教育に関する記事

特集
2022年9月20日
2022年9月20日

[3]実習の負担軽減は準備次第! 受け入れ時に役立つ工夫・ノウハウ

この連載では、大変そう…と思われがちな訪問看護実習の受け入れについて意外とそうじゃないかも、と思ってもらえるようなあれこれをご紹介します。今回は、実習を受け入れる場合、訪問看護ステーションの側でどういった準備を行えばよいかご紹介します。 実習受け入れ前の準備が大切 実習を受け入れることになった場合、実習受け入れ前の準備がとても大切です。訪問看護ステーションで行う実習前の主な準備としては次のようなことがあります。 ・施設オリエンテーションの準備 ・実習内容の確認 ・学生を受け入れるにあたってのルールづくり ・同行訪問可能なご家庭の選定 ・カルテの取り扱い(電子カルテではあれば学生専用のID・パスワードの設定など) ・実習指導担当者の受け持ち利用者さんの調整 ・実習費に関連する書類の作成 など今回は、ステーションの管理者の方からどうすればよいか質問を受けることの多い、学生を受け入れるにあたってのルールづくりと同行訪問可能なご家庭の選定について準備のコツをご紹介します。 実習に関する取り決めはスタッフとも共有 学生の受け入れにあたっては、ステーション内で主に以下のことを取り決めておくとよいでしょう。 ・学生の待機場所や休憩場所、持ち物の置き場 ・実習の集合時間 ・学生の服装 ・学生の持ち物 ・学生がカルテを閲覧するときの方法 など 「集合時間」は、学生が訪問看護ステーションに入室可能な時間にするとよいです。ステーションが開く前に学生が着いてしまうと、病院や施設と異なり、外で待機することになります。特に住宅街にあるステーションでは、近所の住民の方のご迷惑になることもあります。ですので、確実に学生が入室できる時間に設定し、学生には時間厳守であることを伝えます。なお、ビル内にあるステーションの場合、呼び出し方なども取り決めておきます。 また「持ち物」では、季節に応じて訪問先への移動時に必要となる防寒・防暑対策など細やかな指示が必要です。冬季であれば耳当てやカイロ、夏季であればサンバイザーなどを各自で用意するように伝える訪問看護ステーションもあります。自転車や徒歩で訪問する場合には必須の注意事項ですね。 「カルテを閲覧するときの方法」は、第1回でも触れましたが、個人情報保護の観点から学生専用のID・パスワードを用意しておきます。また、スタッフには、スタッフがいつも使用しているID・パスワードは、学生に教えないように伝えておきます。 こうした取り決めは、オリエンテーション用の資料にまとめておき、学生だけでなく、スタッフも閲覧できるようにしておくとよいでしょう。実習指導担当以外のスタッフが学生から質問を受けたときに、スムーズに対応できます。 受け入れ家庭選定のポイント 実習の受け入れ準備の中でとても大切なのが、実習を受け入れていただけるご家庭の選定です。受け入れ家庭の選定は、利用者さんの状況、利用者さんと学生の両方の立場、訪問看護師の業務の状況などをふまえて行います。利用者さんの状態によっては、学生の同行が負担になる場合もあるので、基本的には次のような条件を満たすご家庭を選定するとよいでしょう。 ・病状や精神状態が安定している ・週に1回以上の訪問を受けている ・学生の同行訪問に同意している 受け入れ可能なご家庭を選んだら、学校の教員と実習指導担当者で打ち合わせをし、学生が受け持つ利用者さんを具体的に決めていきます。 決め方としては、学生が希望する疾病や日常生活動作(ADL)の程度に合わせて決める場合もあれば、利用者さんの状況やスタッフのマンパワーをふまえて、訪問看護ステーション側で対象となる候補をリストアップする方法もあります。他に、小児の訪問看護が多いステーションでは、学生が小児の在宅看護を学べる機会と考え、ステーションの特徴を活かした候補を挙げてくださる場合もあります。 そして、実習の開始前に、学生の同行訪問について利用者さんとご家族に同意を得ます。実習が始まる数ヵ月前に同意を得るステーションもあれば、訪問看護契約時に同意を得るステーションもあります。 契約時の場合、例えば、施設紹介の際に「学生の実習を受け入れることがあります」と説明し、看護教育に携わっていることをあらかじめ伝えておくと理解が得られやすいです。また、契約書に学生の同行訪問について意思確認できるチェック項目を設けることで、候補のリストアップもしやすくなりますね。 このように同意の取得にあたっては、利用者さんやご家族に対して、訪問看護実習へのご協力の同意が得られていることを確認できるしくみづくりが必要です。 電子カルテの画像情報を活かした実習準備 ここで日ごろの訪問看護業務を行いながら、電子カルテのシステムを活用し、学生の実習準備をしてくださっているステーションをご紹介します。 「訪問看護ステーション彩」の管理者である上野朋子さんは、利用者さんとご家族から許可を得て、普段から利用者さんの療養環境や使用中の医療機器の写真を撮っています。そして、画像をカルテに保存し、学生との情報共有に活用されています。 このコロナ禍で実習時の同行訪問が難しいケースもあるため、なかなか現場に行けない学生にとって写真が貴重な情報源になっているそうです。在宅酸素療法や点滴、吸引などが在宅でどのように行われているのか、写真を通して情報収集でき、利用者さんに実施しているケアや利用している医療機器についても理解しやすくなります。 また、学生だけでなく、スタッフにとっても担当以外の利用者さんの状態がよくわかるため、ステーション内の情報共有にも役立っているとのことでした。 ■取材協力者訪問看護ステーション彩~いろどり~管理者 上野 朋子さんhttps://tact-company.com/ 執筆 王 麗華大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 教授 ●プロフィール1999年、国際医療福祉大学保健学部看護学科を卒業。看護師と保健師資格取得後、地域の病院と訪問看護ステーションでの勤務を経験。その後、国際医療福祉大学看護学科准教授などを経て、2018年より現職。 記事編集:株式会社照林社

特集
2022年9月13日
2022年9月13日

[2]たくさんあります! ぜひ、知ってほしい、実習受け入れのメリット

この連載では、大変そう…と思われがちな訪問看護実習の受け入れについて意外とそうじゃないかも、と思ってもらえるようなあれこれをご紹介します。今回は、実習受け入れのメリットについて訪問看護ステーションの管理者の方のお話をもとにご紹介します。 実習受け入れのメリットを教えていただきました 訪問看護実習を受け入れることが、訪問看護ステーションにどのような影響を与えるのか、学生を送り出す側としてはとても気になるところです。そんな中、私たちの実習施設「ニーズ訪問看護・リハビリステーション西大宮」の管理者、金子孝奈さんから受け入れの実際についてお話を伺う機会がありました。 日々とても忙しい業務の中で実習にご協力いただいているので、実習受け入れの負担が大きいのではないかと考えていましたが、意外にも「実習を受け入れるメリットがあるよ」と教えていただきました。教えていただいたいくつかの例をご紹介します。 自分の行っているケアを言語化する貴重な機会に 利用者さんのお宅では、訪問看護師は学生に一つひとつ順を追って行っているケアについて説明していきます。手技の根拠や観察のポイント、注意点を言語化することで、普段何気なく実施しているケアを振り返る機会になっているとのことでした。 そして、その場にいる利用者さんやご家族からも「これはこんな意味があったのね」「注意して見てくれているのね」といった反応があり、訪問看護師に対する信頼がさらに増したそうです。 実習は、学生にとって実際に訪問看護師が行う点滴や吸引などを間近で見学できる貴重な場です。それが指導を担当する看護師や利用者さん、ご家族にとってもプラスになっていることがわかり、とてもうれしく思いました。 学生の新鮮なアイディアが課題解決の糸口に 時には学生の思いも寄らないアイディアに助けられ、利用者さんが抱える課題の解決方法が見つかることもあるようです。 例えば……。どうしても薬を飲み忘れてしまう利用者さんの服薬支援に着目し、実習指導を担当する看護師と学生でアセスメントを行いました。すると、学生から「その利用者さんは携帯電話を持っていますか?」という質問が出てきました。看護師は質問の意図がわからなかったので、学生に理由をたずねると「服薬時間に合わせて、目覚まし時計のように携帯電話にタイマー設定をすればよいかと思いました」との答えが返ってきました。この発想は、看護師にとってとても新鮮に思えたそうです。 さっそくこのアイディアを、利用者さんの服薬支援の一環として使ってくださり、利用者さんはアラーム音をきっかけに服薬のことを思い出すので飲み忘れの軽減につながったとのことでした。これは、利用者さんが使用している身近なものを使って、セルフケアの援助が可能になった例です。生活の場のことですから、とてもよいアイディアだったと思います。 学生の発想や個性を大切にし、吟味したうえで、訪問看護の現場で活かしていただいたことをとても感謝しています。 学生の学ぶ姿にエネルギーをもらえる 同行訪問では、学生はバイタルサインの測定やおむつ交換、体位変換、清拭などのケアに参加させていただくことがあります。ケアへの参加を通じて、例えば「体位変換にはこのくらいの体力を使うんだ」と実体験でき、学ぶ姿勢がどんどん変わってくるそうです。 いろいろな気づきを得て、感じた疑問を実習指導の担当者に話し、活発なディスカッションが展開されることもあると聞きました。学生との会話を通じて、『フレッシュなエネルギーをもらった気がします』と話してくださる訪問看護師の方もいらっしゃいました。 さらに、学生は訪問看護師が利用者さんお一人おひとりの病状や体調、生活スタイルに合わせてケアを行う様子を間近で見学しながら、在宅ならではのケアや援助に対する理解を深めていきます。その人らしい暮らしを支える訪問看護に感動し、実習前よりも興味・関心を高める学生もいます。 また、学生と会話をする利用者さんにはいつもとは違う表情やしぐさがあるそうです。いきいきとした表情が見られることもあり、こうしたさまざまなできごとから、実習指導担当者がエネルギーをもらい、訪問看護の楽しさを再発見することもあると教えていただきました。 若い人に訪問看護に携わってもらえるように希望を込めて 金子さんは、訪問看護実習を受け入れる理由について、次のようにお話しされます。「若い人にこれからも訪問看護に携わってもらえるように、という希望を込めて実習を受け入れています」 そして、受け入れにおいて大切にしていることについて、「実習の受け入れは不安があるかもしれませんが、実際にやってみないとわからないこともあります。やってみて問題に感じたところは改善しながら進めることも大切です。また、利用者さんの中には、孫を見るような目で学生さんに接してくれる人もいます。学生さんにとっても、利用者さんとのそうした触れ合いは、看護師になってからもいろいろな意味で役立つと考えています。ですから、できる限り在宅で暮らす利用者さんとふれ合える機会をつくっていますよ」と教えていただきました。 金子さんのお話の中にあった、「やってみて問題に感じたところ」については、学校の教員にもぜひ頼っていただければと思います。些細な問題でもフィードバックいただき、共有できれば幸いです。 ■取材協力者ニーズ訪問看護・リハビリステーション 西大宮所長 金子 孝奈さんhttps://www.needs-houmonkango.com/ 執筆 王 麗華大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 教授 ●プロフィール1999年、国際医療福祉大学保健学部看護学科を卒業。看護師と保健師資格取得後、地域の病院と訪問看護ステーションでの勤務を経験。その後、国際医療福祉大学看護学科准教授などを経て、2018年より現職。 記事編集:株式会社照林社

特集
2022年9月6日
2022年9月6日

[1]実習の受け入れ、こんなこと『疑問』に思っていませんか?

この連載では、大変そう…と思われがちな訪問看護実習の受け入れについて意外とそうじゃないかも、と思ってもらえるようなあれこれをご紹介します。今回は、訪問看護実習に関してよく寄せられる疑問を取り上げてお答えしましょう。 訪問看護の魅力を実習の場で伝えてほしい 近隣の看護学校から、看護実習を受け入れていただけないかと打診される訪問看護ステーションの管理者の方は多いのではないでしょうか。 看護教育では2022年のカリキュラム改正によって地域・在宅看護論が1年時から組み込まれ、地域連携の視点が教育開始時から必須になりました。 訪問看護ステーションは、地域・在宅看護実習の主な場であり、期待される役割はますます大きくなっています。とはいえ、日ごろから少ないスタッフで業務をこなしているステーションも多いため、なかなか受け入れに積極的になれないのではないかと思います。でも、在宅看護に興味のある学生や卒業後すぐに訪問看護師になりたいと考える学生も増えてきています。私は、大学の看護学科で地域・在宅看護学を教えています。訪問看護実習の受け入れをお願いする立場から、みなさんの現場で訪問看護の魅力を学生たちに伝えていただきたいと思います。 訪問看護実習への疑問、お答えします! 訪問看護ステーションの管理者の方々は学生の受け入れに関心はあるものの、事業所内のマンパワーの問題や場所が狭いといった環境面のご心配から、受け入れに一歩踏み切れないと思われることが多いようです。 確かにいろいろなご心配があるかと思いますが、正確な情報提供や少しの工夫で解決できることもあります。今回は、これまで管理者の方からお聞きしてきた疑問を取り上げて紹介していきます。少しでも訪問看護実習の受け入れについて知っていただき、意外と大変じゃないかも…と思っていたければ幸いです。 実習は1度受け入れたら、ずっと受け入れないといけないの? みなさん1度受け入れたら次の年は断れないんじゃないかと心配されることが多いようですが、答えは「ノー」です。 スタッフの人数や利用者さんの状況などから、受け入れが難しい年もあると思います。学生を送り出す側としては、毎年、受け入れのお願いをさせていただきますが、難しい状況のときは遠慮なく仰ってください。そして、また受け入れ態勢が整った段階でお声がけいただけければと思います。 学生に専用で使ってもらえるロッカーや部屋がないけれど受け入れても大丈夫? スペースの問題はご心配が大きいようで、このご質問を非常によく受けます。ですが、専用のロッカーや控え室がなくても問題ありません。 例えばロッカーがない場合、実習中の服装をあらかじめ指定していただくと、着替える必要がないのでロッカーはなくても問題ありません。白衣などの指定がなければ、学生は自宅からスニーカー、ポロシャツ、チノパンツ、冬はこれにカーディガンを加えた服装で、直接実習先に伺うことが多いです。 また、ステーション内で休憩する際は、差し支えなければ、スタッフの方が使用されているスペースを共有させていただけると助かります。スタッフの方と同じフロアにいることで、電話対応や関係者間の打ち合わせなど、事務所の日常業務を見学することができ、貴重な機会になると思っています。 実習に来てくれた学生に最初に伝えなければいけないことは?  まずは、利用者さんのお宅に伺うときの基本的なマナーについて共有をお願いします。もちろん、学校でも接遇・マナーに関する教育を行っていますが、訪問看護ならではのポイントがあるかと思います。 例えば、訪問したら靴はそろえて下座に置く、上着はたたんで身近に持っておく、利用者さんのお宅にあるものに触れるときはどうするのか、などです。訪問時に普段から注意していらっしゃることを、同行訪問前のオリエンテーションのときに伝えていただければ幸いです。 学生の中には、多職種と開催する会議に出席させていただけるケースもあるようです。その際は、会議出席時のマナーを知るチャンスなので、会議の目的・参加者・参加者の職種・日時と場所を把握する、携帯電話の電源を切る、メモをとるときは指導者の許可を得てから…といったようなことを伝えてあげてください。 個人情報の取り扱いが心配! 電子カルテの取り扱いで注意することは? 実習では、利用者さんを理解するため、実際に電子カルテの診療記録を閲覧させていただくことがあります。電子カルテは、すべての利用者さんの情報が電子保存されており、権限次第ではコピーも可能ですので、個人情報保護の観点から取り扱いには十分な注意が必要です。 学校でも実習前に個人情報の取り扱いおよびプライバシーポリシーに関する教育を行っていますが、訪問看護ステーション独自の規則も策定いただけるようお願いいたします。例えば、次のようなセキュリティ管理を徹底してもらえるとよいかと思います。 ・実習クールごとに学生専用のIDとパスワードを設定する。・電子カルテシステム上から使用権限を設定し、学生は担当患者の診療記録に限って閲覧のみ可能にする(入力・更新・転送不可にする)。・実習開始前に電子カルテのメンテナンス業者に確認を行う。 同行訪問の前は何をどこまで学生に伝えればよい? 同行訪問についてあれこれ説明していたら、ずっと話をしていたという実習指導担当者のご相談を受けたことがあります。少しでもよりよい実習にしたいとの思いからあれもこれも伝えなくては、と思ってくださるようです。 学生には、まずは利用者さんを知り、疾病や看護技術について復習し、実習での学びを深めてほしいと考えています。学生自身が情報を整理し、準備しておくことも必要ですので、同行訪問の前は訪問時に行うケアと、利用者さんの「身体状況」「環境・生活」「家族・介護の状況」「心理状況」の4点について事前にカルテを閲覧し、整理しておくように伝えてください(表1)。 また、学生は訪問先に伺うことに対してとても緊張しています。移動時間を利用して、訪問先での注意点、利用者さんやケア技術についてお話していただけると学生の緊張もほぐれてくるように思います。 表1 利用者さんの状況を整理するための4つのポイント カルテから情報収集し、利用者さんの状況を4つのポイントに沿って整理します。もし学生が利用さんの情報をうまく説明できないようでしたら、この4点について順に学生に質問を投げかけてみてください。 執筆 王 麗華大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 教授 ●プロフィール1999年、国際医療福祉大学保健学部看護学科を卒業。看護師と保健師資格取得後、地域の病院と訪問看護ステーションでの勤務を経験。その後、国際医療福祉大学看護学科准教授などを経て、2018年より現職。 記事編集:株式会社照林社

特集
2021年10月5日
2021年10月5日

第3回 計画的な人材採用と育成/[その4]「目標管理」で“強いステーション”づくりを!

連載:働きやすい訪問看護ステーションにするための労務管理ABC 連載第3回目では[その1]~[その4]にわたり訪問看護ステーションにおける人材採用と育成について解説していきます。今回のテーマは“目標管理”です。ここでいう目標は事業所の理念や基本方針につながるものであり、利用者へのケアをとおして、その実現に貢献できる目標である必要があります。目標管理の重要性を職場にしっかりと周知し、理解を浸透させましょう。 ●ここがポイント!・目標管理とは、職員一人ひとりが目標を設定し、自らを管理することである。・目標設定では、個人と組織のベクトルを合わせることが大切である。・目標管理を形骸化させずより高い成果を得るために目標達成を支援するコーチの存在が必要不可欠である。 目標管理とは 目標管理とは、経営学者ピーター・F・ドラッカーによって提唱されたマネジメント手法です。ドラッカーの著書『現代の経営』の中で目標管理は次のように記載されています。 「今日必要とされているものは、一人ひとりの人の強みと責任を最大限に発揮させ、彼らのビジョンと行動に共通の方向性を与え、チームワークを発揮させるためのマネジメントの原理、すなわち一人ひとりの目標と全体の利益を調和させるためのマネジメントの原理である。これらのことを可能にする唯一のものが、自己管理による目標管理である。自己管理による目標管理だけが、全体の利益を一人ひとりの目標にすることができる。」(P.F.ドラッカー著,上田惇生訳 『現代の経営【上】』ダイヤモンド社,2015,p.187.より引用) 目標管理とは、職員一人ひとりが目標を設定し、自らを管理すること、つまり、目標による管理のことです。 目標管理は「Management by Objectives and Self-Control」と表記します。目標管理を構成する3つのキーワード、「マネジメント」、「オブジェクティブズ」、「セルフ・コントロール」について順に説明していきます。 マネジメント(management)とは 直訳すると「管理」、「経営」ですが、managementの動詞形manageの原義には「馬を手で扱う」という意味があり、そこから転じて「(扱いにくい人や事柄などを)うまく取り扱う」、また「なんとかやり遂げる」という意味があります。ここではマネジメントを英語の訳に即して「工夫や苦労を重ねてやり遂げること」と考えます。 オブシェクティブズ(objectives)とは 複数のストレッチ目標を意味します。ストレッチ目標とは、簡単に達成できる目標ではなく、背伸びをして手を伸ばさないと達成できないような目標のことをいいます。 セルフ・コントロール(self-control)とは 自分自身で目的を定め、計画を立て、意欲的、かつ主体的な行動をとれることをいいます。 目標管理のねらいと効果 目標管理のねらいは、主体的に考えて活動する人材を育成することにあります。 職員自らがストレッチ目標を設定し、目標達成に向けて創意工夫して取り組むことで、自分で考え行動し、壁を乗り切る力が身につきます。何か問題が生じたときにも、常に当事者意識をもって対処できるようになります。 また目標が達成されることで、自信が育まれ、レジリエンス(さまざまな困難な環境や状況に対しても適応し生き延びる能力)が鍛えられます。 目標設定のポイント 目標設定では、個人と組織のベクトルを合わせることが大切です。職員一人ひとりの目標が事業所のめざす最終目標(理念や基本方針)につながることで、事業所全体の利益が調和された状態になり、組織全体のパフォーマンスが向上します。 そして、目標は具体的に設定します。ここでは「グタイテキ」の頭文字に沿って、設定のポイントをご紹介します。 グ:具体的言った人のイメージと受け取った人のイメージが一致する。行動レベルの言葉にする。タ:達成可能ストレッチ目標を設定する。イ:意欲的達成することで自分自身、または周囲にどんな価値やメリット、意味があるのか考える。テ:定量化・数値化例えば、よく使われる「~に貢献する」「~をバックアップする」「~を推進する」「スムーズに~する」「迅速に~する」は具体的ではないため目標設定では不適切。キ:期限を定める 「いつまでに」達成するのかを明確にする。 目標管理の形骸化を防ぐコツ 目標管理を1人で行い続けるのは大変なことです。忙しさのなかで怠けてしまったり、中身が追いつかず形式的なものに陥ってしまったりしがちです。この形骸化を防ぐコツは成果を出して、成功体験を積み上げていくことです。 そして、成果を出すためには目標達成を支援するコーチの存在が不可欠です。コーチがいることで、達成に至るまでの時期が短縮され、成果のレベルが格段に上がります。コーチ役は上司が担うとよいでしょう。信頼関係が深まりチームワークが強化されます。 コーチに期待される役割には以下のようなものがあります。・新しい気づきをもたらす・視点を増やす・考え方や行動の選択肢を増やす・目標達成に必要な行動を促す基本的にコーチは一方的に指導したり、アドバイスを与えたりすることはしません。対話をとおして問いかけ、相手からさまざまな考え方や行動の選択肢を引き出します。この技法を「コーチング」といいます。 コーチ自身も目標管理を支援する能力が必要となりますので、部下の可能性を最大限引き出せるようなコーチングスキルを身につけましょう。 ** 齋藤 暁株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント 医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。 ▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/ 編集協力:株式会社照林社 【引用文献】 P.F.ドラッカー著,上田惇生訳(2015)『現代の経営【上】』ダイヤモンド社

コラム
2021年10月5日
2021年10月5日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 内部体制に関する方針 パート3~

第11回は、いよいよ「内部体制に関する方針」のパート3です。パート1の冒頭に紹介したとおり「成果はすべてお客様から得られます。会社の内部は全て費用でしかありません。赤字会社の社長は、いつでも内部管理に終始しますが、本末転倒です。」というのが基本姿勢ですが、とはいえ、そこで働くスタッフが基本方針を間違って解釈したり、方向性に迷ったりしないようきちんと明示しておくことは大切です。今回は、その中であえて1項目を抜き出して説明します。 会議に関する方針 以下、事業所専門職スタッフ全員参加のミーティングを想定しています。日常的に実施される専門職のケースカンファレンスだけではなく、事業所の運営をスムーズに行うための全体ミーティングを月に1回は実施すべきと水谷氏は勧めます。各事業所が自走経営するための会議、といったところでしょうか。ただ訪問すればいいだけ、という意識で仕事をするのではなく、労働生産性を意識して高め合うためにも、このような会議を定期実施してはいかがでしょうか。 ①情報交換と意思統一、計画・実績確認を重視します。 ②会議の目的とは? 以下の項目について情報共有と対策検討をします。 ・お客様サービス・ご要望・クレーム対応 ・ご紹介先、関係機関との情報疎通・増客 ・人員・設備の過不足、スタッフ空き情報、請求回収について ・教育・研修計画/実施、地域集会参加促進 ・制度変更や実地指導の確認 ③会議開始にあたり、前回決定事項の確認をする。終了時には、当日決定事項の確認をする。 ④お客様が主体ということを念頭におく。 ⑤機微、場の空気を読むこと。話が飛んだり、すり替わったりすると時間を無駄にし、全員の神経を疲労させます。 ⑥先行き対策に知恵を出すことが優先です。誹謗・中傷の場ではありません。 ⑦決まった時間内で終了するのがベストです。会議前には、話す要点を整理してくると運営がスムーズです。 ⑧アジェンダ(議題)と議事録は必須です。レジメは開始数日前、議事録は翌日が基本です。担当を決めて習慣にしてください。 上記、②は運営・経営に直結する内容。それ以外は、会議への臨み方です。各社多少のアレンジはあると思いますが、スタッフが慣れないうちは、社長や本部スタッフなどがファシリテートして会議を進行してください。大事なのは、現場で起きていること(特に悪い事)がきちんと社長へ上がることです。どこかでクレームが隠蔽されたり、ご要望に対して何かにつけボトルネックがあったりすると、正常な経営ができません。現場で起きていることが正しく社長・本部へ伝わり、逆に会社の経営方針や意思を現場に浸透させるには、膝をつめて話し合いを重ねるしかありません。ある程度の緊張感をもった「会議」を実施することで、なあなあ体質にならない集団ができることと思います。 さて、「水谷氏から学んだこと」も佳境に入って参りました。次回は「評価についての方針」についてお話しします。ご期待ください。 ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【略歴】2012年ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務

特集
2021年9月28日
2021年9月28日

第3回 計画的な人材採用と育成/[その3]「人材育成」のカギはコミュニケーション力アップ!

連載:働きやすい訪問看護ステーションにするための労務管理ABC 連載第3回目では[その1]~[その4]にわたり訪問看護ステーションにおける人材採用と育成について解説していきます。今回のテーマは“人材育成”です。今回はOJTやOFF-JTといった研修制度とともに、部下の育成に特化した対話形式のマネジメント手法である1on1ミーティングについてご紹介します。 ●ここがポイント!・新任訪問看護師の育成方法にはOJTとOFF-JTがある。・現場での指導だけでなく、その後もフォローと振り返りを促し次の成長につなげるしくみづくりが大切。・1on1ミーティングは、対話を通じて部下自らが問題解決の糸口を見つけ行動できるようにサポートする手法。 OJTとOFF-JT 新任訪問看護師の育成方法には、OFF-JT(Off the Job Training)による事業所外での基礎的な知識・技能の習得とともに、実際の仕事を通じて指導し知識・技術などを身に付けてもらい、担当ケースの難易度のレベルを徐々にあげるOJT(On the Job Training)があります。 さらに、OJTやOFF-JTで学んだ知識や技能を実践し、その結果について気づきや課題、改善点などを振り返るプロセスも育成の過程ではとても重要です。指導後のフォローも忘れずに、日常的に声かけし、振り返りを促し、次の成長につなげるしくみづくりが大切です。 例えば、OJTのしくみづくりに活用できるものとして、東京都福祉保健局のサイトで公表されている「訪問看護OJTマニュアル」と「評価シート」があります。▶東京都福祉保健局 訪問看護OJTマニュアル 「評価シート」をもとに訪問前に目標の意識づけを行い、訪問時に態度・行為全般を管理者がチェックし、訪問後に訪問内容全体の振り返りと次の目標設定を行います。お互いがOJTの状況を共有し、目標設定や振り返りに用いるコミュニケーションツールとして活用できます。 またこうした日々のOJTとは別に、新任訪問看護師以外の職員の人材育成を進めるうえで週1回あるいは月1回などのペースで「1on1ミーティング」と呼ばれる時間をもつことも効果があります。 1on1ミーティングとは 1on1ミーティング(以下、1on1とします)とは、部下と上司が1対1で行う対話のことをいいます。 上司が主体となって実施する業務管理や評価のための面談とは異なり、1on1の主体は部下です。部下のほうから仕事の悩みや問題などを上司に伝え、上司は一方的にアドバイスをするのではなく、問題解決に向けてどうしたらよいか部下と対等に意見を交わします。そして、対話を通じて部下自らが問題解決の糸口を見つけ行動できるようにサポートします。1on1は、職員1人ひとりが自律的な行動をとれるように、人材育成やパフォーマンスの向上を目的に、さまざまな企業で取り入れられています。 組織活動ではコミュニケーションをとることがとても重要です。これが不十分だと、報告や連絡、相談が滞り、お互いに何をしているのかわからなくなってしまいます。1on1では、仕事だけでなく、プライベートな話題も話します。部下とのコミュニケーション不足を解消するしくみとして、1on1を活用するのも1つの方法です。 1on1の進め方 事業所で1on1を導入するには、どのようにすればよいでしょうか。ここでは、1on1の進め方を4つのステップに沿って説明していきます。 Step1 信頼関係をつくる まずは日ごろからコミュニケーションを重ね、信頼関係をつくっておくことが大切です。信頼関係のないところで1on1を行っても、職員から本音を引き出すことは難しいでしょう。 普段の接し方や受け答えから、職員は上司がどのような人物か見ています。職員との関係性を築くためにどうしたらよいか考え、行動することが必要です。「私の話にしっかり耳を傾け、認めてくれる。信頼できる上司だ」と思ってもらえるように心がけます。 Step2 1on1を設定する  1on1を定期的なイベントとしてスケジュールに組み込みます。週に1回、最低でも月に1回の頻度で、1回あたり15~30分程度をめやすに実施します。直接会えない場合は、電話などで柔軟に対応し、短時間でもよいのでコミュニケーションの機会を設けるようにします。1on1は維持・継続することが大切です。 Step3 テーマを決める  テーマを決めずに1on1を始めると、時間がかかってしまいがちです。あらかじめ話すテーマを決めておき、質問事項や伝達事項をお互いに考えておくとよいでしょう。Step2で決めた実施時間を守るためにも効率的に進める工夫が必要です。 Step4 実施と記録  1on1では、部下の意見や考えをしっかり受け止め、認めることが大切です。また、「こういう問題を抱えているのではないか」「前回こう言っていたので今日はこれをアドバイスしよう」といった先読みや深読みはせず、先入観をもたずに、その場で部下が話すことに耳を傾けます。部下が安心して話せるような雰囲気をつくります。 そして、1on1の内容は共有できるように議事録を残すとよいでしょう。記録があれば認識の違いを避けることでき、振り返りにも活用できます。 質の高い1on1で人材育成を 1on1を定期的に行っていると、職員の成長や変化にすぐに気づくことができます。機動的に部下の行動計画をサポートすることができ、その結果として部下自身が自律的にスピーディかつ柔軟に目標達成に向けた行動をとれるようになります。 1on1は最初からスムーズに進むとは限りませんし、その効果はすぐにあらわれないかもしれません。しかし、1on1成功の秘訣は、継続・維持することです。回数を重ねるうちに信頼関係が深まるとともに、部下の実践能力が向上していきます。上司自身が成長する機会にもなるため、組織にとってプラスに働くことが期待できます。ぜひ質の高い1on1を取り入れ、職員の育成に取り組んでください。 ** 齋藤 暁株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント 医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。 ▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/ 編集協力:株式会社照林社

インタビュー
2021年8月3日
2021年8月3日

大学関係機関のメリットを生かし、 経営を超え、地域のために訪問看護を広く支援したい

看護学科のある大学直営の訪問看護ステーションを立ち上げた棚橋さつきさん。今回は、学びの場としての研修と、報酬請求などあらゆる業務をだれもができるようになることの重要性について語っていただきました。 研修機会の提供とスタッフ育成のために 2015年に開設した高崎健康福祉大学立の訪問看護ステーションでは、地域貢献のため、研修機会の提供に積極的に取り組んでいます。研修内容は、褥瘡、ストーマ、排泄ケア、難病、リハビリテーションなど多岐にわたります。現場で本当に困っていることを解決できるよう、専門的かつ実践的な研修にすることを心がけています。また、個人でも参加しやすいよう、参加費は1人2000円程度としています。 当初、研修の内容企画は、私と管理者が中心になって考えていました。しかし、私自身が息切れしてきたことや内容が偏る傾向も見えてきたことから、色々な分野を強みとするスタッフに考えてもらうことにしました。自分自身がどういう研修を受けたいか。講師は誰に頼むか。どういう形式で行うか。参加者は何人にするか。そうしたことを考え、計画を出してもらうことにしたのです。 私や管理者が立てた研修をただ手伝うのと、自分で企画運営するのとでは、経験から得られるものはまったく違います。地域包括ケアを考えたとき、訪問看護師として研修の企画運営をしていくのも必要な能力だと考えました。 任せてみると、それぞれの関心によって異なる内容の研修を提案してきます。私が考えるよりバラエティに富んだ内容になり、スタッフに任せて良かったと感じています。 スタッフに任せるということでは、月1回、管理者が行っていた診療報酬請求の際の書類の入力も、常勤スタッフに交代で担当してもらうことにしました。医療保険における利用者の疾患情報の入力です。 自分の担当以外の利用者も含め、その月1カ月の状態の変化などについて記録を読み込み、コンパクトにまとめて入力する。これが、スタッフにとっていいトレーニングになると考えたからです。こうした作業が診療報酬請求上、必要であると知っておいてほしいという気持ちもありました。 訪問看護に長く携わっていても、ステーションの運営や事務作業、労務管理などについて学ぶ機会はなかなかありません。当ステーションで長く勤めてくれているスタッフには、いずれ独立したとき、管理者になっても困らないようにしたい。そう考えて、このほか時間外勤務の計算なども、交代で任せるようにしています。 研修で変わる退院支援看護師の意識 地域貢献としては、このほか、訪問看護ステーションの立ち上げ支援や、退院支援についての勉強会「退院支援を考える会」(事務局は在宅看護領域)も行っています。 ステーションの立ち上げ支援は、当初、一つのパッケージをイメージしていました。ところが始めてみると、受講希望者のニーズは実に多種多様。「開設のための提出資料がわからない」「記録をどう整備すればいいかがわからない」など、一人ひとり違うのです。今はその人に合わせてオーダーメイドで対応しています。 申し込みは毎年3~4件ですが、受講後、管理者になった人が相談に訪れることもあります。こうした支援によって、県内の訪問看護ステーションの立ち上げには、かなり貢献できたと考えています。 「退院支援を考える会」は、もともとは当大学の学内事業として始めました。もう10年になりますが、定期的に研修会を開催しています。今は研修の一部を当ステーションで担当していますが、場所やパソコンの機材などは、大学の教室などを無償で借りて実施しています。大学関係機関で実施するメリットですね。 「退院支援教育研修」では、病院の退院支援担当のソ-シャルワーカーや訪問看護師が講義を行い、その後実習へ行き、最後に事例検討を行います。対象は病院の退院支援看護師で、25人が定員ですが、毎回、参加希望者が多く、すぐ定員になります。 この研修会で、退院支援のすべてを伝えることができるわけではありません。しかし、参加者は看護師ですから、現場を見ればどのような支援が必要か、ある程度イメージはできます。「車いすの練習を一生懸命やっていたが、こんな広い廊下なんて在宅にはない」など、実習のあと、参加者はさまざまな気づきを口にします。たとえ小さな気づきであっても、発想はそこから変わっていきます。そうすると、退院していく患者さんへの声かけも違ってくると思うのです。この研修では、そんな“訪問看護の入口”の部分の意識変革だけでもできればと考えています。 昨年からの新型コロナウイルス感染症のまん延で、在宅では感染についての知識が圧倒的に不足していることを痛感しました。当大学では2022年4月から、感染管理認定看護師課程を開設し教育研修に取り組む予定です。それを前に、今年は感染管理認定看護師に、1年間だけ当ステーションに来てもらい、在宅での感染対策のマニュアル作成を進めています。それをたたき台にして多くのステーションに対して発信し、活用してもらいたい。大学立の訪問看護ステーションとして、経営を超え、今後も訪問看護を広く支援する活動に取り組んでいきたいと考えています。 ** 棚橋さつき 高崎健康福祉大学 保健医療学部 在宅看護学 教授・ 高崎健康福祉大学訪問看護ステーション統括マネジャー 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー
2021年7月27日
2021年7月27日

大学立の訪問看護ステーションとして看護学生、新卒看護師の教育・育成に取り組む

看護学を教える教授でありながら、自ら総括マネジャーを務める訪問看護ステーションを立ち上げた高崎健康福祉大学の棚橋さつきさん。若い実習生を積極的に受け入れ、経営・運営の安定化にも力を入れています。その奮闘ぶりをお聞きしました。 スタッフにも意味がある学生実習受け入れ 高崎健康福祉大学が地域医療、看護を強化することを目的に訪問看護ステーションを開設して、丸6年が過ぎました。公的機能を持つ教育・研究拠点とすることで、地域貢献が可能になると考えて設立した、独立型の訪問看護ステーションです。 当時、大学立のステーションはまだ珍しく、この新しい取り組みに共感した専門性の高い訪問看護師、病院師長経験者などが集まりました。ステーションはベテランのスタッフを中心に、看護実践、教育、研究を三本柱として、2015年4月に運営を開始しました。 訪問看護ステーションは、地域によってはがんや小児など、専門特化型で経営が成り立つところもあります。しかし、群馬県内ではそう多くはありません。どのような疾患にも対応できるスタッフが多ければ、それだけ早く収支を安定させることができます。スタッフの頑張りのおかげで、開設3年目には、当初の計画通り単年度での黒字化を達成しました。 教育の拠点として、開設2年目から大学の在宅看護実習を受け入れることも、当初から計画していました。そのため、実習先の確保も考慮し、開設後の1年間で利用者数を50人まで増やす必要があったのです。これも計画どおり、2年目から開始することができました。 以来、学生実習は、4~5人を1グループとして2週間ずつ、年間5~6グループを受け入れています。今は、新型コロナウイルスへの感染を恐れ、学生実習の受け入れは控えたいという利用者もいます。そのため、訪問件数は減らしていますが、実習生の受け入れ自体は感染予防に留意しながら継続しています。 学生実習を受け入れると、スタッフには負担がかかります。開設2年目に初めて学生実習を受け入れたとき、スタッフからは「学生は何もわかっていない」「何もできない」と訴える声が上がりました。そこで私は、スタッフに大学の在宅看護の講義や演習を見学に行かせました。 数回だけの見学でも、大学教育でできる範囲で精一杯教えていること、それでも学生には十分理解しきれないことがあることを理解してもらいました。学生や大学の教育を批判しても何も始まりません。学びの途上にある学生に、現場実習の中で理解を進めてもらうにはどうすればいいのか。スタッフも、徐々にそれを考えてくれるようになっていきました。学生実習の受け入れは、スタッフにとっても意味があると感じています。 新卒訪問看護師も年度末には月50件を訪問 在宅看護実習を経験し、当ステーションへの就職を選択した学生もいます。残念ながら、多くの訪問看護ステーションは、今も新卒採用には消極的です。当ステーションが新卒者の採用を計画したときも、大学側から、新卒者を採用して育成しながら運営していけるのかという指摘がありました。 確かに、新卒者は研修期間中、一人で訪問できず収益には貢献できません。しかし、当ステーションではしっかりとした研修プログラムの実施により、入職1年目の終わりころには、新卒者も月約50件の訪問を担当できるようになりました。もちろん、訪問先の選定は必要ですが、件数だけを見ればほかの看護師と同等です。新卒でも自分の給料分をきちんと稼ぎ、収益を上げてくれる存在となったのです。それと同時に大きな成果はスタッフの教育への意識が変わったことでした。教育することで自分たちに何が不足しているのか、どのような教育をしたらいいのかを考える良いきっかけとなりました。当ステーションとしても、開設3年目に新卒看護師を常勤で採用しながら、前述のとおり、単年度の黒字化を実現しました。 新卒看護師育成の研修プログラムは、外部の病院の新人研修プログラムの受講、緩和ケアや介護現場の見学、当大学の栄養、小児、社会福祉関連講義の受講などで構成しています。 研修プログラムは2年で終了し、その後はほかの看護師と同様の研修に移行します。4年間で2名の新卒看護師を育成したことで、研修プログラムを整備できれば、訪問看護ステーションでの新卒者受け入れに問題はないと感じています。そうした理解が、多くの訪問ステーションに広まり、新卒の訪問看護師が増えていくことを願っています。 (後編へ続く) ** 棚橋さつき 高崎健康福祉大学 保健医療学部 在宅看護学 教授・ 高崎健康福祉大学訪問看護ステーション 統括マネジャー 記事編集:株式会社メディカ出版

コラム
2021年5月25日
2021年5月25日

医師のいない場で医療的判断を行うスキルと在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力)

第3回ではマネジメントスキルなどについてお話をさせていただきました。今回は、医師のいない場で医療的判断を行うスキルや在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力)についての考え方をお話したいと思います。 訪問看護師に必要な8つのスキル・知識 ①本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル ②本人・家族の平時の生活を想像するスキル ③他職種とコミュニケーションを取るスキル ④マネジメントスキル ⑤医師のいない場で医療的判断を行うスキル ⑥在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力) ⑦医療制度・介護制度などに関しての知識 ⑧礼節・礼儀などを実践できる素養 訪問先での不安感 病院や外来診療所に勤務されている看護師さんは、医師がいない場で医療的判断を行うことに心的ハードルを感じられることが多いと思います。私自身、いくつかの病院で在宅医療部の立ち上げの支援をさせていただきましたが、その際に在宅医療部に配属となる看護師さんを決めるステップの時に、かなり時間を要することがありました。やはり在宅医療という未知の分野に入ることに対しての不安感や、自身のスキルに対して不安に思うことなどが影響していると考えています。 また、実際に配属の看護師さんが決まっても、訪問看護師ではなく同行看護師として業務を開始することが多いです。少し複雑ですが、同行看護師は訪問診療の際に医師に同行する看護師であり、一人で患家には訪問しません(在宅患者訪問看護指導料など、医療機関からの訪問看護に関する算定は発生しないモデル)。そういった同行看護師さんに伺うと、一人で患家に訪問することに対してのハードルとしては、 1.何かあった時にひとりで対応できるか不安である。 2.患家で医療的判断を本人・家族から求められたとしても、それは医師の仕事だと思うので困る。 と、おおよそ上記2点に集約されました。 1.何かあった時にひとりで対応できるか不安 「慣れ」の話になるかもしれないですが、病棟勤務や外来勤務といった基本的に医師が傍にいる状況、もしくは院内PHSなどで緊急時に医師にすぐに連絡がつく環境での勤務経験が長いことに起因すると思われます。 しかし、詳しく話を伺うと、病院勤務であれ、外来勤務であれ、何かあった時にひとりで対応した経験がある看護師さんは非常に多いことがわかりました。よく考えれば、これは医療有資格者として普通のこととも言えますが、訪問看護というもののイメージ沸かず、これまでと違った環境での業務が、その不安を助長させている可能性を示唆しています。 2.医療的判断を本人・家族から求められたとしても、それは医師の仕事だと思うので困る 1の不安感に繋がる部分もあると思いますが、医療の方針などをご本人やご家族に説明するのは医師、という考えを強く持たれていることが要因と考えられます。医療的判断における看取り方針の確認や、薬剤の使用判断などについての判断は、通常医師が行いますが、より療養に近いレベルでの判断は、病院でも実際は看護師さんが実施しています。例えばバイタルのチェック回数やタイミング、食事介助方法、発熱患者さんへの水分摂取促進などがそれにあたります。これらももちろん医療的判断ですが、そのすべてに対して医師の指示があるわけではありません。 つまり、訪問先で求められる医療的判断の階層レベルの不明瞭さにより、こういった考えに至るものと思われます。とはいえ、こういった不安や考えを持たれていることは事実であり、現に訪問看護師として働かれている方も、このような気持ちをもって働かれている方もいらっしゃると聞きます。これらの訪問先での不安などを解決するために必要な考え方やスキルをお話したいと思います。 医師のいない場で医療的判断を行うスキル 医療的判断を行うスキルについて、ここではどういった症状に対して、どういった医療的判断を行えばよいか、といった具体的な疾患・症候別の話ではなく、どういった考え方に基づいて、訪問看護師として医療的判断を行うかをお話します。 その考え方は基本的に、訪問看護師さんが訪問先で医療的判断を行う範囲を決める作業と、急変時の対処方法を確認する作業の整理となります。具体的には、これまで何度もお話していることではありますが、まずはご本人やご家族への方針確認の際に望んでいること、やってほしくないことを吸い上げることから始まり、そこに本人の病態やADLなどに合わせて、医師から医療的・日常療養的包括的指示を受けます。これにより、訪問看護師が実施できる枠組みが決まり、この枠組みの中で訪問看護師として医療的判断を実践することになります。 この時に、医師からの包括的指示のみでは、訪問看護業務が本人や家族の意向に沿うものかどうかがわからなくなるため、必ずこの意向確認が必要となります。また、急変時の家族不在時の連絡方法や搬送基準なども、本人・家族や主治医とともに決定されていれば、医師がいない場での医療的判断について、訪問看護師として困ることや不安に感じることは大幅に減ることと思います。 前述の「何かあった時にひとりで対応できるか不安」や「患家で医療的判断を本人・家族から求められたとしても、それは医師の仕事だと思うので困る」といった思いについては、この枠組みが決まっていない、もしくは枠組みが見えていないことに起因すると思われ、訪問看護師として何をどこまで行ってよいのか、またどこまで判断してよいのかが不明瞭になっている事が非常に多いことが要因と思われます。 まとめると、医師のいない場で医療的判断を行うスキルというのは、本人や家族の意向と医師から包括的指示の確認+緊急時の対応方法の確認、これらを確認するスキルと言えます。ただし、日常業務が忙しい中で、利用者さん全員の具体的な意向や、搬送基準などの吸い上げが難しい場合もあると思います。その際は、独居の方、重症度が高い方、看取り目的で在宅療養を開始した方をまずは優先し、実施してみてください。 いずれにせよ、やはり重要になるのは第1回目に述べた「本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル」となります。 在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力) 「看護は芸術である」というナイチンゲールの言葉があります。おそらくこれにはさまざまな意味合いがあると思いますが、ここでは、利用者さんの疾患やADLに対しての療養環境を、どういった考え方のもと、みなさんが持っている看護技術を用いて整えていくか、という視点でお話したいと思います。 以前、「本人・家族の平時の生活を想像するスキル」の回で「探偵力」という単語を使い、利用者さんの日常の療養生活を想像するためのスキルについてお話しましたが、今回は療養環境を整えるための「工夫力」についてです。 療養環境の整備には、ご本人やご家族の思いを吸い上げた上で、それを達成するため、またはそれに少しでも近づけるために、看護師さんならではの視点・感覚が必要となりますが、この環境整備のためのスキルを工夫力と捉えています。重要なことは、「おそらく○○だろう」といった自身の主観をもとにした判断でアプローチしないことです。 たとえば、分かりやすい例としては、排尿行動による転倒に対しての療養生活の整備です。転倒を減らすには、ポータブルトイレの設置による動線管理や、オムツの使用、膀胱留置カテーテル挿入といった動線自体をゼロにする方法があります。この方法により転倒は減ると思われますが、ポータブルトイレの設置が「転倒は危ないから」といった判断材料のみであった場合、前述した「ご本人・家族の思いを吸い上げ、それを達成できるか」の検討が無いことになり、主に介護者視点でのリスク管理的な療養環境の整備となってしまいます。ご存じのように、排泄は本人の自尊と強く関係するため、排泄方法の変更の際は、まずご本人がどうしたいか?家族としてはどうあって欲しいか?といった意向を確認してから、トイレまでの動線確認およびその改善、移動をサポートする方法の提案、夜間のみのポータブルトイレ利用といった看護師さんだからこそ気付く工夫力を発揮していただきたいです。 ただし、認知症の方などの場合、転倒リスクを低下させることが優先になることもあります。ここで注意していただきたいのは、認知症の方はこれまでの行動が刷り込まれていることが多く、排泄方法をトイレからポータブルトイレに変更する場合、ポータブルトイレが排泄する場であると認識するのが難しいことがあるということです。そのため、例えばご本人にインプットされているトイレまでの動線上にポータブルトイレを置き(場合により、動線を塞ぐ形で)、少しずつそれが排泄する場であると認識できるように誘導する、といった工夫もあると思います。他に褥瘡の処置などでも、ご本人の状況や意向で、どの程度まで改善を目指すのかを確認し、それに対して工夫力を生かす、といったことも同様の考え方です。 ここでは非常にわかりやすい例として、排泄による転倒に対しての療養環境の整備を挙げさせていただきましたが、さまざまな療養下にある利用者さんの意向に沿う形で、みなさんの「工夫力」を発揮し、ご本人・ご家族と一緒に「看護は芸術」として、その療養環境を作り上げていってください。 本コラム第4回目として、医師のいない場で医療的判断を行うスキルと在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキルついて述べさせていただきました。次回は、医療制度・介護制度などに関しての知識ついてお話したいと思います。 医療法人プラタナス松原アーバンクリニック訪問診療医 / 社会医学系専門医・医療政策学修士・中小企業診断士 久富護 東京慈恵会医科大学医学部卒業、同附属病院勤務後、埼玉県市中病院にて従事。その後、2014年医療法人社団プラタナス松原アーバンクリニック入職(訪問診療)、2020年より医療法人寛正会水海道さくら病院 地域包括ケア部長兼務。現在に至る。

インタビュー
2021年4月27日
2021年4月27日

低い離職率を実現する採用戦略と教育システム

人材不足が大きな問題となっている訪問看護業界。株式会社ツクイは訪問看護事業を拡大しつつも、低い離職率を実現しています。 今回は、事業企画推進部部長の竹澤仁美さんに、離職率低下につながる採用戦略や教育システムについて詳しくお話を伺いました。 採用プロセスの工夫 ―看護師の採用において何か工夫されていることは? 竹澤: 特別なことはしていないですが、採用説明会は時間とお金をかけて必ず3日間ほど開催し、私も必ず行くようにしています。その後体験会も実施しています。説明会の参加者は多いときで1日10~20人ほどで3回に分けて行うこともあります。 応募は、ハローワーク経由でも十分にありますし、友達の紹介や、社内の紹介制度で社内移動してくる人もいます。また、各地域に配属されている、リクルーターという採用担当者から、各地域の状況や分析した情報をもらっています。 ―説明会の後はどのような採用プロセスなのでしょうか。 竹澤: そのあとは一次面接が管理者、二次面接は私かエリア長が行います。管理者面接の場合は、私が一次面接から行きます。採用面接は大事にしていて、会社の概要から訪問看護の説明も含め一時間くらい話し、そこから面接に入ります。 その後着任するまでは、リクルーターから状況確認や必要資料の手配など、しっかりフォローをするようにしています。 ―応募される人は、病院に勤めている人が多いですか?皆さん、どのような理由でツクイを選ばれるのでしょうか。 竹澤: 休職中の方もいますし、病院勤務の方もいます。会社が大きいということと、会社としての教育体制が整っているという部分をご評価いただいているようです。 給与体系が東京を標準として全国で概ね一緒であることや、管理者にも残業代が出るという部分も理由かもしれません。 採用時大切にしているポイント ―採用する側として、こういう人を採用しているとかはありますか。 竹澤: 採用基準は設けていませんが、「つくいびと」という社内の指針に合っているかを面接で見ます。人間性が一番のポイントですね。看護経験はあとから積算できますし、看護技術や知識はこちらで教育することができるので。 最近、経験年数は少ない若い看護師が入りましたが、病院の経験に根付いているベテランよりも、若い子の方がスッと入り込める部分もあり、お客様からのクレームもすごく少なかったりします。そのとき最善の判断や、対応ができるようになるには時間がかかるかもしれませんが、新人の看護師でも採用して育てられる土壌にしていくのが目標です。 ―管理者はどのように探し、アサインされるのでしょうか? 竹澤: 知人の紹介などもありますが、他社と同様に人材紹介会社やハローワーク経由での募集もします。ツクイブランドの力もあってか、応募は結構あります。皆さん一般職で応募されてきますが、その中から「この人なら管理者に向いているな」と思った方をアサインします。 管理者になる人は、管理者経験や病院などで主任や副師長などをやっていた人が多いのは事実ですが、ツクイの管理者業務は明確に文章化されていて、わからない事を聞ける体制もしっかりしているので、引き受けてくれる方が多いです。 ―離職率はどのくらいですか。低い離職率を実現するためには何が必要でしょうか。 竹澤: 一年間で辞めた人は、10%ほどです。ミスマッチがないよう、採用面接のときにツクイの将来性も含めて、働くイメージをわかりやすく伝えるようにしています。 訪問看護だけでずっと働いて、疲れ果てて辞めてしまうということにならないよう、社内で異動ができたり、次のステージを用意したりして、夢を持って仕事をしてほしいという話もします。ご縁があってツクイで働いてくれている看護師には、「ツクイで働いてよかった」と思ってもらいたいです。 管理者には「10褒めて、1指導する」ということを伝えています。この仕事はストレスも多いので、スタッフに感謝を伝えることを大切にしています。 教育システムを効率化する ―教育についてはどのようなシステムになっているのでしょうか。 竹澤: 最初に、「ツクイの基本」を身に着けてもらいます。e-ラーニングを使って、制度の事や記録、ハラスメント、ダイバーシティ、コンプライアンス、ツクイの考える育成、衛生管理などさまざまな内容を3日間で受講します。 その後、管理者や所長によって看護のオリエンテーションを行い、現場でのOJTとなります。現場が忙しい事業所だとOJTに入りながらオリエンテーションを行うところもありますが、2021年度からは管理者に負担をかけないよう、WEBでも教育サポートができる体制を整えていく予定です。 ―OJTの後はどのようなフォローを?教育パスはあるのですか。 竹澤: 看護ではおおまかな教育パスのようなものがあります。一人ひとり経験値が異なるので、目標設定は管理者がそれぞれに応じて行い、フォローしていきます。 管理者教育に関しては、定期的なe-ラーニング研修を年に2回行い、数字の見方、営業戦略、医療的な内容などを学びます。新しく入った人が管理者になる場合は、導入研修のあとに試験があり、それに受からないと管理者にはなれません。 また、ツクイではキャリアパス制度を設けていて、スペシャリストコースとマネジメントコースに分かれています。eラーニングの中にも、それぞれのコースに沿った内容があり、一人ひとり、特性に合ったコースを選択できます。 管理者にはなりたくないと思っていても、スペシャリストとしてキャリアアップすれば給料もあがりますし、専門性も高めることができます。 ―それらの教育システムは誰が作っているのですか? 竹澤: 人事です。項目は100から200ほどありますが、今後は訪問看護ならではの項目も入れたいと考えています。日本訪問看護財団が出しているeラーニング(※1)も受講してもらっています。 教育システムはすべてマニュアル化され、eラーニングの見方から、いつ管理者になっても困らないようなシステムを整えています。 また、サービス管理部では、事故起こしたときの対応から書類の書き方まで、管理者がそれを見れば対応できるようなシステムを作っています。まだ足りていない部分もありますが、介護事業でツクイが培ってきた経験が、教育システム作りに活かされていると思います。 ―今後、教育に関して取り組んでいきたいことはありますか? 竹澤: ラダーにそった教育を可視化できるようにしたいです。導入研修や管理者研修など、管理者向けの部分が多いので、スタッフもスキルアップできる制度を作りたいと思っています。 他社のような研修室をつくるのもいいなと思います。オンラインもいいですが、対面でできる研修も大事にしたいです。   【参考】 ※1 公益財団法人 日本訪問看護財団 eラーニング https://www.jvnf.or.jp/e-learning/ ** 株式会社ツクイ 事業企画推進部 医療系事業プロジェクト 部長 竹澤仁美

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