さんはどうなるんだ」といった思考は持ち合わせていない。 看護の対象は「個人、家族、コミュニティ、地域」だと定められているんです。病気があるから対象になるわけではなく。ですが、旧型の病院看護師を育てるのに最適化された教育では、病気があり入院治療している個人をみることに焦点が当てられてきた。 そういう教育をされてきた過去はしょうがないので、訪問看護に迎えるときには、きちんと学び直しの機会を提供する。そんなオンボーディング注1が大切なのだろうと思います。 注1:新しく職場に入ってきた仲間が職場になじめるように迎え入れ、適応を支援する取り組み全般をいう。新しい職場で必要な知識やスキルの習得を教育・支援することも含まれる。 仲間を増やすことは看護と同じくらい大事だ 中原: 名前は同じ「看護」がついていて、似ていると思われやすいけれど、必要な資格が同じだけであって、私には「違う世界」に見えますね。その資格を持っているからといって、あるところでうまくいってる人が、次の世界に入ったときに必ずしもうまくいくとは感じないです。病院看護から訪問看護に移るときは、異国に行くイメージでいるといいのではないでしょうか。郷に入れば郷に従えといいますが、「前いた世界の自分」のまま「異国」に行って、自分を変えようとしないなら、確実に詰むでしょうね。 落合: うちでは、「この人を採用するかどうか」をみんなで決めるんです。面白いのは、経営で考えると採ったほうがいい状況で、「採らない」となりがち。「こんなに忙しいんだし採ったほうが絶対いいじゃん」って思うんですけど、なぜかそうならないんですよね。 私はよく「採用って看護と同じぐらい大事だよ」って言うんです。「自分1人では100件しか回れない、同僚と力を合わせたら200件回れる。同僚が増えると『すべからく多くの人に』適切な看護をに一歩近づく」ってことなんですけど、理解までかなり時間がかかります。 組織の成熟度が高まってくると、この考えが受け入れられるんだろうと思うんです。教育や学びが必要だなと思います。 離職者ゼロはベストではない 乾: 小さい規模で、いったん人間関係が悪くなってしまうと、もう厳しいですよね。病院だと配置転換で何とかなりますが、訪問看護のような小さい職場では、いちど嫌悪感を持ってしまうとギスギスが消えない。そして、ギスギスから距離を置くことができずに辞めるしかない。私も訪問看護で短期間働かせてもらったんですが、訪問看護の職場には逃げ場がないと強く感じました。 落合: おっしゃるとおりで、辞めない人を採るのが前提ではあるんですが、私がよく言うのは、「流動性を保たないといけない」。というのは、ある程度の離職率は保たないと組織の水が濁るので。 そのために、ちゃんとインしていきつつ、ちゃんと辞めてもらう。そうしながら組織は拡大していくのが理想だと。 ただ、訪問看護の採用担当者はだいたいが、いわゆる人材のプール、タレントプール(将来の採用候補者情報をためておくしくみ)を持っていないんです。採用が必要なそのタイミングで「今すぐ働きたい」人と運良く出会うことにかける、という狩猟みたいな採用だけで。「1年後働いてくれるかも」みたいな人がいないから、辞めさせられない面もあると思いますね。 中原: そう。「離職者ゼロ」は決して望ましいものではないんですよ。正しく貢献できない人には辞めてもらうことで止血するのも大事。本当は、異動ができれば退職に至らずにすむこともあるんですが、このサイズだとそれも難しいですね。 乾: 複数ステーションをお持ちとかで、配置転換ができるような事業者は多くないですからね。 だんだんと舵がとれなくなって縮小していくケースが目立つ 中原: 私のような業界外の立場から見たら、どうしてこのサイズなのかが不思議でしょうがないんです。「2.5人? マジ?!」って思う。1人抜けたらアウトで、また採用しなきゃならない、採用費100万円の借金を負わないといけない、ゼロから教えなきゃならない。2.5人よりは、逆に小さくするほうがうまくいきそうですが、1人ではできないんですか。 ─ 常勤換算で2.5人必要な決まりです。管理者ともう1人が常勤、パートで月半分、が開始時の一つのモデルです。 中原: 1人はダメなんですね。売上や顧客が決まってないのに人を雇わないといけない、相当なリスクですね。 落合: 訪問看護あるあるがありまして、思いを持って、仲の良い友だち2人を誘って立ち上げます。意気揚々と「○○病院にいました」「○○ができます」「こういう思いがあって独立しました」と営業をがんばる。そうすると御祝儀なのか、始めは依頼が結構来るんですよ。気心知れた仲間どうしだからトラブルも少ないし、そのころがいちばん儲かっています。それが、4~5人と人員が増えたあたりから、マネジメントロスが生じるとか、いろんな波が起こりはじめて、対処方法がわからず、乗り越えられずに縮小化するイメージが、すごくあります。 「立ち上げてすぐ閉鎖」よりも、仲間だけでやって、スタートはうまくいくが、組織が拡大するにつれて、だんだんと舵がとれなくなっていく。そんな例が多い印象です。 >>次回「訪問看護管理者が真にやるべきこと」はこちら 落合実18歳から有床診療所、大学病院、訪問看護ステーションと、働く場所を移しつつ一貫して臨床看護に携わる。現在は、福岡にUターン移住し、ウィル訪問看護ステーション福岡の経営と現場を継続しながら、医療法人や社会福祉法人、ヘルステック系企業のコンサルティングも提供。ウィル株式会社は、訪問看護ステーション事業とフランチャイズ展開のほか、記録システムの開発・販売、採用支援、eラーニング開発・支援などを手掛けている。「スイミー」で小さな魚が集まって苦境を乗り越えられたように、皆で集まることでナレッジシェアができる組織を目指している。乾文良大手ITシステム会社、商社勤務を経て、2016年に株式会社エピグノを共同創業。エピグノで開発・販売している人材マネジメントシステムは、医療・介護領域に特化している日本初の製品であり、モチベーションやエンゲージメントを測定することが特長。エンゲージメントやモチベーション状態が具体的な指標にもとづいて測定され、その見える化を通し、組織と経営両面の健全化を図ることができる。中原淳「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、組織開発について研究している。著書に、「職場学習論」「経営学習論」「人材開発研究大全」(東京大学出版会)、「組織開発の探究」(中村和彦氏との共著、ダイヤモンド社)、「研修開発入門」「『研修評価』の教科書」(ダイヤモンド社)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)、「残業学」(パーソル総合研究所との共著、光文社新書)、「フィードバック入門」「サーベイ・フィードバック入門」「話し合いの作法」(以上、PHP研究所)など多数。記事編集:株式会社メディカ出版 * * * * * ■ナースペーススタディ訪問看護スタッフ向けの完全オンライン教育サービス。専門看護師・認定看護師など、経験豊富な講師陣がスタッフ教育をサポート

「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記
「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記
インタビュー
2023年2月7日
2023年2月7日

「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記

訪問看護師は、基本的に一人で利用者さんの自宅に訪問します。新任訪問看護師に対しては、同行訪問でのOJT(On the Job Training)を行う訪問看護ステーションが多いでしょう。しかし、多忙でなかなか同行訪問に時間をさけないケースも多く、不安を抱えながら一人での訪問をスタートする新任訪問看護師も少なくありません。 「NsPace With(ナースペースウィズ)」は、そうした現場をサポートするオンライン同行訪問サービスです。今回は、実際にNsPace Withを使用したしもふり訪問看護ステーションの文屋佐都美さんに、体験談を伺いました。 しもふり訪問看護ステーション文屋 佐都美さん2018年に新卒で病院に入職。3年間勤務後、1年間介護事業所でホームヘルパーとして勤務。2022年4月より、しもふり訪問看護ステーションへ。利用者さん・ご家族との対話を大事にしている。一人ひとりの状況に応じた看護、「楽しく生きる」ことをサポートする看護を目指して邁進中。 利用者さんとの対話・関係性を大事にしたいという想いから訪問看護師へ ―文屋さんは病棟看護師やホームヘルパーとしてのご経歴がありますが、訪問看護師になったきっかけをおしえてください。 親が介護事業所を経営していて、幼いころから在宅ケアが身近だったこともあるかもしれませんが、ずっと「患者さん・利用者さんとの関わりを大切にしたい」「病気や障害等があっても楽しみながら生きていくためのお手伝いをしたい」という想いを持っていました。でも、病棟看護師時代は日々のルーティン業務に追われて、なかなか患者さんと関わる時間が持てない現実があったんです。次第に在宅の道のほうが合っているのではないかと考えるようになり、病院を退職しました。 退職後は、親の介護事業所でホームヘルパーとして1年間働きました。実際に在宅ケアに携わってみたら、利用者さん・ご家族との対話や、日常生活のなかに入らせていただくことが、本当に楽しかったんです。私には、やっぱり在宅の道が合っていると確信しましたし、看護師として働きたいという想いもあったので、訪問看護師に転職することを決めました。 ―多くのステーションがあるなかで、しもふり訪問看護ステーション様に入職された理由を教えてください。 スタッフ同士とても仲が良く、楽しい雰囲気に惹かれました。また、入職前に同行訪問をさせてもらったのですが、利用者さんとの関わり方が自分の理想どおりだったんです。仲が良いことはもちろん、信頼されて利用者さんの日常生活に溶け込んでいるように感じました。「私もこういう看護がしたい」と思って、しもふり訪問看護ステーションに入りました。 ―初めて訪問看護ステーションで働くにあたって、不安はありませんでしたか? ありました。なんといっても、「一人で訪問する」ことへの不安が大きかったです。病院であれば、何かあっても同じ建物内ですぐに質問をしたり助けを呼びに行ったりできますが、訪問時はそうはいきません。一人で訪問して、きちんと利用者さんと信頼関係を築けるかどうかも不安でしたね。 オンライン同行では、音声や映像を通じて訪問の見守り。質問・相談も可能 ―実際に入職した後の初期研修の内容や、オンライン同行訪問サービスを始めたきっかけについて教えてください。 2022年の4月に入職し、最初は本部での座学研修と先輩訪問看護師の同行訪問研修がありました。同行訪問時に先輩に確認してもらいながら徐々にできることを増やし、OKが出たら一人で訪問する、という流れです。 オンライン同行訪問サービスについては、所長から「使ってみるか」という話がありました。そういったサービスがあることも初耳でしたが、興味があったので「やってみたい」と言いました。 ―オンライン同行訪問サービス利用時の流れについて教えてください。【オンライン同行訪問 当日の流れ】 最初にオンラインで同行していただく看護師さんとの顔合わせ面談があり、自己紹介や目指す看護師像の共有などをしました。 実際に同行訪問する際は、事前に情報共有のためのミーティングがあります。訪問時には、オンライン同行の看護師さんはイヤホンを通じて会話内容を聞いています。基本的にオンライン同行の看護師さんからこちらに話しかけることはありませんが、聞きたいことがある場合にはこちらから声をかけ、その場で相談することもできます。 訪問終了後は、10分~30分程度の振り返りミーティングがあります。一緒にアセスメントを振り返ってもらうほか、次回までに学んでおいたほうがよいこと、調べておいたほうがよいことなどもアドバイスいただきました。 ―オンライン同行訪問サービスを使用するとき、緊張しませんでしたか? 顔が見えない状態ですべての会話を聞かれているので、結構緊張しました(笑)。でも、それは最初だけでしたね。ミーティングを重ねていくうちに同行していただく看護師さんとの関係性ができていきますし、途中からはイヤホンがあっても意識せず、自然体で訪問できるようになりました。 ―ミーティングでは、文屋さんからはどういった質問・相談をされていたのでしょうか。 医療的な質問はもちろんのこと、私は利用者さんやそのご家族を深く理解した上でケアをしたいという想いが強いので、コミュニケーションの取り方や利用者さんに合わせた対応についての相談もしていました。 例えば、「利用者さんに確認したいことがあるけれど、デリケートな話題なのでご家族の前では聞きづらい」と悩んだときには、「シャワー時に確認してみたらどうですか?」とアドバイスをもらいました。また、「教科書通りなら杖を使うほうがいいかもしれないけれど、Aさんの場合は配偶者の方と寄り添って歩くほうが幸せなのでは」といった相談をしたこともあります。 安心感や自信、スタッフ間の連携につながった ―オンライン同行訪問サービスについて、訪問時に感じたメリットを教えてください。 なんといっても、安心感が一番大きいですね。例えば訪問時にサチュレーション(SPo2)が低い利用者さんがいたとき、入職したての時期だったので、普段とは違う様子に焦ってしまいました。でも、オンライン同行訪問サービスの看護師さんにイヤホン越しに報告できたので、その場ですぐに対応方法に間違いがないことを確認でき、その後の報告に関する指示までもらえて、ホッとしたことを覚えています。オンライン同行のおかげで「一人訪問」の不安が軽減しました。 また、自分の看護に対しての自信もつきます。振り返りミーティングで、「この判断がよかったです」「このコミュニケーションの取り方がよかったです」という前向きなフィードバックも毎回いただけたので、「このまま前に進んでいっていいんだな」と思えました。不安軽減や自信につながるので、新任訪問看護師さんたちにはおすすめです。 ―事業所内のスタッフ同士が連携するきっかけにもなったと伺っています。 はい。もともと事業所内は相談しやすい環境なのですが、オンライン同行の看護師さんから確認されたことをきっかけに、「しもふり訪問看護ステーションとしてどういう対応をすべきか」を所長に確認する機会が複数ありました。事業所の方針・ルールの理解につながり、よかったと思っています。 右からしもふり訪問看護ステーション 所長/管理者の木下さん、運営会社ユニメコム代表取締役の木和田さん、文屋さん また、しもふり訪問看護ステーションにはリハビリスタッフもいるのですが、「〇〇についてはリハビリスタッフさんに聞いてみては」といったアドバイスをいただき、リハビリスタッフと連携する際のヒントになりました。しっかりした連携により、排便コントロールがうまくいった利用者さんがいらして、スタッフみんなで喜んだこともあります。 ―文屋さんはまもなく訪問看護師2年目を迎えますが、最後に今後の目標や取り組んでいきたいことを教えてください。 オンライン同行訪問サービスでのアドバイスを通じて初めて知ったことも多く、勉強すべきことがたくさんあると思っています。例えば、家族看護についてもっと理解していきたいですし、排便・排泄コントロールも奥が深いので、もっと知識や経験を積みたいですね。これからも利用者さんやご家族との関係性を大事にしながら、看護師として成長していきたいと思っています。 ―ありがとうございました。 編集・執筆:NsPace編集部 ※本記事は、2022年12月の取材時点の情報をもとに制作しています。 *  *  *  *  ■ナースペースウィズ訪問看護スタッフ向けオンライン同行訪問サービス。訪問看護の現場景観と新任看護スタッフ指導経験のある看護師が同行訪問OJTをオンラインで支援

コミュニケーション力で教育や医療を変革し地域を創生する
コミュニケーション力で教育や医療を変革し地域を創生する
インタビュー
2023年1月17日
2023年1月17日

コミュニケーション力で教育や医療を変革し地域を創生する

在宅医療のスペシャリスト・川越正平先生がホストを務め、生活全般を支える「真の地域包括ケア」についてさまざまな異業種から学ぶ対談シリーズ。第13回は、演劇というツールを使いコミュニケーション教育に取り組んでいる劇作家・演出家の平田オリザさんと、医療や教育に必要なものについて話し合った。(内容は2018年7月当時のものです。) ゲスト:平田オリザ劇作家・演出家こまばアゴラ劇場芸術総監督・城崎国際アートセンター芸術監督。国際基督教大学教養学部卒業。1995年「東京ノート」で第39回岸田國士戯曲賞受賞。大阪大学COデザインセンター特任教授、東京藝術大学特任教授、四国学院大学客員教授・学長特別補佐、京都文教大学客員教授、(公財)舞台芸術財団演劇人会議理事長、埼玉県富士見市民文化会館キラリ☆ふじみマネージャー、日本演劇学会理事などを歴任。 医師の診療は患者との対話である 川越●平田さんは、劇作家、演出家としてだけでなく、教育の現場や自治体の依頼で演劇を用いたコミュニケーションデザインを教えていると伺いました。コミュニケーションをデザインするとは、どのようなことなんでしょう。 平田●たとえば「患者が医者に質問しにくいのは、医者が高圧的なのではなく、病院に来るまでに交通機関を乗り継いでへとへとになっているからかもしれない。それなら交通行政を変える必要があり、医療行政だけでは解決しない」というのがコミュニケーションデザインの考えかたです。 川越●がん治療中の人が、電車やバスを乗り継いで1時間以上かけて病院に来ても、外来で医師と話すのはせいぜい15分。医師がその時間で何もかも説明するのは難しく、ましてや患者さんが的確な質問をするのはより難しいでしょうね。 平田●あるセンテンスのなかで、本当に伝えたいこと以外の言葉がどれくらい入っているかを、冗長率といいます。家族との世間話がいちばん冗長率が高いように思えますが、ふだんの会話では、実は冗長率はそんなに高くならないんです。 川越●言いたいことだけを言っているわけですね。 平田●そうです。いちばん冗長率が低いのは、長年連れ添った夫婦間の「飯、風呂、新聞」という会話です(笑)。逆に冗長率が高くなるのは「会話」ではなく「対話」なんです。異なる価値観のすり合わせや新しいことを伝える瞬間なので、どうしても時間がかかってしまう。 川越●医者と患者の関係がまさにそうですね。医師の診察が「対話」だという認識はなかったです。どうしても問診をして、説明するという感じになっています。 平田●いわゆる家庭医、ファミリークリニックで実績のある方たちは、そこがうまい。 都会でも地方でも子どもの地域社会がない 川越●これだけコミュニケーションが大事といわれるのは、現代社会は人と人とのつながりが希薄になってきているからでしょうか。 平田●コミュニケーション能力とは本来、子どもがままごとやごっこ遊びで自然に身につけるものなんですが、少子化や核家族化、地域社会の崩壊などで、そういうことを経験していない子が増えています。特に小学校から私立だと、まず地域社会がない。 地方でも少子化で、隣の友だちの家まで1時間とか、学校の統廃合が進んでスクールバス通学になると、寄り道ができない。子どもにとって通学路ってとても大事なコミュニケーションの場所なんですが、社会が合理的になっていくと、どんどんコミュニケーションの機会が失われます。 川越●確かに電車通学だと、放課後一緒に遊べないですね。 平田●それに習い事などで忙しくて、同じ階層の子としか付き合わなくなってしまう。都心部だと7~8割が中学受験をするので、地域社会が完全に崩壊しているわけです。 川越●都心に住んでいても、遠くの大病院にわざわざ1時間かけて行くのと似ていますね。 平田●私は都内の国立大学でも教えているんですが、学生の8割が男子、7割が関東出身、6割が中高一貫校の出身で、ディスカッション型の授業をやっても、みな同じ意見になってしまう。「貧乏って何?」という感じで、実感としてわからないんですね。 川越●在宅医療はご自宅に行くので、さまざまな家庭があることを自然に経験できて、医療は画一的にはできないことを学ぶんですが、病院しか知らないと、ベッドの上の患者さんは生物としての対象になってしまうのと同じですね。 勉強はできても異性とちゃんと話せない 平田●ある進学校で演劇教育を取り入れているんですが、男子校なので、うちの劇団に「女性との付き合いに慣れさせたいので、そういう劇をやってほしい」というオーダーがくるんです。 それで行ったら、うちの女優が初対面の高校生にいきなり「バストいくつですか」と聞かれたことがあって、保護者会などでこの話をすると、さすがにお母さんたちも焦る。だってそういう子たちが弁護士や医者になるんですから(笑)。勉強はできても、異性とちゃんと話せないんですね。 川越●男性の生涯未婚率が23パーセント(注:2018年時点で最新のデータであった2015年数値)という現実もあり、均質化やコミュニケーション能力が乏しいことが少子化の原因の一つかもしれません。男女交際の話は、もう国家施策としてやったほうがいいかもしれませんね(笑)。でないと国が滅びます。 文化による社会包摂の機能が見直される 川越●これから都市部では孤独死などが増えていくと思いますが、あれはインフォーマルな見守り機能が崩壊しているからだと思うんです。 平田●あとは行政もなかなか手が出せないようなごみ屋敷の問題。あれも完全に社会と隔絶してしまった結果でしょうね。 川越●毎日、何らかのかたちで自然に社会とつながっていれば、そういうことは抑止されるかもしれないですね。 平田●最近、文化による社会包摂機能というものが見直されています。何でもいいから、とにかく社会とつながっていてもらいたいと。 川越●コミュニティとしてのつながりが増えないかぎり、包摂機能は尻すぼみになって、ごみ屋敷や孤独死として顕在化するのでしょうね。 今まで、学校は知識を与える場所、医療機関は医療を施す場所のように思われていましたが、そんな単純な話ではなくなっていて、これからは社会のあらゆるところにコミュニケーション教育をビルトインしていくことが求められているんですね。 >>次回「命まで責任を負う団地自治会のまちづくり」はこちら あおぞら診療所院長 川越正平【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。 記事編集:株式会社メディカ出版 「医療と介護Next」2018年7月発行より要約転載。本文中の数値は掲載当時のものです。

新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.2 新卒者から「先輩」になって思ったこと
新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.2 新卒者から「先輩」になって思ったこと
インタビュー
2022年11月15日
2022年11月15日

新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.2 新卒者から「先輩」になって思ったこと

前回「新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.1 新人看護師が感じていること」の記事で、新卒から訪問看護の世界に飛び込んだ3名の看護師の声をお伝えしました。今回は、その3名がキャリアを積んでから感じたこと、新卒者が訪問看護に携わることに対しての思いを取り上げます。 先輩になった今、後輩にしているサポートは? 職業を問わず、最初は新人であっても年月を経るにつれて経験を積み、次第に教える立場になっていきます。では、3名の新卒者は自分が先輩の立場となり、後輩をどう支えているのでしょうか?Aさん・訪問看護歴6年「最初は分からないこと自体が分からないと思うので、自分や歴代の新卒者さんがどのような勉強をしたかを伝え、誰もが同じようにできなかったところから乗り越えていることを伝えるようにしています」 Bさん・訪問看護歴6年「まずは相手の思いや考えを聞き、一旦受け止めます。そして、できていることは些細なことでも言葉にして伝えています」 Cさん・訪問看護歴7年「相手のできていないところばかりではなく、できているところはそのまま認めて、フィードバックすることを大切にしています。また、後輩の話を聞くときは、必ず手を止めて聞きますね。そして後輩が考えている時には待つ。答えをいわないようにして、後輩が自分自身で考えられるようにしています」 まずは後輩の思いや悩みを受け止める、という点は3名に共通しています。これには理由があり、自身の経験が少なかったころに「もう少し振り返りの時間がほしかった」(Bさん)、「自信を持てるような声かけ、フィードバックがほしかった」(Cさん)と感じたからだそうです。これから新卒者を迎える管理者、先輩看護師の方は、じっくり話を聞く時間を設けると良いかもしれません。 新卒を受け入れるために必要な環境、体制、心構えは? 未経験の人が訪問看護ステーションで働き、成長していくためには、何が必要なのでしょうか。大きく分けて、「新卒を受け入れる心構え」と「技術を学ぶ場」の2点が挙がりました。 Aさん「教育担当者や所長だけでは受け入れる側の負担も大きくなってしまうため、スタッフ全員で新卒を育てる気持ちが大切だと思います」 Bさん「看護技術・手技の勉強と復習を行いやすい環境が大切だと思います。受け入れる側の心構えとして、新卒でもできる、応援しているというスタンスが必要ではないでしょうか」 Cさん「受け入れる側の心構えとして『できなくて当然。時間がかかって当然』『新卒ウェルカム!』という余裕は必要だと思います。看護技術取得ができるような体制づくりも必要だと考えます」 新卒だからこそ、いち早く技術を習得して少しでも先輩方に追いつきたいもの。技術取得のための体制については、「大きめのステーションのほうが教育・体制面が整っている傾向にありそう」(Cさん)といった声も聞かれました。 「新卒からの訪問看護」にはどんなメリット・デメリットがある? 最後に、新卒者が訪問看護に携わるメリット・デメリットを聞いてみました。Aさん メリット・さまざまな先輩看護師と同行訪問することで、多様な看護観に触れられる。・一般常識が身につく(医療・介護物品などのコスト意識、訪問先のご自宅や外部連携でのマナーなど)。 デメリット・手技の獲得やひとりだちまで時間がかかり、ある程度自信をもって訪問できるまでは不安や劣等感を感じやすい。・事業所の教育体制によっては、ひとりで訪問する重圧、不安が大きい可能性がある。 Bさん メリット・利用者さんの生活や人生の一部に入り込むことができる。加えてもらえる。・医療者や支援者の知識が必ずしも正解ではないことを、利用者さんを通して気付ける。 デメリット・病院に就職した同期と比較してしまうと、スピード感の違いに落ち込む。・新卒訪問看護師への偏見がまだある印象がある。 Cさん メリット・夜勤がないため生活リズムが整いやすいこともあり、それによって『しんどいからやめたい』という看護師は少ないように思う。・キャリアが広がる印象がある(管理者、大学・大学院の教員、ケアマネ取得など)。 デメリット・スタッフのマンパワーが必要なケースが多い。・ステーションによって教育のしかたやスタッフの関わり方・雰囲気、利用者さんの受け入れ幅などが異なるが、新卒訪問看護師向けの情報が少ない。 「新卒からの訪問看護」は、乗り越えるべき課題がありますが、今回お話していただいたかつての新卒者の方々も、現在では一人前の訪問看護師として立派に仕事をこなしています。 新卒者を募る場合、訪問看護のメリットをアピールしつつ、ステーションとして新卒者の悩みや課題に向き合う姿勢を示してみてはいかがでしょうか。 記事編集:NsPace編集部

新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.1 新人看護師が感じていること
新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.1 新人看護師が感じていること
インタビュー
2022年11月1日
2022年11月1日

新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.1 新人看護師が感じていること

訪問看護師の中には、新卒ですぐに訪問看護ステーションで働く人もいます。こうした新卒の訪問看護師のみなさんは、どんな思いで働き始め、何に悩んでいるのでしょうか? NsPaceでは、新卒から訪問看護師になった3名の方々にお話を伺いました。 新卒で訪問看護を選んだ理由は? まず、なぜ新卒で訪問看護師の道を選んだのか、聞きました。すると、次のような三者三様の答えが返ってきました。 Aさん・訪問看護歴6年「自分の祖父母が在宅医療という選択肢をもてるようにしたいと思っていたことや、大学のサークル活動で神経難病を患っている方がご家族と穏やかに自宅で過ごしている場面に出会い、素敵だと思ったからです」 Bさん・訪問看護歴6年「利用者さんとゆっくり関わることができるからです。在宅看護学実習で、テキパキと処置をしながら、利用者さんに適切な情報を伝える・聞き出す訪問看護師に憧れを抱きました。誰もやったことがないことだから、おもしろそうと思い、飛び込みました」 Cさん・訪問看護歴7年「訪問看護に興味を持ったきっかけは、大学での領域実習でした。在宅では、 利用者さんと向き合う時間的な余白があり、利用者さんと看護師が対等の立場であるように感じました。その人がその人らしく生活できて、それを支援できる訪問看護がすごく魅力的に感じたので、訪問看護師になろうと思いました」 ご家族に訪問看護師という選択肢を加えたい、実際の訪問看護師の姿に憧れた、在宅医療・訪問看護に医療の理想の形を見た、というのが訪問看護師になった直接的な理由でした。一方、共通点として看護学生時代の経験を踏まえて、最終的に訪問看護師となる決心をしたことが見て取れます。 ひとりだちするまでの過程で困難に感じたことは? では、実際に新卒から訪問看護師となって感じた壁は何でしょうか。こちらの質問も、さまざまな悩みをもったという答えが返ってきました。 Aさん「一つひとつの判断が正しいか、症状を見落としていないかという不安がありました。先輩への報告でも、簡潔に必要な情報と自分のアセスメントをまとめることが難しかったです。状況や体調に変化があった場合に臨機応変に報告をしたり、手順を変更したりすることも困難に感じました。また、時間がかかりすぎて、訪問時間内に必要なケアを行うことも難しかったです」 Bさん「できなかったことに注目して落ち込み、自信がなくなるというループから抜け出せなくなることがありました。自分の『できるであろう』の基準を高く設定してしまい、落ち込みやすくなっていました」 Cさん「看護技術、特に点滴などの経験が積みにくく、技術の習得は大変苦労しました。コミュニケーションが元々苦手で、人見知りも激しかったため、利用者さんとの会話に壁を感じることもありました。また、次の訪問まで待てるのか?今すぐ対応すべきなのか?と、緊急度合いの判断がつきづらいときも困難さを感じました」 技術的な悩みもさることながら、判断に間違いがないか、との不安を抱きやすいようです。そして、「週1回2時間ほどの振り返り面談をしていただきました」「オンコールは管理者の許可を得てから訪問し、実際に報告すると『合っているよ、いいよ』と声掛けをしてもらえて、認めてくれるようなサポートをされていました」(どちらもCさん)というように、その都度のフィードバックがあると新卒者は安心感をもつようです。 先輩・利用者さん・ご家族からの言葉で印象に残っていることは? このように技術を身に着けていく間で、看護師のモチベーションとなるのが利用者さんや先輩看護師からの言葉です。また、直接的な感謝や励ましでなくても、先輩が自分を思ってくれているのがわかると、嬉しさを感じるとの声もありました。 Bさん「利用者さん・ご家族からの『いつもありがとうね』『助かるわ』『待ってたよ』という言葉です。また、しばらく訪問していなかった利用者さんが『元気にしとるんか?』と気にかけていたよ、と先輩から聞いたときも嬉しかったです」 Cさん「利用者さんからの言葉では、何度もクレームをいただいた方に『Cさんだったら、任せられるわ』と声をかけてもらえたことが印象に残っています。先輩からの言葉では、『どうしたらCさんにとって良いのか分からない』といわれたとき、私のことを考えてくれていることが伝わって嬉しかったですね。ほかにも『訪問するときに何が一番大切か分かる?毎回訪問時、同じテンション、声のトーンで訪問すること』と教えられたなど、数え切れないほどあります」 利用者さんからストレートにかけられる感謝や信頼の言葉は、新卒者に限らずベテランの訪問看護師でも嬉しさを感じることは変わらないでしょう。一方、前述の「困難に感じたこと」と同様に、先輩からのアドバイスは具体的に、どこを良くすれば改善されるかまで言及すると、新卒者や若い看護師自身の成長にもつながります。 続きの記事もありますので併せてご覧ください。次回「新卒訪問看護師に聞いてみました! vol.2 新卒者から「先輩」になって思ったこと」 記事編集:NsPace編集部

特集
2022年9月27日
2022年9月27日

[4]教員との密な連携で、スタッフも学生も『やってよかった』と思える実習を!

この連載では、大変そう…と思われがちな訪問看護実習の受け入れについて意外とそうじゃないかも、と思ってもらえるようなあれこれをご紹介します。最終回の今回は、実習の実施にあたって順調に進める秘訣をご紹介します。 実習中の連絡方法を事前に取り決めておくことが重要 実習でお世話になっている訪問看護ステーションは、小規模のステーションが多く、受け入れていただける学生の人数が限られています。そのため多くのステーションに学生を受け入れていただいているので、実習中教員は複数のステーションを巡回指導することになります。 このような状況なので、いざ実習が始まってしまうと、なかなか実習指導担当者や学生との連絡が取りづらく、すれ違いになってしまう場合があります。まったく連絡が取れないと、教員、実習指導担当者ともに不安になると思うので、私は、必ず実習が始まる前に時間調整し、情報共有を図る機会を設けていただけるように訪問看護ステーションにお願いをしています。 実習中は直接会えないことも多いので、電話やFAX、メールを活用しています。話し合う必要がある場合、Web会議を設定することもあります。なるべく連携不足を解消できるような手段を講じていくことが大切ではないかと思っています。 また、これまでの経験から、実習前のほうが実習指導担当者とも連絡が取りやすいので、実習が始まるまでの間に、効率よく、かつ十分な情報共有を行う取り組みを行っています。 具体的には、訪問看護ステーションの基本情報の確認、実習の目的・目標・実施方法の共有を行っています。具体的な内容を順に説明していきます。 訪問看護ステーションの基本情報の確認 実習先の情報を学生にも把握してもらうため、訪問看護ステーションの基本情報をシートに記載しまとめています。図1に実際に使用しているシートをお示しします。 図1 実習時に活用している訪問看護ステーションの基本情報シート 青字は記載例。訪問看護ステーションの名称、所在地・行き方、実習指導に関わるメンバーの名前と連絡先、特記事項、服装、持ち物なども記載しています。このシートを見れば基本的なことは何でもわかるようにしています。 実習の目的・目標・実施方法の共有 学校側で定めた実習の目的や目標を訪問看護ステーションの実習指導担当者と共有します。そして、実習目標に到達できる実習方法をステーションの特徴に合わせて検討します。 実習の実施方法を具体的に検討することで、実習指導に必要な情報が見えてきますので、よりスムーズに実習を進めることができます。また、学校のほうで実習指導に活用してもらえる内容をまとめたファイルを作成し、訪問看護ステーションにお渡ししています。このファイルについては次の項目で詳しくご紹介します。 訪問看護ステーションに『学校発の実習ファイル』を設置 実習指導担当者からある時、指導する学生さんについてもっと知りたいという要望を受けたことがありました。実習に出るまでにどういったことを学んできているのか、学習への取り組み姿勢など、実習指導に活かせる情報を共有してほしいと言われました。 そこで、私の学校では『学校発の実習ファイル』を作成し、実習期間中ステーション内に置かせてもらっています(図2)。ファイルには、教員の連絡網や学生の実習配置表(どの学生がどこの実習先に行っているかをまとめた表)、実習要綱、学生の評価方法をまとめた資料に加えて、学生が実習までに取り組んできた課題やレポートなどを綴じています。他に、学生のアレルギー情報を記載した資料も入れています。 こういった資料を通して、学生のことを少しでも知ってもらいたいと考えていますし、実習への考え方を伝えることができればと思っています。 図2 実習ファイル このファイルには学生のアレルギー情報も記載しています。動物を飼っている利用者さんもいらっしゃるので、動物アレルギーの有無は事前にお伝えしています。なお、ファイルは実習終了後に回収します。 学校側はこんなことを知りたいと思っています 最後に、学校側から訪問看護ステーションの方へのお願いとして2つあります。 連絡の取りやすい時間帯を教えてください 実習指導担当者は、訪問看護業務のためステーション内にいらっしゃらない時間や申し送り、定例会議の時間帯があるかと思います。そういった時間を避けて、比較的連絡がつながりやすい日時を教えていただければ、タイミングのよいときにこちらからご連絡します。カンファレンスの日程調整や実習指導のお打ち合わせもスムーズに進むと思いますので、ぜひ学校側に遠慮なく『この時間なら空いているよ!』と声をかけていただけるとうれしいです。 訪問看護ステーションのスタッフの方からも実習に対するご意見を伺いたいです 我々教員は、管理者や実習指導担当者とお話しする機会は多いのですが、他の訪問看護師やリハビリテーションのスタッフとは、実習開始後の巡回指導のとき以外、交流する機会がほとんどありません。限られた時間しかお会いできませんが、実習指導に関して日ごろ感じていらっしゃることなどを気軽に話していただけると幸いです。教員の多くは、スタッフのみなさんとも交流を深め、指導に関する助言や考えに触れたいと思っているのではないでしょうか。 実習以外の交流も進めています! 私の大学ではちょうど実習が始まる前の時期に在宅看護の実際をテーマにした講義を実習先の訪問看護師の方にお願いしています。 学生にとっては現場の訪問看護師から直接話を聞ける機会であり、訪問看護師さんにとっては実習前に学生の雰囲気を感じてもらうよい機会になっています。また、実習が始まれば、講義で一度会っているので、共通の話題もあり、コミュニケーションを図りやすいそうです。 講義を引き受けてくださった「訪問看護ステーション彩」の管理者・上野朋子さんは、授業の資料準備は大変だけれど、準備の過程で日々実践している訪問看護の振り返りができ、学生に伝えたいことを整理するチャンスになっていると話してくれました。 「ニーズ訪問看護・リハビリステーション西大宮」の所長・金子孝奈さんは、大学での講義について、看護の実践や経験などを後輩に聞いてもらえることをうれしく思うと話してくれました。 * 今回、この記事の執筆をきっかけに日ごろお世話になっている訪問看護ステーションの管理者や実習指導担当者に、訪問看護実習の受け入れについてじっくりとお話を伺うことができました。 みなさん、未来を担う訪問看護師の育成に少しでも貢献したいという気持ちで受け入れてくださっていることがわかり、学生を送り出す側として感謝の気持ちでいっぱいになりました。 この記事を通して訪問看護実習の受け入れについて、読者の皆様に少しでも関心を持っていただければ幸いです。 ■取材協力者(登場順)訪問看護ステーション彩~いろどり~管理者 上野 朋子さんhttps://tact-company.com/ ニーズ訪問看護・リハビリステーション 西大宮所長 金子 孝奈さんhttps://www.needs-houmonkango.com/ 執筆 王 麗華大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 教授 ●プロフィール1999年、国際医療福祉大学保健学部看護学科を卒業。看護師と保健師資格取得後、地域の病院と訪問看護ステーションでの勤務を経験。その後、国際医療福祉大学看護学科准教授などを経て、2018年より現職。 記事編集:株式会社照林社

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